JP3767414B2 - 蓄熱式バーナ炉の操業方法および蓄熱式バーナ炉 - Google Patents
蓄熱式バーナ炉の操業方法および蓄熱式バーナ炉Info
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄熱式バーナを備えた蓄熱式バーナ炉の操業方法および蓄熱式バーナ炉に関し、特に蓄熱式バーナあるいは非燃焼式の蓄熱式ポートから非酸化性ガスを炉内に供給することにより、炉内の酸素濃度を調整し、低酸素濃度での燃焼を可能にした蓄熱式バーナ炉の操業方法および蓄熱式バーナ炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
蓄熱式バーナは、個々のバーナに付随して蓄熱体を取り付け、燃焼排気ガスと燃焼空気との間で熱交換を行い、高温の予熱空気を得て熱効率の高い燃焼を行うことのできるバーナである。また、蓄熱式バーナ炉は、このような蓄熱式バーナを取り付けた加熱炉である。
図3に従来の蓄熱式バーナ炉の概念図を示す。加熱炉に設置される蓄熱式バーナの台数は必要に応じて増減するが、ここでは例として4台の蓄熱式バーナを設置した例を示す。図3において、1は蓄熱式バーナ炉、2は蓄熱式バーナで、(あ)、(い)、(う)、(え)の4台が設置されている。3は各蓄熱式バーナ2に取り付けられた蓄熱体、4は燃料配管で、各蓄熱式バーナ2に対しそれぞれ燃料調節弁5が取り付けられている。6は空気配管で、空気供給ファン7と各蓄熱式バーナ2に対する燃焼空気調節弁8が取り付けられている。9は燃焼排ガスを排出する排ガス配管で、排気ファン10と各蓄熱式バーナ2に対する排ガス調節弁11が取り付けられている。12は煙道である。また、排ガス配管9の集合排気管13は煙道12に通じている。
各蓄熱式バーナ2に取り付けられた蓄熱体3は比表面積が大きくガスの通過抵抗が小さいことが好ましい。さらに、質量が小さく温度変化に対する応答性がよいのが好ましく、例えばセラミックハニカムが用いられている。燃料は、図には示されていない燃料供給源より、加圧された燃料が燃料配管4経て供給され、当該バーナの燃料調節弁5が開いている時間内のみ、その開度に応じた量の燃料が当該バーナに供給される。燃焼空気は、空気供給ファン7より加圧された空気が空気配管6を経て供給され、当該バーナの燃焼空気調節弁8が開いている時間内のみ、蓄熱体3を通過して予熱された空気が、燃焼空気調節弁8の開度に応じて、当該バーナに供給される。燃焼排ガスは、燃焼排ガス弁11が開いている時間内のみ、当該バーナの蓄熱体3を通過した燃焼排ガスが排気ファン10により吸引され、排ガス配管9、集合排気管13を経て加熱炉の煙道12に放出される。また、矢印で示すAは蓄熱式バーナ炉1内の別の場所で発生した高温ガスの流れを示す。
【0003】
この蓄熱式バーナ炉における燃焼について説明すると、例えば蓄熱式バーナ(あ)、(う)が燃焼状態にある場合には、蓄熱式バーナ(あ)、(う)の燃料調節弁5が開いて燃料が供給される。また、蓄熱式バーナ(あ)、(う)の燃焼空気調節弁8が開き、燃焼排ガス弁11が閉じて蓄熱体3に空気が押し込まれる。蓄熱体3を通過した空気はその蓄熱体3より熱を奪って高温の予熱空気となって炉内側に供給され、燃料と混合して燃焼を行う。
一方、このとき蓄熱式バーナ(い)、(え)では、燃料調節弁5、燃焼空気調節弁8が閉じ、燃焼排ガス弁11が開いており、燃焼排ガスは、蓄熱式バーナ(い)、(え)より吸引され、バーナ(い)、(え)の蓄熱体3を経てこれを加熱した後、排ガス配管9、集合排気管13を通って排気ファン10により排気される。また、余剰の燃焼排ガスがある場合には加熱炉の煙道12からも排気される。このとき、適切に設計されたハニカム式蓄熱体を備えた蓄熱式バーナにおいて、例えば炉内ガス温度が1300℃の場合、バーナ(あ)、(う)の蓄熱体に供給される燃焼空気の温度が約30℃であるとすると、蓄熱体3で加熱されて約1250℃の予熱空気となる。また、燃焼排ガスの大部分は約1300℃の温度でバーナ(い)、(え)の蓄熱体3を通過し、これを加熱して約200℃で排気される。
【0004】
蓄熱式バーナを用いた加熱炉で蓄熱燃焼を行う場合には、一定時間毎にバーナ(あ)、(う)とバーナ(い)、(え)の燃焼を切り替える交番燃焼が行われる。切替時間は概略10秒〜2分間と短いのが普通である。そして、燃焼が切り替わり、バーナ(い)、(え)が燃焼状態になった場合には、バーナ(い)、(え)の燃料調節弁5と燃焼空気調節弁8が開き、燃焼排ガス弁11が閉じて蓄熱体3に空気が供給される。蓄熱体3を通過した空気はその蓄熱体3より熱を奪って高温の予熱空気となって炉内側に供給される。一方、このときバーナ(あ)、(う)では、燃料調節弁5、燃焼空気調節弁8が閉じて燃焼排ガス弁11が開いており、燃焼排ガスは、バーナ(あ)、(う)より吸引され、蓄熱体3を経てこれを加熱した後排気ファン10により排気される。
【0005】
このような蓄熱式バーナでは、交番燃焼が行われるため、炉内温度分布が均一化され、かつ一方のバーナの燃焼で発生した燃焼排ガスを蓄熱中の他のバーナが吸引して蓄熱するため、バーナペア間でガス流れ収支が満足され、これらのバーナから離れた部分への燃焼排ガスの流れ込みが少なくなる。よって、他の部分への熱的影響がきわめて小さくなる特徴がある。また、燃焼排ガスの顕熱を回収しきわめて高温の予熱空気が得られるので、大幅な省エネルギーが期待できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の蓄熱式バーナを設置した加熱炉では、炉加熱能力が蓄熱式バーナの燃焼量のみで一義的に決定されるため、最適化された操業条件においても、自由に炉内の酸素濃度を調整して燃焼させることは行われていなかった。そのため、被加熱物の圧延後に表面欠陥の原因や最終製品の表面性状を悪化させる原因となる、被加熱物の酸化膜や形態の制御、例えばスラブやビレットなどの鋼体に発生する酸化層の生成抑制、あるいは酸化膜組成の制御を行うことは不可能であった。また、窒素酸化物の発生を抑制することも容易ではなかった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、蓄熱式バーナ炉において供給ガスの酸素濃度を調整可能にすること、低酸素濃度での燃焼を可能にするための簡単な方法および装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法は、蓄熱式バーナと、燃焼はしないが燃焼排ガスの熱を蓄えことができる蓄熱体を有する非燃焼式の蓄熱式ポートとを加熱炉に設置し、前記蓄熱式バーナの燃焼中に前記蓄熱式ポートの蓄熱体を通じて高温の非酸化性ガスを炉内に供給することにより、燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整することを特徴とするものである。
【0009】
すなわち、従来の蓄熱式バーナと、非燃焼式の蓄熱式ポートとの組み合わせに係るものである。この非燃焼式の蓄熱式ポートは、燃焼はしないが燃焼排ガスの熱を蓄えことができる蓄熱体を有するポートである。したがって、蓄熱式バーナの燃焼中において蓄熱式ポートの蓄熱体を通じて高温の非酸化性ガスを炉内に供給することにより、燃焼空気の酸素濃度を希釈することができ、酸素濃度を自由に調整することができるとともに、後述するように低酸素濃度での安定した燃焼が可能となる。酸素濃度は、燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることによって調整することができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法は、加熱炉に複数の蓄熱式バーナを設置し、そのうちの少なくとも1つを燃焼はしないが燃焼排ガスの熱を蓄えることができる蓄熱体を有する非燃焼式の蓄熱式ポートとして使用し、前記蓄熱式バーナの燃焼中に前記蓄熱式ポートの蓄熱体を通じて高温の非酸化性ガスを炉内に供給することにより、燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の発明では、蓄熱式バーナのうちの少なくとも1つを蓄熱式ポートとして使用するものである。ただし、ここでいう蓄熱式ポートは請求項1に記載の蓄熱式ポートとは異なり、燃焼式である。したがって、この燃焼式の蓄熱式ポート(すなわち蓄熱式バーナ)には非酸化性ガスを供給する非酸化性ガス配管が配設されている。請求項2の発明によっても請求項1の発明と同様の作用効果がある。
【0012】
本発明の請求項3に記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法は、加熱炉に複数の蓄熱式バーナを設置し、前記蓄熱式バーナの燃焼中に別の蓄熱式バーナの蓄熱体を通じて高温の非酸化性ガスを炉内に供給することにより、燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整することを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の発明では、全ての蓄熱式バーナを蓄熱式ポートとしても併用することを可能にするものである。燃焼サイクルを行う蓄熱式バーナと非燃焼サイクルを行う蓄熱式ポートとの組み合わせは請求項9に記載するように交替させることができる。
【0014】
本発明の請求項4に記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法は、炉内雰囲気温度が900℃以上に保たれた状態においては、燃焼空気を800℃以上の温度で前記蓄熱式バーナから炉内に供給し、その際前記蓄熱式ポートまたは別の蓄熱式バーナに非酸化性ガスを供給することにより、供給ガス平均酸素濃度を5%から20%となるように調整することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項5に記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法は、炉内雰囲気温度が1100℃以上に保たれた状態においては、燃焼空気を800℃以上の温度で前記蓄熱式バーナから炉内に供給し、その際前記蓄熱式ポートまたは別の蓄熱式バーナに非酸化性ガスを供給することにより、供給ガス平均酸素濃度を3%から15%となるように調整することを特徴とするものである。
【0016】
請求項4、5の発明では、炉内雰囲気温度に応じて供給ガス平均酸素濃度の範囲を相違させている。それぞれの平均酸素濃度の下限値(5%、3%)はその炉内雰囲気温度において低酸素濃度での安定燃焼を維持するための制限であり、上限値(20%、15%)はNOxの発生量の規制値からくる制限である。
【0017】
本発明の請求項6に記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法は、1つの前記非燃焼式の蓄熱式ポートにて、燃焼排ガスの吸引排出と非酸化性ガスの供給とを交番させることを特徴とするものである。
【0018】
非燃焼式の蓄熱式ポートは、1つでもよいものであり、その場合には特定の1つの蓄熱式ポートにて燃焼排ガスの吸引排出と非酸化性ガスの供給とを交番させることになる。
【0019】
本発明の請求項7に記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法は、同一組の前記非燃焼式の蓄熱式ポート間にて、燃焼排ガスの吸引排出と非酸化性ガスの供給とを交番させることを特徴とするものである。
これは、非燃焼式の蓄熱式ポートを2つ1組設けた場合である。
【0020】
本発明の請求項8に記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法は、同一組の前記蓄熱式バーナ間にて、燃焼空気を供給する燃焼サイクルと非酸化性ガスを供給する非燃焼サイクルとを交番させることを特徴とするものである。
【0021】
請求項8の発明は、蓄熱式バーナを蓄熱式ポートとして併用する場合において、燃焼サイクルと非燃焼サイクルとの交番動作を同一組の蓄熱式バーナが行うようにしたものである。
蓄熱式バーナが3台以上あれば可能である。
【0022】
本発明の請求項9に記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法は、異なる組の前記蓄熱式バーナ間にて、燃焼空気を供給する燃焼サイクルと非酸化性ガスを供給する非燃焼サイクルとを交番させることを特徴とするものである。
これは、異なるバーナペアの間で、燃焼サイクルと非燃焼サイクルの交番させる方法である。これによって、炉内雰囲気温度の更なる均一化が可能となるとともに、蓄熱式バーナの燃焼を均等に負担させることができる。
【0023】
本発明の請求項10に記載の蓄熱式バーナ炉は、蓄熱式バーナと、蓄熱体を有する非燃焼式の蓄熱式ポートと、前記蓄熱式ポートの蓄熱体を通じて炉内の燃焼排ガスを排出する排気手段と、前記蓄熱式ポートの蓄熱体を通じて非酸化性ガスを炉内に供給する非酸化性ガス供給手段と、を備え、燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整してなることを特徴とするものである。
この蓄熱式バーナ炉によって、請求項1、4、5、6、7に記載の発明方法を実施することができる。
【0024】
本発明の請求項11に記載の蓄熱式バーナ炉は、複数の蓄熱式バーナと、前記複数の蓄熱式バーナのうちの一部または全部に設けられ、蓄熱体を通じて非酸化性ガスを炉内に供給する非酸化性ガス供給手段と、を備え、燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整してなることを特徴とするものである。
この蓄熱式バーナ炉によって、請求項2、3、4、5、8、9に記載の発明方法を実施することができる。
【0025】
本発明の蓄熱式バーナ炉において、低酸素濃度での安定燃焼が可能なことについて説明する。
図4は、雑誌「省エネルギー」、Vol.48、No.10(1996年発行)に掲載された論文「進展する高温空気燃焼技術」に記載された図であり、酸素と窒素の混合物である希釈空気の温度と希釈空気中の酸素濃度を変数として、天然ガスの燃焼可能範囲を整理して示したものである。図4において、「不燃域」は安定した燃焼ができない範囲で、工業用バーナの設計範囲としては不可である領域である。領域I(通常火炎域)は金属管式交換器による熱回収を行って燃焼空気を予熱する、従来の工業用バーナの設計範囲である。領域II(高温火炎領域)は、例えば蓄熱式バーナにより高温の予熱空気を得て燃焼させるが、空気と燃料とをバーナ直近で混合させ高温の火炎を形成させる方式の工業用バーナの設計範囲であって、NOxの発生が問題となる領域である。領域III(新燃焼領域)は、燃焼空気を不活性ガスで希釈して酸素濃度を下げ、かつ希釈空気の温度を800〜900℃以上の高温に維持しつつ燃焼させる領域で、安定燃焼の継続が可能で、かつ低NOx燃焼が可能な領域である。したがって、蓄熱式バーナを用いて高温の希釈空気を得て領域IIIでの燃焼を行う燃焼システムを工業的に実現できれば、省エネルギーと低NOx燃焼の両立が可能となり、かつ現在の問題である、圧延後の表面欠陥の原因や最終製品の表面性状悪化の原因となる、被加熱物の酸化膜の抑制や形態制御、例えばスラブやビレットなどの鋼体に発生する酸化層の生成抑制、あるいは酸化膜組成の制御を行うことが可能となる。
【0026】
本発明によれば、例えば、蓄熱式バーナ炉の炉内雰囲気温度が900℃以上に保たれている状態において、蓄熱式バーナの燃焼排ガスのうち、蓄熱式バーナの蓄熱体と蓄熱式ポートの蓄熱体を通過した燃焼排ガスにより、次のサイクルで炉内に供給される酸素濃度が5〜20%に調整されるように、蓄熱式バーナへは空気を、蓄熱式ポートへは非酸化性ガス(例えば、窒素、二酸化炭素、NHガスなど)を供給する。蓄熱式バーナでは、800℃以上の高温になった空気と燃料が混合して燃焼し、その近傍には蓄熱式ポートから供給された800℃以上の高温になった非酸化性ガスが存在することにより、炉内の低酸素化と被加熱物の酸化膜形成抑制・酸化皮膜制御が可能になる。これにより、蓄熱式バーナにより高効率で熱回収を行い、非酸化性ガスとの混合により酸素濃度を調整して図4の領域IIIでの燃焼を実現することができる。炉内雰囲気温度が900℃以上の場合には、燃焼空気の酸素濃度が5%以上であれば、局所的でも安定に領域IIIでの燃焼とすることができる。よって、酸素濃度の下限を5%とする。また、燃焼空気の酸素濃度が20%を超えると、NOxの発生量が規制値に近づくので、酸素濃度の上限を20%としている。
【0027】
また、蓄熱式バーナを蓄熱式ポートとして併用した場合でも、同様の燃焼が可能になる。炉内雰囲気温度が1100℃以上となると、燃焼空気中の酸素濃度が3%以上あれば、図4の領域IIIでの燃焼が可能である。また、燃焼空気中の酸素濃度が15%を超えると、NOxの発生量が規制値に近づく。よって、炉内雰囲気温度が1100℃以上の場合には、酸素濃度の範囲を3〜15%としている。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本発明の蓄熱式バーナ炉の概要を示す図である。図1において、従来例を示した図3と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
図1に示す蓄熱式バーナ炉1は、蓄熱式バーナ2と非燃焼式の蓄熱式ポート15がそれぞれ2台ずつ設置されている例である。(あ)、(う)が蓄熱式バーナ2であり、(い)、(え)が蓄熱式ポート15を示す。蓄熱式バーナ2および蓄熱式ポート15の設置台数は特に限定されない。また、ここでは図示していないが、通常の燃焼式バーナを併設してもよい。蓄熱式バーナ2は従来のものと同じ構造のバーナに非酸化性ガス(例えば、窒素ガス)を供給する非酸化性ガス配管17を付加したものである。非酸化性ガス配管17には非酸化性ガスの流量調整弁18が設けられている。非酸化性ガスは蓄熱式バーナ2の蓄熱体3を通過させて炉内に供給される。また、蓄熱体3の高温側に炉内の温度を確認するための温度計19が設置してある。
【0029】
蓄熱式ポート15は、蓄熱式バーナ2の蓄熱体3と同様の蓄熱体16を有するポートとして構成され、したがって燃焼は行わない。そしてこの蓄熱式ポート15には、蓄熱式バーナ2と同様に、炉内の燃焼排ガスを蓄熱体16を通過させて大気へ放出するための排ガス配管9と、非酸化性ガスを蓄熱体16を通過させて炉内に供給するための非酸化性ガス配管17とが接続されている。非酸化性ガス配管17には流量調整弁18が、排ガス配管9には排ガス放散弁20が取り付けられている。
【0030】
この蓄熱式バーナ炉1における燃焼について説明すると、例えば蓄熱式バーナ(あ)、(う)が交番燃焼状態にある場合には、蓄熱式バーナ(あ)、(う)の燃料調節弁5が開いて燃料が供給される。また、蓄熱式バーナ(あ)、(う)の燃焼空気調節弁8が開き、燃焼排ガス弁11が閉じて蓄熱体3に空気が押し込まれる。蓄熱体3を通過した空気はその蓄熱体3から熱を奪って高温の予熱空気となって炉内側に供給され、燃料と混合して燃焼する。
一方、このとき蓄熱式ポート(い)では、排ガス放散弁20が開き、非酸化性ガス流量調整弁18が閉じており、燃焼排ガスは蓄熱ポート(い)から図示しない排気ファンにより吸引され、その蓄熱体16を通過した排ガスは蓄熱体16に熱を与えた後に排ガス配管9を経て煙道12へと流れ大気に放散される。また、蓄熱式ポート(え)では、非酸化性ガス流量調整弁18が開き、排ガス放散弁20は閉じられ、この実施例では窒素ガスが蓄熱体16から熱を奪って高温の窒素ガスとなって炉内に流れ込む。これによって、燃焼空気の酸素濃度を調整することができ、低酸素濃度での燃焼が可能となる。また、別の蓄熱式バーナからも同様に高温の非酸化性ガスを炉内に供給することができる。余剰の燃焼排ガスがある場合には加熱炉の煙道12からも排気される。このとき、本実施例のハニカム式蓄熱体を備えた蓄熱式バーナにおいては、例えば炉内ガス温度が1300℃の場合、バーナ(あ)、(う)の蓄熱体3に供給される燃焼空気の温度を約30℃とすると、蓄熱体3で加熱されて約1250℃の予熱空気となる。また、燃焼排ガスの大部分は約1300℃の温度でバーナ(あ)、(う)の蓄熱体3および蓄熱式ポート(い)、(え)の蓄熱体16を通過し、これを加熱して約200℃で排気される。
【0031】
燃焼空気の酸素濃度は、蓄熱式バーナ2に供給する空気量と蓄熱式ポート15および/または蓄熱式バーナ2に供給する非酸化性ガスの供給量との割合によって調整される。そしてさらに、本実施例においては、蓄熱体3の高温側に温度計19を設置して、炉内雰囲気温度を監視しており、酸素濃度が温度計19により測定された炉内雰囲気温度に応じた目標酸素濃度となるように、供給する空気量および非酸化性ガス供給量の割合を変更することにしている。
【0032】
多くの炉条件で試験を行ったところ、炉温(炉内雰囲気温度)が900℃以上1100℃未満では供給ガス平均酸素濃度が5%以上で蓄熱式バーナの安定燃焼が可能で、酸素濃度を増加させると安定燃焼は維持できるもののNOx発生量が増加する傾向がみられ、平均酸素濃度が20%を超えると規制値に近づくことが確認された。したがって、炉温が900℃以上1100℃未満では平均酸素濃度が5〜20%となるように調整して操業することとしている。また、炉温が1100℃以上では平均酸素濃度が3%以上で蓄熱式バーナの安定燃焼が可能で、酸素濃度を増加させると安定燃焼は維持できるもののNOx発生量が増加する傾向がみられ、平均酸素濃度が15%を超えると規制値に近づく。したがって、炉温が1100℃以上では平均酸素濃度が3〜15%となるように調整して操業する。
【0033】
図2は本発明の他の実施の形態を示すもので、蓄熱式バーナを蓄熱式ポートとして併用する場合を示すものである。すなわち、蓄熱式バーナ2に上記実施の形態と同様の非酸化性ガス配管17を接続したものである。ここでは同様に、(あ)、(う)を蓄熱式バーナ2として、(い)、(え)を蓄熱式ポート15として使用できるが、被加熱材の均一加熱温度を高め、さらに酸化膜の生成を抑制するためには、蓄熱式バーナ(あ)、(う)、蓄熱式ポート(い)、(え)と、蓄熱式バーナ(い)、(え)、蓄熱式ポート(あ)、(う)を交互に交番作動させるとよい。すなわち、ある所定の期間においては、蓄熱式バーナ(あ)、(う)を交番燃焼させ、このとき蓄熱式ポート(い)、(え)を交番作動させて非酸化性ガスの供給と燃焼排ガスの排気を行い、次の所定の期間においては、蓄熱式バーナ(い)、(え)を交番燃焼させ、このとき蓄熱ポート(あ)、(う)を交番作動させて非酸化性ガスの供給と燃焼排ガスの排気を行うようにする。このように複数組の蓄熱式バーナ間において、燃焼空気を供給する燃焼サイクルと非酸化性ガスを供給する非燃焼サイクルを交番させることによって、炉温の温度分布が均一化され、かつ、低酸素濃度の安定燃焼のもとで炉温を高めることができ、被加熱材の酸化膜の生成を抑制することができる。もちろん、NOxの発生も抑制することができる。
【0034】
また、加熱能力が足りない場合には、例えば4台のうち3台を蓄熱式バーナに、1台を蓄熱ポートとして使用することも、4台全部を蓄熱式バーナとして使用することも可能である。本実施例では、4台でしか示してないが、例えば、20台、あるいは30台で構成されるような蓄熱式バーナ炉であれば、蓄熱式バーナの台数と、蓄熱ポートの台数の割合を自由に変更できることはいうまでもないことで、加熱パターンや加熱時間などに応じて、自由な運用が可能である。
【0035】
なお、以上の実施例では、非酸化性ガスに窒素ガスを使用しているが、アルゴンガスのような不活性ガスでも、またNHガスのような還元性ガスでも十分問題ない。ただし、NHガスでは発熱量を考慮する必要があること、またカーボンを含むような、二酸化炭素のような非酸化性ガスでは、乖離による酸素の発生があるために必ずしも好ましくはないが許容範囲であれば使用できる。望ましくは不活性ガスが問題なく使用できる。
【0036】
また、以上の各実施形態では、蓄熱式バーナに非酸化性ガス配管を接続したものを示したが、非酸化性ガス配管のない従来と同様な蓄熱式バーナを用いることもできる。本発明においては、加熱炉の設置される蓄熱式バーナと蓄熱式ポート(非燃焼式の蓄熱式ポートおよび蓄熱式バーナを含む)の組み合わせおよび台数について各種の態様が考えられる。例えば
▲1▼図3の蓄熱式バーナ2台以上+図1の蓄熱式ポート1台以上
▲2▼図3の蓄熱式バーナ2台以上+図1の蓄熱式バーナ1台以上
▲3▼図1の蓄熱式バーナ2台以上+通常の燃焼式バーナ1台以上
▲4▼図1の蓄熱式バーナ1台以上+図1の蓄熱式ポート1台以上+通常の燃焼式バーナ1台以上
などであり、これらの組み合わせにおいても本発明を好適に実施することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、炉内の酸素濃度を自由に調整することができ、低酸素濃度での燃焼が可能となるので、被加熱物の酸化膜形成抑制および酸化膜制御ができるようになる。一方、加熱性能としては従来方法と遜色がなく、また窒素酸化物の発生量も抑制することが可能となる。さらに、従来の蓄熱式バーナを利用して簡単に構成することができるので、設備構成が簡単にでき、かつ設備費も安価につくものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蓄熱式バーナ炉の概要図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す概要図である。
【図3】従来の蓄熱式バーナ炉の概要図である。
【図4】希釈空気の温度と希釈空気中の酸素濃度を変数とする天然ガスの燃焼可能範囲を示す図である。
【符号の説明】
1 蓄熱式バーナ炉
2 蓄熱式バーナ
3 蓄熱体
4 燃料配管
5 燃料調節弁
6 空気配管
7 空気供給ファン
8 燃焼空気調節弁
9 排ガス配管
10 排気ファン
11 燃焼排ガス弁
12 煙道
15 蓄熱式ポート
16 蓄熱体
17 非酸化性ガス配管
18 非酸化性ガス流量調整弁
19 温度計
20 排ガス放散弁
Claims (11)
- 蓄熱式バーナと、燃焼はしないが燃焼排ガスの熱を蓄えることができる蓄熱体を有する非燃焼式の蓄熱式ポートとを加熱炉に設置し、前記蓄熱式バーナの燃焼中に前記蓄熱式ポートの蓄熱体を通じて高温の非酸化性ガスを炉内に供給することにより、燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整することを特徴とする蓄熱式バーナ炉の操業方法。
- 加熱炉に複数の蓄熱式バーナを設置し、そのうちの少なくとも1つを燃焼はしないが燃焼排ガスの熱を蓄えることができる蓄熱体を有する非燃焼式の蓄熱式ポートとして使用し、前記蓄熱式バーナの燃焼中に前記蓄熱式ポートの蓄熱体を通じて高温の非酸化性ガスを炉内に供給することにより、燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整することを特徴とする蓄熱式バーナ炉の操業方法。
- 加熱炉に複数の蓄熱式バーナを設置し、前記蓄熱式バーナの燃焼中に別の蓄熱式バーナの蓄熱体を通じて高温の非酸化性ガスを炉内に供給することにより、燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整することを特徴とする蓄熱式バーナ炉の操業方法。
- 炉内雰囲気温度が900℃以上に保たれた状態においては、燃焼空気を800℃以上の温度で前記蓄熱式バーナから炉内に供給し、その際前記蓄熱式ポートまたは別の蓄熱式バーナに非酸化性ガスを供給することにより、供給ガス平均酸素濃度を5%から20%となるように調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法。
- 炉内雰囲気温度が1100℃以上に保たれた状態においては、燃焼空気を800℃以上の温度で前記蓄熱式バーナから炉内に供給し、その際前記蓄熱式ポートまたは別の蓄熱式バーナに非酸化性ガスを供給することにより、供給ガス平均酸素濃度を3%から15%となるように調整することを特徴とすることを請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法。
- 1つの前記非燃焼式の蓄熱式ポートにて、燃焼排ガスの吸引排出と非酸化性ガスの供給とを交番させることを特徴とする請求項1記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法。
- 同一組の前記非燃焼式の蓄熱式ポート間にて、燃焼排ガスの吸引排出と非酸化性ガスの供給とを交番させることを特徴とする請求項1記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法。
- 同一組の前記蓄熱式バーナ間にて、燃焼空気を供給する燃焼サイクルと非酸化性ガスを供給する非燃焼サイクルとを交番させることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法。
- 異なる組の前記蓄熱式バーナ間にて、燃焼空気を供給する燃焼サイクルと非酸化性ガスを供給する非燃焼サイクルとを交番させることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の蓄熱式バーナ炉の操業方法。
- 蓄熱式バーナと、
蓄熱体を有する非燃焼式の蓄熱式ポートと、
前記蓄熱式ポートの蓄熱体を通じて炉内の燃焼排ガスを排出する排気手段と、
前記蓄熱式ポートの蓄熱体を通じて非酸化性ガスを炉内に供給する非酸化性ガス供給手段と、を備え、
燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整してなることを特徴とする蓄熱式バーナ炉。 - 複数の蓄熱式バーナと、
前記複数の蓄熱式バーナのうちの一部または全部に設けられ、蓄熱体を通じて非酸化性ガスを炉内に供給する非酸化性ガス供給手段と、を備え、
燃焼空気と非酸化性ガスの供給量の割合を変えることで、炉内燃焼を低酸素濃度に調整してなることを特徴とする蓄熱式バーナ炉。
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