JP3923112B2 - 多層絶縁電線およびこれを用いた変圧器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れ、電気、電子機器などに組み込む変圧器の巻線やリード線として有用な多層絶縁電線およびこれを用いた変圧器に関する。
【0002】
【従来の技術】
変圧器の構造は、IEC規格(International Electrotechnical Communication Standard )Publication 950,65,335,601などによって規定されている。すなわち、これらの規格では、巻線において導体を被覆するエナメル皮膜は絶縁層として認定しない、1次巻線と2次巻線の間には補助絶縁も含めて少なくとも3層の絶縁層が形成されているかまたは絶縁層の厚みは0.4mm以上であること、例えば1次巻線と2次巻線の沿面距離は、印加電圧によっても異なるが、5mm以上であること、また1次側と2次側に3000Vを印加した時に1分以上耐えること、等が規定されている。
【0003】
そのため、現在、主流である変圧器では、図1で例示するような断面構造が採用されている。すなわち、フェライトコア1に鍔付きのボビン2が嵌め込まれ、ボビン2の周辺両側端に沿面距離を確保するための絶縁バリア3が配置された状態でエナメル被覆された1次巻線4が巻回された後、この1次巻線4の上に絶縁テープ5を少なくとも3層巻回しさらにこの絶縁テープの上に沿面距離を確保するための絶縁バリア3を配置した後、同じくエナメル被覆された2次巻線6が巻回された構造である。
【0004】
ところで、近年、図1に示した断面構造の変圧器に代わり、図2で示したように絶縁バリア3や絶縁テープ層5を含まない構造の変圧器が登場し始めている。この変圧器は、図1の構造の変圧器に比べて全体を小型化することができ、また、絶縁テープの巻回作業を省略できるなどの利点を備えている。
【0005】
図2で示した変圧器を製造する場合、用いる1次巻線4および2次巻線6では、いずれか一方もしくは両方の導体4a(6a)の外周に3層の絶縁層4b(6b)、4c(6c)、4d(6d)が形成されていること、しかもこれらの絶縁層間では互いの層間剥離が可能であることが、前記したIEC規格との関係で必要である。
【0006】
このような巻線としては、導体の外周に絶縁テープを巻回して1層目の絶縁層を形成し、さらにその上に、絶縁テープを巻回して2層目の絶縁層、3層目の絶縁層を順次形成して互いに層間剥離する3層構造の絶縁層を形成したものが知られている。また、ポリウレタンによるエナメル被覆がなされた導体の外周にフッ素樹脂を順次押出被覆して、全体として3層構造の押出被覆層を絶縁層とする巻線が知られている(実開平3−56112号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の巻線の場合、絶縁テープの巻回作業が不可欠であるため生産性が著しく低くなり、製造コストが上昇するという問題が生じ、後者の巻線の場合には、絶縁層はフッ素系樹脂で形成されているので耐熱性が良好であるという利点は備えているが、一方では層間の密着性が悪いため絶縁電線としての信頼性に欠けるという点で問題がある。
【0008】
このような問題点を解決するために、1層目と2層目の絶縁層をいずれもポリエステル系樹脂の押出被覆で形成し、最外層である3層目の絶縁層をポリアミド樹脂で形成した3層絶縁電線が検討されている(特開平6−223634号公報)。
【0009】
しかしながら、最近、変圧器の小型化に対する要求が強く、小型化による変圧器の発熱アップが問題化し、前述の3層絶縁電線が有する耐熱クラスE種(120℃)では対応できない需要が数多く登場してきている。このような需要に応えるには、さらに耐熱性を向上させ、耐熱クラスB種(130℃)の耐熱性を有する絶縁電線の開発が必要となっている。
【0010】
本発明は、耐熱性向上の要求を満たすとともに、コイル用途として要求される耐熱衝撃性、すべり性等の必要特性を兼ね備えた3層絶縁電線とそれを用いた変圧器の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、多くの耐熱性樹脂(例えばポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等)について、上記要求特性の他、薄肉押出の容易さ、生産性、可撓性等、多方面から鋭意検討した結果、絶縁層として、ポリエーテルスルホンを主体としてこれにポリアミド樹脂を組み合わせて使用することで目的を達成できることを実験により確認し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明においては、導体上に3層の絶縁層を有する多層絶縁電線において、前記絶縁層は、最外層がポリアミド樹脂の押出被覆層からなり、その他の層がポリエーテルスルホンの押出被覆層からなることを特徴とする多層絶縁電線が提供される。また、この多層絶縁電線を用いた変圧器が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の多層絶縁電線において最外層以外の絶縁層は、ポリエーテルスルホンの押出被覆層からなる。
【0014】
本発明で用いるポリエーテルスルホンは、化1に示される(a)〜(c)のいずれかの繰り返し単位を有する樹脂である。
【0015】
【化1】
【0016】
ポリエーテルスルホンは市販品を用いることができ、住友化学工業(株)製のビクトレックス3600G,4100Gやアモコ(株)製のレーデルA−100,A−200,A−300等が使用できる。
【0017】
本発明の多層絶縁電線では、多層の絶縁層すべてをポリエーテルスルホンで形成するものではない。ポリエーテルスルホンを絶縁層として用いると耐熱性の向上のほか、薄肉押出成形性等多くの要求にマッチするものではあるが、絶縁層すべてをポリエーテルスルホンで形成すると、熱衝撃特性の低下が大きく、外層の亀裂が導体まで達してしまう。
【0018】
本発明の多層絶縁電線では、耐熱性を確保するために、最外層以外の絶縁層にはポリエーテルスルホンを使用し、最外層にはポリアミド樹脂を使用する。ポリアミド樹脂の層を最外層に形成することにより、ポリエーテルスルホンの欠点である熱衝撃による亀裂発生を防止し、熱衝撃特性の低下を防止することができると同時に、コイル加工性の向上を図ることができる。
【0019】
本発明において最外層の絶縁層として好適に用いられるポリアミド樹脂としては、ナイロン6,6(ユニチカ(株)製A−125、東レ(株)製アミランCM−3001)、ナイロン4,6(ユニチカ(株)製F−5000、帝人(株)製C2000)、ナイロン6,T(三井石油化学(株)製アーレンAE−4200)等を挙げることができる。
【0020】
また、本発明の多層絶縁電線における絶縁層に用いられるポリエーテルスルホン、ポリアミド樹脂には、必要に応じて着色剤、酸化防止剤等を添加することができる。
【0021】
本発明の多層絶縁電線は、導体の外周に所望の厚みの1層目の絶縁層を押出被覆し、次いで、この1層目の絶縁層の外周に所望の厚みの2層目の絶縁層を押出被覆するという方法で、順次絶縁層を押出被覆することで製造される。
【0022】
【実施例】
(実施例1〜3、比較例1〜4)線径0.4mmの軟銅線上に、表1に示す材料を各層30μmの厚みで順次押出被覆して絶縁層を形成し、60μmまたは90μmの厚みの絶縁層を有する多層絶縁電線を製造した。なお、押出被覆時のダイヘッドの温度は、それぞれ、ポリエーテルスルホン370℃、6,6ナイロン280℃、4,6ナイロン300℃、6,Tナイロン340℃に設定した。
【0023】
実施例1〜3、比較例1〜4の絶縁電線について、耐熱性、耐熱衝撃性、すべり性の項目で下記の試験を行った。これらの試験結果を表1に示す。
【0024】
耐熱性:(IEC Publication 172に準拠)
得られた多層絶縁電線を27.0MPaのテンションがかかるように2個撚りしたサンプルを作製し、所定の3温度条件にて評価を行った。なお、チェック電圧は絶縁層の厚みが60μmの絶縁電線は1.44kVで、90μmのものは2.16kVとし、それぞれ1秒間印加した。この結果より、絶縁電線が耐熱B種(130℃)を有するかどうか確認した。
【0025】
耐熱衝撃性:(IEC Publication 851-6.3.1に準拠)
10倍径のマンドレルに絶縁電線を118MPaのテンションがかかるように10ターン巻き付けてサンプルとした。サンプルを225℃、30分間加熱した後、絶縁電線の外観を観察し、亀裂等の外観不良の有無を調べた。亀裂が1カ所でも生じた絶縁電線は、耐熱衝撃性不良と判定した。
【0026】
すべり性:
図3に摩擦係数を測定するための装置の説明図を示す。図3(イ)に示すように絶縁電線9を2列固定した上に、絶縁電線9に直交するように絶縁電線7を巻き付けたスライダー8を配置し、図3(ロ)に示すようにスライダー8に荷重10を加え、絶縁電線間の摩擦係数を算出した。摩擦係数が0.1未満であればすべり性良好、0.1以上であれば不良と判定した。
【0027】
【表1】
【0028】
実施例1〜3に示すように、ポリエーテルスルホンを絶縁層とし、ポリアミド樹脂を最外層の絶縁層とした多層絶縁電線は、耐熱クラスB種(130℃)に相当する耐熱性を有するとともに、絶縁電線として十分な耐熱衝撃性、すべり性を有している。それに対して、比較例1〜4の絶縁電線は絶縁層がポリエーテルスルホンとポリアミド樹脂から形成されているものの、その組み合わせが不適当であるために、絶縁電線として必要な耐熱性、耐熱衝撃性、すべり性のいずれかの特性が劣るものとなっている。
【0029】
【発明の効果】
本発明の多層絶縁電線は、絶縁層がポリエーテルスルホンとポリアミド樹脂が特定の順序で押出被覆されて形成されているために、使用耐熱性向上の要求を満たすとともに、コイル用途として要求される耐熱衝撃性、すべり性等の必要特性をすべて兼ね備えている。また、この多層絶縁電線を用いた変圧器は、コイル占積率を小さくすることができ、省スペース化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来構造の変圧器の一例を示す断面図である。
【図2】3層絶縁電線を巻線とする構造の変圧器の例を示す断面図である。
【図3】摩擦係数を測定するための装置を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 フェライト
2 ボビン
3 絶縁バリア
4 1次巻線
4a 導体
4b,4c,4d 絶縁層
5 絶縁テープ
6 2次巻線
6a 導体
6b,6c,6d 絶縁層
7 多層絶縁電線
8 スライダー
9 多層絶縁電線
10 荷重
Claims (2)
- 導体上に3層の絶縁層を有する多層絶縁電線において、前記絶縁層は、最外層がポリアミド樹脂の押出被覆層からなり、その他の層がポリエーテルスルホンの押出被覆層からなることを特徴とする多層絶縁電線。
- 請求項1の多層絶縁電線を用いた変圧器。
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