JP3922097B2 - 縦結合型マルチモード圧電フィルタ及び電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯域フィルタなどに用いられる圧電フィルタに関し、より詳細には、圧電縦効果を利用しており、かつ異なる次数のモードの結合を利用した縦結合型のマルチモード圧電フィルタ及び電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、帯域フィルタとして様々な圧電フィルタが用いられている。数MHz〜数十MHz帯の周波数領域においては、小型化が容易であり、コストが安価な二重モード圧電フィルタが主に用いられている。
【0003】
この種の二重モード圧電フィルタは、例えば特開平5−327401号公報などに開示されている。
図15は、厚み縦振動を利用した従来の二重モード圧電フィルタを示す断面図である。
【0004】
圧電フィルタ201は、厚み方向に分極処理された圧電板202を有する。圧電板202の上面には、一対の励振電極203,204が形成されており、下面には励振電極203,204と圧電板202を介して対向するように共通励振電極205が形成されている。
【0005】
使用に際しては、上面の一方の励振電極203と共通励振電極205との間に入力信号を印加し、圧電板202を励振させる。この場合、圧電板202が励振され、図16(a)に示す対称モードと、図16(b)に示す反対称モードが生じ、これら双方のモードが結合されてフィルタ帯域が構成される。出力は、励振電極204とアース電極205との間で取り出される。
【0006】
なお、上記のように厚み縦振動モードを利用した二重モード圧電フィルタの他、圧電板202を上面に平行な方向に分極処理し、それによって厚み滑りモードを利用した二重モード圧電フィルタも知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の圧電フィルタ201では、対称モードと反対称モードの結合の強さは、励振電極203,204間の間隔に依存し、この間隔の大きさにより対称モードと反対称モードの周波数差が決定され、通過帯域が決められることになる。
【0008】
すなわち、広帯域フィルタを得るには、励振電極203,204間の間隔を狭くし、両方のモードの結合度を高め、かつ双方のモードの周波数差を大きくする必要があった。
【0009】
他方、励振電極203,204は、通常、導電ペーストのスクリーン印刷により形成されている。スクリーン印刷法では、励振電極203,204の間隔を狭くするにも限界があった。他方、フォトリソグラフィーにより励振電極203,204を形成すれば、励振電極203,204間の間隔を小さくすることができるものの、コストが高くつくことになる。
【0010】
また、たとえ、励振電極203,204間の間隔を狭くすることができたとしても、圧電フィルタ201において入出力間の静電容量が増加し、減衰量が小さくなるという問題もあった。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、広帯域化を図ることができ、かつ大きな帯域外減衰量を得ることができ、さらに安価に製造し得る縦結合型のマルチモード圧電フィルタを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、圧電縦効果を用いて励振された振動の高調波を利用したものである。本発明に係る圧電フィルタは、より具体的には、互いに平行に配置された4以上の励振電極及び前記励振電極間に配置されており、かつ励振電極に直交する方向または励振電極と平行な方向において同一方向に分極処理されている複数の圧電体層を有し、積層方向に直交する横断面が矩形の積層型圧電体と、入力電極、出力電極及びアース電極とを備え、前記複数の励振電極が、前記入力電極に接続される第1のグループの励振電極と、前記出力電極に電気的に接続される第2のグループの励振電極と、前記アース電極に接続される第3のグループの励振電極とを有し、前記第1のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが、並びに第2のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが積層方向において交互に配置されており、入力電極とアース電極との間に入力信号が印加されると、異なる次数のモードであって、隣り合う3つの次数の高次のモードの振動が励振されかつ結合され、前記出力電極とアース電極とから出力信号が取り出されるように構成されており、前記積層型圧電体の矩形の横断面の一辺の方向である厚み寸法をTとし、隣り合う励振電極間の距離をDとしたときに、T/Dが0.9以下であり、前記積層型圧電体に連なるように設けられており、前記厚み寸法Tよりも大きな厚みを有する圧電体部分をさらに備え、前記積層型圧電体及び圧電体部分を構成するための圧電基板において、該圧電基板の一方面に複数の溝が形成されており、該複数の溝間に挟まれた圧電基板部分が前記積層圧電体を構成しており、残りの圧電基板部分が前記圧電体部分を構成していることを特徴とする縦結合型マルチモード圧電フィルタが提供される。
また、本発明によれば、互いに平行に配置された4以上の励振電極及び前記励振電極間に配置されており、かつ励振電極に直交する方向または励振電極と平行な方向において同一方向に分極処理されている複数の圧電体層を有し、積層方向に直交する横断面が矩形の積層型圧電体と、入力電極、出力電極及びアース電極とを備え、前記複数の励振電極が、前記入力電極に接続される第1のグループの励振電極と、前記出力電極に電気的に接続される第2のグループの励振電極と、前記アース電極に接続される第3のグループの励振電極とを有し、前記第1のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが、並びに第2のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが積層方向において交互に配置されており、入力電極とアース電極との間に入力信号が印加されると、異なる次数のモードであって、隣り合う3つの次数の高次のモードの振動が励振されかつ結合され、前記出力電極とアース電極とから出力信号が取り出されるように構成されており、前記積層型圧電体の矩形の横断面の一辺の方向である厚み寸法をTとし、隣り合う励振電極間の距離をDとしたときに、T/Dが0.9以下であり、前記積層型圧電体に連なるように設けられており、前記厚み寸法Tよりも大きな厚みを有する圧電体部分をさらに備え、前記積層型圧電体及び前記圧電体部分を構成するための圧電基板の一方面に溝が形成されており、該溝の底部と圧電基板の他方主面との間の部分が前記積層圧電体を構成しており、前記溝の両側の圧電基板部分が前記圧電体部分を構成していることを特徴とする、圧電縦効果を利用した縦結合型マルチモード圧電フィルタが提供される。
【0013】
本発明のある特定の局面では、入力電極、出力電極及びアース電極は、上記圧電体部分に形成されており、それによって積層型圧電体が小さい場合であっても、積層型圧電体に連なる該圧電体部分に入力電極、出力電極及びアース電極を容易に形成することができると共に、外部との電気的接続が容易となる。
【0016】
本発明に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタでは、上記積層型圧電体は単一である必要はなく、複数構成されていてもよく、本発明のある特定の局面では、上記圧電基板において複数の積層型圧電体が構成されている。
【0017】
本発明に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタで用いられる振動モードは特に限定されないが、本発明のある特定の局面では、異なる次数の振動モードは圧電縦効果を利用した長さ振動モードの高調波であり、他の特定の局面では、圧電縦効果を利用した厚み縦振動の高調波である。
【0018】
本発明に係る第1の電子部品は、ケース基板と、ケース基板上に搭載されており、かつ本発明に従って構成された縦結合型マルチモード圧電フィルタと、該縦結合型マルチモード圧電フィルタを覆うようにケース基板に固定されたキャップ材とを備える。すなわち、ケース基板とキャップ材とからなるパッケージを用いた電子部品として、本発明に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタを提供することができる。
【0019】
本発明に係る第2の電子部品は、ケース基板と、ケース基板上に形成された反射層と、反射層を介してケース基板に固定された本発明に従って構成された縦結合型マルチモード圧電フィルタとを備える。ここで、反射層の音響インピーダンス値Z2は、縦結合型マルチモード圧電フィルタの積層型圧電体を構成している材料の音響インピーダンス値Z1及びケース基板の音響インピーダンス値Z3よりも小さくされている。従って、マルチモード圧電フィルタから反射層に伝搬してきた振動が、反射層とケース基板との界面で反射されるため、反射層を介してマルチモード圧電フィルタがケース基板が固定されているが、固定構造によるフィルタ特性の劣化が生じ難い。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0021】
図2(a)は、未だ公知ではない、縦結合型マルチモード圧電フィルタの概略構成を示す図である。縦結合型マルチモード圧電フィルタ1は、横断面が矩形の角棒状の圧電体2を有する。圧電体2の長さ方向に沿って、複数の励振電極3〜18が配置されている。励振電極3,18は、圧電体2の端面2a上に形成されており、励振電極18は他方の端面2b上に形成されている。残りの励振電極4〜17は内部電極の形態で構成されている。
【0022】
また、励振電極3,5,7,9,12,14,16,18は、圧電体2の上面2cから下面2d側に延びており、但し下面2dには至らないように形成されている。これに対して、励振電極4,6,8,10,11,13,15,17は、圧電体2の下面2dから上面2c側に延びており、但し上面2cには至らないように形成されている。
【0023】
第1のグループの励振電極3,5,7,9に電気的に接続されるように、圧電体2の上面2c上に、入力電極19が形成されている。また、第2のグループの励振電極12,14,16,18に電気的に接続されるように出力電極20が上面2c上に形成されている。圧電体2の下面2dには、アース電極21が形成されており、アース電極21は、第3のグループの励振電極4,6,8,10,11,13,15,17に電気的に接続されている。
【0024】
圧電体2においては、励振電極10よりも端面2d側において励振電極3,5,7,9と励振電極4,6,8,10とが圧電体2の長さ方向、すなわち励振電極の積層方向において交互に配置されている。同様に、圧電体2の励振電極11よりも端面2b側においては、励振電極11,13,15,17と、励振電極12,14,16,18とが圧電体2の長さ方向において交互に配置されている。
【0025】
圧電体2は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスのような圧電セラミックスからなり、長さ方向に分極処理されている。
圧電フィルタ1において、入力電極19とアース電極21との間に交流電圧を印加した場合、圧電縦効果により、長さモードの振動が励振される。特に、図2(b)に示すように、対称モードでは、長さ振動の14倍波が強く励振され、反対称モードでは、図2(c)及び(d)に示す13倍波及び15倍波が強く励振される。従って、これらの13倍波〜15倍波が結合されて、フィルタ特性か得られる。
【0026】
このようなマルチモード圧電フィルタ1では、使用する振動モードは特に限定されず、圧電体2の形状により、種々の振動モードが用いられる。また、励振電極の数についても、利用しようとする高調波の次数に応じて適宜変更され得る。
【0027】
図3は、上記マルチモード圧電フィルタ1の具体例を示す斜視図である。図3に示すマルチモード圧電フィルタ1Aでは、矩形板状の圧電体31が用いられている。圧電体31は、図示の矢印Pで示す方向に、すなわち圧電体31の端面31a,31bを結ぶ方向に分極処理されている。
【0028】
圧電体31には、圧電フィルタ1と同様に励振電極3〜18が形成されている。励振電極3〜18は、圧電体31の上面31cと下面31dとを結ぶ方向において中央領域において、圧電体層を介して重なり合うように配置されている。
【0029】
また、圧電フィルタ1Aでは、入力電極19及び出力電極20は、圧電体31の上面31cから側面31fに至るように形成されている。同様に、アース電極21についても、圧電体31の下面31dから側面31fに至るように形成されている。
【0030】
圧電フィルタ1Aでは、入力電極19と出力電極20との間に交流電圧を印加した場合、圧電縦効果を利用した厚み縦振動モードが強く励振される。
いま、隣り合う異なる電位に接続される励振電極間の圧電体層の厚みDを40μm、圧電体31の厚み、すなわち側面31fと反対側の側面31gとの間の距離である厚み寸法Tを32μm、圧電体31の長さL、すなわち端面31a,31bを結ぶ方向の長さLを620μm、幅すなわち上面31cと下面31dとを結ぶ方向の寸法の寸法Wを890μmとし、圧電体31をチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスで構成した。このようにして構成された圧電フィルタ1Aを駆動した場合に励振される振動モードを図4に示す。図4の破線が対称モードを示し、対称モードでは厚み縦振動の14倍波が効率よく励振されている。また、図14の実線は反対称モードを示し、反対称モードでは厚み縦振動の高調波の13倍波及び15倍波が効率よく励振される。図5は、マルチモード圧電フィルタ1Aのフィルタ特性を示す図である。
【0031】
図5から明らかなように、上記13倍波〜15倍波が係合されて、広帯域のフィルタ特性の得られていることがわかる。
従来の二重モード圧電フィルタ201では、圧電板202の一方面に形成されている励振電極203,204間の間隔に対称モード及び反対称モードの周波数差が依存していた。これに対して、マルチモード圧電フィルタ1Aでは、上記13倍波〜15倍波の周波数差は、高次モードの次数の比だけ離れており、励振電極間の間隔に依存しない。従って、所望とする帯域幅に応じて高次モードを選択すればよく、それによって所望とする帯域幅を容易に実現し得る。
【0032】
例えば、マルチモード圧電フィルタ1Aでは、励振電極3〜18間に15層の圧電体層が構成されており、13倍波〜15倍波が強く励振されていたが、圧電体層の数を変更することにより、異なる次数の3つの高調波を強く励振でき、同様に三重モード圧電フィルタを構成することができる。
【0033】
また、従来の二重モード圧電フィルタでは、広い帯域幅を得るには、励振電極203,204の精度を高めねばならなかったのに対し、マルチモード圧電フィルタ1Aでは、励振電極3〜18の形成精度をさほど高めることなく、所望とすく帯域幅や広い帯域幅を容易に実現することができる。
【0034】
さらに、圧電フィルタ1Aでは、減衰量は、入力電極19とアース電極21との間の静電容量CI-Gと、入力電極19と出力電極20との間の静電容量CI-Oとの比に依存する。すなわち、CI-G/CI-Oが大きい程、言い換えればCI-Oが小さい程減衰量は大きくなる。圧電フィルタ1Aでは、入力電極に電気的に接続されている励振電極3,5,7,9と、出力電極に接続されている励振電極12,14,16,18との間に、アース電位に接続される励振電極10,11が設けられている。従って、CI-Oが小さくなり、帯域外減衰量の拡大が図られている。よって、従来の圧電フィルタ201に比べて、圧電フィルタ1Aでは、帯域外減衰量を大きくすることができる。
【0035】
なお、異なる電位に接続される励振電極間の圧電体層の厚みは必ずしも全て均一である必要はない。すなわち、厚みの異なる圧電体層を配置することにより、利用しようとする高調波の励振効率を高め、スプリアスとなる次数の高調波の励振効率を低下させてもよい。
【0036】
また、図6は、上記マルチモード圧電フィルタ1Aを2素子縦属接続して得られたフィルタ装置のフィルタ特性を示す図である。図6を図5と比較すれば明らかなように、2つのマルチモード圧電フィルタ1Aを縦属接続することにより、選択度を効果的に高め得ることがわかる。
【0037】
もっとも、図3に示したマルチモード圧電フィルタ1Aでは、厚み縦振動の高調波である13倍波〜15倍波を利用するために、圧電体31の厚み寸法Tが32μmと非常に薄くされている。従って、圧電フィルタ1Aは機械的強度が十分でなく、取り扱いに注意を払う必要がある。
【0038】
本願発明者は、マルチモード圧電フィルタ1Aにおいて、圧電体31の厚みTが、隣接する異なる電位に接続される励振電極間の圧電体層の厚みDと特定の関係にあれば、異なる次数の高調波を効率よく励振し得ることを見出した。すなわち、比T/Dを0.9以下とすれば、利用しようとする異なる次数の高調波を効率よく励振し得ることを見出した。これを図7を参照して説明する。
【0039】
図7は、圧電フィルタ1Aにおいて、比T/Dを種々異ならせた場合の電気機械結合係数の変化を示す図である。図7から明らかなように、T/Dが0.9以下であれば、電気機械結合係数が大きく、従って、十分な帯域幅を得ることができ、すなわち、13倍波〜15倍波を効率よく励振し得ることがわかる。
【0040】
もっとも、比T/Dを0.9以下とした場合、圧電体31の厚みTが圧電フィルタ1Aのように非常に薄くなる。従って、前述したように、圧電フィルタの機械的強度が低下しがちとなる。
【0041】
本発明は、このような状況に鑑み考え出されたものであり、比T/Dが0.9以下であり、十分な帯域幅を有する縦結合型のマルチモード圧電フィルタであって、さらに十分な機械的強度を有するものである。
【0042】
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施例に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタの外観を示す斜視図及び圧電体内の励振電極の配置を示す模式的斜視図である。
【0043】
縦結合型マルチモード圧電フィルタ51は、圧電基板52を用いて構成されている。圧電基板52は、全体が略矩形板状の形状を有し、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスのような圧電セラミックスにより構成されている。圧電基板52の上面中央において、側面52b,52cと平行に延びるように2本の溝52d,52eが形成されている。溝52d,52eの形成により、圧電基板52の中央には、突部が形成されており、該突部により、本発明における積層型圧電体52fが構成されている。
【0044】
また、積層型圧電体52fに連なる残りの圧電基板部分が本発明における圧電体部分52g,52hを構成している。
積層型圧電体52fは、前述した縦結合型マルチモード圧電フィルタ1Aと同様に構成されている。これをより具体的に説明する。
【0045】
圧電フィルタ51を得るにあたっては、図1(b)に示すように、矩形板状の圧電基板52を用意するが、この圧電基板52には、セラミックス一体焼成技術により、内部に複数の励振電極が形成されている。すなわち、図1(b)に一部のみを略図的に示すように、励振電極5〜8が配置されている。なお、圧電フィルタ1Aと同様に、積層型圧電体52fでは、励振電極3〜18が配置されているが、図1(b)では、一部の励振電極5〜8のみを模式的に示すこととする。励振電極5〜8は、圧電基板52において、側面52bまたは52cから相手方の側面52cまたは側面52b側に向かって中央領域に延ばされており、中央領域において圧電体層を介して重なり合っている。
【0046】
すなわち、図1(b)のAで示す領域において、複数の励振電極が圧電体層を介して重なり合っている。
圧電フィルタ51の製造に際しては、上記圧電基板52の上面に溝52d,52eが形成される。この場合、溝52d,52eは、積層型圧電体52fが上記励振電極の重なり合っている幅A内に位置するように形成される。
【0047】
他方、圧電基板52は、図示の矢印P方向に分極処理されている。従って、積層型圧電体52fでは、その長さ方向Lに沿って分極処理されている。
他方、励振電極3,5,7,9は、入力電極19に、励振電極,12,14,16,18は、出力電極20に電気的に接続されている。他方、残りの励振電極4,6,8,10,11,13,15,17は、アース電極21に電気的に接続されている。
【0048】
もっとも、本実施例では、入力電極19及び出力電極20は、圧電体部分52hの上面に形成されており、アース電極21は、圧電体部分52gの上面に形成されている。
【0049】
圧電体部分52g,52hは、上記のようにして圧電基板に溝52d,52eを形成することにより構成されているため、積層型圧電体52fの厚みTよりも大きな厚みT1を有する。ここで、積層型圧電体52fの厚みTとは、図1に示すように、積層型圧電体52fの溝52d,52eに臨む一対の面間の距離をいうものとする。前述したように、T/Dが0.9以下であれば、積層型圧電体52fにおいて、厚み縦振動の高調波が効率よく励振される。従って、積層型圧電体52fの厚みTは、例えば32μmのように薄くされる必要がある。
【0050】
他方、圧電基板52の厚みT1はさほど薄くする必要がない。言い換えれば、圧電基板52の厚みT1は、積層型圧電体52fの厚みTよりも大きくされている。
【0051】
しかも、圧電体部分52g,52hが積層型圧電体52fに連ねられているため、圧電フィルタ51全体の機械的強度が十分に高められる。
言い換えれば、本実施例のマルチモード圧電フィルタ51は、マルチモード圧電フィルタ1,1Aと同様に動作されるマルチモード圧電フィルタ部分としての積層型圧電体52fに連なるように、該積層型圧電体52fの厚みTよりも大きな厚みT1を有する圧電体部分52g,52hが連ねられて一体化された構造を有する。従って、圧電フィルタ51の機械的強度が高められるので、より一層高周波化に適した圧電フィルタを提供することができる。
【0052】
なお、圧電フィルタ51では、フィルタとして動作する積層型圧電体52fに、圧電体部分52g,52hが連ねられているが、フィルタ特性はさほど劣化しない。これを、図8及び図9を参照して説明する。
【0053】
積層型圧電体52fにおいて、隣り合う異なる電位に接続される励振電極間の圧電体層の厚みを40μm、積層型圧電体52fの長さLを620μm、圧電体52の幅Wを890μm、積層型圧電体52fの厚みTを32μmとし、圧電基板52の厚みT1を200μmとした。すなわち、圧電フィルタ1Aと同様の寸法を有するように積層型圧電体52f部分を構成し、フィルタ特性を測定した。結果を図8に示す。図8から明らかなように、本実施例の圧電フィルタ51においても、13倍波〜15倍波が有効に励振され、かつ結合されて、広帯域のフィルタ特性の得られていることがわかる。また、図9は、2つの圧電フィルタ51を縦属接続した場合のフィルタ特性を示す。図9から明らかなように、2素子の圧電フィルタ51を縦属接続することにより、選択度を効果的に高め得ることがわかる。
【0054】
上記のように、第1の実施例では、矩形板状の圧電基板52に、溝52d,52eを形成することにより、圧電フィルタとして動作する積層型圧電体52fが構成されていたが、他の方法で、圧電基板の一部に厚みの薄い積層型圧電体部分を構成してもよい。
【0055】
図10は、本発明の第2の実施例の縦結合型マルチモード圧電フィルタを説明するための斜視図である。圧電フィルタ71では、圧電基板52の上面52aの中央に溝52jが形成されている。ここでは、溝52jの底面と、圧電基板52の下面52kとの間の圧電基板部分が上記積層型圧電体部分を構成している。そして、積層型圧電体部分52lの両側に、圧電体部分52m,52nが形成されている。
【0056】
その他の構成は、第1の実施例のマルチモード圧電フィルタ51と同様である。
従って、本実施例のマルチモード圧電フィルタ61においても、積層型圧電体52lの厚みTを薄くした場合であっても、残りの圧電体部分52m,52nの厚みT1を厚くすることができるので、圧電フィルタ61の全体としての機械的強度が高められる。
【0057】
図11及び図12は、縦結合型マルチモード圧電フィルタ51の変形例を示す各斜視図である。
図11に示すマルチモード圧電フィルタ72では、圧電基板52に、3本の溝52o,52p,52qが形成されており、それによって、2つの積層型圧電体52f,52fが構成されている。
【0058】
このように、本発明においては、圧電基板に、3本以上の溝を形成し、2以上の積層型圧電体52fを構成してもよい。
ここでは、積層型圧電体52f,52fは並列に電気的に接続されることになる。従って、第1の実施例のマルチモード圧電フィルタ51に比べて、入出力端子間の静電容量は2倍となり、マッチングインピーダンスは1/2となる。このように、溝の数及び積層型圧電体の数を調整することにより、外部回路のインピーダンスに容易にインピーダンスを整合させることができる。
【0059】
さらに、図12に示すマルチモード圧電フィルタ81のように、中継容量を構成するために、容量電極82を形成してもよい。なお、容量電極82と、対向するように、圧電基板52の下面には、グラウンド電位に接続される容量電極が形成されている(図示されず)。図12に示すマルチモード圧電フィルタ81では、圧電基板52に4本の溝52r,52s,52t,52uが形成されており、2個の積層型圧電体52f,52fが形成されている。溝52s,52t間の圧電体部分52vにおいて、上面に容量電極82が形成されている。
【0060】
他方、圧電基板52の上面においては、圧電体部分52gの上面に入力電極84及びアース電極85が形成されている。また、圧電体部分52hの上面において、出力電極86及びアース電極87が形成されている。すなわち、2つの積層型圧電体52f,52fで構成されている2素子の縦結合型マルチモード圧電フィルタが縦属接続されるように入出力電極84,86及びアース電極85,87が形成されており、かつ容量電極82により中継容量が構成されている。
【0061】
従って、圧電フィルタ81では、1個の圧電フィルタ81を用いることにより、2素子の圧電フィルタを接続した場合の減衰量を得ることができる。
図13は、本発明に係る電子部品の一例を示す分解斜視図である。
【0062】
電子部品91では、ケース基板92上に、上述した実施例の圧電フィルタ51が実装され、かつ圧電フィルタ51を覆うようにキャップ材93がケース基板92上に固定される。なお、入力電極19、出力電極20及びアース電極21は圧電基板の側面を経て下面に至るように形成されている。このようにして、ケース基板とキャップ材とからなるパッケージに収納された電子部品として、本発明のマルチモード圧電フィルタを提供することができる。
【0063】
なお、圧電フィルタ51では、積層型圧電体52f部分において、振動エネルギーが閉じ込められるため、圧電基板52の下面を利用してケース基板92上に固定したとしても、フィルタ特性に影響はほとんど生じない。
【0064】
図14(a)及び(b)は、本発明の電子部品のさらに他の例を示すための分解斜視図及び正面断面図である。電子部品101においては、マルチモード圧電フィルタ51の上面及び下面に反射層102,103が積層され、反射層103,104の外側面に、ケース基板104,105が積層される。このようにして、積層型の機械的強度に優れた電子部品として本発明の縦結合型マルチモード圧電フィルタを提供することができる。
【0065】
なお、反射層102,103の音響インピーダンス値Z2は、圧電フィルタ51の音響インピーダンス値Z1及びケース基板104,105の音響インピーダンス値Z3よりも小さくされている。従って、圧電フィルタ51から反射層102,103に伝搬してきた振動が、反射層102,103と、ケース基板104,105との界面で反射される。よって、このような積層構造を採用したとしても、圧電フィルタ51のフィルタ特性に影響はほとんど生じない。
【0066】
または、反射層102の下面に、積層型圧電体52fの端部と接触を避けるための凹部102aが形成されている。このように反射層102の下面に凹部102aを形成すれば、積層型圧電体52fによるフィルタ特性により一層影響を与えることなく、積層型の電子部品101を構成することができる。
【0067】
【発明の効果】
本発明に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタでは、圧電縦効果を利用して励振電極された異なる次数のモードの振動を結合することによりフィルタ特性が得られる。従って、広帯域であり、減衰量の大きなフィルタ特性を容易に得ることができる。加えて、T/Dが0.9以下であるため、異なる次数のモードが効率よく励振されるので、より一層広い帯域幅を容易に得ることができる。
【0068】
さらに、T/Dが0.9以下とした場合であっても、積層型圧電体に連なるように、積層型圧電体の厚みTよりも大きな厚みを有する圧電体部分がさらに備えられているため、高周波化を進めて厚みTが小さくなった場合であっても、マルチモード圧電フィルタ全体としての機械的強度の低下も生じ難い。
【0069】
よって、高周波化に適しており、広い帯域幅及び大きな減衰量を有し、かつ機械的強度に優れたマルチモード圧電フィルタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の第1の実施例に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタの外観を示す斜視図及び圧電基板内に形成される励振電極の形状を説明するための模式的斜視図。
【図2】(a)は、本発明をなす前提となった未だ公知ではない縦結合型マルチモード圧電フィルタを示す概略構成図、(b)〜(d)は、該圧電フィルタで励振される14倍波、13倍波及び15倍波を模式的に示す図。
【図3】本発明をなす前提となった未だ公知ではない縦結合型マルチモード圧電フィルタの他の例を示す斜視図。
【図4】図3に示した縦結合型マルチモード圧電フィルタで励振される13倍波〜15倍波を説明するための図。
【図5】図3に示した縦結合型マルチモード圧電フィルタのフィルタ特性を示す図。
【図6】図3に示した縦結合型マルチモード圧電フィルタを2素子縦属接続した場合のフィルタ特性を示す図。
【図7】図3に示した縦結合型マルチモード圧電フィルタにおいて、比T/Dを変化させた場合の帯域幅の変化を示す図。
【図8】第1の実施例の縦結合型マルチモード圧電フィルタのフィルタ特性を示す図。
【図9】第1の実施例の縦結合型マルチモード圧電フィルタを2素子縦属接続した場合のフィルタ特性を示す図。
【図10】本発明の第2の実施例に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタを示す斜視図。
【図11】本発明の第1の実施例の縦結合型マルチモード圧電フィルタの変形例を示す斜視図。
【図12】第1の実施例の縦結合型マルチモード圧電フィルタのさらに他の変形例を示す斜視図。
【図13】本発明に係る電子部品の一例を説明するための分解斜視図。
【図14】(a)及び(b)は、本発明に係る電子部品の他の例を説明するための分解斜視図及び正面断面図。
【図15】従来の二重モード圧電フィルタを示す正面断面図。
【図16】(a)及び(b)は、従来の二重モード圧電フィルタにおいて励振される対称モード及び反対称モードを説明するための模式的正面図。
【符号の説明】
1…縦結合型マルチモード圧電フィルタ
1A…縦結合型マルチモード圧電フィルタ
2…圧電体
3〜18…励振電極
19…入力電極
20…出力電極
21…アース電極
51…縦結合型マルチモード圧電フィルタ
52…圧電基板
52d,52e,52j,52o,52p,52q,52r,52s,52t,52u…溝
52f…積層型圧電体
52g,52h,52m,52n…圧電体部分
52l…積層型圧電体
71…圧電フィルタ
72…圧電フィルタ
81…圧電フィルタ
82…容量電極
84…入力電極
85…アース電極
86…出力電極
87…アース電極
91…電子部品
92…ケース基板
93…キャップ材
101…電子部品
102,103…反射層
102a…凹部
104,105…ケース基板
Claims (8)
- 互いに平行に配置された4以上の励振電極及び
前記励振電極間に配置されており、かつ励振電極に直交する方向または励振電極と平行な方向において同一方向に分極処理されている複数の圧電体層を有し、積層方向に直交する横断面が矩形の積層型圧電体と、
入力電極、出力電極及びアース電極とを備え、
前記複数の励振電極が、前記入力電極に接続される第1のグループの励振電極と、前記出力電極に電気的に接続される第2のグループの励振電極と、前記アース電極に接続される第3のグループの励振電極とを有し、前記第1のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが、並びに第2のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが積層方向において交互に配置されており、
入力電極とアース電極との間に入力信号が印加されると、異なる次数のモードであって、隣り合う3つの次数の高次のモードの振動が励振されかつ結合され、前記出力電極とアース電極とから出力信号が取り出されるように構成されており、
前記積層型圧電体の矩形の横断面の一辺の方向である厚み寸法をTとし、隣り合う励振電極間の距離をDとしたときに、T/Dが0.9以下であり、
前記積層型圧電体に連なるように設けられており、前記厚み寸法Tよりも大きな厚みを有する圧電体部分をさらに備え、
前記積層型圧電体及び圧電体部分を構成するための圧電基板において、該圧電基板の一方面に複数の溝が形成されており、該複数の溝間に挟まれた圧電基板部分が前記積層圧電体を構成しており、残りの圧電基板部分が前記圧電体部分を構成していることを特徴とする、圧電縦効果を利用した縦結合型マルチモード圧電フィルタ。 - 互いに平行に配置された4以上の励振電極及び
前記励振電極間に配置されており、かつ励振電極に直交する方向または励振電極と平行な方向において同一方向に分極処理されている複数の圧電体層を有し、積層方向に直交する横断面が矩形の積層型圧電体と、
入力電極、出力電極及びアース電極とを備え、
前記複数の励振電極が、前記入力電極に接続される第1のグループの励振電極と、前記出力電極に電気的に接続される第2のグループの励振電極と、前記アース電極に接続される第3のグループの励振電極とを有し、前記第1のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが、並びに第2のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが積層方向において交互に配置されており、
入力電極とアース電極との間に入力信号が印加されると、異なる次数のモードであって、隣り合う3つの次数の高次のモードの振動が励振されかつ結合され、前記出力電極とアース電極とから出力信号が取り出されるように構成されており、
前記積層型圧電体の矩形の横断面の一辺の方向である厚み寸法をTとし、隣り合う励振電極間の距離をDとしたときに、T/Dが0.9以下であり、
前記積層型圧電体に連なるように設けられており、前記厚み寸法Tよりも大きな厚みを有する圧電体部分をさらに備え、
前記積層型圧電体及び前記圧電体部分を構成するための圧電基板の一方面に溝が形成されており、該溝の底部と圧電基板の他方主面との間の部分が前記積層圧電体を構成しており、前記溝の両側の圧電基板部分が前記圧電体部分を構成していることを特徴とする、圧電縦効果を利用した縦結合型マルチモード圧電フィルタ。 - 前記入力電極、出力電極及びアース電極が、前記圧電体部分に形成されている、請求項1または2に記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタ。
- 複数の積層型圧電体が前記圧電基板に構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタ。
- 前記異なる次数の振動モードが、圧電縦効果を利用した長さ振動モードの高調波である、請求項1〜4のいずれかに記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタ。
- 前記異なる次数のモードの振動が、圧電縦効果を利用した厚み縦振動の高調波である、請求項1〜4のいずれかに記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタ。
- ケース基板と、
前記ケース基板上に搭載されており、かつ請求項1〜6のいずれかに記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタと、
前記縦結合型マルチモード圧電フィルタを覆うように前記ケース基板に固定されたキャップ材とを備える、電子部品。 - ケース基板と、
前記ケース基板上に形成された反射層と、
前記反射層を介してケース基板に固定された請求項1〜6のいずれかに記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタとを備え、
前記反射層の音響インピーダンス値Z2が、前記縦結合型マルチモード圧電フィルタの積層型圧電体部分を構成している材料の音響インピーダンス値Z1及び前記ケース基板の音響インピーダンス値Z3よりも小さい、電子部品。
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