JP3838158B2 - 縦結合型マルチモード圧電フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯域フィルタなどに用いられる圧電フィルタに関し、より詳細には、圧電縦効果を利用しており、かつ異なる次数のモードの結合を利用した縦結合型のマルチモード圧電フィルタ及び電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、帯域フィルタとして様々な圧電フィルタが用いられている。数MHz〜数十MHz帯の周波数領域においては、小型化が容易であり、コストが安価な二重モード圧電フィルタが主に用いられている。
【0003】
この種の二重モード圧電フィルタは、例えば特開平5−327401号公報などに開示されている。
図13は、厚み縦振動を利用した従来の二重モード圧電フィルタを示す断面図である。
【0004】
圧電フィルタ201は、厚み方向に分極処理された圧電板202を有する。圧電板202の上面には、一対の励振電極203,204が形成されており、下面には励振電極203,204と圧電板202を介して対向するように共通励振電極205が形成されている。
【0005】
使用に際しては、上面の一方の励振電極203と共通励振電極205との間に入力信号を印加し、圧電板202を励振させる。この場合、圧電板202が励振され、図14(a)に示す対称モードと、図14(b)に示す反対称モードが生じ、これら双方のモードが結合されてフィルタ帯域が構成される。出力は、励振電極204とアース電極205との間で取り出される。
【0006】
なお、上記のように厚み縦振動モードを利用した二重モード圧電フィルタの他、圧電板202を上面に平行な方向に分極処理し、それによって厚み滑りモードを利用した二重モード圧電フィルタも知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の圧電フィルタ201では、対称モードと反対称モードの結合の強さは、励振電極203,204間の間隔に依存し、この間隔の大きさにより対称モードと反対称モードの周波数差が決定され、通過帯域が決められることになる。
【0008】
すなわち、広帯域フィルタを得るには、励振電極203,204間の間隔を狭くし、両方のモードの結合度を高め、かつ双方のモードの周波数差を大きくする必要があった。
【0009】
他方、励振電極203,204は、通常、導電ペーストのスクリーン印刷により形成されている。スクリーン印刷法では、励振電極203,204の間隔を狭くするにも限界があった。他方、フォトリソグラフィーにより励振電極203,204を形成すれば、励振電極203,204間の間隔を小さくすることができるものの、コストが高くつくことになる。
【0010】
また、たとえ、励振電極203,204間の間隔を狭くすることができたとしても、圧電フィルタ201において入出力間の静電容量が増加し、減衰量が小さくなるという問題もあった。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、広帯域化を図ることができ、かつ大きな帯域外減衰量を得ることができ、さらに安価に製造し得る縦結合型のマルチモード圧電フィルタを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタは、対向し合う第1,第2の端面及び第1,第2の端面を結ぶ第1〜第4の側面を有する圧電体と、前記圧電体内に配置されており、かつ圧電体層を介して重なり合うように配置された複数の励振電極と、前記圧電体の第1の側面において第1の端面側に寄せられて形成された入力電極と、該第1の側面において第2の端面側に寄せられて形成された出力電極と、第1の側面に対向している第2の側面に形成されたアース電極とを備え、前記複数の励振電極が、前記入力電極に接続されている第1のグループの励振電極と、前記出力電極に電気的に接続されている第2のグループの励振電極と、前記アース電極に接続されている第3のグループの励振電極とを有し、前記第1のグループの励振電極が前記第3のグループの励振電極と第1,第2の端面を結ぶ方向において交互に配置されており、かつ前記第2のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが第1,第2の端面を結ぶ方向において交互に配置されており、前記第1のグループと第2のグループとの最も近接している励振電極間に、少なくとも2層の前記第3のグループの励振電極が位置しており、入力電極とアース電極との間に入力信号が印加されると、前記圧電体の第1,第2の端面を結ぶ方向に沿った長さを半波長とする振動を基本波とし、異なる電位に接続される励振電極間に挟まれた圧電体層の数をn(nは整数)とした場合、前記基本波のn倍波と、(n−1)倍波と、(n+1)倍波とからなる複数のモードの振動が励振され、かつ結合され、出力電極とアース電極とから出力信号が取り出されるように構成されており、前記第1,第2のグループの励振電極の先端と、第2の側面との間の距離及び第3のグループの励振電極の先端と第1の側面との間の距離を寸法G、隣り合う励振電極間の圧電体層の厚みをDとしたときに、G/Dが2以上とされていることを特徴とする。
【0013】
本発明のある特定の局面では、上記圧電体の第1,第2の側面間の寸法をWとしたときに、G/Wが0.4以下とされており、それによって十分な比帯域幅が確保される。
【0014】
本発明において上記異なる次数の振動モードとしては、様々な振動モードを用いることができるが、本発明のある特定の局面では、圧電縦効果を利用した長さ振動モードの高調波が用いられる。また、本発明のさらに他の特定の局面では、圧電縦効果を利用した厚み縦振動の高調波が用いられる。
【0015】
本発明に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタのさらに別の特定の局面では、積層型の圧電体の圧電体層を構成している圧電材料の音響インピーダンス値をZ1としたときに、圧電体の第1,第2の端面の外側に連結されており、かつ音響インピーダンス値Z1よりも低い第2の音響インピーダンス値Z2を有する材料からなる反射層と、前記反射層の第1,第2の端面に連結されている側とが反対側の面に連結されており、第2の音響インピーダンス値Z2よりも大きな第3の音響インピーダンス値Z3を有する材料からなる保持部材とをさらに備える。この場合には、反射層と保持部材との界面において、振動が反射されるため、圧電体の振動特性に影響を与えることなく、保持部材により機械的に支持することができる。
【0016】
本発明に係る圧電フィルタ装置は、ケース基板と、前記ケース基板上に搭載されており、かつ本発明に従って構成された縦結合型マルチモード圧電フィルタと、前記縦結合型マルチモード圧電フィルタを覆うように前記ケース基板に固定されたキャップ材とを備える。従って、広い帯域幅及び高減衰量の本発明に従って構成された縦結合型マルチモード圧電フィルタがパッケージ化された電子部品を提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施例に係る縦結合型の三重モード圧電フィルタを示す斜視図である。
圧電フィルタ1は、横断面が矩形の角棒状の圧電体2を有する。圧電フィルタ1は、圧電体2の長さ方向に伝搬する圧電縦効果による長さモードを利用した三重モード圧電フィルタである。
【0019】
圧電体2を構成する材料は、特に限定されるわけではないが、本発明では、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスにより構成されている。圧電体2の音響インピーダンス値Z1は、3.4×107(kg/m2・s)である。
【0020】
圧電体2は、長さ方向に対向している第1,第2の端面2a,2bを有する。端面2a,2bの外側には、反射層31,32を介して保持部材33,34が連結されている。反射層31,32及び保持部材33,34は、圧電体2と同じ横断面形状を有する。
【0021】
反射層31,32及び保持部材33,34の構成及び作用については、後程説明する。
圧電体2においては、端面2a,2bを覆うように、励振電極3,18が形成されている。また、圧電体2の長さ方向において分散されて、横断面方向に延びる複数の励振電極4〜17が形成されている。
【0022】
励振電極3〜18は、互いに平行に配置されている。なお、励振電極3〜9間の各圧電体層の厚み及び励振電極11〜18間の各圧電体層の厚みは等しくされている。
【0023】
圧電体2では、励振電極3〜10間及び励振電極11〜18間の各圧電体層は、励振電極3〜18と直交する方向に分極処理されている。
励振電極3〜18は、圧電体2を構成する圧電セラミックスと共に一体焼成技術を用いて形成することができる。もっとも、他の方法で、圧電体2及び励振電極3〜18が形成されていてもよい。また、端面2a,2b上の励振電極3,18は、一体焼成技術により圧電体2を得た後に、端面2a,2b上に形成されてもよい。
【0024】
圧電体2は、端面2a,2bを結ぶ4つの側面を有する。すなわち、第1の側面としての上面2c、第2の側面としての下面2dと、第3,第4の側面として対向し合う側面2e(第3,第4の側面の他方は図示されず)を有する。
【0025】
上面2c上においては、端面2a側に寄せて入力電極19が形成されており、端面2b側に寄せられて出力電極20が形成されている。また、下面2d上には、アース電極21が形成されている。
【0026】
入力電極19及び出力電極20は、それぞれ、端面2a,2bを越えて、反射層31,32及び保持部材33,34の外表面に至るように形成されている。
入力電極19、出力電極20及びアース電極21は、励振電極3〜18と同様に、適宜の金属材料により構成される。このような金属材料としては、銅、ニッケルまたは銀などを例示することができる。
【0027】
励振電極3,5,7,9は、圧電体2の上面2cから下方に向かって延ばされているが、下面2dには至っていない。同様に、励振電極12,14,16,18も、圧電体2の上面2cから下面2d側に延びているが、下面2dには至っていない。励振電極3,5,7,9が第1のグループの励振電極を構成しており、入力電極19に電気的に接続されている。また、励振電極12,14,16,18が第2のグループの励振電極を構成しており、出力電極20に電気的に接続されている。
【0028】
励振電極4,6,8,10,11,13,15,17は、下面2dから上面2c側に延ばされているが、上面2cには至っていない。励振電極4,6,8,10,11,13,15,17は、アース電極21に電気的に接続されており、本発明の第3のグループの励振電極を構成しいている。
【0029】
図1から明らかなように、第1のグループの励振電極3,5,7,9と、第3のグループの励振電極4,6,8,10が第1,第2の端面2a,2bを結ぶ方向すなわち圧電体2の長さ方向において交互に配置されている。同様に、圧電体2の端面2b側では、励振電極12,14,16,18が、励振電極11,13,15,17と圧電体2の長さ方向において交互に配置されている。
【0030】
反射層31,32は、音響インピーダンス値Z2=1.87×106(kg/m2・s)であるエポキシ系樹脂により構成されている。保持部材33,34は、音響インピーダンス値Z3が3.4×107(kg/m2・s)であるセラミックスにより構成されている。
【0031】
音響インピーダンス値Z2が音響インピーダンス値Z1,Z3よりも小さい限り、反射層31,32及び保持部材33,34を構成する材料は特に限定されない。
【0032】
次に、本実施例のマルチモード圧電フィルタ1の動作を説明する。
上記圧電フィルタ1において、圧電体の厚み、すなわち圧電体2の第3,第4の側面として対向する2e間の距離を50μm、異なる電位に接続される隣り合う励振電極間の圧電体層の厚みDを60μm、圧電体の長さを880μm、励振電極交叉幅を260μm、圧電体2の上面2cと下面2dとの間の寸法Wを620μm、励振電極の先端と圧電体2の上面2cまたは下面2dとの間の距離Gを180μmとした。G/D=3.0、G/W=0.29である。このようにして得られた圧電フィルタ1を駆動した場合に励振される対称モード及び反対称モードの波形を図2に示す。なお、上記対称モードでは14倍波が強く励振され、反対称モードでは、13倍波及び15倍波が強く励振される。
【0033】
従って、本実施例のマルチモード圧電フィルタ1を実際に動作させた場合には、上記対称モードと反対称モードとが結合され、フィルタ特性が得られる。このマルチモード圧電フィルタ1のフィルタ特性を図7に示す。
【0034】
図2から明らかなように、13倍波〜15倍波による各応答が近接しており、従って、13倍波の共振周波数と15倍波の反共振周波数とを減衰極とするフィルタ特性が図7に示すように得られていることがわかる。
【0035】
図7から明らかように、本実施例によれば、中心周波数が26.5MHzであり、帯域幅が約4MHzのフィルタ特性の得られることがわかる。
従来の二重モード圧電フィルタ201(図14)では、圧電板202の一方面に形成されている励振電極203,204間の間隔に対称モード及び反対称モードの周波数差が依存していたのに対し、本実施例では、上記13倍波と14倍波の周波数差及び14倍波と15倍波の周波数差は、高次モードの次数の比だけ離れており、励振電極間の間隔に依存しない。従って、所望とする帯域幅に応じて、高次モードを選択すればよく、それによって所望とする帯域幅を容易に実現し得ることがわかる。
【0036】
例えば、本実施例では、異なる電位に接続される励振電極に挟まれた14層の圧電体層が構成されており、13倍波〜15倍波が効率良く励振されていたが、圧電体層の数を変更することにより、異なる次数の3つの高調波を励振でき、同様に三重モード圧電フィルタを構成することができる。
【0037】
言い換えれば、n(但し、nは3以上の整数)倍波と、(n−1)倍波及び(n+1)倍波とを利用して、三重モード圧電フィルタを構成することができ、nを選択することにより様々な帯域幅の圧電フィルタを容易に提供することができる。
【0038】
また、従来の二重モード圧電フィルタでは、広い帯域幅を得るには、励振電極203,204の精度を高めなければならなかったのに対し、本実施例では、励振電極3〜18の形成精度をさほど高めることなく、所望とする帯域幅や広い帯域幅を容易に実現することができる。
【0039】
また、圧電フィルタ1では、減衰量は、入力電極19とアース電極21との間の静電容量CI-Gと、入力電極19と出力電極20との間の静電容量CI-Oとの比に依存する。すなわち、CI-G/CI-Oが大きい程、言い換えればCI-Oが小さい程減衰量が大きくなる。本実施例では、入力電極19に電気的に接続されている励振電極3,5,7,9と出力電極20に接続されている励振電極12,14,16,18との間に、アース電位に接続される励振電極10,11が存在するため、CI-Oが小さくされ、帯域外減衰量の拡大が図られている。従って、従来の圧電フィルタ201に比べ、減衰量を大きくすることができる。
【0040】
なお、異なる電位に接続される励振電極間の各圧電体層の厚みは全て等しくしたが、これらの複数の圧電体層の厚みは均一である必要はない。すなわち、厚みの異なる圧電体層を配置することにより、利用しようとする高調波の励振効率を高め、スプリアスとなる次数の高調波の励振効率を低下させることもできる。
【0041】
本実施例の圧電フィルタ1では、圧電体2の両端面に反射層31,32及び保持部材33,34が連結されているので、保持部材33,34により機械的に保持することも可能である。
【0042】
反射層31,32は、圧電体2の音響インピーダンス値Z1よりも低い第2の音響インピーダンス値Z2を有する材料からなり、保持部材33,34は、第2の音響インピーダンス値Z2よりも高い第3の音響インピーダンス値Z3を有し、反射層31,32と保持部材33,34との界面にて、圧電体2側から伝搬してきた振動を反射させることができる。すなわち、保持部材33,34への振動の漏洩をほとんどなくすことができる。よって、保持部材33,34を利用して機械的に保持したとしても、圧電フィルタ1のフィルタ特性にほとんど影響が生じない。
【0043】
さらに、本実施例のマルチモード圧電フィルタ1では、上記のように、第1,第2のグループの励振電極の先端と、第2の側面である下面2dとの間の距離及び第3のグループの励振電極の先端と第1の側面としての上面2cとの間の距離を寸法Gとしたときに、異なる電位に接続される励振電極間の圧電体層の厚みをDとしたとき、G/Dが2.0以上とされており、それによって良好なフィルタ特性が得られている。
【0044】
すなわち、本願発明者は、上記圧電フィルタ1において、寸法G及び寸法Dを種々異ならせてフィルタ特性を測定したところ、G/Dの値によっては、通過帯域に大きなスプリアスが現れることを見出しG/Dを2.0以上とすれば、このスプリアスを抑制し得ることを見出した。
【0045】
図3〜図6は、それぞれ、G/Dが1.0、1.5、2.0及び2.5とされていることを除いては、図7に示した特性を得た上記実施例の圧電フィルタ1と同様に構成されている。
【0046】
図3及び図4に示すフィルタ波形では、矢印X1,X2で示す大きなスプリアスが通過帯域に現れていることがわかる。これに対して、G/Dが2.0以上である場合の特性を示す図5〜図7では、通過帯域にこのような大きなスプリアスが現れていない。そこで、この結果をふまえて有塩要素法で解析したところ、G/Dが1.0の場合には、図8(a)及び(b)に示すように屈曲振動の高調波が現れ、それによって大きなスプリアスが通過帯域に現れることを見出した。すなわち、図9(a)は、圧電フィルタ1の一部を模式的に示す図であり、G/Dが1.0以下の場合には、図9(b)に示すように、屈曲振動の高調波で圧電体1が振動し、それによって上記スプリアスが現れていると考えられる。
【0047】
図9は、図3〜7に示した結果を書き直したものであり、図9では、横軸がG/D、縦軸が通過帯域内に現れるスプリアスの大きさdFs/Fas(%)を示す。なお、dFsはスプリアスの反共振周波数と共振周波数の差を、Fasはスプリアスの反共振周波数を示す。図9から明らかなように、G/Dを2.0以上とすることにより、通過帯域内スプリアスを効果的に抑圧し得ることがわかる。
【0048】
すなわち、マルチモード圧電フィルタ1では、励振電極3〜18と、励振電極3〜18の先端と、入力電極19、出力電極20またはアース電極21との間に電界が発生するため、屈曲振動の高調波に起因するスプリアスが発生するが、上記のように、G/Dを2.0以上とすることにより、このスプリアスを効果的に抑圧することができる。
【0049】
さらに、本願発明者は、上記圧電体2の上面2cと下面2dとの間の寸法Wを種々異ならせ、上記と同様にして圧電フィルタ1を作製した。このようにして得られた複数種の圧電フィルタの比帯域幅dF/Fa(%)を測定した。なお、dFは、フィルタ1の14倍波の反共振周波数と共振周波数の差、Faは反共振周波数を示す。図10に、結果を示す。図10から明らかなように、G/Wが0.4を越えると、比帯域幅が急激に狭くなることがわかる。従って、本発明においては、好ましくはG/Wは0.4以下とされる。
【0050】
圧電フィルタ1では、励振電極3〜18と、励振電極3〜18と異なる電位にある入力電極19、出力電極20またはアース電極21との間で浮遊容量が発生し、比帯域幅が減少する。しかしながら、この比帯域幅の現象は、G/Wを0.4以下とすることにより抑制することができる。
【0051】
よって、好ましくは、G/Dが2.0以上であり、かつG/Wが0.4以下とされ、それによって通過帯域内におけるスプリアスが抑圧され、かつ十分な比帯域幅を有する圧電フィルタを提供することができる。
【0052】
なお、本発明に係るマルチモード圧電フィルタは、長さモード以外の他のモード、例えば厚み縦振動モードの高調波を利用したものであってもよい。さらに、本発明では、エネルギー閉じ込め型のマルチモード圧電フィルタを構成してもよい。
【0053】
図11は、本発明の第2の実施例に係るエネルギー閉じ込め型のマルチモード圧電フィルタの構造を示す略図的斜視図である。
圧電フィルタ71では、複数の励振電極73〜88が圧電体層を介して積層されて、積層型圧電体72が構成されている。圧電体層を構成する圧電材料については、第1の実施例と同様に、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスのような適宜の圧電セラミックスが用いられる。
【0054】
積層型圧電体72では、励振電極73〜88が積層されている方向、すなわち図12の水平方向が長さ方向であり、積層型圧電体72の一方の端面72aには励振電極73が形成されており、他方の端面72bには、励振電極88が形成されている。他の励振電極74〜87は内部電極の形態で形成されている。
【0055】
なお、本実施例では、端面72a,72bが励振電極73〜88と直交する方向において対向しており、本発明における第1,第2の端面を構成している。
従って、積層型圧電体72の第1の側面としての上面72cにおいては、第1の端面72a側に寄せられて入力電極19が、第2の端面72b側に寄せられて出力電極20が形成されている。また、下面72d上にアース電極21が形成されている。
【0056】
圧電体2において異なる電位に接続されている励振電極間に挟まれた圧電体層は励振電極に直交する方向に分極処理されている。
本実施例において、入力電極19とアース電極21との間に入力信号を印加すると、厚み縦振動の13倍波、14倍波及び15倍波が強く励振される。
【0057】
従って、上記13倍波〜15倍波とが結合されて、広い帯域幅の通過帯域を得ることができる。
すなわち、本実施例は、圧電縦効果を利用しており、厚み縦振動の高調波を用いた縦結合型の三重モード圧電フィルタであり、第1,第2の実施例と同様に、利用する振動モードは異なるが、異なる次数の高調波を結合させることにより、広い帯域幅を得ることができる。しかも、本実施例においても、利用しようとする高調波を異ならせることにより、所望とする帯域幅を容易に得ることができる。すなわち、積層される圧電体層の数を調整することにより、目的とする高調波を効率良く励振させることができ、それによって様々な帯域幅の圧電フィルタを容易に提供することができる。
【0058】
また、本実施例においても、G/Dが2.0以上とされることよりにより、通過帯域内のスプリアスを効果的に抑圧することができると共に、G/Wを0.4以下とすることにより、十分な比帯域幅を確保することができる。
【0059】
さらに、複数の圧電体層において、異なる厚みの圧電体層を設けたりすることにより、利用しようとする高調波を効率良く励振させたり、スプリアスとなる次数の高調波の励振効率を低め、それによって良好なフィルタ特性を容易に得ることができる。
【0060】
また、エネルギー閉じ込め型の圧電フィルタ71では、反射層及び保持部材を用いずとも、フィルタ特性を損なうことなく保持され得る。すなわち、図12に示すように、導電性接着剤92を用いてケース基板91上に実装することができる。
【0061】
なお、図12に示すように、図12に示したマルチモード圧電フィルタ71,71,71をケース基板91上に実装した構造において、さらにケース基板86にキャップ材93を固定してもよい。キャップ材93は、マルチモード圧電フィルタ71,71,71を覆うように、ケース基板91に固定されている。
【0062】
また、前述した第1の実施例のマルチモード圧電フィルタ1についても、同様に、ケース基板及びキャップ材からなるパッケージに収納することができる。この場合には、マルチモード圧電フィルタ1の保持部材33,34を利用してケース基板上に固定すればよい。
【0063】
【発明の効果】
本発明に係る縦結合型マルチモード圧電フィルタでは、入力信号が印加されると、圧電体において異なる次数のモードの振動が励振されかつ結合され、通過帯域を得ることができる。従って、複数の圧電体層の数を調整することにより、様々な異なる次数のモードを利用することができ、それによって広帯域のフィルタ特性を容易に得ることができる。
【0064】
また、従来の二重モード圧電フィルタでは、圧電板の一方面にギャップを隔てて形成された励振電極間の間隔により各モードの周波数差が決定されるため、広い帯域幅を得るには励振電極の精度を高めねばならなかったのに対し、本発明では、利用しようとするモードを選択するだけで容易に広帯域化を図ることができる。
【0065】
さらに、従来の二重モード圧電フィルタでは、広帯域化を図るために圧電板の一方面に形成された励振電極間の間隔を狭くした場合、入出力間の容量が増大し、減衰量が低下したのに対し、本発明に係るマルチモード圧電フィルタでは、広帯域化を図るために励振電極間の間隔を狭くする必要がないため、大きな減衰量を容易に得ることができる。
【0066】
加えて、本発明では、G/Dが2.0以下であるため、スプリアスを効果的に抑圧することができ、良好なフィルタ特性を得ることができる。
よって、本発明によれば、広帯域かつ大きな減衰量を有し、スプリアスを効果的に抑圧し得る、縦結合型のマルチモード圧電フィルタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係るマルチモード圧電フィルタを説明するための斜視図。
【図2】第1の実施例のマルチモード圧電フィルタで励振される対称モード及び反対称モードの波形を示す図。
【図3】G/D=1.0の場合のマルチモード圧電フィルタのフィルタ特性を示す図。
【図4】G/D=1.5の場合のマルチモード圧電フィルタのフィルタ特性を示す図。
【図5】G/D=2.0の場合のマルチモード圧電フィルタのフィルタ特性を示す図。
【図6】G/D=2.5の場合のマルチモード圧電フィルタのフィルタ特性を示す図。
【図7】G/D=3.0の場合のマルチモード圧電フィルタのフィルタ特性を示す図。
【図8】(a)及び(b)は、第1の実施例のマルチモード圧電フィルタで問題となるスプリアスである屈曲振動の高調波の振動姿態を説明するための略図的部分断面図及び有限要素法で解析された屈曲振動の高調波の振動姿態を示す図。
【図9】G/Dを変化させた場合の通過帯域内に現れるスプリアスの大きさの変化を示す図。
【図10】G/Wを変化させた場合の比帯域幅の変化を示す図。
【図11】本発明の第2の実施例に係るマルチモード圧電フィルタを説明するための斜視図。
【図12】第2の実施例のマルチモード圧電フィルタがケース基板上に実装された構造を備える電子部品を説明するための分解斜視図。
【図13】従来の厚み縦振動モードを利用した二重モード圧電フィルタを示す断面図。
【図14】(a)及び(b)は、それぞれ、図13に示した二重モード圧電フィルタにおいて励振される対称モード及び反対称モードを説明するための模式図。
【符号の説明】
1…マルチモード圧電フィルタ
2…圧電体
2a,2b…端面
2c…上面(第1の側面)
2d…下面(第2の側面)
2e…側面
3〜18…励振電極
19…入力電極
20…出力電極
21…アース電極
31,32…反射層
33,34…保持部材
71…圧電フィルタ
72…圧電体
72a,72b…端面
72c…上面
72d…下面
73〜88…励振電極
91…ケース基板
93…キャップ材
Claims (6)
- 対向し合う第1,第2の端面及び第1,第2の端面を結ぶ第1〜第4の側面を有する圧電体と、
前記圧電体内に配置されており、かつ圧電体層を介して重なり合うように配置された複数の励振電極と、
前記圧電体の第1の側面において第1の端面側に寄せられて形成された入力電極と、該第1の側面において第2の端面側に寄せられて形成された出力電極と、第1の側面に対向している第2の側面に形成されたアース電極とを備え、
前記複数の励振電極が、前記入力電極に接続されている第1のグループの励振電極と、前記出力電極に電気的に接続されている第2のグループの励振電極と、前記アース電極に接続されている第3のグループの励振電極とを有し、
前記第1のグループの励振電極が前記第3のグループの励振電極と第1,第2の端面を結ぶ方向において交互に配置されており、かつ前記第2のグループの励振電極と第3のグループの励振電極とが第1,第2の端面を結ぶ方向において交互に配置されており、
前記第1のグループと第2のグループとの最も近接している励振電極間に、少なくとも2層の前記第3のグループの励振電極が位置しており、
入力電極とアース電極との間に入力信号が印加されると、
前記圧電体の第1,第2の端面を結ぶ方向に沿った長さを半波長とする振動を基本波とし、
異なる電位に接続される励振電極間に挟まれた圧電体層の数をn(nは整数)とした場合、
前記基本波のn倍波と、(n−1)倍波と、(n+1)倍波とからなる複数のモードの振動が励振され、かつ結合され、出力電極とアース電極とから出力信号が取り出されるように構成されており、
前記第1,第2のグループの励振電極の先端と、第2の側面との間の距離及び第3のグループの励振電極の先端と第1の側面との間の距離を寸法G、隣り合う励振電極間の圧電体層の厚みをDとしたときに、G/Dが2以上とされていることを特徴とする、縦結合型マルチモード圧電フィルタ。 - 前記第1,第2の側面を結ぶ方向の寸法をWとしたときに、前記G/Wが0.4以下である、請求項1に記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタ。
- 前記振動モードが圧電縦効果を利用した長さ振動モードの高調波である、請求項1または2に記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタ。
- 前記第1,第2の端面の外側に、反射層を介して保持部材が連結されており、反射層の音響インピーダンス値Z2が、圧電体及び保持部材の音響インピーダンス値Z1,Z3よりも小さい、請求項1〜3のいずれかに記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタ。
- 前記振動モードが、圧電縦効果を利用した厚み縦振動の高調波である、請求項1〜3のいずれかに記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタ。
- ケース基板と、前記ケース基板上に搭載されており、かつ請求項1〜5に記載の縦結合型マルチモード圧電フィルタと、
前記縦結合型マルチモード圧電フィルタを覆うように前記ケース基板に固定されたキャップ材とを備える、電子部品。
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