JP3921929B2 - 共重合ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共重合ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、耐衝撃性、耐加水分解性及び耐熱分解性に優れ、金属板と積層して金属缶を製造するのに適した共重合ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属缶は、その少なくとも内面に防食の目的で樹脂塗料が塗布されている。この塗料は製缶後にスプレー塗装法等で一缶毎に塗装するために効率が悪く、また、塗料を高温で焼き付けるために多大なエネルギーが必要であり、さらに、有機溶剤の飛散による環境悪化の問題がある。
【0003】
このため、近年、このような欠点を解消するため、缶を成形する前に金属板に予め塗料をコーティングしておく技術(プレコート技術)やフィルムをラミネートしておく技術(プレラミネート技術)が開発されつつある。しかし、これらの技術においては、コートやラミネートにより形成された有機樹脂層は、製缶工程において過酷な変形や熱履歴を受けるので製缶後に欠陥が生じやすく、十分な耐食性を発揮させることが困難である。
【0004】
上記のプレラミネート技術に適用するフィルムとしては衛生性や保香性が優れていることからポリエチレンテレフタレートを中心としたポリエステルフイルムが用いられている。しかし、プレラミネートされたポリエステルフィルムが延伸配向されているとラミネート金属板は製缶時の変形に追従できず、フィルムに亀裂が入って耐食性が悪化し、それと共に缶の外観も悪いものとなる。
【0005】
そこで、上記ポリエステルフィルムを金属板にラミネートした後、ラミネートフィルムの融点以上に加熱してリメルトさせ、ついで急冷し、非晶質無配向にする方法(リメルト法)が検討されている。この方法で製造したラミネート金属板を用いて製缶すると、ラミネートフィルムが製缶時の変形に追従しやすいため、製缶後もフィルムに亀裂や剥離が起きず、良好な外親と耐食性が得られる。
【0006】
しかし、リメルト法で製造した上記ラミネート金属板は製缶後の耐衝撃性が悪く、缶を落下させるとフィルムに亀裂が入りやすく、耐食性を維持できない。そこで、耐衝撃性を向上させるために、ポリエステルの還元粘度を上げる試みがなされているが、フィルムをリメルトする際、ポリエステルの還元粘度が大きく低下し、上記問題を解決するに至っていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来のポリエステルフィルムの有する問題、特に金属板にラミネートしてラミネート金属板とした場合に生ずる問題を解決し耐衝撃性、耐加水分解性、耐熱分解性及び製缶加工性に優れた金属容器を製造することができる共重合ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の共重合ポリエステルフィルムは、エチレンテレフタレート単位にナフタレンジカルボン酸成分およびイソフタル酸を共重合して得た、融点150〜250℃、厚み3〜50μmの共重合ポリエステルフィルムであって、フィルムの融点+30℃の温度でフィルムを60秒間熱処理した後の共重合ポリエステルの還元粘度と熱処理前の共重合ポリエステルの還元粘度との差が0.05デシリットル/g以下であることを特徴とする。
【0009】
上記の構成からなる共重合ポリエステルフィルムは耐衝撃性、耐加水分解性及び耐熱分解性に優れており、金属板と積層して金属缶などの容器を製造するのに適したラミネート金属板を容易に得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明でいう共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなる飽和ポリエステルであり、融点が150℃〜250℃の範囲の共重合ポリエステルである。特にエチレンテレフタレート単位にナフタレンジカルボン酸成分又はネオぺンチルグリコール成分を共重合して得た共重合ポリエステルを特に好ましい例として挙げることができる。
【0012】
上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、ダイマー酸、インダンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、スルホイソフタル酸金属塩等が挙げられる。
【0013】
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
共重合成分の割合は、その種類にもよるが結果としてポリエステルの融点が150℃〜250℃、好ましくは210℃〜240℃、更に好ましくは215℃〜235℃の範囲になる割合である。ポリステルの融点が150℃未満では耐熱性が劣る。一方、ポリエステルの融点が250℃を越えると、ポリエステルの結晶性が大きすぎて成形加工性が損なわれる。
【0015】
本発明において用いる共重合ポリエステルは、その製造方法によって限定されることはない。例えば、エステル交換法や直接重合法で、溶融下に縮重合することにより得ることができる。
【0016】
上記共重合ポリエステルの製造においては、必要に応じ添加剤、例えば白色顔料、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤等の公知の添加剤が配合されてもよい。
【0017】
本発明の共重合ポリエステルフィルムは、融点が150℃〜250℃、厚み3〜50μmであって、フィルムの融点+30℃の温度でフィルムを60秒間熱処理した後の共重合ポリエステルの還元粘度と熱処理前の共重合ポリエステルの還元粘度との差が0.05デシリットル/g以下のフィルムである。
【0018】
上記共重合ポリエステルフィルムは、公知の方法によりポリエステルを溶融、押し出し、冷却して得ることができ、また、さらに1軸ないし2軸延伸して得ることができる。そして、フィルムの厚みは3〜50μm、好ましくは10〜20μmであるが、フィルムの厚みが3μm未満であると、フィルムにピンホールができやすく耐食性に劣る。また、フィルムの厚みが50μmを越えると成形加工性が損なわれやすい。
【0019】
本発明の共重合ポリエステルフィルムは、還元粘度が好ましくは0.4〜1.0デシリットル/g、より好ましくは0.5〜0.8デシリットル/gの範囲である。還元粘度が0.4デシリットル/g未満であると、得られる共重合ポリエステルフィルムを金属板にラミネートして得たラミネート金属板から製造した金属容器の耐衝撃性が不足しやすくなる傾向がある。還元粘度が1.0デシリットル/gを越えると、共重合ポリエステルの重合、フィルムの製膜、ラミネート金属板の製造等により多くのエネルギーが必要になり、コストが高くなる傾向がある。
【0020】
本発明において、フィルムの融点+30℃の熱処理は、該温度に設定した熱風オーブンに該フィルムを入れて行う。ただし、フィルムを熱風オーブンに直接入れると飛んでしまったり熱風オーブン中に粘着してしまうので、厚さ100μmのアルミ板にフィルムをラミネートしてから熱処理を行う。熱処理後、10%の塩酸にフィルムをラミネートしたアルミ板を入れ、アルミ部分のみを溶かして熱処理後のフィルムを取り出し、還元粘度を測定する。
【0021】
そして、熱処理前後における還元粘度の差が0.05デシリットル/gを越える共重合ポリエステルフィルムをリメルト法により金属板にラミネートした場合は、得られたラミネート金属板を成形した金属容器の耐衝撃性は十分でない。また、得られた金属容器を飲料缶として用いた場合にはフレーバー性が悪くなる。
【0022】
なお、リメルト法とは、共重合ポリエステルフィルムを金属板にラミネートし、融点以上の温度に加熱したあと急冷する方法である。この時、得られたラミネートフィルムは実質的に無配向非晶質の状態であるのが好ましい。実質的に無配向非晶質の状態にすることにより、製缶工程でのラミネートフィルムの製缶追従性をよくすることができる。
【0023】
本発明の共重合ポリエステルフィルムは金属板の少なくとも片面にラミネートしてラミネート金属板として用いることが出来る。
【0024】
このようなラミネート金属板は耐衝撃性、耐加水分解性及び耐熱分解性に優れており、容器を製造するのに適している。
【0025】
また、上記ラミネート金属板は、本発明の共重合ポリエステルフイルムを金属板の表面に積層した状態で、共重合ポリエステルフィルムの融点以上の温度で熱処理を行うことにより得ることが出来る。
【0026】
このようなラミネート金属板の製造法は、耐衝撃性、耐加水分解性及び耐熱分解性に優れ、金属容器を製造するのに適したラミネート金属板を得るのに適している。
【0027】
共重合ポリエステルフィルムを金属板にラミネートする場合、金属板の材料は特に限定されず、例えば鉄、鋼、ブリキ、ティンフリースチール、黄銅、銅、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。
【0028】
本発明の共重合ポリエステルフィルムとラミネートするのに用いられる金属板は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、電気化学的処理、無機化学的処理、有機化学的処理等があり、例えばクロメート処理、リン酸クロメート処理、ジンククロメート処理、アルマイト処理等が挙げられる。
【0029】
また、本発明の共重合ポリエステルフィルムにも接着性や濡れ性を向上させるために必要に応じてコロナ処理、コーティング処理、火炎処理等を施すことができる。
【0030】
共重合ポリエステルフィルムを金属板に積層する方法としては、フィルムの軟化点以上に暖められた金属板にフィルムを圧着する方法や予め金属板に接着剤を塗布して置き、その上に圧着する方法等が挙げられる。
【0031】
金属板に積層された共重合ポリエステルフィルムは、さらにこのフィルムを完全に溶融させて無配向にした後、急冷固化することによって、非晶質無配向のラミネート層を得ると成形加工性が向上し好ましい。積層したフィルムを完全に溶融するための加熱方法としては、熱風加熱、ロール加熱、通電加熱、誘電加熱、高周波加熱等が挙げられる。例えば、熱風加熱の場合、通常、フィルムの融点〜融点+40℃の温度で15〜120秒間、好ましくは、融点+5℃〜融点+20℃の温度で30〜60秒間加熱することによりフィルムを完全に溶融することができる。
【0032】
急冷固化する方法としては水中浸せき、冷風吹き付け等の方法が挙げられる。ここで、急冷とは溶融フィルムが固化する際に結晶が生成するのを防止するのに十分な冷却速度を持つ冷却操作であり、通常10℃/秒以上、好ましくは50℃/秒以上の速さで冷却することにより、目的を達成することができる。
【0033】
本発明の共重合ポリエステルフィルムが積層されたラミネート金属板は、絞り法により製造される浅絞り容器、絞り再絞り法により製造される深絞り容器、絞り引っ張り曲げ伸ばし法により製造される薄肉化絞り容器、絞りしごき法(DI法)により製造される絞りしごき容器等に成形される。なお、このような成形加工を行うに際しては、ラミネート金属板の温度はフィルムのガラス転移点付近で行うのが好ましい。
【0034】
そして、本発明の共重合ポリエステルフィルムが積層されたラミネート金属板は、ラミネート、熱処理の工程後でも適度な還元粘度を維持しているため製缶加工性に優れ、かつ、製缶された金属容器は耐衝撃性、耐食性に優れており、特に、焼き付け塗装やレトルト処理等の熱処理による脆化が起こりにくく、ラミネートフィルムの亀裂等の発生が抑制できる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例にて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0036】
なお、本発明における特性の評価方法は以下の通りである。
【0037】
(1)融点
理学電機社製外熱型示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mg、昇温速度20℃/分で測定した。ここで、検知された融解の吸熱ピーク温度を融点とした。
【0038】
(2)熱処理前の還元粘度
フェノール/テトラクロロエタンの重量比6/4の混合溶媒を用い、ポリエステルを溶液濃度0.4g/デシリットルとなるように溶解させる。次いでウベローデ型粘度管を用いて温度30℃で測定した。
【0039】
(3)熱処理後の還元粘度
(熱処理)厚み100μm、幅20cmのリン酸クロメート処理されたアルミニウム板の片面に、共重合ポリエステルフィルムをロールラミネーターで融着させた。ここで、アルミニウム板は室温で供給し、ゴムロール温度は180〜250℃、通過速度は25〜100cm/分、ゲージ圧力は6kg/cmとした。
【0040】
次いで、共重合ポリエステルフィルムを融着させたアルミニウム板を、熱風オーブン中で該フィルムの融点+30℃の温度で60秒間加熱し、フィルムを完全に溶融させた。これをオーブンより取り出し、5秒以内に5℃の冷風を吹き付け急冷固化した。この熱処理後のラミネート金属板を10%塩酸中に浸し、アルミニウム板のみを溶解し、熱処理後のフィルムを得た。
【0041】
このフィルムについて上記(2)の方法で還元粘度を測定した。
【0042】
(4)製缶直後の缶のERV値
製造した金属容器に350ccの1重量%食塩水を満たし、エナメルレーターでERV(エナメルレイティング値)を測定した。電圧は直流6ボルト、缶底外側に金属露出部を作りそこを陽極に接続し、通電時間30秒で、30秒後の電流値を測定した。ERV値測定において、電流が多く流れるほど絶縁体であるフィルムに欠陥が存在し、金属が露出しているため腐食が起こりやすく、製缶直後のERV値は10mA以下が望ましい。
【0043】
(5)落下衝撃後の缶のERV値
製造した金属容器を、焼き付け処理条件に対応する200℃、15分間熱処理を行った後、製造した金属容器に水350ccを満たし、缶底を下向きにして1mの高さより落下させた後、水を除去して(3)と同様に食塩水を満たしてERVを測定した。落下衝撃後のERV値は20mA以下が望ましい。
【0044】
(実施例1〜2、参考例1、比較例1〜3)
A.共重合ポリエステルの調整
(a)イソフタル酸30モル%共重合ポリエチレンテレフタレート、(b)ナフタレンジカルボン酸10モル%共重合ポリエチレンテレフタレート、(c)ネオペンチルグリコール30モル共重合ポリエチレンテレフタレート、および(d)シクロヘキサンジメタノール30モル共重合ポリエチレンテレフタレートのチップを直重法によって得た。
【0045】
各共重合ポリエステルの還元粘度は、それぞれ(a)0.68デシリットル/g、(b)0.63デシリットル/g、(c)0.67デシリットル/g、(d)0.67デシリットル/gであった。すべてのポリエステルには適度の滑り性を確保するため、平均粒径1.8μmのシリカゲル微粉末をフィルム中に0.06重量%含有するように添加し分散させた。
【0046】
B.2軸延伸フィルムの製造
上記A項で得られた共重合ポリエステル((a)〜(d))のチップと還元粘度0.65デシリットル/gのポリエチレンテレフタレートのチップとを、組成が表1、2のようになるように配合して、真空乾燥し水分率0.01重量%以下にした後、Tダイより押出し機で270℃で溶融押出しして、30℃の冷却ロールに引き取り、未延伸シートを得た。直ちに、ロール式延伸機で縦方向に90〜100℃で3.5倍延伸し、更にテンター式延伸機で横方向に90〜100℃で4倍延伸した後、10%緩和させつつ融点より15〜30℃低い温度で熱固定し、厚さ15μmの延伸フィルムを得た。
【0047】
C.DI缶の製造
厚み300μm、幅20cmのリン酸クロメート処理されたアルミニウム板の両面に、上記B項で得られた2軸延伸フィルムをロールラミネーターで融着させた。ここで、アルミニウム板は室温で供給し、ゴムロール温度は180〜250℃、通過速度は25〜100cm/分、ゲージ圧力は6kg/cmとした。
【0048】
次いで、2軸延伸フィルムを融着させたアルミニウム板を、熱風オーブン中で該フィルムの融点+30℃の温度で60秒間加熱し、フィルムを完全に溶融させた。これをオーブンより取り出し、5秒以内に5℃の冷風を吹き付け急冷固化した。
【0049】
得られたラミネート金属板を直径150mmの円に切り出し、絞りしごき加工して、直径66mm、高さ125mm、壁面の厚み0.12mmのDI缶を製造した。
【0050】
ラミネート金属板に積層された共重合ポリエステルフィルムの特性とこれを用いたDI缶の特性を表1、2に示した。
【0051】
表1に示した通り、実施例1〜2(参考例1)のフィルムは熱処理前後で還元粘度の差が0.05以下である。その結果として、このフィルムを用いて製造したDI缶は落下衝撃を加えてもフィルムに欠陥や亀裂ができにくく、ERV値も低かった。
【0052】
一方、表2に示した比較例1〜3のフィルムは熱処理後に還元粘度の低下が大きく、これらのフィルムを用いて製造したDI缶は落下衝撃を加えるとフィルムに欠陥や亀裂ができやすく、ERV値も高かった。
【0053】
【表1】
Figure 0003921929
【0054】
【表2】
Figure 0003921929
【0055】
【発明の効果】
本発明の共重合ポリエステルフィルムは、耐衝撃性、耐加水分解性及び耐熱分解性が優れており、特に、ラミネート、熱処理の工程での加水分解、熱分解に伴うオリゴマーの発生が少なく、耐フレーバー性に優れる。

Claims (1)

  1. エチレンテレフタレート単位にナフタレンジカルボン酸成分およびイソフタル酸を共重合して得た、融点150〜250℃、厚み3〜50μmの共重合ポリエステルフィルムであって、フィルムの融点+30℃の温度でフィルムを60秒間熱処理した後の共重合ポリエステルの還元粘度と熱処理前の共重合ポリエステルの還元粘度との差が0.05デシリットル/g以下であることを特徴とする共重合ポリエステルフイルム。
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