JP3921683B2 - 焼結合金軸受の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結合金軸受の製造方法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
この種の焼結合金として、回転軸を支承する軸受があり、この軸受の製法として、金属を主原料とする原料粉末を圧縮して圧粉体を形成した後、この圧粉体を焼結してなる焼結軸受が広く用いられている。
【0003】
その焼結軸受では、鉄系や銅系の原料粉末を用いて成形され、塩酸,硫酸,りん酸等の非酸化性酸に対する耐食性の面からは銅系の原料粉末を用いることが好ましい。しかし、銅系の焼結合金であっても、濃硫酸,硫酸等の酸化性酸,硫黄やその化合物に晒されたり、蟻酸,酢酸,リンゴ酸,クエン酸,オレイン酸,ステアリン酸等の有機酸が混ざった雰囲気中に晒されたりすると、腐食により寿命が低下する問題がある。
【0004】
例えば、エンジンなどの排ガス系統に設けられる部品は、排ガス雰囲気中で使用され、その排ガスには硫黄酸化物や窒素酸化物などが含まれ酸性が強く、かつ高温状態となる。一例として、その排ガス雰囲気では、PH1.5〜2.5、350〜500℃といった条件となるため、銅系の材料を用いても腐食を防止することができなかった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決しようとするもので、酸性が強い高温雰囲気においても、耐食性に優れた焼結合金軸受の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の焼結合金は、前記目的を達成するために、銅系の原料粉末を成形すると共に焼結してなり、重量%で、Zn:15〜21%、Ni:15〜21%、P:0.2〜1%、C:4〜10%、を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金からなり、5〜25%の気孔率を有し、気孔部分を除いた表面の50%以上を炭素で覆った焼結合金軸受の製造方法において、前記焼結合金をサイジングすることにより表面の炭素を押し潰して前記気孔部分を除いた表面の50%以上を炭素で覆う製造方法である。
【0007】
この方法によれば、表面の50%以上を炭素で覆うことにより、酸性の高温雰囲気中の使用においても、高い耐食性を備えた焼結合金軸受を得ることができる。また、例えば、酸性の強い硫黄酸化物などに晒されても、銅と硫黄の化合物が形成され、耐食性が確保され、また、この銅を含む化合物などにより摺動性を確保することができる。したがって、排ガス雰囲気中で使用される排ガス部品として耐久性を備えることが得られる。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
この方法を用いることにより、酸性の高温雰囲気中の使用においても、高い耐食性を備えた焼結合金軸受が得られる。また、例えば硫黄酸化物などに晒されても、銅と硫黄の化合物が形成され、この銅を含む化合物などにより摺動性を確保することができる。
【0012】
【0013】
【0014】
【発明の実施形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1〜図3は本発明の一実施形態を示し、焼結合金の原料には、Cu−Ni−Zn−C系やCu−Sn−C系等のものを用いることができる。尚、以下、焼結合金として軸受1を例に説明する。図2に示すように、軸受1は、略円筒形の焼結合金からなり、その中央には回転軸が回転摺動する円筒状の摺動面2が形成され、さらに、その軸受1の露出した表面3の50%以上を炭素により覆っている。
【0015】
前記軸受1には、一例として、重量%で、Zn:15〜21%、Ni:15〜21%、P:0.2〜1%、C:4〜10%、を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並びに5〜25%の気孔率を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金を用いることができ、また、それ以外の組成の黒鉛分散型Cu基焼結合金を用いることもでき、特に、本発明の特徴的な構成として、原料粉末に炭素の粉末を4〜10重量%含む。
【0016】
その製造方法につき、図1を参照して説明すると、例えば焼結合金に用いる原料粉末として、いずれも水アトマイズ法により形成され、炭素を含む銅系の粉末を混合(S1:ステップ1)し、混合した原料粉末を例えば150〜300MPaの範囲内の所定の圧力でプレスにより所定形状の圧粉体に成形(S2)し、この圧粉体をアンモニア分解ガス雰囲気中で、例えば750〜900℃の範囲内の所定の温度に40分間保持の条件で焼結(S3)して焼結合金を得る。
【0017】
本発明では、耐食性向上を図るため、焼結(S3)処理後、得られた焼結合金にサイジング(S4)処理を行い、このサイジング(S4)により焼結合金を所定寸法に仕上げる。同時にサイジング(S4)により、焼結合金の表面3の炭素が押し潰されて広がり、焼結合金である軸受1の表面3が炭素で覆われ、上記組成を用いることにより、軸受1の表面3の50%以上を炭素により覆った構造を得ることができる。尚、以下、表面を覆う炭素の割合を炭素被覆率という。そして、炭素被覆率は、表面をカラー写真(倍率×100)し、決められた2mm方眼のトレース用紙のフレームを写真上に重ね合わせ、炭素の表面比率を計算して算出される。
【0018】
図3はサイジングに用いる矯正用金型装置11の一例を示し、この矯正用金型装置11は、上下方向を軸方向(プレス上下軸方向)としており、ダイ12、コアロッド13、下パンチ14および上パンチ15を備えている。ダイ12はほぼ円筒形状で、このダイ12内にほぼ円柱形状のコアロッド13が同軸的に位置している。下パンチ14は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に下方から上下動自在に嵌合している。上パンチ15は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に上方から上下動自在にかつ挿脱自在に嵌合するものである。そして、図3に示すように、ダイ12内に前記軸受を充填し、この軸受の貫通孔である摺動面にコアロッド13を挿入配置した状態で、上下方向から上,下パンチ13,14により軸受1を加圧して所定の寸法に矯正すると共に表面3の炭素を押し潰す。尚、表面3とは、外部に露出する面であり、図2の筒状の軸受1においては、上下端面、外周面、摺動面2全体である。
【0019】
実験例重量%で、Zn:18%、Ni:18%、P:0.6%、C:3.5〜11%、を含有し、残りをCuの組成し、20%の気孔率を有するCu基焼結合金を製作し、焼結(S3)後及びサイジング(S4)後における表面3の炭素被覆率%を複数点で計測した結果、次の表1のようになった。
【0020】
【表1】
Figure 0003921683
【0021】
サイジング(S4)後において,上記表1のように原料粉末の炭素量が重量%が3.5%の例(1)では、炭素被覆率が50%未満となり、原料粉末の炭素量が重量%が11%の例(6)では、偏析が多く、炭素被覆率が50%以下となる場合があり、これに対して原料粉末の炭素量が重量%が4%,6%,8%,10%の例(2)(3)(4)(5)では、いずれも炭素被覆率が50%以上となり、これにより原料粉末に炭素を重量%で4〜10%とすることにより、炭素被覆率が50%以上とすることができる。
【0022】
図4は、重量%で、Zn:18%、Ni:18%、P:0.6%、C:7%、を含有し、残りをCuの組成し、20%の気孔率を有するCu基焼結合金を製作し、焼結(S3)後及びサイジング(S4)後における摺動面2を写真撮影し、その拡大写真の一部を図示したものであり、ハッチングが銅表面部分101,クロスハッチングが気孔部分102,残りの部分が炭素で覆われた炭素表面部分103であり、このようにサイジングにより銅が引き伸ばされた様子が示されており、2mm方眼のトレース用紙のフレームを写真上に重ね合わせ、方眼の升目の数を数え、銅表面部分101が189個、炭素表面部分103が434個となり、この場合、434個を621(189+434)個で割り、炭素被覆率が約70%が得られた。尚、表面の気孔部分102は除いて計算する。
【0023】
このようにサイジング(S4)を行うことにより、表面3の炭素を押し潰して軸受1の表面3の50%以上を炭素により覆うことができ、表面3を覆う炭素により軸受1の耐食性を向上することができる。
【0024】
このように本実施形態では、銅系の原料粉末を成形すると共に焼結してなる焼結合金軸受1において、気孔部分102を除いた表面3の50%以上を炭素で覆ったから、酸性の高温雰囲気中の使用においても、高い耐食性を備えた焼結合金軸受1を得ることができ、また、例えば、酸性の強い硫黄酸化物などに晒されても、銅と硫黄の化合物が形成され、耐食性を確保することができ、この銅を含む化合物により摺動性を確保することができ、排ガス雰囲気などの酸性が強く高温条件で耐久性を備えた焼結合金軸受1を得ることができる。
【0025】
また、このように本実施形態では、原料粉末が炭素を4〜10重量%含むから、このように原料粉末が炭素を多く含むことにより、表面3を炭素が覆う割合を大きくすることができる。
【0026】
また、このように本実施形態では、焼結合金が摺動部材である軸受1であるから、酸性の高温雰囲気中の使用においても、高い耐食性を備えた焼結合金軸受1を得ることができ、また、例えば、酸性の強い硫黄酸化物などに晒されても、銅と硫黄の化合物や銅と他の化合物などが形成され、耐食性を確保することができ、この銅を含む化合物により摺動性を確保することができ、排ガス雰囲気などの酸性が強く高温条件で耐久性を備えた焼結合金軸受1を得ることができる。
【0027】
このように本実施形態では、炭素を含む銅系の原料粉末を成形すると共に焼結して焼結合金軸受1を製造する焼結合金軸受1の製造方法において、軸受1をサイジングすることにより表面3の炭素を押し潰して気孔部分102を除いた表面3の50%以上を炭素で覆うから、酸性の高温雰囲気中の使用においても、高い耐食性を備えた焼結合金軸受1を得ることができる。
【0028】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、軸受は、実施形態のものに限らず種々の形状のもの適用可能である
【0029】
【発明の効果】
【0030】
【0031】
【0032】
請求項焼結合金軸受の製造方法は、銅系の原料粉末を成形すると共に焼結してなり、重量%で、Zn:15〜21%、Ni:15〜21%、P:0.2〜1%、C:4〜10%、を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金からなり、5〜25%の気孔率を有し、気孔部分を除いた表面の50%以上を炭素で覆った焼結合金軸受の製造方法において、前記焼結合金をサイジングすることにより表面の炭素を押し潰して前記気孔部分を除いた表面の50%以上を炭素で覆う方法であり、酸性の高温雰囲気中の使用においても、高い耐食性を備えた焼結合金軸受を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す製造方法を説明するフローチャート図である。
【図2】同上、焼結合金の斜視図である。
【図3】同上、サイジングを説明する断面図である。
【図4】同上、サイジング後の焼結合金の表面を撮影した拡大写真を図面化した図面である。
【符号の説明】
焼結合金
2 摺動面
3 表面
102 気孔部分

Claims (1)

  1. 銅系の原料粉末を成形すると共に焼結してなり、重量%で、Zn:15〜21%、Ni:15〜21%、P:0.2〜1%、C:4〜10%、を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金からなり、5〜25%の気孔率を有し、気孔部分を除いた表面の50%以上を炭素で覆った焼結合金軸受の製造方法において、前記焼結合金をサイジングすることにより表面の炭素を押し潰して前記気孔部分を除いた表面の50%以上を炭素で覆うことを特徴とする焼結合金軸受の製造方法。
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