JP3940259B2 - 燃料ポンプ及びそれを用いた筒内噴射エンジン - Google Patents

燃料ポンプ及びそれを用いた筒内噴射エンジン Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関における燃料供給用の新規な燃料ポンプに係わり、特に自動車エンジンの燃焼室に取り付けた燃料噴射弁から燃焼室に直接燃料を噴射する自動車の筒内噴射エンジン用燃料噴射装置の高圧ポンプに用いる燃料ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、内燃機関、特に自動車用ガソリンエンジンにおいては、燃料消費特性の向上,有害排気ガスの削減,加速性等の運転応答性の向上等の目的から筒内直接燃料噴射装置の適用が望まれている。
【0003】
筒内直接燃料噴射装置では、内燃機関の気筒内に、気筒内の圧縮行程時にも直接ガソリンを噴射する必要があるために、3Mpa以上の高圧でガソリンを供給できる高圧燃料ポンプが必要となる。
【0004】
高圧ポンプの型式の一つに、ハウジング内において、シャフトで回転する斜板の回転運動を揺動板により揺動運動に変換し、この揺動板の揺動運動により往復動するプランジャによって流体を吸入し、加圧して高圧で吐出する方式の斜板アキシャルプランジャポンプがある。
【0005】
この型式の高圧燃料ポンプについて、特開平9−236080 号公報がある。この公報には、外部からの駆動力を伝達するシャフトと、このシャフトによって回転される斜板と、この斜板の回転運動を揺動運動に変換する揺動板と、この揺動板の揺動運動により往復動する複数のピストンと、上記斜板および揺動板およびピストンを収納するクランク室を燃料室と機構室に分離する隔壁のベローズを備え、上記シャフトと上記斜板間の駆動力伝達をする軸受部と、上記斜板と上記揺動板間の駆動力伝達をする軸受部を上記機構室内に配置して上記軸受部を油潤滑するとともに、上記燃料室内に上記複数のピストンを配置して、それぞれのピストンにより、燃料を吸入吐出することを特徴とする燃料ポンプが示されている。
【0006】
この高圧燃料ポンプでは、ガソリンを供給する目的の使用に際しては、ガソリンを昇圧する機構部においては潤滑性に優れた高粘性油を用いることができない。それが燃料油に混入して燃焼に悪影響を及ぽすおそれがあるからである。そのため、隔壁のベローズによってクランク室は燃料室と機構室に分離されている。すなわち、機構室では耐摩耗性を改善するために潤滑性に優れた高粘性油を潤滑油として封入されて存在し、各機構部品の摺動面間の耐摩耗性等への対策が施されている。
【0007】
一方、この構造での高圧を発生させる機構部の燃料室内では、揺動板の揺動運動で往復動する複数のピストンの運動により燃料の吸入がされ、吐出がされて、それにより燃料は高圧になる。したがって、燃料室の流体として存在するのは燃料のガソリンのみである。そのため、各機構部の摺動部で潤滑油として作用するのはガソリンになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
燃料ポンプにおいて、回転斜板式アキシャルプランジャポンプではシャフトの回転を往復運動に変換する板式とスリッパは、エンジンからの回転が伝達されて低速域から高速域の領域において潤滑油(エンジンオイル)中で摺動する。潤滑油(エンジンオイル)中での摺動であっても、その摺動によっては材料に厳しい特性が要求される。すなわち、低速域から高速域における互いの部材の耐焼付き性、及び耐摩耗性が求められる。
【0009】
一方、燃料室内のポンプ部における燃料(ガソリン)を昇圧するプランジャとシリンダ等の機構部においては、燃料中での摺動となる。摺動環境の潤滑油としてガソリンが用いられると、ガソリンは、通常の潤滑油に比べ粘度が極端に小さいため、上記の摺動機構部においては互いの摺動面が摩耗し易いと考えられる。
【0010】
また、燃料には、ガソリンにメチルアルコール,エチルアルコールを添加したもの、あるいは劣化したガソリン等も使用される場合がある。そのようなガソリンにおいては、水分の混入,酸成分の混入等により、酸化摩耗の環境になる場合がある。その場合は摺動機構部の接触部の摩耗に対する環境としては更に厳しくなり、摺動部の損耗量が多くなると考えられる。
【0011】
これら、摺動環境が異なる潤滑油(エンジンオイル)及び燃料(ガソリン)中での摺動部が摩耗で損耗する部分となる。すなわち、摺動機構部の斜板とスリッパ、あるいは駆動カム、リフタ等の異常摩耗、すなわち焼付きは燃料ポンプの稼動停止に至る。またシリンダ内を往復運動するプランジャとの接触部が摩耗して損耗量が多くなると、吸入・吐出の効率低下などの可能性があり、信頼性の低下が考えられる。
【0012】
そのため、摺動機構部における各部品は、潤滑性の劣る燃料、あるいは酸化性成分が混入した燃料中での耐久性、特に耐摩耗性,耐食性が要求される。
【0013】
本発明の目的は、燃料室内の摺動機構部品が潤滑油(エンジンオイル)、あるいは潤滑性の劣る燃料、更には酸化性成分が混入した燃料中での耐焼付き性、耐摩耗性及び耐食性に優れた燃料ポンプとそれを用いた筒内噴射エンジンを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、自動車エンジンの燃料噴射弁に、燃料を加圧して供給する燃料ポンプにおいて、潤滑油中で互いに接触して摺動する部材は耐焼付き性、耐摩耗性及び耐食性に優れた組み合わせを有する耐摩耗材料とし、燃料中で互いに接触して摺動する部材表面の内、荷重を受けて摺動する部材として特にスリッパに鉄系焼結材でその表面にFe34を主とする酸化皮膜、部材自身の表面硬さを高める表面処理、更に耐食性と耐摩耗性とを有する被膜が形成されていることを特徴とする燃料ポンプにある。
【0015】
本発明は、ハウジング内に、外部からの回転を伝達するシャフトと、該シャフトの回転を揺動運動に変換する斜板と、該斜板の揺動運動をスリッパを介してシリンダ内を往復運動するプランジャとを備えた燃料ポンプにおいて、上記スリッパは鉄系焼結材からなり、その表面部にFe34を主とする酸化物層を有し、前記プランジャの外周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれかの硬化層が形成されていることを特徴とする燃料ポンプにある。
【0016】
即ち、前述の燃料ポンプにおいて、前記プランジャの外周面、互いに接触し潤滑油あるいは燃料を介して摺動するシリンダの内周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれかの硬化層を有することを特徴とする。
【0017】
本発明は、自動車エンジンの燃料噴射弁に燃料を加圧して送給する燃料ポンプにおいて、互いに接触し潤滑油あるいは燃料を介して摺動する一方の部材の摺動面となる円筒内周面及び前記一方の部材と摺動する他方の部材の摺動面となる外周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれかの硬化層を有し、前記一方の部材が鉄系焼結材からなり、その表面部にFe34を主とする酸化物層が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明は、燃料を燃焼室に直接噴射する好ましくは空燃比が45以上であるリーンバーン制御噴射する燃料噴射手段と、該燃料噴射手段に前記燃料を送給する燃料ポンプとを備えた筒内噴射式エンジンにおいて、前記燃料ポンプは前述のいずれかに記載の燃料ポンプからなることを特徴とする。
【0019】
本発明におけるスリッパ部材は鉄系焼結材からなり、その表面部に500〜600℃でのスチーム処理によりFe34を主とする酸化被膜が形成されているものである。鉄系焼結材は、重量で、C0.2〜0.8%を含むFe基合金、又はC0.2〜1.0%及びCu1〜5%を含むFe基合金、又は、C0.2〜0.8%、Cu0.5〜3%及びNi1〜8%を含むFe合金が好ましく、若干の空孔を有し、この空孔に潤滑油を含浸して潤滑性を高めることが出来るものである。
【0020】
本発明における斜板は鋳鉄、機械構造用合金鋼、合金工具鋼,あるいはマルテンサイト系ステンレス鋼の熱処理材、及びそれらの表面処理材であることがよい。
【0021】
本発明の硬化層は表面処理後に、表面処理温度と同等かそれより高い温度で加熱して脆弱な化合物を消失させる処理が好ましい。その拡散表面処理層は、窒化層,浸炭窒化層,軟窒化層,塩浴軟窒化層,浸炭焼入れ層、あるいはそれらを複層させた処理層に対して行われる。拡散表面処理層の窒化層にはFe3N (白色化合物層)が生成されていないことがよい。シリンダの硬化層としての窒化層は、450℃以下の処理温度で形成されるものがよい。
【0022】
本発明のプランジャ外周面への耐食・耐摩耗性被覆層として、炭化物,窒化物,炭窒化物から選ばれる金属化合物が用いられ、いずれもCVD又はイオンプレーティングによって形成する事が出来る
【0023】
本発明における互いに接して摺動する摺動部材には機械構造用鋼、鋳鉄、工具鋼,マルテンサイト系ステンレス鋼,合金鋼、及び軸受鋼を用いるのがよい。本発明におけるシリンダは、1つのブロックに3個の孔が設けられ、C0.25〜0.5%(好ましくは0.3〜0.45%)又は1〜2%(好ましくは1.3〜1.6%)、Cr5〜13%(好ましくは6.5〜8.5%)、Mo2%以下(好ましくは0.7〜1.5%)、V1%以下(好ましくは0.1〜0.6%)を含む合金工具鋼、あるいはマルテンサイト系ステンレス鋼が好ましく、その硬化層としての窒化層は、350〜500℃の処理温度で形成され、厚さ20〜40μmの塩浴による処理が好ましい。又、プランジャは、C1〜2%(好ましくは1.3〜1.6%)、Cr10〜113.5%(好ましくは11〜13%)、Mo2%以下(好ましくは0.7〜1.5%)、V1%以下(好ましくは0.1〜0.6%)を含む合金工具鋼、あるいはマルテンサイト系ステンレス鋼が好ましく、その硬化層としての窒化層は、500〜600℃の処理温度で形成され、厚さ70〜130μmのイオン窒化による処理が好ましい。
【0024】
燃料ポンプ室内の摺動機構部品が、潤滑油(エンジンオイル)及び燃料(ガソリン)中で摺動するに際して、各摺動部品の摺動条件に適した材質、表面処理及びその組合せを最適に設定した。潤滑油(エンジンオイル)中での各摺動部品は、特に高摺動速度(高周速)域での耐焼付き性を考慮し、そのような特性が得られる組織を呈した材質仕様とした。
燃料(ガソリン)中で摺動する各摺動部品は表面処理により耐摩耗性を高めた。その表面処理層として拡散表面処理層あるいは耐食・耐摩耗性硬質被膜を形成した。拡散表面処理層には、基材材質の特性を損なわない温度領域において、主に窒素を拡散させ、微細窒化物を析出させて硬さを高める窒化系として窒化層,浸炭窒化層,軟窒化層,塩浴軟窒化層がある。また、高温域で炭素を拡散させ、焼入れ熱処理によって高硬度を得る浸炭処理等が適用される。窒化系は窒化物生成元素が窒化物を形成することにより基材の硬さよりも高くなり、また凝着しにくい特性が得られ、基材の摩擦・摩耗に対する反応性が改善される。また窒化層は基材と連続した処理層であるため高面圧でも剥離しにくい特性がある。浸炭層は深い処理層が形成でき、高面圧を受ける際の耐荷重性が優れる。
また、拡散表面処理層は、耐食・耐摩耗性の金属化合物層を形成する際の下地層として形成されることにより、基材硬さを高めて高面圧に対する耐荷重性が向上して硬質被膜の耐剥離性も改善される。
【0025】
これらの構成により、摩擦抵抗が小さく、しかも一方の材料が他方の材料へ付着したり、凝着することがほとんど発生しない。したがって、初期摩耗,定常摩耗および焼付き等が防止される。これにより信頼性に優れた燃料ポンプが提供される。
【0026】
【発明の実施の形態】
〔実施例1〕
図1は斜板式アキシャルプランジャの燃料ポンプ(3筒式)の例を示す断面図である。ハウジング内に外部からの駆動を伝達するシャフト1と、シャフトを介して回転運動を揺動運動に変換する斜板9と、斜板の回転運動をスリッパ10を介して往復動させるプランジャ11と、プランジャ11と組み合わされて燃料を吸入吐出するシリンダボア13を有する斜板式アキシャルプランジャ燃料ポンプである。潤滑油(エンジンオイル)によって潤滑される斜板9とスリッパ10の平滑面は高摺動速度(高周速)域での耐焼付き性、スリッパ10とプランジャ11の球面座部は線接触による高面圧摺動での耐摩耗性を考慮した材質仕様とした。スリッパ10は鉄系焼結部材に後述する550℃のスチーム処理によるFe 3 4 を主とする酸化層を有するもの、燃料(ガソリン)によって潤滑されるプランジャ11とシリンダボア13の円筒面摺動部の摺動面として、いずれもその表面に窒化層,浸炭窒化層、浸炭焼入れのいずれかの硬化層、又は、プランジャ11の外表面に窒化層,浸炭窒化層、浸炭焼入れのいずれかの硬化層、シリンダボア13の内周面に耐食・耐摩耗性を有する炭化物,窒化物及び炭窒化物のいずれかの硬化層が形成されているものである。
【0027】
この燃料ポンプ構造は、従来の潤滑油と燃料を隔離するベローズが不要で、且つ駆動機構部の潤滑が十分なように、プランジャ11とシリンダボア13の摺動部端部にシール部材を設けたことにより、ガソリン中での摺動部材を少なくしたものである。
【0028】
図1に示すように、エンジンのカム軸から伝達される駆動力を伝えるカップリング2はカップリング2に嵌合したピン3で連結されたシャフト1を有している。シャフト1には、半径方向に広がり且つ端面部は斜めの平面を形成した斜板9とが一体になっている。斜板9にはスリッパ10が接触し、スリッパ10の斜板9側外周部にはオイルによる斜板9とスリッパ10との間の油膜形成を補助するテーパが設けられている。またスリッパ10のもう一方側は球面形状になっており、シリンダボア13内を摺動するプランジャ11に形成された球面に支持され、斜板9が回転することで発生する揺動運動は、プランジャ11の往復運動に変換される。
【0029】
この構造のポンプにおいて、燃料の吸入・吐出は次のように行われる。複数のシリンダボア13とプランジャ11とによって、シリンダ12内にポンプ室14を形成している。このポンプ室14へ燃料を供給するように、シリンダ12の中央部に各プランジャ11へ連通する吸入空間15を設けている。この吸入空間15に燃料を導くため、リアボディ20にポンプ外部の燃料配管が取り付けられ、リアボディ20内の吸入通路を通り、リアボディ20の中央部の吸入室30を前記シリンダ12に設けた吸入空間15とが繋がるようになっている。
【0030】
プランジャ11内には、燃料を吸入するための吸入バルブ24(チェックバルブ)がボール21とスプリング22及びスプリング22を支持するストッパ23で形成されている。プランジャスプリング25は、プランジャ11を常に前記斜板9側へ押し付け、スリッパ10と共にプランジャ11を斜板9に追従させる目的で挿入されている。
【0031】
プランジャ11内の吸入バルブ24への連通路A16は、シリンダボアに設けたザグリ51と吸入空間15との連通路として形成されている。ザグリ51はシリンダボア13径より大きい径であり、常にプランジャ11内に燃料を導入できるように、ポンプ室14が十分小さくなった時(プランジャ位置が上死点の時)にも導入孔19とザグリ51とが連通する程度の深さまで形成されている。
【0032】
図2は、吸入及び吐出行程を説明するプランジャ11の拡大図を示す。吸入行程(ポンプ室14の空間が大きくなる方向にプランジャ11が移動する行程)において、プランジャ11内に設けたポンプ室14内の圧力が規定の圧力以下になった時点で、プランジャ11内に設けた前記吸入バルブ24は開口し、燃料をポンプ室14に吸い込む構造になっている。また前記吸入行程間にポンプ室14に吸入された燃料は、吐出行程(ポンプ室14の空間が小さくなる方向にプランジャ11が移動する行程)に移ると、吸入バルブ24と同様にポンプ室14が規定の圧力に達した時点で、ボール26とスプリング27で構成された吐出バルブ28が開口し、燃料をポンプ室14から前記リアボディ20に設けた吐出室29に送り出す構造になっている。ここでリアボディ20に設けた吸入室30と吐出室29はOリング31で分割され、吸入室30を吐出室29より中央側に設けて、ポンプ自身の通路構成をコンパクトにしている。
【0033】
ポンプ室の燃料圧力により発生する荷重は、プランジャ11及びスリッパ10を介して前記シャフト1の斜板9へ伝達される。つまり斜板9へは複数あるプランジャ11の荷重分の合力が作用する。この合力は、軸方向の荷重と斜板角分のラジアル荷重として作用する。これらの荷重を支持しスムーズな回転を達成するために、シャフト1にはラジアル軸受7及びスラスト軸受8が嵌合し、その荷重をボディ5で支持する構造としている。
【0034】
これらの荷重を支持する部分(スリッパ10/斜板面9,スリッパ10/プランジャ球面及び軸受部)は、回転による相対速度と荷重を支持する部分であり、オイル潤滑とすることで、摺動摩耗を低減できる。このためにはボディ5とシリンダ12の間に形成される斜板室38にオイルを貯留させる構造が必要になる。
【0035】
本実施例では、プランジャ11の往復運動時に燃料とオイルをシールするシール17をシリンダ12に設けている。この往復摺動するシール17は、プランジャ11とシリンダボア13との隙間をシールしており、このシール17が燃料とオイルのシール部材となる。なお本実施例ではシール17へ作用する圧力は、シール17とポンプ室14の間に連通路16が存在するため、常に低圧の前記吸入圧となり、シール17には高圧室の圧力が付加されない構造となっている。このことによりシール17の耐久性及び信頼性を高めている。
【0036】
図3は、オイル循環経路及び循環方法について説明するエンジン部の斜視図である。軸中心にオイル経路34を設けたエンジンカム6のカップリング嵌合部33に、軸シール35とカップリング2を貫通したシャフト1を嵌着し、シャフト1の中心に設けた斜板室38との連通路4を通じてエンジンからオイルを導入する構造とした。前記軸シール35はオイルを完全にはシールせず、エンジン側より斜板室38への必要最低限の流量を確保する程度とした。これにより、軸シール35を介して駆動軸にエンジンカム6とシャフト1との芯ずれによる偏芯荷重を極力抑えることができ、ラジアル軸受8の耐久性を向上させている。また斜板室38に流入するオイルを必要最低限とすることにより、斜板室38の温度上昇を抑制しつつ、前記シール17より斜板室38へ漏洩する燃料によって希釈されたオイルの置換を達成している。また、シャフト1の中心よりオイルを導入することにより、エンジン側に新規にオイル通路を設定することなく目的を達成しているため、エンジンとの適合性及びエンジンの小型化を達成している。
【0037】
本実施例では、シャフト中心に設けた連通路4よりオイルを導入しているが、オイル導入路はエンジンの油圧源とポンプの斜板室38とを連通するように設ける。
【0038】
次にエンジンから斜板室38に供給されたオイルをエンジンに戻すための通路について説明する。この通路は斜板室38よりエンジンカム室39への戻り通路36によって構成している。この戻り通路36はポンプのボディ5に設けたエンジンとの取り付けフランジ面37よりカップリング2側に設けた。これによりエンジン側に特別な通路を設けることなく斜板室38内のオイルをエンジンに戻すことができる。戻り通路36により、斜板室38から流出するオイル量が流入するオイル量を下回らないようにし、斜板室38内の圧力が上昇しないように配設することによりシール17の信頼性を高めている。斜板室38内の圧力が上昇せず、常に燃料の吸入圧より低くなることにより、オイルが燃料側に漏れるのを防止している。
【0039】
以上の構成で、従来の斜板式アキシャルプランジャポンプと大きく異なっている点は、斜板が回転するため、斜板とスリッパは潤滑油中において高周速で摺動することになる。この斜板の回転運動がスリッパを介することで揺動運動に変換されてプランジャが往復運動する。この際、プランジャとシリンダボア間の摺動部にシール部材が設けられていて、潤滑油と燃料を隔離するようになっている。これによりガソリン中で摺動する構成部材の点数が少なくなっている。
【0040】
これらの摺動部材として、始めに、潤滑油(エンジンオイル)によって潤滑される斜板9とスリッパ10の平滑面の材料構成について説明する。 エンジンからの駆動力がシャフトに伝達されて斜板は回転する。その回転数はエンジン回転数の1/2であり、アイドリングから高速域までの回転数になる。その際、斜板とスリッパの摺動速度は0.3〜5m/minとなり、またその面圧は吐出圧力によって異なるが8MPa程度になる。したがって、高周速で摺動することで、斜板とスリッパの焼付きを生ぜず、且つ定常摩耗量も少ない材料構成が要求される。そこで各種材料の特性を評価し、斜板とスリッパの材料構成を検討した。
【0041】
図4は、斜板とスリッパの材料構成を耐焼付き性試験により検討した結果を示すグラフである。斜板用材料には駆動力伝達のシャフトとしての機能もあるため、曲げ、及び疲労強度も必要になる。そこで斜板用材料として、機械構造用鋼の肌焼き鋼ではSCM415等の浸炭焼入れ材,調質鋼のSCM435では窒化処理材、ステンレス鋼ではSUS403、SUS420J2の窒化材、鋳鉄ではオーステンパー処理により高強度,高靭性とした球状黒鉛鋳鉄(ADI)を供した。
【0042】
スリッパに要求される材料仕様は,耐摩耗,耐焼付き性,圧縮強度(球面側最大発生面圧以上)である。スリッパ用材料には,ステンレス鋼のSUS403窒化材,合金工具鋼のSKD11焼入材、アルミニウム合金ではAl-Si合金(A390)、銅系合金では,珪化物分散のアルミニウム青銅合金,高力黄銅合金、及び鉄系焼結材(SMF4種,引っ張り強さ400〜500N/mm2)の焼結材のまま,浸炭焼入れ材,酸化被膜形成材(550℃のスチ−ム中で酸化処理)を用いた。酸化被膜形成材はFe34を主とする皮膜を有するものである。またSUS403窒化材及びSKD11窒化材を基材とし、イオンプレ−ティングによりTiN及びCrN被膜(3〜5μm)を形成したスリッパも供した。
【0043】
これらの斜板とスリッパの耐焼付き性の要素試験を、回転摺動摩耗により行った。方式は回転円板(斜板)にスリッパを押付けて,摺動運動させるものである。可動片はφ100×8mm,固定片はスリッパである。試験条件として,摺動速度は低速と高速の2種類とし,低速はアイドリング時(250r/min)に相当する0.36m/s,高速は最高回転数(3200r/min)の5.0m/sである。荷重は,初期なじみの5min間は0.98MPaとし,それ以後は2min経過毎に0.98MPa増加させ,29.4MPaまで加えた。摩擦環境は潤滑油(エンジンオイル)を用いた。
【0044】
図4-1及び図4-2の耐焼付き性試験結果を見ると、スリッパ材料間の優劣,あるいは斜板材料との組合せの影響が現れている。SUS403窒化材スリッパ(Hv±750)の場合では,可動片がSUS403窒化材(Hv1100)になり高硬度で同種材の組合せになると焼付き面圧は6.9MPaと低くなる。硬さが同程度のSCM435窒化材(Hv660)では低速では29.4MPaにおいても焼付きは生ぜず,高速でも27.4MPaの値であり優れている。硬さが低いFCD500ADI材では低速では29.4MPaにおいても焼付きはないが,高速では9.8MPaで焼付いており,高速域では球状黒鉛の固体潤滑性や保油効果よりも基地の硬さの低いことが影響している。
【0045】
合金工具鋼のSKD11焼入れ材スリッパ(Hv613〜697)では,可動片がFCD500ADI材で低速の場合には29.4MPaでも焼付きはない。しかし,高速になるとSCM415浸炭焼入れ材(Hv700)あるいはFCD500高周波焼入れ材(Hv550〜650)のいずれでも,焼付き面圧は低い範囲にある。したがって,硬い基地に硬質炭化物が分散している組織のSKD11材は,高速摺動の耐焼付き性が劣ることが分かった。
【0046】
Al-Si合金スリッパでは,可動片の鋳鉄の熱処理に関わらず,全般的に優れた耐焼付き性を示した。このように,軟質材であるAl-Si合金は一様に分布した硬質の塊状の初晶Siや微細な共晶Siが相手材と接触し,軟らかい基地は凹形状になって油膜を維持できる組織の効果によって耐焼付き性が優れている。
【0047】
銅合金スリッパの焼付き面圧は,可動片がFCD500高周波焼入れ材(Hv550〜650)の場合に,低速,高速共に29.4MPaにおいても焼付きは生じなく,優れた耐焼付き性を示す。この銅合金では自己潤滑性の六方晶のMn5Si3珪化物が相手材と接触し,軟らかい基地は凹形状になって油膜を維持できる組織効果がある。
【0048】
鉄系焼結材スリッパの浸炭焼入れ材、あるいは焼結のままの焼付き面圧は,低速,高速共に29.4MPaにおいても焼付きは生じなく,優れた耐焼付き性を示している。焼結材に存在する特有の空孔によって油保持効果が得られ耐摩耗,耐焼付き性に優れる特徴を呈している。 酸化被膜形成材の焼付き面圧は,高速において僅かに低下している。これは,スチ−ム処理により焼結材特有の空孔が封孔されてしまうために、保油効果の減少により特に高速域での潤滑性の低下,及び酸化膜が破壊した際にそれが硬質の異物となって焼付きの起点になる可能性が考えられる。しかし、実機最大想定面圧以上の焼付き性は満足している。
【0049】
TiN及びCrN被膜を形成したスリッパの焼付き面圧は,窒化基材スリッパに比べて2〜3倍向上し、その効果が顕著に現れている。これはTiNやCrNがHv2000〜3000の超硬質であり,また化学的に安定であることから,摺動面において凝着を生じにくいことに起因している。なお,基材の窒化層は,基材の硬さを高めることにより摺動面に発生する高応力によるTiNやCrNの座屈を防ぐ作用がある。
【0050】
以上の結果により,スリッパ及び斜板用材料として、スリッパはSUS403窒化材,Al-Si合金,銅合金,鉄系焼結材,TiN,CrN被膜,斜板にはSCM435窒化,鋳鉄の組合せは実機ポンプでの最大発生面圧(7.9Mpa)における耐焼付き性を満足することを見い出した。
【0051】
これらのスリッパ及び斜板用材料の組合わせにおいて実機ポンプでの摩耗試験を行った。台上エンジン試験により,実機ポンプにおいて種々の材料からなる斜板,スリッパを組み込み,耐摩耗性を評価した。試験条件は燃温:95℃,潤滑油油温:135℃,燃圧:7MPa,ポンプ回転数:400r/minで試験した。その結果、これらのスリッパ用材料と斜板との摺動による摩耗は殆どなく,ポンプとして問題にならない値(0〜2μm)であった。
【0052】
次に、スリッパ10とプランジャ11の球面座部の耐摩耗性を評価した。その結果、スリッパ球面側はプランジャ(SKD11窒化)との摺動により摩耗が生じ,材料間に顕著な差が現れた。
【0053】
図5は、スリッパ用材料としてSUS403窒化材,Al−Si合金,鉄系焼結材(550℃のスチーム処理による酸化膜形成)と斜板にFCD450ADIを組合せた実機ポンプでの摩耗試験結果で,スリッパ球面側の球面高さ変化(摩耗量)と耐久時間との関係を示す図である。各材料のスリッパ球面側の摩耗量と耐久時間との関係を見ると,材料間に顕著な差が出ている。すなわち,Al−Si合金の摩耗量は40〜140μmで多く、鉄系焼結材、及びSUS403窒化材は少ない。Al−Si合金の球面側摩耗量が多い要因としては,球面側は硬質なSKD11窒化プランジャと線接触での摺動によるため,軟質なAl−Si合金に摩耗が生じる。その際,硬質の塊状の初晶Siや微細な共晶Si粒子が摩耗粉となり,アブレシブ摩耗が促進されてしまうことによると考えられる。このアブレシブ摩耗を少なくすることが重要になり、そのためには,スリッパ材質の硬さを高くすることである。図5の評価結果もそれを示すものである。
【0054】
スリッパ10とプランジャ11の球面座部の摺動における耐摩耗性への影響因子として、雰囲気温度、すなわち潤滑油であるエンジンオイルの温度がある。実機ポンプでのエンジンオイル保証温度は140℃である。しかし,安全率を考えるとこれ以上の温度域においても耐摩耗性を維持することが必要である。そこで,台上エンジンでの実機ポンプの材料組合せにおいて耐摩耗性に優れていた鉄系焼結材(酸化被膜形成)、及びSUS403窒化材スリッパについて,エンジンオイル温度を変化させた際の耐摩耗性に及ぼす影響を,要素摩耗試験により評価した。
【0055】
試験は松原式摩耗試験機を用い,密閉容器内でスリッパを回転側治具,プランジャを固定治具に組み込み,固定治具に荷重を負荷した。雰囲気は窒素ガスとし、圧力は3.5MPaに制御した。試験条件は,スリッパ回転数:15及び60r/min,試験時間:120min,荷重:1.08kNとし,潤滑油温度を30〜160℃に変化させた。
【0056】
図6は、鉄系焼結材(550℃のスチーム処理による酸化被膜形成)及びSUS403窒化材スリッパと,SKD11窒化材プランジャの摩擦係数に及ぼすエンジンオイル温度の影響を示す。摩擦係数に及ぼすエンジンオイル温度の影響を見ると,SUS403窒化材スリッパではエンジンオイル温度が高くなるにつれて摩擦係数も高くなる傾向にある。それに対し,鉄系焼結材(酸化被膜形成)は温度が上昇しても摩擦係数の大きな変化はなく摩擦係数は0.1程度で一定である。
【0057】
図7は、本発明で用いた鉄系焼結材(酸化被膜形成)スリッパの一例の断面組織を示す。表面及び内部の空孔に接した基材表面に灰色をした酸化被膜が形成され、基材はパーライト組織を呈している。この鉄系焼結材(酸化被膜形成)は,スチ−ム処理による酸化膜の存在による摩擦力の低減,及び温度が上昇して摩擦面の油膜の減少を焼結材特有の空孔の保油効果により補う潤滑効果によると考えられる。一方,平滑面同士の摩擦面となるSUS403窒化材ではそのような潤滑効果がないため,摩擦力の増加を生じることになる。図に示すように、鉄系焼結材には、100μm×70μmの視野の中に5〜20μm前後の大きさの空孔が5個存在していた。
【0058】
この結果から,鉄系焼結材(酸化被膜形成)からなるスリッパは,SUS403窒化材からなるスリッパより高温域まで安定であることが分かった。したがって,スリッパ材質としては,実機ポンプの保証温度(140℃)より高温域まで耐摩耗性に優れている鉄系焼結材(酸化被膜形成)スリッパが適当である。また鉄系焼結材は量産性に優れ、廉価であることから、生産性の観点からも望ましいものである。
【0059】
一方、斜板の材料仕様としてはFCD450ADIが用いられる。他の斜板部材は機械構造用合金鋼の表面処理材、及びその表面処理材が適用できる。機械構造用合金鋼の表面処理材としては、例えばクロムモリブデン鋼SCM415の浸炭焼入れ、クロムモリブデン鋼SCM435の窒化等が用いられる。これにより、燃料ポンプとして要求される斜板9とスリッパ10との高周速摺動による耐焼付き性、スリッパ10とプランジャ11の球面座部の摺動における耐摩耗性を満足する材料仕様を見出した。
【0060】
次に、燃料中で稼働し、摺動する部材で、耐食・耐摩耗性が要求される主なものとしては、ポンプ室の加圧部材であるプランジャとそれを往復摺動可能に支持する摺動孔を有するシリンダのシリンダボアがある。特に、プランジャとシリンダボアの径ギャップは、加圧室からの燃料漏れを最低限にするために10μm以下としている。そのため、摩耗による径ギャップの増大等によるポンプ性能の低下が生じる。
【0061】
また、プランジャは燃料とオイルをシールする軸シールとの摺動部においても、耐食・耐摩耗性が要求される。この摺動部における摩耗は、オイルへ燃料が漏洩すると、オイルが希釈され、潤滑性能の低下、更に燃費の低下も生じるので、好ましくない。
【0062】
そこで、プランジャ及びシリンダブロックの材料構成は次の通りである。プランジャの外径とシリンダボアは初期的には線接触状態で摺動するため、高い面圧(ヘルツ応力)になる。そのため、材料としては高硬度であることが望ましい。シリンダブロックはプレス加工等により製品形状に加工できて生産性がよいマルテンサイト系ステンレス鋼のSUS440C,SUS420J2 材を焼入・焼戻しをして用いられる。また、SKD61,SKD11材等その他の合金工具鋼も焼入・焼戻しをしても用いられる。SUS440C,SUS420J2 材は焼入・焼戻しにより基材の硬さがHv500〜700になる。また、ステンレス鋼のため耐食性がよい。
【0063】
しかし、プランジャ材質との組合わせの種類によって摺動条件が過酷にるなどした場合によってはシリンダブロックの上記材質の基材硬さが不足により、プランジャとシリンダボアの間で異常摩耗を生じる可能性がある。そこで、上記材質の基材硬さより更に高硬度にして耐摩耗性を得るため、表面処理が適用されて供される。プランジャの材料も同様である。シリンダブロックよりも高面圧になることから、更に高硬度にして耐摩耗性を得るため、表面処理が適用されて供される。
【0064】
本発明では、シリンダブロックのシリンダボア及びプランジャの表面構造は、基材に拡散表面処理層が形成されている。あるいは、拡散表面処理層よりも更に高硬度にして耐食、耐摩耗性を得るため、耐食・耐摩耗性硬質被膜を設けられている。
【0065】
拡散表面処理層は窒化系で、基材材質の特性を損なわない低温域処理において、主に窒素を拡散させ、微細窒化物を析出させて硬さを高めるもので、窒化層,浸炭窒化層,軟窒化層,塩浴軟窒化層がある。表面硬さはHv1000以上の硬い表面層を容易に形成できる。また、凝着しにくい特性が得られ、基材の摩擦・摩耗に対する反応性が改善される。この拡散表面処理層は、基材と連続した処理層であるため高面圧でも剥離しにくい特性がある。
【0066】
拡散表面処理層の形成の一つにイオン窒化法が用いられる。この処理法は、減圧容器(陽極)内に処理品を陰極に配設し、窒素源ガス(N2)と希釈ガス(H2)を導入して直流の高電圧を印加して直流放電(グロー放電)を発生させ、直流プラズマでイオン化したNを内部に拡散させるものである。
【0067】
例えばマルテンサイト系ステンレス鋼SUS403材のイオン窒化によって処理された最表面部では、脆弱で白色化合物と言われるFe窒化物のε相であるFe2N,Fe3Nとγ′相のFe4N 、及びCr窒化物のCrNが形成される。このことから、本発明で拡散表面処理層にイオン窒化処理の窒化層を用いる場合には、最面部10μm程度は研削等により除去するのが好ましい。イオン窒化処理に際して、脆弱な白色化合物のε相を除去する他の方法として、窒化処理と拡散処理も適用できる。その際に窒化層硬さも制御できる。
【0068】
図8に示すように、(a)の処理工程は、窒化処理と拡散工程を連続して行うもの、(b)の処理工程は窒化処理と拡散工程を不連続の工程で行うものである。拡散工程は真空熱処理炉、非酸化雰囲気中、例えば不活性ガスのN2 ,Ar等での雰囲気熱処理炉による処理も適用できる。
【0069】
図9は一実施例のプランジャの合金工具鋼SKD11材の拡散表面処理層である窒化層硬さの分布状態をグラフで示した図である。窒化層の表面硬さはHv1000以上,硬化深さとしてHv500以上で0.1mm以上を目標にした。処理条件は温度;530℃,時間;8時間,ガス組成;N2/H2=1/3,圧力(ピラニー);0.3Paである。工具鋼SKD11への窒化のままの硬さ分布を見ると、表面から25μmの位置でHv1060を示し、表面から内部になるに従って漸次低下して基材硬さになっている。
【0070】
この硬さの分布の処理品を拡散工程を行った。イオン窒化処理で、温度;550℃,時間;2.5時間,ガス組成;H2のみ、圧力(ピラニー);0.3Paである。窒化処理後に拡散工程を行ったものの硬さ分布状態は、表面部でHv1010の値を示した後、内部になるに従って漸次低下して基材硬さになっている。
【0071】
その表面層の解析結果では、白色化合物のε相であるFe2N,Fe3Nが消失し、存在していなかった。この結果により、窒化処理と拡散処理によれば、脆弱なε相の表面を研削する必要がなく、且つ硬さが制御されて靭性のある窒化層が形成されいる。
【0072】
窒化層は、基材に添加されて基地に固溶している窒化物形成元素、例えばCrと化合して窒化物のCrNを形成する。そのため、ステンレス鋼等の高Crの鋼種においては、Crの添加によって耐食性が優れている特性が、基地のCrが窒化物を形成することでその濃度が低下してしまい、ステンレス鋼でなくなる。そのため、耐食性の低下が見られる。
【0073】
そこで、拡散表面処理層の窒化層形成において耐食性を低下させない窒化処理(以下、低温域窒化処理)を適用した。すなわち、窒化温度を450℃以下で行うことにより、基地のCrが窒化物を形成することを抑制し、S相が形成されるものである。その処理にはガスあるいは塩浴による処理法がある。しかし、この処理で形成される窒化層は窒化温度が低いことから処理深さは薄い。したがって高い負荷(応力)がかかる摺動機構部には不適である。
【0074】
シリンダブロックの表面処理としてイオン窒化は、シリンダボアを有しているその形状ため狭隘部にグロー放電が発生しない領域が生じることから、均一に窒化層を形成する目的には不適である。そこで、シリンダボアの拡散表面処理層の窒化層形成には塩浴による低温域窒化処理を適用した。
【0075】
図10は、合金工具鋼(7%Cr-Mo-V鋼)のシリンダブロックを塩浴によって低温域窒化処理したシリンダボア部の硬さ分布を示す図である。処理条件は温度450℃で2時間である。表面から10μmの位置で約Hv1200の高い値を示し、全硬化深さは0.03mm程度の窒化層が形成されている。その表面には脆弱で白色化合物と言われるFe窒化物のε相は形成されていない。したがって、プランジャとの摺動に際しての耐摩耗性が確保される。
【0076】
図11は、拡散表面処理層の窒化層の耐食性を示す孔食電位と自然電位との関係を示す図である。試験電位70℃、試験溶液E13.5vol%+ベース酸濃度+H2O、ベース酸濃度塩素イオン5ppm、硫酸イオン6ppm、賞賛イオン6ppm、酢酸イオン61ppm、蟻酸イオン46ppmである。図11に示すように、自然電位、孔食電位ともに貴な電位程耐食性は優れることを示している。低温域窒化処理したSKD11,SUS420J2の自然電位、孔食電位はいずれも他の比較材、あるいは一般的な窒化処理材に比較して貴な電位であり、したがって耐食性が優れている。
【0077】
以上の構成からなる、図1の斜板式アキシャルプランジャポンプの実機耐久試験を行った。その結果、ポンプは異常なく稼働し、ガソリン吐出流量性能も安定した値が得られた。試験後、分解して燃料室内の各部品の検査結果、上記のいずれの部品においても異常摩耗の発生は認められず、定常摩耗状態であった。
【0078】
以上の結果により、本発明法の鋳鉄の斜板、鉄系焼結材(酸化被膜形成)のスリッパ、SKD11窒化プランジャ、低温域窒化合金工具鋼のシリンダで構成したポンプでは、摺動部品間での凝着しにくく、耐摩耗性が優れた特性がある。これらの特性によって過酷環境下における摺動耗性が改善され、目的の燃料ポンプが可能になった。
【0079】
〔実
図12は図1の一部拡大した詳細を示す断面図である。図1の斜板式アキシャルプランジャ高圧燃料ポンプにおいて、更に耐食、耐摩耗性の要求され摺動機構部を構成する際の他の実施例を説明する。ガソリンはシリンダ12に設けられた吸入空間15,連通路A16,ザグリ51からプランジャ11内のへの連通路A16,導入孔19,吸入バルブ24の順で流入し、加圧される。その際、シリンダ12に設けられたシール17により、プランジャ11の往復運動時の燃料とオイルをシールする。このシール17(弾性体、例えばゴム)とプランジャ11の摩耗、プランジャ11とシリンダボア13との摩耗に対処するものである。耐食、耐摩耗性の要求され摺動機構部として、プランジャ11に最表面に耐食・耐摩耗性硬質被膜11aを形成した。耐食・耐摩耗性硬質被膜としては、低温域で緻密な被膜を高密着力で形成できる物理蒸着法のイオンプレーティング等が適用でき、例えばアークイオンプレーティング、ホローカソード方式、アーク放電方式、あるいはスパッタリング方式であってもよく、方式にはとらわれない。被膜は、炭化物ではTiC,WC,SiC、窒化物ではTiN,CrN,BN,TiAlN、炭窒化物ではTiCN等が、目的により選定されて形成される。
【0080】
図11において耐食・耐摩耗性硬質被膜の耐食性を見ると、耐食・耐摩耗性硬質被膜の自然電位、孔食電位は貴な電位であり、したがって耐食性が優れている。したがって耐食性が優れている。耐食・耐摩耗性硬質被膜は、相手材料との間に生じる金属移着現象を抑え、凝着や焼付き現象を阻止する効果があり、摩擦抵抗が小さく、初期摩耗,定常摩耗および焼付き等が防止される。そのため、腐食摩耗の影響が少なかった。このことにより、腐食環境が厳しい燃料中における摺動部材としての稼動ができる。
【0081】
本実例では、プランジャ11の表面処理層11aは、耐食・耐摩耗性硬質被膜を形成した。基材は合金工具鋼SKD11とし、その表面にCrNを3μm形成した。他の摺動部は実施例1と同様とした。この構成からなる、図1の斜板式アキシャルプランジャポンプの実機耐久試験を行った。その結果、ポンプは異常なく稼働し、ガソリン吐出流量性能も安定した値が得られた。試験後、分解して燃料室内の各部品の検査結果、上記のいずれの部品においても異常摩耗の発生は認められず、定常摩耗状態であった。一方、無処理のものでは、プランジャ11外径面とシール17の摺動部において、若干摩耗が生じでいた。
【0082】
以上の結果により、本実験例で構成したポンプでは、摺動部品間での凝着しにくく、耐摩耗性が改善された。耐食・摩耗性硬質被膜と拡散表面処理層で構成した表面処理層を形成したために高面圧でも剥離しにくく、耐食性に優れた特性がある。これらの特性によって過酷環境下における耐摩耗性が改善され、目的の燃料ポンプが可能になった。
【0083】
〔実施例
図13は、実施例1及び実験例1の燃料ポンプを用いた本発明の自動車用ガソリン筒内直接燃料噴射式内燃機関の断面図である。シリンダヘッド70に備えられている燃料噴射弁61は燃料ギャラリから供給された燃料を燃焼室74内に直接燃料を噴射するように、その先端部を開口している。本実施例では超リーンバーンにてガソリンを超微粒化して気筒内に直接燃料を燃料噴射弁61へ燃料を供給する高圧燃料ポンプを備えたエンジンで構成されている。
【0084】
点火プラグ63は吸気弁64と排気弁65の間に備わっており、吸気弁64が開いている間にフラットピストン68の動きにより吸気ポート66から吸入した吸気と噴射弁61から噴射された燃料の混合気に対して電気火花による点火で燃焼を開始させる。燃焼後のガスは排気弁65が開いている間にピストン68の動きにより排気弁65から排出される。
【0085】
燃料噴射弁61の噴射弁駆動信号端子71には燃料噴射弁駆動回路62が電気的に接続されている。また、燃料噴射弁駆動回路62には燃料噴射弁駆動トリガ信号、および弁体の動作遅れを短縮するように燃料噴射弁を駆動するかしないかの信号を出力する電子制御ユニット(ECU)69が電気的に接続されている。なお、電子制御ユニット69にはエンジンの各運転状態が入力され、その運転状態に応じた燃料噴射弁駆動トリガ信号を決定する。
【0086】
吸気ポート66からの空気量はアクセルに連動して動く2個所の電磁的手段Mによってコントロールされる。燃焼後の排気ガスは低酸素ストレージ型三元触媒72により炭化水素,一酸化炭素及びNOxを除去し、更にリーンNOx触媒73によってNOxが除去される。本実施例においては、燃料噴射弁61から燃料を粒径25μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下に気液超微粒化して筒内に噴射させるとともに空燃比50の超リーンバーンにて駆動させるものである。
【0087】
三元触媒72にはアルミナ担体にPt又はそれにCeを担持、NOx触媒73にはアルミナ担体にPt又はそれにNa,Tiの酸化物を担持させたものが用いられる。
【0088】
燃料噴射弁61の全体構造は次の通りである。それはシリンダヘッド70に装着される。即ち、燃料噴射弁61は、ハウジングに固定され、コア,コイルASSY,アマチュア,スワラー弁装置を有し、この弁装置はハウジングの一端にかしめにより支持されている。また弁装置は、小径円筒部および大径円筒部を持つ段付中空円筒形の弁本体と、この弁本体内で中心孔先端に固着されて燃料噴射孔を有する弁座と、ソレノイド装置により弁座に離接して燃料噴射孔を開閉する弁体であるニードルバルブとを備えている。コイルASSYの下端面に接して上記ハウジングとコアを囲む空間で、燃料圧力印加側に配置された2個のOリングを有する。燃料噴射孔の直径は0.8mm である。
【0089】
次に動作について説明する。コイルに通電すると、アマチュア,コア,ハウジングで構成される磁気回路に磁束が発生し、アマチュアはコア側へ吸引動作し、アマチュアと一体構造であるニードルバルブが弁座から離れて間隙が形成されると、高圧の燃料は弁本体から弁座の噴射孔内に入ってその先端出口から前述の如く超微粒化して噴霧される。
【0090】
また、燃料噴射弁61はシリンダヘッド筒内に対し2〜10mm突出している。特に、弁本体,弁座,ニードルバルブ及びスワーラーはJIS規格SUS44Cの1%C,16%Crフェライト系ステンレス鋼の冷間塑性加工後焼鈍し、最終形状への切削加工によって製造したものである。噴射孔の直径は0.8mm であり、その内径の真円度は0.5μm以下である。
【0091】
燃料噴射弁61の先端部分へ以下の様に有機皮膜を形成する方法、及びその効果を以下説明する。本実施例は、燃料噴射孔とその周辺近傍に厚さ1.5 〜8nmの有機皮膜を設けたこと、或いは、燃料噴射孔表面に有機皮膜を設けた燃料噴射弁であって、前記噴射孔は燃料を粒径20μm以下に噴霧する口径を有すること、前記噴射孔の口径が0.3〜0.8mm であること、前記噴射孔とその周辺近傍が重量で、C0.6〜1.5%,Si1%以下,Mn1.5%以下及びCr15〜20%を含むフェライト系ステンレス鋼からなることの1つ又は2つ以上の組合せによって得られる。
【0092】
そして、その有機皮膜は、ベース金属との共有結合によって結合されているものであり、その厚さは1.5 〜30nmが好ましく、より1.5 〜10nmが好ましく、最も1.5 〜7nmが好ましい。
【0093】
また、有機皮膜として、パーフルオロポリエーテル化合物,4弗化エチレンモノマー,珪素樹脂,ポリアミド樹脂等のグロー放電下での形成,テフロン樹脂,金属アルコキシドとフルオロアルキル基置換アルコキシドとの溶液によって得られる膜等が使用可能である。
【0094】
本実施例は、燃焼室内に吸気手段及び排気手段を有するシリンダヘッドと、該シリンダヘッド内を往復運動するピストンと、前記燃焼室に燃料を噴射するように設置した燃料噴射手段と、該燃料噴射手段から噴射した燃料に着火する点火手段とを備えた筒内噴射式エンジンにおいて、前記燃料ポンプ及び前述の燃料噴射弁を用いることができる。
【0095】
更に、本実施例は、燃焼室内に吸気手段及び排気手段を有するシリンダヘッドと、該シリンダヘッド内を往復運動するピストンと、前記燃焼室に燃料を空燃比45以上のリーンバーン制御噴射するように設置した燃料噴射手段と、該燃料噴射手段から噴射した燃料に着火する点火手段とを備えた筒内噴射式エンジンにおいて、前記燃料噴射手段は前記燃料を噴霧する噴出孔とその周辺近傍の表面に有機皮膜が設けられていること及び前述の燃料ポンプを用いるものである。
【0096】
本実施例によれば、ガソリン燃焼によるデポジットがその直噴エンジンの燃料噴射弁の表面に付着が顕著に防止され、特に空燃比が45以上である超リーンバーン制御を可能にし、燃費のより高い自動車が得られる。
【0097】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料ポンプにおいて燃料中での摺動部品、特にプランジャとの材料構成の組み合わせにより、摺動する各々の機構部品に耐焼付き性、耐摩耗性及び耐食性の被膜を形成したことにより、特に、焼付き,異常摩耗を防止することができるという顕著な効果が得られる。従って、信頼性の高い高圧燃料ポンプが提供され、特にリーンバーン燃焼による自動車エンジンの筒内直接噴射において顕著な効果が発揮されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料ポンプの一実施例を示す断面図。
【図2】本発明に係る燃料ポンプの一実施例を示す行程図。
【図3】エンジンオイルの循環経路を示す斜視図。
【図4−1】各種斜板材とスリッパ材の耐焼付け性試験結果を示すグラフ。
【図4−2】各種斜板材とスリッパ材の耐焼付け性試験結果を示すグラフ。
【図5】摩耗試験によるスリッパ球面側の摩耗量を示す図。
【図6】スリッパとプランジャ摺動時の摩擦係数とエンジンオイル温度との関係を示す線図。
【図7】本実施例で用いたスリッパの断面を示す顕微鏡写真。
【図8】 本発明に係る窒化層形成の処理工程を示すグラフ。
【図9】本発明に係る合金工具鋼の窒化層硬さ分布を示すグラフ。
【図10】本発明に係る合金工具鋼の窒化層硬さ分布を示すグラフ。
【図11】本発明に係る各種鋼の耐食性をを示す図。
【図12】実施例2に係る図1のプランジャの表面処理層を示す部分拡大図。
【図13】本発明に係る直噴ガソリンエンジンの構成図。
【符号の説明】
1…シャフト、2…カップリング、3…ピン、4…連通路C、5…ボディ、6…エンジンカム、7…ラジアル軸受、8…スラスト軸受、9…斜板、10,245…スリッパ、11,102,231…プランジャ、12,108,250…シリンダ、13…シリンダボア、14…ポンプ室、15…吸入空間、16…連通路A、17…シール、18…空間、19…導入孔、20…リアボディ、21…ボール、22,27,256…スプリング、23…ストッパ、24…吸入バルブ、25…プランジャスプリング、26…ボール、28…吐出バルブ、29…吐出室、30…吸入室、31…Oリング、33…カップリング嵌合部、34…オイル経路、35…軸シール、36…オイル戻り通路、37…フランジ面、38…斜板室、39…エンジンカム室、40…プレッシャレギュレータ(P/Reg)、41…ボールバルブ、42…連通路B、43…吸入通路、44…オイル導入路、45…絞り、46…戻り通路、50…孔、51…ザグリ、61…燃料噴射弁、62…燃料噴射弁駆動回路、63…点火プラグ、64…吸気弁、65…排気弁、66…吸気ポート、67…排気ポート、68…ピストン、69…電子制御ユニット、70…シリンダヘッド、71…噴射弁駆動信号端子、72…三元触媒、73…NOx触媒、74…燃焼室、100…ポンプ本体、101…吸入通路、103…リフタ、104,105a,302…ばね、105,510…吸入弁、106,106a…吐出弁、108a…摺動孔、108b…拡張内壁、109…縦通路、110…燃料供給口、110a…燃料導入口、110b…横通路、111…吐出通路、112…加圧室、120…シール、120a…金属管、150…タンク、151…低圧ポンプ、152…プレッシャレギュレータ、153…コモンレール、154…インジェクタ、155…リリーフ弁、156…圧力センサ、200…カム、300…ソレノイド、301…係合部材、400…逆止弁。

Claims (6)

  1. 外部からの回転を伝達するシャフトと、該シャフトの回転を揺動運動に変換する斜板と、該斜板の揺動運動をスリッパを介してシリンダ内を往復運動するプランジャとを備えた燃料ポンプにおいて、前記スリッパは鉄系焼結材からなり、その表面部にFeを主とする酸化物層が形成されており、前記プランジャの外周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれかの硬化層が形成されていることを特徴とする燃料ポンプ。
  2. 請求項1において、前記シリンダの内周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれかの硬化層が形成されているがことを特徴とする燃料ポンプ。
  3. 自動車エンジンの燃料噴射弁に燃料を加圧して送給する燃料ポンプにおいて、互いに接触し潤滑油あるいは燃料を介して摺動する一方の部材の摺動面となる円筒内周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれかの硬化層及び前記一方の部材と摺動する他方の部材の摺動面となる外周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれかの硬化層を有し、前記他方の部材の端面と摺動する他の部材が鉄系焼結材からなり、その表面にFeを主とする酸化物層が形成されていることを特徴とする燃料ポンプ。
  4. 前記鉄系焼結材は、重量で、C0.2〜0.8%を含むFe基合金、又は、C0.2〜1.0%及びCu1〜5%を含むFe基合金、又は、C0.2〜0.8%、Cu0.5〜3%及びNi1〜8%を含むFe基合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料ポンプ。
  5. シリンダと、該シリンダ内を往復運動するピストンと、燃料を前記シリンダ内に直接噴射する燃料噴射手段と、該燃料噴射手段に前記燃料を送給する燃料ポンプとを備えた筒内噴射エンジンにおいて、前記燃料ポンプは請求項1〜4のいずれかに記載の燃料ポンプからなることを特徴とする筒内噴射エンジン。
  6. 前記燃料噴射手段は空燃比が45以上であるリーンバーン制御噴射する請求項5に記載の筒内噴射エンジン。
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