JP2002106443A - 燃料ポンプ及びそれを用いた筒内噴射エンジン - Google Patents

燃料ポンプ及びそれを用いた筒内噴射エンジン

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JP2002106443A JP2000301105A JP2000301105A JP2002106443A JP 2002106443 A JP2002106443 A JP 2002106443A JP 2000301105 A JP2000301105 A JP 2000301105A JP 2000301105 A JP2000301105 A JP 2000301105A JP 2002106443 A JP2002106443 A JP 2002106443A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、燃料室内の摺動機構部品が過
酷環境下において耐摩耗性の優れた燃料ポンプとそれを
用いた筒内噴射エンジンを提供することにある。 【解決手段】本発明は、自動車エンジンの燃料噴射弁に
燃料を加圧して送給する燃料ポンプにおいて、潤滑油中
で摺動する斜板、スリッパ、プランジャと、燃料中で摺
動するプランジャ、シリンダとの各摺動部材の互いに接
触し前記燃料を介して摺動する少なくとも一方の摺動面
に、窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれから
かなる硬化層、あるいはその硬化層に対して耐食性が高
く、硬質な金属化合物層を形成することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関における
燃料供給用の新規な燃料ポンプに係わり、特に自動車エ
ンジンの燃焼室に取り付けた燃料噴射弁から燃焼室に直
接燃料を噴射する自動車の筒内噴射エンジン用燃料噴射
装置の高圧ポンプに用いる燃料ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、内燃機関、特に自動車用ガソリン
エンジンにおいては、燃料消費特性の向上,有害排気ガ
スの削減,加速性等の運転応答性の向上等の目的から筒
内直接燃料噴射装置の適用が望まれている。
【0003】筒内直接燃料噴射装置では、内燃機関の気
筒内に、気筒内の圧縮行程時にも直接ガソリンを噴射す
る必要があるために、3Mpa以上の高圧でガソリンを
供給できる高圧燃料ポンプが必要となる。
【0004】高圧ポンプの型式の一つに、ハウジング内
において、シャフトで回転する斜板の回転運動を揺動板
により揺動運動に変換し、この揺動板の揺動運動により
往復動するプランジャによって流体を吸入し、加圧して
高圧で吐出する方式の斜板アキシャルプランジャポンプ
がある。
【0005】この型式の高圧燃料ポンプについて、特開
平9−236080 号公報がある。この公報には、外部からの
駆動力を伝達するシャフトと、このシャフトによって回
転される斜板と、この斜板の回転運動を揺動運動に変換
する揺動板と、この揺動板の揺動運動により往復動する
複数のピストンと、上記斜板および揺動板およびピスト
ンを収納するクランク室を燃料室と機構室に分離する隔
壁のベローズを備え、上記シャフトと上記斜板間の駆動
力伝達をする軸受部と、上記斜板と上記揺動板間の駆動
力伝達をする軸受部を上記機構室内に配置して上記軸受
部を油潤滑するとともに、上記燃料室内に上記複数のピ
ストンを配置して、それぞれのピストンにより、燃料を
吸入吐出することを特徴とする燃料ポンプが示されてい
る。
【0006】この高圧燃料ポンプでは、ガソリンを供給
する目的の使用に際しては、ガソリンを昇圧する機構部
においては潤滑性に優れた高粘性油を用いることができ
ない。それが燃料油に混入して燃焼に悪影響を及ぽすお
それがあるからである。そのため、隔壁のベローズによ
ってクランク室は燃料室と機構室に分離されている。す
なわち、機構室では耐摩耗性を改善するために潤滑性に
優れた高粘性油を潤滑油として封入されて存在し、各機
構部品の摺動面間の耐摩耗性等への対策が施されてい
る。
【0007】一方、この構造での高圧を発生させる機構
部の燃料室内では、揺動板の揺動運動で往復動する複数
のピストンの運動により燃料の吸入がされ、吐出がされ
て、それにより燃料は高圧になる。したがって、燃料室
の流体として存在するのは燃料のガソリンのみである。
そのため、各機構部の摺動部で潤滑油として作用するの
はガソリンになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】燃料ポンプにおいて、
回転斜板式アキシャルプランジャポンプではシャフトの
回転を往復運動に変換する板式とスリッパは、エンジン
からの回転が伝達されて低速域から高速域の領域におい
て潤滑油(エンジンオイル)中で摺動する。潤滑油(エ
ンジンオイル)中での摺動であっても、その摺動によっ
ては材料に厳しい特性が要求される。すなわち、低速域
から高速域における互いの部材の耐焼付き性、及び耐摩
耗性が求められる。
【0009】一方、燃料室内のポンプ部における燃料
(ガソリン)を昇圧するプランジャとシリンダ等の機構
部においては、燃料中での摺動となる。摺動環境の潤滑
油としてガソリンが用いられると、ガソリンは、通常の
潤滑油に比べ粘度が極端に小さいため、上記の摺動機構
部においては互いの摺動面が摩耗し易いと考えられる。
【0010】また、燃料には、ガソリンにメチルアルコ
ール,エチルアルコールを添加したもの、あるいは劣化
したガソリン等も使用される場合がある。そのようなガ
ソリンにおいては、水分の混入,酸成分の混入等によ
り、酸化摩耗の環境になる場合がある。その場合は摺動
機構部の接触部の摩耗に対する環境としては更に厳しく
なり、摺動部の損耗量が多くなると考えられる。
【0011】これら、摺動環境が異なる潤滑油(エンジ
ンオイル)及び燃料(ガソリン)中での摺動部が摩耗で
損耗する部分となる。すなわち、摺動機構部の斜板とス
リッパ、あるいは駆動カム、リフタ等の異常摩耗、すな
わち焼付きは燃料ポンプの稼動停止に至る。またシリン
ダ内を往復運動するプランジャとの接触部が摩耗して損
耗量が多くなると、吸入・吐出の効率低下などの可能性
があり、信頼性の低下が考えられる。
【0012】そのため、摺動機構部における各部品は、
潤滑性の劣る燃料、あるいは酸化性成分が混入した燃料
中での耐久性、特に耐摩耗性,耐食性が要求される。
【0013】本発明の目的は、燃料室内の摺動機構部品
が潤滑油(エンジンオイル)、あるいは潤滑性の劣る燃
料、更には酸化性成分が混入した燃料中での耐焼付き
性、耐摩耗性及び耐食性に優れた燃料ポンプとそれを用
いた筒内噴射エンジンを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、自動車エンジ
ンの燃料噴射弁に、燃料を加圧して供給する燃料ポンプ
において、潤滑油中で互いに接触して摺動する部材は耐
焼付き性、耐摩耗性及び耐食性に優れた組み合わせを有
する耐摩耗材料とし、燃料中で互いに接触して摺動する
部材表面の内、荷重を受けて摺動する部材に鉄系焼結材
でその表面に酸化皮膜、部材自身の表面硬さを高める表
面処理、更に耐食性と耐摩耗性とを有する被膜が形成さ
れていることを特徴とする燃料ポンプにある。
【0015】本発明は、ハウジング内に、外部からの回
転を伝達するシャフトと、該シャフトの回転を揺動運動
に変換する斜板と、該斜板の揺動運動をスリッパを介し
てシリンダ内を往復運動するプランジャとを備えた燃料
ポンプにおいて、上記スリッパは鉄系焼結材からなり、
その表面に酸化物層を有することを特徴とする燃料ポン
プにある。
【0016】又、前述の燃料ポンプにおいて、前記プラ
ンジャの外周面とシリンダの内周面との互いに接触して
摺動する互いの摺動面に、窒化層,浸炭焼入れ層及び浸
炭窒化層のいずれかの硬化層を有すること、又、互いに
接触し潤滑油あるいは燃料を介して摺動するシリンダの
内周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれ
かの硬化層、前記プランジャの外周面に耐食性が高い炭
素膜又は金属化合物層とを有することを特徴とする。
【0017】本発明は、自動車エンジンの燃料噴射弁に
燃料を加圧して送給する燃料ポンプにおいて、互いに接
触し潤滑油あるいは燃料を介して摺動する一方の部材の
摺動面となる円筒内周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸
炭窒化層のいずれかの硬化層及び他方の部材の摺動面と
なる外周面に炭素膜又は金属化合物層を有し、前記他方
の部材の端面と摺動する他の部材が鉄系焼結材からな
り、その表面に酸化物層が形成されていることを特徴と
する。
【0018】本発明は、燃料を燃焼室に直接噴射する好
ましくは空燃比が45以上であるリーンバーン制御噴射
する燃料噴射手段と、該燃料噴射手段に前記燃料を送給
する燃料ポンプとを備えた筒内噴射式エンジンにおい
て、前記燃料ポンプは前述のいずれかに記載の燃料ポン
プからなることを特徴とする。
【0019】本発明におけるスリッパ部材は鉄系焼結材
の浸炭焼入れ,あるいは500〜600℃でのスチーム
処理によりFe34を主とする酸化被膜が形成されてい
るものがよい。鉄系焼結材は、重量で、C0.2〜0.
8%、又はC0.2〜1.0%及びCu1〜5%、又
は、C0.2〜0.8%、Cu0.5〜3%及びNi1
〜8%を含むFe合金が好ましく、若干の空孔を有し、
この空孔に潤滑油を含浸して潤滑性を高めることが出来
るものである。
【0020】本発明における斜板は鋳鉄、機械構造用合
金鋼、合金工具鋼,あるいはマルテンサイト系ステンレ
ス鋼の熱処理材、及びそれらの表面処理材であることが
よい。
【0021】本発明の硬化層は表面処理後に、表面処理
温度と同等かそれより高い温度で加熱して脆弱な化合物
を消失させる処理が好ましい。その拡散表面処理層は、
窒化層,浸炭窒化層,軟窒化層,塩浴軟窒化層,浸炭焼
入れ層、あるいはそれらを複層させた処理層に対して行
われる。拡散表面処理層の窒化層にはFe3N (白色化
合物層)が生成されていないことがよい。シリンダの硬
化層としての窒化層は、450℃以下の処理温度で形成
されるものがよい。
【0022】本発明の耐食・耐摩耗性被覆層として、炭
素膜又は金属化合物層が用いられ、後者には、炭化物,
窒化物,炭窒化物から選ばれる金属化合物が用いられ、
いずれもCVD又はイオンプレーティングによって形成
する事が出来る。この炭素膜及び金属化合物層は高硬度
で損耗が少なく、また化学的に安定物質であるため相手
摺動材との反応性が低いことにより耐食・耐摩耗性が顕
著に改善される。炭素皮膜として、ダイヤモンド状又は
ダイヤモンドライク膜が好ましい。
【0023】本発明における互いに接して摺動する摺動
部材には機械構造用鋼、鋳鉄、工具鋼,マルテンサイト
系ステンレス鋼,合金鋼、及び軸受鋼を用いるのがよ
い。本発明におけるシリンダは、1つのブロックに3個
の孔が設けられ、C0.25〜0.5%(好ましくは
0.3〜0.45%)又は1〜2%(好ましくは1.3
〜1.6%)、Cr5〜13%(好ましくは6.5〜
8.5%)、Mo2%以下(好ましくは0.7〜1.5
%)、V1%以下(好ましくは0.1〜0.6%)を含
む合金工具鋼、あるいはマルテンサイト系ステンレス鋼
が好ましく、その硬化層としての窒化層は、350〜5
00℃の処理温度で形成され、厚さ20〜40μmの塩
浴による処理が好ましい。又、プランジャは、C1〜2
%(好ましくは1.3〜1.6%)、Cr10〜11
3.5%(好ましくは11〜13%)、Mo2%以下
(好ましくは0.7〜1.5%)、V1%以下(好まし
くは0.1〜0.6%)を含む合金工具鋼、あるいはマ
ルテンサイト系ステンレス鋼が好ましく、その硬化層と
しての窒化層は、500〜600℃の処理温度で形成さ
れ、厚さ70〜130μmのイオン窒化による処理が好
ましい。
【0024】燃料ポンプ室内の摺動機構部品が、潤滑油
(エンジンオイル)及び燃料(ガソリン)中で摺動する
に際して、各摺動部品の摺動条件に適した材質、表面処
理及びその組合せを最適に設定した。潤滑油(エンジン
オイル)中での各摺動部品は、特に高摺動速度(高周
速)域での耐焼付き性を考慮し、そのような特性が得ら
れる組織を呈した材質仕様とした。燃料(ガソリン)中
で摺動する各摺動部品は表面処理により耐摩耗性を高め
た。その表面処理層として拡散表面処理層あるいは耐食
・耐摩耗性硬質被膜を形成した。拡散表面処理層には、
基材材質の特性を損なわない温度領域において、主に窒
素を拡散させ、微細窒化物を析出させて硬さを高める窒
化系として窒化層,浸炭窒化層,軟窒化層,塩浴軟窒化
層がある。また、高温域で炭素を拡散させ、焼入れ熱処
理によって高硬度を得る浸炭処理等が適用される。窒化
系は窒化物生成元素が窒化物を形成することにより基材
の硬さよりも高くなり、また凝着しにくい特性が得ら
れ、基材の摩擦・摩耗に対する反応性が改善される。ま
た窒化層は基材と連続した処理層であるため高面圧でも
剥離しにくい特性がある。浸炭層は深い処理層が形成で
き、高面圧を受ける際の耐荷重性が優れる。また、拡散
表面処理層は、耐食・耐摩耗性の金属化合物層を形成す
る際の下地層として形成されることにより、基材硬さを
高めて高面圧に対する耐荷重性が向上して硬質被膜の耐
剥離性も改善される。
【0025】これらの構成により、摩擦抵抗が小さく、
しかも一方の材料が他方の材料へ付着したり、凝着する
ことがほとんど発生しない。したがって、初期摩耗,定
常摩耗および焼付き等が防止される。これにより信頼性
に優れた燃料ポンプが提供される。
【0026】
【発明の実施の形態】〔実施例1〕図1は斜板式アキシ
ャルプランジャの燃料ポンプ(3筒式)の例を示す断面
図である。ハウジング内に外部からの駆動を伝達するシ
ャフト1と、シャフトを介して回転運動を揺動運動に変
換する斜板9と、斜板の回転運動をスリッパ10を介し
て往復動させるプランジャ11と、プランジャ11と組
み合わされて燃料を吸入吐出するシリンダボア13を有
する斜板式アキシャルプランジャ燃料ポンプである。潤
滑油(エンジンオイル)によって潤滑される斜板9とス
リッパ10の平滑面は高摺動速度(高周速)域での耐焼
付き性、スリッパ10とプランジャ11の球面座部は線
接触による高面圧摺動での耐摩耗性を考慮した材質仕様
とした。スリッパ10は鉄系焼結部材に酸化層を有する
もの、燃料(ガソリン)によって潤滑されるプランジャ
11とシリンダボア13の円筒面摺動部の摺動面とし
て、いずれもその表面に窒化層,浸炭窒化層、浸炭焼入
れのいずれかの硬化層、又は、プランジャ11の外表面
に窒化層,浸炭窒化層、浸炭焼入れのいずれかの硬化
層、シリンダボア13の内周面に耐食・耐摩耗性を有す
る炭化物,窒化物及び炭窒化物のいずれかの硬化層が形
成されているものである。
【0027】この燃料ポンプ構造は、従来の潤滑油と燃
料を隔離するベローズが不要で、且つ駆動機構部の潤滑
が十分なように、プランジャ11とシリンダボア13の
摺動部端部にシール部材を設けたことにより、ガソリン
中での摺動部材を少なくしたものである。
【0028】図1に示すように、エンジンのカム軸から
伝達される駆動力を伝えるカップリング2はカップリン
グ2に嵌合したピン3で連結されたシャフト1を有して
いる。シャフト1には、半径方向に広がり且つ端面部は
斜めの平面を形成した斜板9とが一体になっている。斜
板9にはスリッパ10が接触し、スリッパ10の斜板9
側外周部にはオイルによる斜板9とスリッパ10との間
の油膜形成を補助するテーパが設けられている。またス
リッパ10のもう一方側は球面形状になっており、シリ
ンダボア13内を摺動するプランジャ11に形成された
球面に支持され、斜板9が回転することで発生する揺動
運動は、プランジャ11の往復運動に変換される。
【0029】この構造のポンプにおいて、燃料の吸入・
吐出は次のように行われる。複数のシリンダボア13と
プランジャ11とによって、シリンダ12内にポンプ室
14を形成している。このポンプ室14へ燃料を供給す
るように、シリンダ12の中央部に各プランジャ11へ
連通する吸入空間15を設けている。この吸入空間15
に燃料を導くため、リアボディ20にポンプ外部の燃料
配管が取り付けられ、リアボディ20内の吸入通路を通
り、リアボディ20の中央部の吸入室30を前記シリン
ダ12に設けた吸入空間15とが繋がるようになってい
る。
【0030】プランジャ11内には、燃料を吸入するた
めの吸入バルブ24(チェックバルブ)がボール21と
スプリング22及びスプリング22を支持するストッパ
23で形成されている。プランジャスプリング25は、
プランジャ11を常に前記斜板9側へ押し付け、スリッ
パ10と共にプランジャ11を斜板9に追従させる目的
で挿入されている。
【0031】プランジャ11内の吸入バルブ24への連
通路A16は、シリンダボアに設けたザグリ51と吸入
空間15との連通路として形成されている。ザグリ51
はシリンダボア13径より大きい径であり、常にプラン
ジャ11内に燃料を導入できるように、ポンプ室14が
十分小さくなった時(プランジャ位置が上死点の時)に
も導入孔19とザグリ51とが連通する程度の深さまで
形成されている。
【0032】図2は、吸入及び吐出行程を説明するプラ
ンジャ11の拡大図を示す。吸入行程(ポンプ室14の
空間が大きくなる方向にプランジャ11が移動する行
程)において、プランジャ11内に設けたポンプ室14
内の圧力が規定の圧力以下になった時点で、プランジャ
11内に設けた前記吸入バルブ24は開口し、燃料をポ
ンプ室14に吸い込む構造になっている。また前記吸入
行程間にポンプ室14に吸入された燃料は、吐出行程
(ポンプ室14の空間が小さくなる方向にプランジャ1
1が移動する行程)に移ると、吸入バルブ24と同様に
ポンプ室14が規定の圧力に達した時点で、ボール26
とスプリング27で構成された吐出バルブ28が開口
し、燃料をポンプ室14から前記リアボディ20に設け
た吐出室29に送り出す構造になっている。ここでリア
ボディ20に設けた吸入室30と吐出室29はOリング
31で分割され、吸入室30を吐出室29より中央側に
設けて、ポンプ自身の通路構成をコンパクトにしてい
る。
【0033】ポンプ室の燃料圧力により発生する荷重
は、プランジャ11及びスリッパ10を介して前記シャ
フト1の斜板9へ伝達される。つまり斜板9へは複数あ
るプランジャ11の荷重分の合力が作用する。この合力
は、軸方向の荷重と斜板角分のラジアル荷重として作用
する。これらの荷重を支持しスムーズな回転を達成する
ために、シャフト1にはラジアル軸受7及びスラスト軸
受8が嵌合し、その荷重をボディ5で支持する構造とし
ている。
【0034】これらの荷重を支持する部分(スリッパ1
0/斜板面9,スリッパ10/プランジャ球面及び軸受
部)は、回転による相対速度と荷重を支持する部分であ
り、オイル潤滑とすることで、摺動摩耗を低減できる。
このためにはボディ5とシリンダ12の間に形成される
斜板室38にオイルを貯留させる構造が必要になる。
【0035】本実施例では、プランジャ11の往復運動
時に燃料とオイルをシールするシール17をシリンダ1
2に設けている。この往復摺動するシール17は、プラ
ンジャ11とシリンダボア13との隙間をシールしてお
り、このシール17が燃料とオイルのシール部材とな
る。なお本実施例ではシール17へ作用する圧力は、シ
ール17とポンプ室14の間に連通路16が存在するた
め、常に低圧の前記吸入圧となり、シール17には高圧
室の圧力が付加されない構造となっている。このことに
よりシール17の耐久性及び信頼性を高めている。
【0036】図3は、オイル循環経路及び循環方法につ
いて説明するエンジン部の斜視図である。軸中心にオイ
ル経路34を設けたエンジンカム6のカップリング嵌合
部33に、軸シール35とカップリング2を貫通したシ
ャフト1を嵌着し、シャフト1の中心に設けた斜板室3
8との連通路4を通じてエンジンからオイルを導入する
構造とした。前記軸シール35はオイルを完全にはシー
ルせず、エンジン側より斜板室38への必要最低限の流
量を確保する程度とした。これにより、軸シール35を
介して駆動軸にエンジンカム6とシャフト1との芯ずれ
による偏芯荷重を極力抑えることができ、ラジアル軸受
8の耐久性を向上させている。また斜板室38に流入す
るオイルを必要最低限とすることにより、斜板室38の
温度上昇を抑制しつつ、前記シール17より斜板室38
へ漏洩する燃料によって希釈されたオイルの置換を達成
している。また、シャフト1の中心よりオイルを導入す
ることにより、エンジン側に新規にオイル通路を設定す
ることなく目的を達成しているため、エンジンとの適合
性及びエンジンの小型化を達成している。
【0037】本実施例では、シャフト中心に設けた連通
路4よりオイルを導入しているが、オイル導入路はエン
ジンの油圧源とポンプの斜板室38とを連通するように
設ける。
【0038】次にエンジンから斜板室38に供給された
オイルをエンジンに戻すための通路について説明する。
この通路は斜板室38よりエンジンカム室39への戻り
通路36によって構成している。この戻り通路36はポ
ンプのボディ5に設けたエンジンとの取り付けフランジ
面37よりカップリング2側に設けた。これによりエン
ジン側に特別な通路を設けることなく斜板室38内のオ
イルをエンジンに戻すことができる。戻り通路36によ
り、斜板室38から流出するオイル量が流入するオイル
量を下回らないようにし、斜板室38内の圧力が上昇し
ないように配設することによりシール17の信頼性を高
めている。斜板室38内の圧力が上昇せず、常に燃料の
吸入圧より低くなることにより、オイルが燃料側に漏れ
るのを防止している。
【0039】以上の構成で、従来の斜板式アキシャルプ
ランジャポンプと大きく異なっている点は、斜板が回転
するため、斜板とスリッパは潤滑油中において高周速で
摺動することになる。この斜板の回転運動がスリッパを
介することで揺動運動に変換されてプランジャが往復運
動する。この際、プランジャとシリンダボア間の摺動部
にシール部材が設けられていて、潤滑油と燃料を隔離す
るようになっている。これによりガソリン中で摺動する
構成部材の点数が少なくなっている。
【0040】これらの摺動部材として、始めに、潤滑油
(エンジンオイル)によって潤滑される斜板9とスリッ
パ10の平滑面の材料構成について説明する。 エンジ
ンからの駆動力がシャフトに伝達されて斜板は回転す
る。その回転数はエンジン回転数の1/2であり、アイ
ドリングから高速域までの回転数になる。その際、斜板
とスリッパの摺動速度は0.3〜5m/minとなり、
またその面圧は吐出圧力によって異なるが8MPa程度
になる。したがって、高周速で摺動することで、斜板と
スリッパの焼付きを生ぜず、且つ定常摩耗量も少ない材
料構成が要求される。そこで各種材料の特性を評価し、
斜板とスリッパの材料構成を検討した。
【0041】図4は、斜板とスリッパの材料構成を耐焼
付き性試験により検討した結果を示すグラフである。斜
板用材料には駆動力伝達のシャフトとしての機能もある
ため、曲げ、及び疲労強度も必要になる。そこで斜板用
材料として、機械構造用鋼の肌焼き鋼ではSCM415等の浸
炭焼入れ材,調質鋼のSCM435では窒化処理材、ステンレ
ス鋼ではSUS403、SUS420J2の窒化材、鋳鉄ではオーステ
ンパー処理により高強度,高靭性とした球状黒鉛鋳鉄
(ADI)を供した。
【0042】スリッパに要求される材料仕様は,耐摩
耗,耐焼付き性,圧縮強度(球面側最大発生面圧以上)
である。スリッパ用材料には,ステンレス鋼のSUS403窒
化材,合金工具鋼のSKD11焼入材、アルミニウム合金で
はAl-Si合金(A390)、銅系合金では,珪化物分散のア
ルミニウム青銅合金,高力黄銅合金、及び鉄系焼結材
(SMF4種,引っ張り強さ400〜500N/mm2)の焼
結材のまま,浸炭焼入れ材,酸化被膜形成材(550℃
のスチ−ム中で酸化処理)を用いた。酸化被膜形成材は
Fe34を主とする皮膜を有するものである。またSUS4
03窒化材及びSKD11窒化材を基材とし、イオンプレ−テ
ィングによりTiN及びCrN被膜(3〜5μm)を形成したス
リッパも供した。
【0043】これらの斜板とスリッパの耐焼付き性の要
素試験を、回転摺動摩耗により行った。方式は回転円板
(斜板)にスリッパを押付けて,摺動運動させるもので
ある。可動片はφ100×8mm,固定片はスリッパである。
試験条件として,摺動速度は低速と高速の2種類とし,
低速はアイドリング時(250r/min)に相当する0.36m/
s,高速は最高回転数(3200r/min)の5.0m/sである。
荷重は,初期なじみの5min間は0.98MPaとし,それ以後
は2min経過毎に0.98MPa増加させ,29.4MPaまで加えた。
摩擦環境は潤滑油(エンジンオイル)を用いた。
【0044】図4-1及び図4-2の耐焼付き性試験結果を
見ると、スリッパ材料間の優劣,あるいは斜板材料との
組合せの影響が現れている。SUS403窒化材スリッパ(Hv
±750)の場合では,可動片がSUS403窒化材(Hv1100)に
なり高硬度で同種材の組合せになると焼付き面圧は6.9M
Paと低くなる。硬さが同程度のSCM435窒化材(Hv660)
では低速では29.4MPaにおいても焼付きは生ぜず,高速
でも27.4MPaの値であり優れている。硬さが低いFCD500A
DI材では低速では29.4MPaにおいても焼付きはないが,
高速では9.8MPaで焼付いており,高速域では球状黒鉛の
固体潤滑性や保油効果よりも基地の硬さの低いことが影
響している。
【0045】合金工具鋼のSKD11焼入れ材スリッパ(Hv6
13〜697)では,可動片がFCD500ADI材で低速の場合には
29.4MPaでも焼付きはない。しかし,高速になるとSCM41
5浸炭焼入れ材(Hv700)あるいはFCD500高周波焼入れ材
(Hv550〜650)のいずれでも,焼付き面圧は低い範囲に
ある。したがって,硬い基地に硬質炭化物が分散してい
る組織のSKD11材は,高速摺動の耐焼付き性が劣ること
が分かった。
【0046】Al-Si合金スリッパでは,可動片の鋳鉄の
熱処理に関わらず,全般的に優れた耐焼付き性を示し
た。このように,軟質材であるAl-Si合金は一様に分布
した硬質の塊状の初晶Siや微細な共晶Siが相手材と接触
し,軟らかい基地は凹形状になって油膜を維持できる組
織の効果によって耐焼付き性が優れている。
【0047】銅合金スリッパの焼付き面圧は,可動片が
FCD500高周波焼入れ材(Hv550〜650)の場合に,低速,
高速共に29.4MPaにおいても焼付きは生じなく,優れた
耐焼付き性を示す。この銅合金では自己潤滑性の六方晶
のMn5Si3珪化物が相手材と接触し,軟らかい基地は凹形
状になって油膜を維持できる組織効果がある。
【0048】鉄系焼結材スリッパの浸炭焼入れ材、ある
いは焼結のままの焼付き面圧は,低速,高速共に29.4MP
aにおいても焼付きは生じなく,優れた耐焼付き性を示
している。焼結材に存在する特有の空孔によって油保持
効果が得られ耐摩耗,耐焼付き性に優れる特徴を呈して
いる。 酸化被膜形成材の焼付き面圧は,高速において
僅かに低下している。これは,スチ−ム処理により焼結
材特有の空孔が封孔されてしまうために、保油効果の減
少により特に高速域での潤滑性の低下,及び酸化膜が破
壊した際にそれが硬質の異物となって焼付きの起点にな
る可能性が考えられる。しかし、実機最大想定面圧以上
の焼付き性は満足している。
【0049】TiN及びCrN被膜を形成したスリッパの焼付
き面圧は,窒化基材スリッパに比べて2〜3倍向上し、
その効果が顕著に現れている。これはTiNやCrNがHv2000
〜3000の超硬質であり,また化学的に安定であることか
ら,摺動面において凝着を生じにくいことに起因してい
る。なお,基材の窒化層は,基材の硬さを高めることに
より摺動面に発生する高応力によるTiNやCrNの座屈を防
ぐ作用がある。
【0050】以上の結果により,スリッパ及び斜板用材
料として、スリッパはSUS403窒化材,Al-Si合金,銅合
金,鉄系焼結材,TiN,CrN被膜,斜板にはSCM435窒化,
鋳鉄の組合せは実機ポンプでの最大発生面圧(7.9Mpa)
における耐焼付き性を満足することを見い出した。
【0051】これらのスリッパ及び斜板用材料の組合わ
せにおいて実機ポンプでの摩耗試験を行った。台上エン
ジン試験により,実機ポンプにおいて種々の材料からな
る斜板,スリッパを組み込み,耐摩耗性を評価した。試
験条件は燃温:95℃,潤滑油油温:135℃,燃圧:7MP
a,ポンプ回転数:400r/minで試験した。その結果、こ
れらのスリッパ用材料と斜板との摺動による摩耗は殆ど
なく,ポンプとして問題にならない値(0〜2μm)であ
った。
【0052】次に、スリッパ10とプランジャ11の球
面座部の耐摩耗性を評価した。その結果、スリッパ球面
側はプランジャ(SKD11窒化)との摺動により摩耗が生
じ,材料間に顕著な差が現れた。
【0053】図5は、スリッパ用材料としてSUS403窒化
材,Al-Si合金,鉄系焼結材(酸化膜形成)と斜板にFCD
450ADIを組合せた実機ポンプでの摩耗試験結果で,スリ
ッパ球面側の球面高さ変化(摩耗量)と耐久時間との関
係を示す図である。各材料のスリッパ球面側の摩耗量と
耐久時間との関係を見ると,材料間に顕著な差が出てい
る。すなわち,Al-Si合金の摩耗量は40〜140μmで多
く、鉄系焼結材、及びSUS403窒化材は少ない。Al-Si合
金の球面側摩耗量が多い要因としては,球面側は硬質な
SKD11窒化プランジャと線接触での摺動によるため,軟
質なAl-Si合金に摩耗が生じる。その際,硬質の塊状の
初晶Siや微細な共晶Si粒子が摩耗粉となり,アブレシブ
摩耗が促進されてしまうことによると考えられる。この
アブレシブ摩耗を少なくすることが重要になり、そため
には,スリッパ材質の硬さを高くすることである。図5
の評価結果もそれを示すものである。
【0054】スリッパ10とプランジャ11の球面座部
の摺動における耐摩耗性への影響因子として、雰囲気温
度、すなわち潤滑油であるエンジンオイルの温度があ
る。実機ポンプでのエンジンオイル保証温度は140℃で
ある。しかし,安全率を考えるとこれ以上の温度域にお
いても耐摩耗性を維持することが必要である。そこで,
台上エンジンでの実機ポンプの材料組合せにおいて耐摩
耗性に優れていた鉄系焼結材(酸化被膜形成)、及びSU
S403窒化材スリッパについて,エンジンオイル温度を変
化させた際の耐摩耗性に及ぼす影響を,要素摩耗試験に
より評価した。
【0055】試験は松原式摩耗試験機を用い,密閉容器
内でスリッパを回転側治具,プランジャを固定治具に組
み込み,固定治具に荷重を負荷した。雰囲気は窒素ガス
とし、圧力は3.5MPaに制御した。試験条件は,スリッパ
回転数:15及び60r/min,試験時間:120min,荷重:1.
08kNとし,潤滑油温度を30〜160℃に変化させた。
【0056】図6は、鉄系焼結材(酸化被膜形成)及び
SUS403窒化材スリッパと,SKD11窒化材プランジャの摩
擦係数に及ぼすエンジンオイル温度の影響を示す。摩擦
係数に及ぼすエンジンオイル温度の影響を見ると, SUS
403窒化材スリッパではエンジンオイル温度が高くなる
につれて摩擦係数も高くなる傾向にある。それに対し,
鉄系焼結材(酸化被膜形成)は温度が上昇しても摩擦係
数の大きな変化はなく摩擦係数は0.1程度で一定であ
る。
【0057】図7は、本発明で用いた鉄系焼結材(酸化
被膜形成)スリッパの一例の断面組織を示す。表面及び
内部の空孔に接した基材表面に灰色をした酸化被膜が形
成され、基材はパーライト組織を呈している。この鉄系
焼結材(酸化被膜形成)は,スチ−ム処理による酸化膜
の存在による摩擦力の低減,及び温度が上昇して摩擦面
の油膜の減少を焼結材特有の空孔の保油効果により補う
潤滑効果によると考えられる。一方,平滑面同士の摩擦
面となるSUS403窒化材ではそのような潤滑効果がないた
め,摩擦力の増加を生じることになる。図に示すよう
に、鉄系焼結材には、100μm×70μmの視野の中
に5〜20μm前後の大きさの空孔が5個存在してい
た。
【0058】この結果から,鉄系焼結材(酸化被膜形
成)からなるスリッパは,SUS403窒化材からなるスリッ
パより高温域まで安定であることが分かった。したがっ
て,スリッパ材質としては,実機ポンプの保証温度(14
0℃)より高温域まで耐摩耗性に優れている鉄系焼結材
(酸化被膜形成)スリッパが適当である。また鉄系焼結
材は量産性に優れ、廉価であることから、生産性の観点
からも望ましいものである。
【0059】一方、斜板の材料仕様としてはFCD450ADI
が用いられる。他の斜板部材は機械構造用合金鋼の表面
処理材、及びその表面処理材が適用できる。機械構造用
合金鋼の表面処理材としては、例えばクロムモリブデン
鋼SCM415の浸炭焼入れ、クロムモリブデン鋼SCM435の窒
化等が用いられる。これにより、燃料ポンプとして要求
される斜板9とスリッパ10との高周速摺動による耐焼
付き性、スリッパ10とプランジャ11の球面座部の摺
動における耐摩耗性を満足する材料仕様を見出した。
【0060】次に、燃料中で稼働し、摺動する部材で、
耐食・耐摩耗性が要求される主なものとしては、ポンプ
室の加圧部材であるプランジャとそれを往復摺動可能に
支持する摺動孔を有するシリンダのシリンダボアがあ
る。特に、プランジャとシリンダボアの径ギャップは、
加圧室からの燃料漏れを最低限にするために10μm以
下としている。そのため、摩耗による径ギャップの増大
等によるポンプ性能の低下が生じる。
【0061】また、プランジャは燃料とオイルをシール
する軸シールとの摺動部においても、耐食・耐摩耗性が
要求される。この摺動部における摩耗は、オイルへ燃料
が漏洩すると、オイルが希釈され、潤滑性能の低下、更
に燃費の低下も生じるので、好ましくない。
【0062】そこで、プランジャ及びシリンダブロック
の材料構成は次の通りである。プランジャの外径とシリ
ンダボアは初期的には線接触状態で摺動するため、高い
面圧(ヘルツ応力)になる。そのため、材料としては高
硬度であることが望ましい。シリンダブロックはプレス
加工等により製品形状に加工できて生産性がよいマルテ
ンサイト系ステンレス鋼のSUS440C,SUS420J2 材を焼入
・焼戻しをして用いられる。また、SKD61,SKD
11材等その他の合金工具鋼も焼入・焼戻しをしても用
いられる。SUS440C,SUS420J2 材は焼入・焼戻しにより
基材の硬さがHv500〜700になる。また、ステン
レス鋼のため耐食性がよい。
【0063】しかし、プランジャ材質との組合わせの種
類によって摺動条件が過酷にるなどした場合によっては
シリンダブロックの上記材質の基材硬さが不足により、
プランジャとシリンダボアの間で異常摩耗を生じる可能
性がある。そこで、上記材質の基材硬さより更に高硬度
にして耐摩耗性を得るため、表面処理が適用されて供さ
れる。プランジャの材料も同様である。シリンダブロッ
クよりも高面圧になることから、更に高硬度にして耐摩
耗性を得るため、表面処理が適用されて供される。
【0064】本発明では、シリンダブロックのシリンダ
ボア及びプランジャの表面構造は、基材に拡散表面処理
層が形成されている。あるいは、拡散表面処理層よりも
更に高硬度にして耐食、耐摩耗性を得るため、耐食・耐
摩耗性硬質被膜を設けられている。
【0065】拡散表面処理層は窒化系で、基材材質の特
性を損なわない低温域処理において、主に窒素を拡散さ
せ、微細窒化物を析出させて硬さを高めるもので、窒化
層,浸炭窒化層,軟窒化層,塩浴軟窒化層がある。表面
硬さはHv1000以上の硬い表面層を容易に形成でき
る。また、凝着しにくい特性が得られ、基材の摩擦・摩
耗に対する反応性が改善される。この拡散表面処理層
は、基材と連続した処理層であるため高面圧でも剥離し
にくい特性がある。
【0066】拡散表面処理層の形成の一つにイオン窒化
法が用いられる。この処理法は、減圧容器(陽極)内に
処理品を陰極に配設し、窒素源ガス(N2)と希釈ガス
(H2)を導入して直流の高電圧を印加して直流放電
(グロー放電)を発生させ、直流プラズマでイオン化し
たNを内部に拡散させるものである。
【0067】例えばマルテンサイト系ステンレス鋼SUS4
03材のイオン窒化によって処理された最表面部では、脆
弱で白色化合物と言われるFe窒化物のε相であるFe
2N,Fe3Nとγ′相のFe4N 、及びCr窒化物のC
rNが形成される。このことから、本発明で拡散表面処
理層にイオン窒化処理の窒化層を用いる場合には、最面
部10μm程度は研削等により除去するのが好ましい。
イオン窒化処理に際して、脆弱な白色化合物のε相を除
去する他の方法として、窒化処理と拡散処理も適用でき
る。その際に窒化層硬さも制御できる。
【0068】図8に示すように、(a)の処理工程は、
窒化処理と拡散工程を連続して行うもの、(b)の処理
工程は窒化処理と拡散工程を不連続の工程で行うもので
ある。拡散工程は真空熱処理炉、非酸化雰囲気中、例え
ば不活性ガスのN2 ,Ar等での雰囲気熱処理炉による
処理も適用できる。
【0069】図9は一実施例のプランジャの合金工具鋼
SKD11材の拡散表面処理層である窒化層硬さの分布
状態をグラフで示した図である。窒化層の表面硬さはH
v1000以上,硬化深さとしてHv500以上で0.
1mm以上を目標にした。処理条件は温度;530℃,時
間;8時間,ガス組成;N2/H2=1/3,圧力(ピラ
ニー);0.3Paである。工具鋼SKD11への窒化のま
まの硬さ分布を見ると、表面から25μmの位置でHv
1060を示し、表面から内部になるに従って漸次低下
して基材硬さになっている。
【0070】この硬さの分布の処理品を拡散工程を行っ
た。イオン窒化処理で、温度;550℃,時間;2.5時
間,ガス組成;H2のみ、圧力(ピラニー);0.3Paであ
る。窒化処理後に拡散工程を行ったものの硬さ分布状態
は、表面部でHv1010の値を示した後、内部になる
に従って漸次低下して基材硬さになっている。
【0071】その表面層の解析結果では、白色化合物の
ε相であるFe2N,Fe3Nが消失し、存在していなか
った。この結果により、窒化処理と拡散処理によれば、
脆弱なε相の表面を研削する必要がなく、且つ硬さが制
御されて靭性のある窒化層が形成されいる。
【0072】窒化層は、基材に添加されて基地に固溶し
ている窒化物形成元素、例えばCrと化合して窒化物の
CrNを形成する。そのため、ステンレス鋼等の高Cr
の鋼種においては、Crの添加によって耐食性が優れて
いる特性が、基地のCrが窒化物を形成することでその
濃度が低下してしまい、ステンレス鋼でなくなる。その
ため、耐食性の低下が見られる。
【0073】そこで、拡散表面処理層の窒化層形成にお
いて耐食性を低下させない窒化処理(以下、低温域窒化
処理)を適用した。すなわち、窒化温度を450℃以下
で行うことにより、基地のCrが窒化物を形成すること
を抑制し、S相が形成されるものである。その処理には
ガスあるいは塩浴による処理法がある。しかし、この処
理で形成される窒化層は窒化温度が低いことから処理深
さは薄い。したがって高い負荷(応力)がかかる摺動機
構部には不適である。
【0074】シリンダブロックの表面処理としてイオン
窒化は、シリンダボアを有しているその形状ため狭隘部
にグロー放電が発生しない領域が生じることから、均一
に窒化層を形成する目的には不適である。そこで、シリ
ンダボアの拡散表面処理層の窒化層形成には塩浴による
低温域窒化処理を適用した。
【0075】図10は、合金工具鋼(7%Cr-Mo-V鋼)
のシリンダブロックを塩浴によって低温域窒化処理した
シリンダボア部の硬さ分布を示す図である。処理条件は
温度450℃で2時間である。表面から10μmの位置
で約Hv1200の高い値を示し、全硬化深さは0.03
mm程度の窒化層が形成されている。その表面には脆弱
で白色化合物と言われるFe窒化物のε相は形成されて
いない。したがって、プランジャとの摺動に際しての耐
摩耗性が確保される。
【0076】図11は、拡散表面処理層の窒化層の耐食
性を示す孔食電位と自然電位との関係を示す図である。
試験電位70℃、試験溶液E13.5vol%+ベース酸
濃度+H2O、ベース酸濃度塩素イオン5ppm、硫酸
イオン6ppm、賞賛イオン6ppm、酢酸イオン61
ppm、蟻酸イオン46ppmである。図11に示すよ
うに、自然電位、孔食電位ともに貴な電位程耐食性は優
れることを示している。低温域窒化処理したSKD11,SUS4
20J2の自然電位、孔食電位はいずれも他の比較材、ある
いは一般的な窒化処理材に比較して貴な電位であり、し
たがって耐食性が優れている。
【0077】以上の構成からなる、図1の斜板式アキシ
ャルプランジャポンプの実機耐久試験を行った。その結
果、ポンプは異常なく稼働し、ガソリン吐出流量性能も
安定した値が得られた。試験後、分解して燃料室内の各
部品の検査結果、上記のいずれの部品においても異常摩
耗の発生は認められず、定常摩耗状態であった。
【0078】以上の結果により、本発明法の鋳鉄の斜
板、鉄系焼結材(酸化被膜形成)のスリッパ、SKD11窒
化プランジャ、低温域窒化合金工具鋼のシリンダで構成
したポンプでは、摺動部品間での凝着しにくく、耐摩耗
性が優れた特性がある。これらの特性によって過酷環境
下における摺動耗性が改善され、目的の燃料ポンプが可
能になった。
【0079】〔実施例2〕図12は図1の一部拡大した
詳細を示す断面図である。図1の斜板式アキシャルプラ
ンジャ高圧燃料ポンプにおいて、更に耐食、耐摩耗性の
要求され摺動機構部を構成する際の他の実施例を説明す
る。ガソリンはシリンダ12に設けられた吸入空間1
5,連通路A16,ザグリ51からプランジャ11内の
への連通路A16,導入孔19,吸入バルブ24の順で
流入し、加圧される。その際、シリンダ12に設けられ
たシール17により、プランジャ11の往復運動時の燃
料とオイルをシールする。このシール17(弾性体、例
えばゴム)とプランジャ11の摩耗、プランジャ11と
シリンダボア13との摩耗に対処するものである。耐
食、耐摩耗性の要求され摺動機構部として、プランジャ
11に最表面に耐食・耐摩耗性硬質被膜11aを形成し
た。耐食・耐摩耗性硬質被膜としては、低温域で緻密な
被膜を高密着力で形成できる物理蒸着法のイオンプレー
ティング等が適用でき、例えばアークイオンプレーティ
ング、ホローカソード方式、アーク放電方式、あるいは
スパッタリング方式であってもよく、方式にはとらわれ
ない。被膜は、炭化物ではTiC,WC,SiC、窒化
物ではTiN,CrN,BN,TiAlN、炭窒化物では
TiCN等が、目的により選定されて形成される。
【0080】図11において耐食・耐摩耗性硬質被膜の
耐食性を見ると、耐食・耐摩耗性硬質被膜の自然電位、
孔食電位は貴な電位であり、したがって耐食性が優れて
いる。したがって耐食性が優れている。耐食・耐摩耗性
硬質被膜は、相手材料との間に生じる金属移着現象を抑
え、凝着や焼付き現象を阻止する効果があり、摩擦抵抗
が小さく、初期摩耗,定常摩耗および焼付き等が防止さ
れる。そのため、腐食摩耗の影響が少なかった。このこ
とにより、腐食環境が厳しい燃料中における摺動部材と
しての稼動ができる。
【0081】本実施例では、プランジャ11の表面処理
層11aは、耐食・耐摩耗性硬質被膜を形成した。基材
は合金工具鋼SKD11とし、その表面にCrNを3μ
m形成した。他の摺動部は実施例1と同様とした。この
構成からなる、図1の斜板式アキシャルプランジャポン
プの実機耐久試験を行った。その結果、ポンプは異常な
く稼働し、ガソリン吐出流量性能も安定した値が得られ
た。試験後、分解して燃料室内の各部品の検査結果、上
記のいずれの部品においても異常摩耗の発生は認められ
ず、定常摩耗状態であった。一方、無処理のものでは、
プランジャ11外径面とシール17の摺動部において、
若干摩耗が生じでいた。
【0082】以上の結果により、本発明法で構成したポ
ンプでは、摺動部品間での凝着しにくく、耐摩耗性が改
善された。耐食・摩耗性硬質被膜と拡散表面処理層で構
成した表面処理層を形成したために高面圧でも剥離しに
くく、耐食性に優れた特性がある。これらの特性によっ
て過酷環境下における耐摩耗性が改善され、目的の燃料
ポンプが可能になった。
【0083】〔実施例3〕図13は、実施例1〜2の燃
料ポンプを用いた本発明の自動車用ガソリン筒内直接燃
料噴射式内燃機関の断面図である。シリンダヘッド70
に備えられている燃料噴射弁61は燃料ギャラリから供
給された燃料を燃焼室74内に直接燃料を噴射するよう
に、その先端部を開口している。本実施例では超リーン
バーンにてガソリンを超微粒化して気筒内に直接燃料を
燃料噴射弁61へ燃料を供給する高圧燃料ポンプを備え
たエンジンで構成されている。
【0084】点火プラグ63は吸気弁64と排気弁65
の間に備わっており、吸気弁64が開いている間にフラ
ットピストン68の動きにより吸気ポート66から吸入
した吸気と噴射弁61から噴射された燃料の混合気に対
して電気火花による点火で燃焼を開始させる。燃焼後の
ガスは排気弁65が開いている間にピストン68の動き
により排気弁65から排出される。
【0085】燃料噴射弁61の噴射弁駆動信号端子71
には燃料噴射弁駆動回路62が電気的に接続されてい
る。また、燃料噴射弁駆動回路62には燃料噴射弁駆動
トリガ信号、および弁体の動作遅れを短縮するように燃
料噴射弁を駆動するかしないかの信号を出力する電子制
御ユニット(ECU)69が電気的に接続されている。
なお、電子制御ユニット69にはエンジンの各運転状態
が入力され、その運転状態に応じた燃料噴射弁駆動トリ
ガ信号を決定する。
【0086】吸気ポート66からの空気量はアクセルに
連動して動く2個所の電磁的手段Mによってコントロー
ルされる。燃焼後の排気ガスは低酸素ストレージ型三元
触媒72により炭化水素,一酸化炭素及びNOxを除去
し、更にリーンNOx触媒73によってNOxが除去さ
れる。本実施例においては、燃料噴射弁61から燃料を
粒径25μm以下、好ましくは15μm以下、より好ま
しくは10μm以下に気液超微粒化して筒内に噴射させ
るとともに空燃比50の超リーンバーンにて駆動させる
ものである。
【0087】三元触媒72にはアルミナ担体にPt又は
それにCeを担持、NOx触媒73にはアルミナ担体に
Pt又はそれにNa,Tiの酸化物を担持させたものが
用いられる。
【0088】燃料噴射弁61の全体構造は次の通りであ
る。それはシリンダヘッド70に装着される。即ち、燃
料噴射弁61は、ハウジングに固定され、コア,コイル
ASSY,アマチュア,スワラー弁装置を有し、この弁装置
はハウジングの一端にかしめにより支持されている。ま
た弁装置は、小径円筒部および大径円筒部を持つ段付中
空円筒形の弁本体と、この弁本体内で中心孔先端に固着
されて燃料噴射孔を有する弁座と、ソレノイド装置によ
り弁座に離接して燃料噴射孔を開閉する弁体であるニー
ドルバルブとを備えている。コイルASSYの下端面に
接して上記ハウジングとコアを囲む空間で、燃料圧力印
加側に配置された2個のOリングを有する。燃料噴射孔
の直径は0.8mm である。
【0089】次に動作について説明する。コイルに通電
すると、アマチュア,コア,ハウジングで構成される磁
気回路に磁束が発生し、アマチュアはコア側へ吸引動作
し、アマチュアと一体構造であるニードルバルブが弁座
から離れて間隙が形成されると、高圧の燃料は弁本体か
ら弁座の噴射孔内に入ってその先端出口から前述の如く
超微粒化して噴霧される。
【0090】また、燃料噴射弁61はシリンダヘッド筒
内に対し2〜10mm突出している。特に、弁本体,弁
座,ニードルバルブ及びスワーラーはJIS規格SUS44C
の1%C,16%Crフェライト系ステンレス鋼の冷間
塑性加工後焼鈍し、最終形状への切削加工によって製造
したものである。噴射孔の直径は0.8mm であり、その
内径の真円度は0.5μm以下である。
【0091】燃料噴射弁61の先端部分へ以下の様に有
機皮膜を形成する方法、及びその効果を以下説明する。
本実施例は、燃料噴射孔とその周辺近傍に厚さ1.5 〜
8nmの有機皮膜を設けたこと、或いは、燃料噴射孔表
面に有機皮膜を設けた燃料噴射弁であって、前記噴射孔
は燃料を粒径20μm以下に噴霧する口径を有するこ
と、前記噴射孔の口径が0.3〜0.8mm であること、
前記噴射孔とその周辺近傍が重量で、C0.6〜1.5%,
Si1%以下,Mn1.5%以下及びCr15〜20%
を含むフェライト系ステンレス鋼からなることの1つ又
は2つ以上の組合せによって得られる。
【0092】そして、その有機皮膜は、ベース金属との
共有結合によって結合されているものであり、その厚さ
は1.5 〜30nmが好ましく、より1.5 〜10nm
が好ましく、最も1.5 〜7nmが好ましい。
【0093】また、有機皮膜として、パーフルオロポリ
エーテル化合物,4弗化エチレンモノマー,珪素樹脂,
ポリアミド樹脂等のグロー放電下での形成,テフロン
(登録商標)樹脂,金属アルコキシドとフルオロアルキ
ル基置換アルコキシドとの溶液によって得られる膜等が
使用可能である。
【0094】本実施例は、燃焼室内に吸気手段及び排気
手段を有するシリンダヘッドと、該シリンダヘッド内を
往復運動するピストンと、前記燃焼室に燃料を噴射する
ように設置した燃料噴射手段と、該燃料噴射手段から噴
射した燃料に着火する点火手段とを備えた筒内噴射式エ
ンジンにおいて、前記燃料ポンプ及び前述の燃料噴射弁
を用いることができる。
【0095】更に、本実施例は、燃焼室内に吸気手段及
び排気手段を有するシリンダヘッドと、該シリンダヘッ
ド内を往復運動するピストンと、前記燃焼室に燃料を空
燃比45以上のリーンバーン制御噴射するように設置し
た燃料噴射手段と、該燃料噴射手段から噴射した燃料に
着火する点火手段とを備えた筒内噴射式エンジンにおい
て、前記燃料噴射手段は前記燃料を噴霧する噴出孔とそ
の周辺近傍の表面に有機皮膜が設けられていること及び
前述の燃料ポンプを用いるものである。
【0096】本実施例によれば、ガソリン燃焼によるデ
ポジットがその直噴エンジンの燃料噴射弁の表面に付着
が顕著に防止され、特に空燃比が45以上である超リー
ンバーン制御を可能にし、燃費のより高い自動車が得ら
れる。
【0097】
【発明の効果】本発明によれば、燃料ポンプにおいて燃
料中での摺動部品、特にプランジャとの材料構成の組み
合わせにより、摺動する各々の機構部品に耐焼付き性、
耐摩耗性及び耐食性の被膜を形成したことにより、特
に、焼付き,異常摩耗を防止することができるという顕
著な効果が得られる。従って、信頼性の高い高圧燃料ポ
ンプが提供され、特にリーンバーン燃焼による自動車エ
ンジンの筒内直接噴射において顕著な効果が発揮される
ものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料ポンプの一実施例を示す断面
図。
【図2】本発明に係る燃料ポンプの一実施例を示す行程
図。
【図3】エンジンオイルの循環経路を示す斜視図。
【図4−1】各種斜板材とスリッパ材の耐焼付け性試験
結果を示すグラフ。
【図4−2】各種斜板材とスリッパ材の耐焼付け性試験
結果を示すグラフ。
【図5】摩耗試験によるスリッパ球面側の摩耗量を示す
図。
【図6】スリッパとプランジャ摺動時の摩擦係数とエン
ジンオイル温度との関係を示す線図。
【図7】本実施例で用いたスリッパの断面を示す顕微鏡
写真。
【図8】 本発明に係る窒化層形成の処理工程を示すグ
ラフ。
【図9】本発明に係る合金工具鋼の窒化層硬さ分布を示
すグラフ。
【図10】本発明に係る合金工具鋼の窒化層硬さ分布を
示すグラフ。
【図11】本発明に係る各種鋼の耐食性をを示す図。
【図12】実施例2に係る図1のプランジャの表面処理
層を示す部分拡大図。
【図13】本発明に係る直噴ガソリンエンジンの構成
図。
【符号の説明】
1…シャフト、2…カップリング、3…ピン、4…連通
路C、5…ボディ、6…エンジンカム、7…ラジアル軸
受、8…スラスト軸受、9…斜板、10,245…スリ
ッパ、11,102,231…プランジャ、12,10
8,250…シリンダ、13…シリンダボア、14…ポ
ンプ室、15…吸入空間、16…連通路A、17…シー
ル、18…空間、19…導入孔、20…リアボディ、2
1…ボール、22,27,256…スプリング、23…
ストッパ、24…吸入バルブ、25…プランジャスプリ
ング、26…ボール、28…吐出バルブ、29…吐出
室、30…吸入室、31…Oリング、33…カップリン
グ嵌合部、34…オイル経路、35…軸シール、36…
オイル戻り通路、37…フランジ面、38…斜板室、3
9…エンジンカム室、40…プレッシャレギュレータ
(P/Reg)、41…ボールバルブ、42…連通路
B、43…吸入通路、44…オイル導入路、45…絞
り、46…戻り通路、50…孔、51…ザグリ、61…
燃料噴射弁、62…燃料噴射弁駆動回路、63…点火プ
ラグ、64…吸気弁、65…排気弁、66…吸気ポー
ト、67…排気ポート、68…ピストン、69…電子制
御ユニット、70…シリンダヘッド、71…噴射弁駆動
信号端子、72…三元触媒、73…NOx触媒、74…
燃焼室、100…ポンプ本体、101…吸入通路、10
3…リフタ、104,105a,302…ばね、10
5,510…吸入弁、106,106a…吐出弁、10
8a…摺動孔、108b…拡張内壁、109…縦通路、
110…燃料供給口、110a…燃料導入口、110b
…横通路、111…吐出通路、112…加圧室、120
…シール、120a…金属管、150…タンク、151
…低圧ポンプ、152…プレッシャレギュレータ、15
3…コモンレール、154…インジェクタ、155…リ
リーフ弁、156…圧力センサ、200…カム、300
…ソレノイド、301…係合部材、400…逆止弁。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02M 59/44 F02M 59/44 K Q F04B 1/16 F04B 1/16 53/00 21/00 N (72)発明者 寺門 一佳 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器グループ内 (72)発明者 鍵山 新 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器グループ内 (72)発明者 町村 英紀 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器グループ内 (72)発明者 高橋 由起夫 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器グループ内 (72)発明者 小島 和夫 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器グループ内 (72)発明者 小瀧 理好 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器グループ内 (72)発明者 成澤 敏明 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 Fターム(参考) 3G023 AA11 AA15 AF01 AG02 3G066 AA02 AB02 AD12 BA49 BA50 BA61 BA67 CC01 CD06 CD14 CD16 CD17 CD18 CD19 CD21 CD28 CD29 3H070 AA02 BB04 CC07 DD96 3H071 AA07 BB01 CC26 EE04

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】外部からの回転を伝達するシャフトと、該
    シャフトの回転を揺動運動に変換する斜板と、該斜板の
    揺動運動をスリッパを介してシリンダ内を往復運動する
    プランジャとを備えた燃料ポンプにおいて、前記スリッ
    パは鉄系焼結材からなり、その表面に酸化物層が形成さ
    れていることを特徴とする燃料ポンプ。
  2. 【請求項2】外部からの回転を伝達するシャフトと、該
    シャフトの回転を揺動運動に変換する斜板と、該斜板の
    揺動運動をスリッパを介してシリンダ内を往復運動する
    プランジャとを備えた燃料ポンプにおいて、前記スリッ
    パは鉄系焼結材からなり、その表面に酸化物層が形成さ
    れ、前記シリンダの内周面及び前記プランジャの外周面
    に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のいずれかの硬
    化層ていることを特徴とする燃料ポンプ。
  3. 【請求項3】外部からの回転を伝達するシャフトと、該
    シャフトの回転を揺動運動に変換する斜板と、該斜板の
    揺動運動をスリッパを介してシリンダ内を往復運動する
    プランジャとを備えた燃料ポンプにおいて、前記シリン
    ダの内周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層のい
    ずれかの硬化層及び前記プランジャの外周面に炭素膜又
    は金属化合物層が形成されていることを特徴とする燃料
    ポンプ。
  4. 【請求項4】外部からの回転を伝達するシャフトと、該
    シャフトの回転を揺動運動に変換する斜板と、該斜板の
    揺動運動をスリッパを介してシリンダ内を往復運動する
    プランジャとを備えた燃料ポンプにおいて、前記スリッ
    パは鉄系焼結材からなり、その表面に酸化物層が形成さ
    れ、前記シリンダの内周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び
    浸炭窒化層のいずれかの硬化層及び前記プランジャの外
    周面に炭素膜又は金属化合物層が形成されていることを
    特徴とする燃料ポンプ。
  5. 【請求項5】自動車エンジンの燃料噴射弁に燃料を加圧
    して送給する燃料ポンプにおいて、互いに接触し潤滑油
    あるいは燃料を介して摺動する一方の部材の摺動面とな
    る円筒内周面に窒化層,浸炭焼入れ層及び浸炭窒化層の
    いずれかの硬化層及び他方の部材の摺動面となる外周面
    に炭素膜又は金属化合物層を有し、前記他方の部材の端
    面と摺動する他の部材が鉄系焼結材からなり、その表面
    に酸化物層が形成されていることを特徴とする燃料ポン
    プ。
  6. 【請求項6】シリンダと、該シリンダ内を往復運動する
    ピストンと、燃料を前記シリンダ内に直接噴射する燃料
    噴射手段と、該燃料噴射手段に前記燃料を送給する燃料
    ポンプとを備えた筒内噴射式エンジンにおいて、前記燃
    料ポンプは請求項1〜5のいずれかに記載の燃料ポンプ
    からなることを特徴とする筒内噴射式エンジン。
  7. 【請求項7】前記燃料噴射手段は空燃比が45以上であ
    るリーンバーン制御噴射する請求項6に記載の筒内噴射
    エンジン。
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