JP3920717B2 - 車輪トー角の調整装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪に連結された、車輪の傾斜角度を調整する車輪傾斜角度調整部材の位置を検出する検出装置及び検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車輪の傾斜角度、例えば車輪のトー角度を調整する場合、車両を調整ステーションに搬入して車輪をフローティングテーブルに着座させ、その車輪に連結された車輪傾斜角度調整部材であるタイロッドの長さを、特願平11−102546号公報に記載の、先端に回転部を有するオープンエンドレンチを備えたタイロッド調整装置で調整する技術が知られている。
【0003】
具体的には、図14に示すように、タイロッドAは、ハンドルに連動するリレーロッドBにボールジョイントB1を介して連結されるロッド本体A1と、車輪を軸支するナックルアームCにボールジョイントC1を介して連結されるロッドエンドA2とで構成されており、ロッド本体A1の端部がロッドエンドA2にねじ込まれた状態でロックナットA3によって回り止めされる。ロッド本体A1には、タイロッド調整装置のオープンエンドレンチが係合する工具係合部A4が形成されており、この工具係合部A4を上記オープンエンドレンチの回転部で回転させ、ロッド本体A1のロッドエンドA2に対するねじ込み深さを変えることでタイロッドAの長さを調整し、車輪のトー調整を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記タイロッド調整装置のオープンエンドレンチをタイロッドAの工具係合部A4に係合させる場合、車両毎の調整ステーションへの搬入位置のばらつきに起因するタイロッドAの位置のばらつきや、車種毎の車輪に対するタイロッドAの相対位置の差異に対応するため、作業者が車両の下に入り込んでタイロッドAを視認し、オープンエンドレンチをタイロッドAの位置に合わせて手動で車幅方向及び車長方向に位置調整している。
【0005】
しかし、この位置調整の作業は、作業者に上方を視認する姿勢を長時間強いることになるため、作業者の身体的負担が非常に大きい。したがって、この位置調整作業の全自動化が強く要望されており、そのためには作業者による視認に替わってタイロッドA等の車輪傾斜角度調整部材の位置を検出する手段が必要である。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、作業者の視認によらず、車両毎の搬入位置のばらつきに起因する車輪傾斜角度調整部材の位置のばらつきや、車種毎の車輪に対する車輪傾斜角度調整部材の相対位置の差異に応じて、車輪傾斜角度調整部材の位置を検出できる車輪トー角の調整置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、タイロッドの調整部材にオープンエンドレンチを係合させて車輪のトー角を調整する装置であって、車両の各車輪を着座させて前後及び左右方向に対して移動自在なテーブルと、該テーブルの位置を検出するテーブル位置検出手段と、車輪のテーブルに対する着座位置と、車種毎に設定されている調整部材の車輪に対する相対位置とを記憶しておく記憶手段と、該記憶手段の記憶データとテーブル位置検出手段の検出データとに基づいて、タイロッドの調整部材の位置を算出する調整部材位置算出手段と、該調整部材位置算出手段の算出データに基づいて、オープンエンドレンチを移動させてタイロッドの調整部材に係合させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
これによれば、車両毎に搬入位置のばらつきがあったとしても、搬入された車両の車輪を着座させたテーブルの水平方向位置をテーブル位置検出手段によって検出し、その検出結果に基づいて車輪傾斜角度調整部材の位置を算出するので、作業者の視認によらず車輪傾斜角度調整部材の位置を検出することができる。
【0009】
この場合、車種毎に予め設定されている車輪傾斜角度調整部材の車輪に対する相対位置情報を記憶する記憶手段を備え、上記調整部材位置算出手段は、上記テーブル位置検出手段で検出したテーブルの水平方向位置から該テーブルに着座している車輪の水平方向の位置を算出し、該算出した車輪の水平方向位置と上記記憶手段に記憶されている相対位置情報とに基づいて車輪傾斜角度調整部材の位置を算出するようにしても良い。あるいは、車種毎に予め設定されている車輪がテーブルに着座した状態における車輪傾斜角度調整部材のテーブルに対する相対位置情報を記憶する記憶手段を備え、上記調整部材位置算出手段は、上記テーブル位置検出センサで検出したテーブルの水平方向の位置と上記記憶手段に記憶されている相対位置情報とに基づいて車輪傾斜角度調整部材の位置を算出するようにしても良い。これによれば、テーブル上に搬入する車両についての相対位置情報を記憶手段に記憶させることにより、車種毎の車輪に対する車輪傾斜角度調整部材の相対位置の差異に応じて車輪傾斜角度調整部材の位置を検出できる。また、上記相対位置情報は、複数の車種に対応してそれぞれ記憶手段に記憶され、上記調整部材位置算出手段は、テーブル上の車両の車種に応じた相対位置情報に基づいて車輪傾斜角度調整部材の位置を算出するのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図14を参照して説明する。
【0011】
図1は、車両Wを搬入し、その車両Wに装着された車輪2のトー角度の調整を行う調整ステーション1を示している。調整ステーション1には、図2にも示すように、搬入される車両Wの車輪2を着座させるテーブル3が車輪2の数に対応して4つ設けられている。また、4つのテーブルTのうち前輪2を着座させる2つのテーブル3の車幅方向内側には、その2つのテーブル3に着座した前輪2に連結されたタイロッドA(図14参照)の長さを調整して前輪2のトー角度を調整するタイロッド調整装置4が、前輪用の2つのテーブル3にそれぞれ対応して2機備えられている。
【0012】
図3及び図4を参照して、テーブル3は、ガイドレール(図示せず)を介して車幅方向(矢印a方向)に変位可能な枠体301により支持される。枠体301上には、ガイドレール302を介して車長方向(矢印b方向)に変位可能な第1テーブル303が載置される。なお、枠体301および第1テーブル303は、測定対象である車両Wの車幅および車長に応じて位置調整される。
【0013】
第1テーブル303上には、ガイドレール304を介して車幅方向(矢印a方向)に変位可能な第2テーブル305が載置される。なお、第2テーブル305は、テーブル3に対して車両Wが進入した際の位置ずれを補正するためのものである。この第2テーブル305には、支軸306が軸受307を介して矢印c方向に回動可能に支持される。そして、支軸306の下端部には、支軸306の回動角を検出するためのロータリエンコーダ308がブラケット309を介して連結される。
【0014】
第2テーブル305上には、ベアリング310を介して矢印c方向に回動可能な第3テーブル311が載置される。ここで、第3テーブル311に固定されるベアリング310のアウタ部材312の外周には、ギア313が設けられる。一方、第2テーブル305には、減速機構314を介してモータ315が固定されており、減速機構314に連結されたギア316がアウタ部材312外周のギア313と噛み合っている。また、第2テーブル305には、ブラケット317を介してブレーキ用のシリンダ318が装着されており、シリンダ318のシリンダロッド319に装着されたブレーキ板320を第3テーブル311に圧接させることで第2テーブル305に対する第3テーブル311の回動を阻止するように構成している。
【0015】
第3テーブル311上には、ガイドレール321を介して一対の対向する車輪クランプ装置322が載置され、これら一対の車輪クランプ装置322は、パンタグラフ機構323によって互いに連結されている。一対の車輪クランプ装置322のうちの一方には、該一方の車輪クランプ装置322をガイドレール321に沿って第3テーブル311に対して矢印e方向に変位させる駆動用シリンダ324が設けられており、該駆動用シリンダ324の作用により、一対の車輪クランプ装置322は支軸306を中心として常時対称に近接および離間可能に構成される。車輪クランプ装置322は、略L字状に折曲される支持部材325と、この支持部材325の鉛直方向に延在する側面に設けられたガイドレール326に沿って矢印d方向に変位可能なブラケット327と、そのブラケット327に装着される2つのクランプローラ328と、ブラケット327の昇降シリンダ329とを有する。この場合、クランプローラ328は、車輪2のタイヤ側面201に対して略ハの字状に当接するように配設されている。
【0016】
また、第1テーブル303上には、ガイドレール330を介して車輪保持台331が矢印a方向に変位可能に載置される。車輪保持台331には、軸受332を介して支軸333が矢印c方向に回動可能な状態で保持されており、この支軸333上には、ブラケット334を介して車輪支持ローラ335が保持される。
【0017】
一方、支軸306の上端部には、第4テーブル336が載置され、この第4テーブル336上には、ガイドレール337を介してトー検知装置338が設けられる。トー検知装置338は、略L字状に折曲される支持部材339と、その支持部材339をガイドレール337に沿って矢印f方向に変位させる駆動用シリンダ340と、支持部材339の鉛直方向に延在する側面に設けられたガイドレール341に沿って昇降シリンダ342によって矢印d方向に変位可能なブラケット343と、そのブラケット343に装着される2組の検知部344とを有する。
【0018】
この場合、検知部344は、ブラケット343に対し矢印d方向に変位可能に装着される第5テーブル345を有し、この第5テーブル345に2つの第1ローラ346および第2ローラ347が装着される。第1ローラ346は、リム・フランジ202からリム上面部203上を転動し、第2ローラ347はリム・フランジ202に沿って転動するように配置される。
【0019】
上記車輪保持台331は、矢印a方向を短辺、矢印b方向を長辺とした長方形の板状体で形成されており、その中央には軸受332を挿入するための穴が開口している。この車輪保持台331の矢印a方向に平行な2つの側面のうちの1面331a側にはレーザーセンサ(光干渉測長器)5aが設けられており、このレーザーセンサ5aはレーザーが該側面331aに対して垂直に入射するように固定されている。これにより、上記車輪保持台331の1側面331aがa方向位置検出対象面331aとして用いられ、レーザーセンサ5aからa方向位置検出対象面331aまでの距離を検出できる。また、車輪保持台331の矢印b方向に平行な2つの側面のうちの1面331b側にもレーザーセンサ5bが設けられており、このレーザーセンサ5bはレーザーが該側面331bに対して垂直に入射するように固定されている。これにより、上記車輪保持台331の1側面331bがb方向位置検出対象面331bとして用いられ、レーザーセンサからb方向位置検出対象面331bまでの距離を検出できる(テーブル位置検出手段)。これらレーザーセンサ5a、5bは制御用コンピュータ6に接続されており、検出したa方向位置検出対象面331a及びb方向位置検出対象面331bまでの距離データは制御用コンピュータ6に送信される。
【0020】
制御用コンピュータ6中のROM(Read Only Memory)には、タイロッドAの、該タイロッドAが連結された車輪2に対する相対位置のデータ(X1,Y1)、上記車輪保持台331の短辺及び長辺のサイズデータ(X2,Y2)、レーザセンサ5bが固定されている位置のa方向位置データX3及びレーザセンサ5aが固定されている位置のb方向位置データY3が記憶されている(記憶手段)。なお、上記タイロッドAの相対位置データは、自動車の車種毎にそれぞれ左右両前輪に対応して記憶されている。また、上記タイロッドAの相対位置データ(X1,Y1)、車輪保持台331のサイズデータ(X2,Y2)及びレーザセンサの位置データX3、Y3の値は、調整ステーション1の所定位置に設定された原点Oと矢印a方向に平行なX軸と矢印b方向に平行なY軸とで構成される所定の2次元座標系(X,Y)を基準としている(図2参照)。
【0021】
タイロッド調整装置4は、図5に示すように、タイロッドAを径方向に挿入可能な挿入溝700を先端部に備えたオープンエンドレンチ7と、そのオープンレンチ7を自動車Wの車幅方向と車長方向とに移動自在、車幅方向に傾動自在、オープンエンドレンチ7の長手方向の軸線回りに回動自在に支持する支持機構8と、その支持機構8及びオープンレンチ7を自動車Wの下方からタイロッドAに向けて昇降させるキャリッジ9とを備えている。図5には、右側前輪用のタイロッド調整装置4を示している。
【0022】
オープンエンドレンチ7は、図6ないし図10に示す如く、レンチ本体70の先端部に、タイロッドAのロックナットA3を回転するナット回転部71と、タイロッドAの工具係合部A4に係合してロッド本体A1を正逆転するロッド回転部72とを設けた双頭式レンチで構成されている。
【0023】
ナット回転部71は、レンチ本体70にタイロッドAの軸方向に移動自在に支持した可動ケーシング701に軸支される回転体710を備えている。回転体710は可動ケーシング701の軸方向両側の側板部701a、701a間に挟み込まれており、両側板部701a、701aに互に同心の円形孔701b、701bを形成し、各円形孔701bに回転体710の軸方向両側に突設した各軸部710aを嵌合させて、回転体710を円形孔701bと同心の軸線L回りに回転自在に軸支している。
【0024】
また、可動ケーシング701各側板部701aの先端に、ロッドエンドA2の挿入用切欠き701cを円形孔701bに達するように形成すると共に、回転体710に、外周面に開口するロッドエンドA2用の係合溝710bを形成している。かくて、回転体710の係合溝710bを切欠き701cに合致する位相にすれば、切欠き701cを通して係合溝710bにロッドエンドA2を径方向に挿入できる。また、可動ケーシング701の軸線L方向外側の側板部701aの外側面に板状のワークガイド702をねじ止めし、このワークガイド702にもロッドエンドA2を径方向に挿入可能な溝702aを形成している。この溝702aの底部は、ロッドエンドA2の外径と等径で回転体710の回転軸線たる円形孔701bの中心と同心の半円形に形成されている。
【0025】
回転体710には、ロックナットA3を軸方向に挿入可能なソケット部710cが設けられている。そして、ソケット部710c内に、ロックナットA3に係合可能な複数の駒710dを取付け、回転体710の回転でロックナットA3を回転し得るようにしている。ここで、回転体710は駆動手段73により正逆両方向に回転駆動される。駆動手段73は、レンチ本体70の基端部に搭載した駆動源たるナットランナ730と、レンチ本体70の可動ケーシング701の近傍部分に軸支した、ナットランナ730によりチェーン731を介して駆動されるドライブギア732と、回転体710の外周に形成した歯部710eに噛合するように可動ケーシング701に軸支した1対のドリブンギア733、733と、ドライブギア732とドリブンギア733、733とを連結するように可動ケーシング701に軸支した第1と第2の2個の中間ギア734、735とで構成されている。
【0026】
レンチ本体70には、ナット回転部71の軸方向外側に位置するブラケット703が取付けられており、このブラケット703と後記する固定ケーシング704との間に、ドリブンギア733、733用の1対の支軸705、705と第1中間ギア734用の支軸706とを可動ケーシング701を貫通させて横設し、これら支軸705、705、706を介して可動ケーシング701が軸方向に移動自在に支持されるようにしている。そして、可動ケーシング701の軸方向外側の側板部701aにシリンダ74を取付け、このシリンダ74のピストンロッド74aを第2中間ギア735の支軸に兼用した状態で固定ケーシング704に連結している。かくて、シリンダ74により可動ケーシング701をロックナットA3に向けて軸方向内方に進退させ、この進退動作でソケット部710cをロックナットA3に係脱させることができる。なお、前記ドライブギア732は、可動ケーシング701が軸方向に移動しても第1中間ギア734がドライブギア732から離脱しないように、軸方向に長手に形成されている。
【0027】
ロッド回転部72は、レンチ本体70に固定した固定ケーシング704に軸支される第1と第2の1対の回転体721、722を備えている。両回転体721、722は、図6に示す如く、互に嵌り合った状態で固定ケーシング704の軸方向両側の側板部704a、704a間に挟み込まれている。そして、両側板部704a、704aに可動ケーシング701の円形孔701bと同心の円形孔704b、704bを形成し、各円形孔704bに各回転体721、722の軸方向外側面に突設した軸部721a、722aを嵌合させて、両回転体721、722をナット回転部71の回転体710の回転軸線と同一の軸線L回りに回転自在に軸支している。
【0028】
また、固定ケーシング704の各側板部704aの先端に、軸状ワークたるタイロッドAの工具係合部A4の挿入用切欠き704cを円形孔704bに達するように形成すると共に、両回転体721、722に、図10に示す如く、外周面に開口する工具係合部A4用の係合溝721b、722bを形成している。かくて、両回転体721、722の係合溝721b、722bを切欠き704cに合致する位相(原点位相)にすれば、切欠き704cを通して、係合溝721b、722bに工具係合部A4をその径方向に挿入できる。また、固定ケーシング704の軸方向外側の側板部704aの外側面に板状のワークガイド707をねじ止めし、このワークガイド707にも工具係合部A4を径方向に挿入可能な溝707aを形成している。この溝707aの底部は、工具係合部A4の断面形状の外接円と等径で前記軸線Lと同心の半円形に形成されている。
【0029】
第1回転体721は駆動手段75によって正逆両方向に回転駆動される。駆動手段75は、レンチ本体70の基端側に搭載した駆動源たるサーボモータ750と、レンチ本体70の固定ケーシング704の近傍部分に軸支した、サーボモータ750によりチェーン751とギア751aとを介して駆動されるドライブギア752と、第1回転体721の外周に形成した歯部721cに噛合するように固定ケーシング704に支軸705、705を介して軸支した1対のドリブンギア753、753と、ドライブギア752とドリブンギア753、753とを連結するように固定ケーシング704にそれぞれ支軸706とピストンロッド74aとを介して軸支した第1と第2の2個の中間ギア754、755とで構成されている。
【0030】
また、第2回転体722はブレーキ手段76によって制動し得るように構成されている。ブレーキ手段76は、固定ケーシング704内に、第2回転体722の外周に接離するように夫々ピン760を介して揺動自在に軸支した1対のブレーキシュー761、761と、両ブレーキシュー761、761にワイヤ762、762を介して連結される、レンチ本体70に取付けたシリンダ763とで構成されている。そして、シリンダ763によりワイヤ762、762を介してブレーキシュー761、761を引張ることにより、ブレーキシュー761、761が第2回転体722の外周に圧接して、第2回転体722が制動されるようにしている。
【0031】
第1回転体721には、図10に示す如く、係合溝721bの両側に位置させて、1対のクランプアーム77、77がそれぞれピン77aを支点にして係合溝721bの溝幅方向に揺動自在に枢支されている。そして、各クランプアーム77に形成したカム溝77bに第2回転体722に植設したピン722cを係合させると共に、クランプアーム77外周77cに第2回転体722に植設したピン722dを当接させ、第1回転体711に対する第2回転体712の正逆一方への相対回転により両クランプアーム77、77の一方が溝幅方向内方に揺動して工具係合部A4を把持するようにしている。
【0032】
上記可動ケーシング701にねじ止めされたワークガイド702の外面、及び固定ケーシング704にねじ止めされたワークガイド707の外面には、それぞれ、上記オープンエンドレンチ7先端部の挿入溝700の底面の両縁端近傍、すなわちワークガイド702の溝702a下端近傍、及びワークガイド707の溝707a下端近傍に物体が存在するか否かを検知する着座センサ781、782が設けられている。この着座センサ781、782は、光電スイッチ式のセンサであり、上記溝702a、707a下端近傍を走査するように設けられている。これにより、タイロッドAが走査線上に存在しなければ光電スイッチがオン状態となり、タイロッドAが走査線上に存在すれば光電スイッチがオフ状態となる。このオン状態・オフ状態の検知データは上記制御用コンピュータ6に送信される。
【0033】
上記キャリッジ9は、図5に示すように、鉛直方向から自動車の車長方向と車幅方向に夫々所定角度傾斜したガイド枠91(以下、該傾斜方向をZ軸方向と記す)に固定されたガイドレール92に摺動自在に支持されており、図外の駆動手段によりZ軸方向に昇降自在である。
【0034】
上記支持機構8は、図11に明示する如く、オープンエンドレンチ7を、Z軸に平行な面上で車幅方向に傾動自在とする傾動部材80と、傾動部材80に、上記面と平行なU軸方向の軸810を介して回動自在に軸支される回動部材81と、回動部材81に固定した、U軸方向に直交するW軸方向のガイドレール820に摺動自在に支持される第1摺動部材82と、第1摺動部材82に固定した、U軸方向及びW軸方向に直交するV軸方向のガイドレール830に摺動自在に支持される第2摺動部材83とで構成されており、第2摺動部材83に、オープンエンドレンチ7をその長手方向がU軸と平行になるように取付けている。
【0035】
かくて、第1と第2の両摺動部材82、83の動きでオープンエンドレンチ7を車幅方向及び車長方向に移動できると共に、回動部材81の動きでオープンエンドレンチ7をその長手方向の軸線回りに回動できる。なお、第2摺動部材83には、オープンエンドレンチ7の移動操作用のハンドル84が取付けられている。
【0036】
上記傾動部材80は、キャリッジ9に固定した、オープンエンドレンチ7の先端部を中心とする円弧状のガイドレール800に沿って摺動自在に支持されている。かくて、傾動部材80のガイドレール800に沿った円弧運動により、オープンエンドレンチ7はその先端部を支点にして車幅方向に傾動する。
【0037】
また、キャリッジ9上には、傾動部材80に突設されたアーム80aから下方に突出して取り付けられた連結部80bに連結されるサーボシリンダ801と、このサーボシリンダ801用のスライドガイド802とが搭載されている。サーボシリンダ801は傾動部材80をガイドレール800に沿って傾動させるための駆動源であり、このサーボシリンダ801のピストンロッド801aは、上記連結部80bに連結されて傾動部材80の傾動面に平行かつU軸に直交する方向に出没可能に設置されている。また、傾動部材80の下端には下方に突出する舌片803が取付けられており、キャリッジ9に舌片803を挟むブレーキ804を取付けて、このブレーキ804の作動により傾動部材80を任意の位置でロックできるようにしている。かくて、ブレーキ804をフリーにすればサーボシリンダ801の駆動による傾動部材80の傾動が可能な状態となり、ブレーキ804を作動させれば傾動部材80を任意の位置でロックできる。また、傾動部材80には、キャリッジ9に形成した孔(図示しない)に嵌合するピストンロッド(図示しない)を出没するロックシリンダ805が設けられており、ピストンロッドをキャリッジ9方向に突出させて孔に嵌合させた状態でブレーキ804を作動させることにより傾動部材80が所定の中立位置にロックされるようにしている。
【0038】
また、回動部材81の軸810には径方向に突出する舌片812aが取付けられており、傾動部材80に舌片812aを挟むブレーキ812を取付けて、このブレーキ812の作動により回動部材81を任意の位置でロックできるようにしている。また、傾動部材80に突設されたアーム80cには、回動部材81に形成した孔(図示しない)に嵌合するテーパピン(図示しない)を出没するロックシリンダ811が垂設されており、テーパピンを上方に突出させて孔に嵌合させた状態でブレーキ812を作動させることにより回動部材81が所定の中立位置にロックされるようにしている。なお、テーパピンを下方に没入させた状態でもテーパピンの先端は孔内に臨入しており、回動部材81はテーパピンの先端で規制される範囲内において自由に回動する。
【0039】
また、回動部材81には、第1摺動部材82に形成したリブに連結されるサーボシリンダ822と、そのリブに対向するストッパ用のピストンロッド(図示しない)を有するシリンダ823とが搭載されており、同様に、第1摺動部材82にも、第2摺動部材83に形成したリブに連結されるシリンダ832と、そのリブに対向するストッパ用のピストンロッド(図示しない)を有するシリンダ833とが搭載されている。これらサーボシリンダ822、832は、それぞれ第1摺動部材82及び第2摺動部材83をW軸方向及びV軸方向に摺動させるための駆動源である。また、回動部材81上には、第1摺動部材82を任意の位置でロックするためのブレーキ(図示しない)が設けられており、シリンダ823のピストンロッドを突出させると共に該ピストンロッドがリブに当接するようにサーボシリンダ822を駆動し、この状態でブレーキを作動させることにより、第1摺動部材82を所定の中立位置にロックできるようにしている。これと同様に、第1摺動部材82上には、第2摺動部材83を任意の位置でロックするためのブレーキ831が設けられており、シリンダ833のピストンロッドを突出させると共に該ピストンロッドがリブに当接するようにサーボシリンダ832を駆動し、この状態でブレーキ831を作動させることにより、第2摺動部材83を所定の中立位置にロックできるようにしている。
【0040】
上記サーボシリンダ801、822、832、及びこれらそれぞれのブレーキ、ロックシリンダ等は、上記制御用コンピュータ6と接続され、該制御用コンピュータ6に制御される。
【0041】
次に、本実施の形態の作用について説明する。ここでは、右側前輪2のトー角度を調整する場合について説明し、左側前輪2については右側前輪と同様であるので説明を省略する。
【0042】
本実施の形態において車両の前輪のトー角度を調整する場合、まず、測定対象車両Wの車幅及び車長に応じて枠体301を矢印a方向に変位させると共に第1テーブル303を矢印b方向に変位させた後、車両を進入させ、各車輪2をテーブル3上に着座させる。この場合、着座した車輪2の向きに応じて支軸333を介して車輪支持ローラ335が偏向する。
【0043】
続いて、駆動用シリンダ340が駆動して車輪クランプ装置322がガイドレール321に沿って相対的に近接し、クランプローラ328が車輪2のタイヤ側面201に当接する。なお、クランプローラ328の高さは、予め昇降シリンダ329によって調整しておく。この場合、クランプローラ328がタイヤ201の側面に倣うため、車輪クランプ装置322はベアリング310を介して支軸306の回りに回動する。
【0044】
車輪2のクランプが完了すると、続いて上記2つのレーザーセンサ5a、5bによって、レーザーセンサ5bから車輪保持台331のa方向位置検出対象面331bまでの距離X4及びレーザーセンサ5aから車輪保持台331のb方向位置検出対象面331aまでの距離Y4が検出され、その距離データX4、Y4が制御コンピュータ6に送信される。
【0045】
制御コンピュータ6は、受信した距離データX4、Y4と、ROMに記憶されている車輪保持台331のサイズデータ(X2,Y2)と、レーザセンサ5a、5bの位置データX3、Y3とに基づいて、上記所定の2次元座標系(X,Y)における、車輪2の中心の水平方向位置(X5,Y5)を算出する。本実施の形態では、図12を参照して、車輪2の中心の水平方向位置がテーブル3の中心の水平方向位置と等しいとみなし、次式
5=X3+X4+X2/2
5=Y3+Y4+Y2/2
によって車輪2の中心の水平方向位置(X5,Y5)を算出する。
【0046】
続いて制御コンピュータ6は、算出した車輪2の中心の水平方向位置(X5,Y5)と、ROMに記憶されているタイロッドAの相対位置データ(X1,Y1)とに基づいてタイロッドの水平方向位置(XT,YT)を算出する(調整部材位置算出手段)。具体的には、次式
T=X1+X5
T=Y1+Y5
によってタイロッドAの水平方向位置(XT,YT)を算出する。
【0047】
このようにしてタイロッドAの水平方向位置(XT,YT)が算出されると、制御用コンピュータ6の制御により、タイロッド調整装置4のキャリッジ9をZ軸方向の所定高さまで上昇させる。この時点では、支持機構8の傾動部材80及び回動部材81は中立位置でロックされている。
【0048】
続いて制御用コンピュータ6の制御により、上記ロックシリンダ811による回動部材81の中立位置でのロックを解除し、オープンエンドレンチ7をさらにZ軸方向に押し上げると共に、上記算出したタイロッドAの水平方向位置(XT,YT)に基づいてサーボシリンダ822、832を駆動する。これにより、第1と第2の摺動部材82、83の動きを利用してオープンエンドレンチ7が車幅方向及び車長方向に位置調整され、タイロッドAのロッドエンドA2と工具係合部A4とが、それぞれオープンエンドレンチ7の可動ケーシング701の切欠き701cと固定ケーシング704の切欠き704cとに挿入される。さらに、その後のオープンエンドレンチ7の押し上げにより、工具係合部A4とロッドエンドA2とが切欠き701c、704cをガイドにしてロッド回転部72の両回転体721、722の係合溝721b、722bとナット回転部71の回転体710の係合溝710bとに押し込まれる。この際、回動部材81の動きによりオープンエンドレンチ7がタイロッドAの車長方向の傾きに倣ってU軸回りに回動する。
【0049】
続いて制御用コンピュータ6は、上記オープンエンドレンチ7先端部の着座センサ781、782のオン状態・オフ状態の検知データを受信し、この検知データに基づいて、タイロッドAの軸線と上記第1回転体721の回転軸線とが合致しているか否かを判断する。具体的には、着座センサ781及び着座センサ782が共にオフ状態の場合には、タイロッドAの軸線とオープンエンドレンチ7の回転軸線とが合致していると判断し、着座センサ781がオフ状態で着座センサ782がオン状態の場合または着座センサ781がオン状態で着座センサ782オフ状態の場合には、タイロッドAの軸線とオープンエンドレンチ7の回転軸線とが合致していないと判断する。
【0050】
タイロッドAの軸線とオープンエンドレンチ7の回転軸線とが合致していないと判断された場合には、制御用コンピュータ6の制御により、上記ロックシリンダ805による傾動部材80の中立位置でのロックを解除し、オン状態の着座センサがオフ状態に成るまで上記サーボシリンダ801を駆動させる。具体的には、着座センサ781がオフ状態で着座センサ782オン状態の場合(図13(a)参照)には、サーボシリンダ801のピストンロッド801aを没入させて、着座センサ782がオフ状態に成るまでオープンエンドレンチ7を第11図向かって左方向に傾ける。また、着座センサ781がオン状態で着座センサ782がオフ状態の場合(図13(b)参照)には、サーボシリンダ801のピストンロッド801aを突出させて、着座センサ781がオフ状態に成るまでオープンエンドレンチ7を第11図向かって右方向に傾ける。この際、回動部材81のロックは解除されており、傾動部材80が傾動すると、回動部材81はタイロッドAの車長方向の傾きに倣ってU軸回りに回動する。
【0051】
上記の如くしてタイロッドAの軸線とオープンエンドレンチ7の回転軸線とが合致すると、この状態で支持機構8の各部材80、81、82、83をロックする。
【0052】
次に、可動ケーシング701を固定ケーシング704に接近させて、ナット回転部71の回転体710のソケット部710cを予め緩められているロックナットA3に係合させて、ロックナットA3を回り止めし、この状態でサーボモータ750によりロッド回転部72の第2回転体722を所要の方向に回転させる。これによれば、ロッド回転部72の第1回転体721に設けた片側のクランプアーム77が工具係合部A4を把持して、ロッド本体A1が第2回転体722と同方向に回転され、タイロッドAの長さが変化する。
【0053】
そして、タイロッドAの長さ、即ち、前輪2のトーが目標値に調整されたところで第2回転体722の回転を停止し、次に、ナットランナ730によりナット回転部71の回転体710を回転させてロックナットA3を締付ける。この締付けが完了すると、可動ケーシング701を固定ケーシング704から離間させて、ソケット部710cをロックナットA3から離脱させると共に、ナット回転部71の回転体711とロッド回転部72の両回転体721、722とを、それぞれ、係合溝710b、721b、722bが固定ケーシング701と可動ケーシング704の切欠き701c、704cに合致する位相になるまで回転させる。最後に、ロッドレスシリンダ31によりキャリッジ9を下降させ、オープンエンドレンチ7をタイロッドAから離脱させる。
【0054】
なお、本実施形態のタイロッド調整装置4は、取付けボルトを外すことによってサーボシリンダ801と傾動部材80との連結、及びサーボシリンダ832と第2摺動部材83との連結を解除することにより、緊急時等に上記移動操作用のハンドル84によって作業者の手動で操作することも可能である。
【0055】
なお、本実施の形態では、車輪2の中心の水平方向位置がテーブル3の中心の水平方向位置と等しいとみなして車輪2の中心の水平方向位置(X5,Y5)を算出したが、車輪2の中心の水平方向位置がテーブル3の中心の水平方向位置から変位した状態で車輪2がテーブル3に着座するものの場合には、その変位量を考慮して車輪2の中心の水平方向位置(X5,Y5)を算出すれば良い。また、本実施の形態では、車輪2の中心の水平方向位置(X5,Y5)とタイロッドAの車輪2に対する相対位置のデータ(X1,Y1)とからタイロッドAの水平方向位置(XT,YT)を算出したが、本発明はこれに限定されるものではなく、テーブル3の中心の水平方向位置(X5,Y5)と、車輪2がテーブル3に着座した状態におけるタイロッドAのテーブル3に対する相対位置情報とに基づいてタイロッドAの水平方向位置(XT,YT)を算出しても良い。
【0056】
また、本実施形態では、タイロッドAの位置を検出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車輪2の傾斜角度を調整する車輪傾斜角度調整部材であればどのようなものでも良い。
【0057】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、車両毎に搬入位置のばらつきがあったとしても、搬入された車両の車輪を着座させたテーブルの水平方向位置をテーブル位置検出手段によって検出し、その検出結果に基づいて車輪傾斜角度調整部材の位置を算出するので、作業者の視認によらず車輪傾斜角度調整部材の位置を検出することができる。
【0058】
また、車種毎に予め設定されている車輪傾斜角度調整部材の車輪に対する相対位置情報を記憶手段に記憶しておき、この相対位置情報とテーブルの水平方向位置とから車輪傾斜角度調整部材の位置を算出するようすれば、車種毎の車輪に対する車輪傾斜角度調整部材の相対位置の差異に応じて車輪傾斜角度調整部材の位置を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態の構成を示す平面図
【図2】 テーブル及び車両を示す斜視図
【図3】 テーブルの正面断面図
【図4】 テーブルの側面図
【図5】 タイロッド調整装置の斜視図
【図6】 オープンエンドレンチの拡大断面図
【図7】 図6の左側面図
【図8】 図6の右側面図
【図9】 図6のIX−IX線拡大断面図
【図10】 図6のX−X線拡大断面図
【図11】 支持機構の拡大斜視図
【図12】 調整ステーション1のX−Y座標系を示す図
【図13】 オープンエンドレンチの傾動制御を示す図
【図14】 タイロッドの斜視図
【符号の説明】
A タイロッド
3 テーブル
4 タイロッド調整装置

Claims (1)

  1. タイロッドの調整部材にオープンエンドレンチを係合させて車輪のトー角を調整する装置であって、車両の各車輪を着座させて前後及び左右方向に対して移動自在なテーブルと、該テーブルの位置を検出するテーブル位置検出手段と、車輪のテーブルに対する着座位置と、車種毎に設定されている調整部材の車輪に対する相対位置とを記憶しておく記憶手段と、該記憶手段の記憶データとテーブル位置検出手段の検出データとに基づいて、タイロッドの調整部材の位置を算出する調整部材位置算出手段と、該調整部材位置算出手段の算出データに基づいて、オープンエンドレンチを移動させてタイロッドの調整部材に係合させる制御手段とを備えたことを特徴とする車輪トー角の調整装置。
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