JP3919667B2 - リチウム二次電池用接着剤及びその製造方法並びにそれを用いた電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池に関するものであり、詳しくは、薄型等で任意の形態を取り得る電池の電極とセパレータ膜とを接着する接着剤、その接着剤の製造方法及びその接着剤を用いて電極とセパレータ膜とを接着した構造を有する電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電子機器の小型・軽量化への要望は非常に大きい。その実現は、携帯電子機器に使用される電池の性能向上に大きく依存している。この電池の性能向上に対応すべく多様な電池の開発、改良が進められてきた。
【0003】
電池に要求される特性は、高電圧、高エネルギー密度、安全性、形状の任意性等がある。リチウム二次電池は、これまで知られている電池の中でも、最も高電圧、かつ、高エネルギー密度が実現される二次電池として期待されており、現在でもその改良が盛んに進められている。
【0004】
リチウム二次電池は、その主要な構成要素として正極、負極、これら正極と負極との間に挟まれたセパレータ膜を有し、正極、負極及びセパレータ膜には電解液が含浸されている。現在実用に供されているリチウム二次電池においては、正極には、リチウムコバルト酸化物等の粉末からなる正極活物質を正極集電体に塗布して板状にしたものが用いられ、負極には、炭素系粉末からなる負極活物質を負極集電体に塗布して板状にしたものが用いられ、セパレータ膜には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質膜が用いられている。
【0005】
リチウム二次電池を薄型化するために、正極及び負極とセパレータ膜とを多孔性の接着性樹脂層を介して接合した構造の電池が開示されている。この構造の電池においては、正極とセパレータ膜及び負極とセパレータ膜を密着させるために、加圧するための外装缶を必要としなくなるとともに、正極と負極との間に良好な電気的接続が得られ、良好な特性を有し、加圧のための外装缶を不要とするリチウム二次電池が得られる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、接着性樹脂層内にフィラーを含有する構成のリチウム二次電池が開示されている。この構成にすることによって、接着樹脂層内に多数の空孔を形成し、この空孔内を電解液で満たすことが可能となるので、正極と負極間に十分なイオン伝導性が確保され、良好な特性を有する薄型化されたリチウム二次電池が得られる(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特許第3225864号公報(第3頁−第4頁、図1)
【特許文献2】
国際公開第WO99/38224号パンフレット(第8頁−第11頁、図1、図2)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような、多孔性の接着性樹脂層を有する電池の特性を向上させるためには、接着強度を維持したまま接着性樹脂層の厚さをより薄くし、また、接着性樹脂層中の空隙率を低下させないようにすることが必要になる。
【0009】
しかし、上記従来の接着性樹脂層の樹脂層成分を用いた場合、電極(正極及び負極)とセパレータ膜との接着強度を実用水準とするためには接着性樹脂層の厚さを4μm以下にすることが困難であり、そのため、電池サイクル特性や負荷率特性、低温特性をさらに向上させた電池を実現することが困難であった。
【0010】
本発明は、上記のような困難を克服し、電極とセパレータ膜との接着強度を実用水準とするとともに、接着性樹脂層の厚さを薄くして、さらなる電池特性の向上を実現することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るリチウム二次電池用接着剤は、溶剤中に、非導電性粉末と、該非導電性粉末を上記溶剤中に分散させるとともに、上記溶剤に溶解する分散剤と、接着性を有するとともに上記溶剤中に溶解する接着性樹脂とを含み、上記分散剤は、フッ素原子を分子構造中に有する下記化学構造式(1)または式(2)で表される化合物であるものである。
【化3】
【化4】
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るリチウム二次電池における一実施の形態を示す断面図である。図に示したように、電池エレメント7は、外装のアルミラミネートパック6に封入されている。電池エレメント7は、正極1、セパレータ膜2、負極3、接着性樹脂層4を備え、接着性樹脂層4は貫通孔5を有するとともに、セパレータ膜2に対して正極1及び負極3を強固に接着している。
【0013】
正極1は、粉末からなる正極活物質を正極集電体に塗布して板状にしたものが用いられ、負極3には、粉末からなる負極活物質を負極集電体に塗布して板状にしたものが用いられ、セパレータ膜2には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の材質からなる多孔質膜が用いられている。
【0014】
正極活物質には、リチウム原子を含有したコバルト、マンガン、ニッケル等の遷移金属の酸化物、カルコゲン化合物、あるいはこれらの複化合物、さらには、これらに各種添加元素を有するものが使用可能である。
【0015】
負極活物質には、炭素質材料が好ましく用いられるが、電池動作の主体となるリチウムを吸蔵、放出できる物質であれば使用できる。
【0016】
集電体は電池内で安定な金属であれば使用可能であるが、正極1ではアルミニウム、負極3では銅が好ましく用いられる。集電体の形状は箔、網、エクスパンドメタル等いずれのものでも使用可能である。
【0017】
セパレータ膜2は、電子絶縁性の多孔膜、網、不織布等で十分な強度を有するものであれば使用可能であり、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等の材質からなる多孔質膜の使用が接着性や安全性の確保の観点から好ましいものである。
【0018】
電解液は、溶媒としてジメトキシエタン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、炭酸メチルエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸エステル系溶媒の単独物または混合物が用いられ、電解質としては溶媒中でリチウムが遊離するリチウム塩が用いられ、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiN(C2F5SO2)2等が使用可能である。
【0019】
接着性樹脂層4は、接着性樹脂と、非導電性粉末と、この非導電性粉末を接着樹脂の溶剤中に分散させる分散剤とを含有する。
【0020】
非導電性粉末は、導電性をもたない粉体(電子絶縁性粉体)であれば使用可能であり、特に限定されるものではないが、アルミナ、チタニア、シリカ、セリア、イットリア、ジルコニア等の無機酸化物及びこれらの複合無機酸化物の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の熱可塑性ポリマー、スチレンブタジエンゴム等のゴム状ポリマ、ポリイミド等の熱硬化性ポリマーが使用可能である。
【0021】
中でも、無機酸化物は電池内部環境下における多孔性の接着性樹脂層4の熱安定性を向上させる点から適しており、さらに、アルミナ、チタニア、シリカはリチウム電池の反応域における電気化学的安定性の点で優れ、電池反応を阻害しない接着性樹脂層4が得られる好ましい材料である。
【0022】
また、非導電性粉末の粒子径は、1μm以下とすることによって、接着性樹脂層4の厚さを従来よりも薄くすることができ、良好な電池特性を有する電池を得ることができる。
【0023】
接着性樹脂は、電池内の電解液に溶解せず、電池内で化学反応を起こさないものであればよく、特に限定されるものではないが、フッ素原子を分子構造中に有するものは電気化学的安定性及び熱安定性の高い接着性樹脂層4とすることができ、フッ化ビニリデン構造を含む共重合体が使用可能であり、良好な電池特性を有し、かつ、熱安定性の高い電池を得ることができる。
【0024】
また、接着性樹脂は、フッ化ビニリデン構造を分子構造中に含むことによって、溶剤に対する溶解性の高い樹脂とすることができ、樹脂の溶剤中における分散状態が良好な接着剤が得られ、接着性樹脂層4の厚さを薄厚で均一な厚さにすることができる。
【0025】
また、接着性樹脂は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体とすることによって、溶剤に溶解可能で、接着性の高い樹脂となり、樹脂の溶剤中への分散状態や接着性が良好な接着剤が得られ、接着性樹脂層4の厚さを薄厚で均一な厚さにすることができる。
【0026】
また、接着性樹脂は、フッ化ビニリデン構造を分子構造中に有する樹脂とシアノ基を分子構造中に有する樹脂との混合体であることによって、接着強度がより大きく溶剤に対する溶解性が高い樹脂とすることができ、接着性樹脂層4の厚さを薄厚で均一な厚さにすることができる。
【0027】
具体的には、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)(以下、P(VdF−HFP)と略す)、ポリ(フッ化ビニリデン−アクリロニトリル)(以下、P(VdF−AN)と略す)、ポリ(フッ化ビニリデン−フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン−アクリル酸メチル)、ポリアクリロニトリル等が使用可能である。中でも、P(VdF−HFP)、P(VdF−HFP)にポリアクリロニトリルを混合したものは、電解液に対する耐性や接着性の点で、特に好ましい。
【0028】
分散剤は、接着樹脂の溶剤に溶解し、電池内で化学的に安定しているもの、あるいは電池内で反応した際に電池容量を低下させないものであれば使用可能であり、特に限定されるものではないが、フッ素原子を分子構造内に含むことによって、接着性樹脂層4の熱安定性や電気化学的安定性に影響を与えない分散剤とすることができる。
【0029】
また、分散剤は、炭素間二重結合を分子構造内に有することにより、初期電池反応時に負極活物質表面で結合が開裂し、負極活物質表面の活性部位を保護することができ、電解液分解等の電池副反応の小さい電池を得ることができる。
【0030】
また、分散剤は、エチレンオキシド構造を分子構造中に有することによって、接着樹脂の溶剤に可溶となり、溶剤中における分散性が高くなるとともに、電解液にも可溶となり、電解液分解等の電池副反応の小さな電池を得ることができる。
【0031】
また、分散剤は、下記化学構造式(1)で示すα−パーフルオロノネニルオキシ−ω−メチルポリエチレンオキサイド及び下記化学構造式(2)で示すジ(α−パーフルオロノネニルオキシ)−ω−ポリエチレンオキシドとすることにより、接着樹脂の溶剤に可溶となり、溶剤中における分散性が高くなるとともに、電解液にも可溶となり、電解液分解等の電池副反応の小さな電池を得ることができる。
【0032】
【化5】
【化6】
【0033】
溶剤は、分散剤及び接着樹脂を溶解し、非導電性粉末を分散可能であり、電極(正極1及び負極3)材料と反応せず、乾燥処理によって除去可能であるものであれば使用可能であり、特に限定されるものではないが、N−メチル−2ピロリドン、N−N´−ジメチルホルムアミド、アニソール、アセトニトリル、エタノール、メタノール、水等が使用可能である。
【0034】
中でも、N−メチル−2ピロリドン、N−N´−ジメチルホルムアミドは、分散剤及び接着樹脂を良好に溶解、分散し、非導電性粉末の分散性が良好であり、乾燥処理における適度な揮発速度を有するために均一で薄厚な接着性樹脂層4を形成することができ、良好な電池特性を有する電池を得ることができる。
【0035】
接着性樹脂層4を形成するために用いる接着剤は、溶剤に分散剤を溶解した後、非導電性粉末を添加して混錬し、さらに、接着性樹脂を添加して混錬することによって、接着強度が高く薄厚な接着性樹脂層4を形成し易い接着剤とすることができる。この接着剤を用いて、正極1とセパレータ2及び負極3とセパレータ2の接着を行うことによって、多孔性で薄厚であり、実用的な接着強度を有する接着接合層4を形成することができ、良好な電池特性を有する電池が得られる。
【0036】
また、正極1とセパレータ2及び負極3とセパレータ2の接着強度を高くすることができるので、正極1、セパレータ2、負極3及び電解液を収容するための容器として、加圧に耐える強固なものを必要とせず、アルミラミネートフィルム等で作製した容器を使用することができ、電池全体の大きさを小型・薄型化したものとすることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって、リチウム二次電池についの具体的な製造方法と得られたリチウム二次電池の電池特性等を示す。
【0038】
実施例1.
正極1の作製方法について説明する。
リチウムコバルト酸化物(日本化学工業製 商品名:セルシード)を94wt%、黒鉛粉(電気化学工業製 商品名:デンカブラック)を2wt%、バインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデン(呉羽化学製 商品名:1100)4wt%をN−メチルピロリドン中に分散させて調整した正極活物質ペーストを、ドクターブレード法で厚さ150μmに調整しつつ、厚さ15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体に塗布して正極活物質層を形成する。
【0039】
次に、正極集電体上に形成した正極活物質層を乾燥するために、60℃の乾燥器中に60分間放置した後、正極活物質層の厚さを60μmになるようにプレスして正極1が完成する。
【0040】
負極3の作製方法について説明する。
粒状カーボン(大阪ガス製 商品名:メソフェーズマイクロビーズカーボン)を95wt%、バインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデン(呉羽化学製 商品名:9100)5wt%をN−メチルピロリドン中に分散させて調整した負極活物質ペーストを、ドクターブレード法で厚さ150μmに調整しつつ、厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体に塗布して、負極活物質層を形成する。
【0041】
次に、負極集電体上に形成した負極活物質層を乾燥するために、60℃の乾燥器中に60分間放置した後、負極活物質層の厚さを60μmになるようにプレスして負極3が完成する。
【0042】
多孔性の接着製樹脂層4を形成するための、接着剤の作製方法について説明する。
N−メチルピロリドン12.6重量部中に、分散剤としてα−パーフルオロノネニルオキシ−ω−メチルポリエチレンオキサイド0.13重量部を添加し、撹拌して完全溶解させる。その後、非導電性粉末として粒子径16nmのアルミナ粉体(日本アエロジル製 商品名:酸化アルミニウム)1.25重量部を投入して混錬する。次に、接着性樹脂として、下記化学式(3)を有するP(VdF−HFP)共重合体(呉羽化学製 商品名:9300)5wt%を含むN−メチルピロリドン溶液20.5重量部を添加して混錬して接着剤を作製する。
【0043】
【化7】
【0044】
作製した接着剤を用いて、負極3とセパレータ膜2間に多孔性の接着製樹脂層4を形成する方法について説明する。
作製した接着剤をロールコータを用いてセパレータ膜2表面に塗布し、その後、負極3の負極活物質層面をセパレータ膜2の接着剤塗布面に貼り合わせ、80℃の温風乾燥器内に放置してN−メチルピロリドンを除去することによって接着し、接着製樹脂層4を形成する。この時に得られる接着製樹脂層4は、多孔性で、厚さ1.5μmであった。また、負極3とセパレータ膜2との接着強度は25gf/cmであった。
【0045】
次に、作製した接着剤を用いて、正極1とセパレータ膜2間に多孔性の接着製樹脂層4を形成する方法について説明する。
作製した接着剤をグラビアロールを用いて正極1の正極活物質表面に塗布し、その後、負極3を貼り付けたセパレータ膜2の膜面を正極活物質層面の接着剤塗布面に貼り合わせ、80℃の温風乾燥器内に放置してN−メチルピロリドンを除去することによって接着し、正極1、セパレータ膜2及び負極3を接着した構造の電池エレメントを得る。この時得られる接着製樹脂層4は、多孔質であった。
【0046】
次に、上記作製した電池エレメント7を電池化する方法について説明する。
上記電池エレメント7の負極3の負極集電体(銅箔)にニッケル端子を取付け、正極1の正極集電体(アルミニウム箔)にアルミニウム端子を取り付けた後、アルミラミネートシートで作製した袋中に挿入し、袋中にリチウムを含む誘起溶媒を注液する。注液後、アルミラミネートシートの袋を密封することによって電池化を行う。
【0047】
以上の方法で作製した電池のサイクル特性を評価したところ、500サイクル後も初期容量の94%を保持し、また、−10℃の低温条件下において、25℃容量の65%の電気量の取り出しができ、良好な特性を有するリチウム二次電池が得られた。
【0048】
実施例2.
接着剤を構成する非導電性粉末の材質及び粒径、接着性樹脂の種類、分散剤の種類を種々変更し、その他配合割合、溶剤混錬等は実施例1と同様にして接着剤を作製した。
【0049】
上記実施例1の正極1、セパレータ膜2及び負極3を用い、上記作製した種々の接着剤を用いて、実施例1と同様に電池を作製し、作製した電池の評価を行った。
【0050】
電池の評価は、サイクル特性(500サイクル後の容量保持率)、−10℃相対容量(25℃の容量を100とした時の−10℃での相対容量)を行った。
【0051】
【表1】
【0052】
表1は、接着剤を構成する材料種の組み合わせと、その材料種の組合せにおける電池特性を示している。非導電性粉末として、粒径1μm〜16nmのアルミナ、シリカ、チタニアを用い、接着性樹脂としてP(VdF−HFP)、P(VdF−AN)を用い、分散剤として上記化学構造式(1)で示されるα−パーフルオロノネニルオキシ−ω−メチルポリエチレンオキサイド(表中の化1)、上記化学構造式(2)で示されるジ(α−パーフルオロノネニルオキシ)−ω−ポリエチレンオキシド(表中の化2)を用いた。
【0053】
表1に示されているように、形成された接着性樹脂層の厚さは、いずれも4μm以下であり、500サイクル後の相対容量率は80%以上、−10℃相対容量は45以上と良好な電池特性が得られることが分かった。なお、負極3とセパレータ膜2との接着強度はいずれも25gf/cm以上であった。
【0054】
実施例3.
上記実施例1における接着剤の作製において、接着性樹脂の構成をP(VdF−HFP)に代えてP(VdF−HFP)とポリアクリロニトリルとの重量比9:1の混合物とした。その他の構成、混合割合、混錬等は上記実施例1と同一とした。
【0055】
作製した接着剤を用い、実施例1と同様に電池を作製し、作製した電池の電池特性を測定した。
【0056】
本実施例における負極3とセパレータ膜2との接着強度は40gf/cmであり、実施例1の法の場合の25gf/cmよりも増大した。
【0057】
また、作製した電池のサイクル特性を評価したところ、500サイクル後の容量が初期容量の93%を保持し、−10℃の低温条件下において25℃容量の63%の電気量を取り出すことができ、良好な特性を有するリチウム二次電池が得られた。
【0058】
比較例1.
表2は、本比較例に用いた接着剤の構成材料と、その構成によって得られた接着剤を用いて作製した電池特性を示している。
【0059】
上記実施例2では、非導電性粉末の粒径を1μm〜16nmとしたが、本比較例では粒径1.8ミクロン(μm)のアルミナ、シリカ、チタニアを用いた。
【0060】
その他は実施例2と同様、接着性樹脂としてP(VdF−HFP)、P(VdF−AN)を用い、分散剤としてα−パーフルオロノネニルオキシ−ω−メチルポリエチレンオキサイド(表中の化1)、ジ(α−パーフルオロノネニルオキシ)−ω−ポリエチレンオキシド(表中の化2)を用いて、上記実施例1と同様に、接着剤を作製した。
【0061】
上記実施例1の正極1、セパレータ膜2及び負極3を用い、上記作製した種々の接着剤を用いて、実施例1と同様に電池を作製し、作製した電池の評価を行った。
【0062】
電池の評価は、サイクル特性(500サイクル後の容量保持率)、−10℃相対容量(25℃の容量を100とした時の−10℃での相対容量)を行った。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示されているように、非導電性粉末の粒径を1.8μmとした場合には、接着性樹脂層の厚さは4.6μm以上と4μmを越える値を示した。
【0065】
また、500サイクル後の容量保持率は62%以下、−10℃相対容量は45以下と、十分な電池特性が得られないことが分かった。
【0066】
比較例2.
上記実施例1では、溶剤であるN−メチルビロリドン中に分散剤としてα−パーフルオロノネニルオキシ−ω−メチルポリエチレンオキサイドを完全溶解させた後、非導電性粉末を混合し、混錬した後、接着性樹脂溶液を混合して混錬したが、本比較例では、接着樹脂溶液に分散剤を混合した後、非導電性粉末を混合した。具体的には以下の通りである。
【0067】
まず、P(VdF−HFP)(呉羽化学製 商品名:9300)の5wt%N−メチルピロリドン溶液20.5重量部に、分散剤としてα−パーフルオロノネニルオキシ−ω−メチルポリエチレンオキサイドを0.13重量部添加して撹拌した。
【0068】
その後、非導電製粉末として粒子径16nmのアルミナ粉体(日本アエロジル製 商品名:酸化アルミニウム)を1.25重量部投入して混錬し、その後、N−メチルピロリドン12.6重量部投入して再混錬することによって接着剤を作製した。
【0069】
作製された接着剤中にはアルミナの凝集粉分散し、その凝集粉の粒径は500μmであったため、多孔性の薄厚で均一な接着性樹脂層を形成することができなかった。
【0070】
比較例3.
上記実施例1〜3では分散剤を添加した接着剤を作製した。本比較例では分散剤を添加しない接着剤を実施例1と同様に作製した。具体的には下記の通りである。
【0071】
N−メチルピロリドン12.6重量部中に、非導電性粉末として粒子径16nmのアルミナ粉体(日本アエロジル製 商品名:酸化アルミニウム)1.25重量部を投入して混錬する。次に、接着性樹脂として、P(VdF−HFP)共重合体(呉羽化学製 商品名:9300)5wt%を含むN−メチルピロリドン溶液20.5重量部を添加して混錬して接着剤を作製した。
【0072】
上記のように分散剤を添加しないで作製した場合、接着剤がゲル化してしまうため均一な多孔性の接着性樹脂層を形成することができなかった。
【0073】
【発明の効果】
本発明に係るリチウム二次電池用接着剤によれば、溶剤中に、非導電性粉末と、該非導電性粉末を上記溶剤中に分散させるとともに、上記溶剤に溶解する分散剤と、接着性を有するとともに上記溶剤中に溶解する接着性樹脂とを含み、上記分散剤は、フッ素原子を分子構造中に有する下記化学構造式(1)または式(2)で表される化合物であるものであるので、電池特性を向上することができる。
【化8】
【化9】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るリチウム二次電池の一実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 正極、2 セパレータ膜、3 負極、4 接着性樹脂層、5 貫通孔。
Claims (15)
- 上記非導電性粉末は、電子絶縁性であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記非導電性粉末は、無機酸化物であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記非導電性粉末は、アルミナ、チタニアまたはシリカであることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記非導電性粉末は、粒子径が1μm以下であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記接着性樹脂は、フッ素原子を分子構造中に有することを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記接着性樹脂は、フッ化ビニリデン構造を分子構造中に有することを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記接着性樹脂は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記接着性樹脂は、フッ化ビニリデン構造を分子構造中に有する樹脂とシアノ基を分子構造中に有する樹脂の混合体であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記分散剤は、炭素原子間の二重構造を分子構造中に有することを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記分散剤は、エチレンオキシド構造を分子構造中に有することを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 上記溶剤は、N−メチル−2−ピロリドンまたはN,N´−ジメチルホルムアミドであることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用接着剤。
- 溶剤に非導電性粉末を分散させる分散剤を溶解した後、上記非導電性粉末を添加して混錬し、さらに、接着性樹脂を添加して混錬することによって請求項1ないし12のいずれかに記載のリチウム二次電池用接着剤を製造することを特徴とするリチウム二次電池用接着剤の製造方法。
- 正極と負極とが、セパレータ膜を介して対向配置されるとともに、該セパレータ膜表面に接着剤からなる接着性樹脂層が形成されたリチウム二次電池において、上記接着剤に、上記請求項1ないし12のいずれかに記載のリチウム二次電池用接着剤を用いたことを特徴とするリチウム二次電池。
- 上記接着性樹脂層の厚さが4μm以下であることを特徴とする請求項14記載のリチウム二次電池。
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