JP3919607B2 - ディーゼルエンジンの燃料供給装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮点火式エンジン(ディーゼルエンジン)での燃料供給装置に関し、特にエンジン始動時での噴射燃料増加量を調整する燃料供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ディーゼルエンジンの燃料噴射量を制御して一定以上の回転数を得るために、エンジンの回転数に比例するガバナ力とガバナスプリング力とをガバナレバーに作用させ、このガバナ力とガバナスプリング力との釣り合いでガバナレバーを作動させて、燃料噴射ポンプの調量具(コントロールラック)を調量制御するように構成している。
【0003】
そして、エンジン運転中はガバナ力とガバナスプリング力との釣り合いに応じて調量具を移動させて燃料噴射量を調整しているが、エンジンの停止操作時には、エンジン停止操作具で調量具を燃料無噴射位置まで強制的に移動させるようにしてある。また、エンジン始動操作時には、始動燃料増量装置で調量具を運転時での最大噴射量位置よりも燃料増量側に移動させることにより、運転時の最大燃料噴射量よりも大量の燃料を供給してエンジン始動を行うようにしている。
【0004】
しかし、従来の燃料供給装置では、エンジン再起動時等の暖機始動時にも始動燃料増量装置が作動していることから、冷機始動時なみに増量された始動用燃料がエンジンの燃焼室内に供給され、過剰濃混合気となって暖機始動時にはスモーク(黒煙)を発生させることがあった。そこで、サーモワックス等の感温作動素子を利用した制限具で、エンジン始動時での燃料増加量を機体温度に応じて制御するようにしたものも提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、感温作動素子を利用した制限具を装着した従来のものでは、制限具とこの制限具の出退量を規制する限界規定手段とを対向配置するようにしていることから、制限具と限界規定手段の相対位置関係が限定されてしまい、配置の自由度が低く、取付の制約が大きいという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決し、機体温度に応じて始動燃料の増加量を調整することのできるものでありながら、制限具及び限界規定手段との相対位置を自由に選ぶことができる燃料供給装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために請求項1に記載した本発明は、調量具の燃料増量側への移動を受け止める制限具を調量具に対応させて回動可能に配置し、この制限具を感温作動具の作動で調整作動するように構成するとともに、制限具を限界規定手段で受け止めることにより調量具の最少始動燃料増量位置を規定するように構成したことを特徴としている。
【0008】
また、請求項に記載した本発明は、調量具に対応させて配置した制限具を、手動式エンジン停止操作具の回動軸に相対回転可能な状態で装着したこと特徴としている。
【0009】
【発明の作用】
本発明では、感温作動具の作動に基づき回動することで、調量具の移動量を調整作動するように構成した制限具を、限界規定手段で受け止めるようにしていることから、制限具の移動量を円周上の任意の点で受け止めることができ、感温作動具と限界規定手段との相対位置を自由に設定することができることになる。
【0010】
また、調量具の燃料増量側への移動量を制限する制限具を手動式エンジン停止操作具の回転軸に相対回転可能な状態に装着した場合には、調量具に対する手動式エンジン停止操作具及び始動用燃料制限具をコンパクトに配置できることになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図は本発明の一実施形態を示し、図1はディーゼルエンジンの燃料供給系を示す断面図、図2は図1のII部の取り出し断面図である。
このディーゼルエンジンの燃料供給系は、ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプ(1)と、この燃料噴射ポンプ(1)からの燃料送出量(噴射量)を調整するガバナ装置(2)と、エンジン緊急停止時に燃料噴射ポンプ(1)からの燃料送出を停止させる手動停止操作具(3)とで構成されている。
【0012】
ガバナ装置(2)は、燃料噴射ポンプ(1)を作動させる燃料噴射カム軸(4)の一端部に組み込まれたガバナウエイト(5)と、燃料噴射カム軸(4)の回転に伴なってガバナウエイト(5)に作用する遠心力に起因したガバナ力(F)を燃料噴射ポンプ(1)のコントロールラック(調量具)(6)に伝達するガバナレバー(7)と、このガバナレバー(7)に前述のガバナ力(F)と対向するガバナスプリング力(S)を作用させるガバナスプリング(8)と、エンジン始動時に燃料噴射ポンプ(1)のコントロールラック(6)を運転作動時での最大燃料供給位置よりも燃料増量側(R)に位置する始動増量位置まで移動させる始動燃料増量装置(9)と、エンジン運転中に燃料噴射ポンプ(1)のコントロールラック(6)を燃料無噴射位置まで強制移動させるエンジン停止操作具(10)とで構成してある。このエンジン停止操作具(10)はソレノイドの出退子(11)にコントロールラック(6)の端部に当接する鞘管(12)を套嵌し、ソレノイドの出退子(11)を鞘管(12)にクッションスプリング(13)を介して当接させるように構成してある。
【0013】
ガバナレバー(7)は燃料噴射ポンプ(1)のコントロールラック(6)に連動連結されたフォークレバー(14)と、調速レバー(15)との間に前記ガバナスプリング(8)を架着しているスプリングレバー(16)との2本レバーで構成してある。そして、このフォークレバー(14)には前述のガバナ力(F)が燃料噴射ポンプ(1)のコントロールラック(6)を燃料減量側(L)に移動させる方向に作用している。また、燃料噴射ポンプ(1)のコントロールラック(6)には、前述のガバナスプリング(8)のガバナスプリング力(S)が、スプリングレバー(16)及びフォークレバー(14)を介してコントロールラック(6)を燃料増量側(R)に移動させる方向に作用している。
【0014】
手動停止操作具(3)は、緊急停止操作時等に燃料噴射ポンプ(1)のコントロールラック(6)を燃料無噴射位置まで強制的に移動させるもので、前記したエンジン停止操作具(10)のソレノイド出退子(11)に套嵌している鞘管(12)の鍔部(17)に当接する押込み作動片(18)と、エンジン機壁外に配置した停止操作レバー(19)とを、エンジン機壁を貫通する状態に配置した回動軸(20)の両端部に固定し、押込み作動片(18)が鞘管(12)の鍔部(17)から離隔する方向に回動軸(20)を弾性付勢したものである。
【0015】
さらに、エンジン始動操作時にエンジン機体温度に応じて燃料噴射ポンプ(1)のコントロールラック(6)の移動量を制限して始動時での燃料増加量を調整する感温作動具(21)の制限具(22)が、手動停止操作具(3)の回動軸(20)に相対回転自在な状態で装着してある。この制限具(22)は図3に示すように、回動軸(20)に装嵌した一対の円環部材(23)(24)を連結片(25)で一体に連結したものである。そして、一方の円環部材(23)は環状部分の一部を略扇形に切欠き、その切欠き部分での半径方向に位置する端縁部分をそれぞれ他方の円環部材(24)の方向に折り曲げ形成して、感温作動具(21)の出退作動部を受止める入力受片(26)と、後述する限界規定手段(27)に当接して受け止めるストッパ片(28)とに形成してある。また、他方の円環部材(24)では、周側壁部分の一部を連結片(25)の形成側とは逆方向側に一体に延出し、この延出板部分を出力片(29)に形成してある。図3中符号(30)は手動停止操作具(3)の回動軸(20)を回転付勢している捩じりコイルバネ(31)の一端部を挿通させるための溝孔であり、(32)は回動軸(20)の周面に突設され前述の捩じりコイルバネ(31)の一端を受け止める係止ピンである。
【0016】
一方の円環部材(23)に形成したストッパ片(28)に受け止められる限界規定手段(27)は図2に示すようにエンジンの機壁に装着固定したボルトで構成してあり、感温作動具(21)が作動して出退作動部が進出することで制限具(22)が回動し、コントロールラック(6)に当接している鞘管(12)の鍔部(17)を出力片(29)で押し込んだ際に、エンジン始動時での最少燃料増加量に対応する位置でストッパ片(28)に当接して、エンジン始動時での必要燃料量を確保するように構成してある。
【0017】
上述のように構成したディーゼルエンジンの燃料供給装置では、エンジンの始動操作時には、ガバナ力(F)が生じないことから、ガバナスプリング力(S)と始動燃料増量装置(9)のスタートスプリング力とで燃料噴射ポンプ(1)のコントロールラック(6)を始動燃料増量位置まで移動させる。エンジンの冷機始動時には、感温作動具(21)の出退作動部は退入姿勢にあり、制限具(22)の入力受片(26)に当接することがないから、制限具(22)は回動自在な状態となり制限具(22)の出力片(29)でコントロールラック(6)の始動燃料増量位置までの移動を制限することがない。この結果冷機始動時には、所定の増量された燃料が燃料噴射ポンプ(1)から圧送されることになる。
【0018】
一方、エンジンの機体温度が高いいわゆる暖機始動時は始動に必要な燃料量が少なくても済むため、暖機始動時には感温作動具(21)の出退作動部はその機体温度に応じて進出して、その位置で制限具(22)の入力受片(26)と当接することになるから、制限具(22)の回転可能量が制限され、制限具(22)の出力片(29)でコントロールラック(6)の移動量を制限する。これにより、暖機運転始動時には、始動時での燃料増加を抑制して、黒煙の発生を抑制することになる。この時の制限具(22)の回転量(増加燃料量)は、制限具(22)のストッパ片(28)を限界規定手段(27)で受け止めることで規制されることになる。
【0019】
なお、本発明で使用する感温作動具(21)の感温作動素子としては、サーモワックスやバイメタルのように温度に応じて段階的に変化するものであっても、形状記憶合金などのように所定温度を境に形態が変化するものであってもよい。
【0020】
【発明の効果】
請求項1に記載した本発明では、感温作動具の作動に基づき回動することで調量具の移動量を調整作動するように構成した制限具を、限界規定手段で受け止めるようにしていることから、制限具の移動量を円周上の任意の点で受け止めることができ、感温作動具と限界規定手段との相対位置を自由に設定することができる。
【0021】
また、発明では、調量具の燃料増量側への移動量を制限する制限具を手動式エンジン停止操作具の回転軸に相対回転可能な状態に装着していることから、調量具に対する手動式エンジン停止操作具及び始動用燃料制限具をコンパクトに配置できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディーゼルエンジンの燃料供給系を示す断面図である。
【図2】図1のII部の取り出し断面図である。
【図3】制限具の取り出し斜視図である。
【符号の説明】
1…燃料噴射ポンプ、3…手動式エンジン停止操作具、4…調量具、7…ガバナレバー、9…始動燃料増量装置、10…エンジン停止操作具、20…手動式エンジン停止操作具の回動軸、21…感温作動具、22…制限具、25…限界規定手段、F…ガバナ力、S…ガバナスプリング力、R…燃料増量側、L…燃料減量側。

Claims (1)

  1. ガバナレバー ( ) に作用するガバナ力 ( ) とガバナスプリング力 ( ) との釣り合いで調量移動するように構成されているディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプ ( ) の調量具 ( ) を、始動燃料増量装置 ( ) で燃料増量側 ( ) に付勢するとともに、エンジン停止操作具 (10) の操作で燃料減量側 ( ) に強制移動させるように構成したディーゼルエンジンの燃料供給装置において、
    エンジン始動時での調量具 ( ) の燃料増量側 ( ) への移動を受け止める制限具 (22) を調量具 ( ) に対応させて回動可能に配置し、この制限具 (22) を感温作動具 (21) の作動で調整作動するように構成するとともに、制限具 (22) を限界規定手段 (27) で受け止めることにより調量具 ( ) の最少始動燃料増量位置を規定するように構成し、
    調量具(4)に対応させて配置した制限具(22)を、手動式エンジン停止操作具(3)の回動軸(20)に相対回転可能な状態で装着した、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料供給装置。
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