JP3919498B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造装置 - Google Patents

静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電潜像を顕像化する方法やトナージェット方式記録方法に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法は米国特許第2,297,691号明細書等に記載されているように、多数の方法が知られており、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段で感光体上に静電潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力、或いは溶剤蒸気等により定着し複写物を得る。また、トナーを用いて現像する方法、或いはトナー像を定着する方法としては、従来各種の方法が提案され、それぞれの画像形成プロセスに適した方法が採用されている。
【0003】
従来、これらの目的に用いるトナーとして、一般に熱可塑性樹脂中に染料及び顔料等の着色剤を溶融混合し、均一に分散した後、微粉砕装置、分級機により所望の粒径を有するトナーを製造したものがある。この製造方法は、ある種の制限、即ちトナー用材料の選択範囲に制限がある。例えば、前記の熱可塑性樹脂中に着色剤が分散された、樹脂着色剤分散体が十分に脆く、経済的に可能な製造装置で微粉砕し得るものでなくてはならない。ところが、こういった要求を満たすために樹脂着色剤分散体を脆くすると、実際に高速で微粉砕した場合に形成された粒子の粒径範囲が広くなり易く、特に比較的大きな割合の微粒子がこれに含まれるという問題が生ずる。さらに、このように脆性の高い材料は、複写機等現像用に使用する際、さらなる微粉砕ないしは粉化を受け易い。また、この方法では、着色剤等の固体微粒子を樹脂中へ完全に均一に分散することは困難であり、その分散の度合によっては、カブリの増大、画像濃度の低下や混色性・透明性の不良の原因となるので、分散に注意を払わなければならない。また、破断面に着色剤が露出することにより、現像特性の変動を引き起こす場合もある。
【0004】
一方、これら粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、特公昭36−10231号、同43−10799号及び同51−14895号公報等による懸濁重合法によるトナーをはじめとして、各種重合法トナーやその製造方法が提案されている。例えば、懸濁重合法は、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤、荷電制御剤及びその他添加剤を均一に溶解又は分散させて単量体組成物とした後、この単量体組成物を、分散安定剤を含有する連続相、例えば水相中に、適当な撹拌機を用いて分散し、同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得る方法である。
【0005】
この方法は、粉砕工程が全く含まれないため、トナーに脆性が必要ではなく、軟質の材料を使用することができ、また、分級工程の省略をも可能にするため、エネルギーの節約、時間の短縮、工程収率の向上等、コスト削減効果が大きい。
【0006】
また、近年の複写機やプリンターの高画質化、フルカラー化、省エネルギー化等トナー自体の多機能化が要求されている。例えば、高画質化にともない高解像度・デジタル方式に対応するトナー粒子の微小粒径化、フルカラー化にともなうOHP画像の透明性の向上、省エネルギー化にともなう低温定着化に対応するため、低軟化点物質が含有され、転写材への転写効率の向上に有効である形状を有する等のトナーが要求されており、これらの要求を実現する手段として重合法によるトナーが挙げられる。
【0007】
一方、重合法は、重合法トナーも含めてその反応形態は重合が進むにつれて重合反応系の粘度が上がり、ラジカル及び重合性単量体の移動が困難になるため重合体中に重合性単量体成分が多く残留しがちである。特に懸濁重合法トナーの場合には、重合性単量体系中に染料、顔料(特にカーボンブラック)、荷電制御剤及び磁性体等の重合反応を抑制する可能性のある成分が重合性単量体以外に多量に存在するために、なおさら未反応の重合性単量体が残存しやすい。
【0008】
そして、これらトナー粒子中に重合性単量体に限らず結着樹脂に対して溶媒として働く成分が多く存在すると、トナーの流動性を低下させ画質を悪くするほか、対ブロッキング性の低下を招く。トナーとして直接関わりあう性能のほかにも、特に感光体として有機半導体を使用した場合には感光体ドラムへのトナーの融着現象以外にも、メモリーゴーストや画像のボケといった感光体の劣化現象に伴う問題点を生じる事がある。こうした製品の性能に係わる事項以外にも、定着時に重合性単量体成分が揮発して悪臭を発したりするという問題点がある。
【0009】
以上のようなことを改良するために、特開平7−92736号公報に開示されるように、トナー粒子中に存在する重合性単量体の残存量を500ppm以下に減少させることによって画質により一層の向上効果を生み出すことが提案されている。
【0010】
さらに、複写機、プリンター等の小型化、パーソナル化に伴い、装置上の制約が増し、前述の問題点に対する負荷が増し、また、環境に対する関心も高まっており、定着等で発生するトナー粒子由来のVOC(volatile organic compounds(揮発性有機化合物))を減少させることが要求されている為、トナー粒子中に存在する重合性単量体の残存量を100ppm以下に減少させることが好ましい。
【0011】
トナー粒子中の重合性単量体の残存量を微少となるように減少させる方法としては、結着樹脂を重合法で製造する際に用いられる公知の重合性単量体消費促進手段を使用することができる。例えば、重合性単量体消費促進手段である未反応の重合性単量体を除去する方法としては、トナー結着樹脂は溶解しないが重合性単量体及び/あるいは有機溶媒成分は溶解する高揮発性の有機溶媒で洗浄する方法;酸やアルカリで洗浄する方法;発泡剤や重合体を溶解しない溶媒成分を重合体系に入れ、得られるトナーを多孔化することにより内部の重合性単量体及び/あるいは有機溶媒成分の揮散面積をふやす方法;及び乾燥条件下で主合成単量体及び/あるいは有機溶媒成分を揮散させる方法等があげられる。これらの中でも、トナーカプセル性低下によるトナー構成成分の溶出、その溶媒の残留性等溶媒の選択が難しいので、乾燥条件下で重合性単量体及び/あるいは有機溶媒成分を揮散させる方法が最も好ましい。
従来、重合反応が終了した懸濁液を固液分離した後のトナー粒子は、一般に、真空乾燥機などを用いて揮発成分は除去されている。
【0012】
また、特開平08−160662号公報には、トナー粒子を減圧乾燥する方法が提案されているが、この乾燥方法は、被乾燥物を低温で乾燥できるメリットはあるが、トナー粒子の品温を所定の温度まで上昇させるのに多くの時間を要してしまう為、長い乾燥時間が必要となる。
【0013】
長い熱履歴を経過したトナーは、トナー粒子同士の凝集・内包する低軟化点物質の表面への染み出し等、多くの性能劣化を誘発するという問題点があった。
【0014】
減圧乾燥において、材料の温度は、乾燥速度を大きく左右するところである為、品温の上昇速度が乾燥速度・時間を決定する大きな因子となる。従って、品温の上昇速度を速めることが短時間での揮発成分の除去、更には、熱劣化の少ないトナーを生み出すことが可能となる。
【0015】
一方、減圧方式の乾燥機は、殆どの場合が伝熱面を有した間接加熱方式であり、この場合、小スケールの装置と大スケールの装置を比較すると、減圧乾燥機内に仕込まれた被乾燥試料に対する伝熱面積の割合は大スケールになるに従い小さくなるというデメリットがあり、品温の上昇速度がスケールによって大きく変わってきてしまう。小スケールで要した乾燥時間は、大スケールでは更に長い時間を要してしまうことになる。その結果、スケールUPを試みると、長い熱履歴によって生じていた上述の問題が更に顕著なものとなる。
【0016】
減圧方式の乾燥において、スケール差によって生じる乾燥時間の延長を低減させることは、多くの技術者の課題とされてきた問題であり、水系媒体中で合成されたトナーの乾燥にこれを用いる場合も同様であった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の問題を解決した静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造装置を提供することにある。
【0018】
詳しくは、本発明の目的は、水系媒体中で合成された重合体粒子中に存在する揮発成分を均一にしかも短時間で除去する静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造装置を提供することにある。
【0019】
また、本発明の目的は、残留する揮発成分が原因となる画像欠陥の無い高画質の画像が得られる静電荷像現像用トナー、長時間熱履歴を受け熱劣化したトナーが誘発する画像欠陥の無い高画質の画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供するための静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造装置を提供することにある。
【0020】
加えて本発明の目的は、該揮発成分を除去する為にかかるエネルギー及びコストを低減する静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーの製造装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は以下の通りである。
(1)水系媒体中で合成された重合体粒子を洗浄し、脱水して得られた湿潤トナー粒子を、減圧下及び遠赤外線照射下で加熱してトナーを得る工程を有する静電荷像現像用トナーの製造方法。
(2)水系媒体中で合成された重合体粒子を洗浄し、脱水して得られた湿潤トナー粒子を、乾燥してトナーを製造する装置であって、
前記湿潤トナーを収容する容器と、前記容器を減圧する減圧手段と、前記湿潤トナー粒子に遠赤外線を照射する遠赤外線照射手段と、前記湿潤トナー粒子を加熱する加熱手段とを有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造装置。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、鋭意検討の結果、水系媒体中で合成された重合体粒子を、洗浄し、脱水して得られた湿潤トナー粒子を、減圧下で遠赤外線を照射しながら加熱することで効率良くトナー中に残存する揮発成分を除去できることを見出した。
【0023】
遠赤外線は、物質の熱運動を励起させ、温度を上昇させる効果が強く、これを利用することで、乾燥速度を決定づける大きな因子となる被乾燥物の品温を所定の温度まで効率的に高め、従来より速い揮発成分の除去を達成したものである。
【0024】
また遠赤外線は、雰囲気が低温でも熱を伝えることができる輻射による直接加熱となる為、従来の減圧加熱装置の加熱方式である間接加熱と併せて効果を及ぼし、効率良く品温を上昇することが可能である。
本発明において、品温を上昇させる手段は、遠赤外線による直接加熱と伝熱面を介して熱を伝える間接加熱の2つを併せ持つが、前者を「遠赤外線照射」という表現に含め、後者は、単に「加熱」という表現で区別している。
【0025】
従来どおりに減圧乾燥機を用いて揮発成分の除去を行う場合、近年の複写機、プリンター等の小型化、パーソナル化に伴う装置上の制約の増加に対応すべく、熱劣化の少ないトナーを提供するには乾燥時間が長すぎる。
【0026】
また、減圧式の乾燥機は、乾燥機内に仕込まれた被乾燥試料に対する伝熱面積の割合が大スケールになるに従い小さくなる為、伝面から供給される熱量に時間が大きく左右される水分の除去・材料の昇温時が、特に差異が生じ乾燥時間が延長してしまうという問題を生じていた。
【0027】
また、大スケールではこの乾燥時間の延長により長い熱履歴を要してしまう為、結果としてトナーにダメージを与え、画像特性を低下させてしまうという問題があった。
【0028】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0029】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法に用いる湿潤トナー粒子は、水系媒体中で合成された重合体粒子を洗浄し、脱水して得られたものである。重合体粒子については、後述する。
【0030】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法において、洗浄、脱水後に得られた湿潤トナー粒子の含水率が3.0%であることが好ましい。
【0031】
次いで、本発明により用いられる「含水率」とは、質量基準含水率、すなわち、全質量(乾燥トナー質量と水分質量との和)に対する水分質量の比率をいい、105℃における加熱減量法によって求めたものである。
【0032】
また、本発明は、先に述べた複写機、プリンター等の小型化、パーソナル化に伴う装置上の制約に対応するため及びVOC低減のため、主にトナーの内部に存在すると言われている微量の重合性単量体組成物も最終的には除去する。しかし、湿潤トナー粒子が水分を多く含む場合、水分は粒子表面に存在する為、水分を除去した後でないと重合性単量体組成物を減少させることはできない。また、含水率を多く含んだ材料を減圧乾燥する場合、加熱面から蒸発に必要な熱が与えられるが、被乾燥物の品温を上昇させるのと同じく、スケールUPに従い、被乾燥物に対する供給熱量の割合が減少するので、水分除去に要する時間に差が生じてしまう。従って揮発分除去効率を更に向上させる為には、予め遠赤外線を照射する前の湿潤トナー粒子の水分量を制限することが好ましい。
【0033】
湿潤トナー粒子の水分量は、具体的には、湿潤トナー粒子の含水率が、好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下であることが望ましい。含水率を予め調整する方法としては、例えば、高速の熱気流中に分散させると同時に並流に送りながら予備的に加熱処理を行う方式が挙げられる。湿潤トナー粒子を高速熱気流中に連続的に供給することが可能である加熱処理方式の装置を用いることで、予め上記含水率の湿潤トナー粒子とすることが可能である。
【0034】
水系媒体中で合成された重合体粒子を洗浄、脱水する手段として、濾過が挙げられる。濾過を用いた場合、ときに空気を送って濾材に捕集された材料を洗浄・脱水するが、ある程度脱水された後に、更に空気を流す時間を長くとることにより、前述の含水率を有する湿潤トナー粒子を得ることも可能である。
【0035】
本発明において、トナーの品温が、60℃以下であるように遠赤外線を照射することが好ましい。トナーの温度が60℃を超えてしまうと、該トナーを画像形成装置に用いた場合、トナー同士の凝集・融着が発生し製品上問題が生じるだけでなく、画像形成装置内への融着が発生し、清掃等に多大な労力がかかってしまう傾向がある。
【0036】
本発明に用いられる遠赤外線は、放射率のピークが波長4〜20μmの範囲内にある遠赤外線放射体から得られるものであることが好ましく、好ましく用いられる遠赤外線放射体の材料としては、▲1▼無機物質からなるセラミック材料、▲2▼有機金属化合物、▲3▼有機ケイ素化合物等の遠赤外線放射材料を用いたものが挙げられる。
▲1▼セラミック材料に用いられる原料物質の無機物質としては、Al23、SiO2、ZrO2、Y23、La23、CeO2、Fe23、MgO、BaO、SnO2、Sb23、TiO2、CuO等がある。
▲2▼有機金属化合物または▲3▼有機ケイ素化合物を、遠赤外線放射体の材料として用いる場合、具体的に以下の化合物が例示される。
【0037】
アルキル金属エステル、アルキル金属キレート、アルキル金属アシル化物、キレート化金属エステル、金属アルコキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、および有機アルコキシドシラン。
【0038】
遠赤外線の照射方法としては特に制限は無いが、例えば、湿潤トナー粒子を収容する容器内の湿潤トナー粒子から離れた位置に、また、湿潤トナー粒子を収容する容器内に攪拌部材がある場合は、それが干渉しない位置に、別途、遠赤外線放射体を設けることが可能である。
また、上記に示した遠赤外線放射材料を粒子状として、湿潤トナー粒子を収容する容器内部の加熱面に焼き付ける所謂コーティング或いはライニングしても良い。ここで、遠赤外線放射材料からなる粒子の重量平均粒径は、0.2〜200μm程度が好ましい。
更には、湿潤トナー粒子を収容する容器内部の加熱面にガラス層を焼き付け、所謂グラスライニングを施し、その上に、上述した粒子状の遠赤外線放射材料(遠赤外線放射材粒子)を焼き付けることが好ましい。ガラス層は、遠赤外線を殆ど吸収しない為、極めて効率的に遠赤外線を照射することが可能となる。これまでに挙げた手法により、遠赤外線を効率良く湿潤トナー粒子に放射し、すばやくトナーの温度を上昇することが可能となる。しいては、著しく乾燥速度を向上することが可能となり、スケールUPに伴う乾燥時間の延長も低減することが出来る。
【0039】
また、遠赤外線放射率のピークが波長4〜20μmの範囲内である遠赤外線放射体を用いることがトナー及びトナーを構成する物質の吸収効率という観点から好ましい。また、そのピークは、黒体の放射率に対し少なくとも0.8以上の放射率であることが好ましい。
本発明における遠赤外線放射体の製造方法は、金属等からなる湿潤トナー粒子を収容する容器内部表面にガラス層を焼き付け、その上に遠赤外線放射材粒子をガラス層の焼き付け温度よりも50〜150℃高い温度で焼き付けて、該粒子をガラス層表面に分布させる方法が挙げられる。
【0040】
容器内部表面にガラス層を焼き付けるグラスライニング方法としては、通常採用される方法で良く、必要に応じてサンドブラスト等の表面処理を施した容器表面に、ガラスを適当な厚さに塗布して焼き付ければ良い。ガラスの塗布方法には、フリツト(ガラス粉末)を振りかける乾式法とスリツプ(泥漿状ガラス組成物)をスプレーガンで均一に吹き付ける湿式法とがあり、本発明ではこのいずれも採用し得る。ガラスを塗布した容器は乾燥し、通常800〜900℃程度の(焼き付け)温度で焼成し、ガラスを溶融させて融着させる。
【0041】
本発明においては、遠赤外線放射体として、このようにして形成したガラス層の表面に、適当な粒度に調整した遠赤外線放射材粒子を水に分散させて吹き付ける等の方法により適当量散布した後焼き付けて、ガラス層表面に該粒子をなるべく密集するように分布させたものであることがより好ましい。その際、該遠赤外線放射材粒子の焼き付けを、ガラス層の(焼き付け)焼成温度よりも50〜150℃高い温度で行うことが好ましい。遠赤外線放射材粒子の焼き付け温度がガラス層の焼成温度+50℃よりも低い場合には、遠赤外線放射材粒子を確実に焼き付けることができない場合がある。逆に遠赤外線放射材粒子の焼き付け温度がガラス層の焼成温度+150℃よりも高い場合には、遠赤外線放射材粒子がガラス層内部に埋没してしまい、ガラス層表面上、あるいは表面直下に分散しなくなる場合がある。好ましい遠赤外線放射材粒子の焼き付け温度はガラス層の焼成温度よりも60〜120℃高い温度である。
【0042】
このようにして得られる遠赤外線放射体は、広い範囲の波長の遠赤外線を極めて効率的に放射することができる。
【0043】
本発明においては、遠赤外線を照射しながら加熱する際、容器の気相部に揮発分が滞留するのを防ぎ、乾燥効率を向上させる為に、キャリアガスとして、注入媒体を投入することが好ましい。
【0044】
注入媒体は、減圧下で断熱膨張を起こす為、温度が低下してしまい、滞留を抑止するという点で乾燥効率を向上させるが、熱を奪ってしまうというデメリットも持ち合わせている。従って、注入媒体は、所定の温度に加熱することが好ましい。
【0045】
注入媒体は、加熱する場合を考慮して、窒素・アルゴン・空気等の不燃性のガスであることが好ましい。
【0046】
乾燥効率を更に向上させる為に、注入媒体は、飽和水蒸気又は過熱水蒸気であることがより好ましい。飽和水蒸気又は過熱水蒸気は、上述した、不燃性のガスと違い熱量を多く保持しおり、多くの熱エネルギーを供給できる。また、不燃性ガスに比べ、非乾燥物から揮発成分が拡散する時の抵抗が無い為、効率良く揮発成分を除去できる。
【0047】
加えて、飽和水蒸気又は過熱水蒸気は、100%水分である為、凝縮器で大部分を水として、捕集することができる。その為、排気するのは、凝縮できなかった分だけでよく、不燃性ガスと比較して、排気設備の負荷を著しく低減できる点でもメリットがある。
【0048】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法で用いられる静電荷像現像用トナーの製造装置は、減圧及び遠赤外線照射及び加熱が可能であり、上述の注入媒体を投入できる装置であれば、特に制限無く用いることが可能である。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造装置は、水系媒体中で合成された重合体粒子を洗浄し、脱水して得られた湿潤トナー粒子を、乾燥してトナーを製造する装置であって、前記湿潤トナー粒子を収容する容器と、前記容器を減圧する減圧手段と、前記湿潤トナー粒子に遠赤外線を照射する加熱照射手段と、湿潤トナーを加熱する加熱手段とを有する。具体的には、図1に示すような態様の静電荷像現像用トナーの製造装置が例示できる。
【0049】
図1に示すように、湿潤トナー粒子を収容する容器として逆円錐形状の容器1内に湿潤トナー粒子が供給されて、減圧、遠赤外線照射、加熱処理が行われる。容器内には容器中心縦軸方向に駆動モーター2により駆動可能な攪拌中心軸3が伸び、その周囲に一重螺旋構造をしたリボン翼4が具備されている。
【0050】
このリボン翼4が回転することによってトナーを下方から上方に持ち上げながら攪拌と分散を繰り返し付与できるので、容器内の原料を全体にわたって効率よく攪拌混合させることができる。
【0051】
また、容器内部の加熱面(伝熱面)には、グラスライニングが施され、その上から前述した、遠赤外線放射材料からなる粒子を焼き付けてあり、これが遠赤外線照射手段としての遠赤外線放射体となる。具体的には、図2の(a)、(b)に示すような形状であり、容器内部表面17、ガラス層20、ガラス層表面に焼き付けた遠赤外線放射材粒子21を有するものである。本発明では、トナーの付着という観点から、平面が平滑である図2(b)に示される形状が好ましく用いられるが、その限りではない。ジャケット内に熱源を供給し内面が加熱された場合は、焼き付けられた層は、遠赤外線放射体となる。更には、従来の伝熱効果もあるので、輻射による直接加熱及び伝熱面からの間接加熱を併用する形となり、非常に効率が良い。
【0052】
また、遠赤外線放射手段としては、この限りでは無く、容器内のトナー面の上部(但し、攪拌翼に干渉しない位置)に遠赤外線放射体を付設しても良く、上述の遠赤外線放射材粒子焼き付け層からの放射と併用する形でも良い。
【0053】
また、図1に示したように、容器の上部には、湿潤トナー粒子を供給する為の原料供給口7と、容器内を減圧にする為の排気経路にバッグフィルター8、次いでコンデンサー9が接続されている。
【0054】
図1に示したように、上記した容器の周囲には、容器内の温度を適宜に制御し、所望の温度で加熱処理することを可能とするためのジャケット10が付設されている。このため、該容器の外壁とジャケット10の内壁との間には隙間が形成されている。この隙間に過熱蒸気や冷却水を通すことができるように、ジャケットには、温水タンク11で作製された温水または蒸気または冷却水が供給できるようになっており、同時に温水・蒸気・冷却水の排出経路も設けられている。
【0055】
また、容器内の減圧は、減圧手段としての減圧ポンプ12により排気口からバッグフィルター8、コンデンサー9を介して容器内のトナーからの揮発成分が混入した注入媒体を排気することによって行われる。
図1に示したように、バッグフィルター8内は、仕切板13によって上下2つの室に区画されている。そして、仕切板の下方側には筒状の濾布14が吊り下げられており、仕切板の上方側にはコンデンサー9に接続されている排気経路と、濾布14の中心上方位置に逆洗用ノズル15が配置されている。逆洗用ノズル15は、窒素や空気または飽和水蒸気又は過熱水蒸気を間欠的に噴射して、濾布14を逆圧洗浄するためのものである。
【0056】
また、容器内へ注入媒体を供給する場合、水蒸気の供給源は、特に制限は無いが、一般的には、ボイラ発生装置から供給される場合が多く、窒素・空気等は、それぞれ発生装置から供給される。注入媒体流量計5を通過し、注入媒体加熱器16で加熱された後、膨張タンク18で操作減圧度近くまで減圧され、装置下部から、注入媒体を均一に分散させる分散盤19を介して装置内へ均一に供給される。尚、注入媒体の温度は膨張タンク18通過後の経路中に、注入媒体温度計6により測定される。
【0057】
また、注入媒体を減圧状態へ変化させる方法は、上述の方法に制限されるものではなく、例えば膨張タンク18を設置するかわりに配管径を大きくすることで対応してもよい。
【0058】
下方から均一に注入媒体を噴き出す注入媒体投入手段を設けることにより、トナーが装置下部でブロッキングを起こすことを防ぐことができる。注入媒体投入手段により容器内に供給された注入媒体は、トナーからの揮発成分と混合された蒸気となってバグフィルター8を通り、次のコンデンサー9で、凝縮・回収され、凝縮できなかった蒸気は減圧ポンプ12を通り系外へ排出される。注入媒体に空気・窒素を用いた場合は、非凝縮性気体なので、投入した分だけ排気する必要があるが、飽和水蒸気又は過熱水蒸気の場合は、凝縮器により水として回収可能である為、回収できなかった分だけ排気すれば良い。その結果、前述のとおり減圧ポンプの容量は小さくて済む。
【0059】
本発明に好ましく用いられる静電荷像現像用トナーの製造装置としては、図1で用いた態様の装置の他に、ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)、リボコーンミキサー(大川原製作所社製)、PVミキサー(神鋼パンテック社製)、真空攪拌乾燥装置イノックスシステム(パウレック社製)、SVミキサー(神鋼パンテック社製)などに、上述したような遠赤外線照射手段を施すことで代用することも可能である。
【0060】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法に用いられる水系媒体中で合成される重合体粒子は、懸濁重合法や、必要な添加剤の乳化液を加えた液中にて単量体を乳化重合し、微粒の樹脂粒子或いはこれに着色剤を含んだ着色剤粒子を製造し、その後に、有機溶媒、凝集剤等を添加して会合する方法で製造することができる。尚、ここで「会合」とは樹脂粒子及び着色剤粒子が複数個融着することを示す。
なお、本発明において「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。
【0061】
懸濁重合法による重合体粒子の製造方法としては特に限定されるものでは無いが、下記の様な製造方法を上げることができる。すなわち、結着樹脂成分としての重合性単量体中に着色剤や必要に応じて離型剤、荷電制御剤、さらに重合開始剤等の各種構成材料を添加し、ホモジナイザー、サンドミル、サンドグラインダー、超音波分散機などで重合性単量体に各種構成材料を溶解あるいは分散させる。この各種構成材料が溶解あるいは分散された重合性単量体を、分散安定剤が含有された水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとして所望の大きさの油滴に分散させる。その後、撹拌機構を有する反応装置へ移し、加熱することで重合反応を進行させて重合体粒子を得る。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過するなどして洗浄、脱水することにより湿潤トナー粒子を得る。
【0062】
また、本発明における重合体粒子を製造する方法として、樹脂粒子を水系媒体中で融着させて調整する方法もあげることができる。この方法としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法をあげることができる。すなわち、樹脂及び着色剤等より構成される樹脂粒子を複数以上会合させる方法、特に水系媒体中で樹脂粒子を、乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させる方法等により、重合体粒子を得る。その重合体粒子をろ過・洗浄後に加熱乾燥或いは、含水状態のまま流動状態で加熱乾燥する事により、本発明における湿潤トナー粒子を形成することができる。尚、ここにおいて凝集剤と同時に水に対して無限溶解する有機溶媒を加えてもよい。
【0063】
本発明においては、一旦得られた重合体粒子に更に単量体を吸着させた後、重合開始剤を用い重合させる、所謂シード重合方法によって得られた湿潤トナー粒子も、本発明に好適に利用することができる。
【0064】
上記重合体粒子に使用できる重合性単量体としては、スチレン、o(m−,p−)−メチルスチレン、m(p−)−エチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のビニル系単量体が好ましく用いられる。また、必要に応じて2種以上組み合わせて好ましく使われる場合もある。
【0065】
本発明において、外殻樹脂中に、低軟化点物質を内包化させるため外殻樹脂の他に更に極性樹脂を添加することが特に好ましい。本発明に用いられる極性樹脂としては、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体、マレイン酸共重合体、飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。前記極性樹脂は、外殻樹脂又は重合性単量体と反応しうる不飽和基を分子中に含まないものが特に好ましい。不飽和基を有する極性樹脂を含む場合においては、外殻樹脂層を形成する重合性単量体と架橋反応が起き、本発明の製造方法により得られたトナーをフルカラー用トナーとして用いる場合、極めて高分子量になり四色トナーの混色には不利となり好ましくない。
【0066】
本発明に用いられる低軟化点物質としては、ASTM D3418−8に準拠し測定された主体極大ピーク値が、40〜90℃を示す化合物が好ましい。極大ピークが40℃未満であると低軟化点物質の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性が弱くなり、得られるトナーをフルカラートナーとする場合には好ましくない。一方極大ピークが、90℃を超えると定着温度が高くなり、定着画像表面を適度に平滑化させることが困難となり混合性の点から好ましくない。更に直接重合法によりトナーを得る場合においては、水系で造粒、重合を行うため極大ピーク値の温度が高いと、主に造粒中に低軟化点物質が析出してきて懸濁系を阻害するため好ましくない。具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、エステルワックス及びこれらの誘導体又はこれらのグラフト/ブロック化合物等の離型剤が利用できる。
【0067】
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック、磁性体、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
【0068】
ここで、本発明者らは、磁性体がより効率的に遠赤外線領域の電磁波を吸収することを見出している。従って、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法において、磁性体を含有した重合体粒子を被乾燥物として用いてトナーを製造する場合には、遠赤外線を照射することで、より一層品温を上昇させることが可能であり、乾燥効率を更に高めることができる。
【0069】
本発明のトナーの製造方法において用いられる磁性体は、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。また、磁性体は四三酸化鉄、γ−酸化鉄等、酸化鉄を主成分とするものであり、これらを1種または2種以上併用して用いられる。これら磁性体は、窒素吸着法によるBET比表面積が好ましくは2〜30m2/g、特に3〜28m2/g、更にモース硬度が5〜7のものが好ましい。
比表面積は、BET法に従って、比表面測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
【0070】
磁性体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、燐片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。こういった磁性体の形状はSEMなどによって確認することができる。磁性体の体積平均粒径としては0.05〜0.4μmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3μmである。体積平均粒径が0.05μm未満の場合、黒色度の低下が顕著となり、白黒用トナーの着色剤としては着色力が不十分となるうえに、磁性体どうしの凝集が強くなるため、分散性が悪化する傾向がある。また、磁性体表面の均一性処理が非常に困難なものとなる。一方、体積平均粒径が0.4μmを越えてしまうと、一般の着色剤と同様に着色力が不足するようになる。加えて、特に小粒径トナー用の着色剤として使用する場合、個々のトナーに均一に磁性体を分散させることが確率的に困難となり、分散性が悪化しやすい。
【0071】
本発明に用いられる磁性体は、個数平均変動係数が35以下である事が好ましい。個数平均変動係数が35より大きいと言う事は磁性体の粒度分布が広い事を意味する。このような磁性体を使用すると、磁性体表面の処理の均一性が劣るとともに、トナー中での分散性が悪化する傾向がある。
【0072】
なお、磁性体の個数平均変動係数は次式(1)により求めるものと定義する。
【0073】
【数1】
Figure 0003919498
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0074】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0075】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0076】
これらの着色剤は、単独又は混合して、更には固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。着色剤の添加量は、結着樹脂成分100質量部に対し1〜20質量部添加して用いられる。
【0077】
黒色着色剤として磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なり、結着樹脂成分100質量部に対し40〜150質量部添加して用いられる。
【0078】
本発明に用いられる荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。更に本発明において直接重合方法を用いる場合には、重合阻害性が無く水系への可溶化物の無い荷電制御剤が特に好ましい。具体的には、ネガ系としてサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の金属化合物、スルホン酸、カルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリークスアレーン等が利用でき、ポジ系として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が好ましく用いられる。荷電制御剤は結着樹脂成分100質量部に対し0.5〜10質量部が好ましい。
【0079】
しかしながら、本発明において荷電制御剤の添加は必須ではなく、二成分現像方法を用いた場合においては、キャリアとの摩擦帯電を利用し、非磁性一成分ブレードコーティング現像方法を用いた場合においては、ブレード部材やスリーブ部材との摩擦帯電を積極的に利用することで、トナー中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
【0080】
本発明に係る重合体粒子を製造するために使用できる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤が用いられる。重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが一般的には重合性単量体に対し0.5〜20質量%添加され用いられる。重合開始剤の種類は、重合方法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合し利用される。
【0081】
重合度を制御するため公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
【0082】
本発明に係る重合体粒子において、特に分散剤を用いた懸濁重合を利用して製造する場合に用いる分散剤としては、無機化合物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機化合物として、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等を水相に分散させて使用できる。これら安定化剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2〜20質量部を使用することが好ましい。
【0083】
これら安定化剤の中で、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい粒子を得るために、分散媒中にて該無機化合物を生成させても良い。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合すると良い。
【0084】
また、これら安定化剤の微細な分散の為に、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を使用してもよい。これは上記分散安定化剤の所期の作用を促進する為のものであり、その具体例としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。
【0085】
本発明におけるトナーは、具体的に以下の通りに製造できる。
【0086】
即ち、重合性単量体中に低軟化点物質からなる離型剤、着色剤、荷電制御剤、重合開始剤その他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機等によって均一に溶解又は分散させた単量体系を、分散安定剤を含有する水相中に通常の撹拌機またはクレアミックス、ホモミキサー、ホモジナイザー等により分散させる。好ましくは単量体液滴が所望のトナーのサイズを有するように撹拌速度、時間を調整し、造粒する。その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合を行うのが良い。また、重合反応後半に昇温しても良く、更に、トナー定着時の臭いの原因等となる未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。反応終了後、生成した重合体粒子を、濾過することにより、洗浄・脱水して湿潤トナー粒子として回収し、本発明のトナーの製造方法における遠赤外線照射、加熱による乾燥方法によって乾燥してトナーを得る。懸濁重合法においては、通常単量体系100質量部に対して水300〜3000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。
【0087】
本発明では、このようにして得られるトナーは、ガラス転移点温度(Tg)が40〜75℃になるように調整される。Tgが40℃未満の場合には、トナーの保存安定性やトナーの耐久安定性の面から問題が生じ、一方Tgが75℃を超える場合は定着点の上昇をもたらし、特にフルカラートナーの場合においては各色トナーの混色が不十分となり色再現性に乏しく、更にOHP画像の透明性を著しく低下させる傾向があるため、高画質の面から好ましくない。
【0088】
次に、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法によって得られるトナーは、高画質化の要請から、より微少な潜像ドットを忠実に再現するために、微少粒径が好ましく、具体的にはコールターカウンターにより測定された重量平均粒径が4〜10μmで個数変動係数が35%未満のトナーが最も好ましい。4μm未満のトナーにおいては、転写効率の悪さから感光体や中間転写体上に転写残トナーが多く発生しやすく、カブリ、転写不良に基づく画像の不均一ムラの原因となり好ましくない。また、トナーの重量平均粒径が10μmを超える場合には、部材への融着が起きやすく、トナーの個数変動係数が35%を超えると更にその傾向が強まり問題となる。
なお、トナーの個数変動係数は次式(2)により求めるものと定義する。
【0089】
【数2】
個数変動係数=個数分布の標準偏差/個数平均粒径×100 (2)
【0090】
本発明におけるトナーは、少なくとも結着樹脂成分と着色剤を含有するものであるが、必要に応じて定着性改良剤である離型剤や荷電制御剤等を含有することもできる。さらに、上記結着樹脂成分と着色剤を主成分とするトナーに対して無機微粒子や有機微粒子等で構成される外添剤を添加したものであってもよい。
【0091】
また、本発明における製造方法は、トナーに限らず、トナー用結着樹脂にも応用することが可能である。各種重合法によって得られた湿潤状態のトナー用結着樹脂は、重合法によって得られた湿潤トナー粒子と同様に、水分・残留重合性単量体及びその他揮発成分を除去する工程が必要であるが、この揮発分除去工程として、上述した減圧・遠赤外線照射・加熱処理を用いることができる。
【0092】
本発明に用いられるトナー用結着樹脂の一例として、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂或いはビニル系モノマー及びポリエステル系モノマーの共重合体等が挙げられるが、特に制限されるものでは無い。
【0093】
以下に、本発明で使用する各物性値の測定方法について述べる。
(1)含水率の測定方法
本発明における湿潤トナー粒子の水分率は、MA40電子水分計(ザルトリウス社製)で105℃における加熱減量法によって求める。
(2)トナー粒子中に残存する重合性単量体及びその他有機揮発性物質の残存量の測定
トナー中に残存する重合性単量体及びその他有機揮発性物質の残存量の定量は、トナー0.3gをアセトン10gに溶解したものを用い、30分間超音波振とう機にかけた後、1日放置し、次に0.5μmのフィルターで濾過したものを用い、それぞれガスクロマトグラフィーにて以下の条件で絶対検量線法により測定する。
ガスクロマトグラフィー条件
測定装置:HEWLETT PACKARD HP 6890 series
キャピラリカラム:(25m×0.2mm、HP-INNOWAX、膜厚:0.4μm)
検出器:FID He流量25ml/min
インジェクション温度:200℃
ディテクター温度:250℃
カラム温度:50℃から10℃/minの割合で15分間昇温
打ち込み試料量:2μl
(3)トナー粒度分布の測定方法
ここで、粒度分布については、種々の方法によって測定できるが、本発明においてはコールターカウンターを用いて行う。
【0094】
測定装置としては、コールターカウンターTA−II型或いはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を、0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから、本発明に係るところの体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。
【0095】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0096】
参考例1】
イオン交換水710質量部に0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて3,500回転/分にて撹拌した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液68質量部を
添加し、Ca3(PO42を含む水系媒体を得た。
【0097】
一方、分散質系は、以下の通りである。
・スチレン単量体 175質量部
・n−ブチルアクリレート 25質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 10質量部
・飽和ポリエステル 20質量部
・サリチル酸金属化合物 3質量部
・パラフィンワックス 30質量部
上記処方のうち、C.I.ピグメントブルー15:3、サリチル酸金属化合物とスチレン単量体100質量部をアトライター(三井三池化工機製)を用い3時間分散し、着色剤分散液を得た。次に、着色剤分散液に上記処方の残りすべてを添加し、60℃に加温し30分間溶解混合した。これに、重合開始剤である2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0098】
上記重合性単量体組成物を前記水系分散媒中に投入し、回転数を維持しつつ12分間造粒した。その後、高速攪拌機からプロペラ攪拌羽根に攪拌機を変え、内温を80℃に昇温させ50回転/分で重合を8時間継続させて重合体粒子を得た。次いで、内温80℃、装置内圧力47.3kPaの条件下で4hr蒸留を行った。蒸留終了後、スラリーを冷却し、希塩酸を添加し、Ca(POを溶解させた後、濾過、水洗、次いで解砕を行い、含水率23%、重量平均粒径7.9μmの湿潤トナー粒子を得た。
【0099】
この時点で湿潤トナー粒子に残留している重合性単量体の量は720ppmであった。得られた湿潤トナー粒子を、気流乾燥機であるフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)を用いて予備的乾燥処理を行い、含水率0.3%、重量平均粒径7.9μm、残留する重合性単量体の量が、710ppmの湿潤トナー粒子を得た。
【0100】
この湿潤トナー粒子を、図1に示す態様の有効仕込容量100Lの容器を有する、上述の静電荷像現像用トナーの製造装置を用いて減圧下で、遠赤外線照射、加熱処理を行った。遠赤外線放射手段としては、図2(b)に示すような、容器内部加熱面にグラスライニングを施し、その上から、Al23、Cr23から構成される遠赤外線放射材粒子を焼き付け、遠赤外線放射体とした。ジャケット部に熱媒体を投入すると、遠赤外線放射体の遠赤外線放射材粒子も次第に加熱され、放射源となるように加工を施した。
【0101】
尚、遠赤外線放射体の放射率のピークは11μmで、黒体の放射率に対し約0.95であった。
【0102】
減圧処理は、以下の条件で行った。
攪拌回転数:26rpm
加熱温度:50℃
減圧度:2.0kPa
処理開始時のトナーの品温は23℃であった。処理開始から2hr経過後に、トナー層の温度を測定したところ、平均43℃であった。処理時間は、残留する重合性単量体の目標量を50ppmとし、予め上述した装置構成・処理条件で同等の処理を行い、約50ppmに到達する時間を推測することで決定した。
【0103】
以下の実施(参考)例・比較例共に同様にして、処理時間を設定した。尚、参考例1の処理時間は5hrであった。処理終了時のトナーの含水率は0.2%、残留重合性単量体量は52ppm、最終的なトナー温度は平均48℃であった。
【0104】
この得られたトナー100質量部に対し、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカ1.5質量部を外添して現像用トナーとした。
【0105】
この現像用トナーを用いて、LBP2040(キヤノン製)改造機を用い、30℃/80%RHの環境にて3000枚の画出しを行ったところ、耐久の前後で縦筋、がさつき等の無い優れた画像が得られた。評価結果を表1に示す。
(1)縦筋の判断基準は以下の通りである。
A:縦筋は未発生。
B:数本の縦筋が発生。
C:多数本の縦筋が発生。
(2)画質の判断基準は以下の通りである。
A:非常に良好。
B:耐久後半からわずかにがさついているものの、実用上問題無いレベル。
C:耐久初期からがさついており、実用困難。
D:がさつきがひどく、実用不可。
【0106】
参考例2】
注入媒体として50℃に加温された窒素を2.5m3/hrで投入すること及び減圧度
を3.0kPaとしたこと以外は、参考例1と同様の装置を用い、同様の条件、予備的加熱処理を行った湿潤トナー粒子を用いて処理を行った。減圧、遠赤外線照射、加熱処理時間は4hrで設定し、処理を行った。また、処理開始時のトナーの品温は23℃であり、処理開始から2hr経過後のトナー層の温度は、44℃であった。
【0107】
処理終了後のトナーの含水率は0.2%、残留重合性単量体量は53ppm、最終的なトナーの温度は平均48℃であった。
【0108】
この得られたトナーを参考例1と同様の操作で現像用トナーとし、同様の方法で評価を行ったところ耐久の前後で縦筋、がさつき等の無い優れた画像が得られた。評価結果を表1に示す。
【0109】
【実施例
窒素の代わりに、50℃の過熱水蒸気を2.5m3/hrで投入すること及び減圧度を
3.3kPaとしたこと以外は、参考例2と同様の湿潤トナー粒子、装置構成を用い、同様の条件で、処理を行った。減圧、遠赤外線照射、加熱処理時間は3hrで設定し、処理を行った。また、処理開始時のトナーの温度は23℃であり、処理開始から2hr経過後のトナー層の温度は、平均45℃であった。
【0110】
処理終了時のトナーの含水率は0.2%、残留重合性単量体量は51ppm、最終的なトナーの温度は49℃であった。
【0111】
この得られたトナーを参考例2と同様の操作で現像用トナーとし、同様の方法で評価を行ったところ耐久の前後で縦筋、がさつき等の無い優れた画像が得られた。評価結果を表1に示す。
【0112】
参考例3
イオン交換水720質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部、1N塩酸16質量部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
【0113】
一方、分散質系は、以下の通りである。
・スチレン 80質量部
・n−ブチルアクリレート 20質量部
・飽和ポリエステル樹脂 1質量部
・ジビニルベンゼン 0.25質量部
・負荷電性制御剤 1質量部
(モノアゾ染料系のFe化合物)
・磁性体 80質量部
上記処方をホモジナイザーを用いて均一に分散混合した。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにエステルワックス(DSCにおける吸熱ピークの極大値72℃)7質量部を添加混合溶解し、これに重合開始剤2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部を溶解した。
【0114】
前記水系媒体中に上記重合性単量体系を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、60℃で4時間反応させた後、80℃に昇温し、さらに5時間反応を行い、重合体粒子を得た。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えてpH2以下で分散剤を溶解し、濾過、水洗して重量平均粒径7.6μmの湿潤トナー粒子を得た。この時点で、含水率は25%、湿潤トナー粒子に残留している重合性単量体の量は800ppmであった。
【0115】
この得られた湿潤トナー粒子を予備的乾燥として気流乾燥機であるフラッシュジェットドライヤーを用いて処理を行い、含水率0.3%、重量平均粒径7.5μm、残留する重合性単量体の量が790ppmの湿潤トナー粒子を得た。
【0116】
得られた湿潤トナー粒子を、参考例1と同様の装置及び条件で処理を行った。尚、減圧、遠赤外線照射、加熱処理時間は3.5hrに設定し、処理を行った。処理開始時のトナーの温度は23℃であり、2hr後のトナー層の温度は、平均49℃であった。処理終了後のトナーは、含水率0.2%、残留する重合性単量体量49ppmで最終的なトナーの温度は平均49.5℃であった。品温の上昇が速く、結果として短時間での処理が達成できたことから、含有する磁性体が遠赤外線を効率よく吸収したことがわかる。
【0117】
得られたトナーは、磁性体を含有し他の実施(参考)例・比較例で用いたトナーと性質が大きく異なる為、同様な評価は行えないが、このトナー100質量部と、一次粒径12nmのシリカにヘキサメチルジシラザンで処理をした後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が120m2/gの疎水性シリカ微粉体1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、現像用トナーとした後に、LBP−1760(キヤノン製)改造機を用いて、現像性・転写性・定着性等を確認したが、特に性能として問題はなかった。
【0118】
【比較例1】
静電荷像現像用トナーの製造装置の容器内部の加熱面が、グラスライニング及び遠赤外線放射材粒子の焼き付けを行わず、材質が一般的なステンレスであること以外は、参考例1と同様の装置構成及び条件・予備的加熱処理を行った湿潤トナー粒子を用いて減圧、加熱処理を行った。
【0119】
減圧、加熱処理時間は7hrで設定し処理を行った。また、処理開始時のトナーの温度は23℃であり、処理開始から2hr後のトナー層の温度は、平均35℃であった。処理終了時のトナーの含水率は0.2%、残留重合性単量体量は52ppm、最終的なトナー層の温度は平均47℃であった。
【0120】
得られたトナーを、参考例1と同様の操作を行い現像用トナーとし、さらに、参考例1と同様の画出し評価を行ったところ、画出しをはじめるとすぐに縦筋が発生し、更に、がさつきのある画像であり、耐久後半は多数本の縦筋の発生・がさつきのひどい画像となり、実用困難なレベルに達した。評価結果を表1に示す。
【0121】
参考例4
加熱温度が60℃、減圧度が2.2kPaであること以外は、参考例1と同様の装置構成・条件及び同様の湿潤トナー粒子を用いて減圧、加熱処理を行った。
【0122】
減圧、加熱処理時間は3.5hrで設定し処理を行った。また、処理開始時のトナーの温度は23℃であり、処理開始から2hr後のトナー層の温度は、平均52℃であった。処理終了時のトナーは凝集気味のものが多く含まれていた。また、含水率は0.1%、残留重合性単量体量は50ppm、最終的なトナーの温度は56℃であった。
【0123】
得られたトナーを、参考例1と同様の操作を行い現像用トナーとし、さらに、参考例1と同様の画出し評価を行ったところ、耐久の後半で実用上問題ないレベルであるが、数本の縦筋が発生した。また、実用上問題の無いレベルではあるが、耐久後半で若干画像ががさついていた。評価結果を表1に示す。
【0124】
参考例5
参考例1の洗浄・脱水・解砕後に得られた湿潤トナー粒子を、予備的乾燥として気流乾燥機であるフラッシュジェットドライヤーを用いて参考例1とは異なる条件で処理を行い、含水率6%、重量平均粒径7.9μm、残留する重合性単量体の量が715ppmの湿潤トナー粒子を得た。
【0125】
得られた湿潤トナー粒子を、参考例1と同様の装置構成及び条件(但し、0〜15分までは最大4.7kPaの減圧度で、15分以降次第に減圧度は高くなり、25分以降は、2.0kPaで安定した。)で処理を行った。
【0126】
減圧、遠赤外線照射、加熱処理時間は5.5hrで設定し処理を行った。また、処理開始時のトナーの温度は23℃であり、処理開始から2hr後のトナー層の温度は、平均40℃であった。処理後に得られたトナーの含水率は0.2%、残留重合性単量体量は51ppm、最終的なトナーの温度は48℃であった。
【0127】
この得られたトナーを、参考例1と同様の操作を行い現像用トナーとし、さらに、参考例1と同様の画出し評価を行ったところ、耐久の後半で実用上問題ないレベルであるが、数本の縦筋が発生した。また、画像に関しては、がさつき等の無い優れた画像が得られた。評価結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
Figure 0003919498
【0129】
【発明の効果】
本発明によれば、水系媒体中で合成されたトナー粒子中に存在する揮発成分を均一にしかも短時間で除去する静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができる。また、残留する揮発成分が原因となる画像欠陥・熱劣化したトナーが誘発する画像欠陥の無い高画質の画像が得られる静電荷像現像用トナーの製造方法及び該トナーの製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いられる静電荷像現像用トナーの製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】 (a)本発明に用いられる遠赤外線放射体を示す概略図である。(b)本発明に用いられる遠赤外線放射体を示す概略図である。
【符号の説明】
1 容器
2 駆動モーター
3 攪拌中心軸
4 リボン翼
5 注入媒体流量計
6 注入媒体温度計
7 原料供給口
8 バッグフィルター
9 コンデンサー
10 ジャケット
11 温水タンク
12 減圧ポンプ
13 仕切板
14 濾布
15 逆洗用ノズル
16 注入媒体加熱器
17 容器内部表面
18 膨張タンク
19 分散盤
20 ガラス層
21 遠赤外線放射材粒子

Claims (7)

  1. 水系媒体中で合成された重合体粒子を洗浄し、脱水して得られた湿潤トナー粒子を、減圧下及び遠赤外線照射下で加熱してトナーを得る工程を有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
    前記減圧下に、飽和水蒸気又は過熱水蒸気を投入することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法
  2. 洗浄、脱水後に得られた記湿潤トナー粒子の含水率は、3.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. トナーの温度が60℃以下であるように前記遠赤外線照射及び加熱が行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  4. 前記水系媒体中で合成された重合体粒子は、磁性体を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  5. 前記遠赤外線は、放射率のピークが波長4〜20μmの範囲内にある遠赤外線放射体から得られるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  6. 水系媒体中で合成された重合体粒子を洗浄し、脱水して得られた湿潤トナー粒子を、乾燥してトナーを製造する装置であって、前記湿潤トナー粒子を収容する容器と、前記容器を減圧する減圧手段と、前記減圧手段で減圧された容器内に、注入媒体を投入する注入媒体投入手段と、前記湿潤トナー粒子に遠赤外線を照射する遠赤外線照射手段と、前記湿潤トナー粒子を加熱する加熱手段とを有し、前記注入媒体は、飽和水蒸気又は過熱水蒸気であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造装置
  7. 前記遠赤外線照射手段は、放射率のピークが波長4〜20μmの範囲内にある遠赤外線放射体であることを特徴とする請求項6に記載の静電荷像現像用トナーの製造装置。
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