JP3917888B2 - ポリエステル系ラミネート紙、その製造方法、該ラミネート紙からなる食品容器用材料 - Google Patents

ポリエステル系ラミネート紙、その製造方法、該ラミネート紙からなる食品容器用材料 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル系ラミネート紙に関し、更に詳しくは、特に紙との接着性及びヒートシール性が改善されたポリエステル系ラミネート紙及び該ラミネート紙を効率的に且つ安価に製造する方法、及び該ラミネート紙からなる食品容器用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紙と合成樹脂からなるラミネート紙は、包装や容器材料として多用されている。その中でもポリオレフィン、特にポリエチレンを使用したラミネート紙が代表的であったが、ポリエチレンはガスバリヤー性が不十分であるため、ガスバリヤー性・保香性等が要望される食品包装容器等の分野では不向きであった。一方、液体食品の容器の分野では、ポリエチレンテレフタレート(以後、PETと記す)のブローボトルが広く使用されるに至った。
【0003】
他方、ラミネート紙にガスバリヤー性・保香性の優れたPETを使用しようとする努力がなされて来たが、包装容器材料としてはヒートシール性が劣るという問題を含んでいた。この問題を解決せんとして、PETの改良が試みられ共重合PETが登場して来た。しかし、共重合PETはヒートシール性は良好であるものの、紙との接着性に欠けるという新たな問題を含んでいた。従って、紙との間に接着用樹脂の介在が必要であるか、又は従来のポリエチレンラミネート紙に接着用アンカーコートを行って共重合PETをラミネートする必要があり、生産性が低いという問題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑み、共重合PETを紙とラミネートする場合に、接着用樹脂や接着用アンカーコートを必要とすることなく、紙との接着性及びヒートシール性の良好なPET系ラミネート紙、及び該ラミネート紙からなる食品容器用材料を能率良く且つ低コストで提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するべくPET系樹脂と紙との接着挙動を鋭意検討した結果、意外にもPET単独重合体又はPETを主成分としたPET共重合体が紙との優れた接着挙動を示すことを見い出し、更に、この種のPET樹脂がヒートシール性の改良されたPET共重合樹脂と相溶しやすいことを見い出して本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の請求項1は、紙基材上に、接着剤層を介することなく、密度が1.35g/cm3 以上のポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなる第1層を配し、該第1層の上に密度が1.35g/cm3 未満のポリエチレンテレフタレート共重合樹脂からなる第2層を配したことを特徴とする多層ポリエステル系ラミネート紙を内容とする。
【0007】
本発明の請求項2は、紙基材上に、接着剤層を介することなく、密度が1.35g/cm3 以上のポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなる第1層と、密度が1.35g/cm3 未満のポリエチレンテレフタレート共重合樹脂からなる第2層を積層することを特徴とする多層ポリエステル系ラミネート紙の製造方法を内容とする。
【0008】
本発明の請求項3は、第1層及び第2層を共押出により積層する請求項2記載の製造方法を内容とする。
【0009】
本発明の請求項4は、請求項1記載の多層ポリエステル系ラミネート紙からなることを特徴とする食品容器用材料を内容とする。
【0010】
【発明の実施の態様】
本発明において、第1層として紙基材上に直接配される、PET又はPETを主成分とする樹脂は、一般的なPET樹脂又はPETを主成分とし、残部の他成分を含むPET共重合樹脂である。PET樹脂はテレフタル酸とエチレングリコールを重合したものであるが、成形加工方法に適合させるために、極限粘度を調節したり、場合によってはテレフタル酸を一部イソフタル酸に代えたり、エチレングリコールを他のグリコール類、例えば、1,4シクロヘキサンジメタノール等に代えたりして結晶溶融点を変化させたものがある。しかし、これらの代替量は少なく、PETに近い性質を持っている(以下、PET又はPETを主成分とする樹脂を、後述する第2層として配される「PET共重合樹脂」と区別するために、「PET樹脂」と称する)。
PET樹脂は後述する第2層としてのPET共重合樹脂に比べて、融点が高く、樹脂の密度も高い。密度は1.35g/cm3 以上のものが通常であって、1.4g/cm3 近傍のものが多い。この種の樹脂は押出用又は二軸延伸ブローに適したグレードが多い。この例として、EASTPAK9921(イーストマンケミカル製)やユニペットRT543C(日本ユニペット製)等を挙げることができる。
【0011】
これらのPET樹脂は適切な押出加工条件の下で紙基材とラミネートされると、後述のPET共重合樹脂に比べて格段に紙基材との接着性が高い。特に、高めの押出加工温度では、紙基材との接着性は顕著である。
【0012】
本発明において、第2層として用いられるヒートシール性の良いPET共重合樹脂は、前述の第1層としてのPET樹脂に使用されたテレフタル酸とエチレングリコールにおいて、エチレングリコールに代えて一部1,4シクロヘキサンジメタノール(CHDM)や1,3シクロヘキサンジメタノール等を用い、又はテレフタル酸に代えて一部イソフタル酸等を用い、又は、酸成分及びグリコール成分の一部をともに代えて共重合したもの等が挙げられる。この代替量は前述のPET樹脂に比べて多く、また、この代替量はその樹脂の結晶化速度に関係し、PET樹脂の結晶性を完全になくすこともできる。その結果、融点は低下し、密度も1.35g/cm3 未満に低下して、広い温度領域での押出が可能となり、ヒートシール性が改善される。
このグレードの例として、テレフタル酸、エチレングリコールとCHDMを共重合したEASTAR PETG6763(イーストマンケミカル製)等がある。CHDM又はこれと同等の効果ある共重合成分を用いて、他のPET共重合樹脂が上市され、その例として、シーラーPT8307(三井・デュポンケミカル製)やバイロンRN9300(東洋紡績製)等がある。
【0013】
上記PET共重合樹脂は、直接紙基材とラミネートした場合は、紙基材との接着性が不足して容器包装材料としては問題がある。従って、従来は次の2方法によってラミネートされていた。その一つの方法は、接着用樹脂のエチレン・無水マレイン酸コポリマー(例えば、アドマーSE810 三井化学製)やエチレン・酢酸ビニルコポリマー等を用いて紙基材と接着した上にPET共重合樹脂をラミネートする方法である。他の方法は、紙と良く接着したポリエチレンラミネート紙にアンカーコート剤(例えば、東洋モートン社のAD335A)で表面処理した上にPET共重合樹脂をラミネートする方法である。これらの方法は、ともにPET系ラミネート紙に要求される包装容器の特性に無関係な材料を使用しなければならず、又は多工程を経て生産されなければならないので、非常に不利であった。
【0014】
本発明においては、PET系樹脂のみでラミネートが可能であるのでPET系樹脂の特性を100%発揮させることができる。例えば、ガスバリヤー性を期待する場合には、同一厚みでは一層優れたガスバリヤー性が得られるので、接着用樹脂やアンカーコート剤を使用する場合より格段に有利である。
【0015】
本発明において使用される紙基材については、種類や厚み、目付量には特に制約はない。また通常の包装容器材料に使用される紙のコート処理剤の制約もない。ラミネートの方法は、第1層のPET樹脂と第2層のPET共重合樹脂を個別に溶融させ、繰り出された紙基材の上にほぼ同時に膜状に押出すスリットを持つ共押出用ダイを通して押し出し、冷却された金属ロールとゴムロールに挟み込ませて第1層と第2層とを同時にラミネートする方法が高能率的である。しかし、同時共押出しを個々に多段にラミネートするタンデム方式でも良い。更に、紙基材上に第1層としてPET樹脂をラミネートした後、この第1層の上に第2層のPET共重合樹脂をラミネートする方式でも良い。
【0016】
第1層のPET樹脂と第2層のPET共重合樹脂の使用の割合は任意である。ラミネートの膜の厚さは、通常、それぞれ5〜100μm、好ましくは10〜50μmから選べばよい。
紙基材には、ラミネートする前に接着力を増強するために、紙基材の表面にコロナ放電処理や高温燃焼ガスを吹き付けるフレーム処理、オゾン処理、プラズマイオン処理などの表面処理を施すことができる。
【0017】
本発明のポリエステル系ラミネート紙は、箱型のカートン、カップ型のカップ容器、丼容器等に組み立てることができる。これらの容器は、各種の物品の包装、特に食品類、更に液体食品、殊にガスバリヤー性・保香性が要求されるフレーバーを含む液体食品の容器や電子加熱を要する食品容器等に適している。
【0018】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0019】
実施例1
日本製紙(株)製の坪量220g/m2のカップ原紙(U−CUP)のオゾン処理した面に、第1層のPET樹脂としてユニペットRT543C〔日本ユニペット(株)製〕、第2層のPET共重合樹脂としてシーラーPT8307〔三井化学(株)製〕を、前者を25μm、後者を15μmになるよう押出温度290℃で共押出して、PET樹脂からなる第1層、PET共重合樹脂からなる第2層からなる多層ポリエステル系ラミネート紙を得た。第1層、第2層それぞれの樹脂の特性値は表1の如くであった。
【0020】
【表1】
Figure 0003917888
【0021】
得られた多層ポリエステル系ラミネート紙の紙基材と第1層樹脂との接着性については、紙基材と第1層ラミネート層の両端を引き剥がし、紙基材層で破壊する場合を○、全く破壊しないで剥離する場合を×とし、その中間的な破壊を△として評価し、その結果を表2に示した。
【0022】
ヒートシール性については、一定の温度条件に保った上下の熱板を2秒間、圧力3kg/cm2 に保って、第2層ラミネート面と紙基材面、次いで、第2層ラミネート面と第2層ラミネート面の二つの組み合わせについて行い、160℃、170℃、190℃、220℃の各温度で溶融させて融着面を引き剥がし、紙基材との破壊状態を観察した。紙基材面での破壊が融着面積の90%以上の場合を◎、60〜90%未満の場合を○、30〜60%未満の場合を△、30%未満の場合を×として評価し、その結果を表2に示した。
【0023】
実施例2
実施例1のPET共重合樹脂をEASTAR PETG6763(イーストマンケミカル製)に代え、押出加工温度を280℃に設定する以外は、実施例1と同様に多層ポリエステル系ラミネート紙を得た。PET共重合樹脂の特性は表1に、紙基材との接着性及びヒートシール性は表2に示した。
【0024】
比較例1
PET樹脂としてユニペットRT543Cを用いて40μmの単層のポリエステル系ラミネート紙を実施例1と同様にして得、紙基材との接着性及びヒートシール性を表2に示した。
【0025】
比較例2
実施例1のPET樹脂を省略して、PET共重合樹脂としてシーラーPT8307のみの40μmの単層のポリエステル系ラミネート紙を作製したが、紙基材との接着性が殆どなく、容易に剥離され、ラミネート紙としての機能を果たすことはできなかった。従って、ヒートシール性の評価は実施しなかった。
【0026】
比較例3
接着用樹脂としてエチレン・無水マレイン酸共重体アドマーSE810〔三井化学(株)製〕を実施例1で用いた紙基材の上に32μmの厚さでラミネートし、該接着用樹脂ラミネートの上にPET共重合樹脂のシーラーPT8307を30μmラミネートして接着用樹脂/PET共重合樹脂からなる多層ポリエステル系ラミネート紙を作製した。紙基材との接着性及びヒートシール性を表2に示した。
【0027】
【表2】
Figure 0003917888
【0028】
上記表2から、紙基材と接する側にPET樹脂を配し、その上にPET共重合樹脂を配した本発明の多層ポリエステル系ラミネート紙は、接着用樹脂を配して、その上にPET共重合樹脂を配した多層ポリエステル系ラミネート紙と同等の、紙との接着性及びヒートシール性を示すことがわかる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、従来、使用されていた接着用樹脂や、アンカーコート等接着性を付与する手段を必要とすることなく、PET系樹脂のみを用いて紙基材との接着性及びヒートシール性の良好なポリエステル系ラミネート紙が得られるので、PET系樹脂の持つガスバリヤー性・保香性、耐熱性等の特性を100%発揮し得るポリエステル系ラミネート紙及び食品容器用材料を能率よく且つ安価に提供することができる。

Claims (4)

  1. 紙基材上に、接着剤層を介することなく、密度が1.35g/cm3 以上のポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなる第1層を配し、該第1層の上に密度が1.35g/cm3 未満のポリエチレンテレフタレート共重合樹脂からなる第2層を配したことを特徴とする多層ポリエステル系ラミネート紙。
  2. 紙基材上に、接着剤層を介することなく、密度が1.35g/cm3 以上のポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂からなる第1層と、密度が1.35g/cm3 未満のポリエチレンテレフタレート共重合樹脂からなる第2層を積層することを特徴とする多層ポリエステル系ラミネート紙の製造方法。
  3. 第1層及び第2層を共押出により積層する請求項2記載の製造方法。
  4. 請求項1記載の多層ポリエステル系ラミネート紙からなることを特徴とする食品容器用材料。
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