JP3917853B2 - 回路基板用基材及びこれを用いた回路基板 - Google Patents

回路基板用基材及びこれを用いた回路基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は回路基板用基材及びこの基材を使用した回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、産業用及び民生用電子機器の小型化・高機能化に伴って、これら電子機器に搭載される半導体や回路基板などの電子部品においても小型化・高機能化が求められている。これら電子部品の小型化には回路基板の薄型化だけでなく、配線の高密度化が重要である。そのため回路基板材料には、ラインピッチの狭幅化に対応できる絶縁信頼性と、ホールの小径化に対応できるレーザー加工性が求められる。
【0003】
従来、電子部品を実装できる回路基板として、ガラス繊維織布やガラス不織布からなる基材にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ回路基板が広く用いられているが、レーザーによる孔あけ加工で孔形状の不具合及び繊維ケバの飛び出しが発生し易い欠点を有していた。
【0004】
また最近、アラミド繊維に代表される有機繊維を用いた回路基板が、耐熱膨張に優れており、しかもレーザー加工性も容易である面から注目されていた。しかし、アラミド繊維は吸湿性が高いため電気絶縁信頼性に劣る欠点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、絶縁信頼性及びレーザー加工性に優れる、近年の小型高機能化の要求に対して十分に応えることのできる回路基板、及びこの回路基板用基材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明の回路基板用基材は、シリカ成分50質量%以上からなる、平均繊維径が2μm以下の無機系極細繊維を含む不織布からなり、前記無機系極細繊維はゾル溶液に電界を作用させることにより極細化して形成した無機系極細ゲル状長繊維に由来する長繊維からなる。従来の回路基板用基材であるガラス織物やガラス不織布に使用されているガラス繊維は、紡糸時の安定性や使いこなしの面から、その繊維径は5μm程度が下限であったため、レーザー加工する場合、孔形状に不具合を生じ易く、繊維ケバが飛び出しやすかったのに対して、本発明の回路基板用基材は平均繊維径が2μm以下の無機系極細繊維から構成されているため、孔形状に不具合を生じたり、繊維ケバが飛び出すなどの問題を生じることなくレーザー加工することのできる、有機繊維並のレーザー加工性を実現したものである。また、無機系極細繊維はシリカ成分50質量%以上からなるため、本発明の回路基板用基材は絶縁信頼性も高い。
【0007】
また、無機系極細繊維が、シリカ成分50質量%以上から構成されているため、従来用いられているEガラス組成からQガラス(石英ガラス)組成まで、様々な回路基板の用途に応じたガラス組成を選択することができる。特に石英ガラス組成である場合、高周波対応に適した誘電率及び誘電正接の低い回路基板を製造することができる。
【0008】
更に、ガラス織物の構造では、必然的にガラスヤーン同士が交差した部分を生じ、この交差した部分によって平滑性が損なわれる上、見掛密度が高いためマトリックス樹脂の浸透が困難であるのに対して、本発明の回路基板用基材は不織布構造であることによって、表面平滑性と樹脂浸透性に優れている。
【0009】
請求項2に記載の本発明の回路基板用基材は、無機系極細繊維のどの点においても、繊維径が2μm以下である。
【0010】
請求項3に記載の本発明の回路基板用基材は、不織布が実質的に無機系極細繊維のみからなる。すなわち、従来のガラス不織布のような接着剤が存在していないため、接着剤の皮膜形成によるマトリックス樹脂の回路基板用基材内部への浸透不良の発生を抑えることができ、しかも接着剤からの不純物の溶出もないので、電気絶縁性に優れる回路基板を製造することができる。
【0011】
請求項4に記載の本発明の回路基板用基材は、回路基板用基材の厚さが80μm以下である。そのため、回路基板の厚さを薄くすることができ、回路基板の省スペース化に優れた回路基板を製造することができる。
【0012】
請求項5に記載の回路基板は、上記請求項1〜に記載の回路基板用基材を使用してなる回路基板である。そのため、上記のような効果に優れる回路基板である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の回路基板用基材(以下、「基材」と略称する)は、無機成分を主体とする、平均繊維径が2μm以下の無機系極細繊維を含む繊維シートであり、電子部品のレーザー加工性に優れ、絶縁信頼性も高いため、回路基板の小型高性能化に寄与することができる。
【0014】
本発明の基材を構成する無機系極細繊維の平均繊維径が細ければ細い程、本発明の基材を使用した回路基板のレーザー加工性に優れているため、無機系極細繊維の平均繊維径は1μm以下であるのが好ましく、0.5μm以下であるのがより好ましい。無機系極細繊維の平均繊維径の下限は、マトリックス樹脂が基材の内部に均一に含浸できる細さであれば良く、特に限定するものではないが、0.01μm程度が適当である。
【0015】
なお、無機系極細繊維の平均繊維径は2μm以下であるが、無機系極細繊維のどの点においても、繊維径が2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましく、0.5μm以下であるのが更に好ましい。
【0016】
本発明における「繊維径」は、繊維横断面形状が円形である場合は、その直径をいい、繊維横断面形状が非円形である場合は、その断面積と同じ面積を有する円の直径を繊維径とみなす。また、「平均繊維径」は繊維100点における繊維径の平均値をいう。
【0017】
本発明の無機系極細繊維は絶縁信頼性があり、熱がかかった際の寸法安定性に優れているように、無機成分を主体(50質量%以上)として構成されているが、本発明の基材を使用した回路基板の誘電特性の面から、シリカ成分(SiO)を50質量%以上含んでいるのが好ましく、75質量%以上含んでいるのがより好ましく、99.9質量%以上含んでいるのが更に好ましい。特に、シリカ成分が99.9質量%以上の無機系極細繊維は誘電率が3.8で、他のガラス組成と比べて低いので、高周波の対応できる回路基板用の基材として適している。
【0018】
シリカ成分以外の無機成分は特に限定するものではないが、例えば、Al、B、CaO、MgO、KO、NaO、TiO、ZrO、CeO、SnO、Fe、V、CdO、WO、Nb、Ta、In、GeO、PbO、PbTi、LiNbO、BaTiO、PbZrO、KTaO、Li、NiFe、SrTiOなどを挙げることができ、これら一成分以上を含んでいることができる。これらの無機成分を組み合わせることにより、Eガラス組成からQガラス(石英ガラス)組成からなる無機系極細繊維であることができるため、様々なグレードに応じた基材とすることができる。
【0019】
本発明の無機系極細繊維は上述のような無機成分以外に、基材として有用な有機成分を含んでいることができる。この有機成分として、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などを挙げることができる。
【0020】
なお、本発明の基材を構成する無機系極細繊維は、長繊維からなることが好ましい。このように長繊維からなることによって、マトリックス樹脂の含浸工程及び回路基板の孔開けやカットなどの加工工程で、繊維毛羽の発生及び脱落を抑えることができる。
【0021】
本発明の基材は上述のような無機系極細繊維を含む繊維シート、例えば、織物、不織布などからなる。これらの中でも、表面平滑性と見掛密度の面から不織布構造からなることが望ましい。つまり、不織布構造からなると、織物のようなヤーン同士が交差した部分がないため、織物構造よりも平滑性に優れ、しかも繊維が細くても見掛密度が高くなりすぎないため、マトリックス樹脂浸透性にも優れている。
【0022】
本発明の基材は上述のような無機系極細繊維を含む繊維シートからなるが、上述のような無機系極細繊維以外に、例えば、有機系極細繊維(平均繊維径:2μm以下)、無機系太繊維(平均繊維径:2μm超)、有機系太繊維(平均繊維径:2μm超)、或いは接着剤などを含んでいても良い。しかしながら、基材を構成する繊維は絶縁信頼性やレーザー加工性の点から、無機系極細繊維のみからなるのが好ましい。また、基板は接着剤も含まず、実質的に無機系極細繊維のみから構成されているのが好ましい。このように、繊維接点において、接着剤を介することなく接着していると、接着剤が存在していないため、接着剤の樹脂皮膜形成による回路基板製造工程でのマトリックス樹脂の浸透不良の発生を抑えることができる。更に、接着剤が存在していないことによって、不純物の発生を抑えることができるので、長期絶縁信頼性に優れた回路基板を製造することができる。
【0023】
また、本発明の基材は回路基板の小型化に寄与することができるように、厚さが80μm以下であるのが好ましい。基材の厚さは電気絶縁性を保持できる範囲内であれば薄ければ薄い程、回路基板の小型軽量化に寄与できるため、基材の厚さは60μm以下であるのがより好ましく、50μm以下が更に好ましい。基材の厚さの下限は基材の形態を維持し、マトリックス樹脂含浸工程に耐えうる程度の強度のある厚さであれば良く、特に限定するものではないが、10μm程度が適当である。なお、本発明における「厚さ」は、JIS B 7502に規定された方法により測定した値、つまり、5N荷重時の外側マイクロメーターにより測定した値を意味する。
【0024】
このような本発明の基材の目付及び見掛密度は特に限定するものではないが、ある程度機械的強度が優れているように、目付は3〜30g/m2であるのが好ましく、見掛密度は0.05〜0.5g/cm3であるのが好ましい。なお、目付はJIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定法)に規定された方法に基づく坪量を意味し、見掛密度は目付を厚さで除した値を意味する。
【0025】
上述した本発明の基材は、例えば、次のような方法で製造することができる。(1)無機成分を主体とするゾル溶液を形成する工程、(2)前記ゾル溶液をノズルから押し出すとともに、押し出したゾル溶液に電界を作用させることにより極細化して、無機系極細ゲル状長繊維を形成し、支持体上に前記無機系極細ゲル状長繊維を集積させる工程、(3)前記集積させた無機系極細ゲル状長繊維を乾燥、或いは乾燥に加えて焼結することにより、無機系極細長繊維を含む繊維シートを形成する工程、とによって製造することができる。この方法によれば、前述のような、無機成分を主体とする、平均繊維径が2μm以下の無機系極細長繊維のみからなる不織布基材、つまり無機系極細長繊維が、接点において、接着剤を介することなく接着した不織布基材を製造することができる。
【0026】
より具体的には、まず、(1)無機成分を主体とするゾル溶液を形成する。このゾル溶液は、例えば、無機系極細繊維を構成する金属元素を含む化合物(金属化合物)を含む溶液(原料溶液)を、100℃以下の温度で加水分解させ、縮重合させることによって得ることができる。なお、この金属化合物としてシラン系化合物量を50質量%以上とすることによって、シリカ成分50質量%以上からなる無機系極細繊維とすることができる。また、この金属化合物は有機成分を含むものであっても良い。例えば、金属化合物がシラン系化合物の場合、メチル基やエポキシ基などで有機修飾されたシラン系化合物を使用することができる。
【0027】
前記原料溶液は、金属化合物を安定化させるための溶媒、加水分解させるための水、及び加水分解反応を円滑に進行させるための触媒、などを含んでいることができる。更に、金属化合物が安定化するように、キレート剤やシランカップリング剤などの添加剤を含んでいることができる。これらの添加剤は加水分解前、加水分解する際、或いは加水分解後に添加することができる。
【0028】
次いで、(2)前記ゾル溶液をノズルから押し出すとともに、押し出したゾル溶液に電界を作用させることにより極細化して、無機系極細ゲル状長繊維を形成し、支持体上に無機系極細ゲル状長繊維を集積させる。なお、ゾル溶液のノズルからの押し出しを間欠的に行うことによって、無機系極細ゲル状短繊維を形成し、支持体上に無機系極細ゲル状短繊維を集積させることもできる。更に、無機系極細ゲル状長繊維を形成するノズルと無機系極細ゲル状短繊維を形成するノズルを併設すれば、無機系極細ゲル状長繊維と無機系極細ゲル状短繊維の混在した状態で集積することができる。
【0029】
なお、ノズルと支持体との間で、無機系極細ゲル状長繊維の流れに対して、有機系極細繊維(平均繊維径:2μm以下)、無機系太繊維(平均繊維径:2μm超)、有機系太繊維(平均繊維径:2μm超)、或いは接着剤を供給すれば、これらが混在した状態で支持体上に集積させることができる。
【0030】
このゾル溶液を押し出すノズルの直径は、無機系極細ゲル状長繊維の平均繊維径が2μm以下となりやすいように、0.1〜3mmであるのが好ましい。なお、後述の乾燥工程或いは焼結工程において、無機系極細ゲル状長繊維が多少収縮するため、無機系極細ゲル状長繊維の平均繊維径が2μm以下である必要はなく、平均繊維径が3μm以下であれば、平均繊維径が2μm以下の無機系極細長繊維とすることができる。
【0031】
また、ノズルは金属製であっても、非金属製であっても良い。ノズルが金属製であればノズルを1つの電極として使用し、ノズルが非金属製からなる場合には、ノズル内に電極を設置することにより、無機系極細ゲル状長繊維に対して電界を作用させることができる。
【0032】
このようなノズルからゾル溶液を押し出した後、電界を作用させることにより極細化して、無機系極細ゲル状長繊維を形成するが、この電界は無機系極細ゲル状長繊維の平均繊維径を2μm以下とできる電界であれば良い。この電界はノズルと支持体との距離、原料溶液の溶媒、ゾル溶液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、0.5〜5kV/cmであるのが好ましい。
【0033】
このような電界は、例えば、ノズル(金属製の場合にはノズル自体、非金属製の場合にはノズル内の電極)と支持体との間に電位差を設けることによって、作用させることができる。
【0034】
このように極細化された無機系極細ゲル状長繊維を支持体上に集積させる。この支持体は特に限定されるものではないが、例えば、多孔ロール、無孔ロール、多孔シート(例えば、ネット)、無孔シート(例えば、フィルム)などを挙げることができる。前述のように支持体を電極の1つとして使用する場合、支持体は体積抵抗が10Ω以下の導電性材料(例えば、金属製)からなるのが好ましい。なお、支持体よりも下方に対向電極として導電性材料を配置しても良い。この場合、支持体は必ずしも導電性材料である必要はない。また、支持体よりも下方に対向電極を配置する場合、支持体と対向電極とは接していても良いし、離間していても良い。
【0035】
次いで、(3)前記集積させた無機系極細ゲル状長繊維を乾燥することにより、無機系極細ゲル状長繊維を乾燥した状態の不織布を製造することができ、この不織布を基材として使用することができる。この乾燥温度は特に限定されるものではないが、200℃以下の温度で実施することができる。この乾燥はオーブンによって実施することができるし、凍結乾燥、或いは超臨界乾燥によって実施することもできる。
【0036】
この乾燥に続いて焼結することによって、強度及び耐熱性が向上した無機成分のみからなる焼結不織布を製造することができ、この焼結不織布を基材として使用することができる。なお、無機系極細ゲル状長繊維が無機成分と有機成分とを含む場合には、有機成分の分解温度以上で焼結することによって、無機成分のみからなる、強度及び耐熱性の優れる焼結不織布(基材)を製造することができる。
【0037】
例えば、無機系極細ゲル状長繊維が有機成分を含むシリカ成分からなる場合、150〜200℃の温度で乾燥した後、500℃以上の温度で焼結すれば、有機成分を含まないシリカ極細長繊維からなる焼結不織布(基材)を製造することができる。
【0038】
本発明の回路基板は上述のような基材に熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂が付与されたものであるため、孔形状に不具合を生じたり、繊維ケバが飛び出すなどの問題を生じることなくレーザー加工することができ、しかも絶縁信頼性に優れるものである。
【0039】
本発明で回路基板で使用できる熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)は、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、イソシアネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、これら樹脂を適宜2種類以上、配合及び/又は反応させてなる樹脂組成物、更に前記熱硬化性樹脂1種又はそれ以上をポリビニルブチラール、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又は多官能性アクリレート化合物や添加剤等で変性したもの、架橋ポリエチレン、架橋ポリエチレン/エポキシ樹脂、架橋ポリエチレン/シアナート樹脂、ポリフェニレンエーテル/シアナート樹脂、その他の熱可塑性樹脂で変性した架橋硬化性樹脂(IPN又はセミIPN)を用いてなるもの、を挙げることができる。これらの中でも、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、イソシアネート樹脂の中から選ばれる少なくとも1種類の熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)から構成されていると、耐熱性に優れているため好適である。
【0040】
このような熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)を、前述のような基材に付与してプリプレグを製造することができる。熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)を基材に担持させるには、例えば、含浸法、塗布法、又は溶融転写法を用いることができる。より具体的には、(1)熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)を溶剤に溶解させたワニスを基材に含浸した後に乾燥する方法、(2)無溶剤で、常温若しくは加熱下で調整した液状熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)を基材に含浸する方法、(3)粉体状熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)を基材に固定する方法、(4)離型性を有するフィルムやシート状物に熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)層を形成した後、これを基材に溶融転写する方法、などを挙げることができる。
【0041】
このようにして熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)を担持した基材は、例えば、たて型ドライヤーによって非接触状態で乾燥して、プリプレグを製造することができる。
【0042】
このプリプレグに付与された熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)の量は特に限定されるものではないが、プリプレグ全体の30重量%〜95重量%であるのが好ましい。熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)の量がプリプレグ全体の30重量%未満であると成形不良が発生しやすく、95重量%を越えると成型が困難になりやすいためである。
【0043】
本発明の回路基板は上述のようなプリプレグを使用したものであり、その態様は、例えば、1枚又は複数枚の前記プリプレグのみからなる回路基板、1枚又は複数枚の前記プリプレグと他の公知の基材(例えば、ガラス織布又はガラス不織布)とを組み合わせた回路基板、或いはそれらの回路基板の片面又は両面に金属箔を担持させた金属箔張回路基板、それら各種の回路基板に内層用のプリント配線網を形成した内層回路基板、更には前記各種の回路基板から製造される多層回路基板、などを挙げることができる。
【0044】
前記の片面又は両面金属箔張回路基板に用いることのできる金属箔は、従来から使用されているものを使用することができ、例えば、銅箔、鉄箔、アルミニウム箔、アルミニウム/銅箔などがあり、金属箔の片面若しくは両面が表面処理されていても、接着剤付きの金属箔を使用しても良い。
【0045】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
【実施例】
(実施例1)
(基材の作製)
(1)金属化合物としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、触媒として1規定の塩酸を、1:5:2:0.03のモル比で混合し、温度78℃で、10時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、温度50℃に加温して、粘度が約20ポイズのゾル溶液を形成した。
【0047】
次いで、(2)内径が0.5mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1つのノズルあたり、1.2cc/時間でゾル溶液を供給し、ノズルからゾル溶液を押し出すとともに、ノズルに電圧(25kV)を印加し、支持体であるステンレス製無孔ロールをアースして、前記押し出したゾル溶液に電界(2.5kV/cm)を作用させることによって極細化し、無機系極細ゲル状長繊維を形成して、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。
【0048】
次いで、(3)集積させた無機系極細ゲル状長繊維を温度150℃で5時間、温度300℃で5時間、及び温度1000℃で焼成し、完全にガラス化させて、平均繊維径が2μm(いずれの点における繊維径も約2μm)の無機系極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)のみからなる不織布構造の基材を製造した。得られた基材の物性は、目付9.3g/m、厚さ50μm、見掛密度0.19g/cmであった。なお、無機系極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)は、接点において、接着剤が介在することなく接着していた。
【0049】
(プリプレグの調製)
上記の方法で作製した基材を用いてプリプレグを調製した。つまり、エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、油化シェル製)100重量部、ジシアンジアミド4重量部、ベンジルジメチルアミン0.5重量部を配合したマトリックス樹脂ワニスを、上記基材に含浸した後、ドライヤーで乾燥して、プリプレグ(樹脂量:50重量%)を製造した。
【0050】
(回路基板の作製)
前記の方法で調製したプリプレグ1枚の両面に、厚さ35μmの銅箔を重ね、圧力300N/cm、温度150℃で50分間加熱加圧して、回路基板を作製した。
【0051】
(実施例2)
(基材の作製)
(1)金属化合物としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、触媒として1規定の塩酸を、1:5:2:0.03のモル比で混合し、温度78℃で、10時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、温度50℃に加温して、粘度が約10ポイズのゾル溶液を形成した。
【0052】
次いで、実施例1と全く同様にして、無機系極細ゲル状長繊維を集積させた後に焼成し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.8μm(いずれの点における繊維径も約0.8μm)の無機極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)のみからなる不織布構造の基材を製造した。得られた基材の物性は、目付9.4g/m、厚さ50μm、見掛密度0.19g/cmであった。なお、無機系極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)は、接点において、接着剤が介在することなく接着していた。
【0053】
(プリプレグの調製)
上記の方法で作製した基材を用いて、実施例1と同様の方法でプリプレグ(樹脂量:50重量%)を調製した。
【0054】
(回路基板の作製)
前記の方法で調製したプリプレグから、実施例1と同様の方法で回路基板を作製した。
【0055】
(実施例3)
(基材の作製)
実施例2と同様にして調整したゾル溶液に、ブタノールを添加して、粘度を約3.5ポイズとしたゾル溶液を使用したこと、1つのノズルあたりにおけるゾル溶液の供給量を0.8cc/時間としたこと、及びノズルへの印加電圧を20kVとしたこと以外は、実施例2と全く同様にして、平均繊維径が0.4μm(いずれの点における繊維径も約0.4μm)の無機極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)のみからなる不織布構造の基材を製造した。得られた基材の物性は、目付9.5g/m、厚さ50μm、見掛密度0.19g/cmであった。なお、無機系極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)は、接点において、接着剤が介在することなく接着していた。
【0056】
(プリプレグの調製)
上記の方法で作製した基材を用いて、実施例1と同様の方法でプリプレグ(樹脂量:50重量%)を調製した。
【0057】
(回路基板の作製)
前記の方法で調製したプリプレグから、実施例1と同様の方法で回路基板を作製した。
【0058】
(実施例4)
(基材の作製)
実施例2と同様にして調整したゾル溶液に、ブタノールを添加して、粘度を約1.5ポイズとしたゾル溶液を使用したこと、1つのノズルあたりにおけるゾル溶液の供給量を0.6cc/時間としたこと、及びノズルへの印加電圧を20kVとしたこと以外は、実施例1と全く同様にして、平均繊維径が0.15μm(いずれの点における繊維径も約0.15μm)の無機極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)のみからなる不織布構造の基材を製造した。得られた基材の物性は、目付9.7g/m、厚さ50μm、見掛密度0.19g/cmであった。なお、無機系極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)は、接点において、接着剤が介在することなく接着していた。
【0059】
(プリプレグの調製)
上記の方法で作製した基材を用いて、実施例1と同様の方法でプリプレグ(樹脂量:50重量%)を調製した。
【0060】
(回路基板の作製)
前記の方法で調製したプリプレグから、実施例1と同様の方法で回路基板を作製した。
【0061】
(比較例1)
(基材の作製)
実施例1と同様にして調整したゾル溶液の粘度を約40ポイズとしたゾル溶液を使用したこと、1つのノズルあたりにおけるゾル溶液の供給量を1.5cc/時間としたこと以外は、実施例1と全く同様にして、平均繊維径が3μm(いずれの点における繊維径も約3μm)の無機極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)のみからなる不織布構造の基材を製造した。得られた基材の物性は、目付9.7g/m、厚さ50μm、見掛密度0.18g/cmであった。なお、無機系極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)は、接点において、接着剤が介在することなく接着していた。
【0062】
(プリプレグの調製)
上記の方法で作製した基材を用いて、実施例1と同様の方法でプリプレグ(樹脂量:50重量%)を調製した。
【0063】
(回路基板の作製)
前記の方法で調製したプリプレグから、実施例1と同様の方法で回路基板を作製した。
【0064】
(比較例2)
(基材)
平均繊維径5μmのEガラスフィラメントを用い、平織りした後、常法でヒートクリーニング及びシランカップリング剤処理されたガラスクロス(目付46g/m、厚さ60μm、見掛密度0.77g/cm)を基材として用意した。
【0065】
(プリプレグの調製)
上記の基材を用いて、実施例1と同様の方法でプリプレグ(樹脂量:50重量%)を調製した。
【0066】
(回路基板の作製)
前記の方法で調製したプリプレグから、実施例1と同様の方法で回路基板を作製した。
【0067】
(比較例3)
(基材の作製)
平均繊維径5μm、繊維長13mmのEガラスチョップを用い、湿式法によりウェブ形成されたシートに、アクリルバインダーをスプレー法により添加した後、オーブンで乾燥し、架橋させて、ガラス不織布(目付10g/m、厚さ90μm、見掛密度0.11g/cm、バインダー比率15重量%)を製造し、このガラス不織布を基材とした。
【0068】
(プリプレグの調製)
上記の基材を用いて、実施例1と同様の方法でプリプレグ(樹脂量:50重量%)を調製した。
【0069】
(回路基板の作製)
前記の方法で調製したプリプレグから、実施例1と同様の方法で回路基板を作製した。
【0070】
(回路基板の評価)
1)レーザー加工性
各回路基板表面の銅箔をエッチングで除去した後、炭酸ガスレーザー加工機を用いて、出力35mJ/パルスの加工条件で、100μmのレーザー孔を加工した。加工後、孔を光学顕微鏡で観察し、孔壁形状及び繊維毛羽飛び出しの有無を評価した。孔壁形状については、凹凸が殆ど無い場合を○、凹凸が少しある場合を△、凹凸が大きい場合を×とした。繊維毛羽飛び出しについては、毛羽が無い場合を○、毛羽が少しある場合を△、毛羽が多い場合を×とした。
【0071】
2)煮沸後のハンダ耐熱性
各回路基板を水中で3時間煮沸処理した後、温度260℃で30秒間ハンダ浴に浸漬し、回路基板に異常がない場合を○、ふくれやそりなどが発生した場合を×とした。
【0072】
3)熱膨張率
各回路基板の熱膨張率を、TMA法にて、昇温速度10℃/分で測定した。
【0073】
4)銅箔ピール強度
各回路基板の銅箔ピール強度を、JIS C−6481の方法により測定した。
【0074】
5)プレッシャークッカー処理(PCT)後の絶縁抵抗
各回路基板に、端子間(ライン幅50μm、ライン間スペース50μm)の櫛形パターンを作製したものを、温度121℃、圧力203kPaで、0時間、100時間、及び200時間処理した。その後、温度25℃、湿度60%RHにて2時間放置した後、500Vの直流電圧を60秒間印加した後に、端子間の絶縁抵抗値を測定した。
【0075】
6)誘電特性
各回路基板の誘電率と誘電正接を、JIS C−6481の方法により測定した。
【0076】
これらの結果は表1に示す通りであった。
【0077】
【表1】
Figure 0003917853
【0078】
この表1のレーザー加工性の結果から明らかなように、本発明の回路基板は基材の平均繊維径が2μm以下の無機系極細繊維から構成されているため、加工後の孔壁形状が良好で、繊維ケバも極めて少ないものであった。また、本発明の回路基板は基材とマトリックス樹脂との密着性に優れているため、熱膨張率が低く、プレッシャークッカー処理後の絶縁抵抗値も良好であった。更に、本発明の回路基板は基材が石英ガラス極細繊維からなる場合、誘電率及び誘電正接が低いので、高周波対応回路基板に適したものであった。これに対して、平均繊維径が3〜5μmの無機系繊維から構成された基材を使用した回路基板(比較例1〜3)は、レーザー加工性に劣るため孔壁形状の凹凸が大きく、繊維ケバが多いものであった。また、接着剤により繊維交点を接着したガラス不織布基材を使用した回路基板(比較例3)は、プレッシャークッカー処理後に接着剤からの不純物溶出が発生し、特に絶縁抵抗値が低下した。更に、Eガラス繊維から構成された基材を使用した回路基板(比較例2、3)は誘電率及び誘電正接が高く、高周波対応回路基板には不適であった。
【0079】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明の回路基板用基材は、シリカ成分50質量%以上からなる、平均繊維径が2μm以下の無機系極細繊維を含む不織布からなり、前記無機系極細繊維はゾル溶液に電界を作用させることにより極細化して形成した無機系極細ゲル状長繊維に由来する長繊維からなるため、レーザー加工性に優れ、絶縁信頼性に優れている。また、不織布構造であることによって、表面平滑性と樹脂浸透性に優れている。
【0080】
請求項2に記載の本発明の回路基板用基材は、無機系極細繊維のどの点においても、繊維径が2μm以下である。
【0081】
請求項3に記載の本発明の回路基板用基材は、無機系極細繊維のみからなるため、マトリックス樹脂の回路基板用基材内部への浸透性に優れ、しかも回路基板用基材からの不純物が溶出しないので、電気絶縁性に優れる回路基板を製造することができる。
【0082】
請求項4に記載の本発明の回路基板用基材は、回路基板用基材の厚さが80μm以下であるため、回路基板の厚さを薄くすることができ、回路基板の省スペース化に優れた回路基板を製造することができる。
【0083】
請求項5に記載の本発明の回路基板は、上記の回路基板用基材を使用しているため、レーザー加工性に優れ、絶縁信頼性に優れている。

Claims (5)

  1. シリカ成分50質量%以上からなる、平均繊維径が2μm以下の無機系極細繊維を含む不織布からなり、前記無機系極細繊維はゾル溶液に電界を作用させることにより極細化して形成した無機系極細ゲル状長繊維に由来する長繊維からなる回路基板用基材。
  2. 無機系極細繊維のどの点においても、繊維径が2μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の回路基板用基材。
  3. 不織布が実質的に無機系極細繊維のみからなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の回路基板用基材。
  4. 回路基板用基材の厚さが80μm以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の回路基板用基材。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の回路基板用基材を用いた回路基板。
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