JP5256819B2 - 複合樹脂成形体、積層体及び多層回路基板 - Google Patents

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本発明は、複合樹脂成形体、並びにこれを用いて得られる硬化物、積層体及び多層回路基板に関する。更に詳しくは、高密度の配線パターンの形成が可能でレーザ加工形状が良好な多層配線板を得るのに好適で、低線膨張、難燃性及び絶縁層の平坦性に優れ、かつ、焼却時に有害物質をほとんど発生しない電気絶縁層用の複合樹脂成形体に関する。
電子機器の小型化、多機能化、高速通信化等に伴い、電子機器に用いられる回路基板には、より高密度化が要求され、そのため回路基板の多層化が図られている。多層回路基板は、通常、電気絶縁層と、その表面に形成された導体層とからなる内層基板の上に、電気絶縁層を積層・形成し、この電気絶縁層にレーザ加工により層間接続用のビアホールを形成し、次いでこの上に導体層を形成することによって得られる。電気絶縁層と導体層とは、必要に応じて、数段積層することもできる。このような多層回路基板の導体層が高密度のパターンである場合、往々にして導体層や基板が発熱することにより、電子機器に火災が発生したり、導体層と電気絶縁層との線膨張差による回路の断線が発生するという問題が起きる。そのため電気絶縁層の難燃性向上や低線膨張化、及び層間の接続信頼性が求められている。
また、使用済みの多層回路基板は焼却されることが多いが、従来、電気絶縁層にはハロゲン系難燃剤が配合されているため(特許文献1)、焼却時にハロゲン系有害物質が発生するという問題があった。
さらに、難燃剤を配合した電気絶縁層は、強度が不十分で衝撃や熱履歴を受けることにより、クラックの発生、線膨張の増加、電気特性の低下が発生する場合があった。電気絶縁層の高強度化、及び低線膨張化とするためにガラスクロスで補強することが行われているが、この方法では電気特性がさらに低下し、また、難燃剤が電気絶縁層全体に均一に行き渡らずに難燃性が不十分となる場合があった。
一方、電気絶縁層に用いられる多層配線板用接着シートとして、ガラスクロスによる補強の代わりに、ポリエステルからなる不織布に熱硬化型樹脂組成物を含浸、乾燥させ半硬化状態の複合樹脂成形体が提案されている(特許文献2)。
特開平2−255848号公報 国際公開WO2007−023944号公報
近年、多層回路基板を構成する層の厚みを抑え、高密度化を測ることが検討されている。
特許文献2において具体的に用いられた不織布と同じ繊維径で、特許文献2において具体的に用いられたものより薄い不織布を用いた場合に、層間接続用のビアホールが均一な大きさで加工されないことが分かった。
本発明の目的は、微細な配線パターンを形成することが可能でレーザ加工形状が良好な多層回路基板、およびこれを得るのに好適で、低線膨張、難燃性及び絶縁層の平坦性に優れ、かつ、焼却時に有害物質が発生しにくい複合樹脂成形体を提供することにある。
本発明者は上記問題を解決するべく鋭意検討した結果、繊維径が所定範囲の繊維からなる不織布を用いるとレーザ加工形状が安定することを見いだし見出し、この知見に基づき本発明を完成するに到った。
かくして本発明によれば、以下の(1)〜(7)が提供される。
(1)重量平均分子量が10,000〜250,000で、カルボキシル基又は酸無水物基を有し、酸価が5〜200mgKOH/gである重合体(A)、および硬化剤(B)を含有する硬化性樹脂組成物を、繊維径が0.05〜2μmであり、厚みが0.5〜10μmである繊維状基材に含浸してなる複合樹脂成形体。
(2)重合体(A)が脂環式オレフィン重合体である前記(1)記載の複合樹脂成形体。
(3)重量平均分子量が10,000〜250,000で、カルボキシル基又は酸無水物基を有し、酸価が5〜200mgKOH/gである重合体(A)、硬化剤(B)、および有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物を、繊維径が0.05〜2μmであり、厚みが0.5〜10μmである繊維状基材に含浸し、乾燥することを特徴とする複合樹脂成形体の製造方法。
(4)前記(1)又は(2)記載の複合樹脂成形体を硬化してなる硬化物。
(5)表面に導体層を有する基板と前記(4)記載の硬化物からなる電気絶縁層とを積層してなる積層体。
(6)表面に導体層を有する基板上に、前記(1)又は(2)記載の複合樹脂成形体を加熱圧着し、硬化して電気絶縁層を形成することを特徴とする前記(4)記載の積層体の製造方法。
(7)前記(4)記載の積層体の、電気絶縁層上にさらに導体層を形成してなる多層回路基板。
1)複合樹脂成形体
本発明の複合樹脂成形体は、重量平均分子量が10,000〜250,000で、カルボキシル基又は酸無水物基(以下、この両者をまとめて「カルボキシル基等」と記すことがある。)を有し、酸価が5〜200mgKOH/gである重合体(A)、および硬化剤(B)を含有する硬化性樹脂組成物を、繊維径が0.05〜2μmである繊維状基材に含浸してなる。
本発明で用いる重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常10,000〜250,000、好ましくは15,000〜150,000であり、より好ましくは20,000〜100,000である。重合体(A)のMwが小さすぎると、得られる電気絶縁層の強度が不十分になり、また、電気絶縁性が低下するおそれがある。一方、Mwが大きすぎると、重合体(A)と硬化剤(B)との相溶性が低下して電気絶縁層の表面粗度が大きくなり、配線パターンの精度が低下する可能性がある。
重合体(A)のカルボキシル基等の含有量は、酸価が30〜100mgKOH/gとなる範囲が好ましく、40〜80mgKOH/gとなる範囲がより好ましい。酸価が小さすぎる(即ち、カルボキシル基等が少なすぎる)とめっき密着性や耐熱性が低下するおそれがあり、酸価が大きすぎると電気絶縁性が低下する可能性がある。
重合体(A)は上記のMw及びカルボキシル基等を有し、電気絶縁性のものであれば制限されない。重合体(A)の電気絶縁性は、そのASTM D257による体積固有抵抗が、1×1012Ω・cm以上であることが好ましく、1×1013Ω・cm以上であることがより好ましく、1×1014Ω・cm以上であることが特に好ましい。
重合体(A)の骨格をなす重合体(即ち、カルボキシル基等を水素で置換した構造の重合体、ないし、カルボキシル基等を除去した構造の重合体)は、特に限定されないが、その具体例としては、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、およびポリイミド樹脂などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上併せて使用できる。これらの中でも、誘電率や誘電正接などの電気特性が優れているので脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル
重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体及びポリイミド樹脂が好ましく、脂環式オレフィン重合体及び芳香族ポリエーテル重合体がより好ましく、脂環式オレフィン重合体が特に好ましい。
本発明において、脂環式オレフィン重合体は、脂環式オレフィンの単独重合体及び共重合体並びにこれらの誘導体(水素添加物等)のほか、これらと同等の構造を有する重合体の総称である。また、重合の様式は、付加重合であっても開環重合であってもよい。
脂環式オレフィン重合体の具体例としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、単環シクロアルケン付加重合体、脂環式共役ジエン重合体、ビニル系脂環式炭化水素重合体及びその水素添加物を挙げることができる。更に、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物等の、重合後の水素化によって脂環構造が形成されて、脂環式オレフィン重合体と同等の構造を有するに至った重合体もその一例である。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物が好ましく、特にノルボルネン系単量体の開環重合体の水素添加物が好ましい。
重合体(A)が脂環式オレフィン重合体の場合、カルボキシル基等は、脂環構造を形成する炭素原子に直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基など他の二価の基を介して結合していてもよい。
本発明で使用する重合体(A)の酸価を上記範囲とする方法は、制限されない。例えば
、(i)カルボキシル基等を含有する脂環式オレフィン単量体を、単独重合し、又は、これと共重合可能な単量体(エチレン、1−ヘキセン、1,4−ヘキサジエン等)と共重合する方法;(ii)カルボキシル基等を含有しない脂環式オレフィン重合体に、カルボキシル基等を有する炭素−炭素不飽和結合含有化合物を、例えばラジカル開始剤存在下で、グラフト結合させることにより、カルボキシル基等を導入する方法;(iii)カルボン酸エステル基等の、カルボキシル基の前駆体となる基を有するノルボルネン系単量体を重合した後、加水分解等によって前駆体基をカルボキシル基へ変換させる方法;等がある。
(i)の方法に用いられるカルボキシル基含有脂環式オレフィン単量体としては、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−カルボキシメチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−エキソ−9−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
また、(i)の方法に用いられる酸無水物基含有脂環式オレフィン単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8,9−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン−11,12−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
(ii)の方法に用いられる、カルボキシル基等を有さない脂環式オレフィン重合体を得るための単量体の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.02,8]テトラデカ−3,5,7,12,11−テトラエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
また、(ii)の方法に用いられる、カルボキシル基等を有する炭素−炭素不飽和結合含有化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、メチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。
(iii)の方法に用いられる、カルボキシル基の前駆体となる基を含有するノルボルネン系単量体としては、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどが挙げられる。
重合体(A)は、カルボキシル基等以外の官能基(以下、「他の官能基」ということがある。)を有していてもよい。他の官能基としては、アルコキシカルボニル基、シアノ基、水酸基、エポキシ基、アルコキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基等が挙げられる。これら他の官能基の量は、カルボキシル基等に対して30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
重合体(A)のMwを上記範囲に調整する方法は常法に従えばよく、例えば、チタン系又はタングステン系触媒を用いて脂環式オレフィンの開環重合を行うに際して、ビニル化合物、ジエン化合物等の分子量調整剤を、単量体全量に対して0.1〜10モル%程度添加する方法が挙げられる。かかる分子量調整剤の具体例は、ビニル化合物としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン化合物;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル化合物;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート、アクリルアミドなどのその他のビニル化合物;などが挙げられる。また、ジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン化合物;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン化合物;などが挙げられる。
重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、120〜300℃であることが好ましい。Tgが低すぎると、得られる電気絶縁層が高温下において充分な電気絶縁性を維持できず、Tgが高すぎると多層配線板が強い衝撃を受けた際にクラックを生じて導体層が破損する可能性がある。
本発明で用いる硬化剤(B)は、加熱により重合体(A)を架橋し得るものであれば限定されない。なかでも、重合体(A)のカルボキシル基等と反応して架橋構造を形成し得る化合物が好ましい。かかる架橋剤としては、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、および有機金属ハロゲン化物などが挙げられる。また、過酸化物を用いてもよい。
多価エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、含リンビスフェノールF型エポキシ化合物などのグリシジルエーテル型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物などの多価エポキシ化合物;などの分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上併せて使用することができる。
多価イソシアナート化合物としては、炭素数6〜24の、ジイソシアナート類及びトリイソシアナート類が好ましい。ジイソシアナート類の例としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナートなどが挙げられる。トリイソシアナート類の例としては、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナートなどが挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上併せて使用することができる。
多価アミン化合物としては、2個以上のアミノ基を有する炭素数4〜30の脂肪族多価アミン化合物、芳香族多価アミン化合物などが挙げられ、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。脂肪族多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミン化合物としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上併せて使用することができる。
多価ヒドラジド化合物の例としては、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジドなどが挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上併せて使用することができる。
アジリジン化合物としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)アジリジニル]ホスフィノキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)アジリジニル]トリホスファトリアジンなどが挙げられ、これらを1種、又は2種以上併せて使用することができる。
これらの硬化剤の中でも、重合体(A)との反応性が緩やかであり、得られる複合樹脂成形体の溶融、加工、積層が容易なので、多価エポキシ化合物が好ましく、ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテルなどのビスフェノールA型エポキシ化合物が好ましい。硬化剤(B)の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜50重量部の範囲である。
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含有することが好ましい。硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含有すると、耐熱性の高い硬化物を容易に得ることができる。例えば、硬化剤(B)として多価エポキシ化合物を用いる場合には、第3級アミン化合物や三弗化ホウ素錯化合物などの硬化促進剤が好適に用いられる。中でも、第3級アミン化合物を使用すると、微細配線に対する積層性、絶縁抵抗性、耐熱性、耐薬品性等が向上するので好ましい。
第3級アミン化合物の具体例としては、ベンジルメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルホルムアミド等の鎖状3級アミン化合物;ピラゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、インダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、イミダゾール類、トリアゾール類等の含窒素ヘテロ環化合物;等が挙げられる。これらの中で、イミダゾール類、特に置換基を有する置換イミダゾール化合物が好ましい。
置換イミダゾール化合物の具体例としては、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等のアリール基やアラルキル基等の環構造を有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物;等が挙げられる。これらの中でも、環構造を有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物が好ましく、特に1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
これらの硬化促進剤は、それぞれ単独で又は二種以上を組み合わせて用いられる。硬化促進剤の配合量は使用目的に応じて適宜設定されるが、重合体(A)100重量部に対して、通常0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
繊維状基材は、繊維を成形したものであり、織布や不織布が挙げられ、特に不織布が好ましい。
繊維状基材を構成する繊維は、熱可塑性樹脂であり、融点が160℃以上のものが好ましい。好適な熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられ、特に、ポリエステル、ポリイミド、及びポリアラミドが好ましい。
繊維を構成する熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、通常1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000である。
ポリエステルの中では、液晶性ポリエステル、や液晶性ポリエステルアミドのような液晶性のものが好ましい。
液晶性のポリエステルとは、エステル結合を有し液晶状態を示すポリマーである。このような液晶ポリマーとしては、以下に例示する(1)〜(4)の化合物およびそれらの誘導体を適宜組み合わせて共重合させることより得られる公知の液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。
(1)芳香族または脂肪族のジヒドロキシ化合物
(2)芳香族または脂肪族のジカルボン酸
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシルアミンまたは芳香族アミノカルボン酸
なかでも、主鎖中に脂肪族炭化水素を実質的に有しない全芳香族ポリエステルが好ましい。全芳香族ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸との共重合体、およびp−ヒドロキシ安息香酸とテレフタル酸と4,4’−ジヒドロキシビフェニルとの共重合体などの、芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸及び/又は芳香族ヒドロキシカルボン酸とを組み合わせて反応させた共重合体が挙げられる。
ポリイミドは、カルボン酸二無水物及びジアミンがともに芳香環を有するものから合成されるものであり、この場合は機械強度や耐熱性に優れている。
具体的なポリイミド樹脂をカルボン酸二無水物とジアミンの組み合わせで例示すると、例えばピロメリット酸二無水物(PMDA)とオキシジアニリン(ODA)との重縮合体;ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)との重縮合体;ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とベンゾフェノンジアミン(BDA)との重縮合体などが挙げられるが耐熱性、機械強度などの点からBTDAとPPDとの重縮合体が好ましい。
ポリアラミドは、全芳香族ポリアミド樹脂であり、特に限定されないが、具体的な全芳香族ポリアミド樹脂を例示すると、例えばパラフェニレンジアミドとテレフタル酸クロリドを共縮重合したパラ系アラミド樹脂、メタフェニレンジアミドとイソフタル酸クロリドを共縮重合したメタ系アラミド樹脂が挙げられる。耐熱性、機械強度などの点からパラ系アラミド樹脂が好ましい。
繊維状基材の繊維径は、繊維状基材の繊維の太さであり、通常0.05〜2μm、好ましくは0.1〜1.5μm、より好ましくは0.2〜1μmである。繊維径がこの範囲にあると薄く且つ平坦性度の高い繊維状基材を形成することができる。繊維径が0.05μm未満であると繊維基材自体の強度が損なわれ、2μmを超えると繊維基材自体の平坦性が悪化してしまう。
本発明における繊維径は、電子顕微鏡やμスコープで観察される繊維断面の50点平均値で求めた値である。
本発明に好適に用いられる繊維状基材である不織布の中でも、上述した高分子をエレクトロスピニング法により作製した不織布が好ましい。
エレクトロスピニング法とは、曳糸性のある紡糸溶液を電極間で形成された正電場中に供給し、溶液を電極に向けて繊維化させ、形成させる繊維状物質を捕集基板(コレクター)上に積層させることによって繊維を得る方法であり、通常の紡糸条件としては紡糸溶液を正電場中に置き、各々の紡糸溶液に関して適正な電圧、紡糸距離などを選択することができるが、特に限定するものではないが、電圧は5.0〜50kV、紡糸距離は5.0〜50cm、単位距離あたりの電圧に換算すると、0.5〜5.0kv/cmであるのが好ましい。
紡糸溶液供給部はノズルや口金から押し出す方法や、紡糸溶液中に浸した円盤やドラムに、必要量となるように紡糸溶液を付着させ、連続回転させることによる供給方法が挙げられる。ノズルや口金から供給する場合、吐出部の内径は不織布の繊維径と相関がないため、限定はない。
紡糸溶液に用いる溶液は、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリイミド、ポリアラミドからなる樹脂をそれぞれ溶解することができる溶液であれば特に限定されない。紡糸溶液におけるポリエステル、ポリエステルアミド、ポリイミド、ポリアラミドからなる樹脂の濃度は、通常0.5〜50重量%、好ましくは1.0〜40重量%、より好ましくは5.0〜30重量%である。0.5重量%未満の場合、繊維化が困難となり、また、50重量%を超える場合、繊維径が大きくなりすぎてしまい、不織布の粗密が大きくなる。
本発明に用いられる繊維状基材の厚みとしては、通常0.5〜50μm、好ましくは2〜35μm、より好ましくは5〜20μmである。また、目付け量としては、通常0.1〜50g/m、好ましくは0.5〜35g/m、より好ましくは1〜25g/mである。目付け量とは、繊維状基材の単位面積当たりの重量である。
本発明の複合樹脂成形体は、上記の硬化性樹脂組成物を繊維状基材に含浸してなるが、該複合樹脂成形体は、未硬化であっても半硬化であってもよい。ここで未硬化とは、重合体(A)を溶解可能な溶剤に、実質的に重合体(A)全部が溶解する状態である。半硬化とは、加熱すれば更に硬化しうる程度に途中まで硬化された状態であり、好ましくは、重合体(A)を溶解可能な溶剤に重合体(A)の一部(具体的には7重量%以上)が溶解する状態であるか、溶剤中に複合樹脂成形体を24時間浸漬した時の膨潤率が、浸漬前の体積の200%以上である状態をいう。
本発明の複合樹脂成形体中の、繊維状基材の量は、通常10〜95重量%、好ましくは20〜85重量%である。繊維状基材の量は、例えば重合体(A)が未硬化の場合には、重合体(A)を溶解可能で繊維状基材を溶解しない溶剤に複合樹脂成形体を溶解させて得られる不溶分から測定できる。繊維状基材の量が小さすぎると難燃性が低下する場合があり、また大きすぎると積層時の厚みの制御が困難になる場合がある。
硬化性樹脂組成物を繊維状基材に含浸させる方法は特に限定されないが、硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させたワニスとし、これを繊維状基材に含浸させ、乾燥することが好ましい。硬化性樹脂組成物をワニスとして用いる場合は、上記重合体(A)は、該有機溶剤に常温で可溶であることが好ましい。
用いられる有機溶剤は、沸点が好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃のものである。沸点がこの範囲であると、後に加熱して揮散させ、乾燥するのに好適である。かかる有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。
ワニスの調製法に格別な制限はなく、例えば、重合体(A)、硬化剤(B)、有機溶剤および必要に応じ配合される任意成分を常法に従って混合すればよい。混合に用いられる混合機としては、マグネチックスターラー、高速ホモジナイザー、ディスパー、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロールなどを挙げることができる。混合温度は、硬化剤(B)による硬化反応を起こさない範囲で、かつ有機溶剤の沸点以下が好ましい。有機溶剤の使用量は、所望の複合樹脂成形体の厚みや表面平坦度に応じて適宜選択されるが、ワニスの固形分濃度が、通常5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%、より好ましくは20〜60重量%になる範囲である。
ワニスを繊維状基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、その例としては、デイップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート等により塗布する方法を挙げることができる。
塗布の際には、予め繊維状基材を支持体上に設置しておき、ここに上記ワニスを塗布してもよい。支持体としては、樹脂フィルムや金属箔等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性等の観点からポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。
金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔等が挙げられる。中でも、導電性が良好である点から、銅箔、特に電解銅箔や圧延銅箔が好適である。
支持体の厚みに制限はないが、作業性等の観点から、通常1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜80μmである。支持体の表面平均粗さRaは、通常300nm以下で、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。支持体の表面平均粗さRaが大きすぎると、得られる複合成形体を硬化して形成される電気絶縁層の表面平均粗さRaが大きくなり、導体層として微細な配線パターンの形成が困難になる。
前記ワニスを塗布した繊維状基材を乾燥して本発明の複合樹脂成形体を得るための乾燥条件は、有機溶剤の種類により適宜選択される。具体的には、乾燥温度は通常20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。乾燥温度が高すぎると、硬化反応が進行して、得られる複合樹脂成形体が未硬化または半硬化の状態とならなくなるおそれがある。また、乾燥時間は、通常30秒〜1時間、好ましくは1分〜30分である。
本発明の複合樹脂成形体は高い難燃性を有しているが、難燃性を向上させる目的でさらに難燃剤を含有していてもよい。難燃剤としては、焼却時に有害物質の発生の少ないハロゲン不含難燃剤が好ましい。ハロゲン不含難燃剤の具体例としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダなどのアンチモン化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、スルファミン酸グアニジン、ジルコニウム化合物、モリブデン化合物、硼酸アルミニウム、すず化合物などの無機難燃剤;フェロセンなどの有機金属化合物;リン酸エステル、芳香族縮合りん酸エステル、フォスファゼン化合物、りん含有エポキシ化合物、反応型りん化合物、ポリりん酸アンモニウム、メラミンりん酸塩、ポリりん酸メラミン塩、ポリりん酸メラム塩、ポリりん酸メレム塩、ポリりん酸メラミン・メラム・メレム複塩、赤燐、有機金属りん化合物などのりん系難燃剤;などが挙げられる。これらのうち、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、フォスファゼン化合物、メラミンりん酸塩、ポリりん酸メラミン塩、ポリりん酸メラム塩、ポリりん酸メレム塩が好ましく、特に耐熱性、耐湿性および難燃性の向上に優れる点から水酸化マグネシウム、ポリりん酸メラミン・メラム・メレム複塩、フォスファゼン化合物が好ましい。
本発明の複合樹脂成形体は、さらにその用途に応じて所望の性能を付与する目的で本来の性質を損なわない範囲の量の充填剤や添加剤を含有していてもよい。充填剤としてはカーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、多孔質シリカ、中空シリカ、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、タルク、雲母、有機化ベントナイト、ガラスビーズ、ガラス中空球等をあげることができる。添加剤としては、軟質重合体、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などが挙げられる。
上記の難燃剤、充填剤および添加剤などの任意成分を配合する方法は特に限定されないが、通常は前記硬化性樹脂組成物に含有させて用いられ、好ましくは前記ワニスの調製において重合体(A)、硬化剤(B)および有機溶剤と共に混合して用いられる。
本発明の複合樹脂成形体の形状は、特に限定されないが、フィルム又はシートであることが好ましい。フィルム又はシートの厚みは、通常1〜100μm、好ましくは3〜80μm、より好ましくは5〜50μmである。
2)硬化物
本発明の硬化物は、前記本発明の複合樹脂成形体を硬化してなる。複合樹脂成形体の硬化は、通常、複合樹脂成形体を加熱することにより行う。硬化条件は硬化剤の種類に応じて適宜選択される。硬化温度は、通常30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃である。硬化時間は、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば電気オーブンを用いて行えばよい。
なお、硬化に先立って、複合樹脂成形体に金属配位能を有する化合物を接触させ、次いで、水等の、これらの化合物の良溶剤で洗浄する工程を有することが好ましい。かかる金属配位能を有する化合物としては、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;ピラゾール類;トリアゾール類;トリアジン類;等が挙げられる。この工程により、複合樹脂成形体の表面の平滑化を図り、この上に後工程で被覆される金属薄膜との密着性を向上させることができる。
3)積層体
本発明の積層体は、表面に導体層を有する基板と前記本発明の硬化物からなる電気絶縁層とを積層してなる。表面に導体層を有する基板は、電気絶縁性基板の表面に導体層を有するものである。電気絶縁性基板は、公知の電気絶縁材料(例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニルエーテル、ガラス等)を含有する硬化性樹脂組成物を硬化して形成されたものである。導体層は、特に限定されないが、通常、導電性金属等の導電体により形成された配線を含む層であって、更に各種の回路を含んでいてもよい。配線や回路の構成、厚み等は、特に限定されない。表面に導体層を有する基板の具体例としては、プリント配線基板、シリコンウェーハ基板等を挙げることができる。表面に導体層を有する基板の厚みは、通常10μm〜10mm、好ましくは20μm〜5mm、より好ましくは30μm〜2mmである。
本発明に用いる表面に導体層を有する基板は、電気絶縁層との密着性を向上させるために、導体層表面に前処理が施されていることが好ましい。前処理の方法としては、公知の技術が特に限定されず使用できる。例えば、導体層が銅からなるものであれば、強アルカリ酸化性溶液を導体層表面に接触させて、導体表面に酸化銅の層を形成して粗化する酸化処理方法、導体層表面を先の方法で酸化した後に水素化ホウ素ナトリウム、ホルマリンなどで還元する方法、導体層にめっきを析出させて粗化する方法、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、および導体層にチオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法等が挙げられる。これらの内、微細な配線パターンの形状維持の容易性の観点から、導体層に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、及び、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法が好ましい。
本発明の積層体は、表面に導体層を有する基板上に、前記本発明の複合樹脂成形体を加熱圧着し、硬化して電気絶縁層を形成して製造できる。加熱圧着の方法の具体例としては、支持体付きの複合樹脂成形体を、前記基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)して、導体層上に複合樹脂成形体層を形成する方法が挙げられる。加熱加圧することにより、前記基板表面の導体層と複合樹脂成形体層との界面に空隙が実質的に存在しないように結合させることができる。また、前記支持体として金属箔を用いた場合は、複合樹脂成形体層と金属箔との密着性も向上するので、該金属箔をそのまま後述の多層回路基板の導体層として用いることができる。
加熱圧着操作の温度は、通常30〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、加える圧力は、通常10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましい。加熱圧着を行う雰囲気の圧力は、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paである。
加熱圧着される複合樹脂成形体の硬化を行い、電気絶縁層を形成して本発明の積層体が製造される。硬化は、通常、導体層上に複合樹脂成形体が形成された基板全体を加熱することにより行う。硬化は、前記加熱圧着操作と同時に行うことができる。また、先ず加熱圧着操作を硬化の起こらない条件、すなわち比較的低温、短時間で行った後、硬化を行ってもよい。
また、電気絶縁層の平坦性を向上させる目的や、電気絶縁層の厚みを増す目的で、前記基板の導体層上に複合樹脂成形体を2以上接して貼り合わせて積層してもよい。
4)多層回路基板
本発明の多層回路基板は、前記本発明の積層体の、電気絶縁層上に導体層を形成してなる。前記積層体の製造において、複合樹脂成形体の支持体として樹脂フィルムを用いた場合は、これを剥離した後に、電気絶縁層上にめっき等により導体層を形成して本発明の多層回路基板を製造できる。また、複合樹脂成形体の支持体として金属箔を用いた場合は、公知のエッチング法により該金属箔をパターン状にエッチングして導体層を形成することができる。
以下に、電気絶縁層上にめっき等により導体層を形成して本発明の多層回路基板を製造する方法について具体的に説明する。多層回路基板の製造に際し、通常、導体層を形成する前に、多層回路基板中の各導体層を連結するために、積層体を貫通するビアホールを設ける。このビアホールは、フォトリソグラフィ法のような化学的処理により、又は、ドリル、レーザ、プラズマエッチング等の物理的処理等により形成することができる。これらの方法の中でもレーザによる方法(炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UV−YAGレーザ等)によれば、より微細なビアホールを電気絶縁層の特性を低下させずに形成できる。レーザによる方法において、炭酸ガスレーザ、UV−YAGレーザが好ましい。
次に、電気絶縁層を、導体層との接着性を高めるために表面を酸化して粗化し、所望の表面平均粗さに調整する。本発明において電気絶縁層の表面平均粗さRaは通常0.05μm以上0.3μm未満、好ましくは0.06μm以上0.2μm以下であり、かつ表面十点平均粗さRzjisは通常0.3μm以上4μm未満、好ましくは0.5μm以上2μm以下である。ここで、RaはJIS B 0601−2001に示される中心線平均粗さであり、表面十点平均粗さRzjisは、JIS B 0601−2001付属書1に示される十点平均粗さである。
電気絶縁層表面を酸化するには、電気絶縁層表面と酸化性化合物とを接触させればよい。酸化性化合物としては、無機過酸化物や有機過酸化物;気体;など酸化能を有する公知の化合物が挙げられる。特に電気絶縁層の表面平均粗さの制御の容易さから、無機過酸化物や有機過酸化物を用いるのが好ましい。無機過酸化物としては過マンガン酸塩、無水クロム酸、重クロム酸塩、クロム酸塩、過硫酸塩、活性二酸化マンガン、四酸化オスミウム、過酸化水素、過よう素酸塩、オゾンなどが挙げられ、有機過酸化物としてはジクミルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、m−クロロ過安息香酸、過酢酸などが挙げられる。
無機過酸化物や有機過酸化物を用いて電気絶縁層表面を酸化する方法に格別な制限はなく、例えば、上記酸化性化合物を溶解可能な溶媒に溶解して調製した酸化性化合物溶液を電気絶縁層表面に接触させる方法が挙げられる。無機過酸化物や有機過酸化物又はこれらの溶液を電気絶縁層表面に接触させる方法に格別な制限はなく、例えば、電気絶縁層を酸化性化合物の溶液に浸漬するディップ法、酸化性化合物溶液を表面張力の利用で電気絶縁層に載せる液盛り法、酸化性化合物の溶液を基材に噴霧するスプレー法、などいかなる方法であっても良い。
これらの無機過酸化物や有機過酸化物を電気絶縁層表面に接触させる温度や時間は、過酸化物の濃度や種類、接触方法などを考慮して、任意に設定すれば良く、温度は通常10〜250℃、好ましくは20〜180℃で、時間は通常0.5〜60分、好ましくは1分〜30分である。
気体を用いて酸化処理する方法として、逆スパッタリングやコロナ放電など気体をラジカルやイオン化させるプラズマ処理が挙げられる。気体としては大気、酸素、窒素、アルゴン、水、二硫化炭素、四塩化炭素などが例示される。酸化処理用の気体が処理温度では液体であるが減圧下で気体になる場合は、減圧で酸化処理をする。酸化処理用の気体が処理温度、圧力において気体の場合は、ラジカル化やイオン化が可能な圧力に加圧した後、酸化処理をする。プラズマを第二の電気絶縁層表面に接触させる温度や時間は、ガスの種類や流量などを考慮して設定すれば良く、温度は通常10〜250℃、好ましくは20〜180℃で、時間は通常0.5〜60分、好ましくは1分〜30分である。
酸化性化合物の溶液で電気絶縁層表面を酸化する場合、第二の電気絶縁層を構成する硬化性樹脂組成物中に、酸化性化合物の溶液に可溶な重合体や無機充填剤を含ませておくと、重合体(A)と微細な海島構造を形成した上で選択的に溶解するので、上述した表面平均粗さの範囲に制御しやすいので好ましい。
酸化性化合物の溶液に可溶な重合体の例としては、液状エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、天然ゴム、スチレン系ゴム、イソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴム、ニトリル系ゴム、エチレン系ゴム、プロピレン系ゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ノルボルネンゴム、エーテル系ゴムなどが挙げられる。酸化性化合物の溶液に可溶な重合体の配合割合に格別の制限はなく、重合体(A)100重量部に対して、通常1〜30重量部、好ましくは3〜25重量部、より好ましくは5〜20重量部である。
酸化性化合物の溶液に可溶な無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどを挙げることができる。これらの中でも、炭酸カルシウム及びシリカが、微細な粒子が得やすく、かつ、充填剤可溶性水溶液で溶出されやすく、微細な粗面形状を得るのに好適である。また、これらの無機充填剤は、シランカップリング剤処理やステアリン酸などの有機酸処理をしたものであってもよい。
また添加される無機充填剤は、電気絶縁層の誘電特性を低下させない非導電性のものであることが好ましい。また、その無機充填剤の形状は、特に限定されず、球状、繊維状、板状などであってもよいが、微細な粗面形状を得るために、微細な粉末状であることが好ましい。無機充填剤の平均粒径としては通常0.008μm以上2μm未満、好ましくは0.01μm以上1.5μm未満、特に好ましくは0.02μm以上1μm未満である。平均粒径が小さすぎると、大型基板で均一な密着性が得られないおそれがあり、逆に、大きすぎると電気絶縁層に大きな粗面が発生し、高密度の配線パターンが得られない可能性がある。酸化性化合物の溶液に可溶な無機充填剤の配合量は、必要とされる密着性の程度に応じて適宜選択されるが、重合体(A)100重量部に対して、通常1〜80重量部、好ましくは3〜60重量部、より好ましくは5〜40重量部である。
上記のような酸化性化合物の溶液に可溶な重合体や無機充填剤は、上記本発明に用いられる硬化性樹脂組成物に任意に添加される難燃助剤、耐熱安定剤、誘電特性調整剤、靭性剤の一部などとして用いることができる。
電気絶縁層の酸化処理後は、酸化性化合物を除去するため、通常、電気絶縁層表面を水で洗浄する。水だけでは洗浄しきれない物質が付着している場合、その物質を溶解可能な洗浄液で更に洗浄したり、他の化合物と接触させたりして水に可溶な物質にしてから水で洗浄することもできる。例えば、過マンガン酸カリウム水溶液や過マンガン酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を電気絶縁層と接触させた場合は、発生した二酸化マンガンの皮膜を除去する目的で、硫酸ヒドロキシアミンと硫酸との混合液などの酸性水溶液により中和還元処理する。
電気絶縁層を酸化して表面平均粗さを調整した後、めっき等により積層体の電気絶縁層表面とビアホール内壁面に導体層を形成する。導体層を形成する方法に格別制限はないが、例えば電気絶縁層上にめっき等により金属薄膜を形成し、次いで厚付けめっきにより金属層を成長させる方法が採られる。
金属薄膜の形成を無電解めっきにより行う場合、金属薄膜を電気絶縁層の表面に形成させる前に、電気絶縁層上に、銀、パラジウム、亜鉛、コバルト等の触媒核を付着させるのが一般的である。触媒核を電気絶縁層に付着させる方法は特に制限されず、例えば、銀、パラジウム、亜鉛、コバルト等の金属化合物やこれらの塩や錯体を、水又はアルコール若しくはクロロホルム等の有機溶剤に0.001〜10重量%の濃度で溶解した液(必要に応じて酸、アルカリ、錯化剤、還元剤等を含有していてもよい)に浸漬した後、金属を還元する方法等が挙げられる。
無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いればよく、めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度等は特に限定されない。例えば、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸、水素化硼素アンモニウム、ヒドラジン、ホルマリン等を還元剤とする無電解銅めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−リンめっき液;ジメチルアミンボランを還元剤とする無電解ニッケル−ホウ素めっき液;無電解パラジウムめっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解パラジウム−リンめっき液;無電解金めっき液;無電解銀めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−コバルト−リンめっき液等の無電解めっき液を用いることができる。金属薄膜を形成した後、基板表面を防錆剤と接触させて防錆処理をすることもできる。
また、金属薄膜を形成した後に、密着性向上等のため、金属薄膜を加熱することができる。加熱温度は、通常50〜350℃、好ましくは80〜250℃である。加熱は加圧条件下で実施してもよく、このときの加圧方法としては、例えば、熱プレス機、加圧加熱ロール機等の物理的加圧法が挙げられる。加える圧力は、通常0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaである。この範囲であれば、金属薄膜と電気絶縁層との高い密着性が確保できる。
こうして形成された金属薄膜上にめっき用レジストパターンを形成し、更にその上に電解めっき等の湿式めっきによりめっきを成長させ(厚付けめっき)、次いで、レジストを除去し、更にエッチングにより金属薄膜をパターン状にエッチングして導体層を形成する。従って、この方法によれば、導体層は、通常、パターン状の金属薄膜と、その上に成長させためっきとからなる。
このようにして得られた多層回路基板を新たな積層体として用いて、上述の電気絶縁層形成と導体層形成の工程を繰り返すことにより、更なる多層化を行うことができ、これにより所望の多層回路基板を得ることができる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
なお、各特性の定義及び評価方法は、以下のとおりである。
(1)繊維状基材の繊維径
走査型電子顕微鏡にて、繊維断面50箇所の直径を測定し、その平均値を求めた。
(2)繊維状基材の厚み
マイクロメーター(ミツトヨ社製「ライトマチック VL−50」、測定荷重0.01N、測定端子3mmφ)を用い、1cm感覚で50箇所を測定し、その平均値を求めた。
(3)重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
テトラヒドロフランを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置として、GPC−8220シリーズ(東ソー社製)を用いた。
標準ポリスチレンとしては、標準ポリスチレン(Mwが500、2630、10200、37900、96400、427000、1090000、5480000のものの計8点、東ソー社製)を用いた。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、測定試料をテトラヒドロフランに溶解後、カートリッジフィルター(ポリテトラフルオロエチレン製、孔径0.5μm)で濾過して調製した。
測定は、カラムに、TSKgel G4000HXL、G2000HXL、G1000HXL(東ソー社製)を3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/min、サンプル注入量20μl、カラム温度40℃の条件で行った。
(4)重合体の水素化率
水素化率は、水素化前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(5)重合体の無水マレイン酸基含有率
重合体中の総単量体単位数に対する酸無水物基のモル数の割合をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(6)重合体の酸価
カルボキシル基又は酸無水物残基を有する重合体(A)の酸価は、JIS K 0070に従って測定した。
(7)重合体のガラス移転温度(Tg)
示差走査熱量法(DSC法)により昇温速度10℃/分で測定した。
(8)重合体の体積固有抵抗
ASTM D257に基づき測定した。
(9)複合樹脂成形体の線膨張係数
複合樹脂成形体の一部を切り取り、厚み75μmの圧延銅箔の片面に積層し、支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がした後、窒素雰囲気下で、60℃、30分間加熱し、次いで170℃、60分間加熱して複合樹脂成形体を硬化させた。続いて塩化第二銅/塩酸混合溶液により圧延銅箔を全てエッチング除去処理してシート状成形体を得た。得られたシート状成形体から幅5.95mm、長さ15.4mmの試験片を切り出し、支点間距離10mm、昇温速度10℃/分の条件で、熱重量/示差熱同時測定装置(TMA/SDTA840:メトラー・トレド社製)により測定し、下記の基準で判定した。
○:線膨張係数の値が、25ppm/℃未満のもの
△:線膨張係数の値が、25ppm/℃以上40ppm/℃未満のもの
×:線膨張係数の値が、40ppm/℃以上のもの
(10)複合樹脂形成体の平坦性
上記(9)と同様にして得られた成形体から10cm角の試験片を切り出し、接触式膜厚計(ミツトヨ社製「ライトマチック VL−50」、測定荷重0.01N、測定端子3mmφ)用いて100点測定を行い、下記の基準で判定した。
○:最大膜厚−最小膜厚が1.0μm未満のもの
△:最大膜厚−最小膜厚が1.0μm以上、5.0μm未満のもの
×:最大膜厚−最小膜厚が5.0μm以上のもの
(11)パターニング性
配線幅10μm、配線間距離10μm、配線長5cmで200本の配線パターンを有する多層回路基板を形成し、200本いずれも形状に乱れのないものを○、一部分に欠損があり形状に乱れがあるが断線部分がないものを△、断線部分があるものを×として判定した。
(12)難燃性
内層基板として、実施例1で用いられるコア材(表面に銅が貼られていないもの)を用い、これと実施例および比較例で得られた支持体付きの複合樹脂成形体を用いて、実施例1と同様にして複合樹脂成形体層を有する内層基板を作成した。この複合樹脂成形体層を有する内層基板を、幅13mm、長さ100mmの短冊状に切断して試験片を作製した。この試験片を用いてUL94V垂直燃焼性試験方法に準じてブンゼンバーナーの炎を接炎させた。試験片に着火後直ちに炎を外し、試験片が燃焼している時間を計測した。試験片が消炎したら直ちに再度試験片に着火するまで接炎した。二度目の着火後も直ちに炎を外し、試験片が燃焼している時間を計測し、その結果に基づいて下記の基準で判定した。
○:一度目の燃焼時間と二度目の燃焼時間の合計が20秒以内であって、かつ燃焼域が試験片上部まで達しない。
△:一度目の燃焼時間と二度目の燃焼時間の合計が20秒を超え30秒以下であって、かつ燃焼域が試験片上部まで達しない。
×:一度目の燃焼時間と二度目の燃焼時間の合計が30秒を超える、又は燃焼域が試験片上部まで達する。
(13)レーザ加工性
内層基板として、実施例1で用いられる両面銅張り基板を用い、これと実施例及び比較例で得られた支持体付きの複合樹脂成形体を用いて、実施例1と同様にして複合樹脂成形体層を有する内層基板を作製した。この複合樹脂成形体層をUV−YAGレーザ第3高調波を用いて直径30μmの層間接続のビアホールを100穴形成した。加工形状を下記の基準で判断した。
○:すべてのビアホールの直径が30±2μmであり、きちんとした円形を保持している。
△:100穴中、20穴未満のビアホール直径が30±5μmであり、きちんとした円形を保持していない。
×:100穴中、20穴以上のビアホール直径が30±5μmであり、きちんとした円形を保持していない。
繊維状基材製造例1
液晶性ポリエステル樹脂(製品名「ベクトラ」、ポリプラスチックス社製)10部をテトラフルオロフェノール90部に溶解させた。この溶液をエスプレイヤーES2000(ヒューエンス社製)を用いて、電圧10kV、送液速度10μLにてスプレーするエレクトロスピニング法にて繊維状基材aを得た。この繊維状基材の繊維径は0.2μm、厚みは10μmであった。
繊維状基材製造例2
液晶性ポリエステル樹脂(製品名「ベクトラ」、ポリプラスチックス社製)20部をテトラフルオロフェノール80部に溶解させた。この溶液をエスプレイヤーES2000(ヒューエンス社製)を用いて、電圧10kV、送液速度20μLにてスプレーするエレクトロスピニング法にて繊維状基材bを得た。この繊維状基材の繊維径は1.0μm、厚みは10μmであった。
繊維状基材製造例3
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)との重縮合体(ポリイミド樹脂)10部をN−メチルピロリドン90部に溶解させた。この溶液をエスプレイヤーES2000(ヒューエンス社製)を用いて、電圧10kV、送液速度10μLにてスプレーするエレクトロスピニング法にて繊維状基材cを得た。この繊維状基材の繊維径は0.2μm、厚みは10μmであった。
繊維状基材製造例4
パラフェニレンジアミドとテレフタル酸クロリドを共縮重合したパラ系アラミド樹脂10部をテトラフルオロフェノール90部に溶解させた。この溶液をエスプレイヤーES2000(ヒューエンス社製)を用いて、電圧10kV、送液速度10μLにてスプレーするエレクトロスピニング法にて繊維状基材dを得た。この繊維状基材の繊維径は0.2μm、厚みは10μmであった。
繊維状基材製造例5
液晶性ポリエステル樹脂(製品名「ベクトラ」、ポリプラスチックス社製)をメルトブロー法により、紡糸時に高配向させた繊維から構成される繊維状基材eを得た。この繊維状基材の繊維径は5μm、厚みは10μmであった。
繊維状基材製造例6
パラフェニレンジアミドとテレフタル酸クロリドを共縮重合したパラ系アラミド樹脂をメルトブロー法により、紡糸時に高配向させた繊維から構成される繊維状基材fを得た。この繊維状基材の繊維径は5μm、厚みは10μmであった。
実施例1
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下、ETDと略記する。)70部とビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物30部を、1−ブテンを分子量調整剤として添加して開環共重合し、次いで水素添加反応を行って開環共重合体水素添加物を得た。得られた開環共重合体水素添加物のMnは23,000、Mwは50,000、Tgは142℃であった。また、水素化率は99%以上であった。また、酸価は76mgKOH/gであり、体積固有抵抗は1×1014Ω・cm以上であった。
重合体(A)成分として開環共重合体水素添加物100部、硬化剤(B)成分としてビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル40部、レーザ加工性向上剤として2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール5部、硬化促進剤として1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール0.1部、および酸化処理液に可溶性の重合体として液状ポリブタジエン(日石ポリブタジエンB−1000:新日本石油化学社製)10部を、キシレン215部及びシクロペンタノン54部からなる混合溶剤に溶解させて、硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
縦300mm×横300mmの大きさで厚さが40μm、表面平均粗さRaが0.08μmのポリエチレンナフタレートフィルム(支持体)上に、縦250mm×横250mmの大きさで厚みが10μmの、繊維状基材aを設置し、次いで上記で得られたワニスを、ダイコーターを用いて繊維状基材aに塗工し、含浸させた。次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥し、厚みが30μm、繊維状基材含有量が30%である支持体付きの複合樹脂成形体を得た。
ガラスフィラー及びハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚みが10μmの銅が貼られた、厚み0.8mm、縦150mm×横150mmの両面銅張り基板表面に、配線幅及び配線間距離が15μm、厚みが10μmで、表面が有機酸との接触によってマイクロエッチング処理された導体層を形成して、表面に導体層を有する基板である内層基板を得た。上記で得られた複合樹脂成形体を縦150mm×横150mmの大きさに切断し、複合樹脂成形体面が内側、支持体が外側となるようにして、この内層基板の両面に重ね合わせた。
これを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、200Paに減圧して、温度110℃、圧力1.0MPaで300秒間加熱圧着した(一次プレス)。さらに、金属製プレス板で覆われた耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、200Paに減圧して、温度140℃、1.0MPaで300秒間、加熱圧着した(二次プレス)。次いで支持体を剥がして、複合樹脂成形体層を有する内層基板を得た。
この内層基板を、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾールの1.0%水溶液に30℃にて10分間浸漬し、次いで25℃の水に1分間浸漬した後、エアーナイフにて余分な溶液を除去した。これを窒素雰囲気下、170℃で60分間放置し、樹脂層を硬化させて内層基板上に電気絶縁層を形成した。この電気絶縁層に、UV−YAGレーザ第3高調波を用いて直径30μmの層間接続のビアホールを形成しビアホールつき多層回路基板を得た。
得られたビアホールつき多層回路基板を、過マンガン酸濃度60g/リットル、水酸化ナトリウム濃度28g/リットルになるように調整した70℃の水溶液に10分間揺動浸漬した。次いで、この多層回路基板を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した。続いて硫酸ヒドロキシルアミン濃度170g/リットル、硫酸80g/リットルになるように調整した25℃の水溶液に、多層回路基板を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
次いで、めっき前処理として、上記水洗後の多層回路基板をアルカップアクチベータMAT−1−A(上村工業社製)が200ml/リットル、アルカップアクチベータMAT−1−B(上村工業社製)が30ml/リットル、水酸化ナトリウムが0.35g/リットルになるように調整した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に5分間浸漬した。次いで、この多層回路基板を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した後、アルカップレデユーサーMAB−4−A(上村工業社製)が20ml/リットル、アルカップレデユーサーMAB−4−B(上村工業社製)が200ml/リットルになるように調整した溶液に35℃で、3分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した。このようにしてめっき触媒を吸着させ、めっき前処理を施した多層回路基板を得た。
次いで、めっき前処理後の多層回路基板を、スルカップPSY−1A(上村工業社製)100ml/リットル、スルカップPSY−1B(上村工業社製)40ml/リットル、ホルマリン0.2モル/リットルとなるように調整した水溶液に空気を吹き込みながら、温度36℃、5分間浸漬して無電解銅めっき処理を行った。
無電解めっき処理により金属薄膜層が形成された多層回路基板を、更に水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した後、乾燥し、防錆処理を施し、無電解めっき皮膜が形成された多層回路基板を得た。
この防錆処理が施された多層回路基板表面に、市販の感光性レジストのドライフィルムを熱圧着して貼り付け、さらに、このドライフィルム上に密着性評価用パターンに対応するパターンのマスクを密着させ露光した後、現像してレジストパターンを得た。次に硫酸100g/リットルの水溶液に25℃で1分間浸漬させ防錆剤を除去し、レジスト非形成部分に電解銅めっきを施し厚さ10μmの電解銅めっき膜を形成させた。次いで、レジストパターンを剥離液にて剥離除去し、塩化第二銅と塩酸の混合水溶液によりエッチング処理を行うことにより、前記金属薄膜及び電解銅めっき膜からなる配線パターンを形成し両面2層の配線パターン付き多層回路基板aを得た。そして、最後に、170℃で30分間アニール処理をして多層プリント配線板を得た。得られた多層回路基板aについて回路パターニング性を評価した。
実施例2
実施例1において繊維状基材aに代えて繊維状基材bを用いた以外は実施例1と同様に行って多層回路基板bを得た。実施例1と同様の項目について試験、評価を行った。
実施例3
実施例1において繊維状基材aに代えて繊維状基材cを用いた以外は実施例1と同様に行って多層回路基板cを得た。実施例1と同様の項目について試験、評価を行った。
実施例4
実施例1において繊維状基材aに代えて繊維状基材dを用いた以外は実施例1と同様に行って多層回路基板dを得た。実施例1と同様の項目について試験、評価を行った。
比較例1
実施例1において繊維状基材aに代えて繊維状基材e用いた以外は実施例1と同様に行って多層回路基板eを得た。実施例1と同様の項目について試験、評価を行った。
比較例2
実施例1において繊維状基材aに代えて繊維状基材fを用いた以外は実施例1と同様に行って多層回路基板fを得た。実施例1と同様の項目について試験、評価を行った。
実施例及び比較例の結果を下表に示す。
Figure 0005256819
この結果から、繊維径の大きな繊維状基材を用いると平坦性、パターニング性、レーザ加工性が劣ることが分かる。

Claims (7)

  1. 重量平均分子量が10,000〜250,000で、カルボキシル基又は酸無水物基を有し、酸価が5〜200mgKOH/gである重合体(A)、および硬化剤(B)を含有する硬化性樹脂組成物を、繊維径が0.05〜2μmであり、厚みが0.5〜10μmである繊維状基材に含浸してなる複合樹脂成形体。
  2. 重合体(A)が脂環式オレフィン重合体である請求項1記載の複合樹脂成形体。
  3. 重量平均分子量が10,000〜250,000で、カルボキシル基又は酸無水物基を有し、酸価が5〜200mgKOH/gである重合体(A)、硬化剤(B)、および有機溶剤を含有する硬化性樹脂組成物を、繊維径が0.05〜2μmであり、厚みが0.5〜10μmである繊維状基材に含浸し、乾燥することを特徴とする請求項1又は2記載の複合樹脂成形体の製造方法。
  4. 請求項1又は2記載の複合樹脂成形体を硬化してなる硬化物。
  5. 表面に導体層を有する基板と請求項4記載の硬化物からなる電気絶縁層とを積層してなる積層体。
  6. 表面に導体層を有する基板上に、請求項1又は2記載の複合樹脂成形体を加熱圧着し、硬化して電気絶縁層を形成することを特徴とする請求項4記載の積層体の製造方法。
  7. 請求項4記載の積層体の、電気絶縁層上にさらに導体層を形成してなる多層回路基板。
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