JP5505778B2 - 多層プリント回路基板用フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、多層プリント回路基板用フィルムに関し、さらに詳しくは、多層プリント回路基板を製造する際に用いられるデスミア液による影響を受け難い、耐デスミア性に優れた多層プリント回路基板用フィルムに関する。
電子機器の小型化、多機能化、通信高速化などの追求に伴い、近年、多層プリント回路基板には、さらなる薄型化、フレキシブル化が求められている。そのため、多層プリント回路基板の製造方法として、樹脂フィルムを積層して多層プリント回路基板を構成する技術が注目されている。樹脂フィルムを積層してなる多層プリント回路基板は、ガラスクロスなどを用いて製造されるプリプレグを用いる場合に比して、機械的強度や耐熱性、難燃性に弱点を有することが知られており、近年、この弱点を改良する技術が報告されている。
例えば、特許文献1〜3には、ポリイミドやポリアミドなどの耐熱性や機械的強度に優れた樹脂からなる層と、官能基を含有する樹脂と硬化剤とを含んでなる熱硬化性の樹脂組成物からなる層とを積層してなる複合フィルムが、機械的強度や耐熱性に優れ、また、積層が容易であることから、多層プリント回路基板などの製造に好適に用いられることが開示されている。しかしながら、特許文献1〜3に記載されるような複合フィルムを用いた場合では、多層プリント回路基板を製造する過程において、レーザー加工によりビアホールを形成した後、過マンガン酸溶液などのデスミア液でデスミア処理したときにポリイミドなどの層と熱硬化性樹脂の層との界面で剥離が生じる等の不良が発生する問題があった。
特開平11−129399号公報 国際公開第01/097582号 国際公開第05/025857号
本発明は、多層プリント回路基板を製造する際に用いられるデスミア液による影響を受け難い、すなわち、耐デスミア性に優れた多層プリント回路基板用フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、多層プリント回路基板用フィルムを、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなる基材層と、官能基を有する脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含んでなる硬化性樹脂組成物からなる接着層とを積層して構成することにより、耐デスミア性に優れた多層プリント回路基板用フィルムが得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
かくして、本発明によれば、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなる基材層と、基材層の少なくとも片面側に積層され、官能基を有する脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含んでなる硬化性樹脂組成物からなる接着層とにより形成されてなる多層プリント回路基板用フィルムが提供される。
上記の多層プリント回路基板用フィルムでは、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂の吸湿率が、4.0%以下であることが好ましい。
また、上記の多層プリント回路基板用フィルムでは、基材層が、プラズマ処理またはコロナ処理されたものであることが好ましい。
また、本発明によれば、上記の多層プリント回路基板用フィルムを用いてなる多層プリント回路基板が提供される。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムは、耐デスミア性に優れるので、このフィルムを用いて多層プリント回路基板を製造する際のデスミア処理時に、デスミア液の影響に起因する不良を生じ難いものである。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムは、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなる基材層と、この基材層の少なくとも片面側に積層された、官能基を有する脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含んでなる硬化性樹脂組成物からなる接着層とにより形成されてなるものである。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムの基材層を構成する材料として用いられる、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂は、アリール基およびアミド結合を含む繰り返し単位を含有し、かつ、分子中にフッ素原子を含有する樹脂である。また、本発明で用いるフッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂は、上記の定義を満たすものであれば、特に限定されるものではないが、全芳香族ポリアミドであることが好ましい。フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂として、全芳香族ポリアミドを用いることにより、多層プリント回路基板用フィルムの耐デスミア性が特に優れるものとなり、さらに、多層プリント回路基板用フィルムが、熱膨張係数が小さく、吸湿率も小さい優れたものとなる。
フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂中のアリール基およびアミド結合を含む繰り返し単位の割合は、特に限定されないが、通常50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。アリール基およびアミド結合を含む繰り返し単位の割合が過度に少ないと、耐デスミア性に劣り好ましくない。アリール基およびアミド結合を含む繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、格別な限定はなく、目的に応じて適宜選択される。また、アリール基およびアミド結合を含む繰り返し単位の化学構造に特段の限定は無く、例えば、イミド基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾイミダゾール基、カルボジヒドラジド基、オキサジアゾール基などを含むものであって良く、硬化性樹脂組成物との接着性や耐デスミア性をより向上させる観点からは、ベンゾイミダゾール基、カルボジヒドラジド基、またはオキサジアゾール基を含むものであることが好ましい。
また、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂は、アミノ基末端を持つものであることが好ましい。フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂がアミノ基末端を持つことにより、このアミノ基末端が後述する硬化性樹脂組成物の硬化剤と同様に働くため、基材層と接着層との接着強度が特に良好なものとなる。芳香族ポリアミド樹脂にアミノ基末端を導入する方法としては、ジアミンとジカルボン酸ハライドとの重合時にジアミン成分のモル比を多くする方法などが挙げられる。
芳香族ポリアミド樹脂にフッ素原子を含有せしめる方法は、特に限定されるものではないが、フッ素原子を含有するジアミンを単量体として用いて芳香族ポリアミド樹脂を重合する手法が好適に用いられる。フッ素原子を含有するジアミンの具体例としては、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2−フルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミンが挙げられる。これらのなかでも、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルを用いて芳香族ポリアミド樹脂を得ると、耐デスミア性が良好であるばかりでなく、低熱膨張係数、高ヤング率の基材層が得られるため好ましい。また、フッ素原子を含有するジアミンと組み合わせてその他のジアミンを用いても良く、その具体例としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、m−トリジン、o−トリジンが挙げられる。これらの中でも、基材層と接着層との接着性および耐デスミア性の観点から、スルホン酸基を有するジアミンを用いて芳香族ポリアミド樹脂を構成することが好ましく、さらにその中でも、熱膨張性係数を小さくする観点から、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを用いることが好ましい。
また、芳香族ポリアミド樹脂を得るにあたっては、ジアミン成分の代わりにジカルボン酸ヒドラジドを用いることで、ポリアミドヒドラジドやポリアミドオキサジアゾールとすることもできる。ここで用いるジカルボン酸ヒドラジドとしてはイソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ヒドラジドなどが挙げられる。ポリアミドヒドラジドを脱水環化してポリアミドオキサジアゾールに転化せしめる方法は公知の方法を用いることが可能である。なお、ジカルボン酸ヒドラジドも硬化性樹脂組成物の硬化剤と同様に働くため、基材層と接着層との接着強度が特に良好なものとなる。さらに、芳香族ポリアミド樹脂を得るにあたって、ジアミン成分の代わりにジアミノジオールを用いることで、水酸基を有するポリアミドを得ることもでき、さらに脱水環化せしめてポリベンゾオキサゾールとすることも可能である。ジアミノジオールとしては3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
芳香族ポリアミド樹脂にフッ素原子を含有せしめる他の方法としては、フッ素原子を含有するジカルボン酸クロライドを単量体として用いる方法が例示される。フッ素原子を含有するジカルボン酸クロライドの具体例としては、2−フロロ−テレフタル酸ジクロライド、2−トリフロロメチル−テレフタル酸ジクロライド、テトラフルオロ−テレフタル酸ジクロライド、テトラフルオロ−イソフタル酸ジクロライドなどが挙げられ、また、これらと併用しうる他のジカルボン酸クロライド成分の具体例としては、テレフタル酸ジクロライド、2−クロロ−テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ナフタレンジカルボニルクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド、ターフェニルジカルボニルクロライド、1,4−シクロヘキサンカルボン酸ジクロライドなどが挙げられる。さらに、ジカルボン酸クロライドの代わりにテトラカルボン酸二無水物や、トリメリット酸無水物クロライドを用いることにより、ポリアミドイミドとすることもできる。テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,1,1,3,3,3−4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物などが挙げられる。
芳香族ポリアミドを得るための重合方法は、種々の方法が利用可能であり、特に限定されない。例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。なお、低温溶液重合法を用いる場合(つまり、単量体としてジカルボン酸クロライドとジアミンを用いる場合)には、通常、非プロトン性有機極性溶媒中で合成する。単量体としてジカルボン酸クロライドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。
単量体としてジアミンとジカルボン酸クロライドを用いる場合における全ジアミンと全ジカルボン酸クロライドのモル比は95〜110:105〜90が好ましく、この値を外れた場合、成形に適したポリマー溶液を得ることが困難となる。芳香族ポリアミドにアミン末端を形成せしめるためには全ジアミンと全ジカルボン酸クロライドのモル比は101〜110:99〜90がより好ましい。
芳香族ポリアミドの製造において、使用する非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。さらには生成する芳香族ポリアミドの溶解を促進する目的で溶媒には50質量%以下のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩を溶解助剤として添加することができる。この溶解助剤としては臭化リチウム、塩化リチウムなどが例示できる。
本発明で用いるフッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂は、塩素原子および臭素原子を実質的に含有しないもの、すなわち、いわゆるハロゲンフリーであることが好ましい。ハロゲンフリーであるか否かは、JPCA−ES01−2003に準拠した測定法、判定基準を用いて判定する。芳香族ポリアミド樹脂がハロゲンフリーであることにより、得られる多層プリント回路基板を、廃棄焼却時に不完全な状態で燃焼しても環境に負荷を与えるガスが発生する可能性が小さいものとすることができる。なお、本発明で用いる芳香族ポリアミド樹脂はフッ素原子を含有するものであるので、ハロゲンフリーであっても有機溶媒に溶解せしめることが可能であり、溶液製膜法を用いて品質の優れたフィルムとすることができる。
また、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂は、一般的に吸湿率が低いものであるが、本発明で用いるフッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂は、吸湿率が4.0%以下であることが好ましく、3.5%以下であることがより好ましく、3.0%以下であることが特に好ましい。なお、本発明において、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂の吸湿率は以下の測定方法で測定する。すなわち、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂のフィルムを約0.5g採取し、脱湿のため150℃で2時間の加熱を行った後、窒素気流下で25℃まで降温し、その降温後の質量を0.1mg単位まで正確に秤量する(この時の質量をW0とする)。次いで、25℃で75RH%の雰囲気下に48時間静置し、その後の質量を測定し、これをW1として、以下の式を用いて吸湿率を求める。
吸湿率(%)=((W1−W0)/W0)×100
本発明で用いるフッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂には、表面形成、電気特性改善などを目的として100質量%以下の無機質または有機質の添加物を含有させてもよい。無機粒子ではSiO、TiO、Al、CaSO、BaSO、CaCO、BaTiO,ダイヤモンド、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ゼオライト、その他の金属微粉末などが挙げられる。また、好ましい有機粒子としては、例えば、架橋ポリビニルベンゼン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子等の有機高分子からなる粒子、あるいは、表面に上記有機高分子で被覆等の処理を施した無機粒子が挙げられる。
本発明では、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂を、フィルム状に成形して基材層として用いることが好ましい。フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂をフィルム状に成形する手法は特に限定されないが、いわゆる溶液製膜法が好適に用いられる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがありいずれの方法で製膜されても差し支えないが、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂は溶解性に優れるため、製膜工程の制御が容易な乾湿式法での製膜が可能である。ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂を乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金からドラム、エンドレスベルト、フィルムなどの支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は例えば、室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができる。またこの乾燥工程で用いられるドラム、エンドレスベルト、フィルム等の支持体の表面を平滑にすることにより表面の平滑な芳香族ポリアミドフィルムが得られる。乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれて芳香族ポリアミド製のフィルムが得られる。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムを構成する接着層として用いられる硬化性樹脂組成物は、官能基を有する脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含んでなるものである。ここで、本発明で用いられる官能基を有する脂環式オレフィン重合体は、脂環式構造を有するオレフィン(脂環式オレフィン)由来の繰返し単位を含有し、かつ、官能基を有する重合体である。
本発明で用いられる官能基を有する脂環式オレフィン重合体が含有しうる脂環式構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などが挙げられるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましく、特にノルボルナン構造が好ましい。また、脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋架け環や、これらを組み合わせてなる多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。また、本発明で使用される官能基を有する脂環式オレフィン重合体は、通常、熱可塑性のものである。
官能基を有する脂環式オレフィン重合体中の脂環式オレフィン由来の繰り返し単位の割合は、特に限定されないが、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。脂環式オレフィン由来の繰り返し単位の割合が過度に少ないと、耐熱性に劣り好ましくない。脂環式オレフィン由来の繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、格別な限定はなく、目的に応じて適宜選択される。
官能基を有する脂環式オレフィン重合体が有する官能基は、特に限定されないが、用いる硬化剤が有する官能基と反応して結合を形成することができる官能基であることが好ましい。脂環式オレフィン重合体が有する官能基の具体例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。なお、官能基を有する脂環式オレフィン重合体は、2種以上の官能基を有するものであっても良い。また、脂環式オレフィン重合体の官能基は、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合していてもよい。官能基を有する脂環式オレフィン重合体中の官能基の量は、特に制限されないが、脂環式オレフィン重合体を構成する全繰り返し単位のモル数に対して、通常5〜60モル%、好ましくは10〜50モル%である。
一般に、脂環式オレフィン重合体は、脂環式オレフィンを付加重合または開環重合し、そして必要に応じて不飽和結合部分を水素化することによって、あるいは芳香族オレフィンを付加重合または開環重合し、そして該重合体の芳香環部分を水素化することによって得られる。そして、本発明で用いる官能基を有する脂環式オレフィン重合体は、例えば、(1)官能基を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合することによって、(2)官能基を有しない脂環式オレフィンを、官能基を有する単量体と共重合することによって、(3)官能基を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化することによって、(4)官能基を有しない芳香族オレフィンを、官能基を有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化することによって、または(5)官能基を有しない脂環式オレフィン重合体に官能基を有する化合物を変性反応により導入することによって、もしくは(6)前述の(1)〜(5)のようにして得られる官能基(例えばカルボン酸エステル基など)を有する脂環式オレフィン重合体の官能基を、例えば加水分解することなどにより他の官能基(例えばカルボキシル基)に変換することによって得ることができる。本発明では、前述の(1)の方法によって得られる重合体が特に好適に用いられる。
官能基を有する脂環式オレフィンの具体例としては、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−カルボキシメチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−エキソ−9−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8,9−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン−11,12−ジカルボン酸無水物などのカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン;8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン;などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
官能基を有しない脂環式オレフィンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.02,8]テトラデカ−3,5,7,12,11−テトラエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、7,10−メタノ−6b,7,10,10a−テトラヒドロフルオランセンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
(官能基を有しない)芳香族オレフィンの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
脂環式シクロオレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、官能基を有する脂環式オレフィン以外の、官能基を有する単量体としては、官能基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、メチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
脂環式シクロオレフィンや芳香族オレフィンと共重合することができる、脂環式オレフィン以外の、官能基を有しない単量体としては、官能基を有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
脂環式オレフィンや芳香族オレフィンの重合方法、および必要に応じて行われる水素添加の方法は、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
本発明で用いられる官能基を有する脂環式オレフィン重合体の分子量は、特に限定されないが、シクロヘキサンまたはトルエンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜250,000の範囲である。官能基を有する脂環式オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあると、得られる多層プリント回路基板用フィルムの耐熱性、成形物表面の平滑性などがバランスされ好適である。なお、官能基を有する脂環式オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)を調整する方法は常法に従えば良く、例えば、脂環式オレフィンの開環重合をルテニウム系、チタン系、タングステン系などのメタセシス重合触媒を用いて行うに際して、ビニル化合物、ジエン化合物などの分子量調整剤を単量体全量に対して0.1〜10モル%程度添加する方法が挙げられる。分子量調整剤を多量に用いるとMwの低い重合体が得られる。かかる分子量調整剤の例としては、ビニル化合物では、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン化合物;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル化合物;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート、アクリルアミドなどのその他のビニル化合物;などが挙げられる。また、ジエン化合物では、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン化合物;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン化合物;などが挙げられる。これらの分子量調整剤は1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
本発明で用いられる官能基を有する脂環式オレフィン重合体の分子量分布は、特に限定されないが、シクロヘキサンまたはトルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。なお、前述の方法で重量平均分子量や分子量分布が測定できない官能基を有する脂環式オレフィン重合体を用いる場合には、通常の溶融加工法により樹脂層を形成し得る程度の溶融粘度や重合度を有するものを使用することができる。
本発明で用いられる官能基を有する脂環式オレフィン重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、120〜300℃であることが好ましい。Tgが低すぎると高温下において充分な電気絶縁性を維持できず、Tgが高すぎると多層プリント回路基板が強い衝撃を受けた際にクラックを生じて導電性回路が破損する可能性がある。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムを得るにあたっては、後述するように、官能基を有する脂環式オレフィン重合体を含有してなる硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解させてワニスの形態とした上で、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなるフィルム(基材層)に塗布する方法を採用することが好ましい。したがって、本発明で用いられる官能基を有する脂環式オレフィン重合体は、後述するような有機溶剤に常温で溶解するものであることが好ましい。
本発明で用いられる硬化剤は、加熱により官能基を有する脂環式オレフィン重合体に架橋構造を形成させるものであれば特に限定されず、一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される硬化剤を用いることができるが、用いる官能基を有する脂環式オレフィン重合体の官能基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物を硬化剤として用いることが好ましい。例えば、官能基を有する脂環式オレフィン重合体として、カルボキシル基やカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体を用いる場合に好適に用いられる硬化剤としては、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、有機金属ハロゲン化物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。また、これらの化合物と過酸化物とを併用して硬化剤として用いても良い。
硬化剤として用いられ得る多価エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物などのグリシジルエーテル型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、リン含有エポキシ化合物などの多価エポキシ化合物;などの分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
硬化剤として用いられ得る多価イソシアナート化合物としては、炭素数6〜24の、ジイソシアナート類およびトリイソシアナート類が好ましい。ジイソシアナート類の例としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナートなどが挙げられる。トリイソシアナート類の例としては、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナートなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
硬化剤として用いられ得る多価アミン化合物としては、2個以上のアミノ基を有する炭素数4〜30の脂肪族多価アミン化合物、芳香族多価アミン化合物などが挙げられ、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。脂肪族多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミン化合物としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
硬化剤として用いられ得る多価ヒドラジド化合物の例としては、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジドなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
硬化剤として用いられ得るアジリジン化合物としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)アジリジニル]ホスフィノキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)アジリジニル]トリホスファトリアジンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
官能基を有する脂環式オレフィン重合体として、カルボキシル基やカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体を用いる場合においては、前述の硬化剤の中でも、官能基との反応性が緩やかであり、硬化性樹脂組成物の扱いが容易となる観点から多価エポキシ化合物が好ましく用いられ、グリシジルエーテル型エポキシ化合物や脂環式の多価エポキシ化合物が特に好ましく用いられる。
硬化性樹脂組成物における硬化剤の使用量は、官能基を有する脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜50重量部の範囲である。このような範囲の使用量で硬化剤を用いることにより、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度および電気特性が良好となる。
硬化性樹脂組成物の硬化を促進させるために、硬化性樹脂組成物には、硬化促進剤や硬化助剤を配合しても良い。硬化促進剤としては、一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される硬化促進剤を用いれば良いが、硬化剤として多価エポキシ化合物を用いる場合には、第3級アミン系化合物や三弗化ホウ素錯化合物などが硬化促進剤として好適に用いられる。なかでも、第3級アミン系化合物を使用すると、得られる多層プリント回路基板用フィルムの積層容易性、絶縁抵抗性、耐熱性、耐薬品性が向上する。
第3級アミン系化合物の具体例としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルホルムアミドなどの鎖状3級アミン化合物;ピラゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、インダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、イミダゾール類、トリアゾール類などの化合物が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール類、特に置換基を有する置換イミダゾール化合物が好ましい。
置換イミダゾール化合物の具体例としては、例えば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール,1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物などが挙げられる。これらの中でも、環構造含有の置換基を有するイミダゾールが官能基を有する脂環式オレフィン重合体との相溶性の観点から好ましく、特に、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
これらの硬化促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すれば良いが、官能基を有する脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
硬化助剤としては、一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される硬化助剤を用いれば良いが、その具体例としては、キノンジオキシム、ベンゾキノンジオキシム、p−ニトロソフェノールなどのオキシム・ニトロソ系硬化助剤;N,N−m−フェニレンビスマレイミドなどのマレイミド系硬化助剤;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル系硬化助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのメタクリレート系硬化助剤;ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどのビニル系硬化助剤などが挙げられる。これらの硬化助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合割合は、用いる硬化剤100重量部に対して、通常1〜1000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲である。
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ゴム質重合体や(前述したもの以外の)その他の熱可塑性樹脂を配合することができる。ゴム質重合体は、常温(25℃)以下のガラス転移温度を持つ重合体であって、通常のゴム状重合体および熱可塑性エラストマーが含まれる。硬化性樹脂組成物にゴム質重合体や熱可塑性樹脂を配合することにより、得られる多層プリント回路基板用フィルムの柔軟性を改良することができる。用いるゴム質重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、適宜選択すれば良いが、通常5〜200である。ゴム状重合体の具体例としては、エチレン−α−オレフィン系ゴム状重合体;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エテレン−ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンまたはスチレン−イソプレンのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのジエン系ゴム;エポキシ化ポリブタジエンなどの変性ジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体などが挙げられる。熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂などを挙げることができる。これらの熱可塑性エラストマーのうち、好ましくは、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などであり、具体的には、特開平2−133406号公報、特開平2−305814号公報、特開平3−72512号公報、特開平3−74409号公報などに記載されているものを挙げることができる。
硬化性樹脂組成物に配合しうるその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテートなどが挙げられる。
ゴム状重合体やその他の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、多層プリント回路基板用フィルムの絶縁材料としての特性を損なわせないためには、官能基を有する脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、30重量部以下の配合量とすることが好ましい。
本発明で用いられる硬化性樹脂組成物には、多層プリント回路基板用フィルムの難燃性をより向上させる目的で、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される難燃剤を配合しても良い。
本発明で用いられる硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、無機充填剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分が配合される。任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すれば良い。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムは、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなる基材層の少なくとも片面側に、上述の硬化性樹脂組成物からなる接着層が積層されたものであれば良いが、基材層の両面側に接着層が積層されたものであることがより好ましい。多層プリント回路基板用フィルムを、基材層の両面側に接着層が積層された構成とすることにより、多層プリント回路基板用フィルムが、接着性や低吸湿性に優れたものとなる。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムを得るにあたり、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなる基材層と硬化性樹脂組成物からなる接着層とを積層させる方法は特に限定されないが、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなるフィルムに塗布し、それを乾燥することにより有機溶剤を揮発させる方法が好適である。
硬化性樹脂組成物をワニスとする場合に用いる有機溶剤としては、後に加熱して揮発させる便宜から、沸点が好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃のものである。かかる有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;アニソールなどのエーテル化合物;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。
ワニスの調製法に格別な制限はなく、例えば、硬化性樹脂組成物を構成する各成分と有機溶剤とを常法に従って混合すればよく、例えば、マグネチックスターラー、高速ホモジナイザー、ディスパージョン、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロールなどを使用して混合することができる。混合温度は、官能基を有する脂環式オレフィン重合体と硬化剤との反応が起こる温度以下であり、かつ、有機溶剤の沸点以下であることが好ましい。有機溶剤の使用量は、目的とする接着層の厚さや、接着層の表面平坦度に応じて適宜選択されるが、ワニスの固形分濃度が、通常5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%、より好ましくは20〜60重量%になる範囲である。
フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなるフィルムに、硬化性樹脂組成物のワニスを塗布する方法は、常法に従えばよく、例えば、ディップコート、バーコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、ドクターブレード法などの方法が挙げられる。塗布される硬化性樹脂組成物のワニスは、有機溶剤が揮発されて、多層プリント回路基板用フィルムの接着層を形成するものであるから、有機溶剤が揮発された後の接着層の厚さを後述のような塗布膜厚に設定して、硬化性樹脂組成物のワニスの塗布を行なえばよい。
フィルムに塗布された硬化性樹脂組成物のワニスから有機溶剤を揮発させるための乾燥の条件は、有機溶剤の種類により適宜選択される。加熱温度は、通常20〜300℃、好ましくは30〜200℃であり、加熱時間は、通常30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。このように硬化性樹脂組成物のワニスから有機溶剤を揮発させることにより、硬化性樹脂組成物により形成された接着層を形成することができる。
なお、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなるフィルムに硬化性樹脂組成物からなる接着層を積層させる際には、これらの密着性を良好とし、それにより得られる多層プリント回路基板用フィルムの耐デスミア性を良好とするために、予め、フィルムに、プラズマ処理、コロナ処理、薬品処理、溶剤処理などの表面処理を施すことが好ましく、その中でも、プラズマ処理またはコロナ処理を施すことが望ましい。これらの表面処理は、複数の手法を組み合わせて採用することもできる。
プラズマ処理には圧力により、高圧、低圧、大気圧(常圧)のプラズマ処理があり、これらの中でも、作業の容易性から、大気圧プラズマ処理が好ましい。大気圧プラズマ処理の具体的条件は特に限定されるものではないが、例えば、大気圧プラズマ処理装置(例えば、ADMASTERII−300dM:イー・スクエア社製)を用いて、出力0〜1.8kW、窒素流量0〜225L/分、クリーンドライエア流量0〜225L/分、搬送速度0〜0.5m/分の条件で行えばよい。
また、コロナ処理の具体的条件も特に限定されるものではないが、例えば、バッチコロナ処理機(例えば、春日電機社製CORONA GENERATOR CT−0212)を用いて、出力:0〜2.0kW、搬送速度0〜6.0m/分、放電隙間0.5〜20mmの条件で行えばよい。
フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなるフィルム(基材層)に、プラズマ処理やコロナ処理を行う場合、それらの処理の前後で、X線光電子分光(ESCA)によって測定されるフィルム表面上の酸素原子/炭素原子比(O/C比)の値が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは、0.1〜0.5の範囲で向上するように処理を行うことが好ましい。このように処理することにより、得られる多層プリント回路基板用フィルムの耐デスミア性が特に良好となる。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムを構成する各層の厚さは特に限定されるものではないが、基材層の厚さは、通常1〜24μmであり、好ましくは2〜20μmであり、より好ましくは3〜15μm、最も好ましくは3〜9μmである。また、接着層の厚さ(硬化前)は、1層あたり、通常1〜50μmであり、好ましくは1〜40μmであり、より好ましくは1〜30μmである。また、接着層を基材層の両面に設ける場合において、多層プリント回路基板用フィルムにおける、接着層2層の厚さの和と基材層の厚さとの比(接着層2層の厚さの和/基材層の厚さ)は、通常0.5〜10であり、好ましくは0.8〜9であり、より好ましくは1.0〜8である。多層プリント回路基板用フィルムのそれぞれの層の厚さがこのような関係を有することにより、多層プリント回路基板用フィルムが優れた難燃性を示し、しかも、電気特性や配線の埋め込み性にも優れるものとなる。
本発明の多層プリント回路基板用フィルム(全体)の厚さも、特に限定されないが、通常5〜60μmであり、好ましくは7〜50μmであり、より好ましくは10〜40μmである。多層プリント回路基板用フィルムが全体として薄すぎると、多層プリント回路基板用フィルムにより形成される電気絶縁膜の絶縁性が不足するおそれがあり、厚すぎると得られる多層プリント回路基板が厚くなりすぎて電子機器等への収容が困難となるおそれがある。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムは、このフィルムを用いて多層プリント回路基板を製造する際に、その取り扱いを容易にするために、支持体上に本発明の多層プリント回路基板用フィルムを設けた構成としても良い。支持体は、特に限定されないが、樹脂フィルムや金属箔が好適に用いられる。支持体として用いられうる樹脂フィルムは、通常、熱可塑性樹脂フィルムであり、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、およびナイロンフィルム;などが挙げられる。これら樹脂フィルムのうち、耐熱性や耐薬品性、積層後の剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。支持体として用いられうる金属箔としては、例えば、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、および銀箔;などが挙げられる。導電性が良好である点から、銅箔、特に電解銅箔や圧延銅箔が好適である。支持体の厚さは特に制限されないが、作業性等の観点から、通常1μm〜200μm、好ましくは2μm〜150μm、より好ましくは3〜100μmである。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムは、多層プリント回路基板の電気絶縁膜を形成するために用いられるものである。本発明の多層プリント回路基板用フィルムを用いて多層プリント回路基板を構成する方法は、特に限定されず、例えば、従来の多層プリント回路基板用フィルムを用いる場合と同様の方法により、導電性回路を表面に有する基板と多層プリント回路基板用フィルムとを積層した後、多層プリント回路基板用フィルムの接着層を硬化し、さらに多層プリント回路基板用フィルムの表面に導電性回路を形成すれば良い。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムと積層して、多層プリント回路基板を構成するために用いられる基板は、特に限定されず、例えば市販の銅張り基板に所望の回路を形成して得た基板などを用いることができるし、後述するように導電性回路を形成した多層プリント回路基板用フィルム自体を基板として用いることもできる。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムと導電性回路を表面に有する基板とを積層する方法は、特に限定されないが、基板の導電性回路を有する表面と多層プリント回路基板用フィルムの接着層とが接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)することにより、基板の導電性回路とフィルムの接着層との界面に空隙が実質的に存在しないように結合させる方法が挙げられる。加熱圧着は、配線の埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために真空下で行うのが好ましい。加熱圧着操作の温度は、通常30〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、加える圧力は、通常10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、雰囲気の気圧を、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paに減圧下で行う。
また、多層プリント回路基板用フィルムと導電性回路を表面に有する基板とを積層するにあたり、これらの密着性を改良するために、予め基板の導電性回路に対して表面粗化のための前処理を施すことが好ましい。前処理の方法としては、公知の技術が特に限定されず使用できる。例えば、基板の導電性回路が銅からなるものであれば、強アルカリ酸化性溶液を導電性回路表面に接触させて、その表面に房状の酸化銅の層を形成して粗化する酸化処理方法、導電性回路表面を先の方法で酸化した後に水素化ホウ素ナトリウム、ホルマリンなどで還元する方法、導電性回路にめっきを析出させて粗化する方法、導電性回路に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、導電性回路にチオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法などが挙げられる。これらのなかでも、微細な回路パターンの形状維持の容易性の観点から、導電性回路に有機酸を接触させて銅の粒界を溶出して粗化する方法、およびチオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法が好ましい。
多層プリント回路基板用フィルムと基板とを積層した後、多層プリント回路基板用フィルムの接着層を硬化する方法は、特に限定されないが、多層プリント回路基板用フィルムを積層された基板ごと加熱する方法が挙げられる。接着層を硬化させるための加熱条件は、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤の種類などに応じて適宜選択されるが、通常、加熱温度は、30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃であり、加熱時間は、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱手段は特に制限されず、例えば電気オーブンを用いることができる。このように接着層を硬化することにより、本発明の多層プリント回路基板用フィルムは、一体として多層プリント回路基板の電気絶縁膜を形成するものとなる。
多層プリント回路基板フィルムの接着層を硬化させた後、そのフィルム上に導電性回路を形成するが、通常は、導電性回路を形成する前に、基板上に形成された導電性回路と電気絶縁膜(多層プリント回路基板用フィルム)上に形成される導電性回路とを電気的に接続するために用いる、積層された基板と電気絶縁膜とを貫通するビアホールを設ける。このビアホールは、フォトリソグラフィ法のような化学的処理により、またはドリル、レーザ、プラズマエッチングなどの物理的処理などにより形成することができる。これらの方法の中でもレーザによる方法(炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UV−YAGレーザなど)が、電気絶縁膜の特性を低下させずにより微細なビアホールが形成できるので好ましい。
また、電気絶縁膜(多層プリント回路基板用フィルム)上に導電性回路を形成する前には、通常、ビアホール形成時のスミア(溶融した樹脂による汚れ)を除去するために、電気絶縁膜の表面をデスミア処理する。デスミア処理の方法は特に限定されないが、例えば、過マンガン酸塩などの酸化性化合物の溶液(デスミア液)を接触させる方法が挙げられる。具体的には、過マンガン酸ナトリウム濃度60g/リットル、水酸化ナトリウム濃度28g/リットルになるように調整した60〜80℃の水溶液に、ビアホール形成した電気絶縁膜(多層プリント回路基板用フィルム)を1〜50分間揺動浸漬することにより、デスミア処理を行なうことができる。
多層プリント回路基板用フィルムと基板とを積層し、多層プリント回路基板用フィルムの接着層を硬化した後、さらに必要に応じて、ビアホールを設けたり、酸化処理を行ったりした後は、電気絶縁膜(多層プリント回路基板用フィルム)上に導電性回路を形成する。この導電性回路の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、一般に導電性回路の材料として用いられる材料を用いることができる。好適な材料としては、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、タングステンなどの金属材料が挙げられ、なかでも銅が特に好適に用いられる。
電気絶縁膜(多層プリント回路基板用フィルム)上に導電性回路を形成する方法は、特に限定されず、一般に用いられている方法を採用することができる。導電性回路を形成するために、電気絶縁膜上に導電性材料の層を形成する方法としては、いわゆる乾式成膜法や湿式成膜法を用いることができる。乾式成膜法の具体例としては、真空蒸着(通常の真空蒸着、フラッシュ蒸着、ガス散乱蒸着、電界蒸着、反応性蒸着など)、イオンプレーティング蒸着(DCイオンプレーティング、高周波イオンプレーティング、イオンビーム蒸着、HCD法、アーク放電型イオンプレーティングなど)、スパッタリング(DCスパッタリング、高周波スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリングなど)などの物理蒸着法や、熱CVD(熱CVD、MOCVDなど)、プラズマCVD(直流プラズマCVD、高周波CVD、マイクロ波プラズマCVDなど)、光CVD(エキシマレーザー励起、水銀ランプ励起、COレーザー励起など)、プラズマ重合(直流放電励起,マイクロ波励起,高周波励起など)などの化学蒸着法が挙げられる。また、湿式成膜法の具体例としては、電解めっき法や無電解めっき法が挙げられる。これらの方法のなかでも、安価で安定的に高い密着性を有する層が得られる点から、無電解めっき法により導電性材料の層を形成することが好ましく、また、無電解めっき法により形成した導電性材料の層上に電解めっき法を適用してその導電性材料の層を成長させることも好ましい。なお、ビアホールを設けた場合には、通常、その内壁面にも、導電性材料の層を形成する。
無電解めっき法を採用する場合は、通常、電気絶縁膜(多層プリント回路基板用フィルム)上に、還元触媒として働く銀、パラジウム、亜鉛、コバルト、金、白金、イリジウム、ルテニウム、オスミニウムなどの触媒核を吸着させる。また、無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、例えば公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いれば良く、めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度などは適宜選択すれば良い。無電解めっき液の例としては、次亜リン酸アンモニウムまたは次亜リン酸、水素化ホウ素アンモニウムやヒドラジン、ホルマリンなどを還元剤とする無電解銅めっき液、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−リンめっき液、ジメチルアミンボランを還元剤とする無電解ニッケル−ホウ素めっき液、無電解パラジウムめっき液、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解パラジウム−リンめっき液、無電解金めっき液、無電解銀めっき液、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−コバルト−リンめっき液などが挙げられる。なお、無電解めっき法により形成した導電性材料の層には、防錆剤と接触させるなどの防錆処理を行うことが好ましい。
また、無電解めっき法により形成した導電性材料の層上に電解めっき法を適用して導電性材料の層を成長させる場合に用いる電解めっき液としては、公知の電解めっき液を用いれば良く、例えば、硫酸銅めっき液、ピロリン酸銅めっき液、電解ニッケルめっき液などを用いることができる。また、電解めっき液には、必要に応じて錯化剤、光沢剤、安定剤、緩衝剤などの添加剤を含むことができる。
導電性材料を用いて導電性回路を形成する方法は、導電性回路を形成する範囲に一面に導電性材料の層を形成してから、回路パターンを形成するために不要な導電性材料を除去する方法(サブトラクティブ法)と、回路パターンを有するように導電性材料の層を形成する方法(アディティブ法)とに大別されるが、本発明では、いずれの方法も採用することができる。
サブトラクティブ法を適用する場合の例としては、電気絶縁膜(多層プリント回路基板用フィルム)の全面に前述の手法により導電性材料の層を形成し、次いで、その導電性材料の層の回路パターンとして残したい部分にエッチングレジスト液を塗布してレジスト膜を形成した後、エッチング液に浸漬することにより不要な導電性材料を除去し、その後、レジスト膜を剥離する方法が挙げられる。また、アディティブ法を適用する場合の例としては、電気絶縁膜(多層プリント回路基板用フィルム)の回路パターンを形成するにあたり導電性材料が不要な部分にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、次いで、部分的にレジスト膜が形成された電気絶縁膜上に前述の手法により導電性材料の層を形成し、その後、レジスト膜を剥離する方法が挙げられる。
電気絶縁膜(多層プリント回路基板用フィル)上に導電性回路を形成した後は、電気絶縁膜と導電性回路との密着性を向上させる観点から、アニール処理を行うことが好ましい。アニール処理の手法は特に限定されないが、電気絶縁膜を基板ごとオーブンに入れて加熱する手法や、プレス板や加熱ロールなどを用いて電気絶縁膜と基板とを加圧しながら加熱する手法が挙げられる。アニール処理における加熱温度および加熱時間は、特に限定されないが、加熱温度は、通常50〜350℃、好ましくは80〜250℃であり、加熱時間は、通常0.1〜10時間、好ましくは0.1〜5時間である。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムを用いて得られる多層プリント回路基板は、基板の片面のみに本発明の多層プリント回路基板用フィルムを2層以上積層したものであっても良いし、基板の両面に本発明の多層プリント回路基板用フィルムを積層したものであっても良い。また、基板に積層され、導電性回路が形成された多層プリント回路基板用フィルムよりなる電気絶縁膜上に、さらに、多層プリント回路基板用フィルムを積層したものであっても良い。
このようにして得られる多層プリント回路基板は、耐デスミア性に優れる本発明の多層プリント回路基板用フィルムを用いてなるものであるので、デスミア処理工程を経て得られた場合であっても、デスミア液の影響によって生じうる、基材層と接着層との界面で剥離が生じる等の不良が生じ難いものとなる。
本発明の多層プリント回路基板用フィルムを用いて得られる多層プリント回路基板の用途は特に限定されないが、例えば、コンピューターや携帯電話などの電子機器における、CPUやメモリなどの半導体素子、その他の実装部品用基板として好適に使用できる
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
(1)重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw):トルエンまたはテトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)重合体の水素化率:水素化率は、水素化前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(3)重合体のカルボン酸無水物基含有率:重合体中の総単量体単位数に対するカルボン酸無水物基のモル数の割合をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(4)重合体のガラス転移温度(Tg):示差走査型熱量計(DSC)を用い、JIS K7121−1987に基づいてもとめた中間点温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(5)フィルム表面上の酸素原子/炭素原子比(O/C比):X線光電子分光(ESCA)により測定し、酸素原子および炭素原子に対応するそれぞれのピークの面積から、酸素原子/炭素原子比(O/C比)を求めた。
(6)多層プリント回路基板用フィルムを構成する各層の厚さ:接着層を硬化する前の多層プリント回路基板用フィルムを切断して、その断面を研磨した後、その断面を光学顕微鏡で観察して測定した。
(7)耐デスミア性:ガラスフィラーおよびハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚さが18μmの銅が貼られた、厚さ0.8mm、縦150mm×横150mmの両面銅張り基板の両面に、試料となる支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを積層した後、支持体だけを剥がしとり、窒素雰囲気下60℃で30分間、次いで160℃で30分間、さらに170℃で60分間加熱して、多層プリント回路基板用フィルムの接着層を硬化させた。この積層体に、COレーザ装置(LC−2G212/2C、日立製作所社製)を用いて、出力0.65W、ショット回数3、加工径(上面)55μm、加工径(下面)50μmの条件により、銅表面まで貫通したビアホールを形成した耐デスミア性評価用基板を作成した。この基板を、過マンガン酸濃度60g/リットル、水酸化ナトリウム濃度28g/リットルになるように調整した80℃の水溶液に20分間揺動浸漬した。次いで、この基板を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した。続いて硫酸ヒドロキシルアミン濃度170g/リットル、硫酸80g/リットルになるように調整した25℃の水溶液に、基板を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。このようにして得られた基板のビアホール部分を光学顕微鏡で観察し、接着層と基材層との剥離が生じている部分の長さ(剥離の発生長さ)を測定し、その結果に基づいて下記の基準で判定した。
A+:剥離が確認できない
A:剥離の発生長さが5μm未満
B:剥離の発生長さが5μm以上
C:基材層と接着層とが完全に剥離して分離した
(8)芳香族ポリアミド樹脂のフッ素原子含有の有無:原料モノマーが既知の場合は原料モノマーから判断した。不明な場合は熱分解GC−Mass法を用いて分析した。
(9)芳香族ポリアミド樹脂のハロゲンフリーの判定:JPCA−ES01−2003に準拠した測定法、判定基準を用いてハロゲンフリーか否かを判定した。
(10)芳香族ポリアミド樹脂の吸湿率:フィルムを約0.5g採取し、脱湿のため150℃で2時間の加熱を行った後、窒素気流下で25℃まで降温し、その降温後の質量を0.1mg単位まで正確に秤量した(この時の質量をW0とした)。次いで、25℃で75RH%の雰囲気下に48時間静置し、その後の質量を測定し、これをW1として、以下の式を用いて吸湿率を求めた。
吸湿率(%)=((W1−W0)/W0)×100
〔合成例1〕
攪拌機を備えた700L重合槽にN−メチル−2−ピロリドン674.68kg、無水臭化リチウム10.59kg(シグマアルドリッチジャパン社製)、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レファインケミカル社製「TFMB」)33.28kg、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製「44DDS」)2.87kgを入れ窒素雰囲気下、15℃に冷却、攪拌しながら330分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)18.49kg、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レファインケミカル社製「4BPAC」)6.35kgを5回に分けて添加した。60分間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和して芳香族ポリアミド溶液を得た。
〔製造例1〕
合成例1で得られたポリマー溶液の一部を最終のフィルム厚みが9μmになるようにTダイを用いてエンドレスベルト上に流延し、ポリマー溶液が自己支持性を持つ様に乾燥してエンドレスベルトから剥離した。次に溶媒を含んだフィルムを水洗して溶媒を除去した。さらに280℃の乾燥炉で熱処理し、厚み9.0μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。得られた芳香族ポリアミドフィルムはTFMBに由来するフッ素原子を含有するものである。また、得られた芳香族ポリアミドフィルムはハロゲンフリーであり、吸湿率2.8%であった。
〔合成例2〕
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン70部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物30部、1−ヘキセン1.1部、キシレン300部およびルテニウム系重合触媒(C1063、和光純薬社製)0.009部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で2時間の重合反応を行って開環メタセシス重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99.9%以上であった。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環メタセシス重合体の溶液100部を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素化反応を行って、カルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体の溶液を得た。得られたカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体の重量平均分子量は、63,000、数平均分子量は28,000、分子量分布は2.3であった。また、水素添加率は99.9%であり、カルボン酸無水物基含有率は30モル%、Tgは160℃であった。カルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体の溶液の固形分濃度は25%であった。
〔製造例2〕
合成例2で得たカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体の溶液400部(カルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン重合体の量として100部)、硬化剤として水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名YX8000、ジャパンエポキシレジン社製)36部、紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール1部、老化防止剤として1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン1部、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部、および柔軟性改良のための成分として液状ポリブタジエン(商品名Ricon152、サートマージャパン社製)10部を、固形分濃度が30%になるように、遊星攪拌機を用いてキシレンと混合させて硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
〔実施例1〕
製造例1で得たフッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂のフィルム(縦250mm×横250mm、厚さ9μm、O/C比0.09)を大気圧プラズマ処理装置(ADMASTERII−300dM:イー・スクエア社製)で出力0.9kW、窒素流量200L/分、クリーンドライエア流量200L/分、搬送速度0.5m/分、処理回数1回の条件でプラズマ処理した。このプラズマ処理後のフィルムにつき、O/C比を測定したところ、0.24であった。次いで、縦300mm×横300mmの大きさで厚さが100μm、表面平均粗さRaが0.08μmのポリエチレンナフタレートフィルムを用意し、その上に、プラズマ処理したフッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂のフィルムを設置し、このフィルム上に、製造例2で得た硬化性樹脂組成物のワニスを、YD型のドクターブレード(隙間寸法130μm)を用いて塗工した。次いで、ワニスが塗工されたフィルムを、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥することにより、多層プリント回路基板用フィルムの接着層となる硬化性樹脂組成物の層を形成させた。
得られたフッ素化ポリアミドフィルムと硬化性樹脂組成物との積層体からポリエチレンナフタレートフィルムを剥がし、先の塗工面の裏側の面(ポリエチレンナフタレートフィルムを剥離した面)が表面として現れるように、再度、この積層体とポリエチレンナフタレートフィルムとを積層させた。この積層体の表面に、同様の手法で硬化性樹脂組成物のワニスを塗工し、乾燥させることにより、もう1つの接着層を形成し、ポリエチレンナフタレートフィルムを支持体とする、支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを得た。この多層プリント回路基板用フィルムの2つの接着層の厚さは、それぞれ10μmであった。この支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを用いて、耐デスミア性の評価を行なったところ、結果はA+(剥離が確認できない)であった。
一方、ガラスフィラーおよびハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚さが18μmの銅が貼られた、厚さ0.8mm、縦150mm×横150mmの両面銅張り基板の表面に、有機酸を用いてマイクロエッチング処理を行い、配線幅および配線間距離が10μmで、厚さが10μmである導電性回路を形成し、表面に導電性回路を有する基板を得た。
上記で得た支持体付きの多層プリント回路基板用フィルム2枚を支持体ごと縦150mm×横150mmの大きさに切断し、これらのフィルムを、上記で得た表面に導電性回路を有する基板の両面に重ね合わせた。これを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、200Paに減圧して、温度120℃、圧力1.0MPaで120秒間加熱圧着した(一次プレス)。さらに、金属製プレス板で覆われた耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、200Paに減圧して、温度120℃、1.0MPaで300秒間、加熱圧着した(二次プレス)。次いでフィルムから支持体を剥がすことにより、多層プリント回路基板用フィルムと基板との積層体を得た。
この積層体を、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾールの1.0%水溶液に30℃にて10分間浸漬し、次いで25℃の水に1分間浸漬した後、エアーナイフにて余分な溶液を除去した。これを窒素雰囲気下、160℃で30分間放置し、多層プリント回路基板用フィルムの接着層を硬化させた。この積層体を、過マンガン酸濃度60g/リットル、水酸化ナトリウム濃度28g/リットルになるように調整した70℃の水溶液に10分間揺動浸漬した。次いで、この積層体を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した。続いて硫酸ヒドロキシルアミン濃度170g/リットル、硫酸80g/リットルになるように調整した25℃の水溶液に、積層体を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
次いで、めっき前処理として、水洗後の積層体をアルカップアクチベータMAT−1−A(上村工業社製)が200ml/リットル、アルカップアクチベータMAT−1−B(上村工業社製)が30ml/リットル、水酸化ナトリウムが0.35g/リットルになるように調整した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に5分間浸漬した。次いで、この積層体を水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した後、アルカップレデユーサーMAB−4−A(上村工業社製)が20ml/リットル、アルカップレデユーサーMAB−4−B(上村工業社製)が200ml/リットルになるように調整した溶液に35℃で、3分間浸漬し、めっき触媒を還元処理した。このようにしてめっき触媒を吸着させ、めっき前処理を施した積層体を得た。
次いで、めっき前処理を施した積層体を、スルカップPSY−1A(上村工業社製)100ml/リットル、スルカップPSY−1B(上村工業社製)40ml/リットル、ホルマリン0.2モル/リットルとなるように調整した水溶液に空気を吹き込みながら、温度36℃で、5分間浸漬して無電解銅めっき処理を行った。この積層体を、更に水槽に1分間揺動浸漬し、更に別の水槽に1分間揺動浸漬することにより水洗した後、乾燥し、防錆処理を施し、無電解めっきにより銅の皮膜が形成された積層体を得た。
また、以上のようにして得られた積層体の表面(多層プリント回路基板用フィルムの接着層)に、市販の感光性レジストをスピンコートし、加熱乾燥してレジスト層を形成した。次いで、このレジスト層上に所定のパターンのマスクを密着させ露光した後、現像してレジストパターンを得た。そして、そのレジストパターンが形成されていない銅の皮膜上に電解銅めっきを施し厚さ12μmの電解銅メッキ膜を形成させ、次いで、レジストパターンを剥離液にて剥離除去し、さらに、レジスト層の下に存在していた無電解銅めっきに形成された銅の皮膜を塩化第二銅と塩酸混合溶液により除去して、導電性回路のパターンを形成した。最後に、この積層体を170℃で30分間アニール処理することにより、多層プリント回路基板を得た。
〔実施例2〕
製造例1で得たフッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂のフィルムをプラズマ処理しないこと以外は、実施例1と同様にして、支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを得た。この支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを用いて、耐デスミア性の評価を行なったところ、結果はA(剥離の発生長さが5μm未満)であった。
〔比較例1〕
フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂のフィルムに代えて、縦250mm×横250mmの大きさで厚さが12.5μmの市販のポリイミドフィルム(商品名ユーピレックスS:宇部興産社製:O/C比0.09)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを得た。この支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを用いて、耐デスミア性の評価を行なったところ、結果はB(剥離の発生長さが5μm以上)であった。
〔比較例2〕
市販のポリイミドフィルムのプラズマ処理を行わなかったこと以外は、比較例1と同様にして、支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを得た。この支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを用いて、耐デスミア性の評価を行なったところ、結果はC(基材層と接着層とが完全に剥離して分離した)であった。
〔比較例3〕
市販のポリイミドフィルムに代えて、縦250mm×横250mmの大きさで厚さが13μmの市販の液晶ポリマーフィルム(商品名バイアック:ジャパンゴアテックス社製)を用いたこと以外は、比較例2と同様にして、支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを得た。この支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを用いて、耐デスミア性の評価を行なったところ、結果はC(基材層と接着層とが完全に剥離して分離した)であった。
〔比較例4〕
フッ素原子を含有する芳香族ポリアミドのフィルムに代えて、フッ素原子を含有しない芳香族ポリアミドのフィルム(商品名ミクトロン:東レ社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを得た。この支持体付きの多層プリント回路基板用フィルムを用いて、耐デスミア性の評価を行なったところ、結果はB(剥離の発生長さが5μm以上)であった。
実施例1、2および比較例1〜4よりわかるように、実施例1、2の多層プリント回路基板用フィルムは、耐デスミア性に優れている。一方、基材層として、フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂以外の従来の材料を用いて得られる比較例1〜4の多層プリント回路基板用フィルムは、耐デスミア性の評価において、基材層と接着層との剥離が観測されたことから、耐デスミア性に劣るものであった。

Claims (4)

  1. フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂からなる基材層と、基材層の少なくとも片面側に積層され、官能基を有する脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含んでなる硬化性樹脂組成物からなる接着層とにより形成されてなる多層プリント回路基板用フィルム。
  2. フッ素原子を含有する芳香族ポリアミド樹脂の吸湿率が、4.0%以下である請求項1に記載の多層プリント回路基板用フィルム。
  3. 基材層が、プラズマ処理またはコロナ処理されたものである請求項1または2に記載の多層プリント回路基板用フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の多層プリント回路基板用フィルムを用いてなる多層プリント回路基板。
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