JP2004243605A - フッ素樹脂繊維シート、それを用いたプリント配線板用金属張基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、比誘電率及び誘電正接の部分的ばらつきが小さく、プリント配線板用金属張基板の導電層表面に微小な凹凸がなく平滑で、かつ絶縁層と金属箔との密着力に優れたプリント配線板用金属張基板及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着しているフッ素樹脂繊維シートであって、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とが、MpA−MpB>0の関係を満足することを特微とするフッ素樹脂繊維シートである。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明は、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着しているフッ素樹脂繊維シートであって、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とが、MpA−MpB>0の関係を満足することを特微とするフッ素樹脂繊維シートである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂繊維シート、それを用いたプリント配線板用金属張基板及びその製造方法に関する。特に表面の平滑性に優れ、情報通信機器等で高周波帯で用いられるアンテナ部品の配線や、ICパッケージ等の半導体の高密度配線及び小型機器の精密配線等に好適なプリント配線板用金属張基板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のプリント配線板関連分野において、誘電特性が優れたプリント配線板用基板及びその製造方法としては、次のようなものが一般的であった。すなわち、従来技術による基板は、ガラスクロスからなる基材に対して、ポリテトラフルオロエチレン(以下,PTFEと称す)樹脂ディスパージョンの含浸および焼結処理を数回繰り返してガラス繊維とPTFEとからなるシートを作製し、次に該シートを銅箔と重ね、加熱圧着して一体化して製造されていた(例えば特許文献1参照)。前記シートを複数枚重ねて基板とする場合は、該シート間にテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂層もしくはテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂層を、フィルムとして介在させるか、もしくはコーティング等により形成し、さらに最外層に配置される銅箔との間にも上記の樹脂層を形成し、積み重ねられたシートと、銅箔とを加熱圧着して一体化形成するものであった。このような方法により、比誘電率が2.0〜3.5、誘電正接0.0010程度のプリント配線板用金属張基板を作製していた。
【0003】
上記のような従来のガラスクロスを用いたフッ素樹脂金属張基板は、表面にガラスクロスの織目による微小な凹凸が存在するために、回路パターン形成やスルーホール形成の精度が低下したり、回路パターンが伸縮して損傷を生ずる問題を有していた。特に小型で精密な配線板においては、性能の信頼性に欠けるという問題があった。
また、上記の問題点は、下記現象に由来することも確認されており、何れにせよガラスクロスを用いることの弊害が指摘されていた。すなわち、従来の基板はガラスクロスを用いていたために、熱処理時の寸法変化率が基板のX方向(ガラスクロスの長尺方向)、およびY方向(ガラスクロスの幅方向)では小さく、Z方向(基板の厚さ方向)では大きくなる傾向があった。また、ガラスクロスにおいて経糸と緯糸に残留するテンションの差により、導電層での回路パターン形成時や熱処理時等に、X方向とY方向の寸法変化に差が生じ基板に歪みが発生したり、ガラスクロスの織目部分でのガラス繊維同士のずれや動きによって寸法変化の値が大きくなる傾向があった。
【0004】
更に、従来のガラスクロスを用いたフッ素樹脂金属張基板は、ガラスクロスが織目構造になっているために、材料構成が部分部分で不均一であるがため、比誘電率及び誘電正接が部分部分で不均一であった。すなわち、配線板上の回路から見て、その真下が目開き部分であるか、ガラス繊維部分であるか、或いは経糸と緯糸の交差部分であるかによって比誘電率及び誘電正接にばらつきを生じた。このために、配線板上に設けられた高周波フィルター等の特性が安定しないという問題点を有するものであった。当該織目構造による不均一性による問題は、プリント配線板のZ方向についても生じ、例えばスルーホールのメッキ層が均一に形成されないばかりでなく、フッ素樹脂が多い部分でメッキ層が欠落する場合があった。
また、ガラスクロスとPTFEとの界面に微細な空隙が残存し、空隙にエッチング液が入りやすく吸水率が大きいとか、大気中の水分を取り込みやすく、比誘電率及び誘電正接が大きくなるという問題もあった。
【0005】
上記のようなガラス繊維織布とPTFEディスパージョンを用いて作製された基材によるプリント配線板の不均一性を解決するために、ポリテトラフルオロエチレン繊維と無機繊維とを混合して湿式抄造して作製したシートを加熱焼結したプリント配線板用基材シートが開示されている(特許文献2参照)。湿式抄造により得られたシートは繊維の分布が均一であるので、プリント配線板用基板とした場合、ガラスクロスタイプの場合のような誘電特性の部分的ばらつきの問題は少ない。しかし、近年の情報通信機器や半導体パッケージなどの分野での小型化、高精細化への要求が高まる中ではパターン形成やスルーホール形成のさらなる精度の向上が求められるようになってきた。この点、上記のようにフッ素樹脂繊維シートを用いた基板はガラスクロスタイプに比べれば格段と優れたものではあるが、フッ素樹脂繊維シートは多孔質であるため基板の導電層の表面に微少な凹凸が発生するのを避けられなかった。これを改善するために金属張基板作製時に加熱温度を高くしても、PTFE繊維が流動化し難いためや、無機繊維が流動化を妨げるため、上記問題を解決できなかった。また、絶縁層と導電層の界面も微少な凹凸があり、界面を伝播する高周波が使われる場合好ましくない。よって、小型化、精密化及び高周波対応の要求を十分に満足するものではなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−323501号公報
【特許文献2】
特開平3−218690号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明が解決しようとする課題は、比誘電率及び誘電正接の部分的ばらつきが小さく、プリント配線板用金属張基板の導電層の表面に微小な凹凸がなく平滑で、かつ、絶縁層と金属箔との密着力に優れ、寸法変化率の小さいフッ素樹脂プリント配線板用金属張基板、及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために種々検討の結果、下記手段を見出した。
本発明のフッ素樹脂繊維シートは、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着しているフッ素樹脂繊維シートであって、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とが下記式(1)を満足することを特微とするフッ素樹脂繊維シートである(請求項1)。
MpA−MpB>0……(1)
【0009】
また、本発明のプリント配線板用金属張基板は、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着しているフッ素樹脂繊維シートであって、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とが下記式(1)を満足することを特微とするフッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に、導電性金属層を有することを特徴とするプリント配線板用金属張基板である(請求項8)。
MpA−MpB>0……(1)
【0010】
また、本発明のプリント配線板用金属張基板の製造方法は、フッ素樹脂繊維Aと、耐熱性絶縁繊維とを含有するスラリーを湿式抄造法でシート化しフッ素樹脂繊維一次シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維一次シートの少なくとも片面にフッ素樹脂粒子Bを付着させ、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で熱処理して繊維および粒子を融着して紙状のフッ素樹脂繊維シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に導電性金属箔を積層し、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で加熱圧着する工程とからなることを特徴とするプリント配線板用金属張基板の製造方法である。
但し、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)とフッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とは下記式(1)を満足する。(請求項9)
MpA−MpB>0……(1)
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明において用いられる各材料について説明する。
本発明のフッ素樹脂繊維シートは、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着していることが必要である。また、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子B(℃)の融点MpBとが下記式(1)を満足することが必要である。
MpA−MpB>0……(1)
MpA−MpB=0(℃)であると、導電性金属層の表面粗さが大きくなり、また、導電性金属層と絶縁層との密着力が小さくなる。
さらに、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とは下記式(2)を満足することが好ましい
60>MpA−MpB>10……(2)
MpA−MpBが60℃以上であると、フッ素樹脂粒子Bの耐熱性が低く、プリント配線板用金属張基板の熱に対する寸法安定性が低下する傾向となる。また、10℃以下であると、導電性金属層の表面粗さが大きくなる傾向、導電性金属層と絶縁層との密着力が小さくなる傾向となる。
なお、本発明における融点とは、示差走査熱量測定(DSC)の吸熱曲線での最大ピーク温度のことである。
【0012】
本発明のフッ素樹脂繊維シートは、構成する材料の分布が均一であればよくその製法を問わないが、均一性を発現させるためには、湿式抄造法で作製されたものが好ましい。
フッ素樹脂繊維Aは、本発明のフッ素樹脂繊維シートの主体を構成するものである。フッ素樹脂粒子Bは、金属張基板作製時に低粘度化して流動し空隙を埋め、フッ素樹脂繊維シートの表面を平滑化する。よって、導電性金属層表面、及び導電性金属層と絶縁層との界面の微小な凹凸はなくなり、導電性金属層を構成する金属箔と絶縁層を構成するフッ素樹脂繊維シートとの密着力も高まる。
耐熱性絶縁繊維は、基板の寸法安定性を高める。耐熱性絶縁繊維の添加によって、基板のXY方向及びZ方向の熱膨張係数を抑えたり、基板の曲げ強度および曲げ弾性などの機械的強度の向上させることができる上、種類や配合量によっては比誘電率の調整も可能となる。
【0013】
各々の繊維の配合比率は、フッ素樹脂繊維と耐熱性絶縁繊維の合計の重量を100%として、フッ素樹脂繊維Aが60〜95%、耐熱性絶縁繊維が5〜40%であることが好ましく、さらには各々80〜95%、5〜20%であることがより好まい。
フッ素樹脂繊維Aが60%未満であると耐熱性絶縁繊維が多い場合の下記弊害が生じ易くなり、95%を超えるとプリント基板にした場合の寸法安定性が確保できにくくなる。
耐熱性絶縁繊維の含有量が5%未満では前記強度向上及び寸法安定性への寄与が十分ではなく、40%を超えると比誘電率が高くなったり、湿式抄造時の分散の均一性に問題が生じたり、シート強度が弱くなり後の工程で取り扱いにくくなる。
【0014】
フッ素樹脂粒子Bは上記フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維とを含有するフッ素樹脂繊維シートの少なくとも片面に5g/m2から100g/m2の範囲の量が付着していることが好ましい。さらには10g/m2〜50g/m2であることがより好ましい。5g/m2未満では、加熱圧着時に多孔質部分や凹凸部分の穴埋めが不十分である。また、100g/m2を超えると融点が低いフッ素樹脂粒子Bの比率が大きくなり基板の寸法安定性が悪くなる。
【0015】
フッ素樹脂繊維A及びフッ素樹脂粒子Bとしては具体的には、前記ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(融点327℃)の他に、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP、融点275℃)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA、融点310℃)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、融点220℃)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、融点156〜178℃)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE、融点270℃)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE、融点220〜245℃)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE、融点295℃)の繊維及び粒子が挙げられる。フッ素樹脂繊維Aとしては、中でも、PTFE繊維が比誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性、耐薬品性にも優れているので、本発明のフッ素樹脂金属張基板を得るのに好ましい。フッ素樹脂粒子Bとしては、PTFEに近い融点をもつPFA或いはFEPが好ましい。
なお、本発明で用いるフッ素樹脂繊維A及びフッ素樹脂粒子Bには、各々2種以上を混合して使用することもできる。
【0016】
本発明で用いられるフッ素樹脂繊維Aの直径及び繊維長は、特に限定されず、本発明の湿式抄造法によって抄造が可能であればよく、形状は単純な繊維状あるいは、粒状(球状、不定形など)、フィブリッド状、パルプ状、その他様々な形状等、特に限定されるものではないが、例えば、直径は1μm〜50μm、長さは0.1mm〜10mmのものが使用される。直径及び長さが、上記範囲の下限未満では抄造時の脱水性が悪く生産性が低下し、上限を超えると薄い一次シートを作製しにくくなる。
【0017】
また、フッ素樹脂繊維として、フッ素樹脂繊維シートに要求される特性、具体的には本発明におけるシート強度、寸法安定性、及び耐熱性絶縁繊維や必要に応じて使用される無機微粒子の含有量等によって、フッ素樹脂繊維の形態がフィブリル化されているものとフィブリル化されていないものを選択して使用でき、場合によっては混合して使用することができる。
【0018】
フィブリル化の度合いは、フッ素樹脂繊維シートの平均孔径、最大孔径やシート強度などとの関係で決定される。例えば、より強いシート強度を必要とする場合には、フィブリル化の程度を進めた繊維を使用することが好ましい。また、それによってフッ素樹脂繊維と他の材料との接着力も向上する。
フィブリル化の度合いは、JIS P8121:1995に記載のろ水度によって表わすことができる。
フィブリル化のための手段としては、一般的な叩解機であるボールミル、ビーター、ランペンミル、PFIミル、SDR(シングルディスクリファイナー)、DDR(ダブルデスクリファイナー)、その他のリファイナー等を使用することができる。
【0019】
本発明に使用できるPTFE繊維の例としては、PTFE微粒子をビスコース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの親水性の結着剤マトリックス中に分散し、細孔から凝固浴に紡出させて得られた延伸または未延伸の繊維が挙げられる。この場合、得られた延伸または未延伸のPTFE繊維を3〜15mmの長さに切断し、耐熱性絶縁繊維や無機微粒子、その他原料とともに、ポリアクリルアミドなどの分散剤を用いて水に分散して抄紙原料を調整する。この抄紙原料を円網式、長網式、短網式、傾斜式などの抄紙機で抄紙し、PTFE繊維の一次シートを作製する。PTFE繊維の一次シート化において、PTFE繊維に配合されているマトリックス物質が、抄紙の際に繊維間の結着機能を発揮する。
【0020】
耐熱性絶縁繊維としては無機繊維と有機繊維とがあるが、金属張基板の熱膨張係数や寸法変化率を抑えるためには、繊維自身の弾性率が大きく剛直であることが好ましい。
無機繊維としてガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミニウムシリケート繊維などがあるが、金属張基板の熱膨張係数や寸法変化率を抑えるという目的を十分に達成でき、かつ価額が安いガラス繊維が好ましく使用される。
有機繊維としては、いわゆるスーパー繊維と称せられる高耐熱性、高強度・高弾性率繊維が使用でき、例えばポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(以下、PBO繊維と称す)、芳香族ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維等を使用できるが、最も弾性率が大きいPBO繊維が好ましい。
また、上記耐熱性絶縁繊維を複数種類混合して用いることもできる。
【0021】
上記耐熱性絶縁繊維の形状は、特に限定されるものではないが、直径は50μm以下が好ましく、長さは0.1〜20mmが好ましい。直径が50μmを超えて大きいと薄いシートを作製しにくくなる。長さが0.1mm未満では寸法安定性の効果が出にくく、20mmを超えて大きいと均一に分散しにくくなる。
【0022】
前記耐熱性絶縁繊維が有機繊維の場合はフィブリル化させて使用することもでき、それによって繊維間の絡み合いが強固になり、3次元方向の絡み合いも強化され、金属張基板において、Z方向の熱膨張性を含めた寸法安定性が非常に向上する。
フィブリル化の度合いは、フッ素樹脂繊維一次シート強度や無機微粒子含有量などとの関係で決定される。例えば、より強いシート強度を必要とする場合、或いは無機微粒子添加量が多い場合には、フィブリル化の程度を進めた繊維を使用する事が望ましい。これにより無機微粒子の歩留りも向上する。
【0023】
また、本発明においては、金属張基板の比誘電率を高め、及び/または寸法安定性をより向上させたい場合はフッ素樹脂繊維一次シートに無機微粒子を配合することができる。無機微粒子の種類の選択や配合によって、金属張基板の誘電正接は低いまま比誘電率を高くし、かつ金属張基板のX方向、Y方向及びZ方向の熱膨張係数や寸法変化を抑えたり、基板の曲げ強度および曲げ弾性率などの機械的強度も向上させることができる。
【0024】
本発明におけるフッ素樹脂繊維一次シートの坪量は、10〜1500g/m2であり、使用用途に応じて適切な坪量が決定される。
【0025】
フッ素樹脂粒子Bとしては、水に分散されているディスパージョンや溶剤に分散している塗料、粒子そのもの等特にその付着させる粒子の形態は問わない。最終的に少なくともシートの片面に所望の量が付着できればよい。粒子の粒子径、形状は特に問わない。
【0026】
次に請求項8で特定する本発明のプリント配線板用金属張基板について説明する。
本発明のプリント配線板用金属張基板は、前記フッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に、導電性金属層を有する。フッ素樹脂繊維シートは必要に応じて複数枚を積層して使用してもよい。導電性金属層は、両面に設ける場合と片面に設ける場合とがある。
【0027】
また、本発明に導電層に使用される金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル、鉄等の単独の箔、合金箔、複合箔などを用いることができるが、特に銅箔が電気伝導性が良好な点で好ましい。この場合、電解銅箔、圧延銅箔いずれでもよく限定するものではない。また、金属箔としてすでに回路パターンとなっている金属箔を用いることもできる。また、必要に応じて金属箔の片面に接着剤層を設けておくことができる。
金属箔の厚みは特に限定されるものではないが、厚さ9〜35μmが高周波プリント回路の加工精度を確保する面で好ましい。
【0028】
次に本発明のプリント配線板用金属張基板の製造方法を述べる。
本発明のフッ素樹脂繊維一次シートの製造方法は、通常の製紙に用いられる湿式抄造法が用いられる。すなわち、規定量のフッ素樹脂繊維A、耐熱性絶縁繊維等を水中で攪拌、混合し、好ましくは、固体分濃度が0.5%以下になるように濃度調整したスラリーを、円網式、長網式、短網式、傾斜式などの湿式抄紙機に適用し、連続したワイヤメッシュ状の脱水パートで脱水し、その後、多筒式ドライヤーやヤンキードライヤーなどで乾燥して一次シートを得る。 本発明においては、プリント配線板用金属張基板のX方向及びY方向の寸法変化率の差を小さくするという点で、繊維配向がランダムになり易い長網式、短網式、傾斜式が好ましく、傾斜式がより好ましい。特に傾斜式の場合は耐熱性絶縁繊維を厚さ方向に配向させる、つまり紙状物内において厚さ方向に繊維を立たせることも可能であり、金属張基板におけるZ方向の寸法安定性に効果を発揮する。
【0029】
また、本発明のフッ素樹脂繊維一次シートには通常の製紙で用いられる各種の紙力増強剤、分散剤、消泡剤、合成粘剤や顔料などの添加剤を配合することができる。
【0030】
このように得られた本発明のフッ素樹脂繊維一次シートは、ガラスクロスを基材とするシートや乾式法不織布と比較して、各種原料の分布がX方向,Y方向及びZ方向において均一であり、かつ、地合いが均一であるという優れた特徴を有していて、その結果、基板の誘電特性の部分的ばらつきが小さいという利点を有する。
【0031】
次に得られたフッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維とを含む一次シートの少なくとも片面にフッ素樹脂粒子Bを付着させる。フッ素樹脂粒子Bは水に分散したディスパージョン、塗料、粒子そのもの等特に形態は問わない。取り扱いやすさから水に分散したディスパージョンがより好ましい。少なくともシートの片面に付着させる方法としてはディッピング、含浸、スプレー、塗工、その他の塗布により付着させることができる。ディッピング、含浸ではシートの両面に同時に付着させることができるが、その他の方法でシート両面に付着させることが必要な場合は、片面に付着させた後、もう一度同じ工程で反対面に付着させることができる。
【0032】
次にフッ素樹脂粒子Bが付着したフッ素樹脂繊維シートをフッ素樹脂繊維Aの融点以上の温度で、電気炉等で焼結し、紙状のフッ素樹脂繊維シートとする。焼結によりフッ素樹脂繊維A同士間、フッ素樹脂繊維Aとフッ素樹脂粒子B間、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維間、フッ素樹脂繊維Aと無機微粒子間、及びフッ素樹脂粒子B同士間等を融着せしめると共に、有機物質は熱分解され除去される。前記のPTFE繊維を使用した場合は、PTFE繊維中のマトリックス樹脂はこの工程で熱分解し除去される。
【0033】
このようにして得られた本発明のフッ素樹脂繊維シートを金属箔と貼り合わせるのは次のように行われる。
上記シートを所定の大きさに裁断し、所定枚数と金属箔とを重ね合わせる。本発明では使用するシートの枚数は特に限定されず、目的とする基板の厚さ及び使用するフッ素樹脂繊維シートの厚さあるいは坪量によって決められる。複数枚の場合は、シート製造時の長尺方向(縦方向)と幅方向(横方向)とが交互に90°に直交して重なり合うようにするとX方向及びY方向の寸法安定性の点で好ましい。また、基板のX方向及びY方向での寸法変化率、及びその差を出来るだけ小さくするためには重ねる枚数は偶数が好ましい。このようにして得られたものを絶縁層とし、その絶縁層の上下両面、或は片面に導電層としての金属箔を重ねて、フッ素樹脂Aの融点以上の温度で加熱圧着する。なお、金属箔の裏面、つまり絶縁層と接触する面には、多数の微小な突起が設けられており、これらが、絶縁層つまりフッ素樹脂繊維を主成分とするシートの表面に食い込んだ状態で加熱圧着される。これにより金属箔が絶縁層と密に接着した導電層を構成する。
【0034】
フッ素樹脂繊維AにPTFE繊維を用いた場合の成型条件の例は、PTFE繊維シートの両面(場合によっては片面)に銅箔を配置し、PTFEの融点327℃以上の温度、例えば380℃でかつ圧力1MPaの条件下にて90分間真空プレスによる加熱圧着処理を行い、一体成形したプリント配線板用両面銅張板とすることができる。
【0035】
上記の如く作製された本発明のプリント配線板用金属張基板の比誘電率は、耐熱性絶縁繊維および無機微粒子の種類と配合量での調整も可能である。
【0036】
その後、回路パターンの導電層形成のための後工程を施し、所望のパターンの導電路を設けたフッ素樹脂プリント配線板を得ることができる。パターン形成は、剥離現像型ホトレジスト、溶融現像型ホトレジスト等を用いて行われる。例えば、銅箔表面にアルカリ現像型ホトレジスト膜を形成し、ホトマスクを介して所望のパターンを露光する。次に、銅箔の露出部をエッチングなどにより除去し、さらにホトレジストの露光部を溶解除去して、所望のパターンの導電層を有するフッ素樹脂プリント配線板が得られる。
【0037】
上記本願発明のプリント配線板用金属張基板の製造方法をまとめると、フッ素樹脂繊維Aと、耐熱性絶縁繊維とを含有するスラリーを湿式抄造法でシート化しフッ素樹脂繊維一次シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維一次シートの少なくとも片面にフッ素樹脂粒子Bを付着させ、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で熱処理して繊維および粒子を融着して紙状のフッ素樹脂繊維シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に導電性金属箔を積層し、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で加熱圧着する工程とからなる。
【0038】
以下、さらに本発明を実施例を以って説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
フッ素樹脂繊維AとしてPTFE繊維(東レファインケミカル社製、商品名:トヨフロン、繊維長3mm、繊維径15μm、組成:PTFE微粒子86重量%、ビスコース14重量%、MpA327℃)、耐熱性絶縁繊維としてガラス繊維(ユニチカグラスファイバー社製、商品名:PDE1/8ZA509、繊維長3mm、繊維径6μm)を下記配合比になるよう採取してスラリー用原料とした。
フッ素樹脂繊維A……85重量%(PTFEとして)
耐熱性絶縁繊維………15重量%
この原料を水に添加し、攪拌し、均一に分散させ濃度0.5重量%のスラリーを得た。このスラリーを用い、傾斜式湿式抄紙機を用いて湿紙を作製し、脱水し、130℃に加熱調整したヤンキー式ドライヤーを用いての乾燥工程を経て、フッ素樹脂繊維一次シートを得た。その一次シートの両面に、フッ素樹脂粒子Bとして水にPFA粒子が分散しているPFAディスパージョン(三井フロロケミカル製、商品名:ENAー042、MpB310℃)をスプレーを用いて片面30g/m2づつ両面に塗布し、その後、該シートを380℃に加熱調整した電気炉を通して熱処理し、繊維間を融着して、坪量260g/m2の紙状のフッ素樹脂シートを得た。その得られたシートから300×300mmの大きさのシートを切り出し、その上下に金属箔として電解銅箔(福田金属箔工業社製、商品名:CF−T9、厚さ18μm)を重ねて配置し、真空下で、1MPaの加圧、380℃の加熱で90分間圧着を行い本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
【0039】
<実施例2>
フッ素樹脂粒子Bを片面5g/m2づつ一次シートの両面に付着させたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
<実施例3>
フッ素樹脂粒子Bを片面100g/m2づつ一次シートの両面に付着させたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。<実施例4>
フッ素樹脂繊維A、耐熱性絶縁繊維の配合比率を各々55重量%、
45重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
<実施例5>
フッ素樹脂繊維A、耐熱性絶縁繊維の配合比率を各々97重量%、3重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
【0040】
<比較例1>
フッ素樹脂粒子Bをフッ素樹脂繊維シート表面に付着させないこと以外は、実施例1と同様にして比較用の本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
<比較例2>
耐熱性絶縁繊維を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
<比較例3>
フッ素樹脂粒子BをPTFE粒子(ダイキン工業社製、商品名:D−1E、MpB327℃)としたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
【0041】
実施例1〜5、比較例1〜3のプリント配線板用金属張基板に対して下記の評価を行い結果を表1に示した。
1.比誘電率:JIS C6481に準じて、10MHzにて測定した。(実用上必要な値は2.3以下である。)
2.表面粗さ(Rz):JIS C6515に準じて、導電層表面の10点平均表面粗さ(Rz)を測定した。(目標とする値は3.0μm以下である。)
3.銅箔密着力(引きはがし強さ):JIS C6481 5.7に準じて測定した。(目標とする値は15N/cm以上である。)
4.寸法変化率:加熱処理(150℃/30分)後のX方向、Y方向の寸法変化率をJIS C6481 5.16(3)に準じて測定した。(実用上必要な値は0.3%以下である。)
【0042】
【表1】
【0043】
表1より、次の諸点が確認された。
本発明の実施例1〜5の金属張基板は、比誘電率2.3以下、表面粗さ(Rz)3.0μm以下、銅箔密着力15N/cm以上、寸法変化率0.3%以下を得ることができ、従来品にはない優れたプリント配線板用金属張基板であった。
比較例1は、フッ素樹脂粒子Bを併用していないので、フッ素樹繊維シートの空隙を良好に埋めることが出来ず、従って、表面粗さ(Rz)が大きく粗いものとなり、また銅箔密着力が不十分なものとなり実用上支障をきたすものであった。
比較例2は、耐熱性絶縁繊維を使用していないので寸法変化率が大きく実用上支障をきたすものであった。
比較例3は、フッ素樹脂粒子Bの融点がフッ素樹脂繊維Aの融点と同一であるため、表面粗さが大きく、銅箔密着力が小さかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、比誘電率及び誘電正接の部分的ばらつきが小さく、プリント配線板用金属張基板の導電層表面に微小な凹凸がなく平滑で、かつ絶縁層と金属箔との密着力に優れたプリント配線板用金属張基板及びその製造方法を提供することができ、特に小型、精密配線用及び高周波用として適する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂繊維シート、それを用いたプリント配線板用金属張基板及びその製造方法に関する。特に表面の平滑性に優れ、情報通信機器等で高周波帯で用いられるアンテナ部品の配線や、ICパッケージ等の半導体の高密度配線及び小型機器の精密配線等に好適なプリント配線板用金属張基板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のプリント配線板関連分野において、誘電特性が優れたプリント配線板用基板及びその製造方法としては、次のようなものが一般的であった。すなわち、従来技術による基板は、ガラスクロスからなる基材に対して、ポリテトラフルオロエチレン(以下,PTFEと称す)樹脂ディスパージョンの含浸および焼結処理を数回繰り返してガラス繊維とPTFEとからなるシートを作製し、次に該シートを銅箔と重ね、加熱圧着して一体化して製造されていた(例えば特許文献1参照)。前記シートを複数枚重ねて基板とする場合は、該シート間にテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂層もしくはテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂層を、フィルムとして介在させるか、もしくはコーティング等により形成し、さらに最外層に配置される銅箔との間にも上記の樹脂層を形成し、積み重ねられたシートと、銅箔とを加熱圧着して一体化形成するものであった。このような方法により、比誘電率が2.0〜3.5、誘電正接0.0010程度のプリント配線板用金属張基板を作製していた。
【0003】
上記のような従来のガラスクロスを用いたフッ素樹脂金属張基板は、表面にガラスクロスの織目による微小な凹凸が存在するために、回路パターン形成やスルーホール形成の精度が低下したり、回路パターンが伸縮して損傷を生ずる問題を有していた。特に小型で精密な配線板においては、性能の信頼性に欠けるという問題があった。
また、上記の問題点は、下記現象に由来することも確認されており、何れにせよガラスクロスを用いることの弊害が指摘されていた。すなわち、従来の基板はガラスクロスを用いていたために、熱処理時の寸法変化率が基板のX方向(ガラスクロスの長尺方向)、およびY方向(ガラスクロスの幅方向)では小さく、Z方向(基板の厚さ方向)では大きくなる傾向があった。また、ガラスクロスにおいて経糸と緯糸に残留するテンションの差により、導電層での回路パターン形成時や熱処理時等に、X方向とY方向の寸法変化に差が生じ基板に歪みが発生したり、ガラスクロスの織目部分でのガラス繊維同士のずれや動きによって寸法変化の値が大きくなる傾向があった。
【0004】
更に、従来のガラスクロスを用いたフッ素樹脂金属張基板は、ガラスクロスが織目構造になっているために、材料構成が部分部分で不均一であるがため、比誘電率及び誘電正接が部分部分で不均一であった。すなわち、配線板上の回路から見て、その真下が目開き部分であるか、ガラス繊維部分であるか、或いは経糸と緯糸の交差部分であるかによって比誘電率及び誘電正接にばらつきを生じた。このために、配線板上に設けられた高周波フィルター等の特性が安定しないという問題点を有するものであった。当該織目構造による不均一性による問題は、プリント配線板のZ方向についても生じ、例えばスルーホールのメッキ層が均一に形成されないばかりでなく、フッ素樹脂が多い部分でメッキ層が欠落する場合があった。
また、ガラスクロスとPTFEとの界面に微細な空隙が残存し、空隙にエッチング液が入りやすく吸水率が大きいとか、大気中の水分を取り込みやすく、比誘電率及び誘電正接が大きくなるという問題もあった。
【0005】
上記のようなガラス繊維織布とPTFEディスパージョンを用いて作製された基材によるプリント配線板の不均一性を解決するために、ポリテトラフルオロエチレン繊維と無機繊維とを混合して湿式抄造して作製したシートを加熱焼結したプリント配線板用基材シートが開示されている(特許文献2参照)。湿式抄造により得られたシートは繊維の分布が均一であるので、プリント配線板用基板とした場合、ガラスクロスタイプの場合のような誘電特性の部分的ばらつきの問題は少ない。しかし、近年の情報通信機器や半導体パッケージなどの分野での小型化、高精細化への要求が高まる中ではパターン形成やスルーホール形成のさらなる精度の向上が求められるようになってきた。この点、上記のようにフッ素樹脂繊維シートを用いた基板はガラスクロスタイプに比べれば格段と優れたものではあるが、フッ素樹脂繊維シートは多孔質であるため基板の導電層の表面に微少な凹凸が発生するのを避けられなかった。これを改善するために金属張基板作製時に加熱温度を高くしても、PTFE繊維が流動化し難いためや、無機繊維が流動化を妨げるため、上記問題を解決できなかった。また、絶縁層と導電層の界面も微少な凹凸があり、界面を伝播する高周波が使われる場合好ましくない。よって、小型化、精密化及び高周波対応の要求を十分に満足するものではなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−323501号公報
【特許文献2】
特開平3−218690号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明が解決しようとする課題は、比誘電率及び誘電正接の部分的ばらつきが小さく、プリント配線板用金属張基板の導電層の表面に微小な凹凸がなく平滑で、かつ、絶縁層と金属箔との密着力に優れ、寸法変化率の小さいフッ素樹脂プリント配線板用金属張基板、及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために種々検討の結果、下記手段を見出した。
本発明のフッ素樹脂繊維シートは、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着しているフッ素樹脂繊維シートであって、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とが下記式(1)を満足することを特微とするフッ素樹脂繊維シートである(請求項1)。
MpA−MpB>0……(1)
【0009】
また、本発明のプリント配線板用金属張基板は、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着しているフッ素樹脂繊維シートであって、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とが下記式(1)を満足することを特微とするフッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に、導電性金属層を有することを特徴とするプリント配線板用金属張基板である(請求項8)。
MpA−MpB>0……(1)
【0010】
また、本発明のプリント配線板用金属張基板の製造方法は、フッ素樹脂繊維Aと、耐熱性絶縁繊維とを含有するスラリーを湿式抄造法でシート化しフッ素樹脂繊維一次シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維一次シートの少なくとも片面にフッ素樹脂粒子Bを付着させ、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で熱処理して繊維および粒子を融着して紙状のフッ素樹脂繊維シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に導電性金属箔を積層し、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で加熱圧着する工程とからなることを特徴とするプリント配線板用金属張基板の製造方法である。
但し、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)とフッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とは下記式(1)を満足する。(請求項9)
MpA−MpB>0……(1)
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明において用いられる各材料について説明する。
本発明のフッ素樹脂繊維シートは、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着していることが必要である。また、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子B(℃)の融点MpBとが下記式(1)を満足することが必要である。
MpA−MpB>0……(1)
MpA−MpB=0(℃)であると、導電性金属層の表面粗さが大きくなり、また、導電性金属層と絶縁層との密着力が小さくなる。
さらに、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とは下記式(2)を満足することが好ましい
60>MpA−MpB>10……(2)
MpA−MpBが60℃以上であると、フッ素樹脂粒子Bの耐熱性が低く、プリント配線板用金属張基板の熱に対する寸法安定性が低下する傾向となる。また、10℃以下であると、導電性金属層の表面粗さが大きくなる傾向、導電性金属層と絶縁層との密着力が小さくなる傾向となる。
なお、本発明における融点とは、示差走査熱量測定(DSC)の吸熱曲線での最大ピーク温度のことである。
【0012】
本発明のフッ素樹脂繊維シートは、構成する材料の分布が均一であればよくその製法を問わないが、均一性を発現させるためには、湿式抄造法で作製されたものが好ましい。
フッ素樹脂繊維Aは、本発明のフッ素樹脂繊維シートの主体を構成するものである。フッ素樹脂粒子Bは、金属張基板作製時に低粘度化して流動し空隙を埋め、フッ素樹脂繊維シートの表面を平滑化する。よって、導電性金属層表面、及び導電性金属層と絶縁層との界面の微小な凹凸はなくなり、導電性金属層を構成する金属箔と絶縁層を構成するフッ素樹脂繊維シートとの密着力も高まる。
耐熱性絶縁繊維は、基板の寸法安定性を高める。耐熱性絶縁繊維の添加によって、基板のXY方向及びZ方向の熱膨張係数を抑えたり、基板の曲げ強度および曲げ弾性などの機械的強度の向上させることができる上、種類や配合量によっては比誘電率の調整も可能となる。
【0013】
各々の繊維の配合比率は、フッ素樹脂繊維と耐熱性絶縁繊維の合計の重量を100%として、フッ素樹脂繊維Aが60〜95%、耐熱性絶縁繊維が5〜40%であることが好ましく、さらには各々80〜95%、5〜20%であることがより好まい。
フッ素樹脂繊維Aが60%未満であると耐熱性絶縁繊維が多い場合の下記弊害が生じ易くなり、95%を超えるとプリント基板にした場合の寸法安定性が確保できにくくなる。
耐熱性絶縁繊維の含有量が5%未満では前記強度向上及び寸法安定性への寄与が十分ではなく、40%を超えると比誘電率が高くなったり、湿式抄造時の分散の均一性に問題が生じたり、シート強度が弱くなり後の工程で取り扱いにくくなる。
【0014】
フッ素樹脂粒子Bは上記フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維とを含有するフッ素樹脂繊維シートの少なくとも片面に5g/m2から100g/m2の範囲の量が付着していることが好ましい。さらには10g/m2〜50g/m2であることがより好ましい。5g/m2未満では、加熱圧着時に多孔質部分や凹凸部分の穴埋めが不十分である。また、100g/m2を超えると融点が低いフッ素樹脂粒子Bの比率が大きくなり基板の寸法安定性が悪くなる。
【0015】
フッ素樹脂繊維A及びフッ素樹脂粒子Bとしては具体的には、前記ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(融点327℃)の他に、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP、融点275℃)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA、融点310℃)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、融点220℃)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、融点156〜178℃)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE、融点270℃)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE、融点220〜245℃)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE、融点295℃)の繊維及び粒子が挙げられる。フッ素樹脂繊維Aとしては、中でも、PTFE繊維が比誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性、耐薬品性にも優れているので、本発明のフッ素樹脂金属張基板を得るのに好ましい。フッ素樹脂粒子Bとしては、PTFEに近い融点をもつPFA或いはFEPが好ましい。
なお、本発明で用いるフッ素樹脂繊維A及びフッ素樹脂粒子Bには、各々2種以上を混合して使用することもできる。
【0016】
本発明で用いられるフッ素樹脂繊維Aの直径及び繊維長は、特に限定されず、本発明の湿式抄造法によって抄造が可能であればよく、形状は単純な繊維状あるいは、粒状(球状、不定形など)、フィブリッド状、パルプ状、その他様々な形状等、特に限定されるものではないが、例えば、直径は1μm〜50μm、長さは0.1mm〜10mmのものが使用される。直径及び長さが、上記範囲の下限未満では抄造時の脱水性が悪く生産性が低下し、上限を超えると薄い一次シートを作製しにくくなる。
【0017】
また、フッ素樹脂繊維として、フッ素樹脂繊維シートに要求される特性、具体的には本発明におけるシート強度、寸法安定性、及び耐熱性絶縁繊維や必要に応じて使用される無機微粒子の含有量等によって、フッ素樹脂繊維の形態がフィブリル化されているものとフィブリル化されていないものを選択して使用でき、場合によっては混合して使用することができる。
【0018】
フィブリル化の度合いは、フッ素樹脂繊維シートの平均孔径、最大孔径やシート強度などとの関係で決定される。例えば、より強いシート強度を必要とする場合には、フィブリル化の程度を進めた繊維を使用することが好ましい。また、それによってフッ素樹脂繊維と他の材料との接着力も向上する。
フィブリル化の度合いは、JIS P8121:1995に記載のろ水度によって表わすことができる。
フィブリル化のための手段としては、一般的な叩解機であるボールミル、ビーター、ランペンミル、PFIミル、SDR(シングルディスクリファイナー)、DDR(ダブルデスクリファイナー)、その他のリファイナー等を使用することができる。
【0019】
本発明に使用できるPTFE繊維の例としては、PTFE微粒子をビスコース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの親水性の結着剤マトリックス中に分散し、細孔から凝固浴に紡出させて得られた延伸または未延伸の繊維が挙げられる。この場合、得られた延伸または未延伸のPTFE繊維を3〜15mmの長さに切断し、耐熱性絶縁繊維や無機微粒子、その他原料とともに、ポリアクリルアミドなどの分散剤を用いて水に分散して抄紙原料を調整する。この抄紙原料を円網式、長網式、短網式、傾斜式などの抄紙機で抄紙し、PTFE繊維の一次シートを作製する。PTFE繊維の一次シート化において、PTFE繊維に配合されているマトリックス物質が、抄紙の際に繊維間の結着機能を発揮する。
【0020】
耐熱性絶縁繊維としては無機繊維と有機繊維とがあるが、金属張基板の熱膨張係数や寸法変化率を抑えるためには、繊維自身の弾性率が大きく剛直であることが好ましい。
無機繊維としてガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミニウムシリケート繊維などがあるが、金属張基板の熱膨張係数や寸法変化率を抑えるという目的を十分に達成でき、かつ価額が安いガラス繊維が好ましく使用される。
有機繊維としては、いわゆるスーパー繊維と称せられる高耐熱性、高強度・高弾性率繊維が使用でき、例えばポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(以下、PBO繊維と称す)、芳香族ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維等を使用できるが、最も弾性率が大きいPBO繊維が好ましい。
また、上記耐熱性絶縁繊維を複数種類混合して用いることもできる。
【0021】
上記耐熱性絶縁繊維の形状は、特に限定されるものではないが、直径は50μm以下が好ましく、長さは0.1〜20mmが好ましい。直径が50μmを超えて大きいと薄いシートを作製しにくくなる。長さが0.1mm未満では寸法安定性の効果が出にくく、20mmを超えて大きいと均一に分散しにくくなる。
【0022】
前記耐熱性絶縁繊維が有機繊維の場合はフィブリル化させて使用することもでき、それによって繊維間の絡み合いが強固になり、3次元方向の絡み合いも強化され、金属張基板において、Z方向の熱膨張性を含めた寸法安定性が非常に向上する。
フィブリル化の度合いは、フッ素樹脂繊維一次シート強度や無機微粒子含有量などとの関係で決定される。例えば、より強いシート強度を必要とする場合、或いは無機微粒子添加量が多い場合には、フィブリル化の程度を進めた繊維を使用する事が望ましい。これにより無機微粒子の歩留りも向上する。
【0023】
また、本発明においては、金属張基板の比誘電率を高め、及び/または寸法安定性をより向上させたい場合はフッ素樹脂繊維一次シートに無機微粒子を配合することができる。無機微粒子の種類の選択や配合によって、金属張基板の誘電正接は低いまま比誘電率を高くし、かつ金属張基板のX方向、Y方向及びZ方向の熱膨張係数や寸法変化を抑えたり、基板の曲げ強度および曲げ弾性率などの機械的強度も向上させることができる。
【0024】
本発明におけるフッ素樹脂繊維一次シートの坪量は、10〜1500g/m2であり、使用用途に応じて適切な坪量が決定される。
【0025】
フッ素樹脂粒子Bとしては、水に分散されているディスパージョンや溶剤に分散している塗料、粒子そのもの等特にその付着させる粒子の形態は問わない。最終的に少なくともシートの片面に所望の量が付着できればよい。粒子の粒子径、形状は特に問わない。
【0026】
次に請求項8で特定する本発明のプリント配線板用金属張基板について説明する。
本発明のプリント配線板用金属張基板は、前記フッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に、導電性金属層を有する。フッ素樹脂繊維シートは必要に応じて複数枚を積層して使用してもよい。導電性金属層は、両面に設ける場合と片面に設ける場合とがある。
【0027】
また、本発明に導電層に使用される金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル、鉄等の単独の箔、合金箔、複合箔などを用いることができるが、特に銅箔が電気伝導性が良好な点で好ましい。この場合、電解銅箔、圧延銅箔いずれでもよく限定するものではない。また、金属箔としてすでに回路パターンとなっている金属箔を用いることもできる。また、必要に応じて金属箔の片面に接着剤層を設けておくことができる。
金属箔の厚みは特に限定されるものではないが、厚さ9〜35μmが高周波プリント回路の加工精度を確保する面で好ましい。
【0028】
次に本発明のプリント配線板用金属張基板の製造方法を述べる。
本発明のフッ素樹脂繊維一次シートの製造方法は、通常の製紙に用いられる湿式抄造法が用いられる。すなわち、規定量のフッ素樹脂繊維A、耐熱性絶縁繊維等を水中で攪拌、混合し、好ましくは、固体分濃度が0.5%以下になるように濃度調整したスラリーを、円網式、長網式、短網式、傾斜式などの湿式抄紙機に適用し、連続したワイヤメッシュ状の脱水パートで脱水し、その後、多筒式ドライヤーやヤンキードライヤーなどで乾燥して一次シートを得る。 本発明においては、プリント配線板用金属張基板のX方向及びY方向の寸法変化率の差を小さくするという点で、繊維配向がランダムになり易い長網式、短網式、傾斜式が好ましく、傾斜式がより好ましい。特に傾斜式の場合は耐熱性絶縁繊維を厚さ方向に配向させる、つまり紙状物内において厚さ方向に繊維を立たせることも可能であり、金属張基板におけるZ方向の寸法安定性に効果を発揮する。
【0029】
また、本発明のフッ素樹脂繊維一次シートには通常の製紙で用いられる各種の紙力増強剤、分散剤、消泡剤、合成粘剤や顔料などの添加剤を配合することができる。
【0030】
このように得られた本発明のフッ素樹脂繊維一次シートは、ガラスクロスを基材とするシートや乾式法不織布と比較して、各種原料の分布がX方向,Y方向及びZ方向において均一であり、かつ、地合いが均一であるという優れた特徴を有していて、その結果、基板の誘電特性の部分的ばらつきが小さいという利点を有する。
【0031】
次に得られたフッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維とを含む一次シートの少なくとも片面にフッ素樹脂粒子Bを付着させる。フッ素樹脂粒子Bは水に分散したディスパージョン、塗料、粒子そのもの等特に形態は問わない。取り扱いやすさから水に分散したディスパージョンがより好ましい。少なくともシートの片面に付着させる方法としてはディッピング、含浸、スプレー、塗工、その他の塗布により付着させることができる。ディッピング、含浸ではシートの両面に同時に付着させることができるが、その他の方法でシート両面に付着させることが必要な場合は、片面に付着させた後、もう一度同じ工程で反対面に付着させることができる。
【0032】
次にフッ素樹脂粒子Bが付着したフッ素樹脂繊維シートをフッ素樹脂繊維Aの融点以上の温度で、電気炉等で焼結し、紙状のフッ素樹脂繊維シートとする。焼結によりフッ素樹脂繊維A同士間、フッ素樹脂繊維Aとフッ素樹脂粒子B間、フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維間、フッ素樹脂繊維Aと無機微粒子間、及びフッ素樹脂粒子B同士間等を融着せしめると共に、有機物質は熱分解され除去される。前記のPTFE繊維を使用した場合は、PTFE繊維中のマトリックス樹脂はこの工程で熱分解し除去される。
【0033】
このようにして得られた本発明のフッ素樹脂繊維シートを金属箔と貼り合わせるのは次のように行われる。
上記シートを所定の大きさに裁断し、所定枚数と金属箔とを重ね合わせる。本発明では使用するシートの枚数は特に限定されず、目的とする基板の厚さ及び使用するフッ素樹脂繊維シートの厚さあるいは坪量によって決められる。複数枚の場合は、シート製造時の長尺方向(縦方向)と幅方向(横方向)とが交互に90°に直交して重なり合うようにするとX方向及びY方向の寸法安定性の点で好ましい。また、基板のX方向及びY方向での寸法変化率、及びその差を出来るだけ小さくするためには重ねる枚数は偶数が好ましい。このようにして得られたものを絶縁層とし、その絶縁層の上下両面、或は片面に導電層としての金属箔を重ねて、フッ素樹脂Aの融点以上の温度で加熱圧着する。なお、金属箔の裏面、つまり絶縁層と接触する面には、多数の微小な突起が設けられており、これらが、絶縁層つまりフッ素樹脂繊維を主成分とするシートの表面に食い込んだ状態で加熱圧着される。これにより金属箔が絶縁層と密に接着した導電層を構成する。
【0034】
フッ素樹脂繊維AにPTFE繊維を用いた場合の成型条件の例は、PTFE繊維シートの両面(場合によっては片面)に銅箔を配置し、PTFEの融点327℃以上の温度、例えば380℃でかつ圧力1MPaの条件下にて90分間真空プレスによる加熱圧着処理を行い、一体成形したプリント配線板用両面銅張板とすることができる。
【0035】
上記の如く作製された本発明のプリント配線板用金属張基板の比誘電率は、耐熱性絶縁繊維および無機微粒子の種類と配合量での調整も可能である。
【0036】
その後、回路パターンの導電層形成のための後工程を施し、所望のパターンの導電路を設けたフッ素樹脂プリント配線板を得ることができる。パターン形成は、剥離現像型ホトレジスト、溶融現像型ホトレジスト等を用いて行われる。例えば、銅箔表面にアルカリ現像型ホトレジスト膜を形成し、ホトマスクを介して所望のパターンを露光する。次に、銅箔の露出部をエッチングなどにより除去し、さらにホトレジストの露光部を溶解除去して、所望のパターンの導電層を有するフッ素樹脂プリント配線板が得られる。
【0037】
上記本願発明のプリント配線板用金属張基板の製造方法をまとめると、フッ素樹脂繊維Aと、耐熱性絶縁繊維とを含有するスラリーを湿式抄造法でシート化しフッ素樹脂繊維一次シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維一次シートの少なくとも片面にフッ素樹脂粒子Bを付着させ、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で熱処理して繊維および粒子を融着して紙状のフッ素樹脂繊維シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に導電性金属箔を積層し、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で加熱圧着する工程とからなる。
【0038】
以下、さらに本発明を実施例を以って説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
フッ素樹脂繊維AとしてPTFE繊維(東レファインケミカル社製、商品名:トヨフロン、繊維長3mm、繊維径15μm、組成:PTFE微粒子86重量%、ビスコース14重量%、MpA327℃)、耐熱性絶縁繊維としてガラス繊維(ユニチカグラスファイバー社製、商品名:PDE1/8ZA509、繊維長3mm、繊維径6μm)を下記配合比になるよう採取してスラリー用原料とした。
フッ素樹脂繊維A……85重量%(PTFEとして)
耐熱性絶縁繊維………15重量%
この原料を水に添加し、攪拌し、均一に分散させ濃度0.5重量%のスラリーを得た。このスラリーを用い、傾斜式湿式抄紙機を用いて湿紙を作製し、脱水し、130℃に加熱調整したヤンキー式ドライヤーを用いての乾燥工程を経て、フッ素樹脂繊維一次シートを得た。その一次シートの両面に、フッ素樹脂粒子Bとして水にPFA粒子が分散しているPFAディスパージョン(三井フロロケミカル製、商品名:ENAー042、MpB310℃)をスプレーを用いて片面30g/m2づつ両面に塗布し、その後、該シートを380℃に加熱調整した電気炉を通して熱処理し、繊維間を融着して、坪量260g/m2の紙状のフッ素樹脂シートを得た。その得られたシートから300×300mmの大きさのシートを切り出し、その上下に金属箔として電解銅箔(福田金属箔工業社製、商品名:CF−T9、厚さ18μm)を重ねて配置し、真空下で、1MPaの加圧、380℃の加熱で90分間圧着を行い本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
【0039】
<実施例2>
フッ素樹脂粒子Bを片面5g/m2づつ一次シートの両面に付着させたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
<実施例3>
フッ素樹脂粒子Bを片面100g/m2づつ一次シートの両面に付着させたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。<実施例4>
フッ素樹脂繊維A、耐熱性絶縁繊維の配合比率を各々55重量%、
45重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
<実施例5>
フッ素樹脂繊維A、耐熱性絶縁繊維の配合比率を各々97重量%、3重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
【0040】
<比較例1>
フッ素樹脂粒子Bをフッ素樹脂繊維シート表面に付着させないこと以外は、実施例1と同様にして比較用の本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
<比較例2>
耐熱性絶縁繊維を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
<比較例3>
フッ素樹脂粒子BをPTFE粒子(ダイキン工業社製、商品名:D−1E、MpB327℃)としたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のプリント配線板用金属張基板を得た。
【0041】
実施例1〜5、比較例1〜3のプリント配線板用金属張基板に対して下記の評価を行い結果を表1に示した。
1.比誘電率:JIS C6481に準じて、10MHzにて測定した。(実用上必要な値は2.3以下である。)
2.表面粗さ(Rz):JIS C6515に準じて、導電層表面の10点平均表面粗さ(Rz)を測定した。(目標とする値は3.0μm以下である。)
3.銅箔密着力(引きはがし強さ):JIS C6481 5.7に準じて測定した。(目標とする値は15N/cm以上である。)
4.寸法変化率:加熱処理(150℃/30分)後のX方向、Y方向の寸法変化率をJIS C6481 5.16(3)に準じて測定した。(実用上必要な値は0.3%以下である。)
【0042】
【表1】
【0043】
表1より、次の諸点が確認された。
本発明の実施例1〜5の金属張基板は、比誘電率2.3以下、表面粗さ(Rz)3.0μm以下、銅箔密着力15N/cm以上、寸法変化率0.3%以下を得ることができ、従来品にはない優れたプリント配線板用金属張基板であった。
比較例1は、フッ素樹脂粒子Bを併用していないので、フッ素樹繊維シートの空隙を良好に埋めることが出来ず、従って、表面粗さ(Rz)が大きく粗いものとなり、また銅箔密着力が不十分なものとなり実用上支障をきたすものであった。
比較例2は、耐熱性絶縁繊維を使用していないので寸法変化率が大きく実用上支障をきたすものであった。
比較例3は、フッ素樹脂粒子Bの融点がフッ素樹脂繊維Aの融点と同一であるため、表面粗さが大きく、銅箔密着力が小さかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、比誘電率及び誘電正接の部分的ばらつきが小さく、プリント配線板用金属張基板の導電層表面に微小な凹凸がなく平滑で、かつ絶縁層と金属箔との密着力に優れたプリント配線板用金属張基板及びその製造方法を提供することができ、特に小型、精密配線用及び高周波用として適する。
Claims (9)
- フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着しているフッ素樹脂繊維シートであって、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とが下記式(1)を満足することを特微とするフッ素樹脂繊維シート。
MpA−MpB>0……(1) - 前記フッ素樹脂粒子Bの付着量が5g/m2から100g/m2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂繊維シート。
- 該フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とが下記式(2)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のフッ素樹脂繊維シート。
60>MpA−MpB>10……(2) - 上記フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維との配合率が、フッ素樹脂繊維A60〜95重量%、耐熱性絶縁繊維5〜40重量%であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフッ素樹脂繊維シート。
- フッ素樹脂繊維Aがポリテトラフルオロエチレン繊維であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のフッ素樹脂繊維シート。
- フッ素樹脂粒子Bがテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であることを特徴とする請求項5に記載のフッ素樹脂繊維シート。
- 耐熱性絶縁繊維がガラス繊維であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のフッ素樹脂繊維シート。
- フッ素樹脂繊維Aと耐熱性絶縁繊維を含有するフッ素樹脂繊維シートにおいて、フッ素樹脂粒子Bが少なくとも該シートの片面に付着しているフッ素樹脂繊維シートであって、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)と、フッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とが下記式(1)を満足することを特微とするフッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に、導電性金属層を有することを特徴とするプリント配線板用金属張基板。
MpA−MpB>0……(1) - フッ素樹脂繊維Aと、耐熱性絶縁繊維とを含有するスラリーを湿式抄造法でシート化しフッ素樹脂繊維一次シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維一次シートの少なくとも片面にフッ素樹脂粒子Bを付着させ、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で熱処理して繊維および粒子を融着して紙状のフッ素樹脂繊維シートを得る工程、上記フッ素樹脂繊維シートのフッ素樹脂粒子Bが付着した面に導電性金属箔を積層し、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)以上の温度で加熱圧着する工程とからなることを特徴とするプリント配線板用金属張基板の製造方法。
但し、フッ素樹脂繊維Aの融点MpA(℃)とフッ素樹脂粒子Bの融点MpB(℃)とは下記式(1)を満足する。
MpA−MpB>0……(1)
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WO2012161162A1 (ja) * | 2011-05-23 | 2012-11-29 | 住友電工ファインポリマー株式会社 | 高周波回路基板 |
JP2014074746A (ja) * | 2012-10-02 | 2014-04-24 | Sumitomo Bakelite Co Ltd | 光配線部品、光電気混載部材および電子機器 |
-
2003
- 2003-02-13 JP JP2003034589A patent/JP2004243605A/ja active Pending
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