JP3917222B2 - 集塵機灰の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は化石燃料類、例えば重油、タール、アスファルト、石炭等、並びにこれらをエマルジョン化した燃料の燃焼の際に得られる集塵機灰の内、硫酸もしくは亜硫酸のアンモニウム塩ないし酸性アンモニウム塩(以下、硫酸アンモニウム塩類と略記)、又は更に硫酸もしくは亜硫酸のマグネシウム塩ないし酸性マグネシウム塩(以下、硫酸マグネシウム塩類と略記)を含有する集塵機灰を水に懸濁・濾過して処理する湿式処理法において、合理的にバナジウム化合物、ニッケル化合物を回収すると共に、他方に窒素分を含有せず、放流可能な廃水を得る方法である。特に高品質のバナジウム化合物を簡易な方法で回収する方法を提供する。また、この廃水はマグネシウム化合物の原料として使用可能な硫酸マグネシウム水溶液として得られる。
【0002】
【従来の技術】
従来から重油灰などを水に懸濁して水溶性物質と水不溶性の物質に分離して処理する所謂、湿式処理方法は公知である(特開昭50−8796号公報、特開昭50−10799号公報、特開昭60−19086号公報、特開昭60−46930号公報、特開昭61−171582号公報、特開昭61−171583号公報、特開昭62−298489号公報など)。この際、懸濁液を酸性にする処理、酸化する処理、還元する処理を加えて、処理の効率を高める方法も種々提案されている。
【0003】
また、この湿式処理においては、集塵機灰が一般に相当量の硫酸アンモニウム塩類を含有しているため、その硫酸アンモニウム塩類がバナジウム分などの析出・回収後の廃水中に含有され、最近の閉鎖性海域への放流廃水についての規制強化に伴って、重大な問題となっている。これに対応して廃水に水酸化カルシウムを加えて、アンモニアを遊離させて気化・分離し、液中に生じる硫酸カルシウム(石膏)を濾過した後、濾液を放流する方法が提案されている。また、このいわゆるアンモニアストリッピングの前又は後に鉄、ニッケルなどの分離除去工程を加えた方法も提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
集塵機灰を湿式処理する上記の従来法では取得すべき有価金属、特にバナジウムを出来るだけ多く溶解するための操作を加えることがしばしば行われて来た。しかし、それらの操作ではバナジウムの大半を溶解することが出来ず、そのため、バナジウムの取得にはその溶液と共に不溶性残渣をも別途処理する必要があった。
【0005】
この欠点を解消するために懸濁液を濾過する以前に酸化してバナジウムの溶解性を増加させる方法も考え出されている(特開昭62−298489号公報)。しかし、この方法では大容量の懸濁液を70℃以上に加熱して空気酸化する必要があり、更にメタバナジン酸アンモニウム析出のときの溶解損失を少なくする為には大量の液を20℃以下に冷却しなくてはならないので、エネルギー消費が大きいという問題を残している。また、濾過工程が一段であり、不純物の夾雑を十分回避することができないため、得られるバナジウムの品位にも問題があった。
【0006】
一方、廃水の処理方法として提案されている水酸化カルシウムによる石膏沈澱法では、大量の石膏が生じるため大型の濾過設備が必要であり、しかもニッケルを回収するためには再び、大量の石膏の濾過をしなくてはならないという問題点がある。即ち、ニッケルが石灰で水酸化物として石膏と共に沈殿してしまうため、▲1▼大量の石膏スラリーを分級機にかけて石膏とニッケル水酸化物とに分離した後、それぞれを濾過するか、▲2▼石膏中のニッケル水酸化物のみを酸で溶解した後、石膏を濾過分離し、濾液を中和してニッケル水酸化物を再び沈殿させ、濾過取得する方法を採らなくてはならないため(特開昭61−171583号公報)、設備は大型且つ複雑にならざるを得なかった。
【0007】
更に、最近は燃料の多様化に伴ってマグネシウム化合物を燃料中に含有しているものも存在する他、燃焼時に生成する腐食性物質による腐食防止用のマグネシウム化合物を添加する方法がしばしば採用されている。このため、集塵機灰に硫酸アンモニウム塩類のみならず硫酸マグネシウム塩類が共に含有される場合には、石膏にニッケル水酸化物のみならず、酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウムも混入するため、上記のような方法での解決をより困難にしている。
従って、上記のような問題点が解決できる画期的な処理方法が求められている。
【0008】
本発明の目的は、上記のような従来の技術的な欠点を解決する斬新かつ総合的な方法により、集塵機灰から高品位のバナジウム化合物、ニッケル化合物などが簡単に回収出来ると共に、最近の廃水放流に関する規制にも対応でき、しかも経済的な集塵機灰の処理が可能な方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、集塵機灰を水に懸濁した後、中和・濾過することによって、バナジウム分を実質的に含有しない水溶液とバナジウム分の殆どすべてを含有する不溶性物質とに分離し、次いでこの不溶性物質を酸化処理等することにより、前記の課題が解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。つまり、本発明は、酸化剤により酸化を行う前に、不要な過剰の溶解成分を除去し、不溶性残渣とその後の工程で有効に機能する溶解成分及びその後の工程で加熱しても悪影響を及ぼさない溶解成分のみを対象として酸化を行うことにより、前述のような問題もなく、高品位のバナジウム化合物を得ることができると共に、副生物として簡単な設備・操作でニッケル水酸化物及び硫酸マグネシウム水溶液が得られ、これらは有効利用乃至は環境に問題を生じない処理をすることができる。
【0010】
即ち、本発明の要旨は
石燃料の燃焼の際に得られる少なくとも硫酸アンモニウム塩類を含有する集塵機灰に、下記(a)〜(h)の工程を施すことを特徴とする集塵機灰の処理方法。
(a) 集塵機灰を水に懸濁する工程、
(b) 上記の懸濁液にアルカリを加えて中和し、pH6〜9とする工程、
(c) 上記の中和された懸濁液を濾過する工程、
(d) 工程(c)で得られた濾過残渣を水に懸濁して苛性アルカリを加えた後、酸化剤により酸化を行う工程、
(e) 工程(d)で得られた懸濁液に酸を加えてpH6〜9とした後、濾過する工程、
(f) 工程(e)で得られた濾液を70〜90℃に加熱した後、アンモニウム塩を加えて冷却し、濾過して析出したメタバナジン酸アンモニウムを得る工程、
(g) 工程(c)で得られた濾液と工程(f)で得られた濾液を混合し、これに酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムを加えて加熱し、アンモニアを発生させると共にニッケル水酸化物を含有する物質を析出させる工程、
(h) 工程(g)で得られた懸濁液を濾過して硫酸マグネシウムを含有する水溶液とニッケル水酸化物を含有する物質とを得る工
関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の処理方法の対象となる集塵機灰について説明する。
化石燃料の燃焼の際には発生する排ガスの中のダストを除去するために、電気集塵機を使用するのが一般的である。その場合、集塵効率を保つためには、ダストの電気抵抗値を制御する必要があり、その目的でアンモニア水が散布される。排ガスはSOXとO2 を含有しているので電気集塵機で捕集される灰には硫酸アンモニウム塩類が多量に含有されている。
【0012】
また、最近、使用が開始された化石燃料の中には本来、マグネシウム化合物を含有しているものや、燃焼時に腐食性物質を生成するためその防止のために使用に当たってマグネシウム化合物の添加を必要とするものがある。これらではマグネシウム化合物は電気集塵機で硫酸マグネシウムとして捕集されるので、集塵機灰は硫酸マグネシウム塩類を含有することになる。
【0013】
従って、集塵機灰は未燃焼カーボン、金属酸化物などの水不溶性の灰分の他に多量の硫酸アンモニウム塩類又は硫酸アンモニウム塩類と硫酸マグネシウム塩類を含有しており、これから有価金属を回収する一方、他の成分を環境に問題のないように処理することが必要である。集塵機灰の組成(乾燥品についての分析値)の例を表1に示す。
ここでは電気集塵機灰について説明したが、本発明は同様の成分を有する他の集塵機灰にも適用されることは勿論である。
【0014】
【表1】
Figure 0003917222
【0015】
次に、本発明の処理方法を順次説明する。
本発明は二つの実施態様に分けることができる。第1の態様は工程(a)〜(h)からなり、第2の態様は工程(A)〜(F)からなるものである。
まず、本発明の第1の態様について説明する。
工程(a)は、集塵機灰を水に懸濁する工程である。集塵機灰の懸濁の際には、適当な装置で攪拌等することが好ましい。
この工程により、集塵機灰を水に懸濁し40〜60℃で攪拌するとpHは2〜4、通常約3を示し、硫酸アンモニウム塩類、硫酸マグネシウム塩類およびニッケル、鉄等の金属の塩類は溶解する。また、バナジウム化合物の一部は溶解し、他の部分は溶解せずに残る。
【0016】
工程(b)は、上記の懸濁液にアルカリを加えて中和し、pH6〜9、好ましくはpH7〜8とする工程である。ここで、用いられるアルカリとしては、特に限定されることなく、NaOH,Na2 CO3 ,KOH,K2 CO3 ,NH3 等が好ましく用いられる。
【0017】
この工程により、pH6〜9とすると溶解していたバナジウム化合物の大部分は析出するが、その際、pH7〜8とするのがバナジウム化合物の析出率の点から好ましい。
【0018】
上記の工程における中和に際し、予めバナジウムの還元剤を添加することにより、バナジウム化合物の析出はより完全に近づく。この時、還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ガス、硫化アンモニウムなどが好ましく用いられ、また添加後の攪拌により還元が好適に行われる。
【0019】
工程(c)は、上記の中和された懸濁液を濾過する工程である。この工程により、バナジウム化合物、カーボンなどの不溶性物質、および集塵機灰に含有されていたニッケルのうち塩基性硫酸ニッケルとして沈澱したものを含有する濾過残渣と、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、および上記の沈澱に至らなかったニッケル等の金属の塩を含有し、バナジウム化合物の含有量の極めて低い水溶液とが得られる。即ち、集塵機灰に含まれるバナジウム成分のうち、通常90〜95%が工程(c)の濾過残渣に含有されることになる。
なお、濾過の操作等は特に限定されることなく、通常公知の操作等がいずれも適用できる(以下の工程についても同様)。
【0020】
工程(d)は、工程(c)で得られた濾過残渣を水に懸濁して苛性アルカリを加えた後、酸化剤により酸化を行う工程である。
ここで、苛性アルカリとしては、NaOH、KOH等が好ましく用いられる。また、酸化剤による酸化は、酸素含有ガス、好ましくは大気圧以上の圧力の空気と懸濁液との接触や、過酸化水素または次亜塩素酸塩水溶液等の液体酸化剤の添加などにより、好適に行うことができ、最も経済的なのは空気と接触させる方法である。
【0021】
この工程における酸化反応は、NaOHを用いて酸素含有ガスで行う場合には下記の式(I)に従うものと考えられる。
4VO(OH)2 +4NaOH+O2 →4NaVO3 +6H2 O (I)
ここで、苛性アルカリは存在する4価のバナジウムと等モルが理論量であるが、反応速度には苛性アルカリの存在量が関係し、特に3倍量までは反応速度の増大が著しい。従って、苛性アルカリは、濾過残渣中の全バナジウムに対して3〜4倍モル使用すれば十分である。
【0022】
一方、pHの面から見れば、pH6でも酸化は徐々に進行するが、それからpH8付近までは速度は急速に増大し、それ以上のpH範囲では速度の増大は僅少になる。また、アルカリの添加量はその費用及びその後の工程などへの影響の面から、必要最小限度に止めるのが好ましい。従って、この工程における酸化反応は、通常pH6〜12、好ましくはpH7〜10で行われる。
【0023】
また、酸素含有ガスによって、35〜65℃、好ましくは45〜55℃で2時間酸化すると、バナジウム成分は95%以上溶解する。この反応においてはガスと液の接触の良否が反応速度を著しく支配するので、接触効率が良くなるように十分な配慮が必要である。一方、反応温度の影響は少ないので経済性を考慮し適当に選ぶことが出来る。
この場合、大気圧以上の圧力を適用すると必要な反応時間は圧力にほぼ反比例し、圧力5kg/cm2 では反応時間を20分以下にすることが可能である。従って、連続攪拌槽式の反応形式を採用することが経済的に成り立ち得る。
【0024】
また、この反応は酸素含有ガスの代わりに過酸化水素水あるいは次亜塩素酸塩水溶液で行うことも可能であり、その場合、上記の式(I)を基にして計算された理論量の1.0〜1.2倍モル程度添加すればよい。
【0025】
工程(e)は、工程(d)で得られた懸濁液に酸を加えてpH6〜9とした後、濾過する工程である。この工程により、pH6〜9とすると、Fe,Al,Si等の不純物が沈澱するため、濾過によって灰中に存在したカーボンと共に除去することができる。この際、pH7〜8とするのが不純物の沈澱率の点から好ましい。
【0026】
ここで、用いられる酸としては、特に限定されることはないが、硫酸、塩酸等が好ましく使用される。
【0027】
工程(f)は、工程(e)で得られた濾液を70〜90℃に加熱した後、アンモニウム塩を加えて冷却し、濾過して析出したメタバナジン酸アンモニウムを得る工程である。
ここで、冷却はメタバナジン酸アンモニウムの回収率の点から、25℃以下まで徐々に行うことが好ましいが、それ以上の温度でも回収は可能である。また、アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等が好ましく用いられる。特に、工程(g)で発生するアンモニアを硫酸で中和して得られる硫酸アンモニウムを利用すると、工業上有利に本発明の処理方法を実施することができる。
【0028】
本発明においては、工程(c)の濾過の際に、pH6〜9で水溶性である化合物の大半は濾液側に行き、バナジウム化合物の取得工程側に行かないため、工程(f)で得られるメタバナジン酸アンモニウムの品位は極めて高く保つことができる。
【0029】
工程(g)は、工程(c)で得られた濾液と工程(f)で得られた濾液を混合し、これに酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムを加えて加熱し、アンモニアを発生させると共にニッケル水酸化物を含有する物質を析出させる工程である。
【0030】
ここで、加熱方法としては、特に限定されることはないが、アンモニアガスの除去の効率の点から、85℃以上で熱空気または水蒸気を吹き込む方法が好ましく用いられる。また、加熱温度としては、90〜105℃程度が適当である。
酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムは、硫酸アンモニウムの分解における次の反応式(酸化マグネシウムの場合)から計算される化学量論量の約1.5倍使用することが必要である。
(NH4 2 SO4 +MgO → MgSO4 +2NH3 +H2
【0031】
工程(h)は、工程(g)で得られた懸濁液を濾過して硫酸マグネシウムを含有する水溶液とニッケル水酸化物を含有する物質とを得る工程である。
上記のように工程(g)では過剰量のマグネシウム化合物を使用するため、析出するニッケル水酸化物はマグネシウム化合物が夾雑されるが、そのままニッケル原料とすることが出来る。
【0032】
また、このニッケル水酸化物析出物からマグネシウム化合物を除去する必要がある場合には、これを水に懸濁し、硫酸または二酸化硫黄を含有するガスでpH6.5〜9とした後、濾過することで目的を達することが出来る。
一方、硫酸マグネシウムを含有する水溶液は、アンモニア性窒素濃度が低いため廃水の放流規制の問題がなく、あるいはマグネシウム化合物原料としての利用することが出来る。
【0033】
なお、上記の酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムによるアンモニアストリッピングに関しては、特願平6−301347号に詳細が開示されている。
【0034】
次に、本発明の第2の態様について説明する。
工程(A)は、集塵機灰を水に懸濁する工程である。集塵機灰の懸濁の際には、灰中の塊状固化物を分散させるため適当な装置で攪拌することが必要である。通常、集塵機灰1kgを水3〜5リットルに懸濁する。
この工程において、集塵機灰を水に懸濁し40〜60℃で攪拌するとpHは2〜4、通常約3を示し、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウムおよびニッケル、鉄等の金属の塩は溶解する。しかし、バナジウム化合物の一部は溶解し、他の部分は溶解せずに残る。
【0035】
工程(B)は、工程(A)で得られた懸濁液にアルカリを加えて中和し、pH6〜9、好ましくはpH7〜8とする工程である。ここで、用いられるアルカリとしては、特に限定されることなく、NaOH,Na2 CO3 ,KOH,K2 CO3 ,NH3 等が好ましく用いられる。固体状のものは固体でも水溶液状でも使用可能である。中和時の懸濁液の温度は操作に支障がない限り特に制限はない。
【0036】
この工程において、pH6〜9とすると溶解していたバナジウム化合物の大部分は析出するが、その際、pH7〜8とするのがバナジウム化合物の析出率の点から好ましい。
【0037】
上記の工程における中和に際し、予めバナジウムの還元剤を添加することにより、バナジウム化合物の析出はより完全に近づく。この時、還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ガス、硫化アンモニウムなどが好ましく用いられ、また添加後の攪拌により還元効率が上昇し、還元の時間は1時間で充分となる。
【0038】
工程(C)は、工程(B)で得られた中和された懸濁液を水溶液部分と沈殿部分とに分離し、濃縮懸濁液を取得する工程である。分離操作としては、各種の沈殿濃縮方法、濾過方法等が挙げられる。
【0039】
沈殿濃縮方法としては、通常、単純な回分式沈殿濃縮装置、連続式沈殿濃縮装置(シックナー)などが挙げられるが、より効率を高めるためには、化学工学便覧「沈降」の項に記載の各種の遠心沈降器(デカンター)、沈降分級器、水力分級器、機械的分級器、遠心分級器、液体サイクロンなどを用いることができる。濾過方法としては、第1の態様の工程(c)と同様な方法が利用できる。
【0040】
この工程においては、懸濁液の水分は約40〜80%程度分離除去することが好ましい。水溶液部分の分離率は一般に高い程好ましいが、集塵機灰中のバナジウム含有量が高い場合には、あまりに分離率を高くすると、生成したバナジン酸アンモニウム塩類の析出・濾過操作に困難を来すことがあり、また集塵機灰中のカーボン分が高いときには、工程(C)で得られる酸化用の濃縮懸濁液の粘度が高くなり過ぎて工程(D)の操作に支障を来すこともある。一方、この分離率があまりに低いと、本発明の目的とするバナジウムの回収操作の効率が損なわれる。
【0041】
この工程により、バナジウム化合物、カーボンなどの不溶性物質、および集塵機灰に含有されていたニッケルのうち塩基性硫酸ニッケルとして沈澱したものを含有する濃縮懸濁液と、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、および上記の沈澱に至らなかったニッケル等の金属の塩を含有し、バナジウム化合物の含有量の極めて低い水溶液とが得られる。即ち、集塵機灰に含まれるバナジウム成分のうち、通常90〜95%が工程(C)の濃縮懸濁液に含有されることになる。
【0042】
工程(D)は、工程(C)で得られた濃縮懸濁液にアルカリを加えた後、酸化剤により酸化を行う工程である。
ここで、アルカリとしては、NaOH、KOH、NH3 等が好ましく用いられる。また、酸化剤による酸化は、大気圧以上の圧力の空気又は酸素含有ガスと懸濁液との接触により、又は過酸化水素水または次亜塩素酸塩水溶液等の液体酸化剤の添加などにより、好適に行うことができる。
【0043】
この工程における酸化反応には、第1の態様の工程(d)の説明がそのまま妥当し、NaOHを用いて酸素含有ガスで行う場合には下記の式(I)に従うものと考えられる。
4VO(OH)2 +4NaOH+O2 →4NaVO3 +6H2 O (I)
ここで、アルカリは存在する4価のバナジウムと等モルが理論量であるが、反応速度にはアルカリの存在量が関係し、特に3倍量までは反応速度の増大が著しい。従って、アルカリは、濃縮懸濁液中の全バナジウムに対して2〜6倍モル、好ましくは3〜4倍モル使用する。
【0044】
一方、pHの面から見れば、pH6でも酸化は徐々に進行するが、それからpH8付近までは速度は急速に増大し、それ以上のpH範囲では速度の増大は僅少になる。また、アルカリの添加量はその費用及びその後の工程などへの影響を考慮すると、必要最小限度に止めるのが好ましい。従って、この工程における酸化反応は、通常pH7〜10、好ましくはpH7〜9で行われる。
【0045】
酸素含有ガスによって、35〜65℃、好ましくは45〜55℃で2〜10時間、好ましくは3〜6時間酸化すると、バナジウム成分はほとんど溶解する。この反応においてはガスと液の接触面積が反応速度を支配するので、接触効率が良くなるようにな配慮が必要である。その方法としては、邪魔板付きの反応容器、円板付きタービン翼攪拌機、空気吹き込み管からなる装置を使用するのが最も一般的であり、その設計方法は成書(山本一男他著「改定攪拌装置」56〜58頁、「化学工学便覧改訂三版」1088〜1091頁、亀井三郎編「化学機械の理論と計算」(第2版)449〜450頁)から明らかである。
【0046】
酸化剤として酸素含有ガスを使用する場合、最も経済的なのは空気を使用する方法である。空気を使用するときは、常圧の空気でも使用可能であるが、大気圧以上の空気を使用すると効果的に酸化することができる。これは、大気圧以上の圧力を適用すると必要な反応時間が圧力にほぼ反比例し、圧力5kg/cm2 Gでは反応時間が常圧の場合の約6分の一になるからである。使用圧力は耐圧反応器の必要容量と製造コストから算出・決定することができる。
この場合、連続攪拌槽列の反応形式を採用することが反応槽の総容量を小さくすることに有効である(大竹伝雄「反応装置の設計−工業反応速度論とその適用−」158〜175頁、ワラス著(大竹伝雄ら訳)「化学技術者のための反応工学」80〜97頁)。
【0047】
また、この反応は酸素含有ガスの代わりに過酸化水素水あるいは次亜塩素酸塩水溶液で行うことも可能であり、その場合、上記の式(I)に従って計算された理論量の0.9〜1.5倍モル、好ましくは1.0〜1.2倍モル程度添加すればよい。この場合、過酸化水素水は通常10〜30%水溶液を、また次亜塩素酸塩水溶液は通常有効塩素量3〜10%の水溶液を使用する。反応温度は通常40〜90℃、好ましくは50〜80℃である。反応時間は通常0.5〜3時間、好ましくは0.5〜1時間である。
【0048】
工程(E)は、工程(D)で得られた懸濁液を温度60〜90℃、pH6〜9に調整した後、濾過する工程である。この工程において、温度60〜90℃、pH6〜9とすると、V化合物は溶解し、Fe,Al,Si等の不純物が沈澱するため、濾過によって灰中に存在するカーボンと共に除去することができる。この際、pHは7〜8とするのが不純物の沈澱率の点から好ましい。この工程により、酸化バナジウムは濾液中に回収される。
【0049】
ここで、pH調整に用いられる酸・アルカリとしては、特に限定されることはないが、硫酸、塩酸、アンモニア、水酸化ナトリウム等が好ましく使用される。
【0050】
工程(F)は、工程(E)で得られた濾液を冷却してメタバナジン酸アンモニウム及び/又はバナジン酸ナトリウム・アンモニウムを析出させた後、濾過して析出したメタバナジン酸アンモニウム及び/又はバナジン酸ナトリウム・アンモニウムを得る工程である。工程(f)と異なり、濾液には原料類に由来するアンモニウム塩が既に充分含有されているので、新たに添加する必要は原則としてない。
ここで、冷却はメタバナジン酸アンモニウムの回収率の点から、35℃以下、好ましくは30〜10℃まで徐々に行う。
【0051】
本発明の第2の実施態様においては、工程(C)の分離の際に、pH6〜9で水溶性である化合物のうちの多くは分離された水溶液側に行き、バナジウム化合物の取得工程側に行かないため、工程(F)で得られるメタバナジン酸アンモニウムの品位は極めて高く保つことができる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0053】
実施例1
表1のA−1の組成を有する集塵機灰1217g(乾燥分換算1000g)を水5000ml中に懸濁し、40〜45℃で48%NaOH 126mlを加えて、pH8.0とし、1時間攪拌した後、濾過した。
濾液及び濾過残渣について分析した結果、表2の行1及び行2のような値を得た。このようにバナジウム成分の91%が濾過残渣中に含有されていることが分かった。
【0054】
【表2】
Figure 0003917222
【0055】
実施例2
実施例1において、懸濁液に更に亜硫酸ナトリウム12gを添加したところ、表2の行3及び行4のような値を得た。このように亜硫酸ナトリウムによるバナジウムの還元により、濾液中のバナジウム成分の含有量が、著しく減少していることが分かった。
【0056】
実施例3
実施例1において、表1.Bの組成を有する集塵機灰を使用したところ、表2の行5及び行6のような結果を得た。このように、異なる集塵機灰を使用しても、実施例1と同様の結果が得られた。
【0057】
実施例4
実施例2において、表1.Bの組成を有する集塵機灰を使用したところ、表2の行7及び行8のような結果を得た。このように、異なる集塵機灰を使用しても、実施例2と同様の結果が得られた。
【0058】
実施例5
実施例1で得られた濾過残渣20.44g(全V(バナジウム総量)= 5.09g、内V4+ が90.5%) を水250mlに懸濁し、48%NaOH 26.3gを加えてpH10.0とし、50〜55℃で3時間タービン型攪拌翼で攪拌しながら50ml/min.の空気を吹き込んで酸化した。その後、H2 SO4 :H2 O(1:1)の硫酸7.5gを加えてpH8.0とし、濾過した。濾過残渣は乾燥後、分析した。その値は表3の第3列に示した通りであり、溶解しなかったバナジウムは全Vとして、0.026/5.09=0.5%であった。
濾液を70℃に昇温した後、更に硫安20gと微量のメタバナジン酸アンモニウム種結晶を添加し、放冷して、20℃とした。これを濾過し、乾燥してメタバナジン酸アンモニウム11.09gを得た。一方、濾液は分析した。それらの分析値などは表3の第4列及び第5列に示した。
【0059】
【表3】
Figure 0003917222
【0060】
実施例6
実施例1で得られた濾過残渣20.44g(全V= 5.09g、内V4+ が90.5%) を内容積1Lのガラス製のオートクレーブ内で水250mlに懸濁し、48%NaOH 26.3gを加え、50〜55℃でタービン型攪拌翼(45mmφ,600rpm)で攪拌しながら、オートクレーブの空間部分に空気圧をかけた。酸化の進行速度を測定するため、適宜サンプルを採取し、その度毎に空気は入れ替えた。
その結果、十分な酸化・抽出を達成するに要する時間は常圧の場合の2時間に対して、2kg/cm2 では40分、5kg/cm2 では20分であった。
【0061】
実施例7
実施例1で得られた濾過残渣20.44g(全V= 5.09g、内V4+ が90.5%) を水120mlに懸濁し、48%NaOH 25.0gを加え、70〜80℃で30%H2 2 水5.8gを2時間の間に4回に分割して添加して酸化した。70〜80℃に1時間保持した後、H2 SO4 :H2 O(1:1)の硫酸7.5gを加えてpH8.0とし、濾過した。濾過残渣は乾燥後、分析した。その値は表4の第3列に示した通りであり、溶解しなかったバナジウムは全Vとして、0.216/5.09=4.2%であった。
濾液を70℃に昇温した後、更に硫安20gと微量のメタバナジン酸アンモニウム種結晶を添加し、放冷して、20℃とした。これを濾過し、乾燥してメタバナジン酸アンモニウム10.80gを得た。一方、濾液は分析した。それらの分析値などは表4の第4列及び第5列に示した。
【0062】
【表4】
Figure 0003917222
【0063】
実施例8
実施例1で得られた濾過残渣20.44g(全V= 5.09g、内V4+ が90.5%) を水120mlに懸濁し、48%NaOH 26.6gを加えてpH10とし、80〜85℃で有効塩素10%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液20mlを添加し30分間保持して酸化した。その後、H2 SO4 :H2 O(1:1)の硫酸7.5gを加えてpH8.0とし、濾過した。濾過残渣は乾燥後、分析した。その値は表5の第3列に示した通りであり、溶解しなかったバナジウムは全Vとして、0.05/5.09=1.0%であった。
濾液を70℃に昇温した後、更に硫安20gと微量のメタバナジン酸アンモニウム種結晶を添加し、放冷して、20℃とした。これを濾過し、乾燥してメタバナジン酸アンモニウム10.95gを得た。一方、濾液は分析した。それらの分析値などは表5の第4列及び第5列に示した。
【0064】
【表5】
Figure 0003917222
【0065】
実施例9
実施例1で得られた濾液の1248ml及び実施例5で得られたメタバナジン酸アンモニウム濾過の濾液160mlを合体した水溶液(窒素分=2.74%、38.6gを含有)に4つ口フラスコ中で酸化マグネシウム84gを加えて攪拌し、この懸濁液を沸点に保ち、2時間で水800mlを滴下しながら熱空気を吹き込み、出口に凝縮器を取り付け、溜出物を捕集した。得られたアンモニア水は950ml、アンモニア濃度4.0重量%、アンモニア質量38.0gであった。一方、フラスコ中に残存した水は1245ml、アンモニア濃度150ppmであった。
また、残留液中には過剰のマグネシアとニッケル水酸化物が懸濁しているので、これを濾過した。得られたケーキは31.1gでニッケル含有量は4.2%=1.30gであった。
【0066】
実施例10
表1のA−1の組成を有する集塵機灰1217g(乾燥分換算1000g)を水5000mL中に懸濁し、40〜45℃でNa2 SO3 を所定量添加した後、48%NaOH126mLを加えてpH8.0とし、1時間攪拌した後静置した。
3時間後、上澄み液と沈降部分の比はほぼ80:20となった。ここで、上澄み液約4000mLを分液した。上澄み液及び沈降部分を分析してNa2 SO3 の添加量と溶解しているバナジウム分及び沈降部分に含有されているバナジウム分との関係を第6表に示す。
【0067】
【表6】
Figure 0003917222
【0068】
この表から集塵機灰(乾燥分)に対して1%のNa2 SO3 の添加が上澄み液へのバナジウムの溶解を減少させるために好ましいことが示される。
また、Na2 SO3 の代わりにこれに相当する量のSO2 ガスを吹き込んでも同等の結果を得ることを第6表▲6▼に示す。
一方、上澄み液を分液除去した沈降部分(容積約1200mL)を邪魔板、温度計、円板付きタービン攪拌機及び空気吹き込み管を備えた2L容のビーカーに仕込み、25%アンモニア水94mLを添加し、45〜55℃で攪拌下に空気1.5L/分を3時間吹き込んだ。この間、pHが7.5以下とならないように、25%アンモニア水50mLを追加滴下した。液量を水で3800mLに調整し、70℃に昇温した後、濾過して濾液と不溶解残渣とを得て、これらを分析した結果を第7表に示す。第7表の▲1▼〜▲5▼の行は第6表の▲1▼〜▲5▼の行に続くものである。
【0069】
【表7】
Figure 0003917222
【0070】
さらにこの濾液を徐々に冷却し、微量のメタバナジン酸アンモニウムの種結晶を添加した後、20℃まで冷却して結晶を析出させ、濾過した後、水約100mLで洗浄し、メタバナジン酸アンモニウムと濾液及び洗液とを得た。濾液と洗液とを合し、水で3900mLとした。それらを分析した結果を第8表に示す。第8表の▲1▼〜▲5▼の行は第7表の▲1▼〜▲5▼の行に続くものである。
【0071】
【表8】
Figure 0003917222
【0072】
実施例11
実施例10表6▲3▼における沈降分離の代わりに次のように操作した。懸濁液をいったん濾過し湿状ケーキ715gと濾液4420mLを得た。この湿状ケーキ715gを濾液の一部500mLに再度懸濁した後、次の空気酸化・濾過の操作を実施した。
濾液は水で3800mLとし、不溶解残渣は乾燥してそれぞれ分析した。その結果は第7表▲6▼行に示すとおりで、沈降分離法によった場合と同等の結果を得た。
【0073】
実施例12
実施例10において、空気酸化に使用したアンモニア水の代わりに同モルの48%NaOHを使用した。その結果、表7▲3▼行と同等の酸化状態に達するのに必要とした時間は2時間であった。
【0074】
実施例13
実施例10の表6▲3▼と同一の操作で得られた懸濁液沈降部分1190mLを内容量2Lのオートクレーブに仕込み、48%NaOHを115g加え、50〜55℃でタービン型攪拌翼(65mmφ、500rpm)で攪拌しながら、オートクレーブの空間部に空気圧をかけた。
酸化の進行速度を測定するために、5分毎にサンプルを採取し、その度ごとに空気圧をいったん抜くことで空気の補充をした。その結果、第7表▲3▼行に匹敵する酸化状態に達するのに必要とした時間は空気圧2kg/cm2 ・Gでは40分、5kg/cm2 ・Gでは20分であった。
【0075】
実施例14
実施例10の表6▲3▼と同一の操作で得られた懸濁液沈降部分1190mLを2Lのビーカーに仕込み、48%NaOHの115gを加え、50〜60℃で30%H2 2 水52.5gを2時間かけて添加して酸化した。50〜60℃に2時間保持した後、H2 SO4 :H2 O=1:1の硫酸21gを加えてpH8.0とした後、濾過した。濾液は水で3800mLとし、不溶解残渣は乾燥し、それぞれ分析に供した。その値は第7表▲7▼行のとおりで、溶解しなかったバナジウムは全V(バナジウム総量)として1.12/22.32=5.0%であった。
【0076】
実施例15
実施例10の表6▲3▼と同一の操作で得られた懸濁液沈降部分1190mLを2Lのビーカーに仕込み、48%NaOHの115gを加え、60〜70℃で有効塩素8%のNaOCl水溶液103gを2時間かけて添加して酸化した。60〜70℃に2時間保持した後、H2 SO4 :H2 0=1:1の硫酸23gを加えて、pH8.0とした後、濾過した。濾液は水で3800mLとし、不溶解残渣は乾燥してそれぞれ分析した。その値は第7表▲8▼行のとおりで、溶解しなかったバナジウムは全Vとして1.22/22.27=5.5%であった。
【0077】
実施例16
実施例10において、表1・A−1の高粘度重油灰の代わりにA−2の高粘度重油灰1310g(乾燥分換算1000g)(A−1の灰と比較すると、Crの含有量が明らかに高い)を使用した。第6表▲3▼と同様Na2 SO3 10gを添加し、以下実施例10と同様に沈降分離及び沈降部分の空気酸化の操作をした後、酸を加えてpH5.0に調整し、濾過して濾液と不溶解残渣を得た結果を第9表及び第10表に記載した。さらに、第10表の濾液を徐冷し、バナジン酸アンモニウム塩類を析出させ、20℃で濾過した。その結果を第11表に示す。原料灰に由来するCrは濾液側に行き、得られたバナジン酸アンモニウム塩類には微量しか含有されない。このバナジン酸アンモニウム塩類は水に再度溶解し、pH7〜8でアンモニウム塩類で塩析し、濾過することによって極めて高純度(V=43.53%)のメタバナジン酸アンモニウムを得ることができた。
これに対して空気酸化後の濾過・析出の操作をpH7〜8で実施すると第11表▲6▼の欄のようにCrはメタバナジン酸アンモニウム中に著しく夾雑し、再度溶解・析出して精製を試みてもCrは充分には除去されず、V=43.48%の製品しか得られなかった。
【0078】
【表9】
Figure 0003917222
【0079】
【表10】
Figure 0003917222
【0080】
【表11】
Figure 0003917222
【0081】
実施例17
表1・Bの重油灰1340g(乾燥分換算1000g)を水5000mLに懸濁し、40〜45℃で10gのNa2 SO3 を添加した後、48%NaOHの120mLを加えてpH8.0とし、1時間攪拌した後静置した。3時間後、上澄み液と沈降部分の比はほぼ75:25となった。ここで上澄み液3700mLを分離し、上澄み液及び沈降部分を分析した結果を表12に示す。
【0082】
【表12】
Figure 0003917222
【0083】
次に上澄み液を分液除去した沈降部分(容積1510mL)を邪魔板、温度計、円板付きタービン攪拌機及び空気吹き込み管を備えた2L容のビーカーに仕込み、25%アンモニア水41mLを添加し、45〜55℃で攪拌下に空気1L/分を3時間吹き込んだ。この間、pHが7.5以下にならないように、25%アンモニア水30mLを追加滴下した。液量を3800mLに調整し、70℃に昇温した後、ろ過してろ液と不溶解残渣とを得た。これらを表13に示す。
【0084】
【表13】
Figure 0003917222
【0085】
さらに、このろ液を徐々に冷却し、微量のメタバナジン酸アンモニウム種結晶を添加した後、20℃まで冷却して結晶を析出させた。これをろ過した後、水約30mLで洗浄しメタバナジン酸アンモニウムとろ液と洗液とを得た。ろ液と洗液とを合し、水で3900mLとした。それらを分析した結果を表14に示す。
【0086】
【表14】
Figure 0003917222
【0087】
実施例18
実施例10の第6表▲3▼の上澄み液の1/4と第8表▲3▼の濾過洗液の1/4を合わせ、水で液量を2000mLとした。N含有率=19.25g/L、N含有量=38.5gであった。これを四つ口フラスコに仕込み、酸化マグネシウム84gを加え、90〜95℃に保持しつつ、液量が減少しないように水を滴下しながら、熱空気を吹き込み、出口に凝縮器を取りつけ、留出物を捕集した。得られたアンモニア水は980mL、アンモニア濃度は39.1g/L、アンモニア量は38.3gであった。一方、フラスコ中に残存した水は1950mL、アンモニア濃度は130ppmであった。
また、残留液中には過剰の酸化マグネシウムとニッケル水酸化物が懸濁しているので、これを濾過・乾燥した。得られたケーキは35.0gでニッケル含有量は3.9%=1.37gであった。
第2回目の仕込みにおいては、第1回目と同一のN含有廃水に新たな酸化マグネシウム84gの代わりに、新しい酸化マグネシウム60gとこのケーキ30gを使用して同様にアンモニアを発生させることができる。この際、得られた懸濁液をろ過・乾燥して取得されたケーキは34.5gで、ニッケル含有量は7.25%=2.50gであった。このような操作は、少なくとも取得ケーキのニッケル含有量が15%となるまでは順調に繰り返し実施できた。
【0088】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、化石燃料の燃焼の際に生じる集塵機灰を効率的に、即ち可及的少ない設備投資でかつ、可及的少ないエネルギー消費で湿式処理して、原料灰中のバナジウムを高品位のメタバナジン酸アンモニウムとして高い収率で得る一方、廃水中のアンモニア性窒素濃度を低くして廃水の放流規制合格を容易ならしめ、あるいは廃水のマグネシウム化合物原料としての利用の道を開くことが出来る。その上、原料灰中のニッケル分もニッケル原料などに利用可能な形で回収される。

Claims (5)

  1. 化石燃料の燃焼の際に得られる少なくとも硫酸アンモニウムを含有する集塵機灰に、下記(a)〜(h)の工程を施すことを特徴とする集塵機灰の処理方法。
    (a) 集塵機灰を水に懸濁する工程。
    (b) 上記の懸濁液にアルカリを加えて中和し、pH6〜9とする工程。
    (c) 上記の中和された懸濁液を濾過する工程。
    (d) 工程(c)で得られた濾過残渣を水に懸濁して苛性アルカリを加えた後、酸化剤により酸化を行う工程。
    (e) 工程(d)で得られた懸濁液に酸を加えてpH6〜9とした後、濾過する工程。
    (f) 工程(e)で得られた濾液を70〜90℃に加熱した後、アンモニウム塩を加えて冷却し、濾過して析出したメタバナジン酸アンモニウムを得る工程。
    (g) 工程(c)で得られた濾液と工程(f)で得られた濾液を混合し、これに酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムを加えて加熱し、アンモニアを発生させると共にニッケル水酸化物を含有する物質を析出させる工程。
    (h) 工程(g)で得られた懸濁液を濾過して硫酸マグネシウムを含有する水溶液とニッケル水酸化物を含有する物質とを得る工程。
  2. 工程(b)の中和に際し、予めバナジウムの還元剤を添加する請求項1記載の処理方法。
  3. 工程(d)の酸化剤による酸化が、大気圧以上の圧力の空気と懸濁液との接触により行われるものである請求項1記載の処理方法。
  4. 工程(d)の酸化剤による酸化が、過酸化水素または次亜塩素酸塩水溶液の添加により行われるものである請求項1記載の処理方法。
  5. 工程(f)で使用するアンモニウム塩が、工程(g)で発生するアンモニアを硫酸で中和して得られる硫酸アンモニウムである請求項1〜4いずれか記載の処理方法。
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