JP3917191B2 - 不均質蒸気相カルボニル化プロセス - Google Patents
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Description
本発明は、メタノール又はメタノール源のカルボニル化によって酢酸、酢酸メチル又はこれらの混合物を製造する新規な方法に関する。更に詳しくは、本発明は、メタノール又はメタノール源、ハライド(ハロゲン化物)及び一酸化炭素の混合物を蒸気相で、イリジウム並びにルテニウム、モリブデン、タングステン、パラジウム、白金及びレニウムから選ばれた少なくとも一種の第二の金属を触媒担体物質に担持させてなる担持触媒と接触させるプロセスに関する。この新規なプロセスは、メタノールから酢酸、酢酸メチル又はこれらの混合物を製造する公知のプロセスに対して、生産速度の改良を含む数多くの利点を提供する。
発明の背景
カルボニル化によりメタノールから酢酸の製造プロセスは世界的に広く運転されている。これらの商業的プロセスの全体的な概括及び単一の炭素源からのアセチルの生成を達成する他のアプローチはHoward et alのCatalysis Today, 18(1993)325〜354頁に記載されている。現在、メタノールのカルボニル化による酢酸のすべての商業的な製造プロセスは第VIII属金属及びヨウ素又は沃化水素及び/もしくは沃化メチルのような沃素含有化合物からなる均質触媒系を用いる液相において実施されている。ロジウムは最も一般的な第VIII属金属触媒であり、沃化メチルは最も一般的な促進剤である。これらの反応は水の存在下に実施して触媒の沈澱を防止している。米国特許第5,144,068号は触媒系にリチウムを含ませてRh−I均質プロセスにおいて使用する水を少なくすることを記載している。イリジウムもメタノールカルボニル化反応用活性触媒であるが、その他は同様の条件下で用いた場合にはロジウム触媒によって得られる反応速度より低い反応速度を通常与える。米国特許第5,510,524号はレニウムの添加によってIr−I及びRh−I均質触媒系の両者の速度及び安定性が改良されることを教えている。欧州特許出願EP−A−0752406号は、ルテニウム、オスミウム、レニウム、亜鉛、カドミウム、水銀、カリウム、インジウム又はタングステンが液相Ir−I触媒系の速度及び安定性を改良することを教えている。一般に、現在酢酸を製造するのに使用されている均質カルボニル化プロセスは比較的高い生産速度及び選択性を与える。しかしながら、不均質触媒は、より容易な生成物の分離、より低い装置材料コスト、容易な循環及びそれでさえもより高い速度という潜在的な利点を与える。
Schultzは、米国特許第3,689,533号において、ハライド促進剤の存在下に蒸気相においてアルコールのカルボン酸へのカルボニル化用不均質触媒として担持ロジウムの使用を記載している。米国特許第3,717,670号において、Schultzは周期律表のIB, IIIB, IVB, VB, VIB, VIII(現在の表記では、それぞれ、11, 3, 4, 5, 6及び8〜10)、ランタンド及びアクチュド元素から選ばれた促進剤と組み合せて、同様の担持ロジウム触媒を使用することを記載している。米国特許第5,488,143号において、Uhmは、ハライド促進、蒸気相メタノールカルボニル化反応用の担持ロジウム用の促進剤としてアルカリ、アルカリ土類又は遷移金属の使用を記載している。米国特許第5,258,549号においてPimblettは炭素支持体上に担持したロジウム及びニッケルの組み合せが各金属単独よりも一層活性であることを教えている。
均質アルコールカルボニル化触媒としてのイリジウムの使用に加えて、米国特許第3,772,380号においてPaulik et alは、蒸気相、ハロゲン−促進、不均質アルコールカルボニル化プロセスにおける触媒として不活性支持体上のイリジウムの使用を記載している。欧州特許出願EP−A−0120631号及びEP−A−0461802号は単一遷移金属成分カルボニル化触媒用支持体として特別の炭素の使用を記載している。
欧州特許出願EP−A−0759419号(1997年2月26日公開)(上に引用した本願の仮出願60/037186の出願日後)はアルコール及び/又はその反応性誘導体のカルボニル化プロセスに関する。EP−A−0759419号は均質触媒系の存在下に液相においてアルコールをカルボニル化する第一のカルボニル化反応器からなり、そしてこの第一の反応器からのオフガスを次に追加のアルコールと混合し、担持触媒を含む第二の反応器に供給するカルボニル化プロセスを開示している。この第一の反応器において利用する均質触媒系はハロゲン成分と、ロジウム及びイリジウムから選ばれたVIII族金属とを含む。このVIII族金属がイリジウムである場合には、この均質系触媒系はルテニウム、オスミウム、レニウム、カドミウム、水銀、亜鉛、インジウム及びガリウムからなる群から選ばれた任意的な共触媒を含むこともできる。第二の反応器に使用される担持触媒は炭素上のイリジウム、ロジウム及びニッケルからなる群より選ばれたVIII族金属と任意的な金属促進剤を含んでなる。任意的な金属促進剤は鉄、ニッケル、リチウム及びコバルトとすることができる。EP−A−0759419号に例示のプロセスにおいて、第二カルボニル化反応ゾーン内の条件は混合蒸気及び液相が第二反応器に存在している。第二の反応器中への液相成分の存在は担持触媒からの活性金属の浸出に通じ、それは次に触媒活性の実質的な低下をもたらす。
文献はハライド促進剤の存在下に1バール(100kPa)の圧力での蒸気相アルコールカルボニル化触媒としてロジウム含有ゼオライトの使用についてのいくつかの報告をしている。この種の触媒の先導的文献はManeck et alのCatalysis Today, 3(1988), 421〜429頁に記載されている。Gelin et alは、Pure & Appl. Chem. 60巻8号(1988)1315〜1320頁において、ハライド促進剤の存在下にメタノールの蒸気相カルボニル化用触媒としてゼオライト中に含まれるロジウム又はイリジウムの使用例を提供している。Krzywicki et alは、Journal of Molecular Catalysis, 6(1979)431〜440頁において、メタノールのハライド促進化、蒸気相カルボニル化にロジウムの支持体としてシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ及び二酸化チタンの使用を記載しているが、これらの支持体は一般には炭素ほど有効ではない。Luft et alは、米国特許第4,776,987号及び関連の開示において、エーテル又はエステルのカルボン酸無水物へのハライド促進化蒸気相カルボニル化用の不均質触媒にVIII族金属を接合させる手段として種々の支持体に化学的に結合したキレート化リガンドの使用を開示している。Evans et alは、米国特許第5,185,462号において、酸化物支持体に結合した窒素又はリンリガンドに結合した貴金属に基づくハライド促進化蒸気相メタノールカルボニル化用不均質触媒を記載している。Panster et alは、米国特許第4,845,163号に、アルコールのハライド促進化液相カルボニル化用不均質触媒としてロジウム−含有オルガノポリシロキサン−アンモニウム化合物の使用を記載している。Drago et alは、米国特許第4,417,077号において、メタノールのハライド促進化、カルボニル化を含む多くのカルボニル化反応用触媒としての単一遷移金属のアニオン型に結合したアニオン交換樹脂の使用を記載している。担持されたリガンド及びアニオン交換樹脂は液相カルボニル化反応において金属を固定するために或る程度は有用であるが、一般に担持されたリガンド及びアニオン交換樹脂の使用によっては、活性金属成分に対する支持体としての炭素の使用に比較して、アルコールの蒸気相カルボニル化に対し、何の利点も得られない。
活性炭担持ニッケルはメタノールのハライド促進化、蒸気相カルボニル化用の不均質触媒として研究されており、供給混合物中に水素を添加した場合に速度の上昇が認められている。炭素上ニッケル触媒系に関連した文献は、Fujimoto et alによってChemistry Letters(1987)895〜898頁及びJournal of Catalysis, 133(1992)370〜382頁並びにこれらに含まれている文献に記載されている。Liu et alは、Ind. Eng, Chem, Res., 33(1994)、488〜492頁に、錫が炭素上ニッケル触媒の活性を高める旨報告されている。Mueller et alは、米国特許第4,918,218号に、メタノールのハライド促進カルボニル化用の担持ニッケル触媒にパラジウム及び任意的に銅を添加することを開示している。一般的には、ニッケル基準触媒によって与えられる反応速度は、同一の条件下に運転した場合には、類似のロジウム基準触媒によって与えられる反応速度より低い。
炭素上に担持された他の単一金属は、Fujimoto et alによって、Catalysis Letters 2(1989)145〜148頁に、メタノールのハライド促進、蒸気相カルボニル化において限られた活性を有している。これらの金属の中で最も活性なのはSnである。Snに続いて、活性の減少する順にPb, Mn, Mo, Cu, Cd, Cr, Re, V, Se, W, Ge及びGaである。これらの他の単一金属触媒は、いずれも、Rh, Ir, Ni基準の触媒又は本発明の触媒とはほぼ同じ程度に活性ではない。
多くの固形物質はハライド促進剤を添加することなく、メタノールのカルボニル化に触媒作用を及ぼすことが記載されている。Gates et alはJournal of Molecular Catalysis 3(1977/78)、1〜9に、メタノールの液相カルボニル化用のポリマー結合ポリクロ化チオフェノールに結合したポリマーに結合したロジウムを含む触媒を記載している。Currentは、欧州特許出願、EP−A−130058号において、エーテル、水素及び一酸化炭素の同族エステル及びアルコールへの転化用不均質系触媒として、任意的にモリブデンを含む硫化したニッケルの使用を記載している。Smith et alは、EP−A−596632号において、アルコールのハライドを含まないカルボニル化用触媒としてCu, Ni, Ir, Rh又はCo含有モルデナイトゼオライトの使用を記載している。Feitlerは、米国特許第4,612,387号において、蒸気相においてアルコール及び他の化合物のハライドを含まないカルボニル化用触媒として遷移金属を含まない或る種のゼオライトの使用を記載している。Wegmanは、米国特許第5,218,140号において、蒸気相におけるアルコール及び他の化合物のハライドを含まないカルボニル化用の触媒として、Fe, Ru, Os, Co, Rh, Ir, Ni, Pd又はPtを含むポリオキソメタレートアニオンの使用を記載している。ハライド促進剤を用いないアルコールカルボニル化は非常に望ましいが、これらのハライドを含まない触媒系はハライドによって促進された触媒の速度に匹敵する速度はもたない。
発明の要約
本発明は、イリジウム並びにルテニウム、モリブデン、タングステン、パラジウム、白金及びニレウムから選ばれた少なくとも一種の第二の金属を触媒支持体物質に付着させて成る触媒の存在下に、メタノール蒸気を一酸化炭素と接続させることによって酢酸、酢酸メチル又はそれらの混合物を製造する蒸気相プロセスに関する。蒸気相の運転は、反応を溶解(均質)触媒を利用した液相において実施するメタノールカルボニル化に関するほとんどの従来の技術から本発明を区別する。
本発明は、(1)(i)イリジウム並びにルテニウム、モリブデン、タングステン、パラジウム、白金及びレニウムから選ばれた少なくとも一種の第二の金属を触媒支持体物質に付着させて成る担持触媒を含み、そして(ii)カルボニル化温度及び圧力条件下に維持されるカルボニル化ゾーンにメタノール、一酸化炭素並びに塩素、臭素、沃素及びこれらの化合物から選ばれたハライドを含むガス混合物を供給し、
(2)カルボニル化ゾーンから酢酸、酢酸メチル又はそれらの混合物を含むガス生成物を回収する
工程を含む酢酸、酢酸メチル又はそれらの混合物を製造する方法を提供する。
本発明の新規な不均質系プロセスは全体的にガス相において操作する。即ち、ガルボニル化ゾーン又は反応器に存在する化合物又は物質は移動液相(mobile liquid Phase)には存在しない。この様式で操作することによっていくつかの独特の利点を与える。現在の商業的、液相、均質系プロセスに比較して、蒸気相において不均質系触媒で操作することによって得られる利点のいくつかは以下に示す通りである。
(1)均質系プロセスから得られる液体生成物からの触媒物質の困難でかつコスト高になる分離を取り除く。
(2)液相、均質プロセスにおける達成可能な速度の決定的な上限となる一酸化炭素の反応媒体中への均質移動によって課せられる速度制限の排除、このような速度制限を回避することによって著るしく高い反応速度をガス相操作において達成できるようになる。
(3)一層低い圧力での操作によって、プラント建設に低コスト材料を使用できるようにする。
更に、沃素含有物質は蒸気相において腐蝕性が少ないので、より低価格の活金材料の使用を可能にする。
従来技術の大多数に比較して、反応体及び/又は生成物が液体として存在する条件下で操作する、本発明のプロセスである不均質プロセスは、全体的に蒸気相で操作することによって、液体成分の存在下に操作する公知の不均質プロセスにおいて生ずる触媒の溶解(触媒支持体からの浸出)を排除する。更に、液体の存在下における公知操作は、COの液体反応媒体への物質移動に伴なう同じ問題及び均質系プロセスに伴なわれる同一の上限の問題に遭遇する。本発明のプロセスは、蒸気相における非常に活性な触媒を用いる操作の結果としてのより低い圧力ではより速い速度を提供する。最後に、今日までに知られている最良の操作を代表する公知のロジウム−触媒、蒸気相プロセスに比較して、本発明の新規プロセスに用いられる触媒は著るしく安価でありながら匹敵する速度を達成する。
発明の記述
本発明のプロセス用の触媒は、イリジウムと、ルテニウム、モリブデン、タングステン、パラジウム、白金及びレニウムから選ばれた少なくとも一種の第二の金属との混合物を触媒支持体物質に付着させて成る。潜在的に有用な支持体物質の例は、炭素並びにケイ素、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム又はチタニウムの酸化物又は混合酸化物である。好ましい支持体物質は市販の広範囲の炭素、活性炭及び酸化ケイ素源から選定することができる。アルミニウムの酸化物又はアルミニウムの酸化物を含む物質は最も少なく好ましい。
典型的には、触媒は、(1)適当な溶媒中にイリジウムの可溶性化合物及び第二の金属(又は複数種の金属)の化合物を溶解し、(2)工程(1)の溶液を支持体物質と一緒にし、(3)溶媒をゆっくり蒸発させ、そして任意的に、(4)工程(3)からの乾燥触媒を不活性ガス流又は真空中で高温で加熱することによって製造される。この触媒製造法の変法は当業者に周知の通りであり、使用することができる。
触媒の製造に使用するイリジウムの化合物又は形態は一般に臨界的ではなく、触媒は広範囲のイリジウム含有化合物の任意のものから製造することができる。実際に、ハライド、三価窒素、三価リンの有機化合物、一酸化炭素、水素及び2, 4−ペンタンジオンの単独又は無数の(myriad)組み合せを含むイリジウム化合物が市販されており、本発明において利用される触媒の製造に有用である。更に、イリジウムの酸化物は適当な媒体中に可溶であれば使用することができる。それらの入手性、コスト及び水(好ましい溶媒媒体)への高い溶解性に基づいて、好ましいイリジウム源はその塩化物の一つ、例えば水和三塩化物及びヘキサクロロイリデート(IV)の種々の塩のいずれかである。イリジウムトリクロライド又はヘキサクロロイリデート錯体のいずれかの使用はコスト、溶解性及び性能の点で同等である。
同様に、触媒の製造に使用される第二の金属の化合物の化合物又は形態は一般には臨界的でなく、触媒はルテニウム、モリブデン、タングステン、パラジウム、白金又はレニウムを含む広範囲の化合物の任意のものを用いて製造することができる。広範囲のこれらの元素の化合物、例えばハライド、アセテート、硝酸塩、三価窒素、三価リンの有機化合物、一酸化炭素、水素及び2, 4−ペンタンジオンの単独又は種々の組み合せは市販されており、本発明に用いる触媒の製造に使用することができる。更に、これらの物質の酸化物は、適当な媒体に可溶であれば、使用することができる。しかし、第二の金属を与えるのに使用する化合物は当該金属の水溶性の形態であるのが好ましい。それらの入手性及びコストに基づいて、好ましい第二金属源は種々の第二金属の酢酸塩、硝酸塩及びハロゲン化物である。これらの塩の中で最も好ましい入手源はその溶解性(特に水溶性)によって決定され、それらは有用な第二成分のリストを通して広く変えることができる。例えば、最も好ましい第二の促進剤(Ru及びPd)に対しては、ハロゲン化物(ハライド)は一般に入手可能であり、可成り溶解性である。
触媒上に存在するイリジウム及び第2成分の含量は、広範囲にわたって変動することができ、例えば各金属について、0.01〜10重量%である。しかしながら、好ましい触媒は0.1〜2重量%の各成分を含む。本発明で利用する触媒の第二金属成分は好ましくはルテニウム又はモリブデンである。特に好ましい担持カルボニル化触媒は、炭素、活性炭及び酸化ケイ素から選ばれた触媒支持体物質に付着させた(i)イリジウム及びルテニウム、又は(ii)イリジウム及びモリブデンから成り、イリジウム及びルテニウムはそれぞれ触媒重量の0.1〜2重量%を構成する。
本発明のプロセスに利用されるメタノールは通常はメタノールとして供給されるが、メタノール反応体を発生する物質の組み合せの形で供給することもできる。このような物質の組み合せの例は、(i)酢酸メチル及び水並びに(ii)ジメチルエーテル及び水である。本発明プロセスの操作において、酢酸メチル及びジメチルエーテルは反応器内で生成し、そして酢酸メチルが所望の生成物でない場合には水と共に反応器に再循環し、その後消費されて酢酸を生成する。
ガス状供給混合物中の水の存在はメタノールを使用する場合には必須ではないが、或る程度の水の存在は酢酸メチル及び/又はジメチルエーテルの生成を抑えるので好ましい。メタノールを用いて酢酸を発生させる場合には、水:メタノールのモル比は0:1〜10:1とすることができるが、好ましい範囲は0.01:1〜1:1である。酢酸メチル又はジメチルエーテルのような別のメタノール源を用いる場合には、供給する水の量は通常メタノール付着物の加水分解に必要な水のモル数を考慮して増大する。従って、酢酸メチル又はジメチルエーテルのいずれかを用いる場合には、水:エステル又はエーテルのモル比は1:1〜10:1の範囲であるが、好ましくは1:1〜3:1である。酢酸の製造において、メタノール、メチルエーテル及び/又はジメチルエーテルの組み合せは、エーテル又はエステルを加水分解してメタノール反応体を生ずるために適当な量の水を加えることを除けば、等価である。
本発明のプロセスを操作して酢酸メチルを製造する場合には、水は添加する必要がなく、そしてジメチルエーテルは好ましい供給原料である。更に、酢酸メチルの製造にメタノールを供給原料として使用する場合には、水を除くことが必要である。しかしながら、本発明プロセスの第一の(主要な)用途は酢酸の製造にある。
カルボニル化ゾーンへ供給されるガス混合物は塩素、臭素、沃素及びこれらの化合物から選定されるハライド成分を含む。好ましいハライド成分は臭素、臭素化合物並びに特に沃素及び沃素化合物で、これらはカルボニル化温度及び圧力条件下でガス状のものである。ハライド成分は種々の形態で供給することができるが、好ましい形態はアルキルハライド、特にメチルハライド、ハロゲン化水素、又は分子状ハライド、即ちI2, Br2又はCl2である。メタノール(又はメタノール等価物)ハライド又はハライド化合物のモル比は実質的に変動させることができるが、典型的には1:1〜10,000:1、更に好ましくは5:1〜1000:1である。
一酸化炭素はカルボニル化ゾーンへ純粋な一酸化炭素として又は水素及び一酸化炭素の混合物として供給することができる。少量の水素、例えばCO:H2容積比99.5:0.5〜95:5は最適触媒活性を維持するのに有用であるが、水素に対する一酸化炭素の比、水素の存在は少しの重要性があるに過ぎないと思われる。即ち、CO:水素の比100:0〜25:75のすべてが有用と思れる。しかしながら、好ましいCO:水素比は通常99:1〜2:1の範囲である。
本発明プロセスは、蒸気相において操作し、従って、生成混合物の露点、即ち凝縮が起る温度より高い温度で実施する。しかしながら、露点は希釈(特に例えば未反応一酸化炭素、水素又は不溶性希釈ガスのような比凝縮性ガスに対して)、生成物組成及び圧力の複合関数であるので、本発明プロセスは依然として、生成物流の露点を超える温度であれば、広範囲の温度で操作することができる。実際には一般に100〜350℃の温度範囲、特に有用な温度範囲は150〜275℃である。
温度と同じように、有用な圧力範囲は生成混合物の露点によって限られる。しかしながら、反応が生成物流の液化を防止するのに十分な温度で操作される限り、広範囲の圧力を使用することができ、例えば0.1〜100バール(絶対)(bara)(10〜10,000kPa)の範囲の圧力を使用できる。本発明プロセスは1〜50bara(100〜5,000kPa)、最も好ましくは3〜30bara(300〜3,000kPa)の範囲で実施するのが好ましい。
実施例
本発明プロセス及びそのプロセスにおいて利用する触媒を以下の実施例で更に説明する。
触媒の製造
触媒例1
イリジウムトリクロライド(三塩化イリジウム)水和物(418.9mg)及びルテニウムトリクロライド(三塩化ルテニウム)水和物(275.7mg)を脱イオン水(30ml)に溶解した。この混合物を蒸発皿中に含まれているBET表面積が800m2/g超の12×40メッシュ活性炭粒子(20.0g)へ添加した。この混合物を、時々撹拌しながら、自由流動性になるまでスチーム浴上で加熱し、次いで、106cm長×25mm外径の寸法の石英管に移した。この混合物を含む石英管を三要素電気管炉に入れ、混合物を炉の61cm長加熱ゾーンのほぼ中央部に置いた。窒素(100標準cm3/min)を触媒床に連続的に通し、そして石英管を2時間かけて周囲温度から300℃に加熱し、300℃に2時間保持し、次いで周囲温度(室温)まで冷却した。この方法で製造した触媒(触媒I)はIr 1.00重量%及びRu 0.49重量%を含み、密度は0.57g/mlであった。
前述の手順を3回繰り返した。即ち第1回目は活性金属としてイリジウムのみを含む触媒(比較触媒C−I)を製造し、第2回目はルテニウムのみを含む触媒(比較触媒C−II)を製造し、そして第3回目は三塩化イリジウム水和物を三塩化ロジウム3水和物303.5mg(1.166mmol)に代えてロジウム及びルテニウムを含む触媒(比較触媒C−III)を製造した。
触媒例2
三塩化ルテニウム水和物を塩化パラジウム206.7mg(1.166mmol)に代えた以外は例1に記載の手順を繰り返して、Ir 1.00重量%及びPd 0.49重量%を含み、そして密度が0.57g/mLの触媒(触媒II)を得た。
触媒例2の手順を2回繰り返した。即ち第1回目は活性金属としてパラジウムのみを含む触媒(比較触媒C−IV)を製造し、そして第2回目は三塩化イリジウム水和物を三塩化ロジウム3水和物303.5mg(1.166mmol)に代えてロジウム及びパラジウムを含む触媒(比較触媒C−V)を製造した。
触媒例3
三塩化ルテニウム水和物をアンモニウムパーレネート(NH4ReO4)312.7mg(1.166mmol)に代えた以外は例1に記載の手順を繰り返して、Ir 1.00重量%及びRe 0.49重量%を含み、そして密度が0.57g/mLの触媒(触媒III)を得た。
触媒例4
触媒製造時に炭素をシリカゲル(Davison Chemical Co., Baltimore, Md, グレード57、メッシュ8)20gに代えた以外は例1に記載の手順を繰り返して、シリカ上にIr 1.00重量%及びRu 0.49重量%を含む触媒(触媒IV)を製造した。
触媒例5
三塩化ルテニウム水和物をアンモニウムタングステンオキサイド〔(NH4)6W12O41・5H2O〕331.06mg(タングステン1.166mmol)に代えた以外は例1に記載の手順を繰り返して、活性炭上にIr 1.08重量%及びW 1.03重量%を含む触媒(触媒V)を得た。
触媒例6
三塩化ルテニウム水和物をアンモニウムモリブデンオキサイド〔(NH4)6Mo7O24・5H2O〕205.85mg(モリブデン1.166mmol)に代えた以外は例1に記載の手順を繰り返して、活性炭上にIr 1.05重量%及びMo 0.52重量%を含む触媒(触媒VI)を得た。
比較触媒例C−6
三塩化ルテニウム水和物を酢酸クロム一水和物1.153g(4.665mmol)に代えた以外は例1に記載の手順を繰り返して、活性炭上にIr 1.09重量%及びCr 0.29重量%を含む触媒(比較触媒C−VI)を得た。
比較触媒例C−7
三塩化ルテニウム水和物を酢酸コバルト三水和物290.4mg(1.166mmol)に代えた以外は例1に記載の手順を繰り返して、活性炭上にIr 1.08重量%及びCo 0.33重量%を含む触媒(比較触媒C−VII)を得た。
比較触媒例C−8
三塩化ルテニウム水和物を塩化第一鉄106.46mg(1.166mmol)に代えた以外は例1に記載の手順を繰り返して、活性炭上にIr 1.09重量%及びFe 0.32重量%を含む触媒(比較触媒C−VIII)を得た。
メタノールのカルボニル化
反応器系はハステロイ合金製の6.35mm(1/4インチ)径管の800〜950mm(31.5〜37インチ)セクションから成るものとした。この管の上部は予熱及び反応(カルボニル化)ゾーンを構成し、反応器の頂部から410mmに石英ウールパッドを挿入し、触媒のサポートとし、次いで連続的に(1)微細な石英チップ(840ミクロン)0.7gの床、(2)前述の例において記載したようにして製造した触媒の一種0.5g及び追加の微細石英チップ6gを挿入した。管の頂部には液及びガス状供給物を導入するための入口マニホルドを取り付けた。
6gの微細石英チップは液状供給物を蒸発させるための熱交換表面として作用した。注意しなければならないのは、組立時、操作開始時、操作時及び停止時のいずれにおいても、常に液状供給物が触媒床と接触しないようにすることである。管の残り下部長(生成物回収部)は使用する元の管の長さに依存してその長さが変動する渦巻(vortex)クーラーを構成し、操作中約0〜5℃の温度に維持した。
ガスはブルックス(Brooks)流量制御器を用いて供給し、液体は高速液体クロマトグラフポンプを用いて供給した。反応ゾーンからのガス状生成物は0〜5℃で操作する渦巻クーラーを用いて凝縮させた。生成物貯槽は反応器径から下流に配したタンクとした。圧力は反応器系の出口側に設けた修正リサーチコントロールバルブを用いて保持し、そして反応部の温度は反応器系の外側の加熱テープを用いて維持した。
水素及び一酸化炭素の反応器への供給は、反応器を温度240℃及び圧力17.2bara(250psia, 1720kPa)に維持しながら開始した。水素の流速は25標準cm3/min(cc/min)に設定し、一酸化炭素の流速は100cc/minに設定した。反応器部はこれらの条件下に1時間又は温度及び圧力が安定化されるまで(いずれか長い方)維持した。次に高速液体クロマトグラフポンプを始動し、70重量%メタノール及び30重量%沃化メチルからなる混合物を10〜12g/hrの速度で供給した。液体生成物のサンプルを集め、ガスクロマトグラフ技術を用いて定期的に分析した。
カルボニル化例1
触媒Iを用いた前述の手順の間に定期的に採取したサンプルの組成及び重量を表Iに示す。表Iにおいて、「時間」はメタノールの供給開始から特定のサンプルの採取までのカルボニル化操作の合計時間(hr)である。「MeI」(沃化メチル)、「MeOAc」(酢酸メチル)、「MeOH」(メタノール)及び「HOAc」(酢酸)の下の値はサンプル中に存在する、これらの化合物のそれぞれの重量%である。各サンプル重量はグラム(g)で表示した。
触媒Iを用いた前記実験のアセチル製造速度を表IIに示す。表IIのサンプルNo.及び時間の値は表Iに対応する。「生成アセチル」は以下の式から計算した各時間間隔(インクレメント)の間に生成した酢酸メチル及び酢酸の量(mmol)である。
「生成速度」は各時間間隔(時間インクレメント)、即ちサンプル間の操作時間の間の時間当り触媒容積リットル当りの生成アセチルのモル数である。時間当り触媒容積リットル当りの生成アセチルのモル数を求める式は以下の通りである。
(式中、0.5は使用した触媒のグラム数で、0.57は触媒の密度g/mlである。)
前記触媒の製造及びカルボニル化手順を3〜8時間(この間反応速度は著るしく増加しつづけた)(誘導期間)繰り返した。誘導期間の完了後、アセチル生成速度は、4つの別々のカルボニル化実験に対し、平均90モル/L−hrであった。ここに記載したカルボニル化実験に対する平均アセチル製造速度は誘導期間後94モル/L−hrであった。
カルボニル化例2〜6及び比較カルボニル化例C−1〜C−9
前述の手順に従ったメタノールのカルボニル化に触媒II〜VI及び比較触媒C−I〜C−IXを用いた。各触媒II〜VI及び比較触媒C−I〜C−IXによって得られた生成速度、即ち時間当り触媒容積リットル当りの生成アセチルのモル数を表IIIに示す。
Claims (13)
- (1)(i)イリジウム並びにルテニウム、モリブデン、タングステン、パラジウム、白金及びレニウムから選ばれた少なくとも一種の第二の金属を触媒支持体物質に付着させて成る担持触媒を含み、そして(ii)カルボニル化温度及び圧力条件下に維持されるカルボニル化ゾーンにメタノール、一酸化炭素並びに塩素、臭素、沃素及びこれらの化合物から選ばれたハライドを含むガス混合物を供給し、
(2)カルボニル化ゾーンから酢酸、酢酸メチル又はそれらの混合物を含むガス生成物を回収する工程を含む酢酸、酢酸メチル又はそれらの混合物を製造する方法であって、カルボニル化ゾーンに存在する化合物が移動液相には存在しない方法。 - ハライドが沃素、沃化水素及び沃化メチルから選ばれ、そしてカルボニル化ゾーンを100〜350℃の温度及び100〜5,000kPaの圧力に維持する請求の範囲第1項に記載の方法。
- ガス混合物が水:メタノールモル比が0.01:1〜1:1となる量の水を含む請求の範囲第2項に記載の方法。
- 触媒がイリジウム及び第二の金属のそれぞれを0.1〜2重量%含み、触媒支持体物質がカーボン、活性炭及び酸化ケイ素から選択される請求の範囲第1項に記載の方法。
- 担持触媒がイリジウム、ルテニウム及び触媒支持物質を含んでなる請求の範囲第1項に記載の方法。
- (1)(i)イリジウム、ルテニウム並びにカーボン、活性炭及び酸化ケイ素から選ばれた少なくとも一種の触媒支持体物質を含んで成る担持触媒を含み、そして(ii)温度150〜275℃及び圧力300〜5,000kPaに維持されるカルボニル化ゾーンにメタノール、水、一酸化炭素並びに沃素、沃化水素及び沃化メチルから選ばれたハライドを含むガス混合物を供給し、
(2)カルボニル化ゾーンから酢酸を含むガス生成物を回収する工程を含む酢酸を製造する方法であって、カルボニル化ゾーンに存在する化合物が移動液相には存在しない方法。 - カルボニル化ゾーンへのガス供給の水:メタノールモル比が0.01:1〜1:1で、触媒がイリジウム及びルテニウムのそれぞれを0.1〜2重量%含む請求の範囲第6項に記載の方法。
- 担持触媒がイリジウム、モリブテン及び触媒支持体物質を含んでなる請求の範囲第1項に記載の方法。
- ハライドが沃素、沃化水素及び沃化メチルから選ばれたものであり、カルボニル化ゾーンを100〜350℃の温度及び100〜5,000kPaの圧力に保つ請求の範囲第5項又は第8項に記載の方法。
- ガス混合物が水:メタノールモル比が0.01:1〜1:1となる量の水を含む請求の範囲第9項に記載の方法。
- 触媒がイリジウム及びモリブテンをそれぞれ0.1〜2重量%含み、そして触媒支持体物質がカーボン、活性炭及び酸化ケイ素から選択される請求の範囲第5項又は第8項に記載の方法。
- (1)(i)イリジウム、モリブテン並びにカーボン、活性炭及び酸化ケイ素から選ばれた少なくとも一種の触媒支持体物質を含んで成る担持触媒を含み、そして(ii)温度150〜275℃及び圧力300〜5,000kPaに維持されるカルボニル化ゾーンにメタノール、水、一酸化炭素並びに沃素、沃化水素及び沃化メチルから選ばれたハライドを含むガス混合物を供給し、
(2)カルボニル化ゾーンから酢酸を含むガス生成物を回収する工程を含む酢酸を製造する方法であって、カルボニル化ゾーンに存在する化合物が移動液相には存在しない方法。 - カルボニル化ゾーンへのガス供給の水:メタノールモル比が0.01:1〜1:1で、触媒がイリジウム及びモリブテンのそれぞれを0.1〜2重量%含む請求の範囲第12項に記載の方法。
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