JP3916799B2 - 金属担持二酸化チタン光触媒及びその量産方法 - Google Patents

金属担持二酸化チタン光触媒及びその量産方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属超微粒子を二酸化チタン光触媒微粒子に担持した金属担持二酸化チタン光触媒に関し、更に詳細には、光触媒効率が極めて低いと云われていたルチル型二酸化チタン微粒子を用いて、その1個当りに平均粒径2nm以下の金属超微粒子を少なくとも1個以上担持させれば量子サイズ効果により青色可視光域までを含んで光触媒効率を激増できる金属担持二酸化チタン光触媒とその量産方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1972年のネイチャーに、アナターゼ型二酸化チタンを触媒として紫外線を照射すると水が水素と酸素に分解できることが発表され、この効果を著者の名を顕彰して本田・藤島効果と呼んでいる。無尽蔵に存在する水から太陽光で水素燃料を生成できればエネルギー問題は解決できる。しかし、その後かなりの研究が行われたが、光触媒の効率が低いこともあって研究は思ったようには進展しなかった。同時に、光触媒としてアナターゼ以外の各種の酸化物半導体が探索されたが、光触媒効率と安全性などの観点からアナターゼ型二酸化チタンを超える物質を発見できないまま現在に至っている。
【0003】
二酸化チタンには、その結晶構造の違いから、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3構造があり、近年にはアモルファス型のものも研究されている。アナターゼ型は約900℃で、ブルッカイト型は更に低温の約600℃でルチル型に転移し、最も安定な構造はルチル型である。ブルッカイト型は工業的に作ることが難しくまだ学術的に議論されている段階である。また、アモルファス型は無定形と呼ばれる不安定相で、工業的製法に困難があるだけでなく、その物性もまだ十分には分かっていない。従って、光触媒として工業的に利用できる二酸化チタンではアナターゼ型とルチル型の2種類が残るのみである。
【0004】
一般に、アナターゼ型は光触媒効率が高く、ルチル型は低いと云われている。本発明者等は既に特開平10−146531号公報により、アナターゼ型とルチル型の光触媒効果の違いがバンドギャップ・エネルギーの大きさにあることを解説している。アナターゼ型の3.2eVに対しルチル型が3.05eVであり、還元電位であるO電位がその中間の3.13eVの位置にあることがその原因である。
【0005】
光触媒効率は、紫外線で価電子帯から伝導帯に励起された電子が伝導帯の底まで緩和した後、O電位に遷移できるかどうかで決まると考えてよい。アナターゼ型では伝導体の底がO電位より0.07eVだけ上位にあるから自然にO電位に落下する自然遷移が生起するが、ルチル型の伝導体の底はO電位より0.08eVだけ下位にあるため上昇する自然遷移は起こらない。これがルチル型の光触媒効率が低い原因である。
【0006】
従って、現在に至っても光触媒としてアナターゼ型二酸化チタンが一般に利用されている事実が理解できる。一方、ルチル型二酸化チタンの主たる用途は白色顔料、つまり塗料・プラスチック・インク・紙・ゴム・化学繊維などを白色化するために充填剤・被覆剤として使用される。それらを有色化する場合においても、一旦白色化した方が色が鮮明に浮き出るので、この場合にも白色顔料として用いられる。また、近年では紫外線吸収用の化粧品として使用されるようになってきた。何故ならば、ルチル型二酸化チタンは光触媒力が弱いために有機物分解力が小さく、樹脂、化繊、皮膚などと接触使用しても安全性が高いからである。従って、現実にはルチルの需要量はアナターゼよりも圧倒的に大きいのである。
【0007】
本発明者等はアナターゼよりも大量にしかも安く提供されるルチルに着目して、前記した特開平10−146531号公報に開示の発明をなした。即ち、光触媒効率の低いルチル型二酸化チタン微粒子の表面にナノスケールの金属超微粒子を多数、好適には100個以上担持させて、ルチルの光触媒力を激増させ、アナターゼ以上の光触媒効率を発現させたことである。この現象の物理的解釈として、粒径が数nm程度の金属超微粒子は量子サイズ効果を発揮し、伝導帯に光励起された電子をその励起レベルから直ちに金属超微粒子の量子トンネルを通して一気に外部に放出させ、O電位に遷移させて有機物分解の主役であるスーパーオキサイドアニオンを生成するモデルを提案した。また、この量子トンネルが二酸化チタン微粒子内に多数存在することが励起電子の外部放出を容易にすると考えて、100個以上の金属超微粒子を担持させれば光触媒効率が激増すると考えたのである。実際に、この方法によりルチルの光触媒効率を激増させることに成功し、アナターゼの光触媒効率を超えるルチル型の金属超微粒子担持光触媒を実現した。
【0008】
前記公報において、金属超微粒子担持二酸化チタン光触媒の製造方法としてコロイド焼成法を提案した。有機金属錯体の疎水コロイドをアセトン等の親水性溶媒に分散させ、この中に二酸化チタン粉末を混合分散させると、二酸化チタン微粒子の表面に疎水コロイドが多数付着する。この試料液をガラス基板上に塗布して自然乾燥させ、次いで500℃前後で焼成する。この焼成過程で、疎水コロイド中の有機物が分解逃散して金属原子が析出し、二酸化チタン表面に金属超微粒子を形成担持させるというものである。このコロイド焼成法により金属超微粒子を強固に担持した二酸化チタン微粒子を実現した。
【0009】
このコロイド焼成法以外に化学的気相法(CVD法)と水溶液法が第3者から提案されている。これらの方法は光触媒の分野ではなく、一般の化学触媒の分野で行われた。例えば、特許第2832336号公報には、金超微粒子をアナターゼ型チタニヤ又はアモルファス型酸化チタン微粒子上に担持させる技術が開示されている。金超微粒子を担持した二酸化チタンという外見から、本発明と類似しているように見える。しかし、この特許は光を照射しない条件下で金の化学触媒機能を発現させるために超微粒子化したものであり、ルチル型二酸化チタンの光触媒効率を増強させる本発明の本質とは無関係のものである。ここでチタニヤとは通常含水酸化チタンのことで、結晶構造はアナターゼである。
【0010】
一般に、白金や銅などの金属は通常の化学反応を促進させる化学触媒力を有しでおり、各種の化学反応に多用されている。これに反し、金は極めて安定な金属で、化学触媒機能が無いとするのが従来の常識であった。前記特許は、この金を超微粒子化することによって化学触媒力を顕在化させたもので、その担体、即ち固定化手段として二酸化チタンを例示しているに過ぎない。従って、この特許には極めて多数の金属酸化物が担体として利用できる旨が記載されているだけであり、これらの担体の物理・化学的性質については必要無いために全く述べられていないのである。
【0011】
この特許公報には、金超微粒子を担体上に担持させる化学的気相法が開示されている。即ち、有機金錯体を気化させ、減圧下で担体に吸着させた後、この担体を100〜700℃で焼成する方法である。換言すれば、真空装置内で行われる化学的気相法(いわゆるCVD法)である。
【0012】
また、前記化学触媒特許に関連した特公平5−34284号公報には、金超微粒子を金属酸化物担体に担持させる水溶液法が開示されている。即ち、pHが7〜11に調製された金属酸化物を分散した水溶液中に金化合物水溶液を滴下し、この金属酸化物を100〜800℃に焼成する方法である。更に、pHが7〜11に調製された金化合物水溶液に金属酸化物を分散させておき、この水溶液に還元剤を滴下して金属酸化物上に金を析出させる方法である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等が先に公開した特開平10−146531号公報は、少なくとも100個以上の金属超微粒子をルチル型二酸化チタン微粒子上に形成担持させるものであるが、例えば白金(Pt)のような貴金属を大量に使用するとなると、その価格は極めて高くなる。たとえ安いルチル型二酸化チタンを使用していても、大量の貴金属の使用によって、一般に光触媒として用いられているアナターゼ型二酸化チタンよりも価格が高くなってしまうことがあり、結果として産業上及び環境保全上の安価な量産要求に答えられない結果となる。
【0014】
その製法であるコロイド焼成法ではガラス基板上で製造するため、金属超微粒子担持ルチル型二酸化チタン光触媒を量産することはできず、価格の高騰を招くことは必至である。また、有機金属錯体コロイドを作った後、親水性溶媒に分散させるから、コロイド化段階での溶媒と後の親水性溶媒の2種類の溶媒が必要になる。複数の溶媒の使用は製造工程の複雑化をもたらすだけでなく、有機溶媒の火災・爆発の危険性とその保存の観点からから云えば、使用種類をできれば1種類にすることが望まれる。
【0015】
前記特許第2832336号公報では化学的気相法が提案されているが、減圧状態下でCVD法を実施するため真空装置を必要とする。容器を真空に引いたり、大気を入れたりするなどの手間を考えると、真空装置内で製造できる分量には限りがあり、とても産業上で要請される安価な量産性を有しているとは云えない。これよりは前述したコロイド焼成法の方が大気中で行える点からまだ量産性があると云える。
【0016】
また、前記特公平5−34284号公報に記載された水溶液法では水を使用するという弱点がある。水中に分散した二酸化チタンの微粒子を取り出す際に、水溶液を濃縮・乾燥させる必要がある。水の蒸発熱は現存する化学物質の中で極めて高く、この濃縮・乾燥工程はエネルギーと時間を消費するため、生成される触媒が極めて高価となり、とても産業的量産性を満足させることはできない。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記欠点を解消するためになされたものであり、本発明に係る金属担持二酸化チタン光触媒は、ルチル型二酸化チタン微粒子1個の表面に平均粒径2nm以下の金属超微粒子を少なくとも1個以上担持したことを特徴としている。
また、ルチル型二酸化チタン微粒子1000重量部に対し金属を少なくとも0.1重量部以上担持している事を特徴とする。
【0018】
有機金属化合物を有機溶媒に溶解分散させて有機金属化合物溶液を調製する第1工程と、この有機金属化合物溶液に二酸化チタン粉末を分散させて二酸化チタン分散液状物を形成する第2工程と、この二酸化チタン分散液状物を乾燥・焼成して二酸化チタン微粒子の表面に金属超微粒子を形成担持させる第3工程からなる金属担持二酸化チタン光触媒の量産方法を提案する。
【0019】
前記有機金属化合物が有機金属錯体であり、前記二酸化チタンがルチル型二酸化チタンである金属担持二酸化チタン光触媒の量産方法を提案する。
また、前記二酸化チタン分散液状物を乾燥炉中に噴霧して乾燥粉末を形成し、この乾燥粉末を焼成炉中に噴霧して焼成し、金属超微粒子を二酸化チタン微粒子表面に担持させる金属担持二酸化チタン光触媒の量産方法を提案する。
更に、前記二酸化チタン分散液状物を乾燥して固形状乾燥物を形成し、この固形状乾燥物を微粉砕して乾燥粉末を形成し、この乾燥粉末をコンベア焼成炉で焼成して金属超微粒子を二酸化チタン微粒子表面に担持させる金属担持二酸化チタン光触媒の量産方法を提案する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明者等は金属担持二酸化チタン光触媒を安価に提供するために鋭意研究した結果、担持させるナノスケール金属超微粒子の個数密度を小さくすれば使用する金属量を少なくでき、価格の低下を実現できると考えた。従来は、1個のルチル型二酸化チタン微粒子にできるだけ多数、好適には100個以上の金属超微粒子を担持させることが必要であると考えていたが、最近になり少なくとも1個の金属超微粒子を担持させるだけで、量子トンネル効果を発揮できるのではないかと発想の転換を行ったのである。
【0021】
その理由は次の通りである。粒径が約1nmの金属超微粒子1個に含まれる金属原子数は、例えば数十個であるから、その電子エネルギーレベルは大きく離散化するだけでなく、各エネルギーレベルに対応する波動関数は、鳥が羽を開くように、その裾野を左右に広く開いていると考えられる。例えば、金属超微粒子1個の金属波動関数が二酸化チタン微粒子の内部に広く開いていると考えてもよいであろう。一方、二酸化チタン微粒子内部に光励起された電子の波動関数は二酸化チタン微粒子全域に広がっており、金属超微粒子の上記波動関数と二酸化チタン内部で共鳴して接続し、この接続を量子トンネルと呼ぼう。従って、光励起された電子は前記量子トンネルを通って一気に金属超微粒子へと移動し、金属表面でOをO へと還元することができるはずである。
【0022】
従来は、二酸化チタン内部に光励起された電子の波動関数は二酸化チタン内部の全域に広がらず、その内部のある領域に局在していると考えていた。従って、多数の金属超微粒子を担持させておけば、それらの波動関数が二酸化チタン内部に腕を伸ばし、いずれかの波動関数の腕が前記局在化した励起電子の波動関数と共鳴し、量子トンネル効果が作用して励起電子を外部に放出すると考えていた。金属担持数が少ない場合には、局在した波動関数と共鳴する確率が小さくなり、量子トンネル効果が作用し難くなると考えてたのである。しかし、その後の研究により励起電子の波動関数は全域に広がっていると考えた方が正しいことが分かってきた。こう考えれば、金属超微粒子を一つでも担持させれば、共鳴トンネリング現象が起こり、ルチル型二酸化チタンの光触媒効率を激増することができるはずである。
【0023】
しかし、1個の金属超微粒子の波動関数を二酸化チタン微粒子内部に深く侵入させるにはどうしたら良いであろうか。この結論は量子力学の原理から簡単に導くことができる。即ち、金属超微粒子のサイズを小さくするほど、波動関数の広がりはより大きくなってゆく。つまり1個の金属超微粒子のサイズを小さくするほど、その波動関数は二酸化チタン内でより広がり、励起電子を有効に捕獲してその量子トンネルを通して金属表面に移動させることができる。
この粒径の小さな1個の金属超微粒子でもよいとする考えは、金属使用量を激減させ、金属担持ルチル型二酸化チタン光触媒の価格を激減させる効果を有する。
【0024】
従って、金属超微粒子を二酸化チタン微粒子上に少なくとも1個以上担持させるだけで、二酸化チタン光触媒の金属担持効果を有効に発揮できることが原理的に理解できた。また、このような中で金属超微粒子の担持数を増加させてゆくと、二酸化チタン微粒子内部での量子トンネルの数が増加し、光触媒効率が増加するはずである。しかし、白金などの貴金属使用量が増加すると光触媒が高価になってゆくので、光触媒効率と価格のバランスの観点から金属使用量を決めなければならない。この観点から、本発明者等は二酸化チタン微粒子1個当りに担持する金属超微粒子数は1〜10個が好適であると考える。
【0025】
即ち、特開平10−146531号公報は金属担持数が100個以上の高密度担持光触媒を与えるのに対し、本発明は金属担持数が少なくとも1個以上あれば光触媒効率の急増効果があり、更に金属担持数を1〜10個程度に押さえれば光触媒価格を低減できる低密度担持光触媒を与えるものと考える。
【0026】
金属超微粒子の粒径に関しては、粒径が小さいほど波動関数の広がりは大きくなるが、1nm以下の大きさになると電子顕微鏡による測定が次第に難しくなり、その結果、粒径の確認が困難になってくる。また、走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)による観察も可能であるが、1nm以下になると映像誤差が出現したりして測定が困難になることは同様である。しかし、各種金属粒径の電子顕微鏡像の相互比較から、電子顕微鏡で金属超微粒子が見えにくくなってくると、その粒径が約1nm以下の領域に入ったと考えられることも分かってきた。このような金属超微粒子の粒径測定と光触媒効率の測定から、1個の二酸化チタン微粒子に担持される金属超微粒子の平均粒径は2nm以下であることが望ましい事が分かった。また、平均粒径が1.5nm以下であれば更に好適である。いずれにしても、このような平均粒径であれば、そのバラツキから考えて1nm以下の金属超微粒子を含有し、量子トンネル効果が強力に作用する。
【0027】
次に、本発明に係る金属担持二酸化チタン光触媒の製法を説明すると、有機金属化合物を有機溶媒に溶解分散させて有機金属化合物溶液を調製する第1工程と、この有機金属化合物溶液に二酸化チタン粉末を分散させて二酸化チタン分散液状物を形成する第2工程と、この二酸化チタン分散液状物を乾燥・焼成して二酸化チタン微粒子の表面に金属超微粒子を形成担持させる第3工程からなることを特徴としている。即ち、コロイド焼成法のような意図的なコロイド形成工程を導入していない点に特徴がある。
【0028】
まず、本発明に利用できる有機金属化合物は、加熱により還元可能な有機金属化合物で、加熱すると有機金属化合物から金属だけが単離でき、他の有機物部分が分解逃散する化合物である。また、有機金属化合物の中でも、特に有機金属錯体が本発明の目的に適している。しかし、加熱により還元可能な有機金属化合物で有れば特に制限されないことは云うまでもない。
【0029】
例えば、イソブテニル銀、フェニル銀等のAg系化合物;メチルジブロモ金、トリメチル金、ジイソプロピルシアノ金等のAu系化合物;ジクロロー(シクロオクタジエン−1,5)−パラジウム、π−シクロペンタジエニル−π−シクロペンテニルパラジウム等のPd系化合物;π−シクロペンタジエニル−π−アリル−白金、ジクロロー(シクロオクタ−1,5−ジエン)−白金等のpt系化合物;π−シクロペンタジエニル−ジ(エチレン)一ロジウム、オクタ(カルボニル)−ジロジウム等のRh系化合物;ペンタ(カルボニル)−ルテニウム、π−シクロペンタジエニル−メチル−ジ(カルボニル)−ルテニウム等のRu系化合物、その他各種の有機金属化合物が利用できる。
【0030】
また、一般の金属の中でも、安定性および安全性の観点から貴金属化合物、例えばAu系化合物、Ag系化合物、Pd系化合物、Rh系化合物又はpt系化合物、の少なくとも1種を用いることが好ましい。より好ましくはAu、Ag、Pd、Rh又はPtと硫黄含有有機物との化合物であり、更に最も好ましくはAu、Pd、Rh又はPtと硫黄含有有機物との化合物である。例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオグリコール酸ブチル等のチオグリコール酸類、そのほかトリメチロールプロパントリスチオグリコレート、チオグリセロール、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオグリコール、チオジプロピオン酸、チオ尿素、t−ブチルフェニルメルカプタン、t−ブチルベンジルメルカプタン等が挙げられる。更にその他、バルサム金(C1018SAuCl1−3)、バルサム白金(C1018SPtC1−3)、バルサムパラジウム(C1018SPdCl1−3)、バルサムロジウム(C1018SRhCl1−3)等が利用できる。
【0031】
また、これらの有機金属化合物を溶解させる有機溶媒としては、石油系溶媒、テルピネオール・ブチルカルビトール・乳酸エチルなどのエステル類、セロソルブ類、アルコール類、芳香族類、ジエチルテレフタレート等、溶解できる溶媒なら広く使用できる。
【0032】
前述のコロイド形成工程を省略した理由を以下に説明する。本発明者等は、特開平10−146531号公報で開示したように、コロイド焼成法により金属超微粒子の形成担持に成功した。このコロイド焼成法は有機金属化合物、例えば有機金属錯体の疎水コロイドを形成し、これらをアセトンなどの親水溶媒中に分散させ、次に二酸化チタン粉末を分散させると、二酸化チタン微粒子の表面に前記疎水コロイドが多数付着する。その後、乾燥・焼成すれば、有機物が分解逃散して残った金属成分が相互に結合して超微粒子となり、しかも同時に二酸化チタン表面と接合して強固に担持される。
【0033】
このコロイド焼成法で得られた金属担持二酸化チタンの電子顕微鏡写真から、金属超微粒子が二酸化チタン表面に多数担持されていることが確認されており、コロイド焼成法の有効性を証明している。しかし、有機金属錯体の疎水コロイドは分子量から考えてもかなり大きいものであり、このように大きな疎水コロイドが例えば粒径50nmや30nm、或いはさらに小さな二酸化チタン微粒子表面にコロイド溶液中で多数付着できるかどうかには尚不明な点が残る。つまりコロイド溶液中の分散過程で付着すると考えるだけでなく、乾燥工程でコロイド溶液が濃縮してゆく際に、コロイド粒子が二酸化チタン表面に何層にも重なって付着することもあるのではないかと考えるようになった。このようにコロイド焼成法の核形成やミクロな素過程は現在でも明らかになっているとは云えない。
【0034】
この疑問を考察する中で、本発明者等は疎水コロイドを事前に作らなくても、有機金属化合物溶液、例えば有機金属錯体溶液を濃縮乾燥する過程で、微小核、例えば微小コロイドが形成されるのではないかとの着想を得た。つまり、有機溶媒が蒸発してゆくと不飽和溶液が飽和溶液になり、更に蒸発すると有機金属錯体同士が凝集して極めて小さな有機金属錯体核が無数に溶液中に形成され、更に濃縮が進むと一定粒径にまで成長して、分散している二酸化チタン微粒子表面上に付着する。このように、溶液の濃縮・乾燥過程で有機金属錯体核、換言すればコロイドが形成され、乾燥途中および乾燥の終局段階で二酸化チタン表面に付着すると考える。
【0035】
次は粒径の問題である。前記の濃縮・乾燥が進行しても、有機金属錯体核の粒径は一定度までは大きくなるが、それ以上は大きくなり難いと考える。つまり、当初の溶液濃度が一定段階までは、ある粒径まで成長した有機金属錯体核は二酸化チタンに付着してゆき、更なる乾燥は他の有機金属錯体核の生成を促進させると考えればよい。溶液の初期濃度が増加するに従って、一定粒径の有機金属錯体核の個数、即ち個数密度が増加し、二酸化チタン上での担持個数が増加する。また、溶液の初期濃度が或る段階を超えると、有機金属錯体核の数だけでなく、その粒径も増加して行くと考える。
【0036】
この考え方は現象をかなり単純化している。ただ、このように単純化して考えると、意識的なコロイド形成工程を省略できるから一種類の有機溶媒を使用するだけで済み、製造工程の簡略化と安全を確保でき、しかも安価な金属担持二酸化チタン光触媒の提供に役立つ製法を発見できる可能性がある。
【0037】
発明者等は前述の考え方が妥当かどうかを総合的に判断するために、前述の製法で金属担持二酸化チタン光触媒を作成した。電子顕微鏡を用いて金属超微粒子の平均粒径と担持個数が制御できているかどうか、また夫々の光触媒効率を測定して金属超微粒子が少なくとも1個以上でも光触媒効果があるのかどうかを調べた。以下にその方法を述べる。
【0038】
まず、有機金属錯体であるバルサム白金を有機溶媒であるトルエンに均一に溶解させた。この溶液中に粒径が70nmのルチル型二酸化チタン粉末(以後R70と称する)を投入し、ミキサーで撹拌した後、超音波で均一にミクロ撹拌して二酸化チタン分散液状物を形成した。この二酸化チタン分散液状物はやや粘性のある液体で、自然送風により有機溶媒のトルエンを蒸発させて固形状乾燥物にした。この固形状乾燥物をメッシュを通して乾燥粉末にし、この乾燥粉末を550℃で45分間に亘って焼成して金属担持二酸化チタン光触媒を作成した。
【0039】
1kgのR70に対しバルサム白金の添加量を変えて16種類の金属担持ルチル型二酸化チタン光触媒を作成した。バルサム白金のうち金属部分である白金(Pt)添加量は0.1g、0.2g、0.5g、1.0g、2.0g、3.0g、3.5g、4.0g、5.0g、6.0g、7.0g、8.0g、9.0g、10.0g、12.0g、18.0gであった。
【0040】
R70(粒径70nmのルチル)粉末の1gの表面積は約10mであり、白金超微粒子は粒径が1.5nmの大きさでR70上に半球状に担持されていると仮定する。このとき、1個のR70微粒子上に担持されている白金超微粒子の個数は、0.1gの試料で1個、1.0gの試料で約15個、18gの試料で約260個と見積もることが出来る。白金重量にほぼ比例して個数密度も増加すると考えればよい。しかし、これらの数値は単なる見積もりであって、実際には電子顕微鏡写真からカウントしなければならない。
【0041】
0.1g、1.0g及び18gの3種類の試料の透過型電子顕微鏡写真を撮影して、白金超微粒子の大きさと担持個数をカウントした。0.1gの試料の写真にはR70微粒子は明瞭に写っているが、白金超微粒子は見えなかった。前述したように粒径が1nm前後の場合には経験的に見えないことが分かっていたし、しかも1個担持しているかどうかである。この結果から見積り通り1個担持していると判断した。後述するようにその光触媒効率は金属非担持のR70より格段に大きかったから、金属を担持していることは確実である。
【0042】
1.0gの試料の写真には粒径1.5nm前後の見える粒子が5個ほど写っており、粒径の小さな見えない粒子と写真の裏表2面を含めると、ほぼ見積り通り担持されていると推定された。18gの試料の写真には粒径の小さなものから大きなものまで含めて約100個の白金超微粒子が確認された。見積り数260個とは相当かけ離れているが、粒径がかなりばらついており、大きいものでは7nm程度のものもあった。従って、その程度の個数差は理解できると考えた。
【0043】
これら16種類の試料について光触媒効果の試験を行った。容積が17.5リットルの密封容器に光触媒用光源(松下電工製BL37K型の6W捕虫器用蛍光灯)2灯を取り付け、その直下3cmの位置に10cm×20cmの皿を置き、これに前記の光触媒粉末試料を散布する。この密封容器内に濃度100ppmのアセトアルデヒドガスを注入し、光源を点灯してから時間経過に従ってアセトアルデヒド濃度をガス検知管で測定した。
【0044】
光触媒反応では、分解対象ガスの初期濃度をN(0)としたとき、時刻時間後におけるガス濃度N(t)は、N(t)=N(0)exp(−kt)で近似できる。この式でkは一次反応速度定数であり、kの値が大きいほど光触媒活性が高いことを表す。このkが光触媒効率を与えるとも考えられ、図1にkの結果を示す。
【0045】
図1の縦軸はアセトアルデヒドに対する反応速度定数kで、単位は(1/h)である。横軸はルチル型二酸化チタン粉末1kgに対する白金添加量、即ち担持金属量で、単位は(g)である。コントロールとして白金を全く添加していないR70試料の反応速度kを測定したところ、0.7(1/h)であった。また、従来例であるアナターゼとの比較の意味で、平均粒径7nmのアナターゼ型二酸化チタンの反応速度kを同一の方法で測定したところ、k=1.4(1/h)であった。以後kの単位は省略する。
【0046】
白金を0.1g添加するだけでk=10.7となり、非担持に比べてkの値が一気に15倍に増加する。従来例のアナターゼと比べても約7.6倍となり、金属担持が有効であることが分かる。0.1g添加では粒径1.5nmの白金超微粒子が1個担持される程度と推定できたが、1個担持するだけで光触媒効率が15倍に激増するのである。発明者等はこの効果を量子サイズ効果、換言すると量子トンネル効果または共鳴量子トンネリングとも呼んでいる。この結果から、請求項1の発明、即ち平均粒径2nm以下の金属超微粒子を少なくとも1個以上担持する高活性な光触媒を実現したのである。
【0047】
一方、白金を1.0g添加するとkは18.0となり、0.1g添加の約1.7倍になるだけである。前述したように、1.0g添加では白金超微粒子を約15個担持していると推定した。金属超微粒子の担持個数が1個から15個へと15倍に増えても、反応速度kは1.7倍に増える程度である。その中間領域では図1から分かるように、kの値は連続的に漸増してゆく。
【0048】
この結果を発明者等は次ぎのように考える。2nm以下の金属超微粒子が1個担持されるだけで、その金属中の電子の波動関数は二酸化チタン微粒子の内部に深く入り込む。光励起される電子の波動関数は二酸化チタン全域に広がっているから、金属波動関数は量子トンネル効果により励起電子を有効に金属へと導入すると考える。2個目、3個目の金属超微粒子の波動関数が入り込んできても、その補完的な効果を果たす程度であると考えれば、最初の1個の金属超微粒子が機能する役割の大きさが分かる。この結果から、平均粒径2nm以下の金属超微粒子を少なくとも1個以上担持させれば、高活性な光触媒を実現できる。重量的に言えば、ルチル型二酸化チタン1000重量部に対し金属を0.1重量部以上添加することによってこの効果を達成できる。また担持金属個数を1〜10個程度にすれば、高活性であるとともに白金使用量を極減できるから安価なルチル型金属担持光触媒を提供できる。重量的に言えば、ルチル型二酸化チタン1000重量部に対し金属を0.1重量部以上1重量部以下でこの効果を発揮できる。
【0049】
また、図1から分かることは、担持金属量が6gで反応速度kがピークとなり、kの値は34.0となることである。これは非担持のk=0.7の約49倍である。反応速度kに上限が存在する理由は次ぎのように考えられる。有機溶媒に溶解させる有機金属化合物の量が一定量を超えて増大すると、その乾燥過程で生じる有機金属化合物核(例えば有機金属錯体核)の粒径が増大し始め、光触媒効果を強力に発揮する2nm以下の金属超微粒子の有効個数が低下し始めることによる。その分岐点が6gであると考えれば、この現象を理解しやすい。白金添加量が最大の18g添加では金属超微粒子を約100個担持していたことを前述したが、この内粒径が2nmを超えるものがほとんどであった。従って、有効に作用している2nm以下の白金超微粒子の個数は0.1g添加と変わらなくなったので、反応速度kが11.5とほぼ同一の値になったと考えられる。
【0050】
以上の結果から、本発明の製法によって、二酸化チタン微粒子1個当りの金属超微粒子の担持個数と粒径を制御できることが分かった。即ち、金属添加量の少ない領域では、粒径が2nm以下に揃った金属超微粒子を形成担持でき、しかも光触媒効率を高く設定できる。
【0051】
有機金属化合物を有機溶媒に溶解させて調製される溶液の初期形態は、低粘性のサラサラの溶液である。この溶液に二酸化チタン粉末を均一に分散させて二酸化チタン分散液状物を形成する。この二酸化チタン分散液状物は粘度の小さな溶液の場合と、粘度を有した粘性液の2状態がある。このどちらの状態から出発しても、乾燥・焼成後の金属担持二酸化チタン光触媒は図1とほぼ同様の反応速度を与えた。従って、どちらの状態でも本発明に利用できる。
【0052】
本発明では二酸化チタン分散液状物を乾燥・焼成するから、乾燥工程と焼成工程を必要とする。乾燥工程は自然乾燥の場合と乾燥炉での加熱乾燥の場合がある。乾燥温度は常温〜500℃の範囲から選択され、通常は100〜400℃である。また、焼成工程は焼成炉を用い、有機金属化合物を分解還元して金属を析出させる温度に設定しなければならないから、通常は200〜800℃の範囲から選択される。しかし、これらの温度範囲は有機溶媒や有機金属化合物の種類、金属超微粒子の融解温度、乾燥・焼成速度などと複雑に関係するから、前期範囲に制限されるものではなく、ケース毎に最適値に設定できる。
【0053】
二酸化チタン分散液状物を乾燥・焼成する場合に、乾燥工程と焼成工程を同時に行う方法と、乾燥工程と焼成工程を分離して2段階で行う方法がある。特に、本発明では乾燥工程を有機金属化合物のコロイド化(有機金属化合物核の形成)工程とも位置付けているから、乾燥工程を焼成工程と分離して行う事が望ましい。
【0054】
その第1の方法として、二酸化チタン分散液状物を乾燥炉中に噴霧して乾燥粉末を形成し、この乾燥粉末を焼成炉中に噴霧して焼成し、金属超微粒子を二酸化チタン微粒子表面に形成担持させる方法がある。この方法では、乾燥工程の段階で粉体が形成されるので、公知の粉体工学を利用して、例えばブロワー等でこの粉体を焼成工程に移送し、直ちに焼成噴霧工程に入れば、全自動一貫量産体制が可能となり、産業上の量産要請に答えられる安価な金属担持光触媒を実現できる。
【0055】
また、第2の方法として、二酸化チタン分散液状物を送風乾燥して固形状乾燥物を形成し、この固形状乾燥物を篩などのメッシュ処理で微粉砕して乾燥粉末を形成し、この乾燥粉末をコンベア焼成炉で焼成して金属超微粒子を二酸化チタン微粒子表面に担持させる方法がある。この方法では、通常のコンベア加熱炉を焼成炉として利用でき、新たな設備投資が不要であるから、金属担持光触媒を安価に市場に提供できる。
【0056】
乾燥工程と焼成工程を同時に行う場合においても、噴霧法とコンベア法がある。噴霧法では乾燥炉と焼成炉を一体化した加熱炉を設け、その加熱温度を焼成温度に設定しておき、この加熱炉中に二酸化チタン分散液状物を噴霧する。まず有機溶媒が蒸発して乾燥し、続いて有機物の分解と金属の融解・核成長が起こり、目的物質が得られる。コンベア法でも加熱炉の温度を焼成温度に設定して、搬送中に乾燥と固形状乾燥物の粉砕と焼成を連続して行う。
【0057】
本発明において利用できる光源は、光触媒のバンドギャップ・エネルギー以上のエネルギーを有する光源であればよい。ルチル型二酸化チタンのギャップエネルギーは3.05eVであるから、その波長は407nmになる。従って、ルチルでは波長が407nm以下の光を光源とすることができ、紫外線のみならず青色可視光も励起光として利用できる。このことは紫外線灯のみならず白色蛍光灯や太陽光も光源に利用できることを意味する。
【0058】
前述したように還元電位であるO電位が3.13eVであれば、3.05eVの青色可視光ではたとえトンネル効果があったとしてもエネルギー的に励起できないのでは、と考える場合がある。しかし、実験的には3.05eV近傍からの光触媒効果があることが確認できているので、その点を現在理解している仮説により詳しく説明しておく。3.05eVの励起光では励起電子は伝導体の底に位置する。この励起電子は一旦金属の電子エネルギー準位に落ちるが、金属中の電子集団に入り込むと電子間の反発エネルギーだけ位置エネルギーが増加して急激に3.13eVより大きな上位のエネルギー準位に飛び上がり、その結果、トンネル効果により前記O電位に遷移すると考えられる。この作用をファノ効果と呼んでいるが、このような機構を考えれば、当初の疑問が解決する。この説明はあくまで仮説であることを付記しておくが、理論はともかく、実験的にルチルが太陽光や蛍光灯の青色可視光に対しても紫外線と同様に有効であることは確認している。
【0059】
従来から光触媒として利用されてきたアナターゼ型二酸化チタンでは、ギャップエネルギーが3.20eVであるから、波長が388nm以下の光でなければ励起光として利用できなかった。この事はアナターゼが蛍光灯利用や太陽光利用に不利であることを意味しており、この波長制限から、蛍光灯利用ではルチルがアナターゼよりも約4倍の効率を有し、太陽光利用では約1.5倍の効率を有すると結論できる。図2に蛍光灯のスペクトル分布を、図3に海面上での太陽光スベクトル分布を示す。407nm以下の面積と388nm以下の面積比が、図2では約4倍、図3では約1.5倍となり、青色可視光を活用する点でルチルはアナターゼより格段に有効であると結論できる。このことは従来の光触媒、即ちアナターゼ神話の常識を覆したとも考えられる。図2、図3でアナターゼはA、ルチルはRで示し、その位置から左側面積比が上記の4倍、1.5倍を与える。
【0060】
従って、本発明のルチル型二酸化チタン光触媒は、アナターゼ単体より効果があるだけでなく、蛍光灯や太陽光を活用する光触媒分野でその能力を効果的に発揮できる。特に、太陽光利用は21世紀の最重要課題であり、ビル、高速道路、歩道などの壁面にこの光触媒を固定すれば大気汚染防止などの環境保全に大きく寄与することができる。また、蛍光灯を単に灯りに利用するだけでなく、光触媒用光源として活用できる道が本発明によって開かれたのである。
【0061】
【実施例】
以下に本発明に係る金属担持ルチル型二酸化チタン光触媒およびその量産方法の実施例を示し、本発明の特徴とするところを一層明確にする。
【0062】
実施例1
[噴霧法による白金担持ルチル型二酸化チタン光触媒の製造]
バルサム白金1重量部(白金は0.15重量部に相当)をトルエン400重量部に均一に溶解させ、この溶液中に粒径70nmのルチル型二酸化チタン粉末100重量部を投入し、ミキサーで撹拌した後、超音波で均一にミクロ撹拌して二酸化チタン分散液状物を形成した。この二酸化チタン分散液状物は粘性の小さなサラサラの液体で、噴霧方式に適している。
この二酸化チタン分散液状物を乾燥温度200℃の乾燥炉にスプレードライアで微細噴霧して乾燥粉末を回収した。この乾燥粉末を焼成温度500℃の焼成炉に噴霧し、白金担持ルチル型二酸化チタン光触媒粉末を回収した。
【0063】
この白金担持ルチル型二酸化チタン光触媒粉末について光触媒効果の試験を行った。前述したように、容積が17.5リットルの密封容器に光触媒用光源(松下電工製BL37K型の6W捕虫器用蛍光灯)2灯を取り付け、その直下3cmの位置に10cm×20cmの皿を置き、これに光触媒粉末試料を2g散布する。この密封容器内に濃度100ppmのアセトアルデヒドガスを注入し、光源を点灯してから時間経過に従ってアセトアルデヒド濃度をガス検知管で測定した。その結果、反応速度kの値として20(1/h)が得られた。この値は図1の担持金属量1.5gの値と比較することができる。図1からは、kとして19(1/h)が得られるが、これより大きな値が得られたことは、二酸化チタン分散液状物がペースト状でなくサラサラの液体であったからと思われる。その方が乾燥時の核形成が円滑に行われるからである。
【0064】
実施例2
[コンベア法による白金担持ルチル型二酸化チタン光触媒の製造]
バルサム白金4重量部(白金は0.6重量部に相当)をトルエン150重量部に均一に溶解させ、この溶液中に粒径70nmのルチル型二酸化チタン粉末100重両部を投入し、ミキサーで撹拌した後、超音波で均一にミクロ撹拌して二酸化チタン分散液状物を形成した。この二酸化チタン分散液状物は粘性の高いパテ状の組成物で、コンベア方式に適している。
この二酸化チタン分散液状物を送風機にて約5時間常温乾燥させて固形状乾燥物を形成した。また、この固形状乾燥物を200ミクロンの篩でメッシュパスして粉砕し、乾燥粉末を形成した。最後に、この乾燥粉末をコンベア焼成炉にて焼成した。焼成条件は500℃、1時間であった。
【0065】
この白金担持ルチル型二酸化チタン光触媒粉末について光触媒効果の試験を行った。実施例1と同様の装置で、アセトアルデヒドガスの分解効率をガス検知管で測定した。反応速度kの値として33(1/h)が得られた。この値は図1の担持金属量6gの値と比較することができる。図1からは、kとして34(1/h)のピーク値が得られるが、これより1だけ小さな値となった。
【0066】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例・設計変更等をその技術的範囲内に包含するものである。
【0067】
【発明の効果】
請求項1によれば、ルチル型二酸化チタン微粒子1個の表面に平均粒径2nm以下の金属超微粒子を少なくとも1個以上担持するだけでよいから、金属担持二酸化チタン光触媒を安価に提供できる。また青色可視光と紫外光の両方を利用できるから、蛍光灯や自然太陽光を光源とした場合にアナターゼより高効率である金属担持二酸化チタン光触媒を提供できる。
請求項2によれば、ルチル型二酸化チタン微粒子1000重量部に対し金属を少なくとも0.1重量部以上担持させるだけでよいから、従来の高密度担持と併せて高低両極限における金属担持二酸化チタン光触媒を市場に提供できる。従って、金属担持光触媒の多様化に貢献できる。
【0068】
請求項3によれば、事前に疎水コロイドを調製することなく、有機金属化合物を有機溶媒に溶解分散させるだけでよいから、製造工程の単純化により金属担持二酸化チタン光触媒を安価に量産することができる。また、溶剤を有機溶媒の1種類に低減できたから、その管理が容易となり、火災や爆発の危険性を極小化できる。
請求項4によれば、有機金属錯体を利用できるから、一般に使用される有機金属ペーストを本発明に適用することができ、より安価な金属担持二酸化チタン光触媒の量産方法に貢献できる。
【0069】
請求項5によれば、乾燥および焼成の両工程で粉体処理ができるから、公知の粉体工学を適用して、全自動一貫量産体制が可能となり、産業上の量産要請に答えられる安価な金属担持二酸化チタン光触媒を実現できる。
請求項6によれば、通常のコンベア加熱炉を焼成炉として利用でき、新たな設備投資が不要であるから、金属担持二酸化チタン光触媒を安価に市場に提供できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は粒径70nmのルチル型二酸化チタン光触媒に関する担持金属量を変えたときの反応速度(光触媒効率)曲線である。
【図2】図2は白色蛍光灯のスペクトル分布曲線である。
【図3】図3は海面上での自然太陽光スペクトル分布曲線である。

Claims (1)

  1. ルチル型二酸化チタン微粒子1個の表面に平均粒径2nm以下のAu、Pt、Ag、Pd又はRhの金属超微粒子を1〜10個の範囲で担持したことを特徴とする金属担持二酸化チタン光触媒。
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