JP3916790B2 - 繊維構造物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は形状安定性に優れた繊維構造物、特に耐熱安定性に優れた繊維構造物およびそれを構成する繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタールは結晶性が高く、そのため耐熱性と耐薬品性に優れたポリマーであり、機能性ポリマーとして、歯車等の成形品に多く用いられている。また、そのポリマー自体は例えば特開平6−211953号公報に記載されているように公知である。
【0003】
しかし、この耐熱性に優れている点が繊維に製造する際に大きな妨げとなっている。即ち、ポリアセタールは結晶性が優れ、結晶化速度が速い。また、結晶化度も大きい。ポリアセタールの融点はDSCの測定では非常にシャープなピークで測定される。従って、軟化点と融点が非常に近く、延伸し難い欠点があり、工業的に繊維にすることが困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は形状安定性に優れた繊維構造物、特に耐熱安定性に優れた繊維構造物およびそれを構成する繊維を見いだし、安価に提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはポリアセタールの結晶化が著しく速く、大きいことに着目し、このポリマーを芯成分にした複合繊維の製造条件を研究した結果、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明の繊維構造物は溶融粘度が100から500であり、融点が160から170℃のポリアセタールを芯成分に、融点が190℃以上の熱可塑性結晶性ポリマーを鞘成分にし、芯成分と鞘成分の重量比率が1:5から5:1である複合繊維からなる繊維構造物を、形状を保持した状態で芯成分の融点以上で加熱し冷却してなる繊維構造物である。また、本発明の繊維構造物は上記の複合繊維を10重量%以上含有する布帛、不織布、ファイバークッション、およびこれらの成形品である。
【0007】
本発明に用いる複合繊維の芯成分のポリアセタールは例えばトリオキサンを主モノマーに、環状エーテル、または環状ホルマールをコモノマーに用い、定法によりカチオン重合で重合することができる。このコモノマーとしては例えばエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−トリオキセパン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,3−ジオキサン、プロピレノキシド等がある。コモノマーの量はトリオキサンに対して0.2から10重量%、好ましくは0.4から5重量%である。コモノマーの量が多すぎると耐熱性が低下する。また、コモノマーの量が少なすぎると可紡性が低下する。
上記のポリアセタールは適当に触媒を失活させ、精製され、また適当な安定剤、着色剤等の添加剤が含まれていても良い。
【0008】
ポリアセタールの溶融粘度は190℃、荷重2.16kg、2mm径のノズルから10分間の流出量gで測定した。
ポリアセタールの溶融粘度が100未満、または500を超えると可紡性が低下した。好ましくは200から400である。ポリアセタールの溶融粘度は定法により適当な連鎖移動剤を適量重合時に用いることにより容易に調整できる。
このポリアセタールの融点は可紡性の点から160〜170℃が好ましい。
【0009】
本発明に用いる複合繊維の鞘成分のポリマーは融点が芯成分のポリアセタールの融点以上で、かつ190℃以上の熱可塑性結晶性ポリマーである。このようなポリマーとしては例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン4、ナイロン12等の熱可塑性ポリマーがある。また、これらのポリマーの変性物がある。
中でもポリエチレンテレフタレートは経済的に有利であり、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリブチレンテレフタレートは延伸性が良く好ましい。
【0010】
本発明に用いる複合繊維の紡出方法は、定法の複合口金による溶融紡糸で良い。即ち、鞘及び芯成分のポリマーをそれぞれエクスツルーダーで溶融、混練りし、ギアポンプで計量しつつ、複合口金で芯鞘に合わせ紡出する。紡糸された糸は整流されたエアにより冷却するが、急速に冷却しない方が可紡性が良くなる。延伸は紡糸後行っても良く、紡糸と同時に行っても良い。
【0011】
芯と鞘の比率は1対5から5対1の中から、選定すれば良い。3対1から1対3が繊維の可紡性、延伸性が良く好ましい。芯が偏心していても、用途的には問題ない。この複合繊維の太さは1〜30デニールが適当であり、フィラメントの場合は2〜30デニールが用途により選定される。ステープルの場合は紡績方法により1〜15デニールが選定される。
【0012】
延伸前の未延伸糸のセクションを偏光顕微鏡で観察すると芯部のポリアセタールは球晶が観察された。この未延伸糸の引張強度は例えば0.2g/dと低く、常温での伸度は4%と小さい。この複合繊維はフィラメントとしてもステープルとしても製造できる。
【0013】
未延伸糸は延伸時に加温することにより延伸がスムースにできた。延伸条件は延伸倍率を3倍以上にすることもでき、延伸糸の強度は1g/d以上あり、芯鞘の比率と延伸条件によっては4g/d以上の繊維も得られる。
【0014】
延伸温度は芯成分のポリアセタールの球晶がほぐれ始める温度、120℃以上で行うと延伸時の糸切れが少なく、好ましい。この点では延伸と紡糸が同時に行われるスピンドローが好ましい。
【0015】
本発明の繊維構造物は上記の複合繊維を用いて不織布や編み織物やファイバークッション並びにその成形品として製造することができる。また、これらの繊維構造物を組み合わせて使用することもできる。さらには、他の繊維構造物やフィルム等と組み合わせて使用することもできる。
【0016】
フィラメントの不織布は定法のスパンボンド法で製造することが出来る。サーマルボンディング、ニードルパンチング、または、スパンレースを組み合わせた方が強度が向上するので好ましい。
ステープルの不織布はカーディングの後、サーマルボンディング、ニードルパンチング、または、スパンレースを行うことにより製造することが出来る。
ファイバークッションはエアレイ法、クロスレイ法等で製造することができる。
【0017】
また、ステープルは定法により紡績糸を製造することが出来る。デニール、カット長等を選定することにより、短紡績、長紡績、セミソ毛紡績、結束紡績、空気紡績、ラップ紡績によって紡績糸を製造できる。
【0018】
上記のフィラメントまたはおよび、紡績糸を用いて、定法により編織物を製造することが出来る。フィラメントと紡績糸を混用することもできる。また、他のフィラメントや紡績糸とも混用することもできる。混用方法としては例えば混紡、交織、交編、交撚、引きそろえ、混繊等があるがこれのみに限定するものではない。
【0019】
上記の繊維構造物は本発明の複合繊維を10重量%以上含有する。10重量%に満たない場合は形状安定性が不足する。好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、最も好ましくは100重量%である。
【0020】
繊維構造物は形状を保持された状態でポリアセタールの融点以上に加熱され、その形態を保持して融点以下、好ましくは速やかに融点の10℃以下に冷却されることによって、形状が固定される。本発明の複合繊維の芯成分のポリアセタールは融点以上で速やかに溶融し、冷却されることにより、球晶を形成する。このポリマーは公知の通り、優れた機械的安定性があり、耐熱性が優れたポリマーである。芯成分は融点近傍まで優れた耐熱安定性を示す。
【0021】
本発明の複合繊維並びに繊維構造体、例えば布帛、不織布等の物性の測定に際しては関連するJISに準拠して測定した。
耐熱性の評価は布帛の場合には幅2cm、長さ20cmの試料片を二つ折りにし、ステンレス板で挟み、試料に荷重が50g/cm3掛かるように調整し、熱風乾燥機で所定の温度で30分間加熱し、ヒーターを切って室温になってから取り出した後、放置し、成形試料を作成した。この試料を熱風乾燥機の中につかみ間隔が18cmで鉛直に吊り下げ、下端に5gの荷重を掛け、10分後の試料の吊り下げられた状態でのつかみ間隔の長さを測定した。耐熱性の悪い試料は長さが長く、良い試料は短くなる。この評価方法をA法とする。荷重が軽すぎる場合には荷重を適宜増加して測定した。
【0022】
成形品の評価は不織布の場合はモールド成形を行い、深さ1cm、底辺の直径3cm、入り口の直径5cm、エッジ部分のアールが5mmのカップを製造し、逆さまに伏せ、底辺の上に10g/cm3の荷重を掛け、熱風乾燥機に10分間入れ、ヒーターを切ってから室温になってから取り出した後、放置し、変形の程度を目視で比較した。この評価方法をB法とする。
なお、耐熱性の評価を促進するため、熱風乾燥機の設定温度を変えて、測定を行った。
【0023】
【発明の効果】
本発明の繊維構造物は芯ポリマーの融点以上に加熱後、冷却することにより、耐熱性の優れた形態安定性を保持することができる。芯ポリマーのポリアセタールは結晶化速度が大きく、結晶化度が大きい。従って、融点近く、100℃以上でも形態安定性が優れている。汎用ポリマーの中ではポリエチレンテレフタレートは耐熱性が優れているとされているが、そのTgは90℃以下であり、形態安定性が不足する。
【0024】
【実施例】
実施例1
トリオキサン98重量%、エチレンオイサイド2重量%で重合、精製された融点が165℃、溶融粘度が320のポリアセタールチップを成分に280℃での溶融粘度が120のポリエチレンテレフタレートを成分とし、複合比1:1でエクスツルーダーで溶融し、ギヤポンプで計量し、ノズル温度280℃で定法により溶融紡糸し、オイリングし、未延伸糸を製造した。次に125℃のヒータープレートを用い、3.8倍に延伸し、エンタングルメントを付与し、150デニール、16フィラメントの本発明の複合フィラメントを製造した。この繊維の引張強度は3.2g/d、引張伸度は32%であった。
【0025】
このフィラメントを使用し、ウオータージェット織機で縦、横48本/25mmの平織物に織り上げ、本発明の繊維構造物を製造した。
次にこの織物を180℃のテンター乾燥機で緊張セットし、仕上げを行った。この織物のフィラメントの糸のセクションを偏光顕微鏡で観察したところ、芯成分のポリアセタールは球晶を形成し、テンター乾燥機の熱処理で溶融したことが確認された。この織物の耐熱性を熱風乾燥機の温度を変化し、A法で評価し、その結果のつかみ間隔の長さを表1に示した。参考品として一般に市販されているポリエチレンテレフタレートの同じ織物を同時に測定した。測定値の単位はmmである。
【0026】
【表1】
Figure 0003916790
【0027】
実施例2
実施例1と同様にして芯鞘比率を変更し、紡糸し、可紡性を比較した。その結果を表2に示した。可紡性は吐出量を一定にし、紡糸速度を変化し、糸切れが発生する巻き取り速度を測定し比較した。なお、比較を容易にするためノズル温度を260℃に下げ、糸切れが発生しやすくした。
【0028】
【表2】
Figure 0003916790
【0029】
実施例3
実施例1と同様にして溶融紡糸したストランドを集束し、クリンプを付与しオイリングし、51mmにカットし、1.5デニールの複合ステープルを製造した。次に2インチ紡績で60番手の紡績糸を製造した。
この紡績糸をウオータージェット織機で縦、横48本/25mmの平織物に織り上げ、本発明の繊維構造物を製造した。
次にこの織物を180℃のテンター乾燥機で緊張セットし、仕上げを行った。この織物の紡績糸の糸のセクションを偏光顕微鏡で観察したところ、芯成分のポリアセタールは球晶を形成し、テンター乾燥機の熱処理で溶融したことが確認された。この織物の耐熱性を熱風乾燥機の温度を変化し、A法で評価した。実施例1と同様に120℃でも殆どつかみ間隔の長さに変化がなかった。
【0030】
実施例4
実施例3で製造した本発明の複合ステープルと一般に市販されているポリエチレンテレフタレートFD1.5デニール,51mmとの混合率を変更し、目付300g/m2の不織布を製造した。不織布は定法の混綿、カード、クロスレイ、ニードルパンチングにより製造し、B法にて評価した結果を表3に示す。荷重を一定にし、熱風乾燥機の温度水準を変更し、目視にて評価した。変形がほとんど無い場合◎、変形が少しの場合は○、変形が大きい場合は×とした。
【0031】
【表3】
Figure 0003916790
【0032】
実施例5
実施例1と同様にして芯成分のポリアセタールの溶融粘度のみを表4の通り変更し、複合繊維を紡糸し、可紡性と曳糸性を測定し、表4に示した。
【0033】
【表4】
Figure 0003916790

Claims (2)

  1. 溶融粘度が100から500であり、融点が160から170℃のポリアセタールを芯成分に、融点が190℃以上の熱可塑性結晶性ポリマーを鞘成分にし、芯成分と鞘成分の重量比率が1:5から5:1である複合繊維からなる繊維構造物を、形状を保持した状態で、芯成分の融点以上で加熱し冷却してなる繊維構造物
  2. 請求項1記載の繊維構造物が、前記複合繊維を10重量%以上含有する繊維構造物。
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