JP2022077507A - 芯鞘複合繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属などの鋭利な硬質部材に対する耐貫通性に優れる不織布が得られ、乾式不織布や電池用セパレータ等の湿式不織布などの用途に好適に用いられる、細繊度かつ高ヤング率のオレフィン系芯鞘複合繊維を提供する。【解決手段】結晶性プロピレン系重合体を芯材とし、かつ上記結晶性プロピレン重合体以外のオレフィン系重合体を鞘材とする溶融紡糸された複合未延伸糸を延伸処理してなるものであって、ヤング率が70cN/dtex以上、かつ単繊維繊度が1.0dtex以下であることを特徴とする芯鞘複合繊維【選択図】なし

Description

本発明は、芯鞘複合繊維に関する。
2種の異なるオレフィン系樹脂を用いて形成される芯鞘構造の複合繊維は、撥水性、非吸収性に優れ、低比重であるため軽くて、また耐薬品性に優れているなどの特性を有していることから、産業資材用、建造物や自動車などの内装用、衣料・衛生用、衣料用などに広く用いられている。このようなオレフィン系芯鞘複合繊維は、一般的に、溶融紡糸により芯鞘構造の未延伸糸を形成し、この未延伸糸を延伸処理することにより製造される。
オレフィン系芯鞘複合繊維の物性は、分子配向度や結晶化度などの分子鎖を形成する構造に影響を強く受け、また、延伸処理や熱処理の方法などによって、その分子鎖の構造は大きく変化する。一般的に、延伸処理を施すことで分子鎖は延伸方向に一軸配向して、延伸方向の強度、ヤング率などの力学特性が向上する。強度やヤング率が高いと、特に、ヤング率が高いと、その繊維を用いた不織布は金属などの鋭利な硬質部材に対する耐貫通性に優れるなどの特徴がある。このような力学特性に優れた繊維を得るためには、延伸工程は特に重要であり、高倍率で延伸を行うために、種々の方策が採られている。
このような複合繊維を生産する方法として、特許文献1には、結晶性プロピレン系重合体を芯成分とし、それ以外のオレフィン系重合体を鞘成分とする複合未延伸糸を、加圧飽和水蒸気中で延伸処理する方法が提案されている。また、特許文献2には、芯成分である結晶性プロピレン重合体と、鞘成分であるオレフィン系重合体の重量平均分子量の比を特定の範囲にすることにより、紡糸口金吐出後の芯成分のメルトフローレート(Melt Flow Rate:MFR)及び鞘成分のMFRを適宜選択し、延伸性を確保しつつ、延伸倍率に対する強度発現性を高める方法が提案されている。
また近年、更なる性能向上を目指し、薄く、強く、緻密な不織布が求められており、それに用いられる繊維においても力学特性のみならず、細繊度化が求められている。
特開2002-180330号公報 特開2007-107143号公報
しかしながら、特許文献1においては、100℃以上、鞘材の融点未満の温度の加圧飽和水蒸気中での延伸処理により破断強度5.74cN/dtex超、ヤング率43.1cN/dtex以上の複合繊維を得ているが、細繊度かつ高ヤング率の複合繊維は得られていない。例えば、その実施例1では、本延伸時の温度を110℃以上に設定することで、高延伸倍率を設定可能にし、1.0dtex以下の細繊度化は達成しているが、十分なヤング率が得られない。一方、実施例2では、70cN/dtex以上のヤング率を達成しているが、繊度は1dtexを超えてしまう。
また、特許文献2では、繊度は1.0dtex以下が好ましいとされ、実施例においては1.0dtex未満のものが得られているが、延伸倍率が6倍未満であるため、結果として、十分なヤング率が得られていない。
すなわち、近年求められている細繊度かつ高ヤング率のオレフィン系芯鞘複合繊維は、未だ得られていない。
前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の延伸温度で高倍率延伸を実施することで、高ヤング率、かつ細繊度を特徴とするオレフィン系芯鞘複合繊維が得られることを見出した。
すなわち本発明のオレフィン系芯鞘複合繊維は、結晶性プロピレン系重合体を芯材とし、かつ上記結晶性プロピレン重合体以外のオレフィン系重合体を鞘材とする溶融紡糸された複合未延伸糸を延伸処理してなる芯鞘複合繊維であって、ヤング率が70cN/dtex以上、かつ単繊維繊度が1.0dtex以下であることを特徴とする芯鞘複合繊維である。
本発明の芯鞘複合繊維を用いることで、従来の不織布と比較して、金属などの鋭利な硬質部材に対する耐貫通性に優れる不織布が得られることが期待され、乾式不織布や電池用セパレータ等の湿式不織布などの用途に好適に用いられる。
本発明の芯鞘複合繊維は、結晶性プロピレン系重合体の芯材と、上記結晶性プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体の鞘材から構成されており、溶融紡糸された複合未延伸糸を延伸処理することにより得られたものである。
上記複合未延伸糸における芯材を構成する結晶性プロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体を採用することができるし、プロピレンとα-オレフィン(例えば、エチレン、ブテン-1など)との共重合体を採用することもできる。より具体的には、例えば、結晶性を有するアイソタクチックプロピレン単独重合体、エチレン単位の含有量の少ないエチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン単独重合体からなるホモ部とエチレン単位の含有量の比較的多いエチレン-プロピレンランダム共重合体からなる共重合部とから構成されたプロピレンブロック共重合体、更に、前記プロピレンブロック共重合体における各ホモ部または共重合部が、更にブテン-1などのα-オレフィンを共重合したものからなる結晶性プロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体などを挙げることができる。これらの中でもアイソタクチックポリプロピレン単独重合体は結晶化度が高くなりやすいため、好適であり、特に、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が、85%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。
なお、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)は、A.Zambelli等によってMacromolecules 6,925(1973)に発表されている方法、すなわち同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13CNMR)を使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。従ってアイソタクチックペンタッド分率とは、プロピレンモノマー単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレンモノマー単位の分率である。すなわちIPFは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素-炭素結合による主鎖に対して、側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造の割合を示すものであって、13CNMRにおけるPmmmm(プロピレン単位が5個連続してアイソタクチック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)から、式IPF(%)=(Pmmmm/Pw)×100によって求めることができる。
また、分子量分布の指標であるQ値(重量平均分子量/数平均分子量Mw/Mn比)は6以下、メルトフローレートMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は15~50g/10分の範囲が好ましい。MFRが15g/10分未満になると、下記延伸温度では高延伸倍率が設定できず、目標のヤング率や繊度が得られないことがある。50g/10分以上となると目標のヤング率が得られないことがある。上記IPFが85%未満では立体規則性が不充分で結晶性が低く、得られる延伸繊維における強度などの物性に劣る。
このようなポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ型触媒又はメタロセン系触媒などを用いて、プロピレンを単独重合又はプロピレンと他のα-オレフィンとを共重合させて得ることができる。
本発明の芯材に核剤を使用してもよい。ここで、芯材に添加する核剤としては、無機系核剤や有機系核剤を指す。無機系核剤の具体的としては、タルク、カオリン、シリカ、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムなどが挙げられる。また有機系核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウムなどの安息香酸金属塩系核剤、シュウ酸カルシウムなどのシュウ酸金属塩系核剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸金属塩系核剤、アルミニウムベンゾエート、カリウムベンゾエート、リチウムベンゾエートなどのベンゾエート金属塩系核剤、リン酸エステル系金属塩系核剤、ジベンジリデンソビトール金属塩系核剤が挙げられる。
芯材に核剤を添加すると、溶融した芯材が紡糸口金から吐出されて冷却される際に、核剤が自ら結晶核として作用し又は結晶性プロピレン系重合体に対して結晶形成を誘発する造核剤として作用するため、再結晶化温度が上昇する。これにより、紡糸工程の冷却が安定し、未延伸糸の繊度斑、単繊維内での芯鞘比率の斑、及び鞘材に被覆されずに部分的に芯材が露出している鞘材の被覆斑を低減することができる。その結果、紡糸口金から吐出し紡糸された多数の未延伸糸の繊維間及び繊維内で斑が小さくなるため、延伸倍率をより高くすることができ、延伸工程での延伸性が向上する。また、結晶核が増加するため、微結晶が生成されやすくなり、高倍率かつ高速で延伸することが可能な未延伸糸が得られる。尚、核剤を添加しない場合、添加剤添加のプロセスを省くことができたり、生産コストを抑えられたりすることができるため、目標となる物性が得られるようであれば、核剤は添加しなくても良い。
一方、本発明の鞘材は、上記結晶性プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体であり、強度の点から高密度ポリエチレンが好適である。それ以外の鞘材としては、例えば中密度、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、具体的にはプロピレン-ブテン-1ランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1ランダム共重合体、あるいは軟質ポリプロピレンなどの非結晶性プロピレン系重合体、ポリ4-メチルペンテン-1などを使用してもよい。これらのオレフィン系重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この鞘材として用いられるオレフィン系重合体のメルトフローレートMFR(温度190℃、荷重2.16kg)は、1~40g/10分の範囲が好ましい。
また、この複合未延伸糸における芯材と鞘材との比率としては特に制限はないが、断面積比において70:30~40:60の範囲が好ましく、強度やヤング率を上げる目的であれば、芯材の比率を高めるのが好ましい。一方で、芯材の比率が高すぎると、鞘材の比率が下がるため、鞘材を熱で溶かして不織布を構成する際、繊維同士の接点において、接着力が弱くなり、結果として、不織布の強力低下を招く。
次に、本発明で用いる複合未延伸糸の紡糸方法について、以下に記載する。
上記重合体(以下、樹脂ともいう。)の溶融方法としては、プレッシャーメルター法およびエクストルーダー法が挙げられ、いずれの方法でも問題はないが、均一溶融と滞留防止の観点からエクストルーダーによる溶融方法を採用することが好ましい。溶融ポリマーは配管を通り、計量された後、口金パックへと流入される。この際、熱劣化を抑えるために、配管通過時間は30分以下であることが好ましく、短いほど熱劣化を抑えることができる。
溶融された樹脂は所定の質量比率で複合流とした後、パックへ流入され、芯材を鞘材で被覆できる紡糸口金を通して、融点よりも高い紡糸温度で溶融紡糸する。紡糸温度(吐出樹脂温度)については200~350℃の範囲で紡糸することが好ましく、より好ましくは250~300℃である。紡糸温度が200℃以上において、樹脂粘度が適度に低い状態で紡糸口金から吐出することができ、複合繊維が細化する過程で大きな紡糸線応力が作用しにくく、芯成分の分子配向が抑制され易いため好ましい。また、紡糸温度が350℃以下において、樹脂の劣化や熱分解を起こすことなく、紡糸工程が著しく不安定化することなく、後の延伸処理によって高強度の延伸繊維を得ることができ、好ましい。紡糸温度が250~300℃の範囲であれば、芯成分の配向抑制の効果と、紡糸工程の安定性、延伸処理による強度発現性のバランスがとれるので、特に好ましい。
本発明で使用する口金の孔数は、生産効率の観点から、100H以上のものを用いことが好ましい。一般的に、ホール数を増やすほど、紡出後の糸条を均一冷却することが困難となり、加えて、口金直下で乱流を生じ、安定紡糸が困難となるが、特に、1.0dtex以下のような細繊度条件を紡糸する場合は、紡糸難易度が高い。そのため、1000H未満が好ましい。生産効率の観点と紡糸性の観点から、より好ましい範囲は、400Hから600Hである。
本発明で使用する口金の孔径Dは、0.1~0.8mmが好ましいが、下記で述べるドラフトの範囲から外れなければ、特に制限はないが、Dが0.1より小さいと、口金にかかる圧力が高くなり、口金が変形する懸念がある。一方で、0.8より大きいとドラフトが高くなり、下記で記載するドラフトの条件を満たしにくくなる。より好ましくは、0.2~0.5mmである。
本発明で使用する口金の孔路長Lは、0.5mm以上の必要がある。孔路長は、吐出直後の芯材の結晶性を左右する。孔路長が長いほど、口金の孔から吐出された未延伸糸は、結晶性プロピレン系重合体の分子鎖同士の絡み合いが緩和されるので、吐出されて冷却される際に、結晶性プロピレン系重合体の結晶化が適度に促進され、これにより、紡糸工程の冷却が安定し、未延伸糸の繊度斑、単繊維内での芯鞘比率の斑、及び鞘材に被覆されずに部分的に芯材が露出している鞘材の被覆斑を低減することができる。その結果、紡糸性は安定化され、未延伸糸をより細繊度化を容易にする上、紡糸口金から吐出し紡糸された多数の未延伸糸の繊維間及び繊維内で斑が小さくなるため、延伸倍率をより高くすることができたり、延伸温度を下げたりすることができ、延伸工程での延伸性が向上する。また、紡糸性が安定化されるため、紡糸段階で細繊度化を行うことができる。すなわち、孔路長は0.7mm以上である必要がある。上限について特に制限はないが、口金洗浄、管理の面で、10.0mm未満であることが好ましい。より好ましい範囲は1.2~3.0mm、更に好ましい範囲は1.4~2.0mmである。
未延伸糸の引取速度は、任意の速度を設定することができる。引取速度が未延伸糸の自由落下速度よりも低速の場合には、均一な未延伸糸が得られなくなり、延伸性の低下を招く。更には、引取速度の低速化は、生産性の低下につながり、また、紡糸張力が著しく低下し、紡糸性が悪化する。また、引取速度が著しく高速の場合には、複合繊維の細化が完了する位置における変形速度が大きくなり、芯成分の分子配向が進んだ未延伸糸となる。これは延伸性の低下を招くため、高延伸倍率の設定が困難となる。従って、生産性や紡糸安定性、後の延伸過程での延伸性を考慮すると、引き取り速度は200~1500m/分の範囲が好ましく、500~1000m/分の範囲がより好ましい。
本発明の紡糸条件では、ドラフトが50~170である必要がある。ドラフトとは式1に示す式で表され、ドラフトの算出で使用される吐出線速度は式2の通りである。
ドラフト= 引取速度(m/分)/吐出線速度(m/分)・・・式1
吐出線速度= 単孔吐出量(g/分)/(ポリマー密度(g/cm)×孔面積(mm))・・・式2
ドラフトは、引取速度と口金孔内の樹脂速度(吐出線速度)との速度比であり、この値が大きいほど、口金から吐出された樹脂の変形量が大きくなり、分子配向が進んだ未延伸糸となるため、延伸性の低下を招く。そのため、ドラフトが160より高いと、延伸倍率を高く設定することができない。一方で、ドラフトが50より低いと、紡糸張力が低下し、紡糸性が悪化する。より好ましいドラフトは、70~140であり、更に好ましいドラフトは90~120である。
紡糸口金から吐出された樹脂の冷却は、急冷却するのではなく、空気によって徐冷却することが望ましい。空気の温度、風速は任意に設定できるが、より分子配向を抑制するためには風速は低く、温度はあまり低すぎないことが好ましい。好ましい冷却条件は、風温が15~40℃で、冷却開始位置が40~100mmで、冷却長が100~900mmの冷風吹き出し冷却装置を用いて、30~80m/分で冷却することが好ましい。
次に、本発明の芯鞘複合繊維の延伸方法について説明する。
紡糸した未延伸糸を延伸する工程では、生産効率を考慮して、未延伸糸を30~300ktexに束ねて延伸を行う。
本発明の芯鞘複合繊維は、以下に示すように、水蒸気中で前述の芯鞘複合未延伸糸を延伸処理することにより得られる。
本発明においては、延伸を行う前に延伸性を向上させるために水分または油剤付与を行ってもよい。この付与方法については、例えば、ローラー法、浸漬法、噴霧法などを採用することができるが、好ましくは浸漬法で十分に付着させることが重要である。油剤については親水性の油剤を選択することが好ましく、界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、アニオン系、ノニオン系などの公知のもので良い。濃度については特に限定されるものではないが、0.1%~5%が好ましい。
本発明においては本延伸処理を水蒸気中での延伸処理を行う前に、所望により予備延伸処理を行ってもよい。この予備延伸処理方法としては、例えば、金属加熱ロールや金属加熱板を用いた接触加熱延伸や、温水、沸水、加圧飽和水蒸気、熱風、遠赤外線、炭酸ガスレーザーを用いた非接触加熱延伸などを適用でき、予備延伸方法は、延伸状態などによって、延伸条件を適宜選択すればよい。
この予備延伸工程における延伸倍率としては、糸切れが発生しなければ特に指定はないが、本延伸処理を含めた全延伸倍率の25~90%の範囲が適しており、該予備延伸処理は1段階で行ってもよいし、2段以上の多段階で行なってもよい。特に、予備延伸処理を1段で行ったのち、本延伸処理を行う2段階延伸の場合、予備延伸倍率は、全延伸倍率の25~85%の範囲が好ましく、さらに35~80%の範囲が好ましい。
予備延伸工程後の本延伸工程では、芯鞘複合未延伸糸または前述の予備延伸工程で得られた芯鞘複合未延伸糸の予備延伸処理物を、90℃以上110℃未満で水蒸気により直接加熱して、延伸処理する必要がある。予備延伸処理物を90℃以上110℃未満に加熱できれば、水蒸気による加熱方法は特に指定はないが、加熱すべき繊維を瞬間的短時間で加熱できることから、加圧飽和水蒸気中での延伸が好ましく、両端を加圧水槽部でシールした加圧飽和水蒸気延伸機(例えば、特許文献1参照)であってもよい。
本発明では、90℃以上110℃未満での延伸が必要であるが、延伸温度が低いほうが、繊維にかかる応力が高くなり、芯材の分子配向がより促進され、より高ヤング率の繊維を得ることができる。これについて、詳細なメカニズムは解明されていないが、延伸温度を上記の通り設定することで、強度やヤング率の向上でき、特にヤング率の向上が顕著にみられた。なお、口金の孔路長やドラフト条件を特定の範囲に指定することで、90℃以上110℃未満での延伸が可能となる。
本発明の未延伸糸は、延伸倍率をなるべく大きくすることで、芯鞘複合繊維の強度やヤング率をより高めることができる。延伸倍率は未延伸糸の繊度や芯鞘比、樹脂構成に応じて適宜選定可能であるが、実効延伸倍率を6.0倍~9.0倍とすることが好ましく、より好ましくは7.0倍~8.0倍である。延伸速度についても特に制限されるものではないが、生産性を考慮すると、50m/min以上であることが好ましく、より好ましくは100m/min以上である。
本発明の芯鞘複合繊維には、加工適正や製品物性を満たすために、その繊維表面に界面活性剤を付着させることが望ましい。界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、また付着方法も公知の方法、例えば、ローラー法、浸漬法、噴霧法、パットドライ法などを採用することができる。
また、付着場所についても限定するものではなく、延伸前、延伸後、捲縮後、カット前などを採用することができる。
本発明の芯鞘複合繊維は、前述した繊維の製造方法を採用することで、単繊維繊度は、1.0dtex以下、かつヤング率70cN/dtex以上の芯鞘複合繊維を得ることができる。
単繊維繊度は、より好ましくは0.8dtex以下であり、更に好ましくは0.6dtex以下である。また、単繊維強度は、5.8cN/dtexより高いことが好ましく、より好ましくは6.0cN/dtex以上、更に好ましくは7.0cN/dtex以上である。その上限については特に制限はないが、一般的には50cN/dtexである。
ヤング率は、好ましくは80cN/dtex以上、さらに好ましくは90cN/dtexである。その上限については特に制限はないが、一般的には150cN/dtexである。
本発明の芯鞘複合繊維の伸度は、15%以上、40%未満であることが好ましい。15%未満の場合、セパレータ材料に使用した際に、異物によって加えられた圧力で繊維の変形によって圧力分散ができず、異物と接触している部分にのみ強い荷重が加わるようになり、その部分からさけたり異物が貫通しやすくなったりする可能性がある。また、40%以上の場合、過剰に繊維が伸びたり変形したりするようになり、セパレータの突き刺し強力や引っ張り強力が低下する恐れがある。さらに好ましい範囲として、19%以上、35%未満である。
本発明の芯鞘複合繊維は、様々な用途に使用することができ、その用途に合わせて種々の繊維形態とすることができる。
例えば、カード不織布用繊維の場合には、捲縮を付与したステープルの繊維形態が好ましい。本発明の鞘芯型熱融着性複合繊維は、高い繊維強度と熱融着力を有しており、不織布の嵩高化や高強力化、カード生産性の向上を図ることができるので、特に好適であると考えられる。捲縮数、繊維長は特に制限されるものではなく、適宜選択することができ、公費の捲縮付与方法を採用することができる。
織布フィルター用繊維やワインディングフィルター用繊維、織布シート用繊維、編み加工ネット用繊維などの場合には、フィラメントの繊維形態が好ましい。
エアレイド不織布用繊維の場合には、ショートカットチョップの形態が好ましい。繊度は特に限定されるものではなく、更には、捲縮を付与したものであってもよく、捲縮を付与していないものでもよい。また繊維長については加工機のタイプ、要求物性、生産性などを考慮して、適宜選択することができる。
コンクリート補強用繊維や抄紙不織布用繊維の場合には、ショートカットチョップの繊維形態が好ましい。捲縮を付与したものであってもよく、捲縮を付与していないものでもよく、また繊維長については加工方法、要求物性、生産性などを考慮して、適宜選択することができる。
本発明の芯鞘複合繊維を用いて電池用セパレータ向けの湿式不織布を作製した場合、金属などの鋭利な硬質物が不織布を貫通することを抑止する効果が高く、特に好適である。
(1)単繊維繊度
未延伸糸、延伸糸(芯鞘複合繊維)について、JIS-L-1015(2010年)に準じて測定した。
(2)繊維強度、伸度、ヤング率
JIS-L-1013(2010年)により、つかみ間隔200mm、引張速度200mm/分の定速伸長形条件で引張破断試験を行って測定した。
(3)メルトフレーレート(MFR)
以下の条件で測定した。
・ポリプロピレン系重合体の場合:試験温度230℃、試験荷重21.18Nで測定。(JIS-K-7210(2014年))
・ポリエチレン系重合体の場合:試験温度190℃、試験荷重21.18Nで測定。(JIS-K-6922-2(2018年))。
[実施例1]
鞘材として、高密度ポリエチレン「H202」(SCG社製、MFR=19g/10分)を、芯材としてポリプロピレン「S137」(プライムポリマー製、MFR=30g/10分、Q値=5.0、IPF=96)を用い、一軸押出機2台と、孔径0.3mm、孔路長1.6mmの口金孔数が437個を有する複合型繊維用口金とを備えた複合紡糸装置により、シリンダー温度250℃、口金温度260℃にて、芯材と鞘材との断面積比が60:40で、吐出量が180g/分、引取速度800m/分の速度で引き取りながら冷却した。糸条の冷却は、紡糸口金から70mmの位置より、風温20℃、風速50m/分、冷却長600mmの冷風吹出し冷却装置により冷却した。糸条の冷却後、工程油剤を0.1質量%付与し、フリーローラーを経て収束0.1%ガイドで他の紡糸錘20本合糸し、単繊維繊度が5.15dtexの複合未延伸糸を作製した。
その後、20本の未延伸糸を引き揃えながら、浴温25℃の水を満たした浴槽を通した後に予備延伸槽および本延伸槽が連続して配置された延伸装置へ導いた。予備延伸槽および本延伸槽が連続して配置された延伸装置へ導いた。予備延伸槽では90℃の温水、本延伸槽では温度105℃の加圧飽和水蒸気のもとで延伸を行った。延伸倍率は、予備延伸槽では2.4倍、本延伸槽では3.0倍で設定し、本延伸槽出の延伸糸の速度が120m/分になるように延伸した。
原料の物性および製糸条件などを表1に示すと共に、延伸糸の物性を表2に示す。
[実施例2]
芯材と鞘材との断面積比を70:30とした以外は、実施例1と同様にして、複合繊維を得た。
[実施例3]
引取速度が1200m/分、本延伸槽での延伸倍率を2.5倍にした以外は、実施例1と同様にして、複合繊維を得た。引取速度が1200m/分の条件では、本延伸槽での延伸倍率が3.0倍では糸切れが発生したため、本延伸槽での延伸倍率は、糸切れの発生しなかった2.5倍を設定した。
[実施例4]
鞘材として、高密度ポリエチレン「HD1010S」(PTT社製、MFR=20g/10分)を、芯材としてポリプロピレン「S137」(プライムポリマー製、MFR=30g/10分、Q値=5.0、IPF=96)を用い、一軸押出機2台と、孔径0.3mm、孔路長1.6mmの口金孔数が437個を有する複合型繊維用口金とを備えた複合紡糸装置により、シリンダー温度250℃、口金温度260℃にて、芯材と鞘材との断面積比が60:40で、吐出量が165g/分、引取速度800m/分の速度で引き取りながら冷却した。糸条の冷却は、紡糸口金から70mmの位置より、風温20℃、風速50m/分、冷却長600mmの冷風吹出し冷却装置により冷却した。糸条の冷却後、工程油剤を0.1質量%付与し、フリーローラーを経て収束0.1%ガイドで他の紡糸錘20本合糸し、単繊維繊度が4.72dtexの複合未延伸糸を作製した。
その後、20本の未延伸糸を引き揃えながら、浴温25℃、濃度2%のアニオン系の親水性油剤の浴槽を通した後に予備延伸槽および本延伸槽が連続して配置された延伸装置へ導いた。予備延伸槽では温度105℃の加圧飽和蒸気、本延伸槽も同様に温度105℃の加圧飽和水蒸気のもとで延伸を行った。延伸倍率は、予備延伸槽では3.0倍、本延伸槽では2.4倍で設定し、本延伸槽出の延伸糸の速度が120m/分になるように延伸した。
[実施例5]
複合紡糸装置のシリンダー温度260℃、口金温度を280℃とする以外は実施例4と同様にして、複合未延伸糸を作製した。
その後、実施例4と同様の延伸方法で延伸し、延伸倍率を、予備延伸槽では3.1倍、本延伸槽では2.4倍で設定し、本延伸槽出の延伸糸の速度が120m/分になるように延伸した。
[実施例6]
吐出量が145g/分とした以外は実施例5と同様にして複合繊維を得た。
原料の物性および製糸条件などを表1に示すと共に、延伸糸の物性を表2に示す。
[比較例1]
本延伸槽で温度123℃の加圧飽和水蒸気を使用した以外は、実施例1と同様にして、複合繊維を得た。
[比較例2]
予備延伸槽を使用せず、本延伸槽のみの延伸を実施し、本延伸槽での延伸倍率を4.5倍にした以外は、実施例3と同様にして、複合繊維を得た。
[比較例3]
本延伸槽で温度110℃の加圧飽和水蒸気を使用した以外は、実施例3と同様にして、複合繊維を得た。
[比較例4]
孔路長0.4mmの口金を使用した以外は、実施例1と同様にして複合繊維を得ようとしたが、本延伸槽で糸切れが発生した。
[比較例5]
孔径0.4mmの口金を使用した以外は、実施例1と同様にして複合繊維を得ようとしたが、本延伸槽で糸切れが発生した。
Figure 2022077507000001
Figure 2022077507000002

Claims (2)

  1. 結晶性プロピレン系重合体を芯材とし、かつ上記結晶性プロピレン重合体以外のオレフィン系重合体を鞘材とする溶融紡糸された複合未延伸糸を延伸処理してなる芯鞘複合繊維であって、ヤング率が70cN/dtex以上、かつ単繊維繊度が1.0dtex以下であることを特徴とする芯鞘複合繊維。
  2. 前記延伸処理が、90℃以上110℃未満での延伸処理を含むこと特徴とする請求項1に記載の芯鞘複合繊維。
JP2021180760A 2020-11-11 2021-11-05 芯鞘複合繊維 Pending JP2022077507A (ja)

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