JP3915896B2 - インクジェット印刷用インク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット方式に用いられるインクとして好適な水性のインクに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年来、インクジェットプリンタ用インクに求められる特性としては、印刷画像の耐水性や耐光性等の堅牢性が良好であること、また、印刷媒体種によらずに不規則なインクの流れや付着したインク小滴より大きく広がること(以下これを"にじみ"とする)等の不具合が無いことが挙げられる。
【0003】
こうした目的に対して、印刷画像の堅牢性を確保するために、染料の代わりに堅牢性に優れる顔料を利用することが検討されてきている。顔料は、染料と異なり水への溶解性がないため、顔料を水中に微粒子状態で分散することが必要であるが、この分散状態を安定して保つことが非常に困難である。そのために、顔料を水中に安定して分散させる技術が種々提案されており、その1つの手段として、顔料微粒子の表面にスルホン酸基を導入する技術が知られている。
例えば、特開平10−110129号公報には、活性プロトンを有さない溶剤中に分散させた有機顔料をスルホン化剤で処理して得られる"スルホン化表面処理有機顔料"を含むインクジェット用インクが記載されている。同公報の記載によれば、前記のインクジェット用インクは、安定な分散性を有し、ノズルでの吐出安定性が良好であるとされている。また、特開平11−49974号公報には、スルホン酸基を導入した有機顔料塊状体を1価金属イオンで処理することにより、表面を正帯電させる有機顔料塊状体を調製することが記載されており、更に、その表面正帯電有機顔料塊状体から調製された顔料エマルジョン、分散剤及び水を含み、貯蔵安定性に優れた水系インク組成物が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上挙げた従来例では、以下に挙げる問題点が生じるものであった。
【0005】
すなわち、前記特開平10−110129号公報及び特開平11−49974号公報に記載のスルホン酸基導入顔料は、顔料表面に定着成分がないため、印刷画像の耐摩擦性に乏しいという問題点があった。そのため、特開平10−110129号公報には、水溶性樹脂を添加することにより定着性を改善する旨が記載されている。
しかし、特開平10−110129号公報に記載の組成インクでは、カラー写真と同等以上の高品質な印刷画像を要求される特殊印刷媒体(例えば、光沢紙、光沢フィルムシート等)上に画像を形成した場合、インクの浸透性に乏しい。その結果、インク中液性成分の印刷媒体中への浸透が少なく、顔料粒子が印刷媒体表面に残る状態となる為、画像表面の平滑性が失われて光沢性が欠如し、印刷品質が損なわれるという問題点、及び、耐摩擦性に乏しいという問題点があった。更に、特にフルカラー印刷時において、2色以上インクが重なったり接したりする部分で、にじみが発生するという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明者等は、上述した従来技術の問題点についての解決を図るべく鋭意検討した結果、硫黄含有分散性付与基を表面に有する顔料粒子を含むインクに特定の浸透剤と特定の樹脂エマルジョン(実質的にインク中で溶解しない樹脂エマルジョン)を添加することで、上述した従来技術の問題点を解決するインクジェット印刷用インクを実現できることを見出し、本発明を提案するに至った。
【0007】
従って、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するインクジェット印刷用インクを実現することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット印刷用インクは、少なくとも、硫黄含有分散性付与基を表面に有する顔料粒子、浸透剤、硫黄含有分散性付与基を表面に有する樹脂エマルジョン及び水を含むことを特徴とする。
そして、本発明のインクジェット印刷用インクにおいて好ましい態様によれば、前記樹脂エマルジョンを構成する樹脂の分子骨格が、(A)スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、または、(B)ジエン系(共)重合体である。
【0009】
また、本発明のインクジェット印刷用インクにおいて好ましい態様によれば、前記樹脂エマルジョンの粒子表面に、−SO3M及び/又は−RSO2M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は、有機アンモニウムイオンを示す)が化学結合しており、水に分散可能なものとされたものである。
【0010】
また、本発明のインクジェット印刷用インクにおいて好ましい態様によれば、前記樹脂エマルジョンの最低造膜温度が30℃以下である。
【0011】
また、本発明のインクジェット印刷用インクにおいて好ましい態様によれば、前記顔料が、カーボンブラック顔料及び/又は有機顔料であり、また、前記顔料粒子が、硫黄を含む処理剤によりその粒子表面に−SO3M及び/又は−RSO2M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は、有機アンモニウムイオンを示す)が化学結合するように表面処理され、水に分散及び/又は溶解が可能なものとされたものである。
【0012】
また、本発明のインクジェット印刷用インクにおいて好ましい態様によれば、前記浸透剤が、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、1,2−アルキレングリコール、及び、下記式(I)で示す構造の物質からなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の物質である。
R−EOn−POm−X (I)
(式中Rは炭素数1〜12のアルキル基を示し、その構造は直鎖状であっても分岐していてもよい。Xは、−H又は−SO3M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は、有機アンモニウムイオンを示す)を示す。EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示し、n及びmは、繰り返し単位であって系全体での平均値を示す。EOとPOは分子中に存在することを示していて順序は関係ない。)
【0013】
また、本発明のインクジェット印刷用インクにおいて好ましい態様によれば、前記式(I)に示す物質の重量平均分子量が、2,000以下であり、また、前記式(I)に示すRが、炭素数4〜10のアルキル基である。
【0015】
本明細書において、インクの「液性成分」とは、インクジェット印刷用インクに関して、それを顔料粒子等の固形部分と、それらの固形部分を分散して保持する液状部分とに分けた場合の液状部分を意味する。
【0016】
【発明の実施の形態】
<インクジェット印刷用インク>
本発明のインクジェット印刷用インクは、少なくとも硫黄を含有する分散性付与基を表面に有する顔料粒子(以下、単に"表面処理顔料粒子"と記載する場合がある)、浸透剤、硫黄を含有する分散性付与基を表面に有する樹脂エマルジョン及び水からなる。このようなインクで印刷することにより、印刷媒体種によらずににじみの少ない、定着性と光沢性に優れた印刷画像を実現できる。その理由としては未だ明確ではないが、以下のように推定している。
【0017】
すなわち、表面処理顔料粒子は、インク中では硫黄含有分散性付与基がイオン解離することで粒子間に静電反発力が働くため安定的に分散しているが、インクが印刷媒体に付着した時に印刷媒体中のイオン性物質、例えばマグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属イオンがインク中に溶け出し、それによって前記硫黄含有分散性付与基(特には、スルフィン酸基又はスルホン酸基)と前記イオン性物質とが塩析反応により結合して、顔料粒子が凝集することにより、インク中の液性成分との分離が生じる。その結果、顔料凝集物がまず印刷媒体表面に沈降吸着して、その後に液性成分が印刷媒体表面や中へ浸透拡散する。そのため、にじみの少ない印刷画像が得られるものと思われる。更に、こうして得られた印刷物の耐水性は、硫酸塩の水溶性に近い難溶性を示し、通常の分散剤(例えば、界面活性剤型、アルカリ中和樹脂分散剤型)を使用するタイプの顔料インクと比較して、それよりも強固な耐水性が得られる。
【0018】
その際、表面処理顔料粒子は、顔料粒子表面に印刷媒体に対しての定着成分がないため、特に特殊印刷媒体(例えば、光沢紙、光沢フィルムシート等)に印刷した場合、顔料粒子が表面に残り、耐摩擦性に乏しくなってしまう。また、印刷物の表面が顔料粒子の凝集体で形成される為、平滑性に乏しく、画像の光沢性が欠如してしまう。そこで、本発明者等が鋭意検討した結果、インク(液性成分)に浸透剤としてアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、1,2−アルキレングリコール、及び特定構造の物質からなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の物質と、硫黄を含有する分散性付与基を表面に有する樹脂エマルジョンを添加することで、上記耐摩擦性および光沢性が改善できることを見出した。
【0019】
上記のような樹脂エマルジョンは、前記の顔料粒子と同様に粒子表面に硫黄含有分散性付与基を有しており、インク中ではこれのイオン解離による静電反発力のために、また、顔料粒子の分散性付与基と同様なものであるため、顔料粒子との相互作用が殆どない状態で、安定的に分散している。
このインクの分散安定性は、表面に例えばカルボキシル基を有する樹脂エマルジョンを用いた場合と比較して優れていることを本発明者等は確認した。具体的には、ある条件下(例えば高温放置時)において、カルボキシル基含有樹脂エマルジョンを用いたインクでは、増粘・増粒等が生じる場合があった。その理由は、詳細は不明であるが、顔料粒子の分散性付与基と樹脂エマルジョンのそれとが異なっている場合、各々の解離定数が違っていることにより、互いに何らかの相互作用を生じ易くなっているためと推定している。
【0020】
このインクを印刷媒体上に付着した場合、樹脂エマルジョンは、前記の顔料粒子と同様に印刷媒体中のイオン物質と塩析反応を生じて、顔料粒子と共に凝集沈降して顔料粒子間に存在し、分離した液性成分は印刷媒体中に浸透拡散する。樹脂エマルジョンが顔料粒子間に存在しているため、樹脂エマルジョンの皮膜化に伴い、樹脂を仲立ちとして顔料同士が強固に接着する。また、インクが乾燥するのに伴い、液性成分中の前記浸透剤が樹脂エマルジョンの一部を伴って印刷媒体中に浸透拡散していく為、顔料粒子が樹脂を仲立ちとして印刷媒体に対して強固に接着する。その為、画像の耐摩擦性に優れるものと思われる。また、画像の平滑性が、顔料粒子の周りに樹脂エマルジョンが皮膜化することによって発現する為、光沢性に優れた画像が実現できるものと思われる。
【0021】
また、本発明のインクジェット印刷用インクに用いられる顔料粒子は、硫黄含有分散性付与基が顔料表面から脱離しない為、分散安定性に優れている。その為、従来用いられてきた樹脂分散剤型顔料では、その分散安定性保持の為に添加量が制限されていた、上述のような浸透剤を、所望の浸透性が発現できるだけの量を添加する事ができる。従って、特にフルカラー印刷において、2色以上インクが重なったり接したりする画像部分においても、にじみが少ない為、鮮明な画像が得られるものと思われる。
【0022】
次に、本発明のインクジェット印刷用インクの構成要素について、説明する。
【0023】
<顔料粒子>
本発明のインクジェット印刷用インクには、硫黄を含有する分散性付与基を表面に有する顔料粒子が用いられる。この顔料粒子を構成する顔料としては、硫黄含有分散性付与基を粒子表面に担持することのできる顔料であり、分散性付与基の導入時に使用する硫黄含有処理剤に溶解しない顔料であれば特に限定されない。このような観点から、特に本発明のインクジェット印刷用インクにおいて好ましい顔料としては、以下の顔料を例示することができる。
【0024】
ブラックインク用の無機顔料としては、ファーネスブラック、ランブブラック、アセチレンブラック、若しくはチャネルブラック等のカーボンブラック(C.l.ピグメントブラック7)類、あるいは酸化鉄顔料等を挙げることができる。
【0025】
また、イエローインク用顔料としては、C.l.ピグメントイエロー1(ハンザイエロー)、3(ハンザイエロー10G)、12、13、14、17、24(フラバントロンイエロー)、34、35、37、53、55、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、99、108(アントラピリミジンイエロー)、109、110、113、117(銅錯塩顔料)、120、128、133(キノフタロン)、138、139(イソインドリノン)、147、151、153(ニッケル錯体顔料)、154、167、172、180等を挙げることができる。
【0026】
更に、マゼンタインク用の顔料としては、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド)、2、3(トルイジンレッド)、5(lTR Red)、7、9、10、11、12、17、30、31、38(ピラゾロンレッド)、42、88(チオインジゴ)、112(ナフトールAS系)、114(ナフトールAS系)、122(ジメチルキナクリドン)、123、144、149、150、166、168(アントアントロンオレンジ)、170(ナフトールAS系)、171、175、176、177、178、179(ベリレンマルーン)、185、187、202(キナクリドンマゼンタ)、209(ジクロロキナクリドン)、219、224(ベリレン系)、245(ナフトールAS糸)、又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン)、23(ジオキサジンバイオレット)、32、33、36、38、43、50等を挙げることができる。
【0027】
更にまた、シアンインク用の顔料としては、C.l.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16(無金属フタロシアニン)、18(アルカリブルートナー)、25、60(スレンブルー)、65(ビオラントロン)、66(インジゴ)等を挙げることができる。
【0028】
また、ブラックインク用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることができる。
【0029】
更にまた、マゼンタ、シアン、又はイエローインク以外のカラーインクに用いる有機顔料として、
C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、10(グリーンゴールド)、36、37;
C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26;あるいは
C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、7、13、14、15、16、34、36、38
等を用いることができる。
【0030】
本発明のインクジェット印刷用インクにおいては、前記の顔料を1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明のインクジェット印刷用インクに含まれる顔料粒子の表面上に担持されている硫黄含有分散性付与基としては、硫黄原子を含有し、しかも水中分散性を付与する官能基であれば特に限定されないが、好ましくは、スルフィン酸(−RSO2 -)基又はスルホン酸(−SO3 -)基を挙げることができる。本発明のインクジェット印刷用インクに含まれる顔料粒子においては、前記の分散性付与基が、少なくとも粒子表面上に存在すればよく、粒子内部に含まれていてもよい。
【0032】
本発明のインクジェット印刷用インクに含まれる硫黄含有分散性付与基を表面に有する顔料粒子は、前記の顔料化合物から、公知の方法によって調製することができる。例えば、特開平8−283596号、特開平10−110110号、特開平10−110111号、又は特開平10−110114号の各公報に記載の方法で調製される水系分散液の形で、前記の硫黄含有分散性付与基を表面に有する顔料粒子を得ることができる。
【0033】
硫黄含有分散性付与基を表面に有する顔料粒子を含む水系分散液の調製方法の一例を示せば、以下のとおりである。
【0034】
微細な粒子状の顔料を、顔料の3〜200重量倍量の非プロトン性溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドン又はスルホラン)中に入れ、顔料の分散処理を行いながら、スルホン化剤で処理する。スルホン化剤としては、例えば、スルホン化ピリジン塩、スルファミン酸、アミド硫酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、三酸化硫黄、発煙硫酸、又は硫酸等を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。スルホン化剤による処理は、加熱(約60〜200℃)下及び撹拌下で行うことができ、加熱は、スルホン化剤の添加前又は添加後に行うことができる。
【0035】
スルホン化処理の後、得られた顔料スラリーから、非プロトン性溶媒と残留するスルホン化剤とを除去する。除去処理は、水洗、限外濾過、逆浸透、遠心分離、及び/又は濾過等を繰り返して実施することができる。
【0036】
続いて、スルホン化処理顔料を、10〜40重量%程度の濃度になるように水性液体(特に、イオン交換水又は蒸留水)中に添加し、更に場合により通常の分散処理を短時間行うことにより、顔料の乾燥工程を経ずに、顔料水性分散液を得ることができる。
【0037】
本発明のインクジェット印刷用インクに含まれる前記顔料粒子における前記分散性付与基の導入量は、顔料粒子1g当たり、好ましくは10×10-6当量以上である。分散性付与基の導入量が、顔料粒子1g当たり10×10-6当量未満であると、インクの保存安定性が低下するだけでなく、印刷濃度が低くにじみの多い画像となる場合がある。前記分散性付与基の導入量は、顔料水性分散体を酸素フラスコ燃焼法で処理し、過酸化水素水溶液に吸収させた後、イオンクロマトグラフ法で硫酸イオン(2価)を定量し、スルホン酸基及びスルフィン基に換算することによって測定することができる。
【0038】
本発明のインクジェット印刷用インクに含まれる顔料粒子の平均粒径は、好ましくは10〜300nmである。平均粒径が10nm未満になると、耐光性がなくなることがあり、300nmを超えると、沈降して安定吐出しなくなることがある。
【0039】
本発明のインクジェット印刷用インクにおいて、前記の硫黄含有分散性付与基を表面に有する顔料粒子の含有量は、好ましくは0.5〜30重量%である。前記の顔料粒子の含有量が0.5重量%未満になると、印刷濃度が不充分となることがあり、30重量%を超えると、インク中に有機溶剤等を添加する量が制限され、ノズル目詰まりが発生しやすくなったり、インクの粘度が高くなり、インク吐出ノズルからの安定吐出が得られないことがある。
【0040】
<樹脂エマルジョン>
本発明のインクジェット印刷用インクに用いられる、硫黄含有分散性付与基を表面に有する樹脂エマルジョンは、連続相が水等の液性成分であり、分散相が以下に示す樹脂から成る微粒子(実質的にインクの液性成分に溶解しない微粒子)のことを差す。この樹脂エマルジョンは、インク中では安定的に分散し、印刷物においては顔料粒子同士及び顔料粒子と印刷媒体とを強固に接着する作用を示す。そのような特性を示す、樹脂エマルジョンを構成する樹脂構造(樹脂の分子骨格)としては、「(A):スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体」または「(B):ジエン系(共)重合体」である。
【0041】
(A):スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体
前記特性を示す、樹脂エマルジョンを構成する樹脂構造としては、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等が挙げられる。
その中でも、その樹脂構造がスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のものは、後述する浸透剤に対しての親和性が良好である為、印刷媒体上に印刷したインクが乾燥するのに伴い、樹脂エマルジョンが迅速にかつ充分に皮膜化できる。その為、印刷画像に充分な耐摩擦性や光沢性が付与できるので好ましい。
【0042】
本発明のインクジェット印刷用インクに用いられる、上記(A)の"スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体"を樹脂の分子骨格とする樹脂エマルジョンは、後記する(B)の"ジエン系(共)重合体"を樹脂の分子骨格とする樹脂エマルジョンにおいても同様であるが、その表面に硫黄含有分散性付与基を有する。
硫黄含有分散性付与基としては、硫黄原子を含有し、しかも水中分散性を付与する官能基であれば特に限定されないが、好ましくは、スルフィン酸(−RSO2 -)基又はスルホン酸(−SO3 -)基を挙げることができる。
【0043】
本発明のインクジェット印刷用インクに用いられる、上記スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を樹脂の分子骨格とする樹脂エマルジョンにおいては、後記するジエン系(共)重合体の場合も同様であるが、前記の分散性付与基が、少なくとも粒子表面上に存在すればよく、粒子内部に含まれていてもよい。前記の分散性付与基の樹脂エマルジョン表面への導入方法は、構成する樹脂のモノマー構造中に存在させていてもよく、また樹脂エマルジョンを調製する際に分散性付与基を含む試薬等を添加してもよい。更に、樹脂エマルジョンを調製した後にその表面にグラフト重合等によって付加させてもよい。硫黄含有分散性付与基を樹脂エマルジョン表面に担持させることで、上述したようにインクの保存安定性が良好となる。
【0044】
(B):ジエン系(共)重合体
ジエン系(共)重合体は、後述する浸透剤に対しての親和性が良好である為好ましい。この樹脂構造である樹脂エマルジョンを用いた場合、印刷媒体上に印刷したインクが乾燥するのに伴い、樹脂エマルジョンが迅速にかつ充分に皮膜化できる。その為、印刷画像に充分な耐摩擦性や光沢性が付与できる。以下に、この樹脂エマルジョンについて詳細に述べる。
【0045】
ジエン系(共)重合体としては、ジエン系(共)重合体に、あるいはその水素添加物(以下"水添物"ともいう)に、硫黄含有分散性付与基を置換した物を用いることができ、それらは、ジエンモノマーを必須成分とするジエン系(共)重合体(以下"ベースポリマー"ともいう)、あるいは、その水添物に硫黄含有分散性付与基を置換することによって得られる。ベースポリマーに使用されるジエンモノマーとしては、炭素数4〜10のジエン系化合物が好ましく、より好ましくは炭素数4〜8、更に好ましくは炭素数4〜6のジエン系化合物である。
【0046】
ジエンモノマーの具体例としては、例えば、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ペンタジエン、イソプレン、1,2−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,2−ヘプタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、2,3−ヘプタジエン、2,5−ヘプタジエン、3,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどのほか、分岐した炭素数4〜7の各種脂肪族あるいは脂環族ジエン類が挙げられる。これらのジエンモノマーを、1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0047】
上記のジエンモノマーと併用できる他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリルブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノあるいはジカルボン酸またはジカルボン酸の無水物、(メタ)アクリロニトリルなどのビニルシアン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルメチルエチルケトン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和化合物が挙げられる。これら他のモノマーは、1種または2種以上併用して用いることができる。これら他のモノマーを併用する場合には、ジエンモノマーの使用量は、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、特に好ましくは5重量%以上である。
【0048】
ベースポリマーは、ジエンモノマーおよび必要に応じて他のモノマーを、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤、あるいはn−ブチルリチウム、ナトリウムナフタレン、金属ナトリウムなどのアニオン重合開始剤の存在下、必要に応じて公知の溶剤を使用して、通常、−100〜150℃、好ましくは0〜130℃で、(共)重合を行うことにより得られる。
【0049】
また、べースポリマーとしては、ジエン系(共)重合体−硫黄含有分散性付与基置換物の前駆体であるベースポリマーのジエンモノマーに基づく残存二重結合の一部あるいは全部を水添して使用することもできる。この場合、公知の水添触媒が使用可能で、例えば、特開平5−222115号公報に記載されているような触媒、方法が挙げられる。ベースポリマーを水添後、後述する方法で硫黄含有分散性付与基を置換することもできるが、該(共)重合体に硫黄含有分散性付与基を置換したのち、水添してもよい。
【0050】
本発明のインクジェット印刷用インクに使用される樹脂エマルジョンの上記ベースポリマーは、ランダム型でもブロック型の共重合体でも特に制限なく用いることができる。好ましいベースポリマーとしては、例えば、イソプレン単独重合体、ブタジエン単独重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ブタジエン−スチレン−ブタジエン三元ブロック共重合体およびこれら(共)重合体の水添物、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体などが挙げられる。
【0051】
本発明のインクジェット印刷用インクに用いるジエン系(共)重合体−硫黄含有分散性付与基置換物は、上記べースポリマーを、公知の方法、例えば、日本科学会編集、新実験講座(14巻III、1773頁)、あるいは、特開平2−227403号公報などに記載された方法で得られる。例えば、硫黄含有分散性付与基としてスルホン酸を置換する時にスルホン化剤を用いるが、その場合には、上記ベースポリマー中のジエンユニットの二重結合部分をスルホン化することができる。このスルホン化の際、二重合は開環して単結合になるか、あるいは二重結合は残ったまま、水素原子がスルホン酸(塩)と置換することになる。なお、他のモノマーを使用した場合には、二重結合部分がジエンユニット部分以外にも、芳香族ユニットがスルホン化されてもよい。この場合のスルホン化剤としては、好ましくは無水硫酸、無水硫酸と電子供与性化合物との錯体のほか、硫酸、クロロスルホン酸、発煙硫酸、亜硫酸水素塩(Na塩、K塩、Li塩など)などが使用される。
【0052】
ここで電子供与性化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類;ピリジン、ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィドなどのスルフィド類;アセトニトリル、エチルニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル化合物などが挙げられ、このうちでもN,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサンが好ましい。
【0053】
硫黄含有分散性付与基を置換する際にスルホン化剤を用いる場合の添加量は、ベースポリマー中のジエンユニットと芳香族ユニットのトータル1モルに対して、通常、無水硫酸換算で0.005〜1.5モル、好ましくは0.01〜1.0モルである。0.005モル未満では、樹脂エマルジョンの分散安定性が得られない場合があり、一方、1.5モルを超えると、未反応の無水硫酸が多くなり、アルカリで中和したのち、多量の硫酸塩を生じ、純度が低下する。
【0054】
このスルホン化の際には、無水硫酸などのスルホン化剤に不活性な溶媒を使用することもでき、この溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;液体二酸化イオウ、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤が挙げられる。これらの溶媒は、適宜2種以上混合して使用することができる。
このスルホン化の反応温度は、通常−70〜200℃、好ましくは−30〜50℃である。−70℃未満では、スルホン化反応が遅くなり経済的でなく、一方、200℃を超えると、副反応を起こし、生成物が黒色化あるいは不溶化する場合がある。
【0055】
このようにして合成されたジエン系(共)重合体−硫黄含有分散性付与基置換物は、水に乳化させたもの(以下、乳化過程を"再乳化"ともいう)を使用する。再乳化の方法は、前記置換物あるいは、中和前の生成物の有機溶剤溶液を、水あるいは後述する硫黄含有分散性付与基と塩を形成する添加剤と攪拌・混合し、乳化させたのち、水を残したまま有機溶剤を除去することにより得られる。この再乳化は、一般的な方法が採用でき、前記置換物の有機溶剤溶液中に攪拌しながら水を添加する方法、攪拌しながら前記置換物の有機溶剤溶液を水中に添加する方法、水と前記置換物の有機溶剤溶液を同時に添加して攪拌する方法など、特に制限はない。
【0056】
ここで、再乳化に使用する有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤などが使用される。これら溶剤は、1種で使用しても、2種以上併用して使用してもよい。
【0057】
なお、再乳化に際しては、界面活性剤を併用することもできる。この界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテルなどの非イオン系界面活性剤、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ロジン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルピリジニウムクロライドなどのカチオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、1種で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。上記界面活性剤は、前記置換物の有機溶剤溶液中に溶解あるいは分散させて使用しても、水に溶解あるいは分散させて使用してもかまわない。
【0058】
本発明のインクジェット印刷用インクに用いられる樹脂エマルジョンは、上記(A)または(B)の樹脂構造及び硫黄含有分散性付与基を表面に有しているものであれば特に限定されずに用いることが出来るが、その樹脂エマルジョンの最低造膜温度が30℃以下であるものが好ましい。その理由は、樹脂エマルジョンの成膜温度が上記の範囲であれば、印刷された印刷媒体を加熱等の処理を改めて行うことなく、室温以下において印刷面の成膜化が自動的に進行し、着色剤である顔料粒子が強固に定着するためである。
【0059】
ここで、「最低造膜温度」とは、水等の液性成分に分散させた樹脂エマルジョンをアルミニウム等の金属板の上に薄く塗り延ばし、温度を上げていった時に透明な連続フィルムを形成する最低温度をいう。最低造膜温度未満の温度領域では、白色粉末状となる。
【0060】
「成膜性」とは、樹脂エマルジョンの連続相である水等の液性成分を蒸発・浸透等により除去した場合、樹脂皮膜が形成されることを意味する。樹脂皮膜が形成されることにより、顔料粒子同士及び顔料粒子と印刷媒体とが強固に定着でき、そのため耐摩擦性、光沢性に優れた印刷画像を得ることができる。
【0061】
本発明のインクジェット印刷用インクに用いられる樹脂エマルジョンは、インク中の顔料に対して固形分換算で10〜200重量%の範囲で添加することが好ましい。10重量%より少ないと、印刷画像に所望の耐摩擦性及び光沢性を付与できない場合がある。200重量%より多く添加すると、インク粘度が高くなって、印刷ヘッドから安定して吐出できない場合がある。
【0062】
本発明のインクジェット印刷用インクに用いられる樹脂エマルジョンを、インク中に更に安定的に分散するために、硫黄含有分散性付与基と塩を形成する添加剤を加えることもできる。
このような添加剤としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、アミルリチウム、プロピルナトリウムなどの有機金属化合物;アンモニア水、アミノメチルプロパノール、2−アミノイソプロパノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、アニリン、ジメチルエタノールアミン、ピペラジンなどのアミン類;ナトリウム、リチウム、カリウムなどの金属化合物を挙げることができる。これら添加剤は、1種で使用することも、また、2種以上を併用することもできる。
【0063】
<浸透剤>
本発明のインクジェット印刷用インクには、インクの浸透性を高めることで、耐摩擦性と光沢性が良好な印刷画像を得ること、及び特にフルカラー印刷時の2色以上インクが重なったり接したりする部分のにじみを少なくすることを目的として、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、1,2−アルキレングリコール類及び下記式(I)で示す構造の物質からなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の物質を含む。
R−EOn−POm−X (I)
(式中Rは炭素数1〜12のアルキル基を示し、その構造は直鎖状であっても分岐していてもよい。Xは、−H又は−SO3M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は、有機アンモニウムイオンを示す)を示す。EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示し、n及びmは、繰り返し単位であって系全体での平均値を示す。EOとPOは、分子中に存在することを示していて順序は関係ない。)
【0064】
具体的に、アセチレングリコール系界面活性剤の好ましい例としては、次の一般式で表される化合物、例えば、サーフィノールTG、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465(以上いずれもエアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0065】
【化1】
【0066】
上記式中、Rl、R2、R3及びR4は、それぞれ独立してアルキル基を示し、nとmとの和は0〜30である。
【0067】
また、アセチレンアルコール系界面活性剤としては、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、及び/又は前記2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールにエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基が平均で30個以下付加したものが好ましいが、これに限定するものではない。このようなアセチレンアルコール系界面活性剤の好ましい例としては、サーフィノール61(エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)が挙げられる。
【0068】
前述のような界面活性剤のインクに対する添加量は、0.1〜5重量%が好ましい。0.1重量%より少ないと、インクの浸透力が不足し、特にフルカラー印刷時において2色以上インクが重なったり接したりする部分で、にじみが発生する場合がある。また、前記樹脂エマルジョンの印刷媒体上での皮膜化が不充分となり、印刷画像に所望の耐摩擦性及び光沢性を付与できない場合がある。一方、5重量%より多くなると、印刷ヘッドのノズル周りを不均一に濡らし、インクの安定吐出ができにくくなる。
【0069】
本発明のインクジェット印刷用インクにおいては、浸透剤として、前記アセチレングリコール系,アセチレンアルコール系界面活性剤以外に、グリコールエーテル類を単独で、又は、上記界面活性剤と併用して使用することもできる。
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等を挙げることができる。
【0070】
また、1,2−アルキレングリコールの好ましい例としては、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールを挙げることができる。
【0071】
以上述べたグリコールエーテル類及び1,2−アルキレングリコールのインクに対する添加量は、0〜30重量%が好ましい。添加量が30重量%を超えると、印刷ヘッドのノズル周りを不均一に濡らし、安定吐出ができにくくなる。
【0072】
本発明のインクジェット印刷用インクにおいては、浸透剤として、以上述べたアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、1,2−アルキレングリコール類の他に、下記式(I)で示す構造の物質を単独で、又は前述の浸透剤と併用して含むことができる。
R−EOn−POm−X (I)
(式中、Rは、炭素数1〜12のアルキル基を示し、その構造は直鎖状であっても分岐していてもよい。Xは、−H又は−SO3M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウムイオンを示す)を示す。EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示し、n及びmは繰り返し単位であって系全体での平均値を示す。EOとPOは分子中に存在することを示していて順序は関係ない。)
【0073】
本発明のインクジェット印刷用インクにおいては、前記式(I)に示すRの炭素数が4〜10のアルキル基であることが好ましい。Rの炭素数が3以下では浸透性を向上させる効果が低下する。具体的には、前記式(I)に示す物質において、Rは、炭素数C4(ブチル基)、C5(ペンチル基)、C6(ヘキシル基)、C7(ヘプチル基)、C8(オクチル基)、C9(ノニル基)、又はC10(デシル基)であることが好ましい。RがC3(プロピル基)以下では浸透性を向上させる効果が低下する。より好ましい形態によれば炭素数が4〜8であり、さらに好ましくは炭素数が4〜6である。また、Rの構造は直鎖状のものでも分岐構造をしたものでもよいが、同じ炭素数で比較した場合、分岐構造をしたもののほうが浸透性を向上させる効果が高いため、好ましい。
【0074】
また、前記式(I)に示す構造の物質において、Xが−SO3Mである(Mは、対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウムイオンを示す)ときのアルカリ金属としては、Li、Na、Kが挙げられ、また有機アンモニウムとしては、例えば、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムを指し、具体的には、モノメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、モノイソプロパノールアンモニウム、トリプロパノールアンモニウム、N−イソブチルアルコールアンモニウム、N,N−ジメチルエタノールアンモニウム、N,N−ジエチルエタノールアンモニウム等を挙げることができる。また、Xが水素の場合は、RやPOの分子量がEOと比較して大きいと、前記式(I)で示す構造の物質全体の疎水性が増すため、水への溶解性が低下する傾向にある。一方で、Xが−SO3Mである場合には、水への溶解性が得られやすい。
【0075】
また、本発明のインクジェット印刷用インクにおいては、前記式(I)で示す構造の物質は、nが0〜10の範囲であり、mが1〜5の範囲であることが好ましい。
【0076】
また、前記式(I)に示す構造の物質の重量平均分子量は2,000以下が好ましい。重量平均分子量が2,000を超えると、浸透性を向上させる効果が低下する。より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは500以下である。
【0077】
以上述べた前記式(I)に示す構造の物質のインクに対する添加量は、0〜15重量%が好ましい。添加量が15重量%を超えると、印刷ヘッドのノズル周りを不均一に濡らし、安定吐出ができにくくなる。
【0078】
本発明で用いるインクにおいては、前記の浸透剤を、1種で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0079】
以上述べた浸透剤をインク中に含むことにより、印刷媒体種によらずにインクの良好な浸透性を示し、更に前述した樹脂エマルジョンに対して良好な親和性を示す。その為、特にフルカラー印刷時においても、にじみの少ない、耐摩擦性・光沢性に優れた、鮮明な印刷画像が実現できる。
【0080】
<その他の添加剤>
本発明のインクジェット印刷用インクにおいては、前記浸透剤の助剤として、インクの浸透性を制御し、更にノズルの耐目詰まり性、インクの保湿性、あるいは浸透剤の溶解性を向上する目的で、他のアニオン性又はノニオン性の界面活性剤、並びに、高沸点低揮発性の多価アルコール類、あるいはそれらのモノエーテル化物、ジエーテル化物、若しくはエステル化物等の親水性高沸点低揮発性溶媒等を、1種で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0081】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、フッ素系共重合物、シリコーン系共重合物、アクリル酸共重合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル型、ポリエチレンオキサイド縮合型ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
アニオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、高級アルキルシカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸の塩、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフテン酸塩等、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、モノグリサルフェート、アルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。前記の塩は、例えば、ナトリウム、カリウム又はリチウムの塩である。
【0083】
高沸点低揮発性の多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、若しくはポリプロピレングリコールや1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール類等を用いることができ、またそれらのモノエーテル化物、ジエーテル化物、若しくはエステル化物等を用いることができ、更に、その他にも含窒素有機溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、若しくはトリエタノールアミン等、含硫黄有機溶剤として2,2'−チオジエタノール等の親水性高沸点低揮発性溶媒を用いることもできる。
【0084】
また、本発明のインクジェット印刷用インクにおいては、主溶媒である水に加えて、乾燥性の向上を目的として、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、若しくはブタノール等の高揮発性の一価アルコール類の少量を含有することができる。
【0085】
また、本発明のインクジェット印刷用インクにおいては、インクを最適なpH値に調節するために、pH緩衝液を使用することができる。pH緩衝液としては、例えば、フタル酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩等を挙げることができる。pH緩衝液の含有量は、ヘッド部材の耐久性とインクの安定性の観点から、インクのpH値が約7〜10になる量であることが好ましい。
【0086】
また、本発明のインクジェット印刷用インクは、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、防カビ剤、防腐剤、又は防錆剤として、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、若しくは3,4−イソチアゾリン−3−オン等を含むことができる。更に、ノズル乾燥防止の目的で、尿素、チオ尿素、及び/又はエチレン尿素等を含むこともできる。
【0087】
<インクの諸物性値>
本発明のインクジェット印刷用インクの諸物性は適宜制御することができるが、好ましい態様によれば、インクの粘度は10mPa・s以下(20℃)であるのが好ましく、より好ましくは5mPa・s以下(20℃)である。この粘度範囲のインクは、印刷ヘッドから安定して吐出することができる。また、インクの表面張力も適宜制御することができるが、25〜50mN/m(20℃)であるのが好ましく、より好ましくは30〜40mN/m(20℃)である。この表面張力範囲であれば、インク(特に液性成分)の印刷媒体に対する適度な浸透速度が、印刷媒体種によらずに得られる。その為、特にフルカラー印刷時においてにじみの少ない印刷画像が得られる。また、耐摩擦性や光沢性に優れた、鮮明な印刷画像が実現できる。
【0088】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。また、以下の実施例の説明において、"硫黄含有分散性付与基を表面に有する顔料粒子"を単に"表面処理顔料"と称する。更に、以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断らない限り、重量による。
ここで、以下の実施例で用いる"樹脂エマルジョン1〜6"を、その作製例について、まとめて説明する。
【0089】
<樹脂エマルジョン1の作製>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム4gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら、内温を70℃に保持し、重合開始剤として過硫酸カリウム2gを添加し溶解した。次いで、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3g、スチレン435g、ブチルアクリレート475g、及び、2−アクリロイルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸30g、ジエチレングリコールジメタクリレート4gを攪拌下に加えて調製した乳化物を、反応容器内に4時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。
得られた樹脂エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウムとを添加して「固形分35重量%,pH8」に調製して、0.4μmフィルターにて濾過した。
以上の操作で得た樹脂エマルジョン1の最低成膜温度は、20℃であった。
【0090】
<樹脂エマルジョン2の作製>
スチレンを545g、ブチルアクリレートを340gとした以外は、前記樹脂エマルジョン1の作製と同様な組成および方法にて、固形分35重量%、pH8の樹脂エマルジョン2を得た。
以上の操作で得た樹脂エマルジョン2の最低造膜温度は30℃であった。
【0091】
<樹脂エマルジョン3の作製>
スチレンを350g、ブチルアクリレートを580gとした以外は、前記樹脂エマルジョン1の作製と同様な組成および方法にて、固形分35重量%、pH8の樹脂エマルジョン3を得た。
以上の操作で得た樹脂エマルジョン3の最低造膜温度は10℃であった。
【0092】
<樹脂エマルジョン4の作製>
ガラス製反応容器にジオキサン100gを入れ、これに無水硫酸11.8gを内温を25℃に保ちながら添加し、2時間攪拌して、無水硫酸−ジオキサン錯体を得た。次いで、スチレン/イソプレン/スチレン3元ブロック共重合体(10/80/10重量比、重量平均分子量=100,000)100gのTHF溶液(濃度=15%)中に上記で得られた錯体全量を、内温を25℃に保ちながら添加し、さらに2時間攪拌を続けた。
水1,200g、水酸化ナトリウム7.1g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリム1gをフラスコに入れ、内温を40℃に保った。この中に、前記の溶液全量を、40℃に内温を保ちつつ1時間で滴下した。滴下後、40℃で2時間攪拌した後、減圧蒸留により、水を残しつつ溶剤を除去し、濃度15%のスルホン化ポリマー乳化物(樹脂エマルジョン4)を得た。この乳化物の粒径は30nmであった。また、この樹脂エマルジョン4の最低造膜温度は20℃であった。
【0093】
<樹脂エマルジョン5の作製>
ガラス製反応容器に1,2−ジクロロエタン100gを入れ、これに無水硫酸11.8gを内温を25℃に保ちながら添加し、無水硫酸の1,2−ジクロロエタン溶液を得た。次いで、ブタジエン/スチレン/ブタジエン共重合体(30/40/30、重量比、重量平均分子量=50,000)のジエンユニットの水素添加物(水添率99%)100gの1,2−ジクロロエタン溶液(濃度=15%)中に上記で得られた無水硫酸溶液全量を、内温を25℃に保ちながら、1時間かけて添加し、さらに2時間攪拌を続けた。攪拌後、1,2−ジクロロエタンを減圧下で500g程度除去した後、THF500gを添加した。
水1,200g、水酸化ナトリウム7.1g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gをフラスコに入れ、内温を40℃に保った。この中に、前記の溶液全量を、40℃に内温を保ちつつ1時間で滴下した。滴下後、40℃で2時間攪拌した後、減圧蒸留により、水を残しつつ溶剤を除去し、濃度15%のスルホン化ポリマー乳化物(樹脂エマルジョン5)を得た。この乳化物の粒径は40nmであった。また、この樹脂エマルジョン5の最低造膜温度は30℃であった。
【0094】
<樹脂エマルジョン6の作製>
ガラス製反応容器にジオキサン200gを入れ、これに無水硫酸23.6gを、内温を25℃に保ちながら添加し、2時間攪拌して、無水硫酸−ジオキサン錯体を得た。次いで、スチレン/イソプレン/スチレン3元ブロック共重合体(10/80/10重量比、重量平均分子量=100,000)100gのTHF溶液(濃度=15%)中に上記で得られた錯体全量を、内温を25℃に保ちながら添加し、さらに2時間攪拌を続けた。
水1,200g、水酸化ナトリウム7.1g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gをフラスコに入れ、内温を40℃に保った。この中に、前記の溶液全量を、40℃に内温を保ちつつ1時間で滴下した。滴下後、40℃で2時間攪拌した後、減圧蒸留により、水を残しつつ溶剤を除去し、濃度15%のスルホン化ポリマー乳化物(樹脂エマルジョン6)を得た。この乳化物の粒径は40nmであった。また、この樹脂エマルジョン6の最低造膜温度は15℃であった。
【0095】
(実施例1:実施例1−1,実施例1−2)
(1) 表面処理顔料の作製:カーボンブラック
カーボンブラック(三菱化学社製「MA−7」)15部をスルホラン200部中に混合し、アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン社製)で、ビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で1時間分散し、分散した顔料ペーストと溶剤の混合液をエバポレーターに移し、30mmHg以下に減圧しながら、120℃に加熱して、系内に含まれる水分をできるだけ留去したのち、150℃に温度制御した。次いで、三酸化硫黄25部を加えて6時間反応させ、反応終了後、過剰なスルホランで数回洗浄した後、水中に注ぎ濾過することで表面処理カーボンブラック分散液を得た。
【0096】
(2) 分散性付与基の導入量の定量
前記実施例1(1)で得た表面処理カーボンブラック分散液を酸素フラスコ燃焼法で処理し、0.3%過酸化水素水溶液に吸収させた後、イオンクロマトグラフ法(ダイオネクス社;2000i)で硫酸イオン(2価)を定量し、スルホン酸基に換算したところ、分散性付与基の導入量は顔料1g当たり、50×10-6当量であった。
【0097】
(3) インクジェット用インクの調製
本実施例1では、前記実施例1(1)で得たカーボンブラックと、樹脂エマルジョンとして前記樹脂エマルジョン1(実施例1−1)または前記樹脂エマルジョン4(実施例1−2)と、浸透剤としてアセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール465(エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)とグリコールエーテル類であるトリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0098】
実施例1(1)の表面処理カーボンブラック顔料(固形分として)・・8.0%
樹脂エマルジョン1または4(固形分として)・・・・・・・・・・・・・・・・4.0%
サーフィノール465・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.0%
トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル・・・・・・・・・・10.0%
グリセリン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15.0%
1,5−ペンタンジオール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.5%
トリエタノールアミン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0%
イオン交換水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・残量
調製操作は以下のとおりに行った。
【0099】
前記実施例1(1)で得た表面処理カーボンブラック顔料にイオン交換水とトリエタノールアミンを加えて攪拌混合し、表面処理カーボンブラック顔料液を調製した。その後、別の容器にて混合した樹脂エマルジョン1または4、サーフィノール465、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、グリセリン、及び1,5−ペンタンジオールの混合液を、先に調製した表面処理カーボンブラック顔料液に攪拌しながら徐々に加えることにより、本実施例1(実施例1−1,実施例1−2)のブラックインクを得た。
【0100】
(実施例2:実施例2−1,実施例2−2)
本実施例2では、樹脂エマルジョンとして、樹脂エマルジョン1または4の代わりに前記樹脂エマルジョン2(実施例2−1)または前記樹脂エマルジョン5(実施例2−2)を用いた以外は、前記実施例1と同様な組成および方法で、本実施例2(実施例2−1,実施例2−2)のブラックインクを得た。
【0101】
(実施例3:実施例3−1,実施例3−2)
本実施例3では、樹脂エマルジョンとして、樹脂エマルジョン1または4の代わりに前記樹脂エマルジョン3(実施例3−1)または前記樹脂エマルジョン6(実施例3−2)を用い、サーフィノール465の代わりに前記式(I)に示す物質(1)を用いた以外は、前記実施例1と同様な組成および方法で、本実施例3(実施例3−1,実施例3−2)のブラックインクを得た。なお、式(I)に示す物質(1)は、Rがネオペンチル基で、Xが水素であり、nが3.0で、mが1.5である。
【0102】
(実施例4:実施例4−1,実施例4−2)
(1) 表面処理顔料の作製:C.I.ピグメントブルー15:3
フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)20部をキノリン500部と混合し、アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン社製)でビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で2時間分散し、分散した顔料ペーストと溶剤の混合液をエバポレーターに移し、30mmHg以下に減圧しながら120℃に加熱し、系内に含まれる水分をできるだけ留去した後、160℃に温度制御した。次いで、スルホン化ピリジン錯体20部を加えて8時間反応させ、反応終了後に過剰なキノリンで数回洗浄した後に水中に注ぎ、濾過することで表面処理フタロシアニンブルー顔料粒子を得た。
【0103】
(2) 分散性付与基の導入量の定量
前記実施例4(1)で調製した表面処理フタロシアニン顔料分散液を酸素フラスコ燃焼法で処理し、0.3%過酸化水素水溶液に吸収させた後、イオンクロマトグラフ法(ダイオネクス社;2000i)で硫酸イオン(2価)を定量し、スルホン酸基に換算したところ、分散性付与基の導入量は顔料1g当たり、58×10-6当量であった。
【0104】
(3) インクジェット用インクの調製
本実施例4では、前記実施例4(1)で調製した表面処理フタロシアニンブルー顔料と、樹脂エマルジョンとして前記樹脂エマルジョン1(実施例4−1)または前記樹脂エマルジョン4(実施例4−2)と、浸透剤としてアセチレングリコール類であるサーフィノール465とグリコールエーテル類であるジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルと1,2−アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0105】
調製操作は以下のとおりに行った。
【0106】
前記実施例4(1)で得た表面処理フタロシアニンブルー顔料にイオン交換水とモノエタノールアミンを加えて攪拌混合し、表面処理フタロシアニンブルー顔料液を調製した。その後、別の容器にて混合した樹脂エマルジョン1または4、サーフィノール465、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、及びヘキサクロロフェンの混合液を、先に調製した表面処理フタロシアニンブルー顔料液に攪拌しながら徐々に加えることにより、本実施例4(実施例4−1,実施例4−2)のシアンインクを得た。
【0107】
(実施例5:実施例5−1,実施例5−2)
本実施例5では、樹脂エマルジョンとして、樹脂エマルジョン1または4の代わりに前記樹脂エマルジョン3(実施例5−1)または前記樹脂エマルジョン6(実施例5−2)を用いた以外は、前記実施例4と同様な組成および方法で、本実施例5(実施例5−1,実施例5−2)のシアンインクを得た。
【0108】
(実施例6:実施例6−1,実施例6−2)
(1) 表面処理顔料の作製:C.I.ピグメントイエロー110
イソインドリノン顔料(C.I.ピグメンイエロー110)20部をキノリン500部と混合し、アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン社製)でビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で2時間分散させ、分散終了した顔料ペーストと溶剤の混合液をエバポレーターに移し、30mmHg以下に減圧しながら、120℃に加熱し系内に含まれる水分をできるだけ留去した後、160℃に温度制御した。次いで、反応剤としてスルホン化ピリジン錯体20部を加えて4時間反応させ、反応終了後に過剰なキノリンで数回洗浄してから水中に注ぎ、濾過することにより表面処理イソインドリノン顔料粒子を得た。
【0109】
(2) 分散性付与基の導入量の定量
前記実施例6(1)で調製した表面処理イソインドリノン顔料分散液を酸素フラスコ燃焼法で処理し、0.3%過酸化水素水溶液に吸収させた後、イオンクロマトグラフ法(ダイオネクス社;2000i)で硫酸イオン(2価)を定量し、スルホン酸基に換算したところ、分散性付与基の導入量は顔料1g当たり、49×10-6当量であった。
【0110】
(3) インクジェット用インクの調製
本実施例6では、前記実施例6(1)で調製した表面処理イソインドリノン顔料粒子と、樹脂エマルジョンとして前記樹脂エマルジョン1(実施例6−1)または前記樹脂エマルジョン4(実施例6−2)と、浸透剤としてグリコールエーテル類であるジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0111】
実施例6(1)の表面処理イソインドリノン顔料(固形分として)・・4.5%
樹脂エマルジョン1または4(固形分として)・・・・・・・・・・・・・・・・9.0%
ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル・・・・・・・・・・・・10.0%
グリセリン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12.0%
ポリオキシエチレン(EO=8)ノニルフェニルエーテル・・・・・・0.2%
1,5−ペンタンジオール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0%
プロパノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.0%
アンモニア(28%水溶液)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.3%
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.0%
イオン交換水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・残量
調製操作は以下のとおりに行った。
【0112】
前記実施例6(1)で調製した表面処理イソインドリノン顔料にイオン交換水とアンモニアを加えて攪拌混合し、表面処理イソインドリノン顔料液を調製した。その後、別の容器にて混合した樹脂エマルジョン1または4、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、グリセリン、ポリオキシエチレン(EO=8)ノニルフェニルエーテル、1,5−ペンタンジオール、プロパノール、及び尿素の混合液を、先に調製した表面処理イソインドリノン顔料液に攪拌しながら徐々に加えることにより、本実施例6(実施例6−1,実施例6−2)のイエローインクを得た。
【0113】
(実施例7:実施例7−1,実施例7−2)
本実施例7では、樹脂エマルジョンとして、樹脂エマルジョン1または4の代わりに前記樹脂エマルジョン3(実施例7−1)または前記樹脂エマルジョン6(実施例7−2)を用いた以外は、前記実施例6と同様な組成および方法で、本実施例7(実施例7−1,実施例7−2)のイエローインクを得た。
【0114】
(実施例8:実施例8−1,実施例8−2)
(1) 表面処理顔料の作製:C.I.ピグメントレッド122
ジメチルキナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)20部をキノリン500部と混合し、アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン社製)でビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で2時間分散させ、分散終了した顔料ペーストと溶剤の混合液をエバポレーターに移し、30mmHg以下に減圧しながら、120℃に加熱し系内に含まれる水分をできるだけ留去した後、160℃に温度制御した。次いで、反応剤としてスルホン化ピリジン錯体20部を加えて4時間反応させ、反応終了後に過剰なキノリンで数回洗浄してから水中に注ぎ、濾過することにより表面処理ジメチルキナクリドン顔料粒子を得た。本実施例8(1)は、前記実施例6(1)のイソインドリノン顔料をジメチルキナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)に代えたこと以外は、前記実施例6(1)と同様な処理方法である。
【0115】
(2) 分散性付与基の導入量の定量
前記実施例8(1)で調製した表面処理ジメチルキナクリドン顔料分散液を酸素フラスコ燃焼法で処理し、0.3%過酸化水素水溶液に吸収させた後、イオンクロマトグラフ法(ダイオネクス社;2000i)で硫酸イオン(2価)を定量し、スルホン酸基に換算したところ、分散性付与基の導入量は顔料1g当たり、35×10-6当量であった。
【0116】
(3) インクジェット用インクの調製
本実施例8では、前記実施例8(1)で調製した表面処理ジメチルキナクリドン顔料と、樹脂エマルジョンとして前記樹脂エマルジョン1(実施例8−1)または前記樹脂エマルジョン4(実施例8−2)と、浸透剤としてアセチレングリコール類であるサーフィノール465を使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0117】
調製操作は以下のとおりに行った。
【0118】
前記実施例8(1)で調製した表面処理ジメチルキナクリドン顔料にイオン交換水とアンモニアを加えて攪拌混合し、表面処理ジメチルキナクリドン顔料液を調製した。その後、別の容器にて混合した樹脂エマルジョン1または4、サーフィノール465、グリセリン、ポリオキシエチレン(EO=8)ノニルフェニルエーテル、1,5−ペンタンジオール、プロパノール、及び尿素の混合液を、先に調製した表面処理ジメチルキナクリドン顔料液に攪拌しながら徐々に加えることにより、本実施例8(実施例8−1,実施例8−2)のマゼンタインクを得た。
【0119】
(実施例9:実施例9−1,実施例9−2)
本実施例9では、樹脂エマルジョンとして前記樹脂エマルジョン3(実施例9−1)または前記樹脂エマルジョン6(実施例9−2)を用い、ポリオキシエチレン(EO=8)ノニルフェニルエーテルの代わりに前記式(I)に示す物質(2)を用いた以外は、前記実施例8と同様な組成および方法で、本実施例9(実施例9−1,実施例9−2)のマゼンタインクを得た。なお、式(I)に示す物質(2)は、Rがイソブチル基であり、Xが−SO3Mで、Mがカリウムイオンであり、nが3.0で、mが3.0である。
【0120】
(比較例1)
本比較例1では、樹脂エマルジョン1,4を添加しなかった以外は、前記実施例1と同様な組成および方法にて、本比較例1のブラックインクを得た。
【0121】
(比較例2)
本比較例2では、樹脂エマルジョンとして樹脂エマルジョン1,4の代わりにジョンクリルエマルジョン780(分散性付与基:カルボキシル基、最低造膜温度:50℃以上、ジョンソンポリマー株式会社製)を用いた以外は、前記実施例1と同様な組成および方法にて、本比較例2のブラックインクを得た。
【0122】
(比較例3)
本比較例3では、特開平10−110129号公報に記載と同じ組成および方法を用いて、シアン色のインクを調製した。
インクジェット用インクの調製
具体的な組成を以下に示す。
調製操作は以下のとおりに行った。
【0123】
前記実施例4(1)で得た表面処理フタロシアニンブルー顔料にイオン交換水とジエチルアミノエタノールを加えて攪拌混合し、表面処理フタロシアニンブルー顔料液を調製した。その後、別の容器にて混合したW−251、エマルゲン420、グリセリン、エタノール、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩の混合液を、先に調製した表面処理フタロシアニンブルー顔料液に攪拌しながら徐々に加えることにより、本比較例3のシアンインクを得た。
【0124】
(実施例10:実施例10−1,実施例10−2)
本実施例10では、前記実施例1のブラックインク、前記実施例4のシアンインク、前記実施例6のイエローインク、及び実施例8のマゼンタインクを用いて、以下に述べるインクの評価と同様なプリンタを用いて、フルカラー画像を印刷した。
【0125】
(比較例4)
本比較例4では、前記実施例1のブラックインク、前記比較例3のシアンインク、前記実施例6のイエローインク、及び実施例8のマゼンタインクを用いて、以下に述べるインクの評価と同様なプリンタを用いて、フルカラー画像を印刷した。
【0126】
<インクの評価>
前記実施例1〜9及び前記比較例1〜3で調製したインクジェット用インクを用い、以下に示した評価を行った。
【0127】
(印刷画像の光沢性)
インクジェット印刷方式のプリンタとして、MJ−5000C(セイコーエプソン社製)に、予めインクパックに脱気充填した前記実施例1〜9及び前記比較例1〜3で調製したインクを各々別途に充填し、専用光沢紙(商品名、セイコーエプソン株式会社製)と専用光沢フィルム(商品名、セイコーエプソン株式会社製)に印刷を行い、得られた印刷画像を用いて、目視にて光沢性の評価を行った。前記実施例10及び比較例4は、前述した4色のインクセットを用いて、フルカラー画像を印刷し、得られた印刷画像を用いて評価した。判断基準は、以下に示す通りである。評価結果は表1に示した。
【0128】
評価A:画像の全領域において一様な光沢感。
評価B:単色、あるいは2色以上インクが重なるフルベタ部分で一部ざらつきがある。
評価C:単色、あるいは2色以上インクが重なる濃色部で少しざらつきがある。
評価D:淡色画像部でもざらつきが目立つ。
【0129】
(印刷画像の耐摩擦性)
上述した印刷画像の光沢性評価と同様なプリンタと印刷媒体を用いて、前記実施例1〜9及び前記比較例1〜3で調製したインクを印刷した。前記実施例10及び比較例4は、前述した4色のインクセットを用いて、フルカラー画像を印刷し、得られた印刷画像を用いて評価した。得られた印刷画像を印刷後室温にて10分間放置して、耐摩擦性の評価を行った。評価方法は、印刷画像を指で擦った時の画像の乱れを、目視で確認することにより行った。判断基準は、以下に示す通りである。評価結果は表1に示した。
【0130】
評価A:乱れが認められない。
評価B:単色、あるいは2色以上インクが重なるフルベタ部分で乱れる部分がある。
評価C:単色或いは2色以上インクが重なる濃色部で乱れる部分がある。
評価D:淡色部でも乱れが目立つ。
【0131】
(印刷画像のにじみ)
上述した印刷画像の光沢性評価と同様なプリンタと印刷媒体を用いて、前記実施例1〜9及び前記比較例1〜3で調製したインクを印刷した。前記実施例10及び比較例4は、前述した4色のインクセットを用いて、フルカラー画像を印刷し、得られた印刷画像を用いて評価した。得られた印刷画像のにじみを、目視にて評価した。判断基準は、以下に示す通りである。評価結果は表1に示した。
【0132】
評価A:にじみが認められない。
評価B:単色、あるいは2色以上インクが重なったり接したりするフルベタ部でにじんでいる部分がある。
評価C:単色、あるいは2色以上インクが重なったり接したりする濃色部でにじんでいる部分がある。
評価D:淡色部でもにじみが目立つ。
【0133】
(インクの保存安定性)
前記実施例1−2〜9−2及び前記比較例1〜3で調製したインクジェット用インクをそれぞれ各々ガラス製のサンプルビンに入れ、70℃で2週間放置して、放置前後におけるインクの発生異物と物性値(粘度,平均粒子径,表面張力)について調べた。異物の評価は25μm綾畳みフィルターでインクを濾過後、顕微鏡によりフィルター上に残っている異物量を観察することで行い、各物性値は前述の装置及び測定方法で測定した。判断基準は、以下に示す通りである。評価結果は表1に示した。
【0134】
評価A:異物の発生、物性値変化共に殆ど無し。良好な保存安定性。
評価B:異物発生、もしくは物性値変化があるが、共に変化はわずかであり、実用上問題ないレベルである。
評価C:異物発生、もしくは物性値の変化があり、少なくともそのいずれかが実用上問題のあるレベルである。
【0135】
【表1】
【0136】
表1に示したように、実施例1〜9のインク及び実施例10のフルカラー印刷においては、印刷媒体種によらずに印刷画像の光沢性及び耐摩擦性が良好な、にじみのない画像が得られた。それに対して、比較例1では、画像にざらつきが発生し、耐摩擦性においても画像の乱れが発生した。また、比較例2では、耐摩擦性において画像の乱れが発生した。また、比較例3では、画像にざらつきが発生し、耐摩擦性においても画像の乱れが発生した。更に、比較例4のフルカラー印刷では、シアンインクが印刷された画像部分で、画像にざらつきとにじみが発生し、耐摩擦性においても画像の乱れが発生した。
また、実施例1−1〜9−2のインクでは、異物の発生や物性値の変化が殆どなく、良好なインク保存安定性が得られた。
【0137】
【発明の効果】
本発明によれば、硫黄含有分散性付与基を表面に有する顔料粒子、グリコールエーテル類やアセチレングリコール系界面活性剤のような浸透剤、及び硫黄含有分散性付与基を表面に有する樹脂エマルジョンを添加したインクを用いて、印刷媒体上に画像を印刷することにより、光沢紙や光沢フィルムシート等の特殊印刷媒体においても、従来の技術が抱える課題である光沢性や耐摩擦性の欠如が解決でき、にじみの少ない、鮮明な画像が得られる。
Claims (10)
- 少なくとも、硫黄含有分散性付与基を表面に有する顔料粒子、浸透剤、硫黄含有分散性付与基を表面に有する樹脂エマルジョン及び水を含む、インクジェット印刷用インク。
- 前記樹脂エマルジョンを構成する樹脂の分子骨格が、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体である、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
- 前記樹脂エマルジョンを構成する樹脂の分子骨格が、ジエン系(共)重合体である、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
- 前記樹脂エマルジョンの粒子表面に、−SO3M及び/又は−RSO2M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は、有機アンモニウムイオンを示す)が化学結合しており、水に分散可能なものとされたものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
- 前記樹脂エマルジョンの最低造膜温度が、30℃以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
- 前記顔料が、カーボンブラック顔料及び/又は有機顔料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
- 前記顔料粒子が、硫黄を含む処理剤によりその粒子表面に−SO3M及び/又は−RSO2M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は、有機アンモニウムイオンを示す)が化学結合するように表面処理され、水に分散及び/又は溶解が可能なものとされたものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
- 前記浸透剤が、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、1,2−アルキレングリコール、及び下記式(I)で示す構造の物質からなる群から選ばれた一つ又は二つ以上の物質である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
R−EOn−POm−X (I)
(式中Rは炭素数1〜12のアルキル基を示し、その構造は直鎖状であっても分岐していてもよい。Xは、−H又は−SO3M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は、有機アンモニウムイオンを示す)を示す。EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示し、n及びmは、繰り返し単位であって系全体での平均値を示す。EOとPOは、分子中に存在することを示していて順序は関係ない。) - 前記式(I)に示す物質の重量平均分子量が、2,000以下である、請求項8に記載のインクジェット印刷用インク。
- 前記式(I)に示すRが、炭素数4〜10のアルキル基である、請求項8に記載のインクジェット印刷用インク。
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