JP3915602B2 - 騒音制御装置及び空調機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、車載空調機の吹き出し口で生じ、車室内に広がる騒音を低減することができる騒音制御装置、及び空調機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、空調機等の送風ダクト内で発生する風切り音等の騒音を低減するために、いわゆる能動型の騒音制御が行われてきた。
この騒音制御では、送風ダクトの上流に設けたマイクロフォンにより騒音を集音し、その集音した音に基づいて、騒音を打ち消すことができる制御音を計算する。そして、マイクロフォンで集音された騒音が送風ダクトの下流に設けた制御音源に届くタイミングで、制御音源から制御音を発生させ、騒音と制御音とを相殺させることにより、騒音を低減するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような能動型騒音制御では、送風ダクト内部のような1次元と考えられる音場ではある程度の騒音制御効果が得られるが、広い範囲で充分に騒音を打ち消すことができなかった。
【0004】
例えば、車載用空調機において、吹き出し口から吹き出す空気が風向調整用の羽根に当たって発生する風切り音が、3次元の車室内に放射される場合には、これを制御音により充分に打ち消すことができなかった。
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、広範囲に渡って騒音を打ち消すことができる騒音制御装置、及び空調機を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明では、例えば、図3に示す様に、制御音源(7)の正面方向(図3において、制御音源(7)の上方向)が、騒音の発生源(15)を向く方向であるので、制御音源(7)から正面方向に放出された制御音は、騒音の発生源(15)に至り、そこから、制御音と同様に広がる。
【0012】
つまり、本発明では、制御音は、騒音の発生源(15)を経て、騒音と同様に広がるので、制御音の波面と、騒音の波面とは、例えば、3次元の広い領域に渡って一致する。
従って、制御音の波面と騒音の波面とが一致する領域において制御音と騒音とが打ち消し合うように、制御音の特性(周波数、位相、振幅等)を設定すれば、その領域において、騒音を低減することができる。そして、その領域を、騒音制御位置(図3における乗員の頭部の位置)を含むように設定することにより、騒音制御位置における騒音を低減することができる。
【0013】
また、本発明では、3次元の広い領域に渡って騒音を低減することができるので、例えば、図14に示す様に、制御音源(7)から騒音の発生源(15)に至る経路の延長線上にない位置(例えば、図14における乗員の頭部)においても、騒音を低減することができる。
【0015】
また、本発明では、制御音源を送風管の内部に配置することにより、制御音源と、送風管の出口に位置する騒音の発生源と、その出口の外側に位置する騒音制御位置とを、同一直線上にあるようにすることができる。
【0016】
そのことにより、制御音の波面と、騒音の波面とを、騒音制御位置を含む広い領域で一致させ、その領域で騒音を低減することができる。
・前記正面方向とは、例えば、制御音源から放出される制御音の音量が最大である方向をいう。
(2)請求項2の発明では、制御音源が、送風管の内壁に設けられているので、制御音源が、送風管内の空気の流れを妨げることがない。また、制御音源により乱気流が発生し、騒音の原因となるようなことがない。
【0020】
(3)請求項3の発明は、騒音として、送風管風の出口に設けられた風向調整用の羽根により生じる切り音を例示している。
(4)請求項4の発明では、基準音響発生手段により、例えば、騒音と同様の原理により発生した基準音響に基づいて制御音を生成するので、制御音の特性(例えば、周波数や振幅等)を、騒音の特性と一致させることができる。
【0021】
そのため、本発明では、制御音が騒音をよく相殺するので、広範囲に渡って、効率的に騒音を打ち消すことができる。
・前記基準音響受音手段としては、例えば、基準音響発生手段の近傍に設けたマイクロフォンがある。
(5)請求項5の発明では、基準音響発生手段を用いることにより、制御音の特性(例えば、周波数や振幅等)を、騒音の特性と一致させることができる。
【0022】
そのため、本発明では、制御音が騒音をよく相殺するので、広範囲に渡って、効率的に騒音を打ち消すことができる。
(6)請求項6の発明は、制御音生成手段を例示している。この制御音生成手段としては、例えば、基準音響を、周波数ごとに特有のフィルタ係数を有するフィルタを通過させるものが挙げられる。
(7)請求項7の発明では、騒音受音手段により受音した騒音に基づき、その騒音が低減するようにフィルタ処理の条件を設定することができるので、騒音を低減する効果が一層高い。
【0023】
また、騒音が変化した場合でも、その変化に応じて、フィルタ処理の条件を変更することにより制御音を変化させ、常に騒音を低減することができる。
(8)請求項8の発明では、騒音発生条件に基づいて、フィルタ処理条件記憶手段に記憶されたフィルタ処理条件の中から、例えば、騒音を最も低減できるフィルタ処理条件を選択し、制御音を生成する。そのため、本発明の騒音制御装置は、騒音を低減する効果が高い。
【0024】
また、騒音発生条件が変化した場合でも、その変化に応じて、フィルタ処理条件を変えることにより制御音を変化させ、常に騒音を低減することができる。
・前記フィルタ処理条件選択手段は、例えば、騒音発生条件検知手段が検知した騒音発生条件に対し、予め対応づけられていたフィルタ処理条件を呼び出すものが挙げられる。
(9)請求項9の発明では、基準音響発生手段において発生する基準音響は、送風管において生じる騒音に対応する音である。例えば、送風管の出口で生じる音が風切り音である場合は、基準音響も風切り音である。
【0025】
つまり、本発明の騒音制御装置では、騒音に対応する音に基づいて制御音を生成しているので、制御音と騒音とが打ち消しあう効果が高く、騒音を一層低減することができる。
(10)請求項10の発明では、風向調整用の羽根により生じる風切り音に影響を与える条件である、風向調整用の羽根の向き、送風管の風量、送風管の出口における気圧、気温、湿度等の騒音発生条件に基づき、フィルタ処理条件を選択し、制御音を生成する。
【0026】
そのため、本発明の騒音処理装置は、上記騒音発生条件に合わせて、風向調整用の羽根により生じる風切り音を、最も低減できる制御音を生成することができる。
また、本発明では、上記騒音発生条件の変化に伴って、送風管の出口に設けられた風向調整用の羽根により生じる風切り音(騒音)が変化する場合でも、その変化に応じて、フィルタ処理条件を更新して制御音を変化させ、常に、騒音を低減することができる。
(11)請求項11の発明は、車載機器が発生する騒音(例えばカーエアコンの送風管出口で発生する風切り音)を制御するための騒音制御装置である。
【0027】
本発明において、騒音制御位置は、車両の乗員の頭部が通常ある位置であるので、乗員の耳に届く騒音を低減することができる。
また、本発明の騒音制御装置では、騒音制御位置を含む水平面内で広く騒音を低減することができるので、乗員の頭部の位置が水平方向に移動した場合でも、乗員の耳に届く騒音は、常に低減されている。
【0028】
尚、乗員の頭部の位置は、通常、上下方向には大きく動くことがないので、騒音が低減される領域が、例えば、上下方向には狭い場合であっても、乗員の耳に、制御されていない騒音が届くことはない。
(12)請求項12の発明は、前記請求項1〜11と同様の効果を奏する。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の騒音制御装置、及び空調機の実施の形態の例(実施例)を説明する。
(実施例1)
本実施例1の騒音制御装置は、車載エアコン(空調機)の吹き出し口において発生する風切り音を低減するために設けられる騒音制御装置である。
【0030】
a)まず、本実施例1の騒音制御装置1の構成を図1及び図2を用いて説明する。
本実施例1の騒音制御装置1は、図1に示す様に、ダッシュボード3内に設けられたエアコンダクト5の内壁に取り付けられた制御音源7と、図示しない電源、制御部等から構成されている。尚、図1は、車室の前部を上方から見た断面図である。
【0031】
上記エアコンダクト5は、略L字型の経路を有しており、ダッシュボードの前面に開口した吹き出し口9と、吹き出し口9から奥側(図1における下側)に所定の距離だけ伸びるダクト下流部11と、ダクト下流部11の奥から水平方向に伸びるダクト上流部13と、から構成されている。尚、このダクト上流部13は、図示しないエアコン本体部に連通している。
【0032】
また、吹き出し口9には、図2に示す様に、エアコンダクト5から吹き出す風の向きを調整するための吹き出し口フィン15が設けられている。尚、図2は、吹き出し口9付近の側断面図である。
この吹き出し口フィン15は、板状部材である羽根15aを3枚備えており、それら3枚の羽根15aは、一定の間隔を置きながら、縦方向(図1において紙面に鉛直な方向)に配列されている。
【0033】
また、それぞれの羽根15aは、吹き出し口9を横断する回動軸15bに取り付けられている。従って、図示しない駆動装置によって回動軸15bを回動させることにより、羽根15aの角度を変化させることができる。
上記制御音源7は、ダクト下流部11の最奥部であって、吹き出し口9の方向に面した対向面17に、その正面方向(制御音の音量が最大である方向)が吹き出し口9に向くように取り付けられている。即ち、制御音源7の正面方向と、制御音源7から吹き出し口9へ至る経路とは、平行である。この制御音源7が放出する制御音の振幅、波長等は、例えば、吹き出し口フィン15において生じる風切り音を最も効果的に消去できるように、実験的に定め、騒音制御装置1の製造時に設定しておくことができる。
【0034】
また、制御音源7と吹き出し口9との位置関係は、制御音源7から吹き出し口9に至る直線の延長線上に、車両の乗員の頭部付近(騒音制御位置)が位置するように設定されている。
b)次に、本実施例1の騒音制御装置1の作用・効果を図3を用いて説明する。
【0035】
エアコンダクト5から送り出される空気が、吹き出し口9を通過する際に、吹き出し口フィン15(騒音発生源)に当たって風切り音(騒音)が発生し、その風切り音は、図3に示す様に、吹き出し口フィン15から、乗員の頭部付近に向けて広がる。
【0036】
一方、制御音源7から、その正面方向に放出された制御音は、ダクト下流部11を経て吹き出し口フィン15に至り、その後は、風切り音と同様に、車室内において広がっていく。
つまり、図3に示す様に、制御音と、騒音とは、ともに、吹き出し口フィン15から車室内に広がっていく音響であるので、制御音の波面と、騒音の波面とは3次元の広い領域に渡って一致する。
【0037】
従って、制御音の波面と騒音の波面とが一致する領域において制御音と騒音とが打ち消し合うように、制御音の特性(周波数、位相、振幅等)を設定すれば、その領域(騒音制御位置を含む)において、騒音を低減することができる。
また、本実施例1の騒音制御装置1では、制御音源7から乗員の頭部付近(騒音制御位置)に至る経路(制御音経路)と、吹き出し口フィン15と乗員の頭部付近(騒音制御位置)とを結ぶ経路(騒音経路)とが、同一直線上にあることにより、制御音は、風切り音と同一の経路により、乗員の頭部付近に向かって進む波動となる。
【0038】
そのため、制御音の波面と風切り音の波面とは、図3に示す様に、乗員の頭部付近において一致する。そして、波面が一致した部分では、制御音を、風切り音と反対の位相の波形とすることにより、風切り音を打ち消すことができる。
その結果として、本実施例1の騒音制御装置1は、風切り音を、乗員の頭部付近では、一層効果的に打ち消すことができる。
【0039】
更に、本実施例1の騒音制御装置1では、制御音源7の正面方向が吹き出し口9に向いているので、制御音源7が発する音響の大部分は、吹き出し口9を経て外部に拡がり、騒音制御に用いられる。つまり、制御音源7が発生する音響は、無駄なく利用されるので、経済性に優れている。
【0040】
また、騒音制御装置1が、騒音制御に使用されない音響を発生し、それが2次的な騒音となってしまうようなことがない。
(参考例2)
a)本参考例2の騒音制御装置1の構成を図4及び図5を用いて説明する。尚、図4は、吹き出し口9周辺を、車室内から見た図であり、図5は、吹き出し口9周辺の側断面図である。
【0041】
本参考例2の騒音制御装置1では、図4及び図5に示す様に、制御音源7が吹き出し口9の上部に取り付けられている。
この制御音源7と、吹き出し口フィン15と、乗員の頭部が通常ある位置とは、同一鉛直面内にある。
【0042】
また、制御音源7と吹き出し口フィン15とを含む鉛直面に対し、制御音源7の正面方向は平行である。
尚、騒音制御装置1のその他の構成や、エアコンダクト5の構成は前記実施例1と同様である。
【0043】
b)次に、本参考例2の騒音制御装置1が奏する効果を図5を用いて説明する。
(i)本参考例2の騒音制御装置1では、上述したように、制御音源7、吹き出し口フィン15(騒音の発生源)、及び乗員の頭部の位置(騒音制御位置)とが同一鉛直面内にあり、また、制御音源7の正面方向は、制御音源7及び吹き出し口フィン15を含む鉛直面と平行である。
【0044】
そのことにより、図5に示す様に、制御音源7から、その正面方向を中心として3次元に広がる制御音の波面と、吹き出し口フィン15から、上記鉛直面に平行な方向を中心として3次元に広がる風切り音の波面とを重ね合わせた波面において、同一の位相となる面は、水平面となる。
【0045】
従って、制御音の特性(周波数、位相、振幅等)を、乗員の頭部を含む水平面において風切り音と打ち消しあうように(騒音と位相が逆となるように)設定すれば、その乗員の頭部を含む水平面において、風切り音を打ち消すことができる。
【0046】
乗員の頭部の位置は、通常、水平方向には大きく移動することがあるが、鉛直方向には殆ど移動することがないので、本実施例2の騒音制御装置1により、乗員の頭部を含む水平面において騒音を打ち消せば、乗員の頭部に至る騒音は大きく低減することができる。
【0047】
(ii)本参考例2の騒音制御装置1は、制御音源7の取り付け位置が吹き出し口9の上部であるので、その取付が容易である。
また、例えば、装置設計上の理由(例えば、送風管の形状、材質等による制約)により、エアコンダクト5の内壁に制御音源7を取り付けられない場合に、本実施例の騒音制御装置1は有効である。
(実施例3)
a)本実施例3の騒音制御装置1の構成を図6及び図7を用いて説明する。尚、前記実施例1と同様の部分は説明を省略する。
【0048】
本実施例3の騒音制御装置1は、図6に示す様に、ダクト上流部13の内壁付近に設けられたスリット19(基準音響発生手段)と、そのスリット19のやや下流に設けられたレファレンスマイク21(基準音響受音手段)とを備えている。
【0049】
上記スリット19は、図7に示す様に、3枚の仕切り板23を一定の間隔をおいて平行に配置して成るものであり、それぞれの仕切板23が、エアコンダクト5内の空気の流れと平行となるように取り付けられている。
上記レファレンスマイク21は、エアコンダクト5を流れる空気がスリット19を通過する際に発生する風切り音を受音するものである。
【0050】
また、本実施例3の騒音制御装置1は、レファレンスマイク21が受音した音響信号にフィルタ処理を行い制御音を生成するフィルタ部25(制御音生成手段)と、制御音を増幅し、制御音源7に送る増幅部27とを備えている。
上記フィルタ部25はデジタルフィルタを備えており、所定のフィルタ係数に従って、レファレンスマイク21が受音した音響信号にフィルタ処理を行い、制御音を生成する。
【0051】
b)次に、本実施例3の騒音制御装置1の作用を図8のフローチャートを用いて説明する。
ステップ100では、レファレンスマイク21が、スリット19で発生する風切り音(基準音響)を検出する。この風切り音の信号は、フィルタ部25に送られる。
【0052】
ステップ110では、フィルタ部25において、風切り音の信号にフィルタ処理を実行し、制御音の信号を生成する。
このフィルタ処理の条件は、制御音が、エアコンダクト5の吹き出し口9で発生する風切り音を最も効果的に打ち消すことができるように、騒音制御装置1の製造時に予め設定された条件である。生成した制御音の信号は、増幅部27に送られる。
【0053】
ステップ120では、制御音の信号を増幅し、制御音源7に出力する。
ステップ130では、制御音源7から制御音が出力される。
c)次に、本実施例3の騒音制御装置1の奏する効果を説明する。
▲1▼本実施例3の騒音制御装置1では、スリット19で発生する風切り音に基づいて制御音を生成する。このスリット19で発生する風切り音は、吹き出し口9で発生する騒音と同様に、エアコンダクト5で発生する風切り音である。
【0054】
従って、本実施例3の騒音制御装置1において発生する制御音は、周波数や振幅等の特性において、吹き出し口9で発生する風切り音によく対応している。そのことにより、本実施例3の騒音制御装置1は、風切り音を打ち消す効果が高い。
【0055】
▲2▼本実施例3の騒音制御装置1では、スリット19が吹き出し口9よりも上流に設けられているので、エアコンダクト5内を流れる空気の状態(流量、気圧等)が変化した場合に、スリット19で発生する風切り音の変化は、吹き出し口9で発生する風切り音の変化よりも時間的に先行する。
【0056】
そのことにより、エアコンダクト5を流れる空気の状態変化に伴って、吹き出し口9で発生する風切り音が変化する場合でも、(それよりも時間的に先行する)スリット19における風切り音の変化に基づいて、変化後の風切り音に対応するように、予め制御音を変化させておきくことができる。
【0057】
その結果として、本実施例3の騒音制御装置1では、エアコンダクト5を流れる空気の状態が変化する場合でも、常に、効果的に風切り音を消音することができる。
▲3▼本実施例3では、スリット19は、エアコンダクト5の吹き出し口9から遠い上流部に取り付けられているので、スリット19において発生する風切り音が、吹き出し口9から外に漏れてしまうようなことがない。
(実施例4)
a)本実施例4の騒音制御装置1の構成は、基本的には、前記実施例3の騒音制御装置の構成とほぼ同じである。
【0058】
ただし、本実施例4の騒音制御装置1には、図9に示す様に、吹き出し口9の外であって、乗員の頭部の近傍に設置され、吹き出し口9で発生する風切り音を受音するためのエラーマイクロホン29(騒音受音手段)と、エラーマイクロホン29が受音した風切り音の信号に基づいて、フィルタ部25のフィルタ係数(フィルタ処理の条件)を設定する係数設定部31(フィルタ処理条件設定手段)とを備えている。
【0059】
b)次に、本実施例4の騒音制御装置1の作用を説明する。
本実施例4の騒音制御装置1は、基本的には、前記実施例3の騒音制御装置1と同様に、エアコンダクト5の吹き出し口フィン15で発生する風切り音を消音する。
【0060】
ただし、本実施例4では、フィルタ部25におけるフィルタ係数を、エラーマイクロホン29で受音した風切り音を用いて更新する。このフィルタ係数を更新する処理を、図10のフローチャートを用いて具体的に説明する。
ステップ200では、エラーマイクロホン29が、吹き出し口フィン15で発生する騒音(風切り音)を検出し、その信号を係数設定部31に送る。
【0061】
ステップ210では、係数設定部31において、前記ステップ200で検出した風切り音の信号に基づいて、フィルタ部25におけるフィルタ係数を算出する。
具体的には、公知のLMS法により、エラーマイクロホン29が受音した信号の自乗値を最小化するように、フィルタ係数を算出する。
【0062】
ステップ220では、前記ステップ210で算出したフィルタ係数を用いて、フィルタ部25のフィルタ係数を更新する。
尚、このステップ200からステップ220の処理は、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0063】
c)次に、本実施例4の騒音制御装置1が奏する効果を説明する。
▲1▼本実施例4の騒音制御装置1では、エラーマイクロホン29が受音する風切り音が最小となるようにフィルタ係数を設定するので、吹き出し口9で発生する風切り音を低減する効果が一層高い。
【0064】
▲2▼本実施例4の騒音制御装置1では、吹き出し口9で発生する風切り音が、吹き出し口フィン15の角度や車室内の環境(温度、湿度等)の変化に伴って変化した場合でも、制御音もそれに対応して変化するので、常に、風切り音を効果的に消音することができる。
【0065】
つまり、吹き出し口フィン15の角度や車室内の環境の変化によって風切り音が変化し、それまでの制御音では風切り音を消音しきれなくなると、エラーマイクロホン29が受音する風切り音の音量が増大し始める。すると、フィルタ係数設定部31が、エラーマイクロホン29が受音する風切り音が最小化するように、フィルタ係数を更新する。その結果、制御音は、その時点での風切り音を最小にできるものに変更される。
【0066】
このように、本実施例4の騒音制御装置1は、吹き出し口フィン15の角度や車室内の環境が変化する場合でも、常に、風切り音を効果的に消音することができる。
(実施例5)
a)本実施例5の騒音制御装置1の構成を、図11及び図12を用いて説明する。尚、図11は、車室の前部を上方から見た断面図であり、図12は、吹き出し口9周辺の側断面図である。
【0067】
本実施例5の騒音制御装置1の構成は、基本的には、前記実施例3の騒音制御装置1の構成とほぼ同じであるので、同様の部分の記載は省略する。
本実施例5の騒音制御装置1は、図11に示す様に、フィルタ部25において用いるフィルタ係数を複数記憶しているフィルタ係数記憶メモリ33(フィルタ処理条件記憶手段)と、吹き出し口フィン15の角度に応じてフィルタ係数を選択するフィルタ係数選択部35(フィルタ処理条件選択手段)とを備えている。
【0068】
上記フィルタ係数記憶メモリ33においては、4種類のフィルタ係数F1〜F4が記憶されている。
フィルタ係数F1は、吹き出し口フィン15の角度が、図12におけるB1の領域にある場合に発生する風切り音を、最も効果的に消音できる制御音を発生させるフィルタ係数である。
【0069】
同様に、フィルタ係数F2、F3、F4は、それぞれ、吹き出し口フィン15の角度が、B2、B3、B4の領域にある場合に発生する風切り音を、最も効果的に消音できる制御音を発生させるフィルタ係数である。
これらフィルタ係数F1〜F4には、それぞれアドレスA1〜A4が付されている。つまり、フィルタ係数F1のアドレスはA1であり、フィルタ係数F2のアドレスはA2であり、フィルタ係数F3のアドレスはA3であり、フィルタ係数F4のアドレスはA4である。
【0070】
上記フィルタ係数選択部35は、吹き出し口フィン駆動装置を制御する制御装置(図示略)から、吹き出し口フィン15の角度に対応するのセンサ信号を取り込み、そのセンサ信号に応じて(即ち吹き出し口フィン15の角度に応じて)、フィルタ係数F1、F2、F3、F4の中から1つのフィルタ係数を選択し、フィルタ処理部に出力する。
【0071】
b)次に、本実施例5の騒音制御装置1の作用を具体的に説明する。
本実施例5の騒音制御装置1は、基本的には、前記実施例3の騒音制御装置1と同様に、エアコンダクト5の吹き出し口9で発生する風切り音を消音する。
ただし、本実施例5では、フィルタ部25におけるフィルタ係数を、吹き出し口フィン15の角度に応じて更新する。このフィルタ係数を更新する処理を、図13のフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0072】
ステップ300では、フィルタ係数選択部35が、吹き出し口フィン15の制御装置からセンサ信号を取り込む。このセンサ信号は、上述したように、吹き出し口フィン15の角度が、B1〜B4のいずれかの領域にあるかを示す信号である。
【0073】
ステップ310では、フィルタ係数選択部35が、前記ステップ300で取り込んだセンサ信号を、フィルタ係数記憶メモリ33におけるフィルタ係数のアドレスに変換する。
つまり、取り込んだセンサ信号が、吹き出し口フィン15の角度がB1の領域にあることを示すものである場合は、そのセンサ信号をアドレスA1に変換し、センサ信号がB2の領域に対応するものである場合は、センサ信号をアドレスA2に変換し、センサ信号がB3の領域に対応するものである場合は、センサ信号をA3に変換し、センサ信号がB4の領域に対応するものである場合は、センサ信号をA4に変換する。
【0074】
ステップ320では、前記ステップ310で変換したアドレスを用いて、フィルタ係数記憶メモリ33から、フィルタ係数を読み出す。
つまり、アドレスがA1である場合は、フィルタ係数F1を読み出し、アドレスがA2である場合は、フィルタ係数F2を読み出し、アドレスがA3である場合は、フィルタ係数F3を読み出し、アドレスがA4である場合は、フィルタ係数F4を読み出す。
【0075】
そして、読み出したフィルタ係数により、フィルタ部25のフィルタ係数を更新する。
尚、フィルタ部25は、前記実施例3の騒音制御装置1と同様に、フィルタ処理を行い、制御音を生成する。
【0076】
c)次に、本実施例5の騒音制御装置1が奏する効果を説明する。
▲1▼本実施例5の騒音制御装置1では、吹き出し口フィン15の角度が変化し、それに伴って風切り音が変化した場合でも、制御音もまた、吹き出し口フィン15の角度変化に応じて、変化後の風切り音に対応するように変化する。
【0077】
その結果、本実施例5の騒音制御装置1は、吹き出し口フィン15の角度に依らず、常に、風切り音を低減することができる。
▲2▼本実施例5の騒音制御装置1は、吹き出し口フィン15の角度に応じてフィルタ係数を設定するので、エラーマイクロフォンで受音した音響に基づいてフィルタ係数を設定する方法のように、車室内の風切り音以外の雑音(例えば、乗員の声、オーディオシステムの音)がエラーマイクロフォンに受音され、不適切なフィルタ係数が設定されてしまうようなことがない。そのため、騒音を常に効果的に低減することができる。
(実施例6)
本実施例6の騒音制御装置1の構成は、基本的には、ほぼ、前記実施例1の騒音制御装置1と同様である。
【0078】
ただし、本実施例6の騒音制御装置1では、図14に示す様に、乗員の頭部の位置は、制御音源7の正面方向から、やや外れた位置にある。この場合でも、制御音の波面と風切り音の波面とは、3次元の領域に渡って一致しているので、乗員の頭部の位置における騒音を低減することができる。
【0079】
尚、本発明は上記の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【0080】
・前記実施例5において、フィルタ記憶部は、吹き出し口フィン15の角度に限らず、例えば、空気の流量、車室内の温度、湿度等の条件(騒音発生条件)ごとに対応するフィルタ係数を記憶しており、フィルタ係数選択部35は、それらの条件に応じて、フィルタ係数を選択するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の騒音制御装置の構成を示す説明図である。
【図2】 実施例1の騒音制御装置の構成を示す説明図である。
【図3】 実施例1の騒音制御装置の作用を示す説明図である。
【図4】 参考例2の騒音制御装置の構成を示す説明図である。
【図5】 参考例2の騒音制御装置の作用を示す説明図である。
【図6】 実施例3の騒音制御装置の構成を示す説明図である。
【図7】 実施例3の騒音制御装置の構成を示す説明図である。
【図8】 実施例3の騒音制御装置の作用を示すフロー図である。
【図9】 実施例4の騒音制御装置の構成を示す説明図である。
【図10】 実施例4の騒音制御装置の作用を示すフロー図である。
【図11】 実施例5の騒音制御装置の構成を示す説明図である。
【図12】 実施例5の騒音制御装置の構成を示す説明図である。
【図13】 実施例5の騒音制御装置の作用を示すフロー図である。
【図14】 実施例6の騒音制御装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・騒音制御装置
3・・・ダッシュボード
5・・・エアコンダクト
7・・・制御音源
9・・・吹き出し口
15・・・吹き出し口フィン
19・・・スリット
21・・・リファレンスマイク
23・・・仕切板
25・・・フィルタ部
29・・・エラーマイクロホン
31・・・係数設定部
33・・・フィルタ係数記憶メモリ
35・・・フィルタ係数選択部
Claims (12)
- 制御音源が放出する制御音を用いて、制御音の波面と騒音の波面と略一致させることにより、騒音を打ち消す騒音制御装置において、
前記騒音の発生源は、送風管の出口であり、
前記制御音源は、前記送風管の内部に設置され、その正面方向が、前記騒音の発生源を向く方向であることを特徴とする騒音制御装置。 - 前記制御音源は、前記送風管の内壁に設けられていることを特徴とする前記請求項1に記載の騒音制御装置。
- 前記騒音は、前記送風管の出口に設けられた風向調整用の羽根により生じる風切り音であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の騒音制御装置。
- 騒音制御の基準となる基準音響を発生させる基準音響発生手段と、
前記基準音響を受音する基準音響受音手段と、
前記基準音響受音手段に受音された基準音響に基づいて、前記制御音を生成する制御音生成手段と、を備え、
前記基準音響発生手段及び前記基準音響受音手段は、前記送風管の上流方向から、前記基準音響発生手段、前記基準音響受音手段、前記送風管の出口の順に並ぶように、前記送風管の内部に設置されることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の騒音制御装置。 - 制御音源が放出する制御音を用いて騒音を打ち消す騒音制御装置において、
前記騒音は、送風管の出口において生じる騒音であり、
騒音制御の基準となる基準音響を発生させる基準音響発生手段と、
前記基準音響を受音する基準音響受音手段と、
前記基準音響受音手段に受音された基準音響に基づいて、前記制御音を生成する制御音生成手段と、を備え、
前記基準音響発生手段及び前記基準音響受音手段は、前記送風管の上流方向から、前記基準音響発生手段、前記基準音響受音手段、前記送風管の出口の順に並ぶように、前記送風管の内部に設置されることを特徴とする騒音制御装置。 - 前記制御音生成手段は、前記基準音響受音手段が受音した基準音響にフィルタ処理を施すことにより制御音を生成するものであることを特徴とする前記請求項4又は5に記載の騒音制御装置。
- 前記騒音を受音する騒音受音手段と、
前記騒音受音手段により受音された騒音に基づいて、前記フィルタ処理の条件を設定するフィルタ処理条件設定手段と、を備えることを特徴とする前記請求項6に記載の騒音制御装置。 - 前記フィルタ処理の条件を複数記憶したフィルタ処理条件記憶手段と、
前記送風管出口における騒音発生条件を検知する騒音発生条件検知手段と、
前記騒音発生条件検知手段が検知した前記騒音発生条件に基づいて、前記フィルタ処理条件記憶手段に記憶されたフィルタ処理条件の中から、フィルタ処理条件を選択するフィルタ処理条件選択手段と、
を備えることを特徴とする前記請求項7に記載の騒音制御装置。 - 前記基準音響発生手段は、前記送風管の内部において前記騒音に対応する音を発生する部材であることを特徴とする前記請求項4〜8のいずれかに記載の騒音制御装置。
- 前記騒音が、送風管の出口に設けられた風向調整用の羽根により生じる風切り音であるとともに、
前記騒音発生条件は、前記風向調整用の羽根の向き、前記送風管の風量、前記出口における気圧、気温、湿度の中から選ばれる1又は2以上の条件であることを特徴とする前記請求項8に記載の騒音制御装置。 - 車載機器が発生する騒音に対する騒音制御に用いられることを特徴とする前記請求項1〜10のいずれかに記載の騒音制御装置。
- 前記請求項1〜11のいずれかに記載の騒音制御装置を備えることを特徴とする空調機。
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