JP3915364B2 - 水系インク組成物及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた画質と高い画像堅牢性を有する新規なインク組成物及び画像形成方法に関し、さらに詳しくは、インクジェット記録方法に用いることができるインク組成物及びインクジェット記録をすることができる画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、比較的簡単な装置で高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。広範囲の分野でインクジェット記録方式を採用したプリンタが製造されており、また、その使用用途に応じてインクの種類も多岐に及んでいる。
【0003】
インクジェット記録には、通常、水系インクジェット記録液が用いられている。これらインクジェット記録に用いる水系インクジェット記録液は、染料系インクと顔料系インクに大別される。
【0004】
染料系インクは鮮やかな発色とインクの保存安定性がよく市場で高い評価を得ている。一方で、画像保存性(耐光性、にじみ等)についてはいまだ満足のいくレベルではない。
顔料系インクは染料系インクに比べて高い画像保存性を有するが、分散工程が必要であり、かつ、分散物の安定性に限度があるため、インクジェット記録に用いる際、コスト的なデメリットや、長期使用に際して目詰まりを発生させるなどの問題をもたらす。さらに、染料に対して画質(色再現性、光沢感、ブロンジングなど)で見劣りする。
【0005】
こうした中で、染料の優れた特性(画質、インク保存安定性)と顔料の優れた画像保存性(耐光性、にじみなど)を持ち合わせた新規な色剤が求められている。
近年、特定の顔料を化学修飾し、有機溶剤可溶にする技術が開発された。例えば、特開平7-150068号公報にはキナクリドン、インジゴ等の顔料上の窒素原子を特定のオキシカルボニル基で修飾した有機溶剤可溶性の化合物が開示されており、さらにこの修飾した化合物を加熱処理することで、もとの顔料を再生することが開示されている(ラテント顔料技術)。
【0006】
また、特開平11-246809号公報、11-293166号公報には上記のラテント技術をインクジェット記録に適用した技術が開示されているが、開示された顔料を化学修飾した化合物は有機溶剤可溶性のもののみであり、インクの調製には水不溶性有機溶剤を必要としている。
【0007】
インクの調製に用いる水不溶性有機溶剤としては低沸点及び高沸点の水不溶性有機溶剤が用いられるが、低沸点の水不溶性有機溶剤を用いた場合、プリント中及び乾燥過程で有機溶剤が揮発し、人体および環境への影響が大きく好ましくない。さらに、ヘッド上での水不溶性有機溶剤の揮発は、ヘッドの目詰まりを頻発することになる。また、高沸点の水不溶性有機溶剤を用いた場合、画像の乾燥性が悪く、画像上に溶剤が多量に残ってしまう。特に、高画質が得られる専用光沢紙を用いた場合には乾燥性がさらに悪くなり、重ねによる裏移りが生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、長期のインク保存安定性を有し、高い画質と充分な画像保存性を有するインク組成物を提供することにある。本発明の第2の目的は、新規な水系インク組成物を用いて、高い画質と充分な画像保存性を有する画像を形成する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、
(1)化学的手段、熱的手段、光分解的手段及び放射線的手段から選ばれた少なくとも1つの手段によって不溶性顔料に転換され得る水溶性の前駆体が水系溶媒に溶解した水系インク組成物であって、該前駆体が、不溶性顔料上の化学修飾可能な窒素原子の少なくとも一つを化学修飾し、かつ、化学修飾の際に導入する基の少なくとも一つの基を水溶性基とした前駆体であることを特徴とする水系インク組成物。
(2)上記(1)に記載の水溶性の前駆体が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の水系インク組成物。
【0010】
【化12】
[式中、R1は置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を表し、R2は置換基を有してもよいフェニル基を表し、R3は置換基を有してもよいフェニル基を表す。但し、R1、R2及びR3の少なくとも1つは、下記一般式(2)もしくは一般式(3)で表される基である。
【0011】
【化13】
(一般式(2)及び一般式(3)において、R4は水溶性基を有する置換基を表し、R5は置換基を表し、m2は0ないし3を表す。R6、R7は水溶性基を有する置換基を表し、R8は置換基を表し、m3は0ないし3を表す。)]
(3)上記(1)に記載の水溶性の前駆体が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の水系インク組成物。
【0012】
【化14】
[式中、R9は置換基を有してもよいフェニル基を表し、R10は水酸基、または、置換基を有してもよいアミノ基、アシルアミノ基またはカルバモイル基を表す。m4は0ないし7を表す。但し、R9もしくはR10上の置換基の少なくとも1つは、下記一般式(2)もしくは一般式(3)で表される基である。
【0013】
【化15】
(一般式(2)及び一般式(3)において、R4は水溶性基を有する置換基を表し、R5は置換基を表し、m2は0ないし3を表す。R6、R7は水溶性基を有する置換基を表し、R8は置換基を表し、m3は0ないし3を表す。)]
(4)上記(1)に記載の水溶性の前駆体が、下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の水系インク組成物。
【0014】
【化16】
[式中、R11、R12は水溶性基を有する置換基を表し、R13、R14は置換基を表し、n5 、m5はそれぞれ0ないし4を表す。]
(5)上記(1)に記載の水溶性の前駆体が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の水系インク組成物。
【0015】
【化17】
[式中、R15、R16、R17、R18、R19は水素原子または水溶性基を有する置換基を表す。但し、R15、R16、R17、R18、R19の少なくとも2つは水溶性基を有する置換基である。]
(6)上記(1)に記載の水溶性の前駆体が、下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の水系インク組成物。
【0016】
【化18】
[式中、R20、R21は水溶性基を有する置換基を表し、R22、R23、R24は置換基を表し、m7 、l7、n7はそれぞれ0ないし4を表す。]
(7)上記(1)に記載の水溶性の前駆体が、下記一般式(8)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の水系インク組成物。
【0017】
【化19】
[式中、R25、R26は水溶性基を有する置換基を表し、R27、R28は置換基を表し、n8 、m8はそれぞれ0ないし4を表す。]
(8)上記(1)に記載の水溶性の前駆体が、下記一般式(9)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の水系インク組成物。
【0018】
【化20】
[式中、R29、R30は水溶性基を有する置換基を表し、R31、R32は水素原子または置換基を表す。]
(9)上記(1)に記載の水溶性の前駆体が、下記一般式(10)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の水系インク組成物。
【0019】
【化21】
[式中、R33は水溶性基を有する置換基を表し、R34は置換基を表す。m10は1ないし8を表し、n10は0ないし8を表す。]
(10)上記(1)に記載の水溶性の前駆体が、下記一般式(11)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の水系インク組成物。
【0020】
【化22】
[式中、Aは不溶性顔料残基を表す。式中の括弧内の基はAの窒素原子に結合している。Xは水素原子またはカウンターカチオンを表し、R35は置換基を表し、l11は0ないし4を表す。また、l11が2ないし4である場合、複数のR35は結合し環を形成してもよい。kは1ないし5を表す。]
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の水系インク組成物を用いてプリント媒体上にプリントした後、プリント媒体上に形成された化学的手段、熱的手段、光分解的手段及び放射線的手段から選ばれた少なくとも1つの手段によって、不溶性顔料に転換され得る前駆体を、化学的手段、熱的手段、光分解的手段及び放射線的手段から選ばれた少なくとも1つの手段によって不溶性顔料に転換させることを特徴とする画像形成方法。
(12)化学的手段が酸を作用させる手段であり、かつ、該酸を作用させる手段と熱的手段を組み合わせた手段によって、不溶性顔料に転換され得る前駆体を、不溶性顔料に転換させることを特徴とする上記(11)に記載の画像形成方法。により達成される。
【0021】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の化学的手段、熱的手段、光分解的手段及び放射線的手段から選ばれた少なくとも1つの手段によって不溶性顔料に転換され得る前駆体(以下、本発明の前駆体ということがある。)における不溶性顔料は特に限定するものではないが、例えば、アゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、ジフェニルメタン顔料、トリフェニルメタン顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キノフタロン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、アジン顔料、オキサジン顔料、チアジン顔料、ジオキサジン顔料、チアゾール顔料、フタロシアニン顔料、ジケトピロロピロール顔料等が挙げられる。
【0022】
これらの顔料は置換基を有してもよく、これら置換基としては、ハロゲン(例えば、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ペンチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、へテロ環基(例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、スルフォニルアミノ基(例えば、メタンスルフォンアミド基、ベンゼンスルフォンアミド基等)等が挙げられる。
【0023】
本発明において、不溶性顔料として好ましいものは、アセトアニライド系アゾ顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、キナクリドン顔料、ナフトールアゾ顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料が挙げられる。
本発明の前駆体は、水溶性の化合物であり、不溶性顔料上の化学修飾可能な窒素原子の少なくとも一つを化学修飾し、かつ、化学修飾の際に導入する基の少なくとも一つの基を水溶性基とするにより水溶性の化合物とされる。
【0024】
上記化学修飾の際に導入する基としては、例えば、アシル基、オキシカルボニル基、アミノカルボニル基、チオカルボニル基、スルフォニル基、アミノスルフォニル基等を挙げることができる。
水溶性基としては、アニオン性基〔例えば、SO3X、COOX等(Xは水素原子もしくはカウンターカチオンを表す。)〕、カチオン性基(例えば、4級アンモニウム塩基等)、ノニオン性基(例えば、ポリオキシアルキレン構造を有する基、多価アルコールのエステル構造を有する基等)のいずれでもよいが、アニオン性基が好ましく、更に好ましくは、少なくとも1つの−SO3Xを有する基である。
【0025】
本発明の前駆体としては、以下に説明する一般式(1)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)または(11)で表される化合物が好ましい。
以下、一般式(1)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)または(11)で表される化合物について順次説明する。
先ず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0026】
【化23】
[式中、R1は置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を表し、R2は置換基を有してもよいフェニル基を表し、R3は置換基を有してもよいフェニル基を表す。但し、R1、R2及びR3の少なくとも1つは、下記一般式(2)もしくは一般式(3)で表される基である。
【0027】
【化24】
(一般式(2)及び一般式(3)において、R4は水溶性基を有する置換基を表し、R5は置換基を表し、m2は0ないし3を表す。R6、R7は水溶性基を有する置換基を表し、R8は置換基を表し、m3は0ないし3を表す。)]
【0028】
一般式(1)において、R1で表される置換基を有してもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基等が挙げられ、置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0029】
R2で表される置換基を有してもよいフェニル基において、フェニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)等が挙げられる。
R3で表される置換基を有してもよいフェニル基において、フェニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、トリフロロメチル基等)、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、ニトロ基、カルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)等が挙げられる。
【0030】
R1、R2及びR3の少なくとも1つは、一般式(2)もしくは一般式(3)で表される基であるが、一般式(2)及び一般式(3)において、R4、R6及びR7で表される水溶性基を有する置換基としては、下記一般式(12)で表される基が好ましい。
【0031】
一般式(12)
−(J1)m1(J2)m2Y
一般式(12)において、J1は結合可能な2価の結合基を表し、該2価の結合基としては、−CO−、−COO−、−CONR−(Rは水素原子もしくはアルキル基を表す。)、−CS−、−SO2−、−SO2NR−(Rは水素原子もしくはアルキル基を表す。)、−CONHSO2−、−S−、−Si−等が好ましい。
J2は結合可能な2価の結合基を表し、該2価の結合基としては、例えば、アルキレン基、フェニレン基、−O−、−COO−、−OCO−、
【0032】
【化25】
(Rは、例えば、ハロゲン原子、−OH等の置換基を表す。)、あるいは、これらの基を組み合わせた基が挙げられる。
【0033】
Yは水溶性基を表し、該水溶性基としては、アニオン性基〔例えば、SO3X、COOX(Xは水素原子またはカウンターカチオンを表す。)等〕、カチオン性基(例えば、4級アンモニウム塩基)、ノニオン性基(例えば、ポリオキシアルキレン構造を有する基、多価アルコールのエステル構造を有する基等)のいずれでもよいが、アニオン性基が好ましく、更に好ましくは、少なくとも1つのSO3Xを有する基である。
m1は1〜2を表し、m2は1〜3を表す。
【0034】
一般式(2)及び一般式(3)において、R5、R8で表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、トリフロロメチル基等)、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、ニトロ基、カルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)等が挙げられる。
次に、一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0035】
【化26】
[式中、R9は置換基を有してもよいフェニル基を表し、R10は水酸基、または、置換基を有してもよいアミノ基、アシルアミノ基またはカルバモイル基を表す。m4は0ないし7を表す。但し、R9もしくはR10上の置換基の少なくとも1つは、下記一般式(2)もしくは一般式(3)で表される基である。
【0036】
【化27】
(一般式(2)及び一般式(3)において、R4は水溶性基を有する置換基を表し、R5は置換基を表し、m2は0ないし3を表す。R6、R7は水溶性基を有する置換基を表し、R8は置換基を表し、m3は0ないし3を表す。)]
【0037】
一般式(4)において、R9で表される置換基を有してもよいフェニル基において、フェニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、トリフロロメチル基等)、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、ニトロ基、カルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)等が挙げられる。
【0038】
R10で表される置換基を有してもよいアミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基において、アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、トリフロロメチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ベンズイミダゾリル基等)等が挙げられる。
【0039】
R9もしくはR10上の置換基の少なくとも1つは、一般式(2)もしくは一般式(3)で表される基であるが、該一般式(2)もしくは一般式(3)で表される基は、先に、一般式(1)の説明で示した一般式(2)及び一般式(3)で表される基とそれぞれ同義である。
次に、一般式(5)で表される化合物について説明する。
【0040】
【化28】
[式中、R11、R12は水溶性基を有する置換基を表し、R13、R14は置換基を表し、n5 、m5は0ないし4を表す。]
【0041】
一般式(5)において、R11、R12で表される水溶性基を有する置換基は、一般式(1)の説明で示したR4、R6及びR7で表される水溶性基を有する置換基と同義であり、先に、一般式(1)の説明で示した一般式(12)で表される基が好ましい。
R13、R14で表される置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ペンチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基等)が挙げられる。
次に、一般式(6)で表される化合物について説明する。
【0042】
【化29】
[式中、R15、R16、R17、R18、R19は水素原子または水溶性基を有する置換基を表す。但し、R15、R16、R17、R18、R19の少なくとも2つは水溶性基を有する置換基を表す。]
【0043】
一般式(6)において、R15、R16、R17、R18、R19で表される水溶性基を有する置換基は、一般式(1)の説明で示したR4、R6及びR7で表される水溶性基を有する置換基と同義であり、先に、一般式(1)の説明で示した一般式(12)で表される基が好ましい。
次に、一般式(7)で表される化合物について説明する。
【0044】
【化30】
[式中、R20、R21は水溶性基を有する置換基を表し、R22、R23、R24は置換基を表し、m7 、l7、n7はそれぞれ0ないし4を表す。]
【0045】
一般式(7)において、R20、R21で表される水溶性基を有する置換基は、一般式(1)の説明で示したR4、R6及びR7で表される水溶性基を有する置換基と同義であり、先に、一般式(1)の説明で示した一般式(12)で表される基が好ましい。
R22、R23、R24で表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子等)等が挙げられる。
次に、一般式(8)で表される化合物について説明する。
【0046】
【化31】
[式中、R25、R26は水溶性基を有する置換基を表し、R27 、R28は置換基を表し、n8 、m8はそれぞれ0ないし4を表す。]
【0047】
一般式(8)において、R27、R28で表される水溶性基を有する置換基は、一般式(1)の説明で示したR4、R6及びR7で表される水溶性基を有する置換基と同義であり、先に、一般式(1)の説明で示した一般式(12)で表される基が好ましい。
R31、R32で表される置換基としては、アルキルオキシ基(例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子等)等が挙げられる。
次に、一般式(9)で表される化合物について説明する。
【0048】
【化32】
[式中、R29、R30は水溶性基を有する置換基を表し、R31、R32は水素原子または置換基を表す。]
【0049】
一般式(9)において、R29、R30で表される水溶性基を有する置換基は、一般式(1)の説明で示したR4、R6及びR7で表される水溶性基を有する置換基と同義であり、先に、一般式(1)の説明で示した一般式(12)で表される基が好ましい。
【0050】
R31、R32で表される置換基としては、置換基を有してもよいフェニル基が好ましく、置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基等)が挙げられる。
次に、一般式(10)で表される化合物について説明する。
【0051】
【化33】
[式中、R33は水溶性基を有する置換基を表し、R34は置換基を表す。m10は1ないし8を表し、n10は0ないし8を表す。]
【0052】
一般式(10)において、R33で表される水溶性基を有する置換基は、一般式(1)の説明で示したR4、R6及びR7で表される水溶性基を有する置換基と同義であり、先に、一般式(1)の説明で示した一般式(12)で表される基が好ましい。
R34で表される置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ペンチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基等)が挙げられる。
次に、一般式(11)で表される化合物について説明する。
一般式(11)で表される化合物は、本発明の前駆体として特に好ましい化合物である。
【0053】
【化34】
[式中、Aは不溶性顔料残基を表す。式中の括弧内の基はAの窒素原子に結合している。Xは水素原子またはカウンターカチオンを表し、R35は置換基を表し、l11は0ないし4を表す。また、l11が2ないし4である場合、複数のR35は結合し環を形成してもよい。kは1ないし5を表す。]
一般式(11)において、Aで表される不溶性顔料残基としては、例えば、アゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、ジフェニルメタン顔料、トリフェニルメタン顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、キノフタロン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、アジン顔料、オキサジン顔料、チアジン顔料、ジオキサジン顔料、チアゾール顔料、フタロシアニン顔料、ジケトピロロピロール顔料等の残基が挙げられる。これらの顔料は置換基を有してもよい。
【0054】
有することができる置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ペンチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基等)アルコキシ(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、スルフォニルアミノ基(例えば、メタンスルフォンアミド基、ベンゼンスルフォンアミド基等)等が挙げられる。
【0055】
不溶性顔料残基における不溶性顔料として好ましいものには、アセトアニライドアゾ顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、キナクリドン顔料、ナフトールアジ顔料、ピロロピロール顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料が挙げられる。
【0056】
Xで表されるカウンターカチオンの具体例としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属イオン、アンモニウムイオンが挙げられる。
R35で表される置換基の具体例としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ニトロ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基等)、SO3X基(Xは水素原子またはカウンターカチオンを表し、カウンターカチオンの具体例としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属イオン、アンモニウムイオンが挙げられる。)が挙げられる。
以下に、本発明の不溶性顔料に転換され得る前駆体の具体的化合物例を示す。
【0057】
【化35】
【0058】
【化36】
【0059】
【化37】
【0060】
【化38】
【0061】
本発明の前駆体は、対応する不溶性顔料を公知の方法で修飾することによって合成できる。
不溶性顔料を修飾する公知の方法としては、例えば、酸クロリドもしくは酸無水物によるアシル化、クロルギ酸エステルもしくはO(COOR)2(R:アルキル基、フェニル基等)によるオキシカルボニル化、スルフォニルクロライドによるスルフォニル化等が挙げられる。
【0062】
以下に、本発明の前駆体の合成例を記す。
合成例1
例示化合物20の合成
インジゴ26g、2,6−ルチジン27gをN,N−ジメチルフォルムアミド150mlに分散し、そこへm−スルホ安息香酸クロリド46gを1時間かけて添加した。添加後、内温80℃で10時間反応した。
反応液を室温に戻し、塩化バリウム42gを含む水溶液に投入した。析出した固体をろ過により得た。この固体を温水400mlに溶解し、熱時ろ過により不溶分を除いた。得られた溶液に、硫酸カリウム35gを含む水溶液を加えて、撹拌し、析出した固体をろ過により除き、ろ液を減圧で濃縮した。残さを純水にて再結晶し目的物16gを得た。
NMR、マススペクトルにより、得られた化合物が目的物であることを同定した。
【0063】
合成例2
例示化合物26の合成
ジメチルキナクリドン(Pig.Red122)を熱アセトンで洗浄乾燥したもの13.6g、水素化ナトリウム6.4gを乾燥したN−メチル−2−ピロリドン400ml、ヘキサメチレンフォスフォリックトリアミド(HMPA)100mlの混合物を、80℃で30分加熱撹拌した。60℃に冷却後、o−スルフォ安息香酸無水物9.2gを添加後、80℃で2時間加熱撹拌した。60℃に冷却後、o−スルフォ安息香酸無水物9.2gを添加し、80℃で8時間加熱撹拌した。混合物を室温まで冷却し、n−ヘキサン2Lに投入し撹拌後、静置した。2層に別れた上層をデカンネーションで除いた。この作業をさらに2回行うと黄褐色の固体が得られる。これを200gの氷水と混合、撹拌した。塩酸でpH9に調整後、この混合物に食塩20gを加え、60℃に加温し、一晩放冷、放置した。析出した少量の固体をろ過により除き、ろ液に更に食塩40gを加え60℃に加温し、1晩放冷、放置し、析出した固体をろ過により得た。この固体を少量の熱水に溶解し、冷却、放置し、析出した固体をろ過により目的物を得た。乾燥後の収量は8.5gであった。
NMR、マススペクトルにより、得られた化合物が目的物であることを同定した。
【0064】
【化39】
【0065】
本発明の水系インク組成物は、本発明の前駆体を水系溶媒に溶解することにより得ることができる。
本発明において、水系溶媒とは水及び水に水溶性有機溶媒を混合した溶媒をいう。これら溶媒には少量の他の溶媒を混合することができる。
本発明に用いられる水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。水溶性有機溶媒は単独もしくは複数を併用してもよい。水溶性有機溶媒のインク中の添加量としては、総量で5−60重量%が好ましい。
【0066】
本発明のインク組成物は必要に応じて吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を添加することもできる。
【0067】
本発明のインク組成物は、その飛翔時の粘度として40cps以下が好ましく、30cps以下であることがより好ましい。
本発明のインク組成物は、その飛翔時の表面張力は20mN/m以上が好ましく、40〜60mN/mであることがより好ましい。
本発明のインク組成物において、本発明の前駆体の含有量は、0.5%〜10%が好ましい。
【0068】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
本発明の水系インク組成物をプリント媒体上にプリントする方法としては、インクジェットプリント方式が好ましい。
本発明に用いられるインクジェットプリント方式は、特に制約はなく、コンティニュアス方式及びオンデマンド方式のいずれでもよい。オンデマンド型方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット型等)などが挙げられる。
プリント媒体としては、いわゆる普通紙、専用紙(コート紙、光沢紙)のいずれでもよい。
【0069】
プリント媒体上で本発明の前駆体は、本発明の前駆体を不溶性顔料に転換させ得る、化学的手段、熱的手段、光分解的手段、放射線的手段のいずれかの手段もしくはこれら手段を組み合わせた手段で不溶性顔料に転換する。
上記化学的手段とは、前駆体の不溶性顔料への転換を開始もしくは促進する化合物(以下、顔料化化合物ということがある。)を何らかの方法でプリント媒体上で前駆体と共存させることをいう。
共存させる方法としては、あらかじめ顔料化化合物を含有させた専用プリント媒体を用いる方法、プリント前後にプリント媒体上に顔料化化合物を供給する方法などがある。
【0070】
このプリント前後にプリント媒体上に顔料化化合物を供給する方法としては、例えば、
1)インクジェットプリンターのヘッドから顔料化化合物の溶液を画像イメージに重ねるようにしてプリントする方法
2)コーターを用いて顔料化化合物の溶液をプリント媒体に一様に塗布する方法3)顔料化化合物の溶液の入った浴を用意し、プリント媒体をディップする方法4)顔料化化合物の溶液をスポンジ状の媒体に吸収させ、そのスポンジをプリント媒体に接触させる方法
5)噴霧器により顔料化化合物の溶液をプリント媒体に噴霧する方法
などが挙げられる。
【0071】
顔料化化合物としては、酸、塩基、求核剤、親電子剤、酸化剤、還元剤、配位性化合物などが挙げられ、好ましくは酸または塩基であり、特に好ましいのは酸である。
また、顔料化化合物は水溶性化合物であることが好ましく、水を主成分とする溶液にしてプリント媒体に供給することが更に好ましい。
顔料化化合物として用いる酸は、有機酸、無機酸のいずれでもよく、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、アクリル酸、アスコルビン酸、安息香酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸等が挙げられ、無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。塩基は、有機塩基、無機塩基のいずれでもよく、有機塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、アミノエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアニリン、ルチジン等が挙げられ、無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0072】
本発明の前駆体を不溶性顔料に転換させる熱的手段とは、プリント後のプリント物を加熱することをいう。
加熱温度は、50℃〜230℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは、70℃〜190℃である。加熱手段としては、熱ローラー(例えば、電子写真用熱定着ローラー)、温風、赤外線ヒーターなどが挙げられる。
本発明の前駆体を不溶性顔料に転換させる光分解的手段とは、例えば、プリント後のプリント物に紫外線、可視光、赤外線などを照射することをいう。
本発明の前駆体を不溶性顔料に転換させる好ましい形態は、プリントの前後どちらかで、酸性水溶液もしくは塩基性水溶液をプリント媒体に供給し、加熱する方法である。
【0073】
【実施例】
実施例1
インクの調整
本発明インク試料1〜27及び比較染料インク試料29の調整
表1及び2に示す量の表1及び2に示す色材、表1及び2に示す量の表1及び2に示す溶剤と総量が100部になる量のイオン交換水を加えインクを調整した。なお、表1及び2に示す添加剤を0.1%添加した。
【0074】
比較顔料インク試料28の調整
ピグメント レッド4(比較顔料)6部、オルフィン STG(信越化学)6部、イオン交換水8部をサンドミルにて8時間分散した(0.3mmジルコニアビーズ使用)。
この分散液に、ジエチレングリコール20部と総量が100部になる量のイオン交換水を加え、インクを調整した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
比較染料;アシッドイエロー23
【0077】
実施例2
画像1の作成
インク試料13(赤色のインク)を用い、インクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、普通紙(Xerox4024)に記録し、画像サンプルを得た。
このサンプルに10%炭酸ナトリウム水溶液をワイヤーバーを用いて塗布、乾燥した後、電子写真用の熱定着ローラーを180℃に設定し処理したところ青色の画像1が得られた。得られた画像1は不溶性顔料に転換した画像であった。
【0078】
画像2の作成
インク試料13(赤色のインク)を用い、インクジェットプリンタBJC700J(キヤノン株式会社製)によって、普通紙(Xerox4024)に記録、画像サンプルを得た。
この際、普通紙耐水強化剤を10%炭酸ナトリウム水溶液に置き換え、インク13の画像に10%炭酸ナトリウム水溶液が普通紙上で混合するようにした。
この画像サンプルを電子写真用の熱定着ローラーを180℃に設定し処理したところ青色の画像2が得られた。得られた画像2は不溶性顔料に転換した画像であった。
【0079】
画像3の作成
インク試料7(黄緑色のインク)を用い、インクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、普通紙(Xerox4024)に記録、画像サンプルを得た。
このサンプルに10%炭酸ナトリウム水溶液をワイヤーバーを用いて塗布後、温風(100℃)乾燥すると、赤紫色の画像3が得られた。得られた画像3は不溶性顔料に転換した画像であった。
【0080】
画像4の作成
インク試料13(赤色のインク)を用い、インクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、専用光沢紙(フォトジェットペーパーQP厚手)(コニカ(株)製)に記録し、画像サンプルを得た。
このサンプルに10%炭酸ナトリウム水溶液をワイヤーバーを用いて塗布、乾燥後、電子写真用の熱定着ローラーを180℃に設定し処理したところ青色の画像4が得られた。得られた画像4は不溶性顔料に転換した画像であった。
【0081】
画像5の作成
インク試料13(赤色のインク)をインクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、専用光沢紙(フォトジェットペーパーQP厚手)(コニカ(株)製)に記録し、画像サンプルを得た。
このサンプルに10%炭酸ナトリウム水溶液をワイヤーバーを用いて塗布、乾燥後、ドライヤーにて温風(約80℃)を1分当てたところ青色の画像5が得られた。得られた画像5は不溶性顔料に転換した画像であった。
【0082】
画像6の作成
インク試料13(赤色のインク)を用い、インクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、予め10%炭酸ナトリウム水溶液をワイヤーバーを用いて塗布、乾燥した専用光沢紙(フォトジェットペーパーQP厚手)(コニカ(株)製)に記録し、画像サンプルを得た。
このサンプルを電子写真用の熱定着ローラーを180℃に設定し処理したところ青色の画像6が得られた。得られた画像6は不溶性顔料に転換した画像であった。
【0083】
画像7の作成
インク試料28(比較顔料インク)を用い、インクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、普通紙(Xerox4024)に記録し、画像7を得た。
【0084】
画像8の作成
インク試料29(比較染料インク)を用い、インクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、普通紙(Xerox4024)に記録し、画像8を得た。
【0085】
画像9〜22の作成
画像5の作成において、インク試料13をインク試料1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15に変えた以外は画像5の作成と同様にして画像9〜22を作成した。得られた画像9〜22はいずれも不溶性顔料に転換した画像であった。
【0086】
画像23の作成
インク試料17(黄色のインク)をインクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、専用光沢紙(コニカ(株)製フォトジェットペーパーQP厚手)に記録し、画像サンプルを得た。このサンプルに50倍希釈した硫酸水溶液をワイヤーパーを用いて塗布、乾燥後、電子写真用の熱定着ローラーを180℃に設定し処理したところマゼンタ色の画像23が得られた。た。得られた画像23は不溶性顔料に転換した画像であった。
【0087】
画像24の作成
インク試料17(黄色のインク)をインクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、専用光沢紙(コニカ(株)製フォトジェットペーパーQP厚手)に記録し、画像サンプルを得た。このサンプルに10%のp−トルエンスルフォン酸水溶液をワイヤーバーを用いて塗布、乾燥後、電子写真用の熱定着ローラーを180℃に設定し処理したところマゼンタ色の画像24が得られた。得られた画像24は不溶性顔料に転換した画像であった。
【0088】
画像25の作成
専用光沢紙(コニカ(株)製フォトジェットペーパーQP厚手)にあらかじめ10%のp−トルエンスルフォン酸水溶液をワイヤーバーを用いて塗布、乾燥後、インク17(黄色のインク)をインクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって記録、画像サンプルを得た。このサンプルを電子写真用の熱定着ローラーを180℃に設定し処理したところマゼンタ色の画像25が得られた。得られた画像25は不溶性顔料に転換した画像であった。
【0089】
画像26〜33の作成
画像23の作成において、インク試料17をインク試料16、18、19、20、21、22、23、27に変えた以外は画像23の作成と同様にして画像26〜36を作成した。得られた画像26〜33はいずれも不溶性顔料に転換した画像であった。
【0090】
画像34の作成
インク試料28(比較顔料インク)を用い、インクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、専用光沢紙(フォトジェットペーパーQP厚手)(コニカ(株)製)に記録し、画像34を得た。
【0091】
画像35の作成
インク試料29(比較染料インク)を用い、インクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、専用光沢紙(フォトジェットペーパーQP厚手)(コニカ(株)製)に記録し、画像35を得た。
【0092】
実施例3
実施例2で得られた普通紙にプリントした画像1、2、3、7及び8について画像保存性の評価として耐光性評価とにじみ評価を下記によって評価した。得られた結果を表3に記す。
本発明の画像は色彩度において染料インクと遜色なく、比較の画像7に比べて画質が向上していた。
【0093】
《耐光性評価》
反射濃度約1.0のサンプルを、Xeフェードメーターで照射(70000Lx、400時間)し、下記式により、反射濃度残存率を求め、下記の評価基準で評価した。
反射濃度残存率(%)
=[(Xe照射後の反射濃度)/(Xe照射前の反射濃度)]×100
〈評価基準〉
○;反射濃度残存率が90%以上
×;反射濃度残存率が90%未満
【0094】
《にじみ評価》
画像サンプルを、60℃、相対湿度80%の環境下で30日保存し、保存の前後での、幅1mmの細線部のにじみを観察し、下記の評価基準で評価した。
〈評価基準〉
○;にじみにより線幅の広がりが10%未満
×;にじみにより線幅の広がりが10%以上
【0095】
【表3】
【0096】
実施例4
実施例2で得られた専用光沢紙にプリントした画像4、5、6、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35について画像保存性の評価として耐光性評価とにじみ評価を実施例3と同様にして評価した。また、画質評価として光沢感とブロンズを目視により下記の評価基準で評価した。得られた結果を表4、表5に記す。
【0097】
《光沢感の評価》
〈評価基準〉
○;画像部の光沢が非画像部の光沢と同等
×;画像部の光沢が非画像部の光沢より明らかに劣っている
【0098】
《ブロンズの評価》
〈評価基準〉
○;画像に金属光沢が見られない
×;画像に金属光沢が見られる
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
実施例5
インク保存性
60℃の条件下で60日間保存した実施例1で作成したインク試料1〜27、比較顔料インク試料28、比較染料インク試料29を用い、インクジェットプリンタMJ−810(セイコーエプソン株式会社製)によって、普通紙(Xerox4024)に記録し、画像を得た。
比較顔料インク試料28を用いて記録した画像は、筋状の画像欠陥が多数見られたが、保存後のインク試料1〜27、比較染料インク試料29を用いて記録した画像は、保存前のインク試料1〜27、比較染料インク試料29を用いて記録した画像と同様に、画像欠陥のない画像であった。
【0102】
【発明の効果】
本発明の水系インク組成物は優れたインク保存性を有しており、かつ、本発明の水系インク組成物を用いた本発明の画像形成方法により得た画像は、従来の顔料インク画像に比べて、画質(光沢、ブロンズの有無)が向上しており、染料画質に近い優れた画質を有している。また、従来の顔料インク画像に近い優れた画像堅牢性(耐光性、にじみ)を有している。
Claims (12)
- 化学的手段、熱的手段、光分解的手段及び放射線的手段から選ばれた少なくとも1つの手段によって不溶性顔料に転換され得る水溶性の前駆体が水系溶媒に溶解した水系インク組成物であって、該前駆体が、不溶性顔料上の化学修飾可能な窒素原子の少なくとも一つを化学修飾し、かつ、化学修飾の際に導入する基の少なくとも一つの基を水溶性基とした前駆体であることを特徴とする水系インク組成物。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の水系インク組成物を用いてプリント媒体上にプリントした後、プリント媒体上に形成された化学的手段、熱的手段、光分解的手段及び放射線的手段から選ばれた少なくとも1つの手段によって、不溶性顔料に転換され得る前駆体を、化学的手段、熱的手段、光分解的手段及び放射線的手段から選ばれた少なくとも1つの手段によって不溶性顔料に転換させることを特徴とする画像形成方法。
- 化学的手段が酸を作用させる手段であり、かつ、該酸を作用させる手段と熱的手段を組み合わせた手段によって、不溶性顔料に転換され得る前駆体を、不溶性顔料に転換させることを特徴とする請求項11に記載の画像形成方法。
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