JP3914870B2 - 建築物の軒先構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は建築物の軒先構造に関し、さらに詳しくは落ち葉等による樋詰まり対策および樋の上向き開口部上における雨水の軒先への伝い流れ対策が施されている軒先構造に関係している。
【0002】
【従来の技術】
例えば、特許文献1には、樋の上方開口部に柔軟な網を覆設してある軒樋構造が示されている。
この構造のものでは、落ち葉等が網に引っ掛かって樋内に落下しないため、樋内が落ち葉等で堰き止められて雨水が溢れ出るようなことがなく、落ち葉等による樋詰まり対策の面では改善されているといえる。
ところで、網目から樋内に流れ落ちる雨水は、同時に網目線をつたい水下側に流れて軒先から流れ落ちてしまう虞れがあり、雨水の軒先への伝い流れ対策については考慮されていない。
このことは、網がパンチングメタル等の多孔板製のものに置き換えられた場合にも同様であり、板面を雨水が伝い流れて軒先から流れ落ちてしまうのを避けられない。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−302411
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする課題は、第1には、落ち葉等による樋詰まりが起こらず且つ樋の上向き開口部上における雨水の軒先への伝い流れがなく、雨水が屋根面から樋内へ流れ込み易く、樋のメンテナンスが容易である建築物の軒樋構造を、第2には、さらに、雨水を樋内へ効率良く排水可能な建築物の軒樋構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記した課題を達成するため、建築物の軒先等に軒先部材で保持される樋をカバー部材で覆設してある軒先構造において、前記カバー部材は、樋の上向き開口部上に位置する部分に通水口部を設けると共に、通水口部の水上側口端部から裏面水下側に延在する水切り片を設け、このカバー部材は、水上側端部が樋の水上側の外装材における水下側成形部裏面と下地表面との間に差し込まれて係止している一方で、水下側端部が樋の上向き開口部上にせり出ている軒先部材の取付部上に固定具で着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
また本発明では、通水口部が水勾配方向に沿い千鳥状に配設されていることを特徴とする。
【0006】
本発明における建築物の軒先等とは、軒先に限定されず、樋が形成される全ての箇所を含む意味である。
樋およびカバー部材は、金属製、合成樹脂製、その他の公知の材質・形状のもので良い。カバー部材は、長尺状でもピース状でも良い。このカバー部材における通水口部は、平面視で、丸孔状、角孔状、長孔状、円弧状、その他のこれらに類する孔形状の何れであっても良い。通水口部は水勾配方向に沿い千鳥状に配設されていても良いし、そうでなくとも良い。また、通水口部が長孔状である場合、孔の長手方向が水勾配方向に沿う向きの態様でも良いし、孔の長手方向が水勾配方向と交差する向きの態様であっても良い。
そして、水切り片は、雨水を通水口部の水上側口端部から裏面水下側に誘導することによって、通水口部を通過させて樋内に流出させられる機能を有するものであれば良く、通水口部の水上側口端部から裏面水下側に延在している形態の全てが含まれる。
また、カバー部材は、水上側が外装材の水下側成形部と下地(水切り部材を含む)との間に位置する態様で、取り外し(着脱)が可能であり、メンテナンスが容易に行えることになる。
カバー部材は、着脱可能若しくは途中で摺動或いは半折可能な接続手段で連結される態様である場合、カバー部材の一部或いは全部を取り外し若しくは開放することが可能で、樋のメンテナンスが容易に行えることになる。
カバー部材における水上側は、挿入(配置)する態様、係止部材に係止(脱着可能な係止関係)する態様が想定され、これらの挿入、係止にとらわれず、樋の水上側の外装材における水下側成形部の裏面に位置する態様であれば良い。
カバー部材の水下側は、ビス等の固定具による止着手段で着脱可能に止着されるものであれば良い。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1および図2には本発明の建築物の軒樋構造における実施の1形態を例示しており、建物1の軒先に軒先部材2で保持された樋3上には長尺帯板状の金属製カバー部材4が覆設されている。
カバー部材4の水上側端部4aは、樋3の水上側の屋根材5における係止部材7で係合状態に取り付けられている水下側成形部5a裏面と下地6表面との間に差し込まれて係止している一方で、水下側端部4bは、樋3の上向き開口部3a上にせり出ている軒先部材2の取り付け部2a上にビス・ナット等の固定具8で取り付けられている。
【0008】
カバー部材4は、樋3の上向き開口部3a上に位置する面部分4cに通水口部4dを千鳥状に配設していると共に、通水口部4dの水上側口端部4d1から裏面水下側に延在する水切り片4eを設けている。
通水口部4dは、長孔状で且つ孔の長手方向が水勾配方向と直交する向きの二列一組の態様になっており、水上側口端部4d1の両端は略1/4円状に丸くすることで、面部分4cの面強度を高めている。
そして、水切り片4eは、雨水を通水口部4dから裏面水下側に誘導し得るように、通水口部4dの水上側口端部4d1裏面側に垂設して形成してある。
【0009】
また面部分4cには、水勾配方向と直交する方向に沿う左右の通水口部4d間に流水面部4c1をそれぞれ形成し、この各流水面部4c1の水上側および/または水下側に通水口部4dそして水切り片4eが位置するようにして、流水面部4c1を流れる雨水が通水口部4dに流れ込み且つ水切り片4eに導かれて樋3内の排水空間3bに流れ落ちるようにしてある。
【0010】
図3には本発明の建築物の軒樋構造における実施の他の1形態を例示しており、構成は前記した図1の態様のものと基本的に同一であるため、共通している構成の説明は符号を準用して省略し、相違する構成について説明する。
カバー部材4は、水上側と水下側の中間部におけるヒンジ4fを支点にして半折可能に形成してあり、水上側端部4aの端縁から斜め上向きに折り返された係止部4gが弾性変形して係止部材7の垂下部7a下縁を潜り抜けて被係止部7bに係止していることで、固定具8が外されて水下側端部4b側がフリーになった状態でも脱落しないようにしてある。この水下側端部4b側がフリーになった状態では、水下側端部4b側を開動することで樋3の上向き開口部3aが開放されることになる。
【0011】
図4および図5には本発明の建築物の軒樋構造における実施の他の1形態を例示しており、構成は前記した図1の態様のものと基本的に同一であるため、共通している構成の説明は符号を準用して省略し、相違する構成について説明する。
カバー部材4は、水上側端部4aの端縁から斜め上向きに折り返された係止部4gが係止部材7の突状の垂下部7aにおける被係止部7bに係止していることで、固定具8が外されて水下側端部4b側がフリーになった状態でも脱落しないようにしてある。また、係止部4gには切欠き部4hを凹設してあり、固定具8が外された状態でカバー部材4を左右にスライドし、切欠き部4hと垂下部7aを脱着方向(図面上では水勾配方向)に一致させることにより被係止部7bとの係止関係を解除して、カバー部材4を水下側へ引き動かして取り外せるようにしてある。この態様のものでは、係止部4gが弾性変形せずとも、樋3は上向き開口部3aが開放されることになる。
【0012】
図6には本発明の建築物の軒樋構造における実施の他の1形態を例示しており、構成は前記した図1の態様のものと基本的に同一であるため、共通している構成の説明は符号を準用して省略し、相違する構成について説明する。
カバー部材4は、水下側端部4bにおける固定具8のネジ部8aが貫通する孔4iを、頭部8bよりも大径のガイド穴4i1と、このガイド穴4i1と左右方向に連通して、ネジ部8aよりも若干幅広の挿入溝4i2とで形成しており、固定具8を緩めて、カバー部材4を左右方向(図面上では左方向)へスライドさせて、ガイド穴4i1と頭部8bを上下に一致させることで、固定具8による固定関係を解除して、カバー部材4を持ち上げ取り外せるようにしてある。
【0013】
図7には本発明の建築物の軒樋構造におけるカバー部材の他の1形態を例示しており、構成は前記した図1の態様のものと基本的に同一であるため、共通している構成についての説明は符号を準用して省略し、相違する構成について説明する。
カバー部材4における通水口部4dは、水上側寄りの左右両端部分に対して中央部分が水下側寄りの平面視円弧状に形成してあり、長手方向の直線長さが同じであれば円弧分だけ延長されて開口面積が拡大することにともなう通水量の増大と、雨水が左右の両端部分と中央部分に流れ込む極僅かの時差による通水時間の短縮によって、通水効率がアップしている。
【0014】
図8には本発明の建築物の軒樋構造におけるカバー部材の他の1形態を例示しており、構成は前記した図1の態様のものと基本的に同一であるため、共通している構成についての説明は符号を準用して省略し、相違する構成について説明する。
カバー部材4における通水口部4dは、水上側寄りの左右両端部分に対して中央部分が水下側寄りの平面視略弓状に形成してあり、長手方向の直線長さが同じであれば左右両端のアール部分だけ延長されて開口面積が拡大されることによる通水量の増大と、雨水が左右の両端部分と中央部分に流れ込む極僅かの時差による通水時間の短縮によって、通水効率がアップしている。
【0015】
【発明の効果】
A.請求項1により、雨水は通水口部に流れ込み且つ水切り片に導かれて樋内に流れ落ちるため、落ち葉等による樋詰まりが起こらず且つ樋の上向き開口部上における雨水の軒先への伝い流れがない。そして、雨水が屋根面から樋内へ流れ込み易い。
また、カバー部材は、着脱可能であるから、カバー部材を取り外し開放することが可能で、樋のメンテナンスが容易に行えることになる。
B.請求項2により、さらに、水勾配方向に沿い千鳥状に配設されている通水口部によって雨水を樋内へ効率良く排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の建築物の軒樋構造における実施の1形態を例示している縦断面図。
【図2】 要部の部分拡大平面図。
【図3】 本発明の建築物の軒樋構造における実施の他の1形態を例示している縦断面図。
【図4】 本発明の建築物の軒樋構造における実施の他の1形態を例示している縦断面図。
【図5】 要部の部分拡大平面図。
【図6】 本発明の建築物の軒樋構造における実施の他の1形態を例示している要部の部分拡大平面図。
縦断面図。
【図7】 本発明の建築物の軒樋構造におけるカバー部材の他の1形態を例示している部分拡大平面図。
【図8】 本発明の建築物の軒樋構造におけるカバー部材の他の1形態を例示している部分拡大平面図。
【符号の説明】
1 建物(建築物)
2 軒先部材
2a 取り付け部
3 樋
3a 上向き開口部
3b 排水空間
4 カバー部材
4a 水上側端部
4b 水下側端部
4c 面部分
4c1 流水面部
4d 通水口部
4d1 水上側口端部
4e 水切り片
4f ヒンジ
4g 係止部
4h 切欠き部
4i 孔
4i1 ガイド穴
4i2 挿入溝
5 屋根材
5a 水下側成形部
6 下地
7 係止部材
7a 垂下部
7b 被係止部
8 固定具
8a ネジ部
8b 頭部8b
Claims (2)
- 建築物の軒先等に軒先部材で保持される樋をカバー部材で覆設してある軒先構造において、
前記カバー部材は、樋の上向き開口部上に位置する部分に通水口部を設けると共に、通水口部の水上側口端部から裏面水下側に延在する水切り片を設け、
このカバー部材は、水上側端部が樋の水上側の外装材における水下側成形部裏面と下地表面との間に取り外し可能に差し込まれて係止している一方で、水下側端部が樋の上向き開口部上にせり出ている軒先部材の取付部上に固定具で着脱可能に取り付けられていることを特徴とする建築物の軒先構造。 - 通水口部が水勾配方向に沿い千鳥状に配設されていることを特徴とする請求項1記載の建築物の軒先構造。
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