JP3914631B2 - 内燃機関の可変動弁装置 - Google Patents

内燃機関の可変動弁装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸・排気弁の開閉時期及びバルブリフト量を機関運転状態に応じて可変にできる内燃機関の動弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知にように、機関低速低負荷時における燃費の改善や安定した運転性並びに高速高負荷時における吸気の充填効率の向上による十分な出力を確保する等のために、吸気・排気弁の開閉時期とバルブリフト量を機関運転状態に応じて可変制御する動弁装置は従来から種々提供されており、その一例として特開昭55−137305号公報等に記載されているもの知られている。
【0003】
図13に基づきその概略を説明すれば、シリンダヘッド1のアッパデッキの略中央近傍上方位置にカムシャフト2が設けられていると共に、該カムシャフト2の外周にカム2aが一体に設けられている。また、カムシャフト2の側部には、制御シャフト3が平行に配置されており、この制御シャフト3に偏心カム4を介してロッカアーム5が揺動自在に軸支されている。一方、シリンダヘッド1に摺動自在に設けられた吸気弁6の上端部には、バルブリフター7を介して揺動カム8が配置されている。この揺動カム8は、バルブリフター7の上方にカムシャフト2と並行に配置された支軸9に揺動自在に軸支され、下端のカム面8aがバルブリフター7の上面に当接している。また、前記ロッカアーム5は、一端部5aがカム2aの外周面に当接していると共に、他端部5bが揺動カム8の上端面8bに当接して、カム2aのリフトを揺動カム8及びバルブリフター7を介して吸気弁6に伝達するようになっている。
【0004】
また、前記制御シャフト3は、図外のアクチュエータによって所定角度範囲で回転制御されて、偏心カム4の回動位置を制御し、これによってロッカアーム5の揺動支点を変化させるようになっている。
【0005】
そして、偏心カム4が正逆の所定回動位置に制御されるとロッカアーム5の揺動支点が変化して、他端部5bの揺動カム8の上端面8bに対する当接位置が図中上下方向に変化し、これによって揺動カム8のカム面8aのバルブリフター7上面に対する当接位置の変化に伴い、揺動カム8の揺動軌跡が変化することにより吸気弁6の開閉時期(バルブタイミング)とバルブリフト量を可変制御するようになっている。尚、図中10は、揺動カム8の上端面8bを常時ロッカアーム5の他端部5bに弾接付勢するスプリングである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の可変動弁装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明は、機関のクランク軸によって回転駆動し、外周に駆動カムが固定されたドライブシャフトと、該ドライブシャフトに揺動自在に設けられ、機関弁を開作動させる揺動カムと、一端部が連係部材を介して前記駆動カムに回転自在に連係しかつ他端部がリンク部材を介して揺動カムの端部に連係したロッカアームと、機関の巾方向に沿ってほぼ横方向に配置され、基端部がドライブシャフトに回転自在に支持されかつ先端部がロッカアームの揺動支点位置に連係したサポートアームと、該サポートアームを上下方向へ回動させる駆動手段と、該駆動手段を機関運転状態に応じて制御する制御手段とを備え、前記駆動手段によってサポートアームを上下方向へ回動させることにより、ロッカアーム及びリンク部材を介して揺動カムの揺動位置を制御して機関弁のリフト量を可変制御することを特徴としている。
【0007】
また、カム2aと揺動カム8が機関巾方向へ大きく離れているため、ロッカアーム5の両端部5a,5bを必然的に機関巾方向へほぼへ字形状に延出させなければならない。したがって、配置スペースの増加と相俟ってロッカアーム5の大型化により、動弁装置の機関への搭載性が悪化すると共に、機関の大型化と重量の増加が余儀なくされている。
【0008】
しかも、ロッカアーム5は、カム2aと揺動カム8の上方位置に配置されているため、機関の高さが必然的に高くなり、この点でも機関への搭載性の悪化と機関の大型化、重量の増加を招来している。
【0009】
さらに、カムシャフト2の他に支軸9を必要とするので、部品点数が増加すると共に、カムシャフト2と支軸9との互いの軸心のずれが生じ易くなり、これによってバルブタイミングの制御精度が低下するおそれがある。
【0010】
更に、ロッカアーム5の端部5bが、揺動カム8の上端面8bを直接押圧することによって該揺動カム8の揺動を得る構成のため、ロッカアーム5の押圧点(当接位置)が揺動カム8の上端面8bから離脱するおそれがある。したがって、ロッカアーム5の揺動支点位置に制約が生じ、揺動カム8の揺動軌跡、ひいては吸気弁6のバルブタイミング/リフト量を比較的大きく設定することができない、といった種々の問題がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の可変動弁装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明は、機関のクランク軸によって回転駆動し、外周に駆動カムが固定されたドライブシャフトと、該ドライブシャフトに揺動自在に設けられ、機関弁を開作動させる揺動カムと、一端部が前記駆動カムに回転自在に連係しかつ他端部がリンク部材を介して揺動カムの端部に連係したロッカアームと、機関の巾方向に沿ってほぼ横方向に配置され、基端部がドライブシャフトに回転自在に支持されかつ先端部がロッカアームの揺動支点位置に連係したサポートアームと、該サポートアームを上下方向へ回動させる駆動手段と、該駆動手段を機関運転状態に応じて制御する制御手段とを備え、前記駆動手段によってサポートアームを上下方向へ回動させることにより、ロッカアーム及びリンク部材を介して揺動カムの揺動位置を制御して機関弁のリフト量を可変制御することを特徴としている。
【0012】
したがって、請求項1記載の発明によれば、駆動カムと揺動カムの両方をドライブシャフトに同軸上に設け、つまりドライブシャフトに一緒に設けたため、機関巾方向への配置スペースを十分に小さくすることができると共に、ロッカアームも小型化でき、装置の機関への搭載性が向上する。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記駆動手段は、ドライブシャフトと並行に配設された制御軸と、該制御軸に固定された制御カムと、一端部が制御カムの外周に回転自在に連係し、他端部が前記サポートアームに連係した制御リンクと、前記制御軸を所定回転角度範囲で回転駆動するアクチュエータとから構成したことを特徴としている。
【0014】
したがって、サポートアームが制御アームや制御カムを介して制御軸に支持された形になるため、駆動カムやリンク部材からロッカアームを介して上下方向の荷重を受けても前記制御アームなどによる安定化支持によりガタ付きや打音の発生を防止できる。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記サポートアームを、前記駆動カムと、揺動カムとの間に挾持状態に配置したことを特徴としている。
【0016】
したがって、サポートアームを駆動カムと揺動カムとの間に挾持状態に配置したため、ロッカアームから伝達されるローリング状の偏荷重を抑制でき、ドライブシャフトに対するサポートアームの倒れを規制できる。この結果、サポートアームの基部とドライブシャフトとの間の肩当たりなどによるフリクションの発生や偏摩耗等を防止できる。
【0017】
請求項4記載の発明は、前記揺動カムの回転中心点から前記ロッカアームの揺動中心点の距離が一定となるよう配置すると共に、前記揺動カムの回転中心点から該揺動カムとリンク部材の連結中心点を結ぶ直線と、前記連結中心点からリンク部材の軸心を通る直線との両直線間を所定の角度で常時ほぼく字形状に折曲状態となるように配置したことを特徴としている。
【0018】
したがって、揺動カムの回転中心点から該揺動カムとリンク部材の連結中心点を結ぶ直線と該連結中心点からリンク部材の軸心を通る直線との両直線間を所定の角度で常時ほぼく字形状に折曲状態となるように配置することにより、揺動カムとリンク部材との屈伸時、特に最大伸長時(最大開度時)から屈曲時においていわゆる突張りがなくなり、屈伸折性が良好となる。
【0019】
請求項5記載の発明は、前記機関弁の大リフト域から小リフト域への変換時における前記サポートアームの回動方向を、前記ドライブシャフトの回転方向と同方向に設定したことを特徴としている。
【0020】
したがって、ドライブシャフトの回転により駆動カムが回転して、ロッカアーム,リンク部材を介して揺動カムが回動することにより、機関弁が開閉作動するわけであるが、機関弁の大リフト域から小リフト域に切換え制御される際に、サポートアームがドライブシャフトの回転方向と同方向へ傾動すると、駆動カムによるロッカアームの揺動開始時期が若干遅れる。この結果、揺動カムによる機関弁のリフト開始時期が若干遅くなる。
【0021】
請求項6記載の発明は、前記機関弁の大リフト域から小リフト域への変換時に前記サポートアームの回動方向を、前記ドライブシャフトの回転方向と逆方向に設定したことを特徴としている。
【0022】
したがって、請求項5記載の発明とは逆に、サポートアームの大リフト域が小リフト域への回動方向がドライブシャフトの回転方向とは逆になっているため、大から小リフトへの切換え制御時に、駆動カムによるロッカアームの揺動開始時が若干早くなり、したがって、揺動カムによる機関弁のリフト開始時期が早くなる。したがって、エンジン仕様などに応じた特異なバルブタイミング制御が得られる。
【0023】
請求項7記載の発明は、機関弁のリフト立上り時における揺動カムの回動方向に対して、機関弁の大リフト域から小リフト域への変換時のサポーアームの回動方向を逆方向に設定したことを特徴としている。
【0024】
したがって、大リフト域から小リフト域への切り換え時には、まずサポートアームが駆動手段によって上方向へ回動すると共に、ロッカアームもそれに伴って上動するが、駆動カムは逆方向に回転しているため、ロッカアームの揺動タイミングが一時的に早くなる。したがって、揺動カムは、リフト立上り方向の回動が早くなり、吸気弁のリフト特性が結果的に開弁開始時期が早くなる一方、閉弁時期が遅くなる。
請求項8に記載の発明にあっては、前記連係部材は、リンクアームであることを特徴としている。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1〜図5は、本発明の第1の実施形態を示し、1気筒あたり2つの吸気弁を有する内燃機関に適用したものを示している。
【0026】
すなわち、この可変動弁装置は、シリンダヘッド11に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられた一対の吸気弁12,12と、シリンダヘッド11上部の図外のカム軸受に回転自在に支持された中空状のドライブシャフト13と、該ドライブシャフト13に、圧入等により固設された駆動カム15と、前記シャフト13に駆動カム15と同軸上に軸受14に軸受けされつつ設けられて、各吸気弁12,12をバルブリフター16,16を介して押圧開動させる一対の揺動カム17,17と、一端部18aが前記駆動カム15にリンクアーム19を介して連係し、他端部18bがリンク部材20を介して前記揺動カム17,17に連係したロッカアーム18と、基端部21aがドライブシャフト13に回転自在に支持され、先端部21bがロッカアーム18の揺動支点に連結されたサポートアーム21と、該サポートアーム21を所定角度範囲で傾動させる駆動手段22と、該駆動手段22を機関運転状態に応じて制御する制御手段とを備えている。
【0027】
前記ドライブシャフト13は、機関前後方向に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されている。
【0028】
前記駆動カム15は、図4にも示すように、ほぼリング状を呈し、大径なカム本体15aと、該カム本体15aの外端面に一体に設けられた筒状部15bとからなり、内部軸方向にドライブシャフト挿通孔15cが貫通形成されていると共に、カム本体15aの軸心Xがドライブシャフト13の軸心Yから径方向へ所定量だけオフセットしている。また、この駆動カム15は、ドライブシャフト13に対し前記両バルブリフター16,16に干渉しない両外側にドライブシャフト挿通孔15cを介して圧入固定されている。
【0029】
また、前記リンクアーム19は、比較的大径な円環状の基部19aと、該基部19aの外周面所定位置に突設された突出端19bとを備え、基部19aの中央位置には、前記駆動カム15のカム本体15aの外周面に回転自在に嵌合する嵌合孔19cが形成されている一方、突出端19bには、前記ピン23が回転自在に挿通するピン孔19dが貫通形成されている。また、リンクアーム19は、機関の巾方向に沿って横倒し状態に配置されている。
【0030】
前記揺動カム17,17は、図1及び図4に示すようにほぼ横U字形状を呈し、両者17,17間のほぼ円筒状の基部17aにドライブシャフト13が嵌挿されて回転自在に支持される支持孔17bが貫通形成されていると共に、ロッカアーム18他端部18b側に位置する端部24にピン孔24aが貫通形成されている。また、各揺動カム17,17の下面(カムフェース)には、基部17a側の基円面25aと該基円面25aから端部23端縁側に円弧状に延びるカム面25bとが形成されており、該基円面25aとカム面25bとが、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面所定位置に当接するようになっている。すなわち、図5に示すバルブリフト特性からみると、図1に示すように基円面25aの所定角度範囲θ1がベースサークル区間になり、カム面25bの前記ベースサークル区間θ1から所定角度範囲θ2がいわゆるランプ区間となり、さらにカム面25bのランプ区間θ2から所定角度範囲θ3がリフト区間になるように設定されている。また、揺動カム17,17は、基端円25aからカム面25bの端縁までのリフト立ち上がり時における回動方向がドライブシャフト13の回転方向と逆方向に設定されている。
【0031】
前記軸受14は、シリンダヘッド11の上端部に設けられて揺動カム17,17間の基部17aを支持するメインブラケット14aと、該メインブラケット14aの上端部に設けられて後述する制御軸を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a,14bが一対のボルト14c,14cによって上方から共締め固定されている。
【0032】
前記ロッカアーム18は、図1に示すように、ほぼく字形に折曲形成されて、シリンダヘッド11の上方内側にほぼ上下方向に沿って配置されており、中央に有する基部18cにサポートアーム21の先端部21bがピン26を介して回転自在に連結していると共に、一端部18aが前記ピン23を介してリンクアーム19の突出端19bに回転自在に連結されている一方、他端部18bがピン27を介してリンク部材20の一端部20aに回転自在に連結されている。
【0033】
前記リンク部材20は、図1にも示すように所定長さの直線状に形成され、円形状の両端部20a,20bは前記ロッカアーム18の他端部18cと揺動カム17の端部24にピン27,28を介して回転自在に連結している。
【0034】
そして、図1に示すように揺動カム17の回転中心点から該揺動カム17とリンク部材20の連結中心点を結ぶ直線Z1と、該連結中心点からリンク部材20の軸心を通る直線Z2とを所定の角度θで常時ほぼく字形状に折曲状態となるように配置している。尚、各ピン23,26,27の端部には、リンクアーム19やリンク部材20の軸方向の移動を規制する各スナップリング29が設けられている。
【0035】
前記サポートアーム21は、図1及び図4に示すようにほぼ直線状の平板状を呈し、前記リンクアーム19やリンク部材20と同様に機関の巾方向に沿って横倒し状態に配置され、筒状の基端部21aが該基端部21a内に形成されたドライブシャフト挿通孔21cを介してドライブシャフト13の外周面に回転自在に支持されていると共に、先端部21bが前述のようにピン26を介してロッカアーム18の基部18cのピン孔18dに揺動支点となるように連結されている。また、このサポートアーム21は、基端部21aが駆動カム15と揺動カム17との間に挾持された形で配置されている。さらに、このサポートアーム21は、駆動手段22によって上下方向へ回動して吸気弁12,12のリフト量を可変にするが、大リフト域から小リフト域への制御切換時における回動方向がドライブシャフト13の回転方向(矢印)と同一方向の下方へ回動するように設定されている。
【0036】
前記駆動手段22は、前記軸受14のメインブラケット14aとサブブラケット14bとの間に軸受された制御軸30と、該制御軸30の外周に一体に固定された制御カム31と、該制御カム31とサポートアーム21とを連係した制御リンク32と、前記制御軸30を回転制御する図外の電磁アクチュエータとから構成されている。
【0037】
前記各制御カム31は、円筒状を呈し、制御軸30外周に固定されていると共に、図1に示すように軸心P1位置が制御軸30の軸心Pからα分だけ偏倚している。
【0038】
また、制御リンク32は、大径円環状に形成された一端部32aが円形孔32cを介して制御カム31の外周面に回転自在に支持されていると共に、小径円環状の他端部32bがピン33を介してサポートアーム21の長手方向のほぼ中央位置に回転自在に連結されている。
【0039】
前記制御軸30は、一端部に設けられた前記電磁アクチュエータによって所定回転角度範囲内で回転するように制御されており、前記電磁アクチュエータは、機関の運転状態を検出する図外のコントローラからの制御信号によって駆動するようになっている。コントローラは、クランク角センサやエアーフローメータ,水温センサ等の各種のセンサからの検出信号に基づいて現在の機関運転状態を演算等により検出して、前記電磁アクチュエータに制御信号を出力している。
【0040】
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず、機関低速低負荷時には、コントローラからの制御信号によって電磁アクチュエータが一方に回転駆動される。このため、制御カム31は、軸心P1が図1及び図6に示すように制御軸16の軸心P2から左下方の回動位置に保持され、厚肉部31aがドライブシャフト13方向へ接近するように移動する。このため、サポートアーム21は、図示のように基端部21aを中心として下方へ回動してほぼ水平状態位置に保持される。したがって、ロッカアーム18は、全体が下方向へ移動し、このため、各揺動カム17は、リンク部材20を介して端部24が強制的に若干引き上げられて全体が左方向(反時計方向)へ回動する。
【0041】
したがって、駆動カム15の回転によりリンクアーム19を介してロッカアーム18の一端部18bを押し上げあるいは押し下げるとロッカアーム18がサポートアーム21の先端部21bを支点として揺動し、他端部18bからその揺動力がリンク部材20を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L1は図6に示すように比較的小さくなる。
【0042】
よって、かかる低速低負荷域では、図8の破線で示すようにバルブリフト量が小さくなると共に、各吸気弁12の開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
【0043】
一方、機関高速高負荷時に移行した場合は、コントローラからの制御信号によって電磁アクチュエータが反対方向に回転駆動される。したがって、図7A,Bに示すように制御軸30が、制御カム31を図1及び6に示す位置から時計方向に約180°回転させ、軸心P1(厚肉部31a)を上方向へ移動させる。このため、サポートアーム21は基端部21aを中心に上方へ回動して所定角度の回動位置に保持される。したがって、ロッカアーム18は、今度は全体が上方向に移動して他端部18bが揺動カム17の上端部24をリンク部材20を介して図中右方向へ押圧して該揺動カム17全体を所定量だけ時計方向へ回動させる。
【0044】
したがって、図7Aに示すように、揺動カム17のカム面25bはバルブリフター16上面に接近した状態になる。このため、駆動カム17が回転してロッカアーム18の一端部18aをリンクアーム19を介して押し上げると、バルブリフター16に対するそのリフト量L2は図7Bに示すように大きくなる。
【0045】
よって、かかる高速高負荷域では、図8の実線で示すようにカムリフト特性が低速低負荷域に比較して大きくなってバルブリフト量も大きくなると共に、各吸気弁12の開時期が早くなる一方、閉時期が遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。
【0046】
このように、本実施形態では、各吸気弁12の開閉時期やバルブリフト量を可変にできることは勿論のこと、ドライブシャフト13に、駆動カム15と各揺動カム17とを同軸上に設けたため、機関巾方向の配置スペースを十分に小さくすることができる。
【0047】
しかも、サポートアーム21やリンクアーム19,リンク部材20の全体を横倒し状態に配置し、したがって、ロッカアーム18もドライブシャフト13の側部側に配置したため、機関上下方向の配置スペースも十分に小さくすることができる。特に、前述のように最大リフト状態におけるロッカアーム18の揺動もサブブラケット14bの高さよりも低い位置で行われるので、図外のロッカカバー高さつまり機関の高さを十分に低くすることが可能になり、装置全体のコンパクト化が図れる。この結果、装置の機関への搭載性が向上する。また、ドライブシャフト13の配置を変更することなく、現行のドライブシャフト13の配置によって装置を設けることができるため、この点でも機関への搭載性が良好になる。
【0048】
さらに、駆動カム15と揺動カム17とをドライブシャフト13に同軸上に設けることにより、従来のような揺動カム17を支持する支軸が不要となり、この分、部品点数の削減が図れ、また、ドライブシャフト13と揺動カム17の互いの軸心のずれが生じないため、バルブタイミングの制御精度の低下を防止できる。
【0049】
しかも、各駆動カム15を、各バルブリフター16とオフセット配置し互いに干渉しない位置に配したため、各駆動カム15の外形を大きくとることができ、外周面15dの設計の自由度を向上させることが可能となり、これによって、揺動カム17の揺動量を確保するためのリフト量を十分に確保できると共に、駆動カム15の駆動面圧を低減するためのカム幅を十分に確保できる。
【0050】
さらに、駆動カム15は、リング状に形成され、外周面全体がリンクアーム基部19aの嵌合孔19cの内周面全体に摺接するため、外周面の面圧が分散されて、該面圧を十分に低減できる。したがって、嵌合孔19cの内周面間との摩耗の発生が抑制できると共に、潤滑も行い易い。さらに、面圧の低下に伴い駆動カム15の材料選択の自由度が向上し、加工し易くかつ低コストの材料を選択できる。
【0051】
また、本装置は、全体がいわゆる6リンク方式となるため、ロッカアーム18のロッカ比を大きくとることが可能となり、これによって駆動カム15のドライブシャフト13に対するオフセット量を大きく設定しなくても、つまり駆動カム15の外径を大きく設定しなくても、揺動カム17の大きな揺動角が得られる。この結果、装置全体のコンパクト化がさらに助長できる。
【0052】
また、ロッカアーム18と揺動カム17とがリンク部材20介して連係しているため、ロッカアーム18のロッカ比を比較的大きく設定しても、ロッカアーム18と揺動カム17との連係状態が常に保たれる。したがって、揺動カム17の大きな揺動角が得られることにより、揺動カム17の前記ランプ区間θ2を大きくすることが可能になり、これによってバルブリフター16と揺動カム17の衝突速度が緩和することができ、この結果、駆動騒音の発生を抑制することが可能になる。
【0053】
さらに、本装置は、2つの吸気弁12,12の間に設けられた軸受14に制御軸30も一緒に軸受けすることができるので、従来の内燃機関にそのまま搭載することが可能となり、この結果、シリンダヘッド11の形状変更を要さず、製造コストの高騰を防止できる。また、ドライブシャフト13も従来と同様のカムシャフト近傍位置とすることができるので、この点でもシリンダヘッドの形状変更が不要になる。
【0054】
また、サポートアーム21は、制御リンク32や制御カム31を介して制御軸30に支持された形になるため、駆動カム15やリンク部材20からロッカアーム18を介して上下方向の荷重を受けても、前記制御リンク32などによる安定した支持により上下のガタ付きや打音の発生を防止できる。
【0055】
また、図1を参照してみると、サポートアーム21はドライブシャフト13に回動自在に保持されるので、駆動カム15やリンク部材20あるいはロッカアームに作用する荷重のうち、サポートアーム21の長手方向成分Fx(先端部21b方向)は、サポートアーム21によって支持されるので、制御カム31は制御リンク32を介してサポートアーム21の回動力を支えればよく、制御カム31に作用する荷重が軽減する。したがって、制御カム31の駆動が容易となり、制御応答性の向上が図れるとともにアクチュエータのコンパクト化が図れる。ちなみに、従来例はロッカアームに作用する荷重はすべて制御カムで保持する構成であり、大きな制御トルクを必要としている。
【0056】
さらに、前述のように直線Z1と直線Z2が所定の角度θで常時ほぼく字形状に折曲状態となるように配置されているため、揺動カム17とリンク部材20との屈曲時、特に図7Aに示す大リフト制御時における最大伸長時から図1に示す小リフト制御時における最大伸長時まで、直線Z1と直線Z2のなす角度θは略一定となり、いわゆる突張り現象がなくなって屈伸性が良好になる。したがって、吸気弁12,12の常時円滑な開閉作動得られる。何故なら、図1に示すように小リフト制御のために、揺動カム17を、反時計方向へ回動させるのにドライブシャフト13の中心からロッカアーム18の揺動中心を遠ざけるのではなく、両中心間の距離を一定に保ったままロッカアーム18の揺動中心をドライブシャフト13を支点として反時計方向に回動させるため、ロッカアーム18とリンク部材20と揺動カム17の相対位置関係をほぼ一定に保てるからである。
【0057】
また、サポートアーム21は、駆動カム15と揺動カム17との間に挾持状態に配置されているため、ロッカアーム18からサポートアーム21に伝達されるローリング状の偏荷重すなわち、サポートアーム21をドライブシャフト13の長手方向に倒そうとするモーメントの発生が少なく、該サポートアーム21の基端部21aのドライブシャフト挿通孔21c内周面とドライブシャフト13の外周面との間の肩当たりなどによるフリクションの発生や偏摩耗等を防止でき、常時安定かつスムーズな回動(回動)が得られる。
【0058】
さらに、本実施形態によれば、機関高回転高負荷域から低回転低負荷域への移行時には、サポートアーム21が図7A,Bに示す上方回動位置(大リフト量)から図1,図6に示す水平回動位置(小リフト量)へ回動するわけであるが、この回動方向が、ドライブシャフト13(駆動カム)の回転方向と同一であり、かつ揺動カム17のリフト立上り時の回動方向とは逆回転方向になっているため、吸気弁12,12の開時期が図8に示すように遅くなり、リフトピーク点が遅れ側にずれる特性となる。すなわち、この大リフト状態から小リフトへ移行する際には、前述のようにまず制御カム31の下方回動に伴いサポートアーム21が下方向へ回動するが、このとき駆動カム15も同方向に回転しているため、上死点後からリフト開始(立上り)までの時間的な長さが長くなり、ロッカアーム18の揺動開始時期も一時的に遅くなる。一方、かかるサポートアーム21の回動方向とリフト立上り時の揺動カム17の回動方向が逆になっているので、ロッカアーム18の揺動開始時期の遅れに起因して揺動カム17のリフト立上り時期にも遅れが生じる。したがって、図8に示すように大リフト域から小リフト域への移行時の開弁時期が遅れる。
【0059】
このため、吸入行程でピストンが該行程の半分近くまで下降しても吸気弁は閉じたままとなり、その後、吸気弁が開くので気筒内に発生した負圧により、急激に吸入が行われて燃焼室内の混合ガスの流動が強くなって燃焼を改善できる。特に、冷機始動直後や低温時の低速低負荷時の燃焼改善が図れる。
【0060】
図9は本発明の第2の実施形態を示し、基本構造は、第1の実施形態と全く同一であるが、ドライブシャフト13の回転方向に対して、大リフト域から小リフト域への切換時におけるサポートアーム21の回動方向を逆方向に設定するとともに、揺動カム17を逆向きに配置し、リフト立上り時の揺動カム17の回動方向を、ドライブシャフト13の回転方向(駆動カムの回転方向)同方向となるように設定したものである。即ち、リフト立上り時の揺動カム17の回動方法は、サポートアーム21の回動方向と逆方向となるように設定したものである。
【0061】
したがって、大リフト域から小リフト域への切り換え時には、まずサポートアーム21が駆動手段22によって上方向へ回動すると共に、ロッカアーム18もそれに伴って上動するが、駆動カム15は逆方向に回転しているため、ロッカアーム18の揺動タイミングが一時的に早くなる。したがって、揺動カム17は、リフト立上り方向の回動が早くなり、吸気弁12,12のリフト特性が結果的に図10に示すように開弁開始時期が早くなる一方、閉弁時期が遅くなる。
【0062】
このように、吸気弁12,12の閉弁時期を大きく変化させることができるので、吸入行程の有効な行程長さを減じることにより、燃焼室内への吸気流量を規制できる。したがって、その分、スロットルバルブの絞り度合いを小さくすることが可能となり、結果として、ポンプ損失を低減できるのである。
【0063】
要するに、ドライブシャフト13とサポートアーム21の回動方向を同一あるいは逆方向に設定したことにより、揺動カム17の配置を変えれば、大リフト域から小リフト域への切り換え時における開弁時期あるいは閉弁時期を進遅制御できるので、最適なリフト特性が得られることは勿論のこと、機関の仕様に応じた最適なバルブタイミング制御が得られる。
【0064】
図11及び図12は、本発明の第3の実施形態を示し、駆動手段22の制御カムの構造を変更したもので、制御カム34を制御軸30に対してクランク状に折曲すると共に、該制御カム34に制御リンク32の一端部32aを軸受ブラケット35を介してボルト36により回転自在に連結したものである。
【0065】
したがって、第1の実施形態の制御カム31のように大径な偏心円弧カムとする必要がなくなり、コンパクトな形状で偏心量を大きく取れる。この結果、駆動手段22の小型化により、機関の高さをさらに低くすることが可能になる。
【0066】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば両揺動カム17,17の外形状を異ならせて2つの吸気弁12,12にリフト差を与えるようにすれば、1つの気筒内で吸気スワール効果が大きくなり、燃焼性が良好となるといった効果が得られる。
【0067】
前記各実施態様では、装置を吸気弁12側に適用した場合を示したが、排気弁側あるいは吸気・排気弁の両方に適用することも可能であり、さらに1気筒あたり2弁ではなく、1弁のものに適用することも可能である。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、機関弁のバルブタイミング及びバルブリフト量を可変制御できることは勿論のこと、駆動カムと揺動カムとをドライブシャフトに同軸上に設けたため、機関巾方向の配置スペースを十分に小さくすることができると共に、ロッカアームも機関巾方向へ延設する必要がなくなるため、装置全体のコンパクト化が図れる。この結果、装置の機関への搭載性が向上する。
【0069】
しかも、揺動カムを偏心カムと一緒にドライブシャフトに設けることにより、従来のような支軸が不要になるため、部品点数の削減が図れると共に、ドライブシャフトと揺動カムの互いの軸心のずれが生じないため、バルブタイミングの制御精度の低下を防止できる。
【0070】
また、特に本発明は、ロッカアームをサポートアーム等を介してドライブシャフト上方位置ではなく、横方向へ配置したため、上下方向の揺動スペースが不要になり、機関の高さを十分に低くすることが可能になる。この結果、前記横巾方向の省配置スペース化と相俟って装置の機関への搭載性が一層向上する。
【0071】
さらに、請求項2記載の発明によれば、サポートアームが制御リンクや制御カムを介して制御軸に安定に支持されているため、駆動カムなどからロッカアームを介して上下方向の荷重を受けても、ガタ付きや打音の発生が防止される。
【0072】
請求項3記載の発明によれば、ロッカアームからサポートアームに伝達されるローリング状の偏荷重が抑制されて、ドライブシャフトに対するサポートアームの倒れが規制できる。この結果、サポートアームの基部とドライブシャフト外周面との間の肩当たりなどによるフリクションの発生や偏摩耗等を防止できる。
【0073】
請求項4記載の発明によれば、揺動カムとリンク部材との屈伸時におけるいわゆる突張り現象が回避されて常時円滑な屈伸運動が得られ、この結果、機関弁の開閉作動が良好になる。
【0074】
請求項5〜7記載の発明によれば、機関弁の開閉時期特性を機関の仕様などに応じて変えることができるので、優れた機関性能を引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す図2のA−A線断面図。
【図2】本実施形態を一部断面して示す側面図。
【図3】同実施形態の平面図。
【図4】同実施形態に供される各構成部品の分解斜視図。
【図5】揺動カムの基端面とカム面に対応したバルブリフト特性図。
【図6】低速低負荷時の作用を示す図2のB−B線断面図。
【図7】A,Bは高速高負荷時の作用を示す図2のB−B線断面図。
【図8】本実施形態のバルブタイミングとバルブリフトの特性図。
【図9】本発明の第2の実施形態を示す断面図。
【図10】本実施形態のバルブタイミングとバルブリフトの特性図。
【図11】本発明の第3の実施形態を示す部分図。
【図12】同実施形態の図11のC矢視図。
【図13】従来の可変動弁装置を示す断面図。
【符号の説明】
11…シリンダヘッド
12…吸気弁
13…ドライブシャフト
15…駆動カム
17…揺動カム
18…ロッカアーム
18a…一端部
18b…他端部
19…リンクアーム
19a…基部
19b…突出端
20…リンク部材
21…サポートアーム
21a…基端部
21b…先端部
22…駆動手段
25a…基円面
25b…カム面
30…制御軸
31…制御カム
32…制御リンク
Z1,Z2…直線

Claims (8)

  1. 機関のクランク軸によって回転駆動し、外周に駆動カムが固定されたドライブシャフトと、
    該ドライブシャフトに揺動自在に設けられ、機関弁を開作動させる揺動カムと、
    一端部が連係部材を介して前記駆動カムに回転自在に連係しかつ他端部がリンク部材を介して揺動カムの端部に連係したロッカアームと、
    機関の巾方向に沿ってほぼ横方向に配置され、基端部がドライブシャフトに回転自在に支持されかつ先端部がロッカアームの揺動支点位置に連係したサポートアームと、
    該サポートアームを上下方向へ回動させる駆動手段と、
    該駆動手段を機関運転状態に応じて制御する制御手段と、を備え、
    前記駆動手段によってサポートアームを上下方向へ回動させることにより、前記ロッカアーム及びリンク部材を介して揺動カムの揺動位置を制御して機関弁のリフト量を可変制御することを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
  2. 前記駆動手段は、ドライブシャフトと並行に配設された制御軸と、該制御軸に固定された制御カムと、一端部が制御カムの外周に回転自在に連係し、他端部が前記サポートアームに連係した制御リンクと、前記制御軸を所定回転角度範囲で回転駆動するアクチュエータとから構成したことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の可変動弁装置。
  3. 前記サポートアームを、前記駆動カムと、揺動カムとの間に挾持状態に配置したことを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の可変動弁装置。
  4. 前記揺動カムの回転中心点から前記ロッカアームの揺動中心点の距離が一定となるよう配置すると共に、前記揺動カムの回転中心点から該揺動カムとリンク部材の連結中心点を結ぶ直線と、前記連結中心点からリンク部材の軸心を通る直線との両直線間を所定の角度で常時ほぼく字形状に折曲状態となるように配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁装置。
  5. 前記機関弁の大リフト域から小リフト域への変換時における前記サポートアームの回動方向を、前記ドライブシャフトの回転方向と同方向に設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁装置。
  6. 前記機関弁の大リフト域から小リフト域への変換時に前記サポートアームの回動方向を、前記ドライブシャフトの回転方向と逆方向に設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁装置。
  7. 機関弁のリフト立上り時における揺動カムの回動方向に対して、機関弁の大リフト域から小リフト域への変換時のサポーアームの回動方向を逆方向に設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁装置。
  8. 前記連係部材は、リンクアームであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の可変動弁装置。
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