JP3913898B2 - アルカリペクチン酸リアーゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は洗浄剤、食品加工剤、繊維処理剤等として有用なアルカリペクチン酸リアーゼ、該アルカリペクチン酸リアーゼを産生する微生物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)は、1962年、バチルス ポリミキサ(Bacillus polymyxa)及びエルビニア カルトボーラ(Erwinia cartovora)の培養液に初めて見い出され、ペクチン酸に対してβ−脱離反応により、α−1,4結合を切断し、非還元末端にC4〜C5不飽和結合を形成する酵素であり、反応にカルシウムイオンを必要としている(Starr & Moran, Science, 135, 920-921, 1962)。
【0003】
一般に、細菌由来(Pseudomonas属、Erwinia属、Bacillus属等)のペクチン酸リアーゼの最適反応pHは、pH8〜9.5付近のアルカリ領域にあることが知られている(Rombouts & Pilnik, Economic Microbiol, 5, 227-282, 1980)。さらに、真菌及びいくつかの細菌由来のペクチン酸リアーゼは、その最適pHがpH10〜10.5であると報告されている。例えば、Fusarium oxysporum f. sp. cice ri株の生産する2種のアルカリペクチン酸リアーゼ(Artes & Tana. Physiol. Mol. Plant Pathol., 37, 107-124, 1990)、Bacillus sp. YA-14株(Han et al., Korean J. Appl. Microbiol. Biotechnol., 20, 655-662, 1992)、Amycolata sp.株(Bruhlmom, Appl. Environ. Microbiol., 61, 3580-3585, 1995)等が生産する酵素が知られている。
【0004】
一方洗剤工業界においてもペクチナーゼを工業的に利用しようとする試みがなされており、例えば、特公平6−39596号公報、WO95/25790号等の技術が知られている。前者においては、セルラーゼは繊維を傷めるという観点からペクチナーゼ単独で泥汚れ洗浄力に対する効果について述べられているが、完全に精製された酵素を用いていないためにその効果に関しては明確ではない。さらに洗浄剤に関するものとして洗浄剤組成物(特開昭60−226599号公報)が開示されているが、これはリゾプス属のセルラーゼ及びペクチナーゼを併用することで洗浄力を発揮するというものであるが、いずれも中酸性領域に最適pHを有する酵素である。
【0005】
また、植物性繊維の精練に関しては、例えば、特開昭51−149976号公報、特公昭57−39636号公報、特開平6−220772号公報等に、ペクチナーゼ(ペクチン酸リアーゼを含む)を植物繊維の精練、非木材繊維のパルプ化、木綿繊維の精練に使用することが開示されている。かかる繊維の精練においてはアルカリ領域で処理することで精練度合を高めることができるとされている。また、一般の衣料用洗剤や漂白剤も高アルカリ性(pH10〜11)にすることによってその洗浄力を高めることができる。
【0006】
しかし、このような高アルカリ性に最適pHを有する酵素は前述のように数例が報告されているだけで、工業的に生産されているものも無く、入手が困難である。
【0007】
従って、本発明は高アルカリ領域において充分作用し、工業的に生産可能なアルカリペクチン酸リアーゼを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは新たなペクチン酸リアーゼを探索すべく日本国内の土壌よりスクリーニングしたところ、特定の微生物が産生する高アルカリ領域に最適反応pHを有する新規な2種類のアルカリペクチン酸リアーゼを見出し本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、下記の酵素学的性質を有するアルカリペクチン酸リアーゼ、
【0010】
(1)作用 ペクチン酸(ポリガラクツロン酸)をβ−脱離反応によってα−1,4結合を切断すると共に非還元末端のC4〜C5位に二重結合を付与し不飽和オリゴガラクツロニドを生成する。
(2)基質特異性 プロトペクチン、ペクチン酸(ポリガラクツロン酸)、酸可溶性ペクチン酸、ペクチンに作用する。
(3)最適反応 pH11.0(30℃、50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中、ペクチン酸を基質とした場合)
(4)安定pH 4〜8(30℃、40mMブリットン・ロビンソン広域緩衝液中、60分間処理)
(5)最適反応温度 約45℃(50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中、ペクチン酸を基質とした場合)
(6)耐熱性 約40℃(pH7.5、1mM塩化カルシウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝液中、20分処理)
(7)分子量 約16kDa (ゲルろ過法;SDSポリアクリルアミド電気泳動法では約27kDa)
(8)等電点 pH10.1付近(等電点電気泳動法)
(以下かかる酵素学的性質を有するものを「酵素A」という)。
【0011】
及び下記の酵素学的性質を有するアルカリペクチン酸リアーゼ、
(1)作用 ペクチン酸(ポリガラクツロン酸)をβ−脱離反応によってα−1,4結合を切断すると共に非還元末端のC4〜C5位に二重結合を付与し不飽和オリゴガラクツロニドを生成する。
(2)基質特異性 ペクチン酸(ポリガラクツロン酸)、酸可溶性ペクチン酸、ペクチンに作用する。
(3)最適反応 pH10.5(30℃、50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中、ペクチン酸を基質とした場合)
(4)安定pH 4〜10(30℃、40mMブリットン・ロビンソン広域緩衝液中、60分間処理)
(5)最適反応温度 約40℃(50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中、ペクチン酸を基質とした場合)
(6)分子量 約28kDa (ゲルろ過法;SDSポリアクリルアミド電気泳動法では約32kDa)
(7)等電点 pH10.5付近(等電点電気泳動法)
(以下かかる酵素学的性質を有するものを「酵素B」という)を提供するものである。
【0012】
本発明はまたかかるペクチン酸リアーゼを産生するバチルス エスピーKSM−P539(FERMP−15991)を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の酵素A及びBは、アルカリペクチン酸リアーゼ生産菌を培養し、その培養物から採取することにより製造される。かかるアルカリペクチン酸リアーゼとしては、バチルス属に属する細菌、例えば下記の菌学的性質を有するバチルスエスピーKSM−P539株が挙げられる。
【0014】
【0015】
【0016】
以上の菌学的性質について「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」(Williams & Wilkins社、1984年)の記載に準じ検討したところ、本菌株はバチルス コアグランス(Bacillus coagulans)に類似の性質を有していた。しかし、既知のバチルス コアグランスの諸性質とは完全に一致しない新規な微生物である為、本菌株を工業技術院生命工学研究所にバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−P539(FERM P−15991)として寄託した。
【0017】
KSM−P539株等のアルカリペクチン酸リアーゼ生産菌を用いて本発明アルカリペクチン酸リアーゼを生産するには、菌株を同化性の炭素源、窒素源その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い培養すれば良い。かくして得られた培養液中からのアルカリペクチン酸リアーゼの採取及び精製は、一般の採取及び精製法に準じて行うことができる。KSM−P539株からは2種類以上のアルカリペクチン酸リアーゼが生産され、そのまま用いることもできるが、一般の酵素精製法により2種類の酵素を分離することができる。さらに公知の方法により結晶化または造粒化することもできる。
【0018】
かくして得られる本発明のアルカリペクチン酸リアーゼの一例であるBacillus sp. KSM−P539株由来のアルカリペクチン酸リアーゼは、以下に示すような理化学的性質を有する。なお、酵素活性の測定は次の如くして行った。
【0019】
(1)標準酵素活性測定法
試験管に0.2mlの0.5Mグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.5)、0.3mlの4mM塩化カルシウム溶液、1mlの脱イオン水を加え、氷冷下にて0.1mlの酵素液(希釈は1mM塩化カルシウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝液、pH7.5により行った)を加え、30℃、5分間恒温した。反応は、0.4mlの1%(w/v)ポリガラクツロン酸水溶液(ICN社:Lot 14482、水酸化ナトリウム溶液にてpH6.8に調整したもの)を添加し開始した。30℃で10分間恒温した後、2mlの50mM塩酸を加え反応を停止した。生成した不飽和オリゴガラクツロン酸量は235nmにおける吸光度を測定し、不飽和ジガラクツロニドの分子吸光係数4600(Hasegawa & Nagel, J. Food Sci., 31, 838-845, 1966)を用いて求めた。なお、ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液に2mlの50mM塩酸を加え、その後に0.1mlの酵素液を添加したものを用いた。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmol の不飽和ジガラクツロニド相当の不飽和オリゴガラクツロニドを生成する量とした。
【0020】
(2)最適反応pH
50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7〜9.5)、または50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8〜12)を用いて30℃で最適反応pHを調べたところ、酵素Aはグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液pH11中で最も反応速度が高く、pH10.5〜12.0の範囲内において最高活性の70%以上の活性を示した。しかしトリス−塩酸緩衝液中では殆ど活性は認められなかった。酵素Bはグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液pH10.5中で最も反応速度が高く、pH10〜11の範囲内において最高活性の70%以上の活性を示した。トリス−塩酸緩衝液中ではpH9.5で最も反応速度が高かったが、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液の最高活性に比べると約半分の活性であった(図1及び図2)。
【0021】
(3)pH安定性
40mMブリットン・ロビンソン広域緩衝液(pH4〜12)中に0.1mMの塩化カルシウムを添加した系と無添加の系を用い、酵素液を加えて30℃、1時間恒温した後の残存活性を標準酵素活性測定法にて調べた。その結果、酵素AはpH4〜8、酵素BはpH4〜10の範囲で極めて安定であった。また酵素Bの安定性に塩化カルシウムの添加効果が認められた。
【0022】
(4)最適反応温度
50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.5)中にて20℃〜70℃の各温度で酵素反応を行い、最適反応温度を調べた。その結果、両酵素は20℃〜50℃の広範囲において作用し、酵素Aの最適反応温度は45℃であり、酵素Bの最適反応温度は40℃であった(図3及び図4)。
【0023】
(5)耐熱性
50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に1mM塩化カルシウムを添加した系及び無添加の系を用意し、酵素を加えて30℃〜70℃の各温度で20分間放置した。その後氷中で急冷し、残存活性を標準酵素活性法にて調べた。その結果、酵素Aは塩化カルシウム存在下で40℃まで安定であった。酵素Bの耐熱性は同様に塩化カルシウム存在下で若干安定化されるものの酵素Aに比べ耐熱性は低いことが判った。
【0024】
(6)分子量
a.ゲルろ過法
1mM塩化カルシウム及び0.1M塩化カリウムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したセファデックスG−75 Superfine(1.5cm×71cm)を用いて、酵素A、Bの分子量を求めた結果、酵素Aは約16kDa、酵素Bは約28kDa と見積もられた。なお、検量線を作成する為の標準タンパク質としてファルマシア社製のLMWゲルろ過キャリブレーションキットを用いた。
【0025】
b.SDS−PAGE法
15%ポリアクリルアミドゲルを用い、酵素A、Bの分子量を求めた結果、酵素Aは約27kDa 、酵素Bは約32kDa と見積もられた。なお、標準タンパク質としてバイオラッド社製の、SDS−PAGE Molecular Weight Standards, Low Rangeを用いた。
【0026】
(7)等電点
pH8〜10.5のアンフォライン(ファルマライト、ファルマシア社製)を含む5%ポリアクリルアミドゲルを用い、等電点電気泳動法で測定した結果、酵素Aの等電点はpH10.1付近、酵素Bの等電点はpH10.5付近であった。
【0027】
(8)アミノ末端アミノ酸配列
酵素AまたはBをProSorb フィルター(パーキンエルマー社製)にブロッティングし、プロテインシークエンサー(674型、アプライドバイオシステム社製)を用いてアミノ末端アミノ酸配列を20番目のアミノ酸まで決定した結果、酵素AはAPTVVNSTIVVPKGGTYYGQであり、酵素BはADASGTTASMSDILKNQRPDであった。
【0028】
(9)基質特異性
ポリガラクツロン酸の代わりにエステル化度の異なるペクチンを基質とした場合の反応速度を標準酵素活性測定法を用いて調べた。酵素Aは、ポリガラクツロン酸(ICN社製、Lot 14482)に対して最も反応性が高く、同じポリガラクツロン酸(シグマ社製、Lot 122H3780)を用いた時の約2倍の反応速度であった。エステル化度28、67、93%のペクチンを基質とした場合、相対活性は20、5、7%(ICN社製のポリガラクツロン酸に対する反応速度を100とした場合)とエステル化度の増加に伴い、その反応性は減少したが、若干の作用は示した。一方酵素Bはポリガラクツロン酸(ICN社製、Lot 14482)に対して最も反応性が高かったが、同じポリガラクツロン酸(シグマ社製、Lot 122H3780)を用いた場合、ほぼ同じ反応速度であった。エステル化度28、67、93%のペクチンを基質とした場合、相対反応速度は94、43、9%と減少したが、酵素Aに比べ28、67%のエステル化度を有するペクチンに対し高い分解活性を示した。さらにWardとFogarty の方法(J. Gen. Microbiol., 73, 439-446, 1972)に従い酸可溶性ペクチン酸を基質として用いた場合、両酵素はペクチン酸(ICN社製)に対する反応速度と同程度の反応速度で分解した。
次に基質として木綿糸(カナガワヌイイト社製、金鈴印シロモ、40/3甘より)を30cm(約13mg)を0.6mM塩化カルシウムを含む50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.5)に入れ、酵素を添加した後、30℃、60分間反応させた。遊離したペクチンをオルシノール塩酸法により定量した(Fernell & King, Analyst, 78, 80-83, 1953 )。その結果、0.1Uの酵素Aを用いた場合1gの木綿繊維あたりガラクツロン酸として約2.3mgのペクチン遊離量が認められた。しかしながら酵素Bではペクチン遊離量は認められなかった。以上の結果から酵素AはA−タイプのプロトペクチナーゼ活性を有するペクチン酸リアーゼであり、酵素Bはプロトペクチナーゼ活性を示さないペクチン酸リアーゼであると判断された。
【0029】
(10)金属イオンの影響
5mMのEDTAを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に酵素液を加え、30℃、10分間、恒温した後、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で10倍に希釈した。標準酵素活性測定法で塩化カルシウムの代わりに各種金属塩を加え、反応性に対する影響を調べた。その結果、酵素Aはバリウム、亜鉛、鉄(II)イオンの各イオンを添加した場合に若干の分解反応が認められたが、いずれもカルシウムイオンの場合の10%以下の反応速度であった。酵素Bはカルシウムイオンに比べストロンチウムイオンで約60%、鉄(III)イオンで約30%の反応速度であった。
次に2mMのEDTAを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.5)にて希釈した酵素液を50mM MOPS緩衝液(pH7.5)、5mMの各金属塩となるように調製した処理液に1/10量添加し、30℃、30分間恒温した。処理した酵素液を50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)にて希釈し、標準酵素活性測定法により残存活性を測定した。上記の処理により酵素Aは各金属イオンに対し極めて安定であった。酵素Bも各種イオンに対し極めて安定であったが、銀イオンにより完全に阻害され、銅イオンにより約50%阻害された。
【0030】
(11)各種化合物の影響
EDTA、トリポリリン酸等のキレート剤(0.1〜0.5%)、ソフタノール70H、アルキルグルコシド等の界面活性剤(0.1%)を含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に酵素液を加え、30℃、30分間恒温した後氷冷し、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で10倍希釈し、残存活性を標準酵素活性測定法にて調べた。その結果、酵素A、Bとも各種化合物により阻害されることはなかった。
【0031】
このように本発明品の酵素Aは、プロトペクチナーゼ活性を有するAタイプの酵素であり、単純なベル型のpH−活性曲線を示し、その最適反応pHは11にあり、分子量約16kDa (ゲルろ過法:SDS−PAGEでは約27kDa)である。
また酵素Bは、プロトペクチナーゼ活性を有しないタイプの酵素であり、単純なベル型のpH−活性曲線を示し、その最適反応pHは10.5にあり、分子量は約28kDa(ゲルろ過法:SDS−PAGEで約32kDa)である。これらの性質を有する本発明酵素は、以上の点で従来のFusarium oxysporum f. sp. ciceri株、Fusarium solani f. sp. pisi株、Bacillus sp. YA-14株、及びAmycolata sp.の生産するアルカリペクチン酸リアーゼと大きく異なっている。
【0032】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0033】
実施例1:アルカリペクチン酸リアーゼのスクリーニング
日本各地の土壌を滅菌水に懸濁したもの、あるいは花王(株)の微生物保存室に保有の菌株をペクチンを含有する寒天平板培地に塗布し、30℃で3〜5日間培養を行い、菌が生育した後、5℃にて1日静置した。ペクチンの分解に起因してコロニー周辺に溶解斑を形成した菌を選抜してペクチン酸リアーゼ生産能を検定した。その結果、アルカリペクチン酸リアーゼ生産菌としてバチルス エスピーKSM−P539株を得た。
【0034】
実施例2:KSM−P539株の培養
上述のスクリーニングにより得られたバチルス エスピー KSM−P539株の培養は、坂口フラスコに50mlの液体培地を加えて30℃、1日間振盪培養を行った。培地組成は1%(w/v)ポリペプトンS、0.5%酵母エキス、1%魚肉エキス、0.15%リン酸2カリウム、0.001%塩化カルシウム、0.5%ペクチン、0.5%炭酸ナトリウムとした。
【0035】
実施例3:酵素A、Bの精製
バチルス エスピー KSM−P539株の培養液を遠心分離(12,000×g、20分)し、その上澄液(5150ml)に硫酸アンモニウムを90%飽和となるように徐々に添加した。5℃で一昼夜放置した後、遠心分離(12,000×g、20分)を行い沈殿物を回収した。これを少量の1mM塩化カルシウムを含む10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、同緩衝液に対して一昼夜透析を行った。得られた透析内液(240ml)のうち80mlずつをあらかじめ1mM塩化カルシウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)にて平衡化しておいたスーパーQトヨパール650M(東ソー社製)カラム(2.5×10cm)へ添着した。平衡化緩衝液にて洗浄溶出される画分に活性が認められ、これを集めた(295ml)。次に1mM塩化カルシウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)にて平衡化しておいたSPトヨパール650M(東ソー社製)カラム(2.5×20cm)へ上記の非吸着画分150mlを添着した。0から0.2Mの塩化ナトリウムを用いた濃度勾配溶出法により、吸着したタンパク質を溶出させた。ペクチン酸リアーゼは0.1M及び0.15M付近の塩化ナトリウム濃度で2種類溶出され、0.15M付近の塩化ナトリウム濃度で溶出されるペクチン酸リアーゼはSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において単一なタンパク質として検出された。本精製酵素をペクチン酸リアーゼBとした。0.1M付近の塩化ナトリウム濃度で溶出されるペクチン酸リアーゼは単一のタンパク質ではなかったため、限外ろ過(アミコンメンブランYM−3)を用いて濃縮し、0.2mM塩化カルシウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7)により平衡化したハイドロキシアパタイト(Bio Rad社製)カラム(1.6×10cm)へ添着した。同緩衝液と0.2mM塩化カルシウムを含む100mMリン酸緩衝液(pH7)による濃度勾配溶出法により、タンパク質を溶出し、85mM付近のリン酸緩衝液で溶出されるペクチン酸リアーゼはSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において単一なタンパク質として検出された。本精製酵素を酵素Aとした。上記精製操作により酵素Aは約30倍、酵素Bは約35倍までそれぞれ精製された。得られた精製酵素は前記の酵素学的性質を有していた。
【0036】
【発明の効果】
本発明ペクチン酸リアーゼは、高アルカリ条件下で優れたペクチン酸リアーゼ活性を有し、衣料用や食器用等の洗浄剤配合用酵素として、また繊維処理用酵素として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明酵素Aの活性に及ぼすpHの影響を、pH11の活性を100とした場合の相対値で表したものである。
【図2】本発明酵素Bの活性に及ぼすpHの影響を、pH10.5の活性を100とした場合の相対値で表したものである。
【図3】本発明酵素Aの活性に及ぼす温度の影響を、45℃の活性を100とした場合の相対値で表したものである。
【図4】本発明酵素Bの活性に及ぼす温度の影響を、40℃の活性を100とした場合の相対値で表したものである。
Claims (3)
- 下記の酵素学的性質を有するアルカリペクチン酸リアーゼ。
(1)作用 ペクチン酸(ポリガラクツロン酸)をβ−脱離反応によってα−1,4結合を切断すると共に非還元末端のC4〜C5位に二重結合を付与し不飽和オリゴガラクツロニドを生成する。
(2)基質特異性 プロトペクチン、ペクチン酸(ポリガラクツロン酸)、酸可溶性ペクチン酸、ペクチンに作用する。
(3)最適反応 pH11.0(30℃、50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中、ペクチン酸を基質とした場合)
(4)安定pH 4〜8(30℃、40mMブリットン・ロビンソン広域緩衝液中、60分間処理)
(5)最適反応温度 約45℃(50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中、ペクチン酸を基質とした場合)
(6)耐熱性 約40℃(pH7.5、1mM塩化カルシウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝液中、20分処理)
(7)分子量 約16kDa (ゲルろ過法;SDSポリアクリルアミド電気泳動法では約27kDa)
(8)等電点 pH10.1付近(等電点電気泳動法) - 下記の酵素学的性質を有するアルカリペクチン酸リアーゼ。
(1)作用 ペクチン酸(ポリガラクツロン酸)をβ−脱離反応によってα−1,4結合を切断すると共に非還元末端のC4〜C5位に二重結合を付与し不飽和オリゴガラクツロニドを生成する。
(2)基質特異性 ペクチン酸(ポリガラクツロン酸)、酸可溶性ペクチン酸、ペクチンに作用する。
(3)最適反応 pH10.5(30℃、50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中、ペクチン酸を基質とした場合)
(4)安定pH 4〜10(30℃、40mMブリットン・ロビンソン広域緩衝液中、60分間処理)
(5)最適反応温度 約40℃(50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中、ペクチン酸を基質とした場合)
(6)分子量 約28kDa (ゲルろ過法;SDSポリアクリルアミド電気泳動法では約32kDa)
(7)等電点 pH10.5付近(等電点電気泳動法) - 請求項1または2記載のペクチン酸リアーゼを産生するバチルス エスピーKSM−P539(FERMP−15991)。
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