JP3913793B2 - 電気掃除機の吸い込み装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、吸い込み装置に回転ブラシ及び駆動輪を備えた電気掃除機の構造並びに回転ブラシ及び駆動輪の回動動作制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の電気掃除機としては、絨毯等の深部のゴミを吸引するために、これを掻き上げる回転ブラシを備えたものがある。このようなものにおいては、吸い込み力を向上させるために、近年回転ブラシをより高速で回転させて運転することにより集塵性能の向上を図っている。また、掃除機本体の吸い込み用モータの高パワー化による吸い込み力の向上につれて、掃除面への吸着力が高くなり、操作性が阻害されることから、これを解消するために動力付きの駆動輪を設けて吸い込み装置に推進力を与え、掃除動作を軽減しているものがある。この場合、回転ブラシと駆動輪との動力源となるモータを共用することにより装置の簡略化、軽量化及び低コスト化を実現している。
【0003】
しかしながら、回転ブラシが高速で回転することにより絨毯面をいたずらに傷めてしまったり、駆動輪が高速で回転するために掃除面をスリップし、掃除面を傷めてしまうという問題点があった。
このような問題点を解消するものとして、例えば特開平5−192272号公報に開示されたものがある。図9は該公報に示された電気掃除機の吸い込み装置を示す部分断面図であり、図において、51は吸い込み装置に内蔵された回転ブラシである。
【0004】
52は回転ブラシ51の一側に一端が固着された回転軸となる軸、53は軸52の他端においてこの軸52を軸支する軸受、54は軸52の軸間にて軸52に固着された歯車A54、55は同じく軸52の軸間にて軸52に固着されたギア、56はギア55と図示しないモータとを連結し、モータの回転駆動力を軸52に伝えるベルト、57は歯車A54と歯合し遊星ギアとして回動する複数からなる歯車B、58は内周が歯車B57と歯合して回動する内歯車、59は内歯車58の外周面を形成する吸い込み装置の駆動輪である。そして、上記歯車A54、歯車B57及び内歯車58で遊星歯車機構を構成している。
【0005】
次に動作について説明する。モータからの回転駆動力はベルト56を介してギア55へと伝えられ、軸52の回転により回転ブラシ51が回転し、掃除面のゴミを掻き上げる。掻き上げられたゴミは、図示しない吸込パイプから吸引されていく。一方、軸52の回転に応じて、歯車A54が回転すると、これに連動して歯車B57及び内歯車58が回転し、この結果、駆動輪59は回転ブラシ51より低速で回転する。該公報においては、回転ブラシ51の毎分4000回転に対して駆動輪59は毎分1000回転が得られる。このような構造により、回転ブラシ51の回転数に対して駆動輪59の回転数を減速することが可能になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電気掃除機の吸い込み装置は以上のように構成されているので、回転ブラシ51の回転数に対して駆動輪59の回転数を減らすことにより、集塵性能を向上させつつ駆動輪59のスリップによる掃除面の傷みを低減することができるものの、回転ブラシ51の回転速度は高速で一定のため、絨毯を傷めることに変わりはなく、駆動輪59も回転ブラシ51の回転速度に対して一定の減速比で減速されるから、絨毯、板面等掃除面の状態の違いにより相変わらず駆動輪59がスリップするものであり、掃除面を傷つけるという問題点を解消するには至らないものであった。
【0007】
また、回転ブラシ51の回転を必要としない、例えば板の間等の掃除において、モータを停止した状態で掃除動作(掃除面に対する吸込装置の摺動動作)を行うと、駆動輪59の回転に伴い歯車A54も回転するため、軸52から回転ブラシ51並びにギア55及びベルト56を介してモータを回転させることになり、動作として非常に重い操作力を必要とするという問題点があった。
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたものであり、遊星歯車機構を用いた簡単な構成で回転ブラシと駆動輪とを一つの動力源で駆動し、しかもこれらが操作性、集塵性能が好適となる回転状態となり、且つ掃除面を傷めることのない電気掃除機の吸い込み装置を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る電気掃除機の吸い込み装置は、掃除面に当接しごみ等を掻き出す回転ブラシと、モータに連結されこのモータの駆動力に応じて回転する太陽ギアと、この太陽ギアと歯合して自転すると共に前記太陽ギアを中心に公転する遊星ギアと、この遊星ギアの公転運動を回転駆動力として前記回転ブラシに伝達し前記回転ブラシを前記遊星ギアの公転周期で回転させるブラシ軸と、前記太陽ギアと回転中心を同一にし内周に前記遊星ギアと歯合する内歯ギアを有する駆動輪とを備えたものである。
【0009】
また、遊星ギアが太陽ギアを公転することを規制可能にする遊星ギアロック手段を備えたものである。
また、太陽ギアの回転を規制可能にする太陽ギアロック手段を備えたものである。
また、太陽ギアロック手段による太陽ギアの回転規制時にモータの太陽ギアへの回転駆動を遮断するスイッチ手段を備えたものである。
【0010】
また、遊星ギアが前記太陽ギアを公転することを規制可能にする遊星ギアロック手段と、前記太陽ギアの回転を規制可能にする太陽ギアロック手段と、前記遊星ギアロック手段と前記太陽ギアロック手段とを択一的に動作可能にする切り替え手段とを備えたものである。
【0011】
【作用】
この発明における電気掃除機の吸い込み装置は、遊星歯車機構の太陽ギアにモータを連結すると共に遊星ギアの公転運動が回転ブラシの回転運動として伝達されるよう連結し、内歯ギアを駆動輪として構成することにより、回転ブラシの回転数をモータの回転数に対して可変的に減速する。また、駆動輪が掃除面に接触することにより駆動輪にかかる抵抗が回転ブラシの回転力に替わり、駆動輪は掃除面に対してスリップすることなく当接する。
【0012】
また、遊星ギアロック手段により遊星ギアの公転が規制され、モータ通電時に回転ブラシの回転を停止して駆動輪のみを回転させる。モータ停止時においても遊星ギアは自転可能なので回転ブラシを停止したまま駆動輪が自由に回動する。 また、太陽ギアロック手段により太陽ギアの回転が規制され、モータ停止時の掃除動作において、駆動輪の回転に伴い太陽ギア及びモータを回転させることなく、駆動輪の回転に伴い駆動輪より低速で回転ブラシが回転する。
【0013】
また、スイッチ手段により太陽ギアロック手段の動作に連動してモータから太陽ギアへの回転駆動力の伝達を遮断し、太陽ギアロック手段の作動による太陽ギアの回転規制時にモータがロックされることを防止する。
また、切り替え手段により遊星ギアロック手段と太陽ギアロック手段のいずれか一方のみが選択的に動作可能となり、双方が同時に動作することを防止する。これにより遊星ギアの公転と太陽ギアの回転を同時に規制することを防止する。
【0014】
【実施例】
実施例1.
以下、この発明の実施例を図について説明する。図1はこの発明における電気掃除機の吸い込み装置を示す上部断面図であり、図において、1は掃除機の吸い込みパイプ等に装着される吸い込み装置本体、2は吸い込み装置本体1内に配設された駆動用のモータ、3は絨毯等掃除する場合、塵埃を掻き上げる回動自在な回転ブラシで、下方が掃除面に対面するよう吸い込み装置本体1内に配設されている。4はモータ2の駆動軸に固着されたモータ側プーリ、6は後述する入力軸9に固着されたブラシ側プーリ、5はモータ側プーリ4とブラシ側プーリとの間に掛け渡されモータ2の駆動力を入力軸9へと伝達するベルトである。
【0015】
7は入力軸9と回転ブラシ3との間に介在し、モータ2の回転駆動力を回転ブラシ3へと伝達する遊星歯車機構、8は回転ブラシ3の遊星歯車機構7とは反対側の側方に設けられ、吸い込み装置本体1が前後に移動する掃除動作を円滑にするための補助輪である。
図2は上記遊星歯車機構7及びその周辺機構部を詳細に示す部分側断面図であり、図において、9はブラシ側プーリ6に固着された入力軸、10は入力軸9を吸い込み装置本体1内に支持する入力軸受け部である。
【0016】
11は中心に入力軸9の一端が嵌入されて固着され、入力軸9を回転軸としてモータ2の駆動力により回転する太陽ギア、12は太陽ギア11と歯合し、太陽ギア11を中心に公転可能な複数からなる遊星ギアで、中央が中空の孔部になっている。本実施例の場合、太陽ギア11を中心とする正三角形のそれぞれの頂点の位置合計3個の遊星ギアが配置されている。13は中心を太陽ギア11の中心と同一にし、ドーナツ状の内周面が複数の遊星ギア12と歯合してこれらを包含する回動可能な内歯ギアで、これら太陽ギア11、遊星ギア12及び内歯ギア13で遊星歯車機構7を構成している。
【0017】
14は遊星ギア12の両側から中央の孔部に嵌着され、遊星ギア12の径より大なる径を有して遊星ギアの側部を覆う遊星ローラで、遊星ギア12と太陽ギア11及び内歯ギア13との係合関係を保っている。15は遊星ギア12及びその両側の遊星ローラ14の中心を貫通する遊星シャフト、16は遊星歯車機構7の両側において、3つの遊星ギア12をそれぞれ貫通する合計3本の遊星シャフトが回転自在に嵌合された遊星カバーで、中心を遊星ギアの公転に応じて太陽ギア11の中心と同一にして回転運動する。
【0018】
17は太陽ギア11に嵌合する入力軸9が、その回転運動を直接遊星カバー16に伝えることなく入力軸9側の遊星カバー16を貫通するために該カバーの中央に設けられた入力孔である。18は入力軸9側と反対側の遊星カバー16の中央に設けられた出力孔、19は回転ブラシ3の回転軸であるブラシ軸であり、その一端が回転ブラシ3から突出して出力孔18に嵌入され、遊星カバー16の回転運動に応じて回転し、回転ブラシ3を回転させる。
【0019】
尚、上述したように遊星カバーの回転中心と入力軸9とは一致するから、ブラシ軸19も入力軸9と同軸上に位置することになる。また、ブラシ軸19の回転出力は即ち遊星ギア12が公転することによる回転出力であり、一般的にはこれを遊星ギアの出力としている。20はブラシ軸19を吸い込み装置本体1内に支持する出力軸受け部であり、上述の入力軸受け部10及び出力軸受け部20で遊星歯車機構7から入力軸9、ブラシ軸19に至る構成部材を吸い込み装置本体1に支持する遊星歯車支持手段を構成している。そしてこの結果、太陽ギア11、遊星ギア12、内ギア13はそれぞれ回動自由になる。
【0020】
21は内歯ギア13の外周に固着された駆動輪で、一部周面が吸い込み装置1の下面よりαだけ突出するよう配設されている。この駆動輪21及び補助輪8は例えばゴム状の材質で構成されている。尚、補助輪8も吸い込み装置1の下面よりαだけ突出して設けられている。
上記のように構成された電気掃除機の吸い込み装置の動作を図3〜5に沿って説明する。
【0021】
図3は遊星歯車機構7の簡易的な側面図であり、説明上、図中の太陽ギア11はモータ2の駆動力によりCW方向に回転するものとする。太陽ギア11のCW方向の回転に伴い、複数の遊星ギア12は各々の遊星シャフト15を軸にCCW方向に回転(自転)すると共に、入力軸9を中心にCW方向に回転(公転)し、各遊星ギア12に連結された遊星カバー16はCW方向に回転する。また、内歯ギア13は遊星ギア12の回転に対してCCW方向に回転する。
【0022】
上記関係を回転速度特性図として図4に示す。ここでは、
太陽ギア(11)回転速度 : f=5000rpm(CW方向)
遊星歯車機構(7) 減速比 : N=5
駆動輪(21)回転速度 : f/(N−1)
遊星ギア(12)回転(公転)=回転ブラシ(3) 回転
内歯ギア(13)回転=駆動輪(21)回転
として説明する。
【0023】
図4中縦軸左は回転ブラシ3の回転速度、同右は駆動輪21の回転速度を各々に示し、横軸は両者の差動率を示している。例えば駆動輪21を停止(差動率ゼロ)すると、回転ブラシ3の回転速度はf/Nの関係によりCW方向に1000rpmで回転し、逆に回転ブラシ3を停止すると、駆動輪21の回転速度は遊星歯車機構の特性により関係付けられるf/(N−1)の関係によりCCW方向に1250rpmの回転速度が得られる。両者のどちらも停止しない状態では、差動抵抗や質量差によって互いが逆回転方向に回転する状態が得られる。
【0024】
また、図4中に点線で示す領域では、例えば駆動輪21を停止状態からCW方向に回転させた場合、図4左側に示すように回転ブラシ3はCWの回転方向のまま1000rpmを越えて動作させることも可能となる。これは回転ブラシ3をCCW方向に回転させた場合も同様で、図4右側に示すような特性を示す。
【0025】
図5は具体的な掃除動作における回転ブラシ3と駆動輪21の動作状態を表す図であり、モータ2が回転していることを条件に説明する。先ず吸い込み装置本体1が持ち上げられている状態では、回転ブラシ3の重量が重いため、回転ブラシは回転せず、軽量な駆動輪21のみCCW方向に1250rpmで回転する。即ち図4中(A)の差動率の位置で運転される。この結果、持ち上げ時には回転ブラシ3が回転しないため、安全性、静音性の面で効果を発揮する。
【0026】
次に吸い込み装置本体1を掃除面に置いた(着床)場合、駆動輪21と掃除面の接触抵抗、及び吸い込み装置本体1の自重等により駆動輪21の回転方向に抵抗が作用し、駆動輪21はCCW方向に低速回転状態で、吸い込み装置本体1を前方向に推進駆動するか、或は停止状態となるため、回転ブラシ3はCW方向に高速回転し、塵埃を掻き出す動作を開始する。即ち図4中(B)の範囲の差動率の位置で運転される。着床と同時に駆動輪21は前方向に推進力をもち、自動的に回転ブラシ3が高速回転を始めるため、効率のよい運転準備状態を得ることができる。
【0027】
次に吸い込み装置本体1を前方向に摺動させた場合、駆動輪21の推進方向と同方向の力が加えられるため、図中4(C)に示す差動率付近での動作状態、即ち駆動輪21は低速でCCW方向に、回転ブラシ3は高速でCW方向に回転することになる。これにより軽い操作力でスムーズな吸い込み装置の前進摺動動作が得られると共に、駆動輪21は床面に対してスリップしないため、掃除面を傷めることなく掃除することができる。
【0028】
次に吸い込み装置本体1を後方向に摺動させた場合、駆動輪21の推進方向と逆方向の力が加えられるため、図4中の(D)に示す差動率付近での動作状態、即ち駆動輪21は低速でCW方向に、回転ブラシ3は1000rpmを越える高速でCW方向に回転することになる。後方向の摺動動作は吸い込み装置本体1を引く方向なので、押す方向、すなわち掃除面に押し付けるベクトル方向の力を必要としないため、使用者の操作力は少なくて済む。従って駆動輪21の推進方向と逆方向の力を加える際にも抵抗なく操作できる。また、駆動輪21のスリップがないことに加え、回転ブラシ3は高速回転するから、掃除面を傷めずに高い集塵性能が得られる。
【0029】
実施例2.
次に他の実施例について説明する。図6、図7は本実施例の電気掃除機の吸い込み装置における遊星歯車機構及びその周辺機構部を詳細に示す部分側断面図であり、図において、実施例1と同様の構成部分には同一符号を付しその説明を省略する。22は吸い込み装置本体1の上面部で、且つ入力軸受け部10の略上方に設けられ、入力軸9に対して水平方向に摺動可能な切り替え手段、23は切り替え手段22を図中(a)、(b)、(c)の3か所の係止点に係止するための板バネである。
【0030】
24は切り替え手段22の下部に固着され一体的に動くストッパで、切り替え手段22を図中(a)の位置に摺動させる(図7(ア)の状態)と、ストッパ24が遊星カバー16に圧接し、遊星カバー16の回転を不能にする。即ち遊星ギア12の出力が規制され、回転ブラシ3はロック状態となる。この切り替え手段22、ストッパ24からなるこれらの機構により遊星ギアロック手段を構成している。
【0031】
また、モータ停止状態で切り替え手段22を図中(c)の位置に摺動する(図7(イ)の状態)と、ストッパ24がブラシ側プーリ6に圧接し、ブラシ側プーリ6の回転を不能にする。即ち太陽ギア11がロック状態となる。この切り替え手段22、ストッパ24からなるこれらの機構により太陽ギアロック手段を構成している。
このように切り替え手段22は遊星ギアロック手段と太陽ギアロック手段とを同時に動作できないような構成となっている。
【0032】
25は切り替え手段22による太陽ギアロック時(即ち太陽ギアロック手段動作時)に、モータ2が駆動しないようモータ2への電源供給を遮断するスイッチ手段で、切り替え手段22が(c)の位置に係止された場合にストッパ24がスイッチ25に当接してスイッチを自動的にOFFにするよう構成されている。切り替え手段22が(c)以外の位置に係止されている場合には、ストッパ24がスイッチに当接しないので、スイッチは自動的にONになる。図8はスイッチ24を等価的に表した回路図である。
【0033】
上記のように構成された電気掃除機の吸い込み装置の動作を図7に沿って説明する。図7(ア)に示すように遊星ギアロック手段を動作させて掃除動作を行うと、回転ブラシ3を回転させたくない運転モードが実現できる。例えば、強い吸引力を必要とせず滑らかな摺動が要求される板の間や畳等を掃除するのに好適である。ここで遊星ギアロック手段動作時で、モータ2が停止状態の場合は、吸い込み装置本体1の摺動動作により駆動輪21が回転し、その動力は遊星ギア12の自転を介して太陽ギア11に伝えられ、回転ブラシ3は回転しない。
【0034】
また、遊星ギアロック手段動作時で、モータ2が動作状態の場合は、モータ2の回転駆動力が太陽ギア11及び遊星ギア12の自転を介して駆動輪21に伝達され、自動走行モードが実現でき、操作性がより向上する。この自動走行モード時には、モータ2の回転駆動力が回転ブラシ3に分散されることなく駆動輪21に伝わるので、モータ2の回転数制御や回転方向の切り替え制御を行う構成とすることにより更に操作性が向上するものである。
このような遊星ギアロック手段によれば、駆動輪21の回転に回転ブラシ3の重みがかからないので、駆動輪21の回転が滑らかになり、操作性が向上する。
【0035】
次に図7(イ)に示すように、モータ2OFFの状態で、切り替え手段22を図6の(c)の位置に係止させ、太陽ギアロック手段を動作させて掃除動作を行うと、吸い込み装置本体1の摺動動作による駆動輪21の回転によって、回転ブラシ3を回転させる動作モードが実現できる。この動作における駆動輪21と回転ブラシ3との関係としては、両者が同方向の回転方向となり、減速比をNとした場合に駆動輪21のN回転に対して回転ブラシ3はN−1の割合の回転数が得られる。
【0036】
また、モータ2の回転駆動時に切り替え手段22を図6の(c)の位置に係止させると、ストッパ24がスイッチ25に当接してモータ2への通電を自動的にOFFにする。このため、太陽ギアロック手段動作時にモータが回転しようとしてロックされることを防止できる。
尚、切り替え手段22を図6の(c)の位置から(a)又は(b)の位置に移動させると、ストッパ24はスイッチ25から離れ、モータ2への通電が再開される。この場合において、他の操作スイッチ等によってモータ2への通電が既に停止されている場合には通電されない。
【0037】
このようなモードの運転は、モータ2を動作させることなく回転ブラシ3を回転でき、且つ駆動輪21がスリップすることもないので、集塵性能を重視しつつ掃除面の保護や静音性の実現ができる。従って、例えば回転ブラシ3を高速で回したくないがゴミを確実に取りたい高級な絨毯での運転、あるいは静音を重視する深夜等の運転等に好適である。また、モータ2を回転させないので、エネルギーの省力化にもなる。
【0038】
上記実施例においては、切り替え手段22によって遊星ギアロック手段と太陽ギアロック手段とを択一的に動作可能に構成したが、両ロック手段は別々の操作手段によって動作する構成であっても同様の効果が得られる。ところで、太陽ギア11の回転と遊星ギア12の公転が同時に規制されると、事実上遊星歯車機構は動作しなくなるので、上記実施例のように切り替え手段22により両ロック手段を択一的にのみ動作可能な構成とすれば、太陽ギア11の回転と遊星ギア12の公転が同時に規制されることがなくなる。
【0039】
また、太陽ギアロック手段の動作時にモータ2への通電を遮断するスイッチ25を設けることにより、太陽ギアの回転が規制されている時にモータがロックされることを防止できる。尚、スイッチ25に替え、予めモータ2の回転駆動の伝達が遮断されている場合にのみ太陽ギアロック手段が動作可能となるか、或はモータ2がON時には太陽ギアロック手段が動作できないよう構成してもよく、いずれにしても、このような太陽ギアロック手段と連動してモータからの駆動力の伝達を遮断するスイッチ手段を備えることにより、遊星歯車機構の安定した動作が得られる。
【0040】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、掃除面に当接しごみ等を掻き出す回転ブラシと、モータに連結されこのモータの駆動力に応じて回転する太陽ギアと、この太陽ギアと歯合して自転すると共に前記太陽ギアを中心に公転する遊星ギアと、この遊星ギアの公転運動を回転駆動力として前記回転ブラシに伝達し前記回転ブラシを前記遊星ギアの公転周期で回転させるブラシ軸と、前記太陽ギアと回転中心を同一にし内周に前記遊星ギアと歯合する内歯ギアを有する駆動輪とを備えたので、回転ブラシの回転数をモータの回転数から適度な回転数に減速することができ、また、駆動輪が掃除面をスリップすることがなくなるから、掃除面を傷めることなく高い集塵性能が得られるという効果を奏する。
【0041】
また、遊星ギアが太陽ギアを公転することを規制可能にする遊星ギアロック手段を備えたので、回転ブラシを回転させることなく駆動輪を回転させることが可能になり、強い吸引力を必要としない掃除面での操作性が向上する。
また、太陽ギアの回転を規制可能にする太陽ギアロック手段を備えたので、モータの回転停止時においても駆動輪の回転に応じて回転ブラシが回転するから、回転ブラシを高速回転せずにゴミを確実にとることができると共に静音性に優れた運転が可能になるという効果が得られる。
【0042】
また、太陽ギアロック手段による太陽ギアの回転規制時にモータの太陽ギアへの回転駆動を遮断するスイッチ手段を備えたので、太陽ギアの回転が規制されている時にモータがロックされることを防止できるという効果が得られる。
また、遊星ギアロック手段と太陽ギアロック手段とを択一的に動作可能にする切り替え手段を備えたので、遊星歯車機構がロックされることを防止できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例1における掃除機の吸い込み装置を示す上部断面図である。
【図2】 この発明の実施例1における掃除機の吸い込み装置の遊星歯車機構及びその周辺機構部を示す部分側断面図である。
【図3】 この発明の実施例1における掃除機の吸い込み装置の簡易的な側面図である。
【図4】 この発明の実施例1における掃除機の吸い込み装置の遊星歯車機構の回転速度特性図である。
【図5】 この発明の実施例1における掃除機の吸い込み装置の回転ブラシと駆動輪との掃除動作における動作状態を示す対比図である。
【図6】 この発明の実施例2における掃除機の吸い込み装置の遊星歯車機構及びその切り替え手段を示す部分側断面図である。
【図7】 この発明の実施例2における掃除機の吸い込み装置の切り替え手段の動作状態を示す部分側断面図である。
【図8】 この発明の実施例2における掃除機の吸い込み装置内を等価的に示した回路図である。
【図9】 従来の掃除機の吸い込み装置を示す部分側断面図である。
【符号の説明】
1 吸い込み装置本体、2 モータ、3 回転ブラシ、6 ブラシ側プーリ、7 遊星歯車機構、9 入力軸、10 入力軸受け部、11 太陽ギア、12 遊星ギア、13 内歯ギア、14 遊星ローラ、15 遊星シャフト、16 遊星カバー、18 出力孔、19 ブラシ軸、20 出力受け部、21 駆動輪、22 切り替え手段、24 ストッパ、25 スイッチ

Claims (5)

  1. 掃除面に当接しごみ等を掻き出す回転ブラシと、モータに連結されこのモータの駆動力に応じて回転する太陽ギアと、この太陽ギアと歯合して自転すると共に前記太陽ギアを中心に公転する遊星ギアと、この遊星ギアの公転運動を回転駆動力として前記回転ブラシに伝達し前記回転ブラシを前記遊星ギアの公転周期で回転させるブラシ軸と、前記太陽ギアと回転中心を同一にし内周に前記遊星ギアと歯合する内歯ギアを有する駆動輪とを備えたことを特徴とする電気掃除機の吸い込み装置。
  2. 前記遊星ギアが前記太陽ギアを公転することを規制可能にする遊星ギアロック手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機の吸い込み装置。
  3. 前記太陽ギアの回転を規制可能にする太陽ギアロック手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機の吸い込み装置。
  4. 前記太陽ギアロック手段による前記太陽ギアの回転規制時に前記モータの前記太陽ギアへの回転駆動を遮断するスイッチ手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の電気掃除機の吸い込み装置。
  5. 記遊星ギアが前記太陽ギアを公転することを規制可能にする遊星ギアロック手段と、前記太陽ギアの回転を規制可能にする太陽ギアロック手段と、前記遊星ギアロック手段と前記太陽ギアロック手段とを択一的に動作可能にする切り替え手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機の吸い込み装置。
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