JP3913333B2 - 疲労強度と熱伝導性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法 - Google Patents

疲労強度と熱伝導性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘッダーパイプ等の冷媒通路形成材とフィン材とをろう付けにより接合する構造のラジエータ、コンデンサやエバポレータなどの熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の熱交換器において、ヘッダーパイプと称される左右一対の管体の間に多数のチューブを互いに平行に間隔をあけてヘッダーパイプと直角に架設し、各チューブの端部をヘッダーパイプの側面に接続して各チューブの内部空間とヘッダーパイプの内部空間を連通させ、複数のチューブの間にフィン部材を配して熱交換性を高めた構成の熱交換器、あるいは、蛇行状に形成したチューブの間にフィン材をろう付けしてなる熱交換器が知られている。これらの形式の熱交換器にあっては、チューブの内部に媒体が循環され、各チューブ間に配されたフィンを介して媒体が熱交換できるようになっている。
【0003】
そして、この形式の熱交換器でAl合金からなる熱交換器にあっては、疲労強度が高く、熱伝導性に優れることが重要であるので、これらの要求に鑑みて合金組成の選択がなされている。
また、この種の熱交換器においては、通常、ヘッダーパイプとチューブがろう付けにより接合されるので、この際のろう付け性を考慮して、Al-Si合金などのろう材層を予めAl合金プレートにクラッド圧着した構成のブレージングシートを用い、このブレージングシートからヘッダーパイプやフィン材を構成することがなされ、ろう材層の組成を含めたろう付け性も考慮して合金組成の選択がなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで一般にAl合金は、他の元素を添加することにより熱伝導性が低下することが知られており、これは、添加元素がアルミニウム中に固溶するか、あるいは析出、晶出するためである。そして、熱伝導性の低下の程度は析出、晶出に比べて固溶の方が遥かに影響が大きいことが知られている。また、添加元素の種類によっても低下の程度は様々で、Mn添加の影響は非常に大きいがFe添加の影響は小さいとされている。
【0005】
また、本願発明者らは、特開平3―153834号明細書等に開示の如く、強度に優れ、熱伝導性を向上させるために、Al-Fe系にSiとZrを添加した系のアルミニウム合金製フィン材を提案している。
これらの状況に鑑み、現状では更なるフィン材の低価格化が進められているので、従来よりも更に薄肉で高強度であり、熱伝導性にも優れたフィン材の開発が進められているが、前記Al-Fe系のフィン材は、ろう付け後の疲労強度の面では不足する面があった。
【0006】
本発明者らがAl-Fe系のフィン材におけるこのような薄肉化による疲労強度の低下現象について研究したところ、AlにFeを含有させたがために、ろう付け後の再結晶粒径が非常に大きくなり、薄肉のフィン材がその厚さ方向に数個程度の再結晶粒で構成される部分が生じ易くなるので、部分的な粒界割れであってもフィン材の亀裂につながり易くなることを知見した。
従って、このような疲労強度の低下現象を抑制するためには、Feの含有量を減少させるか、ろう付け後の再結晶粒径を微細化するような元素を添加すれば良いのであるが、Fe含有量を減少させることによってろう付け後の再結晶粒径を微細化することはできるが、この場合は疲労強度の低下が大きくなり、所望の特性が得られなくなる問題がある。また、再結晶粒径を微細化するような添加元素は概してAl合金フィン材の熱伝導性を低下させ易く、熱交換器としての特性が大きく低下するおそれが高い問題がある。
【0007】
そこで、本発明者らが種々研究を重ねた結果、Al-Fe系フィン材の高い熱伝導性を維持したまま薄肉化によるろう付け後の疲労強度低下を抑えるためには、ろう付け後の再結晶粒径を微細化すれば良いとの知見に達するとともに、ろう付け後の再結晶粒径は、フィン材を製造する場合の最終圧延工程前の中間焼鈍条件、並びに、最終圧延率に大きく依存することも見い出した。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、疲労強度と熱伝導性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するために、重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物とからなるAl合金鋳造材を複数回の圧延加工を経て最終圧延し所望の板厚とした後に、コルゲート加工して得られる熱交換器用アルミニウム合金フィン材であって、前記最終圧延工程前の中間焼鈍が、昇温速度:5〜200℃/秒、保持温度:300〜500℃、保持時間:10〜150秒、冷却速度:5〜200℃/秒の条件でなされ、中間焼鈍後の最終圧延率が50〜85%とされてなり、板厚方向の平均結晶粒サイズが10〜70μmの範囲とされてなることを特徴とする。
【0010】
次に本発明は、重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物とからなるAl合金芯材の少なくとも一面に、Al-Si系、または、Al-Si-Zn系のろう材層をクラッド圧着したクラッド材を複数回の圧延加工を経て最終圧延し所望の板厚とした後に、コルゲート加工して得られる熱交換器用アルミニウム合金フィン材であって、前記最終圧延工程前の中間焼鈍が、昇温速度:5〜200℃/秒、保持温度:300〜500℃、保持時間:10〜150秒、冷却速度:5〜200℃/秒の条件でなされ、中間焼鈍後の最終圧延率が50〜85%とされてなり、板厚方向の平均結晶粒サイズが10〜70μmの範囲とされてなることを特徴とする。 本発明の前記構成において、Al合金芯材が重量%でFe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%、を含み、更に、Si:0.1〜0.8%、Ti:0.02〜0.2%、In:0.005〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%のうち、少なくとも1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避不純物からなるものでも良い。
【0011】
一方、本発明の製造方法は、重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物からなるAl合金鋳造材を複数回の圧延加工を経て最終圧延し所望の板厚とした後に、コルゲート加工する熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法であって、前記最終圧延工程前の中間焼鈍を、昇温速度:5〜200℃/秒、保持温度:300〜500℃、保持時間:10〜150秒、冷却速度:5〜200℃/秒の条件で行い、中間焼鈍後の最終圧延率を50〜85%とすることを特徴とする。
【0012】
更に本発明の製造方法は、重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物からなるAl合金芯材の少なくとも一面に、Al-Si系、または、Al-Si-Zn系のろう材層をクラッド圧着したクラッド材を複数回の圧延加工を経て最終圧延し所望の板厚とした後に、コルゲート加工する熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法であって、前記最終圧延工程前の中間焼鈍を、昇温速度:5〜200℃/秒、保持温度:300〜500℃、保持時間:10〜150秒、冷却速度:5〜200℃/秒の条件で行い、中間焼鈍後の最終圧延率を50〜85%とすることを特徴とする。
また、前記の方法においてAl合金芯材が、重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%、を含み、更に、Si:0.1〜0.8%、Ti:0.02〜0.2%、In:0.005〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%のうち、少なくとも1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避不純物からなるものでも良い。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係るアルミニウム合金フィン材を用いた熱交換器の一例を示すもので、この例の熱交換器Aは、左右のヘッダーパイプ1、2と、これらのヘッダーパイプ1、2の間にヘッダーパイプ1、2に接合して設けられた複数のチューブ3と、チューブ3に接触させてそれぞれ配置された波形のフィン材4を主体として構成されている。
【0014】
前記フィン材4は、以下に説明する熱伝導性に優れたAl-Fe系の合金から構成されている。
フィン4材を構成する材料の第1の例として、重量%で、Fe:1.0〜3.0%(重量%、以下同じ)、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物からなるAl合金を例示することができる。なお、本明細書において添加元素の組成範囲を例えば1.0〜3.0%と表記する場合、下限と上限の臨界値を含むものとするので、1.0〜3.0%は、1.0%以上であり、3.0%以下の範囲を意味するものとする。
フィン4材を構成する材料の第2の例として、重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、更に、Si:0.1〜0.8%、Ti:0.02〜0.2%、In:0.005〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%のうち、少なくとも1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避不純物からなる合金を用いることができる。
【0015】
フィン材4を構成する材料の第3の例として、重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物からなるAl合金芯材の少なくとも一面に、Al-Si系、または、Al-Si-Zn系のろう材層をクラッド圧着したクラッド材を用いることができる。フィン材4を構成する材料の第4の例として、重量%でFe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%、を含み、更に、Si:0.1〜0.8%、Ti:0.02〜0.2%、In:0.005〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%のうち、少なくとも1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避不純物からなるAl合金芯材の少なくとも一面に、Al-Si系、またはAl-Si-Zn系のろう材層をクラッド圧着したクラッド材を用いることができる。
【0016】
次に、前記組成を選択した理由について説明する。
Fe:Feはマトリックス中にFe-Al系の金属間化合物を析出させて疲労強度を向上させる一方で固溶度が少なく、熱伝導性の低下を抑制できる。本発明の範囲である1.0〜3.0重量%を超える含有量であると、粗大晶出物の形成により加工性が低下するとともに、自己腐食速度が増大する。また、前記範囲の下限値未満では、疲労強度向上効果が少なくなる。
Zn:Znはフィン材4の電位を低下させ、チューブ3(冷媒通路形成材)に対する犠牲陽極効果を発揮させる。本発明の範囲である0.5〜3.0重量%を超える含有量であると、熱伝導性が低下するとともに、自己腐食速度が増大する。また、前記範囲の下限値未満では、犠牲陽極効果が不十分になる。
【0017】
Zr:Zrはろう付け後に微細な金属間化合物として分散し疲労強度を向上させるとともに、ろう付け後の再結晶粒径を細かくして疲労強度を向上させる。本発明の範囲である0.02〜0.3重量%を超える含有量であると、加工性が低下するとともに、前記範囲の下限値未満では疲労強度向上効果が不十分になる。
Si:Siはろう付け後に微細な金属間化合物として分散し疲労強度を向上させる。本発明の範囲である0.1〜0.8重量%を超える含有量であると、熱伝導性性と加工性が低下するとともに、腐食速度が増大し、融点の低下によりろう材の侵食を受けやすくなる。また、前記範囲の下限値未満では、疲労強度向上効果が不十分になる。
【0018】
Ti:Tiは組織を微細化して疲労強度を向上させる効果がある。本発明の範囲である0.02〜0.2重量%を超える含有量であると、熱伝導性と加工性が低下するとともに、前記範囲の下限値未満では、疲労強度の向上効果が不十分になる。
In,Sn:InとSnは電気化学的性質を卑にする作用があるので添加量を調整することによりフィン材4の電気化学的性質を適宜調整する。本発明の範囲であるIn:0.005〜0.5重量%、あるいは、Sn:0.001〜0.5%を超える含有量であると、腐食速度が大きくなり過ぎるとともに、前記範囲の下限値未満では、電気化学的性質(腐食速度)の調整効果が不十分になる。
【0019】
前記フィン材4を製造するには、前記各組成のAl合金鋳塊を得た後に、熱間圧延加工を施し、その後に複数回の冷間圧延加工と中間焼鈍処理を施した後、最終圧延加工を施して目的の板厚、例えば、100μm程度の厚さに加工し、この板厚の素材にコルゲート加工を施して波形のフィン材4を得ることができる。また、クラッド材からなるフィン材4を製造するには、前記組成のAl合金板にAl-Si系あるいはAl-Si―Zn系のAl合金シートを圧延等のクラッド手段により圧着して製造するものとする。
そして、このフィン材4を図1に示すチューブ3にろう付けして熱交換器Aを得ることができる。
ここで、前記の最終圧延加工前の冷間加工後の中間焼鈍時においては、中間焼鈍処理を施した後の状態が極めて柔らかい状態であり、この中間焼鈍処理を長時間行ったのでは、最終的に得られるフィン材4の結晶粒が粗大化し易くなり、100μm程度の板厚の薄いフィン材4を製造する場合、図2(b)に示すように厚さ方向に2〜3個程度の扁平の粗大化した結晶粒6・・・が存在する組織となり易い。
【0020】
また、フィン材4の加工において高い疲労強度を得るためには、加工素材が最も柔らかくなる中間焼鈍後において、50〜85%の加工率で最終圧延加工して最終板厚とすることが好ましい。よって、100μm程度の板厚の薄いフィン材4を製造する場合、50〜85%の加工率で最終圧延加工して100μm程度の厚さのフィン材とする。
また、この最終圧延加工前の焼鈍処理は、昇温速度:5〜200℃/秒、保持温度:300〜500℃、保持時間:10〜150秒、冷却速度:5〜200℃/秒の条件で行うことにする。
【0021】
前記の短時間の焼鈍処理は、バッチ式の焼鈍炉にコイル巻きしたフィン材4を投入して行ったのでは実現できないので、連続焼鈍炉(continuas annealing line)を用いて行うことが好ましい。コイル巻きしたフィン材4をバッチ式の焼鈍炉に投入して処理すると、コイルの外側のフィン材の冷却速度を速めることはできるが、コイルの内側のフィン材は冷却速度が遅くなるので結晶粒の粗大化が起こりやすい。これに対して、連続焼鈍炉では、コイル巻きしたフィン材4を繰り出して連続焼鈍炉内を通過させている間に焼鈍するので、所望の加熱冷却条件を与えることができる。
【0022】
中間焼鈍処理を前述のように短時間行うことで、中間焼鈍時にフィン材内に再結晶核が多数発生し、この再結晶核が短時間成長する結果、図2(a)に示すようにフィン材4の厚さ方向に図2(b)に示す構造よりも多数の微細な扁平の結晶粒7・・・を主体とする組織とすることができる。これらの結晶粒7・・・においてフィン材4の板厚方向の平均結晶粒サイズdが10〜70μmの範囲とされることが好ましい。また、この範囲の中でも、10〜20μmがより好ましい範囲となり、更にフィン材4をろう付けした後の粒径においても10〜30μmの範囲であることが好ましい。
図2(a)に示す微細な扁平の結晶粒7の集合体からなる組織を有するフィン材4であるならば、一部の結晶粒界に割れを生じてもその割れがフィン材4の全体に伝播しにくく、粒界割れを起因とする疲労強度低下を防止できる。
【0023】
前記の焼鈍処理条件において、昇温速度を5〜200℃/秒としたのは、ろう付け後の結晶粒のサイズを適正にするためであり、この範囲を超える条件は生産工程上困難であり、下限値未満ではろう付け後の結晶粒サイズが大きくなりすぎる。ここで本発明におけるフィン材4の平均結晶粒サイズとして、板厚方向の平均結晶粒サイズが10〜70μmの範囲であることが好ましい。
保持温度を300〜500℃としたのは、ろう付け後の結晶粒のサイズを適正にするためであり、この範囲を超える条件ではろう付け後の結晶粒サイズが大きくなりすぎ、下限値未満では充分な再結晶がなされずに最終圧延加工が困難となる。
保持時間を10〜150秒としたのは、ろう付け後の結晶粒のサイズを適正にするためであり、この範囲を超えるか、下回る条件ではろう付け後の結晶粒サイズが大きくなりすぎ、特に下回る条件では十分O材とならないために、最終圧延工程で割れが生じることがある。
冷却速度を5〜200℃/秒としたのは、ろう付け後の結晶粒のサイズを適正にするためであり、この範囲を超える条件は生産工程上困難であり、下限値未満ではろう付け後の結晶粒サイズが大きくなりすぎる。
中間焼鈍後の最終圧延率を50〜85%としたのは、ろう付け後の結晶粒サイズを適正にするためであり、この範囲を超えるのは生産工程上困難であり、下限未満では結晶粒サイズが大きくなりすぎるためである。
【0024】
以上の条件で製造することで、100μm程度の薄い板厚のフィン材4であっても、板厚方向の平均結晶粒サイズが10〜70μmの範囲の微細な結晶粒径の熱交換器用フィン材4を得ることができる。
このフィン材4であるならば、結晶粒が微細化されているとともに、適切な添加元素を含有しているので疲労強度に優れ、加工性と熱伝導性に優れ、耐食性にも優れたものが得られる。また、フィン材4をろう付けによりチューブ3に接合して熱交換器Aを製造した場合であっても、ろう付け後の耐食性にも優れた特徴を有する。
【0025】
【実施例】
「実施例1」
Al合金製ヘッダーパイプとチューブとフィン材を有するラジエータを製造した。ヘッダーパイプはJIS4343/3003系の組成のAl合金、チューブはJIS4343/3003系の組成のAl合金、フィン材は以下の表1と表2に示す組成のものを用いた。表1に示すフィン材は全体が厚さ100μmで全体が同一組成のAl合金からなるものであり、表2に示すフィン材は表2に示す組成のAl合金芯材の両面に厚さ10μmのAl-7.5Si合金(JIS4343)あるいはAl-7.5Si-2Zn合金(JIS4343+2Zn)のクラッド層をクラッドしたものである。
得られたラジエータの熱伝導性、即ち、熱交換効率を評価する目的で入り側と出側の冷媒(水:入り側温度80℃)の温度差を測定した。
また、疲労強度を評価する目的で無荷重負荷と荷重12kgを周波数25Hzで繰り返し負荷する疲労試験を行い、フィン材の破断が生じるまでの時間を測定した。
【0026】
【表1】
Figure 0003913333
【0027】
【表2】
Figure 0003913333
【0028】
【表3】
Figure 0003913333
【0029】
【表4】
Figure 0003913333
【0030】
表3と表4に示す結果から、昇温速度、保持時間、冷却速度のいずれかの数値が前述の好ましい範囲から外れた試料は、最終圧延工程でクラック発生により圧延不可となるか、ろう付け後の結晶粒径(板厚方向の平均結晶粒サイズ)が70μmを超えて異常に大きくなるとともに破断までの時間が短く、疲労強度の面で不足となっている。
これに対して本願発明の条件を満足した試料(合金種1、2と合金種A、B)は、破断までの時間が長く疲労強度に優れ、熱伝導性においても良好な特性を維持した上に、中間焼鈍後の結晶粒径が15〜18μmと小さく、ろう付け後の結晶粒径も大きくなり難いという優れた特性を有していることが判明した。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、FeとZnとZrを規定量含有するAl合金鋳造材を最終圧延工程前の中間焼鈍において、規定の昇温速度と保持温度と保持時間と冷却速度の条件で行い、中間焼鈍後の最終圧延率を規定の範囲としてなり、板厚方向の平均結晶粒サイズが10〜70μmの範囲としたので、疲労強度と熱伝導性に優れ、耐食性にも優れたフィン材を提供できる。
また、前記FeとZnとZrに加えて、SiとTiとInとSnの少なくとも1種以上を規定量含有させることにより、疲労強度と熱伝導性に優れ、加工性と耐食性に優れたフィン材を提供できる。更に、前記組成のAl合金の芯材にAl-Si系あるいはAl-Si-Zn系のクラッド層を形成したクラッド材からフィン材を構成する場合も同等の効果を得ることができる。
【0032】
次に、FeとZnとZrを規定量含有するAl合金鋳造材を最終圧延工程前の中間焼鈍において、規定の昇温速度と保持温度と保持時間と冷却速度の条件で行い、中間焼鈍後の最終圧延率を規定の範囲として製造することにより、板厚方向の平均結晶粒サイズが10〜70μmの範囲としたフィン材を得ることができるので、疲労強度と熱伝導性に優れ、耐食性にも優れたフィン材を製造できる。
また、前記FeとZnとZrに加えて、SiとTiとInとSnの少なくとも1種以上を規定量含有させることにより、疲労強度と熱伝導性に優れ、加工性と耐食性に優れたフィン材を製造することができる。更に、前記組成のAl合金の芯材にAl-Si系あるいはAl-Si-Zn系のクラッド層を形成したクラッド材を用いてフィン材を製造する場合も同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る熱交換器の一例を示す正面図である。
【図2】 図2(a)は微細な結晶粒からなるフィン材の組織を示す図、図2(b)は粗大化した結晶粒からなるフィン材の組織を示す図である。
【符号の説明】
A…熱交換器、1、2…ヘッダーパイプ、3…チューブ、4…フィン材、
7・・・結晶粒。

Claims (6)

  1. 重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物からなるAl合金鋳造材を複数回の圧延加工を経て最終圧延し所望の板厚とした後に、コルゲート加工して得られる熱交換器用アルミニウム合金フィン材であって、
    前記最終圧延工程前の中間焼鈍が、昇温速度:5〜200℃/秒、保持温度:300〜500℃、保持時間:10〜150秒、冷却速度:5〜200℃/秒の条件でなされ、中間焼鈍後の最終圧延率が50〜85%とされてなり、
    板厚方向の平均結晶粒サイズが10〜70μmの範囲とされてなることを特徴とする疲労強度と熱伝導性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
  2. 重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物からなるAl合金芯材の少なくとも一面に、Al-Si系、または、Al-Si-Zn系のろう材層をクラッド圧着したクラッド材を複数回の圧延加工を経て最終圧延し所望の板厚とした後に、コルゲート加工して得られる熱交換器用アルミニウム合金フィン材であって、
    前記最終圧延工程前の中間焼鈍が、昇温速度:5〜200℃/秒、保持温度:300〜500℃、保持時間:10〜150秒、冷却速度:5〜200℃/秒の条件でなされ、中間焼鈍後の最終圧延率が50〜85%とされてなり、
    板厚方向の平均結晶粒サイズが10〜70μmの範囲とされてなることを特徴とする疲労強度と熱伝導性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
  3. Al合金芯材が、重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%、を含み、更に、Si:0.1〜0.8%、Ti:0.02〜0.2%、In:0.005〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%のうち、少なくとも1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避不純物からなることを特徴とする請求項1または2記載の疲労強度と熱伝導性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
  4. 重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物からなるAl合金鋳造材を複数回の圧延加工を経て最終圧延し所望の板厚とした後に、コルゲート加工する熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法であって、
    前記最終圧延工程前の中間焼鈍を、昇温速度:5〜200℃/秒、保持温度:300〜500℃、保持時間:10〜150秒、冷却速度:5〜200℃/秒の条件で行い、中間焼鈍後の最終圧延率を50〜85%とすることを特徴とする疲労強度と熱伝導性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
  5. 重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%を含み、残部Alと不可避不純物からなるAl合金芯材の少なくとも一面に、Al-Si系、または、Al-Si-Zn系のろう材層をクラッド圧着したクラッド材を複数回の圧延加工を経て最終圧延し所望の板厚とした後に、コルゲート加工する熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法であって、
    前記最終圧延工程前の中間焼鈍を、昇温速度:5〜200℃/秒、保持温度:300〜500℃、保持時間:10〜150秒、冷却速度:5〜200℃/秒の条件で行い、中間焼鈍後の最終圧延率を50〜85%とすることを特徴とする疲労強度と熱伝導性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
  6. Al合金芯材が、重量%で、Fe:1.0〜3.0%、Zn:0.5〜3.0%、Zr:0.02〜0.3%、を含み、更に、Si:0.1〜0.8%、Ti:0.02〜0.2%、In:0.005〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%のうち、少なくとも1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避不純物からなることを特徴とする請求項または記載の疲労強度と熱伝導性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
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