JP3911949B2 - スワール制御弁の故障診断装置 - Google Patents
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- Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は内燃機関のスワール制御弁の故障診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リーン空燃比で運転する内燃機関にあっては、燃焼を安定させるために燃焼室内にガス流動を生起し、燃料の微粒化や層状化を適切に制御することが広く知られている。
【0003】
このために吸気通路にスワール制御弁を設け、リーン運転時にスワール制御弁を閉じて(絞り)燃焼室内に強いスワールを生起し、ストイキ運転時などはスワール制御弁を全開して吸入抵抗を減じて機関出力の低下を防止する。
【0004】
スワール制御弁はステッピングモータにより駆動し、運転条件に応じて設定した目標開度となるようにコントローラで制御している。
【0005】
ところで、ステッピングモータの脱調があると、スワール制御の実際の開度と目標開度とにズレが生じることがある。このような異常を判断するために、ステッピングモータに対する制御指令値とスワール制御弁の開度を検出する開度センサの出力値の偏差を見て、これが所定値以上になった場合には異常が発生しているものとする故障診断装置が、例えば特開平11−190218号などによって提案されている。
【0006】
【発明が解決すべき課題】
しかし、このようにスワール制御弁の開度に目標値からのズレが生じても、ステッピングモータをイニシャライズすることにより、正規の状態に復帰することもあり、一概に故障である判定することはできない。
【0007】
また、故障診断を行う条件によっては、例えば、極低温時に長時間エンジンを停止した後に始動するときなど、スワール制御弁が氷結の可能性があるときに診断を行い、仮に異常があったとしても、その後に温度上昇により氷結が解けて正常に復帰する場合には、診断の結果につき必ずしも本来の故障などとの正確な区別ができず、誤診断になる可能性もある。
【0008】
本発明はこのような問題に着目し、スワール制御弁の誤った診断を防ぎ、正確な診断が行えるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、吸気通路に設けたスワール制御弁と、このスワール制御弁を駆動するステッピングモータと、スワール制御弁の開度を検出する手段とを備えた内燃機関において、スワール制御弁の目標開度と実際の開度との偏差が所定範囲を超えているときに相関エラーを判定する手段と、相関エラーが判定されたときにステッピングモータをイニシャライズして相関エラーを修正する手段と、この相関エラーの修正回数が所定値以上のときに故障を判定する手段とを備える。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記スワール制御弁の目標開度はステッピングモータの目標ステップ位置に基づいて決定される。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記相関エラー修正のためのステッピングモータのイニシャライズは、エンジン負荷が所定値以下のときに実行される。
【0012】
第4の発明は、第1から第3の発明において、前記相関エラーの判定は、スワール制御弁の氷結が予測されるときには保留される。
【0013】
第5の発明は、第4の発明において、前記スワール制御弁の氷結解除の判定はエンジン冷却水温が所定値以上であり、かつエンジン負荷が所定値以下のときに行われる。
【0014】
【作用、効果】
第1、第2の発明では、スワール制御弁の目標開度と実際の開度にステッピングモータの脱調などによりズレが生じ、これが所定の範囲を超えたときには相関エラーが判定され、この相関エラーはステッピングモータのイニシャライズにより修正される。したがってスワール制御弁は正規の状態に復帰するが、再び目標開度と実際開度との間の相関エラーが生じたようなとき、あるいはこれが何回か繰り返されるときは、スワール制御弁の故障など異常状態にあると判定される。
【0015】
このためステッピングモータ、開度センサのなどの取付誤差があっても、故障と判断することなく、イニシャライズにより修正ができ、またエンジン停止中にスワール制御弁のリンクなどに触れて相対関係がズレたときにも修正ができる。これに対して何回かイニシャライズによる修正をしたにもかかわらず、相関エラーがでるときは故障と判断し、適切な修理などの対応を促す。
【0016】
第3の発明において、ステッピングモータのイニシャライズは、エンジン負荷が所定値以下のときにのみ行われるので、スワール制御弁により吸気がチョークされることがなく、イニシャライズ時にスワール制御弁を全開しても、吸入空気量の変動がなく、エンジン回転数が急上昇するような問題が回避できる。
【0017】
第4の発明では、スワール制御弁が氷結しているときは、氷結が解除されればスワール制御弁は正常な状態に復帰する可能性が高く、このような状態で相関エラーの判定を行うと、信頼性の高い判定結果が得られないため、判定を保留し、混乱を回避する。
【0018】
また、第5の発明において、氷結解除の判定を行うときは、エンジン負荷が小さい領域であることを条件にすることで、その直後に相関エラーの判定、及びその結果によるイニシャライズがなされても、エンジンの回転数の急上昇などが起きず、制御の安定性が担保される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1において、1はエンジン本体、2は吸気管、3は排気管で、吸気管2には必要な燃料を噴射する燃料噴射弁4が設けられる。なお、燃料噴射弁4は燃焼室内に直接的に燃料を噴射するものであってもよい。5は吸入空気量を制御してエンジン出力を制御する吸気絞弁、7は吸気絞弁5の下流に配置されたスワール制御弁であり、リーン空燃比運転時などに開度を絞って燃焼室内にスワールを生起する。6は排気管に設置した排気中の有害成分を浄化する触媒(三元触媒)である。
【0021】
燃料噴射弁4から噴射される燃料噴射量を運転条件に応じて設定される目標空燃比となるように制御するためにコントローラ10が備えられる。
【0022】
コントローラ10は入力回路、中央演算回路(マイクロプロセッサ)、記憶回路、出力回路などから構成され、コントローラ10には、エンジン回転数を検出するクランク角センサ12、吸入空気量を検出するエアフローメータ13、吸気絞弁開度を検出する絞弁開度センサ14、エンジン冷却水温を検出する水温センサ15、車速を検出する車速センサ16からの信号が入力し、さらに触媒上流の排気空燃比を検出する広域空燃比センサ11、下流の排気空燃比を検出する酸素センサ20からの信号も入力し、これらに基づいて運転条件に応じて目標空燃比となるように燃料噴射量を演算し、エンジン回転に同期して燃料噴射弁4に燃料噴射信号を出力する。
【0023】
図2にも示すように、スワール制御弁7は各気筒の吸気ポート21に設置され、その弁軸22にはステッピングモータ23の回転が伝達される。スワール制御弁7の開度を検出するために弁軸22に連結した開度センサ24が設けられる。
【0024】
前記コントローラ10はスワール制御弁7の開度についても運転条件に基づいて目標開度となるように制御する。また、同時にコントローラ10はスワール制御弁7の故障診断も行い、ステッピングモータ23の脱調などによりズレが生じたときにはこれを修正し、かつこの修正が繰り返されるときには異常の判定を行うようになっている。
【0025】
ここで、本発明の要点であるコントローラ10によるスワール制御弁7の故障診断について、図3〜図9のフローチャートにしたがって説明する。
【0026】
図3はスワール制御弁7の相関開度エラーを判定するためのルーチンであり、ステップS1でスワール制御弁(図ではSCVと略記)7の目標開度を読み込む。スワール制御弁7の目標開度はステッピングモータ23の指令開度に基づいて決まる。
【0027】
ついで、ステップS2で開度センサ24の出力から実際のスワール制御弁7の開度を読み込む。そして、ステップS3でこれら目標開度と実測開度との偏差を算出し、ステップS4でこれを所定のしきい値と比較する。偏差が所定のしきい値以下の許容範囲にあるときは正常と判断するが、所定のしきい値以上のときはステップS5に進んで、目標開度と実測開度との間に相関エラーがあるものと診断する。
【0028】
図4はこの相関エラーがあるときにスワール制御弁7の開度のイニシャライズを行うルーチンであり、ステップS11で相関エラーがあると判断されたときは、ステップS12においてエラー回数をカウントするエラーカウンタ(NGカウンタ)をインクリメントし、ステップS13でステッピングモータ23と開度センサ24のイニシャライズを行う。
【0029】
このイニシャライズはスワール制御弁7を全開する開度までステッピングモータ23を回転させるとともに、このときのスワール制御弁7の開度を検出する開度センサ24の出力を全開値に更正することにより行う。
【0030】
このようにスワール制御弁7をイニシャライズしたらステップS14に進み、前記エラーカウンタのカウントするエラー回数が所定値に達したかどうか判定する。もしも所定値以下ならば、スワール制御弁7は正常であると判断されるが、所定値(例えば2回)以上のときはステップS15において故障であると判断される。
【0031】
つまり、スワール制御弁7の目標開度と実測開度との相関エラーが発生し、この修正が行われたにもかかわらず、何度か相関エラーが繰り返し判定されるときは、故障であると判断される。
【0032】
図5は故障判定がなされたときのルーチンであり、ステップS21において、スワール制御弁7に故障があるものと判定されたときは、ステップS22においてスワール制御弁7の駆動を禁止し、スワール制御を中止する。
【0033】
スワール制御弁7によるスワールの制御が混乱するのを防ぐためで、この場合には駆動禁止と同時に警告して、早期に修理や交換を促すようにしてもよい。
【0034】
このようにして、スワール制御弁7が適正に作動しているかどうかを常に診断し、目標開度と実際の開度との間にズレが生じたときには、これを修正するので運転条件に応じて要求されるスワール制御を正しく実現できる。その一方で、スワール制御弁7の相関エラーの修正が何度か繰り返されるときは、再びエラーが発生する可能性が高く、制御の信頼性にも問題を生じる。したがってこのようなときにはスワール制御弁7の故障を判定してスワール制御弁7による制御を中止し、早期の修理などを促す。
【0035】
ところで、相関エラーの判定について、エラーの発生しやすい特殊な条件のときで、かつその条件が回避されると正常に復帰する可能性の高いとき、例えば極低温時であってスワール制御弁7が氷結しても、温度上昇によりスワール制御弁7が正常に復帰するときなど、相関エラーの判定が必ずしも実状に合致しない。
【0036】
これに対応するため、図6のルーチンでは、スワール制御弁7が氷結により動かなくなる可能性の高い条件時に故障診断を保留し、不正確なエラー判定を回避している。
【0037】
ステップS31において、相関エラーを判定したときは、ステップS32に進んでエンジン冷却水温が氷結判定水温によりも低いかどうか判断する。もしも、氷結判定温度よりも低く、スワール制御弁7が氷結しやすい条件にあるときは、ステップS33においてスワール制御弁7のイニシャライズを中止し、またステップS34で故障判定を保留する。
【0038】
図7はこのようにして行った氷結による判定保留を解除するときのルーチンを示す。
【0039】
ステップS41では氷結解除判定がなされたかどうか判断する。なお、この解除判定は、図8または図9に示すルーチンにより行われる。
【0040】
先にこれらを説明する。
【0041】
図8では、ステップS51で氷結による判定保留中かどうか判断し、保留中ならばステップS52でエンジン冷却水温が氷結解除温度に達したかどうかの判定を行う。エンジンの暖機が進み氷結解除温度に到達したならば、ステップS53で吸気絞弁開度(TVO)がステッピングモータ23のイニシャライズを許可する小さな設定開度(例えば5゜)以下にあるかどうか判断し、そうならばステップS54で氷結解除判定を行う。
【0042】
なお、イニシャライズを許可する絞弁開度を所定の小開度に設定するのは、スワール制御弁7による吸気のチョーク(吸気系の最小開度部)があると、イニシャライズによりいったんスワール制御弁7が全開したときにエンジン回転の吹き上がりが生じるので、絞弁開度が小さく絞弁により吸気をチョークしているときにのみ、スワール制御弁7の全開を可能として、回転数の急上昇を回避するためである。
【0043】
図9は図8と異なる氷結解除判定のフローチャートで、このうちステップS61と62は上記ステップS51、52と同じである。しかし、ステップS63において吸気絞弁開度を許可開度と比較するのではなく、そのときの燃料噴射パルス幅TPと、燃料噴射パルス幅換算値としての吸入空気量との偏差、つまり実際の流量と推定流量との偏差が、許可判定値よりも小さいときにのみ、ステップS64で氷結解除を判定するようになっている。これによりスワール制御弁7の開度が正常に近い状態に復帰していることが判断できる。
【0044】
次に図7に戻り、このようにして氷結解除判定が行われたら、ステップS42に進み、スワール制御弁7の駆動禁止を解除する。そして、ステップS43でステッピングモータ23と開度センサ24のイニシャライズを行い、相互の関係を対応させる。
【0045】
ステップS44では再びスワール制御弁7の目標開度と実測開度との偏差を設定値と比較し、相関エラーの判断を行う。エラーが判定されたときは、ステップS45に進み、スワール制御弁7の氷結以外のNG判定、つまり氷結以外の故障を判定する。
【0046】
このようにして本発明では、スワール制御弁7の実際の開度が目標開度からズレてきたときには、そのイニシャライズを行い、これらのズレを吸収する。ただし、このようなズレの発生が何回か起きるようなときは、スワール制御弁7が故障であると判定し、早急な修理を促すのである。
【0047】
したがって、ステッピングモータ23の脱調などによるスワール制御弁7の相関エラーの発生時など、本来の故障ではないときは、イニシャライズにより自動的に正常状態に復帰させ、常に安定したスワール制御を維持可能とする。
【0048】
また、極低温時などスワール制御弁7が氷結にするおそれのあるときは、スワール制御弁7の故障診断を行わずに、氷結が解除されてから診断するので、誤った診断を避け、本来の故障判定のみを正確に行える。
【0049】
なお、スワール制御弁7を全開してのステッピングモータ23のイニシャライズは、吸気絞弁の開度が一定以下のときなどに行うことにより、エンジン回転数の急激な上昇を回避し、修正動作の安定性を担保できる。
【0050】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】スワール制御弁を含む吸気系の断面図である。
【図3】スワール制御弁の相関エラーを判定するフローチャートである。
【図4】ステッピングモータのイニシャライズを行うフローチャートである。
【図5】スワール制御弁の駆動を禁止するフローチャートである。
【図6】スワール制御弁の氷結による判定保留のためのフローチャートである。
【図7】スワール制御弁の氷結による判定保留解除を行うフローチャートである。
【図8】スワール制御弁の氷結解除を判定するフローチャートである。
【図9】スワール制御弁の氷結解除を判定するフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン本体
2 吸気管
3 排気管
4 燃料噴射弁
5 吸気絞弁
7 スワール制御弁
10 コントローラ
12 クランク角センサ
14 吸気絞弁開度センサ
15 水温センサ
21 吸気ポート
23 ステッピングモータ
24 開度センサ
Claims (5)
- 吸気通路に設けたスワール制御弁と、このスワール制御弁を駆動するステッピングモータと、スワール制御弁の開度を検出する手段とを備えた内燃機関において、
スワール制御弁の目標開度と実際の開度との偏差が所定範囲を超えているときに相関エラーを判定する手段と、
相関エラーが判定されたときにステッピングモータをイニシャライズして相関エラーを修正する手段と、
この相関エラーの修正回数が所定値以上のときに故障を判定する手段とを備えることを特徴とするスワール制御弁の故障診断装置。 - 前記スワール制御弁の目標開度はステッピングモータの目標ステップ位置に基づいて決定される請求項1に記載のスワール制御弁の故障診断装置。
- 前記相関エラー修正のためのステッピングモータのイニシャライズは、エンジン負荷が所定値以下のときに実行される請求項1または2に記載のスワール制御弁の故障診断装置。
- 前記相関エラーの判定は、スワール制御弁の氷結が予測されるときには保留される請求項1〜3のいずれか一つに記載のスワール制御弁の故障診断装置。
- 前記スワール制御弁の氷結解除の判定はエンジン冷却水温が所定値以上であり、かつエンジン負荷が所定値以下のときに行われる請求項4に記載のスワール制御弁の故障診断装置。
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