JP3911834B2 - 板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法 - Google Patents

板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高層建築物などの鋼構造物に用いられる低降伏比高張力鋼材の製造方法に関し、特に板厚方向の材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年建築物の高層化、大型化に伴い使用される部材にも厚肉化、高張力化が要求され、引張強度490N/mm2 以上の高張力厚鋼材(板厚25mm以上)が普及してきている。また、今日の高層建築物には、巨大地震に見舞われた時、柱・梁部材の塑性変形により地震エネルギーを吸収させ、大崩壊を回避するという人的安全性を重視した限界状態設計法が適用される。したがって、限界状態設計法で使用される柱・梁部材には、高い塑性変形能の目安として降伏比(YR)が低いこと、つまり低降伏比が望まれ、降伏比が低い材料ほど塑性変形能が優れていると言われている。
【0003】
低降伏比化については、一般的に焼入れと焼戻し処理の間に二相域に加熱する中間熱処理を施す方法等に代表されるように、軟質相としてのフェライトと硬質相としてのべイナイトあるいはマルテンサイトを混在させたフェライト+硬質相組織により達成されることが知られている。このフェライト+硬質相組織を得るための従来技術としては、上述した焼入れ−二相域焼入れ−焼戻し処理する方法や、熱間圧延後フェライトとオーステナイトの二相域まで待機した後加速冷却する方法などが挙げられるが、これらの技術では複雑な熱処理工程の必要や焼入れ開始までの待機時間の長期化による生産性の低下や製造コストの増加が避けられない。
【0004】
これを回避する方法が、特公平7−74379号公報や特開平5−271761号公報に開示されている。特公平7−74379号公報、特開平5−27l761号公報の提案とも、熱間圧延後にAr3 −20℃以下、Ar3 −100℃以上まで予備冷却を行った後鋼板表面がAr3 −100℃以上に復熱させ、再び15℃/秒を超える冷却速度で400〜600℃まで冷却するというものである。
しかしながら、これらの提案では冷却速度が速いため表面に著しい強度上昇を生じる場合があるばかりでなく、予備冷却後の復熱時間についての規定がないため、低降伏比に適した組織に制御し難く、板厚方向の材質の均一性および低降伏比鋼の製造安定性に劣る。
鋼材の板厚方向の強度差を低減する方法は、特開平3−188216号公報や特開平4−224623号公報に開示されている。特開平3−188216号公報の提案は鋼スラブをオーステナイトの再結晶域で圧延終了後、Ar3 点以上から水冷を開始し、表面温度がAr3 −150℃以下で一旦冷却を中止して表面温度がAc1 点〜Ac3 点に復熱した後、水冷を再開するものである。
【0005】
また、特開平4−224623号公報の提案は、制御冷却時の冷却速度の範囲を3〜12℃/secとした他、圧延終了温度、冷却開始温度、冷却停止温度等を規定したものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平3−188216号公報の方法は表面温度をAc1 点〜Ac3 点に復熱して硬質べイナイトの一部をオーステナイトへ逆変態させた後水量密度0.6m3 /(m2 ・min)以上で急冷するため、逆変態オーステナイトが再び硬質べイナイトになる場合があり、板厚方向の強度差は必ずしも低減されない。また、冷却時の板厚方向内部の温度履歴が規定されておらず、これだけでは必ずしも低降伏比鋼を得ることができない。
また、特開平4−224623号公報の方法では表面と内部の強度をそれぞれ制御することができず、冷却速度が提案の範囲の上限に近づくと板厚方向の強度差が大きくなることは避けられない。
【0007】
本発明の目的は、上記の各問題点を解消し、高層建築物などに用いる低降伏比高張力鋼材を板厚方向の材質の均一性を損なうことなく安価で大量に安定して製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明は以下に示す手段を用いている。
(1)本発明の製造方法は、重量%で、C:0.02〜0.18%と、Si:0.05〜0.5%と、Mn:0.6〜1.7%と、Al:0.08%以下とを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼材を製造する方法において、
該鋼を1000℃以上に加熱後Ar 3 以上の温度域において圧下率が50%以上の熱間圧延を行う工程と、
熱間圧延された鋼材をAr 3 以上の鋼材表面温度域から(Ar 3 −200)℃以下の鋼材表面温度域まで2℃/秒以上の冷却速度で冷却した後、一旦冷却を中断し、鋼材表面温度をオーステナイトに逆変態しない650℃〜Ac 1 点の温度域に復熱させる工程と、
鋼材表面温度が650℃〜Ac 1 点の温度域に復熱された鋼材を、Ar 3 〜(Ar 3 −100)℃の鋼材平均温度域まで、再び2℃/秒以上の冷却速度で冷却し、待機時の鋼材平均温度:T(℃)=Ar 3 〜(Ar 3 −100)℃において下記(1)式を満たす待機時間:t(秒)の待機を行う工程と、
待機された鋼材を400〜600℃の鋼材平均温度域まで2〜15℃/秒の冷却速度で冷却を行う工程と、
を備えたことを特徴とする、板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法である。
101.3-0.006 ×Δ T≦t≦150 …(1)
但し、ΔT:Ar 3 (℃)−T(℃)
(2)本発明の製造方法は、鋼成分として、重量%でさらにCu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜0.8%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.1%及びTi:0.005〜0.03%の群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法である。
なお、本発明においては特にことわりのない限り、温度は鋼板板厚方向の平均温度をさす。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、圧延後長時間の待機あるいは熱処理を行うことなく、板厚方向の材質差の小さい低降伏比高張力鋼材を製造する技術を得るため、冷却中に生成するベイナイト組織を硬質なものとならないようにする冷却条件と、鋼材の強度、降伏比に及ぼす待機温度と待機時間の影響について鋭意検討した結果、以下の知見を得るに至った。
すなわち、冷却を一旦中断して表面温度を650℃〜Ac 1 に復熱させることにより、復熱中にフェライト変態させて表層部を全面ベイナイトとしないこと、表層に生成したベイナイト相は、冷却を一旦中断した後にオーステナイト相に逆変態しなくても、復熱によるテンパー効果によりある程度軟化すること、また、所定の待機温度、待機時間で待機した後、所定の冷却速度で加速冷却することにより、所望の引張強さ(490N/mm2以上)でかつ降伏比が80%以下となることを見出した。
以上の知見に基づき、本発明者らは、特定量の化学成分を有する鋼に施す熱間圧延条件、及び冷却中断、復熱工程を含む冷却条件を一定範囲に制御するようにして、鋼組織をフェライト+ベイナイトの混合組織とし、圧延ままで490N/mm2以上の引張強度と80%以下の低降伏比を達成できるとともに、板厚方向の材質差を小さくすることが可能な高張力鋼材の製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は鋼組成及び製造条件を下記範囲に限定することにより、高層建築物用などに用いる低降伏比高張力鋼材を、板厚方向の材質の均一性を損なうことなく安価で大量に安定して製造することができる。
【0011】
以下、本発明の成分添加理由、成分限定理由、及び製造条件の限定理由について説明する。
【0012】
(1)成分組成範囲
C:0.02〜0.18%
Cは、鋼の強度を確保するために0.02%以上添加するが、0.18%を超えて多量に含有させると靭性および溶接性が劣化するため、その範囲は0.02〜0.18%である。
Si:0.05〜0.5%
Siは、脱酸のために0.05%以上の添加が必要であるが、0.5%を超えるとHAZ(溶接熱影響部)靭性及び溶接性が劣化するため、その範囲は0.05〜0.5%である。
Mn:0.6〜1.7%
Mnは、鋼材の強度・靭性の向上ならびにFeSの生成抑制のため0.6%以上は必要であるが、1.7%を超える多量の添加は鋼の焼き入れ性の増加を引き起こし、溶接時に硬化層が生成して割れ感受性が高くなるため、その範囲は0.6〜1.7%である。
Al:0.08%以下
Alは、脱酸上鋼に含まれる元素であるが、多量に含有させると鋼の清浄度を悪くし、溶接部の靭性劣化を招くため、その範囲は0.08%以下である。
【0013】
本発明は以上を基本成分とし、以下の選択成分群の1種または2種以上を必要に応じて添加してもよい。
(選択成分群)
Cu:0.05〜1.0%
Cuは、強度上昇および靭性改善に非常に有効な元素であるが、含有量が0.05%未満では十分な効果が発揮されず、1.0%を越えると析出硬化が著しくまた鋼材表面に割れが生じやすいため、Cuを添加する場合にはその範囲は0.05〜1.0%である。
Ni:0.05〜0.8%
Niは、母材の強度ならびに靭性を向上させる効果を有するが、その含有量が0.05%未満では十分な効果が得られず、0.8%を超える添加はコストアップにつながるため、Niを添加する場合にはその範囲は0.05〜0.8%である。
Cr:0.05〜1.0%
Crは、焼入性向上に有効な元素であるが、その含有量が0.05%未満では効果が小さく、1.0%を超えると溶接性やHAZ靭性を劣化させるため、Crを添加する場合にはその範囲は0.05〜1.0%である。
Mo:0.05〜1.0%
Moは、焼入性を高めるとともに焼戻し軟化抵抗を高め、強度上昇に有効であるが、その含有量が0.05%未満ではその効果が十分に発揮されず、1.0%を超えると溶接性を劣化させるとともに炭化物の析出により降伏比が上昇するため、Moを添加する場合にはその範囲は0.05〜1.0%である。
Nb:0.005〜0.1%
Nbは、微細炭窒化物の析出効果により強度上昇、靭性向上に有効に作用する元素であるが、その含有量が0.005%未満では効果が発揮されず、0.1%を超える添加は過度の析出効果により降伏比低下の妨げになるため、Nbを添加する場合にはその範囲は0.005〜0.1%である。
V:0.005〜0.1%
Vは、少量の添加により焼入性を向上させ、焼戻し軟化抵抗を高める元素であるが、その含有量が0.005%未満ではその効果が十分に発揮されず、0.1%を超えて添加すると溶接性を劣化させるため、Vを添加する場合にはその範囲は0.005〜0.1%である。
Ti:0.005〜0.03%
Tiは、TiNの溶接HAZ部の組織粗大化を抑制してHAZ靭性の向上に寄与する元素である。0.005%未満のTi添加ではHAZ靭性向上効果が発揮されない。0.03%を越えて添加すると、溶接の冷却過程でTiCが析出し、HAZ靭性の劣化を招くため、Tiを添加する場合にはその範囲は0.005〜0.03%の範囲である。
上記の成分組成範囲に調整することにより、高層建築物などに用いる降伏比が80%以下の板厚方向材質差の小さい高張力鋼材を、圧延後の板熱処理を必要とすることなく安価で大量に安定して得ることが可能となる。
【0014】
このような特性の鋼材は以下の製造方法により、製造することができる。
【0015】
(2)鋼材製造工程
(製造方法)
上記の成分組成範囲に調整した鋼を溶製し、連続鋳造で得られた鋼材を1000℃以上に加熱後Ar 3 以上の鋼材表面温度域において圧下率が50%以上の熱間圧延を行い、次いでAr 3 以上の鋼材表面温度域から(Ar 3 −200)℃以下の鋼材表面温度域まで2℃/秒以上の冷却速度で冷却した後、一旦冷却を中断する。続いて、鋼材表面温度を650℃〜Ac 1 点の温度域に復熱させた後、Ar 3 〜(Ar 3 −100)℃の鋼材平均温度域まで、再び2℃/秒以上の冷却速度で冷却し、待機時の鋼材平均温度:T=Ar 3 〜(Ar 3 −100)℃において下記(1)式を満たす待機時間:t(秒)の待機を行う。その後、400〜600℃の鋼材平均温度域まで2〜15℃/秒の冷却速度で冷却する。
【0016】
101.3-0.006 ×Δ T≦t≦150 …(1)
但し、ΔT:Ar 3 −T(℃)
a.鋼の加熱温度:1000℃以上
1000℃未満の加熱では、良好な熱間加工性が得られない。よって、鋼の加熱温度は1000℃以上である。
【0017】
b.熱間圧延終了温度:Ar 3 以上
熱間圧延終了温度がAr 3 未満では超音波探傷の測定精度に悪影響を及ぼす音響異方性が生じる。よって、熱間圧延終了温度はAr 3 以上である。
c.Ar 3 以上の圧下率:50%以上
Ar 3 以上での圧下率が50%未満では、加熱により粗大化した組織の再結晶が不十分であり、特に靭性が劣化する。よって、Ar 3 以上での圧下率は50%以上である。
d.冷却開始温度:Ar 3 以上
冷却開始温度がAr 3 未満では、冷却開始前に粗大なフェライトが生成し靭性が劣化するとともに、冷却待ち時間を要し生産性が低下する。よって、冷却の開始温度は鋼材表面温度でAr 3 以上である。
e.Ar 3 以上からの冷却速度:2℃/秒以上
Ar 3 以上からの冷却速度が2℃/秒未満では、冷却中に粗大なフェライトが生成し、靭性が劣化することに加え、冷却中断時に表面温度がすみやかに650℃以上に復熱しにくくなる。よって、Ar 3 以上からの冷却速度は2℃/秒以上である。
f.冷却中断時の表面温度:(Ar 3 −200)℃以下
冷却中断時の表面温度が(Ar 3 −200)℃よりも高い場合、冷却再開後も含めた初期の冷却速度が小さくなり、冷却の効果が損なわれる。よって、冷却中断時の表面温度は(Ar 3 −200)℃以下である。
g.復熱時の表面温度:650℃〜Ac 1
復熱時の表面温度が650℃未満の場合、最初の冷却により表面付近に生成した硬いベイナイトもしくはマルテンサイトの焼戻しによる軟化が十分に起こらず、板厚方向の材質差が解消されない。また、復熱時の表面温度がAc 1 を越えると逆変態によりオーステナイトが生成し、引き続いて行われる冷却により再び硬いベイナイトやマルテンサイトとなる場合がある。よって、復熱時の表面温度は650℃以上Ac 1 以下である。
h.復熱時の冷却速度:2℃/秒以上
復熱時の冷却速度が2℃/秒未満では、冷却中に粗大なフェライトが生成し、靭性が劣化する。よって、復熱時の冷却速度は2℃/秒以上である。
【0018】
i.冷却待機時の温度T(℃):Ar 3 〜(Ar 3 −100)℃、および待機時間t(秒):101.3-0.006 ×Δ T≦t≦150、但し、ΔT:Ar 3 −T(℃)
本発明者らは表1に示した鋼Aの成分系を用いて鋼材特性に及ぼす待機温度と待機時間の影響を検討した結果、図1に示すようにAr 3 〜(Ar 3 −100)℃の温度域で101.3-0.006 ×Δ T≦t≦150秒待機することにより引張強度が490N/mm2以上でかつ降伏比が80%以下となることを見出した。つまり、待機温度を比較的短時間でフェライトが析出するAr 3 〜(Ar 3 −100)℃とし、待機時間を101.3-0.006 ×Δ T≦t≦150秒とすることにより所定のフェライト分率に制御し、その後の更なる冷却により残りのオーステナイトをベイナイトとし最終的にフェライト+ベイナイト組織として降伏比≦80%を達成する。また、待機時間の上限は生産性を損なわないように150秒である。
【0019】
待機温度がAr 3 より高温では待機中にフェライトが生成せず、80%以下の低降伏比が得られない。一方、待機温度が(Ar 3 −100)℃未満となると短時間の待機においてもフェライトが過度に生成するため強度を確保し難くなる。したがって、強度確保および低降伏比の観点から、待機温度はAr 3 〜(Ar 3 −100)℃、かつ待機時間は101.3-0.006 ×Δ T≦t≦150秒である。なお、ここに示される冷却待機温度は鋼板の平均温度であり、上記g項に示した復熱時の表面温度よりも高くなる場合もあり得る。
【0020】
j.待機後の冷却速度:2〜15℃/秒
待機後の冷却速度が2℃/秒未満では、待機後の未変態オーステナイトからべイナイト変態が起こりにくく、80%以下の低降伏比を得ることができない。また、15℃/秒を越える冷却速度では、表面の硬度が上昇し、復熱により板厚方向の材質差を小さくした効果が損なわれる。したがって、待機後の冷却速度は2〜15℃/秒である。
k.待機後の冷却停止温度:400〜600℃
待機後の冷却停止温度を400℃未満とすると、冷却によりマルテンサイトが生成し、靭性が劣化する。一方、冷却停止温度が600℃超えでは、べイナイト変態が十分進行しないため高張力鋼としての強度を確保することが難しくなる。したがって、待機後の冷却停止温度は400〜600℃である。
【0021】
上記成分系と圧延・冷却条件の採用により生産性を損なうことなく490N/mm2 以上の強度と80%以下の降伏比を有し、かつ板厚方向の材質差が小さい高張力鋼材の製造が可能となる。
【0022】
以下に本発明の実施例を挙げ、本発明の効果を立証する。
【0023】
【実施例】
成分系ならびに圧延、冷却条件を変えて製造した鋼材の機械的性質を調べた。表1に供試鋼の化学成分およびAr3 ,Ac1 の各変態点を、表2、3に供試鋼の製造条件と引張試験、シャルピー衝撃試験の結果ならびに表面と板厚中心部のビッカース硬度差を示す(A〜L:本発明鋼、M〜X:比較鋼)。
【0024】
成分系、製造条件とも本発明の範囲内である本発明鋼A〜Lは490N/mm2 以上の十分な引張強度(TS)と80%以下の降伏比(YR)および優れた靭性(vE0)を示し、かつ表面の板厚中心部の硬度差(ΔHv)も8〜24程度と小さい。
【0025】
これに対し、復熱時の表面温度が本発明の範囲外である比較鋼MおよびP、冷却待機後の冷却速度が本発明の範囲より大きい比較鋼Qはいずれも表面と板厚中心部の硬度差ΔHvが40以上あり、板厚方向の材質差が大きい。
【0026】
比較鋼N,O,R〜Xは、板厚方向の材質差は、本発明鋼と同程度に小さいが、冷却中断時の表面温度が本発明の範囲より高い比較鋼X、冷却待機時の平均温度が本発明の範囲より低い比較鋼Oはいずれも引張強度が490N/mm2 未満であり、高張力鋼としての強度が得られない。また、冷却待機時の平均温度が本発明の範囲より高い比較鋼V、冷却待機時間が本発明の範囲より短い比較鋼W、成分系が本発明の範囲外である比較鋼NおよびRは、いずれもYRが80%を越えており、低降伏比が得られない。さらに、Ar3 以上の圧下率が本発明の範囲外である比較鋼T、冷却速度が本発明の範囲より小さい比較鋼S、待機後の冷却停止温度が本発明の範囲より低い比較鋼Uは、いずれも靭性が他の鋼に較べて劣っている。
【0027】
【表1】
Figure 0003911834
【0028】
【表2】
Figure 0003911834
【0029】
【表3】
Figure 0003911834
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、鋼組成及び製造条件を特定することにより、高層建築物用などに使用される降伏比が80%以下の低降伏比高張力鋼材を、板厚方向の材質の均一性を損なうことなく圧延ままで製造することができ、熱処理を施す必要がないため生産性と経済性を著しく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋼材の強度、降伏比に及ぼす待機温度と待機時間の影響を示した図。

Claims (2)

  1. 重量%で、C:0.02〜0.18%と、Si:0.05〜0.5%と、Mn:0.6〜1.7%と、Al:0.08%以下とを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼材を製造する方法において、
    該鋼を1000℃以上に加熱後Ar 3 以上の温度域において圧下率が50%以上の熱間圧延を行う工程と、
    熱間圧延された鋼材をAr 3 以上の鋼材表面温度域から(Ar 3 −200)℃以下の鋼材表面温度域まで2℃/秒以上の冷却速度で冷却した後、一旦冷却を中断し、鋼材表面温度をオーステナイトに逆変態しない650℃〜Ac 1 点の温度域に復熱させる工程と、
    鋼材表面温度が650℃〜Ac 1 点の温度域に復熱された鋼材を、Ar 3 〜(Ar 3 −100)℃の鋼材平均温度域まで、再び2℃/秒以上の冷却速度で冷却し、待機時の鋼材平均温度:T(℃)=Ar 3 〜(Ar 3 −100)℃において下記(1)式を満たす待機時間:t(秒)の待機を行う工程と、
    待機された鋼材を400〜600℃の鋼材平均温度域まで2〜15℃/秒の冷却速度で冷却を行う工程と、
    を備えたことを特徴とする、板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法。
    101.3-0.006 ×Δ T≦t≦150 …(1)
    但し、ΔT:Ar 3 (℃)−T(℃)
  2. 鋼成分として、重量%でさらにCu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜0.8%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.1%及びTi:0.005〜0.03%の群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法。
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