JP2000178644A - 板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法 - Google Patents

板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法

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JP2000178644A
JP2000178644A JP10363209A JP36320998A JP2000178644A JP 2000178644 A JP2000178644 A JP 2000178644A JP 10363209 A JP10363209 A JP 10363209A JP 36320998 A JP36320998 A JP 36320998A JP 2000178644 A JP2000178644 A JP 2000178644A
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Shinichi Suzuki
伸一 鈴木
Minoru Suwa
稔 諏訪
Ryuji Muraoka
隆二 村岡
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 高層建築物などの鋼構造物に用いられる低降
伏比高張力鋼材の製造方法。 【解決手段】 熱間圧延された鋼材を、鋼材の表面温度
でAr3以上からAr3−150℃以下までを、2〜5
℃/sで冷却する第1の制御冷却工程と、第1の制御冷
却した鋼材を、引き続き、平均温度でAr3からAr3
−100℃間のT℃までを、2〜15℃/sで冷却する
第2の制御冷却工程と、前記T℃まで第2の制御冷却し
た鋼材の冷却を中断し、前記T℃において、1.3−
0.006x(Ar3−T)≦log t≦log15
0の式を満たす時間:t(s)待機する工程と、前記t
(s)待機した鋼材を、さらに平均温度で400〜60
0℃の温度域までを、2〜15℃/sで冷却する第3の
制御冷却工程で冷却する、板厚方向材質差の小さい低降
伏比高張力鋼材の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高層建築物などの
鋼構造物に用いられる低降伏比高張力鋼材の製造方法に
関し、特に板厚方向の材質差の小さい低降伏比高張力鋼
材の製造方法に関する。ここで高張力鋼材とは、引張強
度490N/mm2以上の強度を有する鋼材をいう。
【0002】
【従来の技術】近年建築物の高層化・大型化に伴い、使
用される部材にも厚肉・高張力の厚鋼板が要求され、引
張強度490N/mm2以上の高張力鋼材が普及してき
ている。また、今日の高層建築物には、巨大地震に見舞
われたときに、柱・梁部材を塑性変形させこれにより地
震エネルギーを吸収させ、大崩壊を回避するという人的
安全性を重視した限界状態設計法が適用されている。鋼
材の降伏比が低いほど地震エネルギーを吸収できる塑性
変形能が優れていることから、柱・梁部材用の鋼材に
は、高い塑性変形能の目安として降伏比(YR)が低い
こと、つまり低降伏比が望まれている。
【0003】鋼材の低降伏比化を実現するには、軟質相
であるフェライトと硬質相であるパーライト、ベイナイ
トあるいはマルテンサイトを混在させたフェライト+硬
質相の混合組織が有効であることが知られている。
【0004】かかる組織を得るため、これまでは、引張
強度570N/mm2以上の調質型高張力鋼において
は、焼入れ処理と焼戻し処理との間にオーステナイト−
フェライト二相域に加熱する中間熱処理を施す方法が採
用されてきた。この中間熱処理を行う方法は、安定して
低降伏比鋼を製造できることから広く利用されてきた
が、コスト的に不利な熱処理工程が必要であること及び
熱処理炉の生産能力に大きな負荷をかけ生産能力の点で
限界がある等の課題がある。
【0005】こうしたことから、引張強度490N/m
2以上の高張力鋼材では、熱間圧延を終了した鋼板に
種々の制御冷却方法を適用して低降伏比鋼を製造する方
法が採用されている。例えば、圧延終了後、フェライト
とオーステナイトの二相温度域で一定時間待機してフェ
ライトを析出させたのち制御冷却を開始する方法であ
る。しかしながら、この技術は、圧延を終えた鋼材を制
御冷却開始まで待機させる必要があるため、生産性の低
下・製造コストの増加が避けられないという課題を有し
ている。
【0006】これらの問題点を解決すべく靭性に優れた
低降伏比高張力鋼板の製造方法として、特公平7−74
379号公報及び特開平5−271761号公報が開示
されている。いずれの発明も、熱間圧延終了後にAr3
−20℃以下からAr3−100℃以上までの温度域を
予備冷却したのち、冷却を中断して鋼板表面をAr3−
100℃以上に復熱させ、再び15℃/sを超える冷却
速度で400〜600℃まで冷却するものである。
【0007】しかしながら、これらの発明は、冷却速度
が15℃/s以上と大きいため、鋼板表面にマルテンサ
イト等の硬化組織を生じさせ易く、板厚方向の硬度の均
一性に課題があると考えられる。また、予備冷却後の復
熱時間についても規定していないことから、低降伏比鋼
に適した組織の制御は容易とはいえず、従って製造安定
性にも課題が残されていると考えられる。
【0008】また、板厚方向の材質の均一性を目的とす
る発明として、特開平3−188216号公報、特開平
4−224623号公報及び特開昭57−152430
号公報が開示されている。
【0009】特開平3−188216号公報では、板厚
方向の強度差が小さい低降伏比厚肉高張力鋼板の製造方
法として、鋼スラブをオーステナイト再結晶域で熱間圧
延終了後、Ar3変態点以上から水冷を開姶し、表面温
度がAr3−150℃以下になった時点で一旦冷却を中
断して、表面温度がAcl〜Ac3変態点温度に復熱し
た後、水冷を再開する方法が開示されている。
【0010】この発明では、鋼板表面温度をAcl点〜
Ac3点に復熱する工程で、最初の制御冷却で生成した
硬質ベイナイト組織の一部をオーステナイトに逆変態さ
せた後、水量密度0.6m3/(m2・min)以上の冷
却による急冷を施している。従って、逆変態したオース
テナイトが再び硬質のマルテンサイトやベイナイト組織
に変態することも十分に予測され、必ずしも板厚方向の
硬度差が安定して低減されるとは考えにくい。また、冷
却に際して、板厚方向の中心部等の温度履歴については
規定していないため、開示された製造条件だけでは低降
伏比鋼を安定して得ることは容易でないと考えられる。
【0011】また、特開平4−224623号公報で
は、板厚方向の硬度差が小さい50キロ級低降伏比厚肉
高張力鋼板の製造方法として、化学成分、加熱温度、圧
延終了温度、制御冷却時の冷却開始温度、冷却速度、冷
却停止温度を規定する発明が開示されている。しかしな
がら、この方法では鋼板表面と鋼板内部の硬度(強度)
をそれぞれ同時に制御することが容易ではないと考えら
れ、冷却速度が速くなり冷却速度範囲の上限に近づく
と、板厚方向の強度差が大きくなることは避けられない
と推察される。
【0012】更に、特開昭57−152430号公報で
は、板厚方向に硬度むらの少ない鋼板をうる冷却方法が
開示されている。この発明は、水冷初期の水量密度を小
さくし、途中から水量密度を増加させる方法である。し
かしながら、冷却停止温度について規定されていないた
め、停止温度が低い場合には鋼板内部の硬度がかえって
上昇するばかりでなく、連続的に冷却するため低降伏比
鋼を得ることが困難である。
【0013】このように、引張強度490N/mm2
上の高張力鋼において、熱間圧延後に制御冷却を適用し
て低降伏比鋼を製造する発明が多く開示されているもの
の、板厚方向の材質の均一性、安定した製造性の点で、
十分に解決されているとはいえないのが現状である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高層建築物
などの鋼構造物に用いられる低降伏比高張力鋼材の製造
方法に関して、従来技術の有する上述した各問題点を解
決して、特に板厚方向の材質の均一化を図りつつ低コス
トで、かつ安定して製造する方法を提供することを課題
とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題
に対して鋭意研究をした結果、特に制御冷却における冷
却速度を途中で変えること、及び制御冷却中に冷却鋼材
を待機させる工程について、その温度と時間を定量的に
制御する方法を見出し、以下に述べる発明を完成するに
至った。なお、本発明においては、温度は原則として鋼
材板厚方向の平均温度を意味する。
【0016】第1の発明は、鋼スラブから熱間圧延され
た鋼材を、下記工程により制御冷却することを特徴とす
る板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方
法である。 (a)前記熱間圧延された鋼材を、鋼材の表面温度でA
r3以上から(Ar3−150℃)以下までの温度域
を、2℃/s以上5℃/s以下の冷却速度で冷却する第
1の制御冷却工程と、(b)前記第1の制御冷却した鋼
材を、引き続き、平均温度でAr3から(Ar3−10
0℃)間のT(℃)までの温度域を、2℃/s以上15
℃/s以下の冷却速度で冷却する第2の制御冷却工程
と、(c)前記T(℃)まで第2の制御冷却した鋼材の
制御冷却を中断し、前記T(℃)において下記の(1)
式を満たす時間:t(s)待機する工程と、(d)前記
t(s)待機した鋼材を、さらに平均温度で400〜6
00℃の温度域までを、2℃/s以上15℃/s以下の
冷却速度で冷却する第3の制御冷却工程。 1.3−0.006xΔT≦log t≦log 150・・・(1) ここで、ΔT(℃)=Ar3−T 本発明により、課題であった板厚方向の材質の均一性に
すぐれた低降伏比高張力鋼材を、その生産性を阻害する
ことなく低コストで、かつ安定して製造することができ
る。
【0017】第2の発明は、前記鋼スラブから熱間圧延
する工程が、鋼スラブを1000℃以上に加熱し、鋼ス
ラブをAr3以上の温度域において累積圧下率50%以
上で熱間圧延する工程であることを特徴とする板厚方向
材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法である。
本発明により、鋼材組織の微細化が達成できるため、靭
性に優れた板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材
の製造が容易にできる。
【0018】第3の発明は、前記鋼スラブの化学成分
が、重量%で、C:0.02〜0.18%、/Si:
0.05〜0.5%、Mn:0.6〜1.7%、Al:
0.08%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純
物からなること特徴とする板厚方向材質差の小さい低降
伏比高張力鋼材の製造方法である。本発明により、板厚
方向材質差が小さく、靭性に優れた引張強度490N/
mm2以上の低降伏比高張力鋼材の製造が可能となる。
【0019】第4の発明は、前記鋼スラブの化学成分
が、更に、重量%で、Cu:0.05〜1.0%、N
i:0.05〜0.8%、Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.1
%、V:0.005〜0.1%及びTi:0.005〜
0.03%の1種または2種以上を含有することを特徴
とする板厚方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製
造方法である。本発明により、鋼材の合金成分の選択が
容易となるため、板厚方向材質差が小さく、靭性と溶接
性に優れた引張強度490N/mm2以上の低降伏比高
張力鋼材の製造が可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明者等は、圧延後長時間の待
機及び熱処理を行うことなく、低降伏比高張力厚鋼材を
製造する技術について鋭意検討した結果、特に制御冷却
における冷却速度を途中で変えること、及び制御冷却中
に冷却鋼材を待機させる工程について、その温度と時間
を定量的に制御する方法を見出した。かかる方法を所定
の化学成分を有する鋼スラブに適用することで、鋼組織
をフェライト+ベイナイトの混合組織に制御し、何らの
熱処理を必要とすることなく490N/mm2以上の引
張強度と80%以下の低降伏比を達成できるとともに、
板厚方向の材質差を小さくすることが可能となる。この
ため、高層建築物用などに用いる低降伏比高張力鋼材
を、板厚方向の材質の均一性を損なうことなく安価で大
量に安定して製造することができる。
【0021】本発明では、大型構造物に多用される、引
張強度が490N/mm2級又は590N/mm2級の高
張力構造用鋼を対象とする。その組織はフェライトを主
組織とし、フェライトが概ね80%以上を占め、残部は
パーライト又は/及びベイナイトからなるものである。
このような組織は以下に延べる製造方法を規定すること
により得ることができる。
【0022】(1)製造方法 (a)制御冷却開始表面温度はAr3以上とする。制御
冷却の開始表面温度がAr3以下となると、制御冷却開
姶前にフェライト変態が始まりフェライトが成長する。
このため、フェライト粒径の粗大化に伴い靭性が劣化す
る。また、制御冷却開始までに冷却待ち時間を要し、鋼
材の生産性が低下する。よって、制御冷却の開始表面温
度はAr3以上とする。
【0023】(b)Ar3以上からの制御冷却速度は2
℃/s以上5℃/s以下とする。Ar3以上からの制御
冷却速度が2℃/s未満では、制御冷却中に粗大なフェ
ライトが生成し、靭性が劣化する。また、制御冷却速度
が5℃/sを超えると表面硬度が硬くなりすぎ、板厚方
向の材質差が生じ、次工程において、この材質差を改善
するのが困難となる。よって、Ar3以上からの制御冷
却速度は2℃/s以上5℃/s以下とする。
【0024】(c)冷却速度切替時の表面温度は(Ar
3−150℃)以下とする。制御冷却速度を切替える時
の表面温度がAr3−150℃以上の場合には表面硬度
が硬くなりすぎ、板厚方向の材質差を生じる。よって冷
却速度を切替える時の表面温度は(Ar3−150℃)
以下とする。
【0025】(d)冷却速度切替後の制御冷却速度は2
℃/s以上15℃/s以下とする。冷却速度切替後の制
御冷却速度が2℃/s未満では、この制御冷却中に粗大
なフェライトが生成し、靭性が劣化する。また、15℃
/sを超える冷却速度では表面の硬度が上昇し、最初の
制御冷却工程における冷却速度を規定したことにより板
厚方向の材質差を小さくした効果が損なわれる。よっ
て、冷却速度切替後の制御冷却速度は2℃/s以上15
℃/s以下とする。
【0026】(e)冷却待機時の温度T(℃)はAr3
とAr3−100℃との間の温度とし、前記T(℃)に
おける待機時間は次の(1)式を満たす時間:t(s)
とする。 1.3−0.006xΔT≦log t≦log 150・・・(1) ここで、ΔT(℃)=Ar3−T
【0027】本発明者らは、図2として示す表1に記載
の引張強度490N/mm2級の化学成分を有する鋼A
を用いて、鋼材の諸特性に及ぼす待機温度と待機時間の
影響を調査した。その結果を図1に示す。この図から明
らかなように、待機温度がAr3より高温では待機中に
フェライトが生成せず、80%以下の低降伏比が得られ
ない。また、待機温度がAr3よりも100℃を超えて
低温側になる(ΔTが100℃超える場合)と、降伏比
は80%以下と目標を満たすものの、フェライトが過剰
に生成するため特に引張強度の確保が困難になる。ま
た、待機時間は鋼材の圧延生産性を損なわないように、
その上限を150秒とした。一方、待機時間が(1)式
の関係で定まる範囲の時間を下回ると、強度は確保でき
るが、降伏比の確保ができなくなる。
【0028】結局、強度及び降伏比の両特性を安定して
満たすことができるのは、 1.3−0.006xΔT≦log t≦log 150・・・(1) の関係を満たす待機温度及び待機時間であることが判明
した。このようは関係を満たす範囲内で待機温度と待機
時間を選択すると、引張強度490N/mm2以上でか
つ降伏比80%以下の鋼材が安定して得られる。
【0029】このことは、鋼の表面温度を復熱させる待
機温度を、比較的短時間でフェライトが析出するAr3
〜Ar3−100℃の間の温度とし、そこでの待機時間
を上記(1)式の関係を満たす時間(s)とすることに
より、鋼材の組織を所定のフェライト分率に制御するこ
とができることを意味する。また、次に述べるように、
その後の第3の制御冷却により、フェライトに変態した
残りのオーステナイトをベイナイトに変態させることが
できるため、最終的にフェライト+ベイナイトの混合組
織として降伏比80%以下を達成することができる。な
お、ここで示した冷却待機温度は鋼板の平均温度であ
り、前述の(c)で示した冷却速度切替時表面温度より
も高温にある。
【0030】(f)待機後の制御冷却速度は2℃/s以
上15℃/s以下とする。待機後の第3の制御冷却にお
ける冷却速度が2℃/s未満では、未変態オーステナイ
トからベイナイトへの変態が起こりにくく、80%以下
の低降伏比を得ることができない。また、15℃/sを
超える冷却速度では表面の硬度が著しく上昇し、復熱に
より板厚方向の材質差を小さくした効果が損なわれる。
従って、待機後の制御冷却速度は2℃/s以上15℃/
s以下とする。
【0031】(g)待機後の制御冷却停止温度は600
℃以下400℃以上とする。待機後の制御冷却停止温度
を400℃未満とすると、制御冷却によりマルテンサイ
ト組織が生成し靭性が劣化する。一方、制御冷却停止温
度が600℃以上では、ベイナイト変態が十分進行しな
いため高張力鋼としての強度を確保することが難しくな
る。従って、待機後の制御冷却停止温度は600℃以下
400℃以上とする。
【0032】これらの制御冷却条件の前に、鋼スラブの
熱間圧延を以下のように規定すると鋼材の靭性が向上す
る。 (h)鋼スラブの加熱温度は1000℃以上とする。1
000℃未満のスラブ加熱では、良好な熱間加工性と高
い圧延生産性が得られない。よって、鋼スラブの加熱温
度は1000℃以上とする。
【0033】(i)熱間圧延終了温度はAr3以上とす
る。熱間圧延終了温度がAr3未満では、圧延集合組織
の形成が助長され、超音波探傷に際しての音響異方性が
生じる。よって、熱間圧延終了温度はAr3以上とす
る。
【0034】(j)Ar3以上の累積圧下率は50%以
上とする。Ar3以上での累積圧下率が50%未満で
は、加熱により粗大化した組織の再結晶細粒化が不十分
であり、靭性の向上が期待できない。よって、Ar3以
上での累積圧下率を50%以上とする。
【0035】(2)化学成分 本発明における圧延・制御冷却条件の効果が最も効果的
に発揮できるのは、鋼スラブが次に述べる化学成分であ
ることが望ましい。化学成分(重量%)を限定した理由
について、以下に説明する。
【0036】C:0.02〜0.18% Cは所定の強度を確保するために含有するが、0.02
%未満では必要とする強度を確保するのが困難である。
また、0.18%を超えると溶接性が劣化するので、そ
の範囲を0.02〜0.18%とする。
【0037】Si:0.05〜0.5% Siは製鋼段階の脱酸剤及び強度向上元素として含有す
るが、0.05%未満ではその効果が小さい。一方過剰
に含有すると溶接性及び溶接継手熱影響部の靭性の低下
を招くので、その範囲を0.05〜0.5%とする。
【0038】Mn:0.6〜1.7% Mnは鋼材の強度・靭性の向上ならびに圧延中の熱間延
性を阻害するFeS介在物の生成を抑制のために0.6
%以上含有することが必要である。また、1.7%を超
えて過剰に含有すると、鋼材の焼入れ性を増大し、溶接
時に硬化層を生成して溶接割れ感受性を高めるため、そ
の上限を1.7%とする。
【0039】Al:0.08%以下 Alは脱酸剤として使用するので鋼中に含有されるが、
過剰に含有すると鋼スラブの清浄性を損ない、また表面
疵を発生させやすくなる。従って、その上限を0.08
%とする。
【0040】また、本発明では、Cu、Ni、Cr、M
o、Nb、V、Tiの1種又は2種以上含有することこ
とができる。これらの合金元素の含有量を限定する理由
は以下の通りである。
【0041】Cu:0.05〜1.0% Cuは、強度上昇及び靭性改善に非常に有効な元素であ
るが、含有量が0.05%未満では十分な効果が発揮さ
れず、1.0%を超えると析出硬化に伴う強化の点では
有効であるが、鋼材表面にCu疵を発生させ易くなる。
従って、その範囲は0.05〜1.0%とする。
【0042】Ni:0.05〜0.8% Niは、母材の強度ならびに靭性を向上させる効果を有
するが、その含有量が0.05%未満では十分な効果が
得られず、0.8%を超える含有はコストアップにつな
がるため、その範囲は0.05〜0.8%とする。
【0043】Cr:0.05〜1.0% Crは、焼入性向上に有効な元素であるが、その含有量
が0.05%未満では効果が小さく、1.0%を超える
と溶接性や溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、その
範囲は0.05〜1.0%とする。
【0044】Mo:0.05〜1.0% Moは、焼入性を高めるとともに焼き戻し軟化抵抗を高
め、強度上昇に有効であるが、その含有量が0.05%
未満ではその効果が十分に発揮されず、1.0%を超え
ると溶接性を劣化させるとともに炭化物の析出により降
伏比が上昇する。よって、その範囲は0.05〜1.0
%とする。
【0045】Nb:0.005〜0.1% Nbは、微細炭窒化物の析出効果により、強度上昇とオ
ーステナイトの再結晶温度を低温側にもちきたす効果に
より靭性向上に有効に作用する元素であるが、その含有
量が0.005%未満では効果が発揮されない。一方、
0.1%以上の含有は過度の析出効果により降伏比を高
めるとともに、特に溶接継手部の靭性劣化を招く。よっ
て、その範囲は0.005〜0.1%とする。
【0046】V:0.01〜0.1% Vは、微量の添加により鋼の焼入性の向上、析出硬化に
よる強度上昇及び、焼戻し軟化抵抗を高める効果を有す
るが、含有量が0.01%未満ではその効果が十分に発
揮されない。また、0.1%を超えて含有すると溶接性
継手部の靭性を劣化させる。よって、その範囲は0.0
1〜0.1%とする。
【0047】Ti:0.005〜0.03% Tiは、TiNを生成し、溶接継手部の組織粗大化を抑
制して溶接継手部の勒性向上に寄与する元素であるが、
0.005%未満の含有では継手勒性向上効果が発揮さ
れない。一方、0.03%を越えて含有すると、溶接に
際しての冷却過程でTiCが析出し継手勒性の劣化を招
く。よって、その範囲は0.005〜0.03%とす
る。
【0048】
【実施例】以下に、本発明の実施例について述べる。鋼
スラブの成分系ならびに圧延・制御冷却条件を変えて製
造した鋼材の機械的性質を調査した。図2として示す表
1に供試鋼の化学成分及びAr3変態点を、図3として
示す表2に供試鋼の製造条件と引張試験、シヤルピー衝
撃試験の結果ならびに表面と板厚中心部のビッカース硬
度差を示す。ここで鋼Aから鋼Lは本発明の化学成分及
び製造条件を有する鋼であり、鋼Mから鋼Xは比較鋼で
ある。
【0049】化学成分及び製造条件ともに本発明の範囲
内である鋼Aから鋼Lは490N/mm2以上の十分な
引張強度(TS)と80%以下の降伏比(YR)及び優
れた靭性(vE0)を示し、かつ表面と板厚中心部の硬
度差(△Hv)も、25以下程度と小さい。
【0050】これに対し、Ar3以上からの制御冷却速
度が本発明の範囲より大きい比較鋼O、冷却速度切替時
の表面温度が本発明の範囲より高い比較鋼X、冷却待機
後の制御冷却速度が本発明の範囲より大きい比較鋼Qは
いずれも、表面と板厚中心部の硬度差ΔHvが40以上
あり、板厚方向の材質差が大きい。
【0051】比較鋼M、N、P及びRからWは、板厚方
向の材質差は本発明鋼と同程度に小さい。しかし、冷却
待機時の平均温度が本発明の範囲より低い鋼Mは引張強
度が490N/mm2未満であり高張力鋼としての強度
が得られない。また、冷却待機時の平均温度が本発明の
範囲より高い鋼V、冷却待機時間が本発明の範囲より短
い鋼W、成分系が本発明の範囲外にある鋼N及び鋼R
は、いずれもYRが80%を超えており、低降伏比が得
られていない。また、Ar3以上の累積圧下率が本発明
の範囲外である鋼T、Ar3以上からの制御冷却速度が
本発明の範囲より小さい鋼P、冷却速度切替後の制御冷
却速度が本発明の範囲より小さい鋼S、待機後の制御冷
却停止温度が本発明の範囲より低い比較鋼Uは、いずれ
も靭性が他の鋼に較べて劣っている。
【0052】
【効果】以上説明したように本発明によれば、鋼組成及
び製造条件を特定することにより、高層建築物用などに
使用される降伏比が80%以下の低降伏比高張力鋼材
を、板厚方向の材質の均一性を損なうことなく、制御冷
却ままで製造することができ、熱処理を施す必要がない
ため生産性と経済性を著しく高めることができる。ま
た、本発明では主として厚鋼板の製造プロセスを想定し
ているが、本発明の製造条件・化学成分を用いた形鋼の
製造においても、同様の効果が得られることはいうまで
もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋼材の強度、降伏比
に及ぼす待機温度と待機時間の関係を示した図である。
【図2】実施例に用いた鋼スラブの化学成分ならびに圧
延・制御冷却条件を、表1として示す図である。
【図3】実施例の供試鋼の製造条件と引張試験、シヤル
ピー衝撃試験の結果ならびに表面と板厚中心部のビッカ
ース硬度差を、表2として示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 村岡 隆二 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K032 AA01 AA04 AA05 AA11 AA14 AA16 AA19 AA21 AA22 AA23 AA27 AA29 AA31 AA35 AA36 BA01 CA02 CB02 CC03 CC04 CD02 CF02

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼スラブから熱間圧延された鋼材を、下
    記工程により制御冷却することを特徴とする板厚方向材
    質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法。 (a)前記熱間圧延された鋼材を、鋼材の表面温度でA
    r3以上から(Ar3−150℃)以下までの温度域
    を、2℃/s以上5℃/s以下の冷却速度で冷却する第
    1の制御冷却工程と、(b)前記第1の制御冷却した鋼
    材を、引き続き、平均温度でAr3から(Ar3−10
    0℃)間のT(℃)までの温度域を、2℃/s以上15
    ℃/s以下の冷却速度で冷却する第2の制御冷却工程
    と、(c)前記T(℃)まで第2の制御冷却した鋼材の
    冷却を中断し、前記T(℃)において(1)式を満たす
    時間:t(s)待機する工程と、(d)前記t(s)待
    機した鋼材を、さらに平均温度で400〜600℃の温
    度域までを、2℃/s以上15℃/s以下の冷却速度で
    冷却する第3の制御冷却工程。 1.3−0.006xΔT≦log t≦log 150…(1) ここで、ΔT(℃)=Ar3−T
  2. 【請求項2】 前記鋼スラブから熱間圧延する工程が、
    鋼スラブを1000℃以上に加熱し、鋼スラブをAr3
    以上の温度域において累積圧下率50%以上で熱間圧延
    する工程であることを特徴とする請求項1に記載の板厚
    方向材質差の小さい低降伏比高張力鋼材の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記鋼スラブの化学成分が、重量%で、
    C:0.02〜0.18%、Si:0.05〜0.5
    %、Mn:0.6〜1.7%、Al:0.08%以下を
    含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなること特
    徴とする請求項1又は2に記載の板厚方向材質差の小さ
    い低降伏比高張力鋼材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記鋼スラブが、更に、重量%で、C
    u:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜0.8%、
    Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.05〜1.0
    %、Nb:0.005〜0.1%、V:0.005〜
    0.1%及びTi:0.005〜0.03%の1種また
    は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から
    3のいずれかに記載の板厚方向材質差の小さい低降伏比
    高張力鋼材の製造方法。
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