JP4218114B2 - 低降伏比耐火形鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高層建築物などの鉄鋼構造物に用いられる低降伏比耐火形鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日の高層建築物には、巨大地震に見舞われた時、柱・梁部材の塑性変形により地震エネルギーを吸収させ、大崩壊を回避するという人的安全性を重視した限界状態設計法が適用されている。したがって、限界状態設計法で使用される柱・梁部材には、高い塑性変形能の目安として降伏比(YR)が低いこと、つまり低降伏比が望まれ、降伏比が低い材料ほど塑性変形能が優れていると言われている。 低降伏比化については、一般的に焼入れと焼戻し処理の間に二相域に加熱する中間熱処理を施す方法等に代表されるように、軟質相としてのフェライトと硬質相としてのベイナイトあるいはマルテンサイトを混在させたフェライト+硬質相組織により達成されることが知られている。このフェライト+硬質相組織を得るための従来技術としては、上述した焼入れ−二相域焼入れ−焼戻し処理する方法や、熱間圧延後フェライトとオーステナイトの二相域まで待機した後加速冷却する方法などが挙げられるが、これらの技術では複雑な熱処理工程の必要や加速冷却開始までの待機時間の長期化による生産性の低下が避けられない。
【0003】
また、火災に対しては耐火設計の見直しが行われたことにより、高温強度に優れた耐火鋼材を用いて耐火被覆を減らすことが可能となった。耐火鋼材の使用は、工期の短縮、工事費の低減、建築物内の有効面積の拡大につながることから、このような新しい耐火設計が盛んになっている。
【0004】
このように、上記した耐震性と耐火設計を組み合わせる手法を用いる高層建築物には、低降伏比と耐火性を備えた鋼材が必要とされている。このような、低降伏比と耐火性を兼ね備えた建築用鋼材に関し、フェライトと硬質相組織に着眼した提案としては、特開平3−6322号公報、特開平7−305113号公報が挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平3−6322号公報は800〜1000℃で圧延を終了後、(Ar3 −20)℃〜(Ar3 −100)℃まで空冷後加速冷却するものであり、上述したように加速冷却開始までの待機時間の長期化による生産性の低下が避けられない。また、特開平7−305113号公報は圧延、加速冷却後、AC1 〜AC3 の温度域に再加熱後水冷するもので、複雑な熱処理工程に伴う生産性の低下が避けられない。従って、低降伏比耐火形鋼を生産性を損なうことなく安価にかつ大量に製造し得る技術が必要とされている。
【0006】
本発明の目的は、高層建築物などに用いる降伏比が75%以下の耐火形鋼を安価で大量に安定して製造できる、低降伏比耐火形鋼の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明は以下に示す手段を用いている。
【0008】
(1)本発明の製造方法は、質量%で、C:0.04〜0.2%と、Si:0.05〜1%と、Mn:0.5〜2%と、Mo:0.2〜0.8%と、P≦0.05%と、S≦0.01%と、Al:0.002〜0.1%と、N≦0.02%とを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる形鋼を製造する方法において、該鋼を1000℃以上に加熱後、Ar3 以上の温度域において減面率が50%以上の熱間圧延を行う工程と、
熱間圧延された鋼材をAr3 以上から(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃の温度域まで1℃/秒以上の冷却速度で加速冷却し、待機温度:T(℃)=(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃において下記(1)式を満たす待機時間:t(秒)の待機を行う工程と、
待機された鋼材を400〜600℃の温度域まで、下記(2)式を満たす冷却速度:v(℃/秒)で加速冷却する工程と、
を備えたことを特徴とする、600℃における高温耐力が216MPa以上で、かつ降伏比が75%以下の低降伏比耐火形鋼の製造方法である。
【0009】
101.2-0.01 ×Δ T ≦t≦150秒 …(1)
但し、ΔT=Ar3 (℃)−T(℃)
0.9−0.4logh≦logv≦2.6−0.9logh …(2)
但し、h:鋼材のフランジ厚さ(mm)
(2)本発明の製造方法は、鋼成分として、質量%でさらに、Cu:0.03〜1%、Ni:0.03〜0.5%、Cr:0.03〜0.6%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.1%、Ti:0.003〜0.1%、Ca:0.0005〜0.005%、及びREM:0.001〜0.02%の群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の低降伏比耐火形鋼の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、圧延後長時間の待機や複雑な熱処理を行うことなく、低降伏比耐火形鋼を製造する技術を鋭意検討した結果、以下の知見を得るに至った。
【0011】
図1は、0.09C−0.25Si−1.2Mn−0.42Mo鋼を1250℃に加熱し、減面率80%の圧下を加え、Ar3 点(753℃)より高い900℃でフランジ厚さ20mmのH形鋼に圧延し、その後2℃/秒で所定の温度まで冷却、保持しさらに550℃まで5℃/秒で冷却した場合の常温での引張特性 (引張強度、降伏比(YR))を示す。図1に示すように、待機温度:T(℃)=(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃の温度域で101.2-0.01 ×Δ T ≦t≦150秒(ΔT=Ar3 −T)待機することにより引張強度が490MPa以上(強度確保)でかつ降伏比が75%以下となることが明らかである。
【0012】
また、本条件を満たした形鋼はいずれも490MPa級鋼の耐火性の目安である600℃における0.2%耐力が、490MPa級鋼の常温の引張強度の下限値の2/3である216MPa以上を有しており、優れた耐火性を有していた。図2は、0.09C−0.25Si−1.4Mn−0.31Mo−0.04V鋼を1280℃に加熱し、Ar3 点(745℃)より高い950℃で、フランジ厚さ(h)16mm、32mm、80mmのH形鋼に圧延し、その後1.2℃/秒で700℃まで冷却し、20秒保持後、種々の冷却速度で500℃まで冷却した場合の引張特性を示す。図2に示されるように形鋼においてlogv≧0.9−0.4loghとすることにより降伏比が75%以下となることが明らかである。また、本条件を満たした形鋼はいずれも耐火性の目安である600℃における0.2%耐力が、490MPa級鋼の常温の引張強度の下限値の2/3である216MPa以上を有しており、優れた耐火性を有していた。
【0013】
以上の知見に基づき、本発明者らは、特定量の化学成分を有する鋼に施す熱間圧延条件及び加速冷却条件(2段冷却時の待機温度、待機時間と2段目の冷却速度を含む)を一定範囲内に制御するようにして、鋼組織をフェライト+ベイナイトの混合組織とし、圧延ままで490MPa以上の引張強度,75%以下の低降伏比,耐火性の確保を達成できる低降伏比耐火形鋼の製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、鋼組成及び製造条件を下記範囲に限定することにより、高層建築物用などに用いる降伏比が75%以下の耐火形鋼を安価で大量に安定して製造できる、低降伏比耐火形鋼の製造方法を提供することができる。
【0015】
以下に本発明の成分添加理由、成分限定理由、及び製造条件の限定理由について説明する。
【0016】
(1)成分組成範囲
C:0.04〜0.2%
Cは、鋼の強度を確保するために0.04%以上添加するが、0.2%を超えて多量に含有させると靭性あるいは溶接性が劣化するため、その範囲は0.04〜0.2%である。
【0017】
Si:0.05〜1%
Siは、脱酸のために鋼に必然的に含まれる元素であり、低降伏比確保の観点からその含有量は0.05%以上であるが、Si含有量が1%を超えるとHAZ(熱影響部)靭性及び溶接性の観点から好ましくない影響を及ぼすため、その範囲は0.05〜1%である。
【0018】
Mn:0.5〜2%
Mnは、鋼材の強度・靭性の向上ならびにFeSの生成抑制のため0.5%以上は必要であるが、2%を超える多量の添加は鋼の焼き入れ性の増加を引き起こし、溶接時に硬化層が出現して割れ感受性が高くなるため、その範囲は0.5〜2%である。
【0019】
Mo:0.2〜0.8%
Moは、焼入性を高めるとともに焼き戻し軟化抵抗を高め、高温強度上昇に有効であるが、その含有量が0.2%未満ではその効果が十分に発揮されず、0.8%を超えると溶接性を劣化させるとともに炭化物の析出により降伏比が上昇するため、その範囲は0.2〜0.8%である。
【0020】
P:0.05%以下、S:0.01%以下
P、Sは、鋼中に混入する不純物として不可避的に存在するが、Pの低減は粒界破壊の防止に有効であり、Sの低減は延靭性の向上に有効であるため、P、Sの含有範囲はそれぞれ0.05%以下、0.01%以下である。
【0021】
Al:0.002〜0.1%
Alは、脱酸のため0.002%以上必要であるが、多量に含有させると鋼の清浄度を悪くし、溶接部の靭性劣化を招くため、その範囲は0.002〜0.1%である。
【0022】
N:0.02%以下
Nは、鋼中に含まれる不可避的な不純物元素であるが、N量が多くなるとHAZ靭性の劣化や連続鋳造スラブキズの発生を助長するため、その範囲は0.02%以下である。
【0023】
本発明は以上を基本成分とし、以下の選択成分群の1種または2種以上を添加してもよい。
【0024】
(選択成分群)
Cu:0.03〜1%
Cuは、強度上昇および靭性改善に非常に有効な元素であるが、含有量が0.03%未満では十分な効果が発揮されず、1%を越えると析出硬化が著しくまた鋼材表面に割れが生じやすいため、Cuを添加する場合にはその範囲は0.03〜1%である。
【0025】
Ni:0.03〜0.5%
Niは、母材の強度ならびに靭性を向上させる効果を有するが、その含有量が0.03%未満では十分な効果が得られず、0.5%を超える添加はコストアップにつながるため、Niを添加する場合にはその範囲は0.03〜0.5%である。
【0026】
Cr:0.03〜0.6%
Crは、焼入性向上に有効な元素であるが、その含有量が0.03%未満では効果が小さく、0.6%を超えると溶接性やHAZ靭性を劣化させるため、Crを添加する場合にはその範囲は0.03〜0.6%である。
【0027】
Nb:0.005〜0.05%
Nbは、微細炭窒化物の析出効果により強度上昇、靭性向上に有効に作用する元素であるが、その含有量が0.005%未満では効果が発揮されず、0.05%以上の添加は過度の析出効果により降伏比低下の妨げになるため、Nbを添加する場合にはその範囲は0.005〜0.05%である。
【0028】
V:0.01〜0.1%
Vは、少量の添加により焼入性を向上させ、焼戻し軟化抵抗を高める元素であるが、その含有量が0.01%未満ではその効果が十分に発揮されず、0.1%を超えて添加すると溶接性を劣化させるため、Vを添加する場合にはその範囲は0.01〜0.1%である。
【0029】
Ti:0.003〜0.1%
Tiは、TiNの溶接HAZ部の組織粗大化を抑制してHAZ靭性の向上に寄与する元素である。0.003%未満のTi添加ではHAZ靭性向上効果が発揮されない。0.1%を越えて添加すると、HAZ靭性の劣化を招くため、Tiを添加する場合にはその範囲は0.003〜0.1%の範囲である。
【0030】
Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.001〜0.02%
Ca、REMはMnSの形態を制御し、延靭性を向上させる元素である。Caは0.0005%未満では効果が無く、0.005%をこえると粗大介在物を形成し、靭性を低下させる。REMについても同様の効果があり、下限は0.001%、上限は0.02%である。
【0031】
上記の成分組成範囲に調整することにより、高層建築物などに用いる降伏比が75%以下の耐火形鋼を、圧延後の熱処理を必要とすることなく安価で大量に安定して得ることが可能となる。
【0032】
このような特性の鋼材は以下の製造方法により、製造することができる。
【0033】
(2)鋼材製造工程
(製造方法)
上記の成分組成範囲に調整した鋼を溶製し、連続鋳造で得られた鋼スラブを1000℃以上に加熱後、Ar3 以上の温度域において減面率が50%以上の熱間圧延を行い、次いで(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃の温度域まで1℃/秒以上の冷却速度で加速冷却する。引き続いて、加速冷却された鋼材を待機温度:T(℃)=(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃において下記(1)式を満たす時間t秒の待機を行った後、400〜600℃の温度域まで、下記(2)式を満たす冷却速度v(℃/秒)で加速冷却を行う。
【0034】
101.2-0.01 ×Δ T≦t≦150秒 …(1)
但し、ΔT=Ar3(℃)−T(℃)
0.9−0.4logh≦logv≦2.6−0.9logh …(2)
但し、h:鋼材のフランジ厚さ(mm)
a.鋼の加熱温度:1000℃以上
鋼を1000℃以上に加熱するのは、良好な熱間加工性を得るためである。
【0035】
b.熱間圧延終了温度:Ar3 以上
Ar3 以上の温度域で圧延を終了させるのは、集合組織の発達を抑制して、超音波探傷の測定精度に悪影響を及ぼす音響異方性をなくすためである。
【0036】
c.Ar3 以上の減面率:50%以上
Ar3 以上の減面率を50%以上とするのは、加熱により粗大化した組織を圧延により微細化し、強度と靭性を向上させるためである。
【0037】
d.待機前の加速冷却速度:1℃/秒以上
圧延終了後(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃までの加速冷却速度を1℃/秒以上とするのは、圧延後から(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃までの加速冷却過程においてフェライトが多量に析出することを抑えるためである。これにより、組織が主にその後の待機中での等温変態によって制御されることとなり、組織制御の精度を向上させることが可能となる。
【0038】
e.待機温度T(℃):(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃、待機時間t(秒):101.2-0.01 ×Δ T ≦t≦150秒、但し、ΔT=Ar3 (℃)−T(℃)
前記図1で説明したように、待機温度T(℃)を比較的短時間でフェライトが析出する(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃とし、待機時間を101.2-0.01 ×Δ T ≦t≦150秒(ΔT=Ar3 −T)とすることにより所定のフェライト分率に制御し、その後の更なる加速冷却により残りのオーステナイトを硬質のベイナイトとし最終的にフェライト+ベイナイト組織として降伏比≦75%を達成する。また、待機時間の上限は生産性を損なわないように150秒である。待機温度が(Ar3 −20)℃より高温になるとフェライトの生成速度が遅いため、低降伏比に有効な十分なフェライトを得るためには長い待機時間が必要となり生産性を損なう。一方、(Ar3 −100)℃未満となると短時間の待機においてもフェライトが過度に生成するため、強度を確保し難くなる。
【0039】
したがって、強度確保及び低降伏比(YR≦75%)の観点から、待機温度T(℃)は(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃、かつ待機時間t(秒)は101.2-0.01 ×Δ T ≦t≦150秒(但し、ΔT=Ar3 (℃)−T(℃))である。
【0040】
f.待機後の加速冷却速度v(℃/秒):0.9−0.4logh≦logv≦2.6−0.9logh ここで、h:鋼材のフランジ厚さ(mm)
前記図2で説明したように、前記の成分範囲でフランジ厚を考慮すると待機後の未変態オーステナイトから硬質なベイナイトを得るためには、logv≧0.9−0.4loghを満たす冷却速度が必要であることを示している。工業的に一般に用いられている水冷設備では厚さが厚くなるほど高冷却速度が得られ難い。本発明者らが鋭意検討した結果、0.9−0.4logh≦logv≦2.6−0.9logh(ここで、h:鋼材のフランジ厚さ(mm))とすることにより、75%以下の降伏比が得られることが明らかとなったため、待機後の加速冷却速度は0.9−0.4logh≦logv≦2.6−0.9logh(ここで、h:鋼材のフランジ厚さ(mm))である。
【0041】
g.待機後の加速冷却停止温度:400〜600℃
待機後の加速冷却停止温度を400℃未満とすると、加速冷却時に生成した島状マルテンサイトが分解せずに残存するため靭性が悪化する。一方、加速冷却停止温度が600℃超えでは、ベイナイト変態が十分進行しないため強度を確保することが難しくなる。
【0042】
以上により、上記成分系と圧延・加速冷却条件の採用により生産性を損なうことなく490MPa以上の強度と75%以下の降伏比と、さらに耐火性の目安である600℃における0.2%耐力が、490MPa級鋼の常温の引張強度の下限値の2/3である216MPa以上を有する耐火形鋼を確保できる。
【0043】
以下に本発明の実施例を挙げ、本発明の効果を立証する。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
表1に成分を示す490MPa級の供試鋼A、B、C(本発明鋼)を用い、表2に示すように圧延、冷却条件を変えて製造した形鋼(本発明例:No.1,2,6〜8,10,11,13〜16、比較例:No.3〜5,9,12)の機械的性質を調べた。
【0045】
表2に引張特性(常温でのYS,TS,YR、及び600℃でのYS,TS)を併記する。表2に示すように、比較例No.3は本発明の待機温度を満足しないため、フェライトが過度に生成し、目標強度(490MPa)を確保できない。また、600℃での0.2%耐力も目標とする216MPaに達していない。比較例No.4は待機後の冷却速度が本発明条件より遅いため、比較例No.5は待機時間が本発明条件より短いためYR(降伏比)が高く、また、600℃での0.2%耐力も目標とする216MPaに達していない。さらに比較例No.9は圧延後放冷したため、目標強度(490MPa)に達せず、比較例No.12は待機温度が本発明条件より高いためフェライトが十分に生成せず、YRが高い。 これに対し、本発明例:No.1,2,6〜8,10,11,13〜16はいずれも本発明条件を満たすため、490MPa以上の十分な引張強度(TS),75%以下の降伏比(YR),216MPa以上の600℃での0.2%耐力を示している。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例2)
表3に成分を示す490MPa級の供試鋼D〜J(D,E:比較鋼、F〜J:本発明鋼)、590MPa級の供試鋼K,L(本発明鋼)を用い、表4に示すように圧延、冷却条件を変えて製造した形鋼(本発明例:No.19〜25、比較例:No.17,18)の機械的性質を調べた。表4に引張特性(常温でのYS,TS,YR、及び600℃でのYS,TS)を併記する。
【0049】
表4に示すように、比較例No.17,18(それぞれ比較鋼D,Eを使用)はいずれも本発明の成分を満たさないため、600℃での0.2%耐力が低い。これに対し、本発明例No.19〜23はいずれも本発明条件を満たすため、490MPa以上の十分な引張強度(TS)、75%以下の降伏比(YR)、216MPa以上の600℃での0.2%耐力を、また本発明例No.24、25も本発明条件を満たすため、590MPa以上の十分な引張強度(TS)、75%以下の降伏比(YR)、590MPa級鋼の常温引張強度の2/3に相当する293MPa以上の600℃での0.2%耐力を示している。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼組成及び製造条件を特定することにより、高層建築物用などに使用される降伏比が75%以下の低降伏比耐火形鋼を、圧延ままで製造することができ、熱処理を施す必要がないため、生産性と経済性を著しく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋼材の強度、降伏比(YR)に及ぼす待機温度と待機時間の影響を示した図。
【図2】本発明の実施の形態に係る鋼材の降伏比(YR)に及ぼす待機後の冷却速度の影響を示した図。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.04〜0.2%と、Si:0.05〜1%と、Mn:0.5〜2%と、Mo:0.2〜0.8%と、P≦0.05%と、S≦0.01%と、Al:0.002〜0.1%と、N≦0.02%とを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる形鋼を製造する方法において、
該鋼を1000℃以上に加熱後、Ar3 以上の温度域において減面率が50%以上の熱間圧延を行う工程と、
熱間圧延された鋼材をAr3 以上から(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃の温度域まで1℃/秒以上の冷却速度で加速冷却し、待機温度:T(℃)=(Ar3 −100)℃〜(Ar3 −20)℃において下記(1)式を満たす待機時間:t(秒)の待機を行う工程と、
待機された鋼材を400〜600℃の温度域まで、下記(2)式を満たす冷却速度:v(℃/秒)で加速冷却する工程と、
を備えたことを特徴とする、600℃における高温耐力が216MPa以上で、かつ降伏比が75%以下の低降伏比耐火形鋼の製造方法。
101.2-0.01 ×Δ T ≦t≦150秒 …(1)
但し、ΔT=Ar3 (℃)−T(℃)
0.9−0.4logh≦logv≦2.6−0.9logh …(2)
但し、h:鋼材のフランジ厚さ(mm) - 鋼成分として、質量%でさらに、Cu:0.03〜1%、Ni:0.03〜0.5%、Cr:0.03〜0.6%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.1%、Ti:0.003〜0.1%、Ca:0.0005〜0.005%、及びREM:0.001〜0.02%の群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の低降伏比耐火形鋼の製造方法。
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