JP3911667B2 - ディスクブレーキ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車等の車両の制動装置として用いられるディスクブレーキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、自動車等の車両の制動装置として用いられるディスクブレーキは、車輪と共に回転するディスクロータを挟んで両側に配置されたブレーキパッドを油圧シリンダのピストンによってディスクロータに押圧することによって制動力発生させる。
【0003】
この種のディスブレーキにおいて、例えば実開平3-46026号公報に記載されているように、ブレーキキャリパのディスクロータの両側にそれぞれ2つのピストンおよび各ピストンに対応して独立したブレーキパッドを配置し、これらのブレーキパッドをそれぞれ支持して制動トルクを受けるトルク受部を設けたキャリパ固定型のディスクブレーキが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報記載のディスクブレーキでは、ディスクロータの片側において互いに隣接するブレーキパッド間に設けられたトルク受部がディスクロータを挟んで両側に配置されているため、ブレーキキャリパを車体側に取付ける際には、これらのトルク受部の間にディスクロータを挿入する必要がある。このため、これらのトルク受部およびブレーキパッドがディスクロータと干渉しないようにブレーキキャリパを正確に位置決めしながら車体側に取付ける必要があり、取付工程が煩雑なものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みて成されたものであり、ブレーキキャリパを車体に容易に取付けられるようしたディスクブレーキを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ディスクロータの両側に複数のピストンを配置し、該複数のピストンに対応して独立した複数のブレーキパッドを備え、該複数のブレーキパッドをそれぞれ支持するトルク受部を前記ディスクロータの両側に有するディスクブレーキにおいて、前記両トルク受部の前記ディスクロータ受入側の端部に前記ディスクロータの中心側へ向けて拡開する傾斜面を形成し、該傾斜面は、車体側への装着時に前記ブレーキパッドよりも先に前記ディスクロータに遭遇する位置に配置されていることを特徴とする。
このように構成したことにより、車体に取付ける際、ディスクロータの外周縁部がトルク受部の傾斜面に沿って案内されて、両側のトルク受部およびブレーキパッドの間に挿入される。
請求項2の発明に係るディスクブレーキは、上記請求項1の構成において、前記傾斜面は、前記複数のブレーキパッドに挟まれる位置のトルク受部形成されていることを特徴とする。
このように構成したことにより、中央部よりに配置されたトルク受部に形成された傾斜面に沿ってディスクロータが案内される。
請求項3の発明に係るディスクブレーキは、上記請求項2の構成において、前記傾斜面のディスクロータ径方向外側端部とディスクロータ周方向両端に位置する前記トルク受部または前記ブレーキパッドのディスクロータ径方向内側端点とを結ぶ円弧の半径が前記ディスクロータの半径よりも大きいことを特徴とする。
このように構成したことにより、車体に取付ける際、ディスクロータ周方向両端のトルク受部またはブレーキパッドよりも、中央側に配置された傾斜面のほうが先にディスクロータに遭遇することになるので、傾斜面によってディスクロータが確実に案内される。
また、請求項4の発明に係るディスクブレーキは、上記請求項1ないし3のいずれかの構成において、前記傾斜面の近傍に、車体への取付部を一体に形成したことを特徴とする。
このように構成したことにより、ブレーキパッドの熱がトルク受部の傾斜面および取付部を介して車体へ放出され易くなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1ないし図7に示すように、本実施形態のディスクブレーキ1は、キャリパ固定型のディスクブレーキであって、キャリパ本体3は、ディスクロータ2の両側にそれぞれ配置されるキャリパ半割体3Aとキャリパ半割体3Bとを結合して構成される2ピース構造となっている。
【0008】
キャリパ半割体3Aとキャリパ半割体3Bとは、ディスクロータ2の周方向に対して両端部に突出されたブリッジ部4A,5Aとブリッジ部4B,5Bとを、また、上部中央に突出されたブリッジ部6Aとブリッジ部6Bとを突合わせて、これらのブリッジ部4A,5A,4B,5B,6A,6Bに挿通されたタイボルト7,8,9によって互いに結合されている。キャリパ本体3は、ブリッジ部4A,4B,5A,5B,6A,6Bによって、ディスクロータ2を跨ぐディスクパス部10を形成している。
【0009】
キャリパ半割体3A,3Bには、それぞれディスクロータ2の周方向に沿って配置される2つのシリンダ11A,12Aおよびシリンダ11B,12Bが互いに対向する部位に形成されており、これらのシリンダ11A,12A,11B,12Bには、それぞれ有底円筒状のピストン13A,14Aおよび13B,14Bが摺動可能に嵌装されている。キャリパ半割体3A,3Bには、シリンダ11A,12Aおよびシリンダ11B,12Bに連通する油路15(一部のみ図示する)が形成されており、キャリパ半割体3Aに設けられた給油口16から油路15を介してシリンダ11A,12Aおよびシリンダ11B,12Bにブレーキ液を供給するようになっている。また、キャリパ半割体3Aには、エア抜き用のブリーダプラグ17が取付けられている。
【0010】
キャリパ半割体3A,3Bには、それぞれ、ディスクロータ2の周方向に対して、シリンダ11A,12Aおよびシリンダ11B,12Bの両外側、シリンダ11A,12A間およびシリンダ11B,12B間に、トルク受部18A,19A,20Aとトルク受部18B,19B,20Bとが互いに対向するように突出されている。そして、トルク受部18A,20A間およびトルク受部19A,20A間、同様に、トルク受部18B,20B間およびトルク受部19B,20B間に、それぞれ略矩形のブレーキパッド21A,22Aおよび21B,22Bをディスクロータの軸方向および略径方向に沿って摺動可能に案内するパッドガイド溝23A,24Aおよび23B,24Bが形成されており、パッドガイド溝23A,24Aおよび23B,24B内に、それぞれシリンダ11A,12Aおよび11B,12Bが開口されている。
【0011】
パッドガイド溝23A,24Aおよび23B,24Bは、ディスクロータ2の中心側へ向けてやや傾斜されており、これらの間のトルク受部20A,20Bが略三角形を呈している。キャリパ本体3A,3Bの中央部のトルク受部20A,20Bは、ブリッジ部6A,6Bと一体に連なっており、また、両端側のトルク受部18A,18Bおよび19A,19Bは、両端部のブリッジ部4A,4Bおよび5A,5Bに連なるリブ40A,40Bおよび41A,41Bが設けられて剛性が高められている。また、トルク受部18A,18B,19A,19B,20A,20Bには、それぞれディスクロータ2の周方向に沿って通風を行うための切欠25A,25B,26A,26B,27A,27Bが設けられている。
【0012】
キャリパ半割体3A,3Bの上部(ディスクロータ2の外周側)には、それぞれブリッジ部4A,6A間およびブリッジ部4B,6B間にピンボス28A,28Bが形成され、ブリッジ部5A,6A間およびブリッジ部5B,6B間にピンボス29A,29Bが形成されており、これらのピンボス28A,28B間およびピンボス29A,29B間にそれぞれ挿通、螺着されたパッドピン30,31がブレーキパッド21A,21Bおよび22A,22Bの裏金に挿通されて、ブレーキパッド21A,21Bおよび22A,22Bをキャリパ本体3に保持している。また、パッドピン30,31には、ブレーキパッド21A,21Bおよび22A,22Bに係合して、ブレーキパッド21A,21Bおよび22A,22Bの位置を安定させると共に、ブレーキパッド21A,21Bおよび22A,22Bの摺動部への異物の侵入を防止するカバースプリング32,33が取付けられている。
【0013】
キャリパ半割体3A,3Bの中央のトルク受部20A,20Bの下端部(ディスクロータ2の受入側の端部)には、下端側が拡開するように傾斜された傾斜面34A,34Bが形成されている。傾斜面34A,34Bは、ブレーキパッド21A,21Bおよび22A,22Bが後退位置にあるとき、そのトルク受部20A,20Bに当接する部分の下端部が傾斜面34A,34Bから突出しないように形成されている。図6に示すように(一方のキャリパ半割体3Aのみ図示する)、傾斜面34A,34Bのディスクロータ径方向外側端部34Aa,34Bbと、ブレーキパッド21A,21Bおよび22A,22Bのディスクロータ径方向内側端点21Aa,21Bbおよび22Aa,22Bbとを結ぶ円弧Cの半径R2は、ディスクロータ2の半径R1よりも大きくなっている。なお、傾斜面34A,34Bの輪郭は、図示の直線状以外に、円弧状等の曲線状としてもよい。
【0014】
キャリパ半割体3Aの下端部には、トルク受部20Aの傾斜面34Aの近傍およびシリンダ11Aとブリッジ部4Aとの間に、それぞれ取付ボス35,36が一体に形成されており、キャリパ本体3は、これらの取付ボス35,36に挿通したボルト(図示せず)によって、自動二輪車のフロントフォーク、四輪自動車のナックル等の車体側の非回転部分に取付けられるようになっている。
【0015】
以上のように構成した本実施形態の作用について次に説明する。
マスタシリンダ(図示せず)によって加圧されたブレーキ液が給油口16から各シリンダ11A,11B,12A,12Bに供給されると、ピストン13A,13B,14A,14Bが前進して、ブレーキパッド21A,21B,22A,22Bをディスクロータ2に押圧して制動力を発生させる。このとき、ブレーキパッド21A,21B,22A,22Bは、ディスクロータ2に引きずられ、その回転方向に応じてトルク受部20A,20Bおよび18A,18Bまたは19A,19Bに押付けられる。
【0016】
キャリパ本体3を二輪自動車のフロントフォーク等に装着する場合において、キャリパ本体3のディスクパス部10にディスクロータ2を挿入する際、ディスクロータ2の外周縁部が、トルク受部20A,20Bの拡開された傾斜面34A,34Bに沿ってディスクパス部10に案内されるので、ブレーキパッド21A,21B,22A,22Bの下端部等と干渉することがなく、円滑にディスクパス部10に挿入することができ、キャリパ本体3の取付を容易に行うことができる。また、本実施形態のように、傾斜面34A,34Bを中央のトルク受部20A,20Bのみに形成した場合、キャリパ本体3への重量付加を最小限にしてキャリパ本体3の取付を容易に行うことができる。
【0017】
このとき、傾斜面34A,34Bのディスクロータ径方向外側端部34Aa,34Bbと、ブレーキパッド21A,21Bおよび22A,22Bのディスクロータ径方向内側端点21Aa,21Bbおよび22Aa,22Bbとを結ぶ円弧Cの半径R2が、ディスクロータ2の半径R1よりも大きくしてあるので、ディスクロータ周方向両端のブレーキパッド21A,21Bよりも、中央側に配置された傾斜面34A,34Bのほうが先にディスクロータ2に遭遇することになり、傾斜面34A,34Bによってディスクロータ2を確実に案内することができキャリパ本体3の取付を容易に行うことができる。なお、ディスクロータ周方向両端のトルク受部18A,18Bおよび19A,19Bがブレーキパッド21A,21Bおよび22A,22Bよりもディスクロータ径方向内側に突出している場合には、傾斜面34A,34Bのディスクロータ径方向外側端部34Aa,34Bbと、トルク受部18A,18Bのディスクロータ径方向内側端点と結ぶ円弧の半径をディスクロータ2の半径R1よりも大きくすることにより、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0018】
また、取付ボス35をトルク受部20Aの傾斜面34Aの近傍に一体に形成したことにより、制動時にディスクロータ2とブレーキパッド21A,21B,22A,22Bとの摩擦によって発生した熱がブレーキパッド21A,22Aからトルク受部20Aに伝わり、その傾斜面34Aの近傍に一体に形成された取付ボス35を介して車体側へ放出されるので、この熱が車体側へ放出されやすくなり、放熱性を高めることができる。
【0019】
なお、上記実施形態では、キャリパ本体3の車体への取付時に、ディスクロータ2との干渉が問題となる中央部のトルク受部20A,20Bのみに傾斜面34A,34Bを形成しているが、このほか、両端部のトルク受部18A,18Bおよび19A,19Bとディスクロータ2との干渉が問題となる場合には、それらのトルク受部18A,18Bおよび19A,19Bに傾斜面を形成することができる。要するに、傾斜面は、全てのトルク受部、両端のトルク受部、両端のいずれか一方のトルク受部等、キャリパ取付時にディスクロータ2との干渉が問題となるトルク受部に適宜形成することができ、さらに、同様にディスクロータ2を案内するための傾斜面をブレーキパッドに設けてもよい。
【0020】
上記実施形態では、ディスクロータ2の両側に、それぞれ2つのピストンを配置したものについて説明しているが、本発明は、このほか、3つ以上のピストンを配置したものについても、これらのピストン間のトルク受部または端部のトルク受部に傾斜面を形成することによって適用することができる。
【0021】
また、上記実施形態では、キャリパ固定型で、かつ、2つのキャリパ半割体3A,3Bを結合して一体化したいわゆる2ピース構造のものについて説明しているが、本発明は、このほか、キャリパ本体を一体化した1ピース構造のものにも同様に適用することができる。さらに、キャリパ浮動型のものにも、キャリア等に設けられたトルク受部に傾斜面を形成することによって、同様に適用することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上、詳述したように、請求項1の発明に係るディスクブレーキによれば、トルク受部に傾斜面を形成したことにより、車体側に取付ける際、ディスクロータの外周縁部がトルク受部の傾斜面に沿って案内されて、両側のトルク受部およびブレーキパッドの間に挿入されるので、容易に車体側への取付を行うことができる。
請求項2の発明に係るディスクブレーキによれば、中央部よりに配置されたトルク受部に形成した傾斜面に沿ってディスクロータを案内することができ、車体への取付性を向上させることができる。
請求項3の発明に係るディスクブレーキによれば、車体に取付ける際、ディスクロータ周方向両端のトルク受部またはブレーキパッドよりも、中央側に配置された傾斜面のほうが先にディスクロータに遭遇することになるので、傾斜面によってディスクロータを確実に案内することができ、取付性を向上させることができる。
また、請求項4の発明に係るディスクブレーキによれば、傾斜面の近傍に、車体への取付部を一体に形成したことにより、ブレーキパッドの熱がトルク受部の傾斜面および取付部を介して車体へ放出され易くなるので、放熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスクブレーキの図2におけるA-A線による縦断面図である。
【図2】図1に示すディスクブレーキの正面図である。
【図3】図1に示すディスクブレーキの平面図である。
【図4】図1に示すディスクブレーキの側面図である。
【図5】図1のディスクブレーキにおいて、ブレーキパッドを取外した状態を示す下面図である。
【図6】図1に示すディスクブレーキにおいてブレーキパッドを取付けた状態のキャリパ半割体の正面図である。
【図7】図1に示すディスクブレーキの図2におけるB-B線による縦断面図である。
【符号の説明】
1 ディスクブレーキ
2 ディスクロータ
11A,11B,12A,12B ピストン
22A,22B,23A,23B ブレーキパッド
20A,20B トルク受部
34A,34B 傾斜面
35 取付部
Claims (4)
- ディスクロータの両側に複数のピストンを配置し、該複数のピストンに対応して独立した複数のブレーキパッドを備え、該複数のブレーキパッドをそれぞれ支持するトルク受部を前記ディスクロータの両側に有するディスクブレーキにおいて、前記両トルク受部の前記ディスクロータ受入側の端部に前記ディスクロータの中心側へ向けて拡開する傾斜面を形成し、該傾斜面は、車体側への装着時に前記ブレーキパッドよりも先に前記ディスクロータに遭遇する位置に配置されていることを特徴とするディスクブレーキ。
- 前記傾斜面は、前記複数のブレーキパッドに挟まれる位置のトルク受部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
- 前記傾斜面のディスクロータ径方向外側端部とディスクロータ周方向両端に位置する前記トルク受部または前記ブレーキパッドのディスクロータ径方向内側端点とを結ぶ円弧の半径が前記ディスクロータの半径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のディスクブレーキ。
- 前記傾斜面の近傍に、車体側への取付部を一体に形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のディスクブレーキ。
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