JP3911468B2 - 光ファイバの加工方法 - Google Patents
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【発明が属する技術分野】
本発明は、光ファイバの加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光通信分野において、信号の伝播媒体である光を遠方に伝達する手段として光ファイバが広く用いられている。この光ファイバは125μm程度の外径を持つ細い円柱状を成し、その断面は大きく分けて中央部にコアと外周部にクラッドと呼ばれる屈折率の異なる二つの部分から構成され、信号光は主にコア部を伝播する。
【0003】
光信号はレーザダイオード等の発光素子によって出射され、レンズ等の集光手段を用いて光ファイバの端面におけるコアに結合する。結合した光信号のほとんどはコア内を伝播してゆき、最終的には光ファイバのもう一方の端面より出射され、フォトディテクタ等の受光素子により検出され、通信が成立する。
【0004】
この場合、先に述べたように光ファイバの端面のコアに結合した光のほとんどはコア内を伝播していくが、一部の光は光ファイバの端面で反射され、結果として発光側に戻される。このような戻り光は後方反射と呼ばれ、極力抑えることが望ましい。
【0005】
このような後方反射を抑える手段の中で、最も多く用いられている光ファイバ端面処理方法の一つとして、光ファイバの端面に角度を設けることが挙げられる。これは、光ファイバの端面に、光軸に垂直な面に対して角度を設けて反射面が形成されるよう加工したものであり、後方反射の方向を、入射光の光軸と一致させないことにより、後方反射レベルを抑制するものである。
【0006】
これは例えば、図4(a)に示すように、光ファイバの端面41を、光ファイバの光軸42に対して90°未満の角度を持つ面になるように加工したものである。信号光43は図中矢印44の方向より進行し、光ファイバの端面に到達する。このとき大部分の光は矢印45のようにコア46内を伝播していくが、一部の光は後方反射光48として、光ファイバの端面41で反射される。しかしながら、端面41の角度により元の信号光とは異なる方向へ進むため、通信品質を劣化させることはない。これは、光ファイバ先端の平坦な平面をファイバの縦軸に対して90°未満の角度で位置あわせすることにより、レーザダイオードへの後方反射レベルの低減を実現している(例えば特許文献1参照)。
【0007】
一方、信号光を受光する場合、その受光強度を高めることは、信号の耐ノイズ性を高める観点からも重要である。このため、図4(b)に示すように光ファイバの端面49を光軸410に対して約45°の角度を成すように処理しておき、フォトディテクタ等の受光素子411を光ファイバ下面に設置することで、端面より反射された信号光412を受光素子411に集光させ、結合効率を向上させる技術が広く用いられている。これは、光ファイバに45°の角度を成す反射面を形成し、反射面で反射された光信号が、光ファイバ側面を介して受発光素子と結合することによって、高い結合効率での信号送受を実現している(例えば特許文献2参照)。
【0008】
このように、光ファイバの端面に角度を設けて処理することは、光通信分野において大変重要な技術の一つであることがわかる。
【0009】
さて、このような角度付きの光ファイバの端面を処理する方法として数多くの加工法が提案されているが、最も一般的に用いられているものは研磨法であり、これは光ファイバを研磨紙の上で摺動させて研磨することで端面を処理するものである(特許文献3参照)。
【0010】
また、光ファイバを形成するガラスの脆性破壊現象を利用して、端面に角度を設けた劈開面を形成する技術がある。これは、片端の被覆を除去しガラス部を剥き出しにした光ファイバに対して、ガラス部と被覆部をそれぞれクランプし、どちらか一方のクランプを光ファイバの軸方向を中心軸として所定の角度だけ回転させ、かつ光ファイバの軸方向に引っ張り荷重を負荷する。次いでツールにより光ファイバ表面に傷をつけた後、引っ張り荷重を増加させてゆくと、傷を起点としてクラックが急激に進展し、劈開面を形成して光ファイバ破断させるものである。この時、クラックはねじりによる負荷荷重と垂直の方向に進展しようとするため若干の角度がついた方向に劈開面が形成される(例えば特許文献4参照)。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−78531号公報
【特許文献2】
特開2000−56181号公報
【特許文献3】
特開平10−71551号公報
【特許文献4】
特開平5−80219号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、先に述べた低後方反射・高結合効率を実現するのに充分な面を研磨で実現するためには、研磨砥粒のグレードを少しずつ細かくしながら数度にわけて研磨しなければならないため、工程に多くの時間を費やさなければならず、また端面角度にもばらつきがあるため、結果として充分な反射レベル低減・結合効率確保ができないという問題があった。
【0013】
また、脆性破壊を利用した方法でも、破断面の形成において、光ファイバに負荷した引張応力によって亀裂進展方向が定まるが、該応力方向を精度よく制御することができず、結果として亀裂進展方向が定まらず、形成された破断面の角度にばらつきが生じる問題があった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバの加工方法は、少なくとも一方の端面が、コアを含む劈開面と、その周囲の加工面とから成り、上記劈開面が光ファイバの軸方向に対して所定角度に傾斜しているとともに加工面より突出している光ファイバの加工方法であって、前記光ファイバ外周に円周方向に前記光ファイバの軸方向に対して傾斜した溝を加工した後、光ファイバの軸方向に張力を負荷して破断させることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の光ファイバの加工方法は、上記溝は切削ツールに超音波を加振してなる超音波ツールによって加工することを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明の光ファイバの加工方法は、上記溝は砥粒を吹き付けて加工することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の加工方法により加工された光ファイバは、少なくとも一方の端面が光ファイバのコアを含む劈開面と、その周囲の加工面とからなる。
【0018】
また、本発明の加工方法により加工された光ファイバは、上記端面が光ファイバの軸方向に対して所定角度に傾斜している。
【0019】
さらに、本発明の加工方法により加工された光ファイバは、上記劈開面が加工面より突出している。
【0020】
【発明の実施の形態】
次いで、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0021】
図1(a)、(b)は、本発明の加工方法により加工された光ファイバの一実施形態を示す側面図であり、光ファイバ1の少なくとも一方の端面11が光ファイバ1のコア2を含む劈開面3と、その周囲の加工面4とからなる。
【0022】
光ファイバ1は、中心部にコア2とその外周部にクラッド5と呼ばれる屈折率の異なる二つの部分から構成され、信号光は主にコア2を伝播する。光信号はレーザダイオード等の発光素子によって出射され、レンズ等の集光手段を用いて光ファイバ1の端面11におけるコア2に結合する。結合した光信号のほとんどはコア2内を伝播してゆき、最終的には光ファイバ1のもう一方の端面より出射され、フォトディテクタ等の受光素子により検出され、通信が成立する。
【0023】
このとき、端面11に凹凸が形成されていると、光線が入射する際に乱反射が発生し、信号光量の一部がコア2を外れる恐れがある。これは信号光パワーを減衰させ、通信品質を劣化させるため好ましくない。
【0024】
本発明においては、コア2が劈開面3に形成されているため、加工面が光路上になく、通信品質を劣化させることはない。そのため、端面11が劈開面3と加工面4で形成されたとしても、光ファイバ1のコア2に円滑な劈開面3を形成することによって光信号を効率よく受光し、光結合することができる。また、光ファイバ1に端面にARコート、メタライズ処理等の光ファイバ1に表面処理を行う際に劈開面3だけの端面に比較して加工面4があるために密着性を高くすることができる。
【0025】
また、上記光ファイバ1の劈開面3は、加工面4より突出していることが好ましく、光ファイバ1の端面11の劈開面3の領域と光ファイバ1の外周表面の間に加工面4が存在するため、ARコート、メタライズ処理等の光ファイバ1に表面処理を行う際にマスキングの境界面の厳密さが必要なくなり、マスキング作業が容易となる。さらに、光ファイバ1のハンドリング時に端面11の角部を治具等に接触させたとしても、加工面4の一部が損傷するだけで、突出した劈開面3にまで影響が及ぶことは少ない。
【0026】
なお、上記劈開面3の径は、光ファイバ1のコア2を含む大きさであればよく、また、加工面4とは研削加工や、ケミカルエッチング等の加工によって得られた面を示す。
【0027】
さらに、上記光ファイバ1の端面11が光ファイバ1の光軸A方向に垂直な面に対して所定角度θ傾斜していることが好ましい。
【0028】
先に述べたように光ファイバ1の端面11のコア2に結合した光のほとんどはコア2内を伝播していくが、一部の光は光ファイバ1の端面11で反射され、結果として発光側に戻されるため、このような戻り光、いわゆる後方反射を極力抑えることが望ましく、光ファイバ1の端面11に、光軸Aに垂直な面に対して角度θ傾斜させて反射面が形成されるよう加工し、後方反射の方向を入射光の光軸と一致させないことにより、後方反射レベルを抑制することができる。なお、上記傾斜角度θについては、後方反射レベルを−60dB以下とするためには8°とすることが好ましい。
【0029】
なお、上記劈開面3とは、光ファイバを二分するように形成された切断面であり、その切断表面が鏡面状である面を言う。
【0030】
また、上記光ファイバ1の劈開面2は、光ファイバ1のコア2を含んでいれば良く、図1(b)に示すように劈開面2が光ファイバ1の中央になくてもよい。
【0031】
次に上記光ファイバ1の加工方法について図2に基いて説明する。
【0032】
まず、図2(a)に示すように、光ファイバ20の外周に円周方向に所定の角度で炭化タングステン等の素材を用いた超硬ツールによる切削加工等によって溝21を加工し、光ファイバ20の外周よりも細いウェスト部22を形成する。
【0033】
次いで、図2(b)に示すように、光ファイバ20の軸方向に張力23を負荷して、この張力23が一定以上の大きさになった時、ウェスト部22の外周の一点からクラック24が発生し、これがウェスト部22全体に矢印25の方向に拡がることで最終的に光ファイバ20を破断させ、図2(c)のように端面11が劈開面3と、加工面4からなる光ファイバ1を得ることができる。
【0034】
この劈開面3は、鏡面状の極めて円滑な面となることが知られている。また、破断は一瞬にして行われるため、加工時間を短縮することができる。
【0035】
上述の加工方法では、溝21に沿ってクラック24が進展しようとするため、溝21の加工方向により光ファイバ1の端面11の傾斜角度θを容易に制御でき、その精度は溝21の傾斜角度θによってのみ決まり、溝21の幅27は20μm以下とすることが好ましい。これにより所定の精度で安定的に劈開面3を形成できる。
【0036】
また、溝21の深さ28は、光ファイバ1のコア2を研削しないものであればよいが、特に40μm以下とすることが好ましい。
【0037】
さらに、図2(c)に示すように、光ファイバ1の端面11は、信号光路26上にないので、多少表面粗さが増大したとしても信号光への影響はない。そのため、一本の光ファイバ20につき一回溝21を形成すればよく、飛躍的に加工時間を短縮することができる。さらに、この加工によって得られた光ファイバのうち
上記光ファイバ1に対向していた光ファイバ29の端面にもコアを含む劈開面および加工面が形成される。
【0038】
また、上記光ファイバ20に溝21を加工する方法を図3に基いて詳しく説明する。
【0039】
図3(a)、(b)は溝加工した光ファイバ2に劈開面3を形成させる方法を示しており、例えば図3(a)に示すように光ファイバ20を支持するホルダ部をモータ31で移動させることにより張力を負荷する方法や、同図(b)に示すように光ファイバ20に曲げ応力を負荷する方法等が有用である。いずれの場合も、劈開は既に傷が入っている溝部から始まり溝に沿って進展する。このため端面11に形成された反射面の角度は溝角度によって制御できる。また、光ファイバ1の外周表面に何らかの膜形成処理が必要な場合、本発明による手法では、あらかじめ膜形成を行っておいた光ファイバ20に前述の加工を施すようにすれば、反射面はそれらの膜形成処理に影響を受けることはなく、膜形成時に反射面を保護するためのマスキング等の付帯作業を必要としない。
【0040】
また、図3(a)、(b)に示す何れの加工方法においても、溝21の加工には、切削ツールに超音波を加振してなる超音波ツールによって加工する方法が有用である。
【0041】
これは図3(c)に示すように、超音波を加振した切削ツール32で光ファイバ20の外周に溝21を形成するものである。切削ツール32はモータ31により光ファイバ20の周囲を回転することができ、また光ファイバに対する切削ツール32の角度を変更することにより、任意の角度で溝を形成することができる。
【0042】
また、図3(d)に示すように、サンドブラストと呼ばれる砥粒を吹き付けて加工する方法も有用である。これは、あらかじめ溝加工部分に、粒径数μm程度の砥粒34をエアガン33で吹き付けることにより溝を形成するものである。
【0043】
このような加工方法を用いることで、光ファイバ1の一方の端面11に突出部31が加工され、その頂面に平坦かつ円滑な鏡面状の劈開面3が形成され、この劈開面3が反射面として作用する。
【0044】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0045】
【実施例】
次いで、本発明の実施例を説明する。
【0046】
先ず、図2に示すような加工方法により被覆を除去し所定長のベアファイバ部を露出させた光ファイバを用いて加工を行った。光ファイバの径は125μmであり、一般的なシングルモードファイバを用いた。端面角度は光ファイバの光軸に垂直となるようにした。
【0047】
また、本発明による加工においては、突出部の長さを20μm以下とした。加工は一本づつ行い、16本加工するのに要した平均時間及び光ファイバの端面の角度バラツキを測定した。
【0048】
また、従来例として光ファイバを研磨紙の上で摺動させて研磨することで端面を処理する方法によって16本加工し、加工に要する時間を測定した。
【0049】
さらに、従来例として光ファイバの軸方向を中心軸として所定の角度だけ回転させ、かつ光ファイバの軸方向に引っ張り荷重を負荷し、次いでツールにより光ファイバ表面に傷をつけた後、引っ張り荷重を増加させて、傷を起点としてクラックが急激に進展し、劈開面を形成して光ファイバ破断させる手法を用いて16本の光ファイバを加工し、光ファイバの端面の角度バラツキを測定した。
【0050】
なお、光ファイバの端面の角度は、端面をレンズによって拡大後、CCDカメラで撮影した上、画像センサによって測定し、設定角度との差の平均値を算出した。
【0051】
表1は、各光ファイバを製造したときに要する加工時間を実測し、従来の研磨方法を用いた際に要する加工時間を1とした際の相対値を、また、従来の劈開方法を用いた際の端面の角度を測定し、そのバラツキを1とした際の相対値をそれぞれ表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1より明らかなように、加工時間は従来の研磨方法を1とした際、本発明においては0.49まで大きく短縮されることがわかった。
【0054】
一方で、光ファイバの端面角度のバラツキについては、従来の劈開方法の標準偏差を1として場合、0.44と加工精度が非常に高いことがわかった。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも一方の端面の略中央部に、端面とほぼ直交する方向に突出し、内部にファイバコア部を含む突起部を形成し、該突起部の頂面が平坦な反射面であり、該反射面とファイバ長手方向との成す角度を、直角よりも小さくした。更に、上記のファイバを製造するため、ファイバ外周に周回状に溝を加工することでウェスト部を形成し、ファイバ長手方向に張力を加えてファイバを破断させることで上記反射面を形成することを特徴とする製造装置を採用した。これにより、従来と同等の傾き角度を持つ端面をより簡易な工程で短時間に加工することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)は本発明の加工方法により加工された光ファイバの一実施形態を示す部分側面図である
【図2】(a)〜(c)は本発明の光ファイバの加工方法を示す模式図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明の光ファイバの加工方法を示す模式図であり、それぞれ(a)は溝加工後の切断面形成の様子、(b)は溝加工後の切断面形成の様子、(c)は溝加工時の加工ツールの概要、(d)は溝加工後の加工ツールの概要を示すものである。
【図4】(a)、(b)は従来の光ファイバを示す部分側面図である。
Claims (3)
- 少なくとも一方の端面が、コアを含む劈開面と、その周囲の加工面とから成り、上記劈開面が光ファイバの軸方向に対して所定角度に傾斜しているとともに加工面より突出している光ファイバの加工方法であって、前記光ファイバ外周に円周方向に前記光ファイバの軸方向に対して傾斜した溝を加工した後、光ファイバの軸方向に張力を負荷して破断させることを特徴とする光ファイバの加工方法。
- 上記溝は切削ツールに超音波を加振してなる超音波ツールによって加工することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの加工方法。
- 上記溝は砥粒を吹き付けて加工することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの加工方法。
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