JP3910147B2 - 空気流速加速装置を備えたハードディスクドライブ - Google Patents

空気流速加速装置を備えたハードディスクドライブ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,磁気ヘッドが搭載されたスライダの離着陸特性を向上させるための空気流速加速装置を備えたハードディスクドライブ(HDD;Hard Disk Drive)に関する。
【0002】
【従来の技術】
HDDはコンピュータの補助記憶装置の一つであって,磁気ヘッドにより磁気ディスクに貯蔵されたデータを読み出したり,磁気ディスクにデータを書き込んだりする装置である。
【0003】
図1は,従来のHDDを概略的に示す平面図であり,図2は,図1に示されたディスクのランディングゾーン部位を拡大して示す斜視図である。
【0004】
図1及び図2を参照すれば,HDDは,データを書き込むための記録媒体である磁気ディスクハードディスク20と,ベースプレート10上に設けられてディスク20を回転させるスピンドルモータ30と,ディスク20にデータを書き込んだり,ディスク20に書き込まれたデータを読み出したりするための磁気ヘッド41を有したアクチュエータ40とを備えている。
【0005】
一般にディスク20は,1枚または複数枚が互いに所定間隔だけ離れてスピンドルモータ30により回転自在に設けられる。そして,ディスク20の内周側には,電源が切れる時に磁気ヘッド41の搭載されたスライダ42が安着するランディングゾーン21が設けられており,ランディングゾーン21の外側には,磁気信号が記録されるデータゾーン22が設けられている。
【0006】
アクチュエータ40は,ボイスコイルモータ48により,ベースプレート10上に設けられた回動軸47を中心として回動可能である。アクチュエータ40は,回動軸47に回動自在に結合されたアーム46と,磁気ヘッド41が搭載されたスライダ42と,アーム46に設けられてスライダ42をディスク20の表面側に付勢して支持するサスペンション44と,を備える。
【0007】
このような構成を有した従来のHDDにおいて,データの書き込み/読み出し作業が行われる間には,磁気ヘッド41の搭載されたスライダ42にはディスク20の回転による揚力及びサスペンション44による弾性力が働く。これにより,スライダ42は,揚力及び弾性力がバランスを取った高さでディスク20のデータゾーン22上に浮遊された状態を保持する。このため,スライダ42に搭載された磁気ヘッド41は,回転するディスク20と一定の間隔を保持しつつディスク20にデータを書き込んだり読み出したりする。
【0008】
一方,電源が切れてディスク20の回転が止まる場合には,スライダ42を持ち上げていた揚力がなくなる。このため,その前にスライダ42をディスク20のデータゾーン22から外れさせることにより,スライダ42とデータゾーン22との接触によるデータゾーン22の損傷を防ぐ。すなわち,ディスク20の回転が完全に止まる前にスライダ42がディスク20のランディングゾーン21上に移動するようにアクチュエータ40のアーム46を回動させれば,ディスク20の回転が止まってもスライダ42はランディングゾーン21に安着するので,データゾーン22の損傷は防がれる。
【0009】
これとは逆に,電源が供給されてディスク20が回転し始めれば再び揚力が発生し,スライダ42は浮上する。スライダ42は浮上した状態でアーム46の回動によりディスク20のデータゾーン22に移動し,スライダ42に搭載された磁気ヘッド41は,上述のように,ディスク20のデータゾーン22にデータを書き込んだりそこからデータを読み出したりする。
【0010】
最近は,スライダ42とディスク20のランディングゾーン21との吸着面積を狭めてスライダ42の浮上を容易にするために,ランディングゾーン21に,図2に示されたように,レーザにより火山噴火口状のバンパー21aを形成している。
【0011】
図3,図4,及び図5には,磁気ヘッドが搭載されたスライダが,ディスクの回転により浮上する過程が示されている。
【0012】
まず,図3を参照すれば,ディスク20が回転する前には,スライダ42がディスク20の表面に形成されたバンパー21a上に完全に安着している。そして,HDDに電源が供給されてディスク20が回転し始めれば,図4に示されたように,スライダ42はディスク20の回転により発生した揚力を受けて徐々に浮上して,バンパー21aとの接触面積が次第に狭まる。この時,スライダ42は,ディスク20の回転により空気が流入する側が先に浮上するため,全体的に若干傾いた状態となる。数秒後にディスク20の回転速度が規定の回転速度に達すれば,図5に示されたように,スライダ42は完全に浮上して,ディスク20の表面と一定の間隔を保持する。そして,この状態で,図1に示されたアーム46の回動により,スライダ42はディスク20のデータゾーン22に移動する。一方,HDDの電源が切れてディスク20の回転が止まる時には,上述した過程とは反対の過程が行われる。
【0013】
【特許文献1】
特開平9−115235号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで,上述のようなCSS(Contact Start Stop)方式の磁気ヘッドローディング/アンローディングシステムでは,ディスク20が止まってから再び回転し始める時,スライダ42がディスク20の回転による揚力を十分に受けて完全に浮上するまで,回転中のディスク20の表面と長時間摩擦するといった問題がある。このような問題は,ディスク20の回転が止まってスライダ42がディスク20のランディングゾーン21に安着する時にも同様に発生する。すなわち,ディスク20の回転速度が徐々に下がればスライダ42を浮上させる揚力も弱まるために,スライダ42は下降してディスク20の表面と接触し,ディスク20が完全に止まるまでスライダ42はディスク20の表面と摩擦する。このように,スライダ42がディスク20の表面と長時間摩擦すれば,スライダ42に搭載された磁気ヘッド41が損傷して,HDDの信頼性が落ちるといった短所がある。また,摩擦による摩耗によって,パーティクルが発生するといった短所もある。特に最近は,スライダ42の浮上高さが次第に低くなり,これにより,バンパー21aとの間隔も次第に狭まりつつあるため,上述した問題は一層深刻になる。
【0015】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり,その目的は,磁気ヘッドが搭載されたスライダの離着陸特性を向上させるために,スライダとディスクの表面との間に流入する空気の流速を速める空気流速加速装置を備えたHDDを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために,本発明は,所定の内部空間を有したハウジングの内部に設けられるスピンドルモータと,ディスククランプによりスピンドルモータに装着される少なくとも一つのデータ貯蔵用ディスクと,ハウジングの内部に回動自在に設けられ,データの書き込み及び読み出し用磁気ヘッドが搭載されたスライダを有したアクチュエータと,ディスクと共に回転するようにディスクの内周側に設けられ,ディスクの回転中にスライダとディスクの表面との間に流入する空気の流速を速める少なくとも一つのブレードを有した空気流速加速装置と,を備えることを特徴とするHDDを提供する。
【0017】
そして好ましくは,空気流速加速装置はスピンドルモータの外周に嵌着されるリング部材を備え,ブレードは,リング部材から半径方向に延びてディスクの回転方向とは反対方向に曲がり,その外径は,ディスクの内周側に設けられたランディングゾーンの内径より小さい。
【0018】
さらに,好ましくは,ブレードは,リング部材の円周方向に少なくとも3つが略等間隔に配される。
【0019】
さらに,好ましくは,ブレードはスライダより厚くなく,例えば,0.1〜0.3mmである。
【0020】
さらに,好ましくは,空気流速加速装置の回転によって空気と突き当たるブレードの前面は,ディスク表面と鋭角をなすように傾いている。
【0021】
さらに,好ましくは,HDDには複数枚のディスクが装着される場合,空気流速加速装置は,複数枚のディスクの記録面の各々に対応して設けられる。この場合,スピンドルモータの外周には,複数枚のディスクを互いに隔てるためのスペーサが設けられる。
【0022】
さらに,好ましくは,空気流速加速装置は,ディスククランプ,スペーサ,及びスピンドルモータのディスク安着部の各々とディスクとの間に空気流速加速装置が設けられる。
【0023】
この場合,ブレードの外径は,ディスククランプ,スペーサ,及びスピンドルモータのディスク安着部の外径より大きい。
【0024】
一方,空気流速加速装置はディスクの表面に一体に形成でき,また,ディスククランプの底面とスペーサの上面または底面に一体に形成できる。
【0025】
このように本発明によれば,スライダの離着陸特性が改善されて,磁気ヘッド及びディスクの損傷及び摩耗が抑えられる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下,添付した図面に基づき,本発明による空気流速加速装置を備えたHDDの好ましい実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
図6は,本実施の形態による空気流速加速装置を備えたHDDの分解斜視図であり,図7は,図6に示された空気流速加速装置が設けられた部分を拡大して示す部分斜視図である。そして図8は,ディスク及び空気流速加速装置がスピンドルモータに結合された状態を示す部分垂直断面図である。また,図9は,図7のB−B線によるブレードの断面図である。
【0028】
図6,図7,図8,及び図9を参照すれば,本実施の形態によるHDDは所定の内部空間を有したハウジングを備えている。そして,このハウジング内には,スピンドルモータ130と,1枚または複数枚の磁気ディスク120,及びアクチュエータ140が設けられる。
【0029】
ハウジングはコンピュータの本体内に設けられるものであり,スピンドルモータ130及びアクチュエータ140を支持するベースプレート111と,ベースプレート111の上部に結合されてディスク120などを包んで保護するカバープレート112とを備える。このようなハウジングは,通常,ステンレス鋼またはアルミニウム材質などから製作される。
【0030】
ディスク120は,一般に,1枚または複数枚が互いに所定間隔だけ離れてスピンドルモータ130により回転自在に設けられる。そして,ディスク120の表面の内周側には,電源が切れる時に磁気ヘッド141の搭載されたスライダ142が安着する所としてデータが書き込まれていないランディングゾーン121が設けられており,ディスク120の表面の外周側にはデータが書き込まれるデータゾーン122が設けられている。
【0031】
スピンドルモータ130は,ディスク120を回転させるためのものであり,ベースプレート111上に固設される。スピンドルモータ130の上端部には,ディスク120をスピンドルモータ130に固定させるためのディスククランプ160が結合される。このスピンドルモータ130に複数枚のディスク120が装着される場合には,ディスク120同士を隔てるためのリング状のスペーサ150がディスク120の間に挟まれる。
【0032】
アクチュエータ140は,ディスク120にデータを書き込んだり,書き込まれたデータを読み出したりするための装置であって,ベースプレート111上に回動自在に設けられる。アクチュエータ140は,回動軸147に回動自在に結合されたアーム146と,アーム146を回動させるためのボイスコイルモータ148と,アーム146に設けられて磁気ヘッドの搭載されたスライダ142をディスク120の表面側に付勢して支持するサスペンション144とを備える。
【0033】
そして,ディスク120のランディングゾーン121の内側には,ディスク120と共に回転する空気流速加速装置170が設けられる。空気流速加速装置170は,ディスク120の回転中にスライダ142とディスク120の表面との間に流入する空気の流速を速める装置であって,スピンドルモータ130の外周に嵌着されるリング部材172と,リング部材172から半径方向に延びてディスク120の回転方向とは反対方向に曲がる少なくとも一つのブレード174とを備える。ブレード174は少なくとも1つ,多くは数十個設けられ,好ましくは図示のように,リング部材172の円周に沿って略等間隔に3個配される。
【0034】
ブレード174は,ディスク120のランディングゾーン121の内径DLより小さい外径DAを有する。これは,スライダ142がディスク120のランディングゾーン121に安着する時に,ブレード174に突き当たることを防ぐためである。さらに好ましくは,ブレード174は,ディスククランプ160,スペーサ150,及びスピンドルモータ130のディスク安着部132の各々の外径DCより大きい外径DAを有する。これは,空気がディスククランプ160などとディスク120との間に留まることを防ぎ,その間における空気の流れを円滑にするためである。結果的に,ブレード174の外径は,スライダ142と突き当たらない範囲内で最大に形成されることが好ましい。
【0035】
そして好ましくは,図9に示されたように,ブレード174の厚みTBは,スライダ142の厚みTSより厚くない。例えば,スライダ142の厚みTSは略0.3mmであるため,好ましくは,ブレード174の厚みTBは,0.1〜0.3mmである。これは,ブレード174の前面174aに突き当たってその外側に放出される空気の一部が,スライダ142の上側に流れることを抑えるためである。スライダ142上の側に形成される空気の流れは,かえってスライダ142を浮上させるのに妨害となる。
【0036】
また,ブレード174の前面174a,すなわちブレード174の回転により空気と突き当たる面は,好ましくは,ディスク120の表面と鋭角をなすように傾いている。これは,ブレード174の前面174aに突き当たってその外側に放出される空気がスライダ142の上側に散らばらずに,ディスク120の表面側に隣接して流れるためである。従って,ブレード174により生成された空気の流れは,ほとんどディスク120の表面及びスライダ142の底面,すなわち,空気ベアリング面(ABS:Air−Bearing Surface)142aの間へ向かうため,スライダ142を浮上させる揚力が一層強く発生する。このように,ブレード174の前面174aが傾斜面となっている場合には,ブレード174により生成された空気の流れがスライダ142の底面側に向かうため,その高さTBが必ずしもスライダ142の高さTSより低い必要はない。
【0037】
一方,図6及び図8に示されたように,HDDに複数枚のディスク120が装着される場合には,空気流速加速装置170は複数枚のディスク120の記録面の各々に対応して一つずつ設けられるため,全体的に複数個の空気流速加速装置170が設けられる。詳述すれば,図示のように,2枚のディスク120が設けられる場合には,各々のディスク120の両側面に各々一つずつ,全体的に4個が設けられる。すなわち,空気流速加速装置170は,ディスク120とディスククランプ160との間,スペーサ150の上面及び底面の各々とディスク120との間,及びスピンドルモータ130のディスク安着部132とディスク120との間に設けられる。
【0038】
図示はされていないが,1枚のディスクのみが設けられた場合には,その両側面に各々一つずつの空気流速加速装置が設けられてもよく,1枚のディスクの一側面のみを記録面として用いる場合にはその一側面のみに空気流速加速装置が設けられてもよい。
【0039】
以上において空気流速加速装置170は,ディスク120とスペーサ150などとは別設されると説明された。しかし,これに限定されることなく,空気流速加速装置170は,ディスク120の一側面または両側面に一体に形成してもよい。この場合,ディスク120の製造時に空気流速加速装置170を同時に形成できるので,製造工程の単純化及びコスト下げの側面から好ましい。例えば,ディスク120の内周側の表面上に所定の物質をスパッタリングして空気流速加速装置170を形成してもよい。また,ディスク120の内周側の表面上に所定の物質層を形成した後,この物質層をリング部材172及びブレード174の形状に合わせてエッチングすることにより,空気流速加速装置170を形成してもよい。
【0040】
また,図10に示されたように,空気流速加速装置170’は,ディスククランプ160’の底面にこれと一体に形成できる。この場合には,ディスククランプ160’の底面を,例えば切削加工により削ってリング部材172’及びブレード174’を形成する。そして,図11に示されたように,空気流速加速装置170”は,スペーサ150’の上面及び底面にこれと一体に形成できる。この場合にもスペーサ150’の上面及び底面を,例えば切削加工により削ってリング部材172”及びブレード174”を形成する。
【0041】
以下に,図12〜図15に基づいて,上述のような構成を有した空気流速加速装置の作用について説明する。
【0042】
図12は,空気流速加速装置のブレードの前方に形成される空気の流れ方向及びその速度を説明するための図面であり,図13は,空気流速加速装置により放出される空気の流れ方向を示す図面である。そして図14は,空気流速加速装置により生成された空気の流れ及びディスクの回転により生成された空気の流れがスライダの浮上速度に及ぼす影響を説明するための図面であり,図15は,その関係を示すグラフである。
【0043】
まず,図12を参照すれば,HDDに電源が供給されてディスク120が回転し始めれば,空気流速加速装置170のブレード174もディスク120と共に反時計回り方向に回転する。この時,ブレード174の前方の空気は,ディスク120の線速度rωに比例する速度成分uと,ブレード174の曲がった前面に反って外側に向かう速度成分wとを有する。従って,ブレード174により形成される空気流れは,これら2種の成分が合成された速度vを有する。この時,ディスク120の線速度rωに比例する速度成分uにおいては,ブレード174の外側端部側の速度成分uが内側端部側の速度成分uより大きくなる。これにより,ブレード174により形成される空気流れもブレードの内側端部側の速度vよりその外側端部側の速度vが大きくなり,その方向も次第にディスク120の回転方向へと変わる。
【0044】
その結果,図13に示されたように,空気流速加速装置170のブレード174により形成される空気の流れは,空気流速加速装置170の外側に向かってディスク120の回転方向側に曲がる。
【0045】
次に,図14及び図15を参照すれば,ブレード174に形成された空気の流れFBは,ブレード174の外側に設けられたディスク120のランディングゾーン121に流入し,ここでディスク120の回転により形成されてディスク120の線速度に比例する速度uを有した空気の流れFDに出合う。このように2つの空気の流れFB,FDは,共にスライダ142の空気ベアリング面142aとディスク120の表面との間に向かう。従って,スライダ142の空気ベアリング面142aの下の空気流れFBDは,2つの空気流れFB,FDが合わせられて形成されるため,その空気流れFBDはディスク120の回転により形成された空気流れFDの速度uと,ブレード174により形成された空気流れFBの速度vとがベクトル合成されて一層高い合成速度Uを有する。
【0046】
上述のように,スライダ142の空気ベアリング面142aの下に流入する空気流れFBDの速度Uが上がれば,スライダ142を浮上させる揚力もこれに比例して強くなるため,スライダ142はより低いディスク120の回転速度でより速く浮上する。これを図15に基づき再び説明すれば,スライダ142を浮上できる空気の流速を’Y’としたとき,従来のディスク120の回転により形成された空気流れFDのみ存在する場合には,その速度uが’Y’に達するためには,ディスクの回転速度が’X’に達せねばならない。これに対し,本発明により2つの空気流れFB,FDが合成された空気流れFBDが存在する場合には,ディスクの回転速度が’X’より遅い’X’に達すれば,その合成速度Uはスライダ142を浮上できる空気の流速’Y’に達する。従って,本実施の形態によれば,より遅いディスクの回転速度によってもスライダ142は浮上できる。そしてこれは,スライダ142が従来に比べてはるかに速く浮上することを意味する。一方,これとは逆に,スライダ142がディスク120のランディングゾーン121に安着する場合にも,ディスク120の回転速度が従来に比べてより遅くなるまでスライダ142はより長時間浮上した状態を保持できる。
【0047】
結果的に,HDDに電源が供給されてディスク120が回転し始めれば,ディスク120のランディングゾーン121に安着していたスライダ142は従来に比べてより速く浮上し,HDDの電源が切れてディスク120の回転速度が下がれば,スライダ142はランディングゾーン121により安定的に安着する。これにより,ディスク120の表面とスライダ142との摩擦時間が短くなるため,ディスク120及びスライダ142間の長時間の摩擦によるディスク120,及び磁気ヘッド141の損傷が抑えられ,その耐久性が向上する。
【0048】
また,ディスク120とスライダ142との摩耗によるパーティクルの発生も減り,ディスク120上に既に存在する微細パーティクルも空気流速加速装置170により形成される強い空気流れにより除去できる。
【0049】
以上,添付図面を参照しながら本発明のHDDの好適な実施形態について説明したが,本発明はこれらの例に限定されない。いわゆる当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
【発明の効果】
上述したように,本発明によるHDDによれば,空気流速加速装置によりスライダの浮上速度が速まり,その着陸も安定的になる。これにより,ディスクとスライダとの長時間の摩擦によるディスク及び磁気ヘッドの損傷が抑えられてその耐久性が向上し,ディスクとスライダとの摩耗によるパーティクルの発生も減る。また,ディスク上に存在する微細パーティクルを強い空気流れにより除去できるので,ディスクのクリーニング効果も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は,従来のHDDを概略的に示す平面図である。
【図2】図2は,図1に示されたディスクのランディングゾーン部位を拡大して示す斜視図である。
【図3】図3は,図2に示されたスライダがディスクの回転により浮上する過程を説明するための図面であって,図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は,図2に示されたスライダがディスクの回転により浮上する過程を説明するための図面であって,図2のA−A線断面図である。
【図5】図5は,図2に示されたスライダがディスクの回転により浮上する過程を説明するための図面であって,図2のA−A線断面図である。
【図6】図6は,本実施の形態による空気流速加速装置を備えたHDDの分解斜視図である。
【図7】図7は,図6に示された空気流速加速装置が設けられた部分を拡大して示す部分斜視図である。
【図8】図8は,ディスク及び空気流速加速装置がスピンドルモータに結合された状態を示す部分垂直断面図である。
【図9】図9は,図7のB−B線によるブレードの断面図である。
【図10】図10は,ディスククランプ及びスペーサに一体に形成された空気流速加速装置を示す斜視図である。
【図11】図11は,ディスククランプ及びスペーサに一体に形成された空気流速加速装置を示す斜視図である。
【図12】図12は,空気流速加速装置のブレードの前方に形成される空気の流れ方向及びその速度を説明するための図面である。
【図13】図13は,空気流速加速装置により放出される空気の流れ方向を示す図面である。
【図14】図14は,空気流速加速装置により生成された空気の流れ及びディスクの回転により生成された空気の流れがスライダの浮上速度に及ぼす影響を説明するための斜視図である。
【図15】図15は,空気流速加速装置により生成された空気の流れと,ディスクの回転により生成された空気の流れがスライダの浮上速度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
111 ベースプレート
112 カバープレート
120 ディスク
121 ランディングゾーン
122 データゾーン
130 スピンドルモータ
132 ディスク安着部
140 アクチュエータ
141 磁気ヘッド
142 スライダ
142a 空気ベアリング面
144 サスペンション
146 アーム
147 回動軸
148 ボイスコイルモータ
150 スペーサ
160 ディスククランプ
170 空気流速加速装置
172 リング部材
174 ブレード
174a ブレードの前面

Claims (14)

  1. 所定の内部空間を有したハウジングの内部に設けられるスピンドルモータと,
    ディスククランプにより前記スピンドルモータに装着される少なくとも一つのデータ貯蔵用ディスクと,
    前記ハウジングの内部に回動自在に設けられ,データの書き込み及び読み出し用磁気ヘッドが搭載されたスライダを有したアクチュエータと,
    前記ディスクと共に回転するように前記ディスクの内周側に設けられ,前記ディスクの回転中に前記スライダと前記ディスクの表面との間に流入する空気の流速を速める少なくとも一つのブレードを有した空気流速加速装置と,を備え,
    前記空気流速加速装置の回転によって空気と突き当たる前記ブレードの前面は,前記ディスク表面と鋭角をなすように傾いていることを特徴とする,ハードディスクドライブ。
  2. 前記空気流速加速装置は,前記スピンドルモータの外周に嵌着されるリング部材を備え,
    前記ブレードは,前記リング部材から半径方向に延びて前記ディスクの回転方向とは反対方向に曲がっていることを特徴とする,請求項1に記載のハードディスクドライブ。
  3. 前記ブレードは,前記リング部材の円周方向に少なくとも3つが略等間隔にて配されることを特徴とする,請求項1または2に記載のハードディスクドライブ。
  4. 前記ブレードは,前記スライダより厚くないことを特徴とする,請求項1,2,または3のうちのいずれか1項に記載のハードディスクドライブ。
  5. 前記ブレードの厚みは,0.1〜0.3mmであることを特徴とする,請求項1,2,3,または4のうちのいずれか1項に記載のハードディスクドライブ。
  6. 前記ブレードの外径は,前記ディスクの内周側の表面に設けられたランディングゾーンの内径より小さいことを特徴とする,請求項1,2,3,4,または5のうちのいずれか1項に記載のハードディスクドライブ。
  7. 前記空気流速加速装置は,前記ディスクと前記ディスククランプとの間,及び,前記ディスクと前記スピンドルモータのディスク安着部との間に設けられることを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,または6のうちのいずれか1項に記載のハードディスクドライブ。
  8. 前記ブレードの外径は,前記ディスククランプ及び前記スピンドルモータのディスク安着部の外径より大きいことを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,6,または7のうちのいずれか1項に記載のハードディスクドライブ。
  9. 前記空気流速加速装置は,前記ディスクの表面に一体に形成されることを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,6,7,または8のうちのいずれか1項に記載のハードディスクドライブ。
  10. 前記空気流速加速装置は,前記ディスククランプの底面に一体に形成されることを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,6,7,または8のうちのいずれか1項に記載のハードディスクドライブ。
  11. 前記ハードディスクドライブには複数枚のディスクが装着され,前記空気流速加速装置は,前記複数枚のディスクの記録面の各々に対応して設けられることを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,または10のうちのいずれか1項に記載のハードディスクドライブ。
  12. 前記スピンドルモータの外周には前記複数枚のディスクを互いに隔てるためのスペーサが設けられ,前記ディスククランプ,前記スペーサ,及び前記スピンドルモータのディスク安着部の各々と前記ディスクとの間に前記空気流速加速装置が設けられることを特徴とする,請求項11に記載のハードディスクドライブ。
  13. 前記ブレードの外径は,前記ディスククランプ,前記スペーサ,及び前記スピンドルモータのディスク安着部の外径より大きいことを特徴とする,請求項12に記載のハードディスクドライブ。
  14. 前記スピンドルモータの外周には前記複数枚のディスクを互いに隔てるためのスペーサが設けられ,前記スペーサと前記ディスクとの間に設けられる空気流速加速装置は,前記スペーサの上面及び底面に一体に形成されることを特徴とする,請求項11に記載のハードディスクドライブ。
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