JP3909264B2 - 透湿性防水シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透湿性防水シート及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と記載)膜などの開放された連続多孔質膜は、透湿性及び防水性のある膜として知られており、スキーウエアーなどの運動用衣服やカッパなどの雨具をはじめ靴、テント、各種フィルターなど様々な分野に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、透湿性と防水性は互いに相反する性質であり、一般的に透湿性を高めれば、防水性が低下し、防水性を高めれば透湿性が低下する。具体的には、微多孔質の孔を大きく、気孔率を大きく、膜の厚みを薄くすれば透湿性は向上するが、水が通りやすくなるので、防水性は低下する。これとは反対に、連続多孔質の孔を小さく、気孔率を小さく、膜厚みを厚くすれば、防水性は向上するが、透湿性は低下する。このような性質を有する一方で、ユーザからは、透湿性および防水性とが共に向上したものが求められている。
【0004】
また、開放された連続多孔質膜は、上述のように、広範囲の分野で使用できるものの、場合によっては使い勝手が不十分であることがあり、使い勝手を向上させるために、以下の点を改良することが望まれている。
すなわち、
1.PTFE膜の強度が弱く、また、柔軟性がないため、耐水圧の測定では高い値を示すが、縫製の際の引っ掛け時あるいは製品にされたときに、PTFE膜が破れることがあった。また、強く押さえるなど外力を与えた際に、連続多孔がつぶれて透湿性が低下することがあった。
2.微細な気孔にゴミ等の異物が詰まった場合には、透湿性が低下した。また、洗濯に使用する洗剤が気孔の中に残留した場合には、防水性が低下した。
以上の点が改良されれば、十分満足な性能になるが、解放された連続多孔質膜に親水性ポリウレタン樹脂膜を貼り合わせるなどした場合では、さらに、窒素酸化物または光にさらしたときの、親水性ポリウレタン樹脂膜の黄変の改良が望まれることがある。
【0005】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、PTFE膜とポリウレタン樹脂の長所を維持しつつ、短所を補って、透湿性と防水性とが共に優れる上に、外力による透湿性低下、ゴミ等による透湿性の低下が防止された透湿性防水シート及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の透湿性防水シートは、連続多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の少なくとも片面上および/または膜中に、親水性ポリウレタン樹脂を含む無孔質層が形成されており、
前記親水性ポリウレタン樹脂が、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1つによって架橋されており、
窒素酸化物に対する堅牢度が、3級以上であり、かつ、耐光堅牢度が、3級以上であることを特徴とする。
本願請求項10の透湿性防水シートの製造方法は、連続多孔質テトラフルオロエチレン膜の少なくとも片面に、粘度が1000〜10000cpsの親水性ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、乾燥して無孔質層を形成させる透湿性防水シートの製造方法であって、
前記親水性ポリウレタン樹脂溶液が、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1つを、親水性ポリウレタン樹脂を架橋している架橋剤として含有することを特徴としている。
また、本願請求項11の透湿性防水シートの製造方法は、連続多孔質テトラフルオロエチレン膜の片面に繊維布帛を貼り合わせ、連続多孔質テトラフルオロエチレン膜のもう一方の片面に、粘度が1000〜10000cpsの親水性ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、乾燥して無孔質層を形成させる透湿性防水シートの製造方法であって、
前記親水性ポリウレタン樹脂溶液が、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1つを、親水性ポリウレタン樹脂を架橋している架橋剤として含有することを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の透湿性防水シートの一例について説明する。この透湿性防水シートは、連続多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(以下、連続多孔質膜という)の少なくとも片面上および/または膜中に、親水性ポリウレタン樹脂を含む無孔質層が形成されているものであり、例えば、図1(a)に示すような、連続多孔質膜11の上および中に、親水性ポリウレタン樹脂を含む無孔質層12が形成されたもの(透湿性防水シート13)、図1(b)に示すような、連続多孔質膜11の中に、親水性ポリウレタン樹脂を含む無孔質層12が形成されたもの(透湿性防水シート14)、図1(c)に示すような、連続多孔質膜11の上に、親水性ポリウレタン樹脂を含む無孔質層12が形成されたもの(透湿性防水シート15)、図1(d)に示すような、連続多孔質膜11の両面上および膜中に、親水性ポリウレタン樹脂を含む無孔質層12が形成されたもの(透湿性防水シート16)が挙げられる。
これらの中でも、耐水圧の洗濯耐久性が高くなることから、連続多孔質膜11中に無孔質層12が形成されたもの(透湿性防水シート13,14,16)が好ましい。連続多孔質膜11中に無孔質層12が形成されていれば、連続多孔質膜11と親水性ポリウレタン樹脂との接着がより強固になる。
【0008】
連続多孔質膜11は、一方の表面から他方の表面まで通ずる連続した孔が多数形成されたポリテトラフルオロエチレン膜(PTFE膜)であり、例えば、米国特許第3953566号や米国特許4187390号に記載されているものが挙げられる。具体的には、W.L.ゴア・アンドアソシエーツ インコーポレションが販売している商品名ゴアーテックス(登録商標)や日本ドナルドソン株式会社が販売している商品名テトラテックス(登録商標)などのPTFE膜などが挙げられる。PTFE膜の中でも気孔率を容易に高くできることからは延伸タイプがさらに好ましい。
PTFE膜を用いることにより、親水性ポリウレタン樹脂溶液を塗布して含浸させても、溶媒に用いられるジメチルホルムアミドなどの有機溶剤に溶解しないため、微細な連続孔に親水性ポリウレタン樹脂を含浸させることができるので、容易に無孔質層を形成させることができる。
【0009】
また、連続多孔質膜11の気孔率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。気孔率が80%以上であれば、含浸層17を容易に形成させることでき、透湿性および防水性をより高くできる。ここで、気孔率とは、連続多孔質膜中の孔の部分の容積割合のことである。
また、連続多孔質膜11の厚みは、6〜200μmであることが好ましい。連続多孔質膜11の厚みが、6μm未満であると、十分な防水性および強度が得られないことがあり、200μmを超えると、十分な透湿性が得られないことがある。
【0010】
無孔質層12は、親水性ポリウレタン樹脂を含み、孔を有さない膜である。無孔質層12は、1 〜100g/m2 の範囲で形成されていることが好ましく、5 〜50g/m2 の範囲で形成されていることがさらに好ましい。1 〜100g/m2 の範囲で形成されていると、防水性および透湿性をより向上させることができる。
また、無孔質層12の上に顔料などを含む樹脂溶液を任意の柄(ベタを含む)で付与すれば、意匠性を向上させることができる。
【0011】
無孔質層12のうち、連続多孔質膜11の中に形成された部分は、連続多孔質膜11に親水性ポリウレタン樹脂が含浸しているので、含浸層17ということがある。この含浸層17の厚さは、5〜100μmであることが好ましい。含浸層17の厚さが5〜100μmであれば、接着強度が高くなるとともに、揉み等による接着の低下を抑えることができる。また、透湿性防水シートに防炎性を持たせる場合には、防炎剤を十分な量を添加できるので、防炎性に優れる。また、洗濯等の揉み処理後の耐水圧の低下(PTFE膜と親水性ポリウレタン樹脂の剥がれ)をより防止できる。なお、含浸層が5μm未満で、親水性ポリウレタン樹脂100質量部に対して5質量部程度以上の防炎剤を添加すると、PTFE膜と親水性ポリウレタン樹脂の接着力が低下することがある。そのため、得られる透湿性防水シートは、揉み等に弱くなる。また、接着力の低下を配慮して、防炎剤添加量を少なくした場合には、防炎性が十分ではない。
なお、含浸層17は、連続多孔質膜11の厚み方向の全てに形成されていてもよい。また、含浸層17において、連続多孔質膜11の全ての孔に親水性ポリウレタン樹脂が含浸されている必要はない。
【0012】
無孔質層12に含まれる親水性ポリウレタン樹脂は、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」)、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「水添加MDI」)、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)から選択される少なくとも1つによって架橋されている。
親水性ポリウレタン樹脂が架橋されていることにより、揉み(特に水が存在したとき場合)に対する耐性が向上する。また、この架橋された親水性ポリウレタン樹脂は、アルコール類に溶解しやすく、無孔質層12を容易に形成させることができる。
【0013】
さらに、親水性ポリウレタン樹脂が、HDI、水添加MDI、IPDI等の架橋剤によって架橋されていることにより、窒素酸化物(以下、NOxということがある)にさらされた場合の黄変を防止できる。例えば、JIS L0855(窒素酸化物に対する染色堅牢度試験(強試験))に準じて測定された親水性ポリウレタン樹脂の黄変の程度は、変退色用グレースケールを用いた判定で3級以上である。
また、親水性ポリウレタン樹脂が、HDI、水添加MDI、IPDI等の架橋剤によって架橋されていることにより、紫外線にさらされた場合の黄変を防止できる。例えば、JIS L0842(紫外線カーボンアーク灯に対する染色堅牢度試験方法(第3露光法))に準じて測定された親水性ポリウレタン樹脂の耐光堅牢度は3級以上である。
このように、HDI、水添加MDI、IPDI等の架橋剤により架橋された親水性ポリウレタン樹脂を用いることにより、親水性ポリウレタン樹脂を含む膜の変色を防止できるので、透湿性防水シートの表地の変色を防止できる。したがって、白、淡色品での展開が可能となり、例えば、ファッション性を要求されるスポーツ用衣服やカッパ類に商品展開できる。
【0014】
親水性ポリウレタン樹脂について、それ以外の点については特に限定されないが、特公平3−42354号公報に示されるような有機ジイソシアネートとオキシエチレン基含有ポリエーテルジオールおよび鎖延長材からなるポリウレタン樹脂であって、樹脂中のオキシエチレン基含有量が20〜80質量%のものが好ましい。透湿性を重視する場合には、オキシエチレン基含有量が50質量%以上のものを用いることが好ましい。なお、この親水性ポリウレタン樹脂は、ジメチルホルムアミド、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解されたものが容易に入手できる。
【0015】
また、親水性ポリウレタン樹脂は、水膨潤度が20%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。親水性ポリウレタン樹脂の水膨潤度が20%以上であれば、無孔質層を形成した場合でも、十分な透湿性を発揮できる。ここで、水膨潤度とは、樹脂を所定時間水に浸漬したときに吸収した水の、樹脂に対する重量割合のことである。また、水膨潤度の上限は、得られる透湿性防水シートの用途により適宜選択すればよいが、運動用衣服用途では200%以下程度のものが好ましく用いられる。また、洗濯処理や水を吸った状態で揉み等の力を受けない用途に対しては、水膨潤度が500%以上の親水性ポリウレタン樹脂であっても差し支えない。
【0016】
また、親水性ポリウレタン樹脂には、炭酸カルシウム、コロイダルシリカ、セルロース、プロテイン、PMMA樹脂、顔料、防炎剤、抗菌剤等の無機あるいは有機物質が添加されていてもよい。特に、連続多孔質膜11の片面に、後述する繊維布帛を有する場合には、粒子径1〜20μm程度のシリカをマット剤として添加することが好ましい。
また、親水性ポリウレタン樹脂を連続多孔質層に塗布する際に、上述した架橋剤の他に、さらに架橋剤を添加することが好ましい。このときの架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤が好ましく、脂肪族系イソシアネートがさらに好ましい。
【0017】
透湿性防水シートは、図2(a)に示すように、連続多孔質膜11、無孔質層12の他に繊維布帛18を有することができる。繊維布帛18としては特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ナイロン(アラミド含む)、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維、アセテートなどの半合成繊維、レーヨンなどの再生繊維、綿、毛などの天然繊維、または、これらを複合したものが挙げられる。さらに、繊維布帛18の形態としては特に限定されるものではなく、例えば、織物、編物、不織布等が挙げられる。また、繊維布帛18には、染色、捺染、撥水、防炎、抗菌、吸水、消臭、防炎等の繊維布帛に対する公知の加工を施してもよい。
このように、繊維布帛18を有する透湿性防水シートとしては、図2(a)に示すような、繊維布帛18、連続多孔質膜11、無孔質層12の順に積層されたもの(透湿性防水シート21)、また、図2(b)に示すような、繊維布帛18、連続多孔質膜11、無孔質層12、繊維布帛18の順に積層されたもの(透湿性防水シート22)が挙げられる。これらの透湿性防水シート21,22では、連続多孔質膜11が表層になく、保護されている。したがって、傷による性能低下を防止できる。
【0018】
繊維布帛18と連続多孔質膜11、繊維布帛18と無孔質層12は、公知のバインダー樹脂を点状、線状、全面に付与して貼り合わすことができる。バインダー樹脂を全面に付与した場合には、図3(a)に示すように、繊維布帛18、バインダー樹脂19、連続多孔質膜11、無孔質層12の順、または、図3(b)に示すように、繊維布帛18、バインダー樹脂19、連続多孔質膜11、無孔質層12、バインダー樹脂19、繊維布帛18の順に積層されることになる。また、バインダー樹脂は、連続多孔質膜11および繊維布帛18に含浸することにより、それらの接着強度が高くなり、耐水圧を高めるとともに、洗濯後の防水性の低下を防止できる。
ここで、バインダー樹脂19としては、公知のものを用いることができるが、親水性の2液硬化型ウレタン樹脂が好ましく用いられる。バインダー樹脂19に添加される架橋剤としては、脂肪族系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられ、中でも、脂肪族系架橋剤がより好ましい。また、バインダー樹脂19は溶剤に希釈して使用される。
また、バインダー樹脂を使用しなくても、熱圧着性を有する繊維布帛や無孔質層を用い、熱圧着して貼り合わせることも可能である。
【0019】
以上の透湿性防水シートは、透湿度が、10000g/(m2・24時間)以上であることが好ましく、より好ましくは20000g/(m2・24時間)であり、特に好ましくは30000g/(m2・24時間)以上である。透湿度が10000g/(m2・24時間)以上であれば、透湿性防水シートがより高性能になり、用途がさらに広がる。ここで、透湿度とは、JIS L1099(繊維製品の透湿度試験方法)における酢酸カリウム法に準じて測定される値のことである。
また、耐水度が10000mm以上であることが好ましく、より好ましくは20000mm以上であり、特に好ましくは30000mm以上である。耐水度が10000mm以上であれば、透湿性防水シートがより高性能になり、用途がさらに広がる。ここで、耐水度とは、JIS L1092(繊維製品の防水性試験方法の高水圧法)に準じて測定される値のことである。
また、洗濯100回後の耐水圧保持率が70%以上であることが好ましい。洗濯100回後の耐水圧保持率が70%以上であれば、透湿性防水シートがより高性能になり、用途がさらに広がる。ここで、洗濯100回後の耐水圧保持率とは、JIS L0217 103法に準じて測定された値のことである。
【0020】
なお、連続多孔質膜11に親水性ポリウレタン樹脂を含む多孔質層が形成されたもの(無孔質層を有さないもの)では、洗濯やドライクリーニングした場合に、界面活性剤が多孔質の孔に取り込まれて、孔に水がしみ込むようになるので、防水性が不十分な場合がある。
【0021】
上述した透湿性防水シートは、優れた透湿性と防水性を有し、快適な作業(運動)環境を提供でき、さらに、無孔質層を着色して、意匠性を向上させれば、スキーウエア、カッパ、靴材等に好適に用いることができる。また、様々な薬品に対する耐久性も有しているため、特殊作業服(化学防護服等)、フィルターに用いれば、快適な作業環境を提供できる。
【0022】
次に、本発明の透湿性防水シートの製造方法について説明する。
まず、連続多孔質膜の少なくとも片面に、親水性ポリウレタン樹脂溶液を塗布する。次いで、室温〜190℃程度にて乾燥して無孔質層を形成させ、必要に応じて、公知の撥水加工等を施して透湿性防水シートを得る。
このとき使用される親水性ポリウレタン樹脂溶液は、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1つを、親水性ポリウレタン樹脂を架橋している架橋剤として含有する。これら架橋剤により親水性ポリウレタン樹脂を架橋することにより、得られる透湿性防水シートの耐水圧や洗濯耐久性、および堅牢性が向上する。
また、親水性ポリウレタン樹脂を、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレンなどの有機溶剤に溶解して調製したものが好ましい。さらに、親水性ウレタン樹脂溶液の有機溶剤として、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第2ブチルアルコールなどのアルコール類を、親水性ポリウレタン樹脂溶液中の5質量%以上含有させることが好ましい。上述したアルコール類を、親水性ポリウレタン樹脂溶液中の5質量%以上含有させると、連続多孔質膜がPTFE膜であるにもかかわらず、親水性ポリウレタン樹脂を容易に含浸させることができる。また、親水性ポリウレタン樹脂溶液には、上述した各種添加剤を添加できる。
【0023】
親水性ポリウレタン樹脂溶液の粘度は、1000〜10000cps(B型粘度計、ローターナンバー4、12rpm)であり、好ましくは、1500〜6000cpsである。粘度が1000〜10000cpsであれば、塗布性および製造効率が共に優れる。
【0024】
連続多孔質膜への親水性ポリウレタン樹脂溶液の塗布方法としては、例えば、グラビアコータ、ナイフコータ、ダイコータ、パイプコータ、バーコータ、パッダーなどを挙げることができるが、親水性ポリウレタン樹脂の連続多孔質膜への含浸の観点からはパイプコータ、バーコータが好ましい。
【0025】
なお、無溶剤または溶剤を極端に少なくしたホットメルト型親水性ポリウレタン樹脂も用いることができるが、大きな圧力等をかけて孔内に押し込む必要があり、しかも、連続多孔質膜に親水性ポリウレタン樹脂が殆ど含浸しないので、好ましくない。
また、連続多孔質膜の片面に無孔質層が形成された透湿性防水シートは、連続多孔質膜に、予め膜状にされた無孔質層を接着剤等により貼り合わせて製造することもできる。また、熱プレスなどにより貼り合わせることができる。
【0026】
なお、上述した製造方法は、繊維布帛を有さない場合であったが、透湿性防水シートの片面に繊維布帛を有する場合には、まず、連続多孔質膜にバインダー樹脂をグラビアコータなどにより全面、線状、点状に付与し、そのバインダー樹脂が付与された面に、予め精練、染色、撥水などの各種加工を必要に応じて施した繊維布帛と重ね合わせる。その後、必要に応じて、乾燥(室温〜190℃)、キュアリング(室温〜100℃)する。次いで、繊維布帛が貼り合わされていない、連続多孔質膜の他方の面に、親水性ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、乾燥して無孔質層を形成させる。
【0027】
また、透湿性防水シートの両面に繊維布帛を有する場合には、一方の面に無孔質層が形成され、他方の面に繊維布帛が貼り合わされた連続多孔質膜の無孔質層の表面に、バインダー樹脂をグラビアコータなどにより全面、線状、点状に付与し、予め精練、染色、撥水、吸水などの各種加工を必要に応じて施した繊維布帛を貼り合わせる。次いで、必要に応じて、乾燥、キュアリング、さらに、公知の撥水加工を施して透湿性防水シートを得る。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例に従い、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」とは「質量部」を意味している。
なお、透湿性防水シートの評価は次の方法により行なった。
1)親水性ポリウレタン樹脂の水膨潤度
離型紙の上に親水性ポリウレタン樹脂溶液を0.08mmの厚みで塗布し、120℃で3分間乾燥し、18時間経過後、形成された皮膜を離型紙上から剥離した。次いで、この皮膜を、5×5cmの大きさに切り取り、水道水に5分間浸漬した後、取り出して、水道水浸漬前後の重量から水膨潤度を求めた。
2)透湿性防水シートの透湿性
JIS L1099B−1法(酢酸カリウム法)により測定した。ただし、単位は24時間あたりに換算した。すなわち、その単位は、g/(m2・24時間)である。
【0029】
3)透湿性防水シートの耐水圧
JIS L1092 B法(高水圧法)により測定した。水圧をかけることにより試験片が伸びる場合には、試験片の上にナイロンタフタ(密度:タテ+ヨコ=210本/2.54cm相当)を重ねた後に、試験機に取り付けて測定を行なった。その際、試験機に、無孔質層側の面が水に接触するように透湿性防水シートを取り付けた場合と、繊維布帛側の面が水に接触するように透湿性防水シートを取り付けた場合の両方で測定した。また、JISなどには規定されていないが、当業者に知られている目皿を用いて測定を行なうと5000mmから、場合によっては20000mm以上、耐水圧の数値が高くなるので注意が必要である。
また、洗濯後の耐水圧保持率は、JIS L0217 103法により、洗濯前(初期)と1回、50回、100回後を測定し、洗濯前と100回洗濯後の耐水圧から耐水圧保持率を求めた。なお、50回洗濯、100回洗濯では、洗濯時間25分、すすぎ10分を2回行なったことを5回洗濯とみなし、所定回数になるまで、これを繰り返した。また、乾燥は、最後に1度、室温にて吊り干乾燥を行なった。
なお、単位は当業者が比較し易いようにJIS L1092A法(低水圧法)で使用されている水柱に換算し、mmで表した。
【0030】
4)透湿性防水シートにおける含浸層の厚み
走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の写真をとり、その写真から含浸層の厚みを測定した。
5)透湿性防水シートの窒素酸化物に対する染色堅牢度
JIS L0855(窒素酸化物に対する染色堅牢度試験方法(強試験))に準じて試験して、親水性ポリウレタン樹脂の黄変の程度を変退色用グレースケールにて判定した。
6)透湿性防水シートの耐光堅牢度
JIS L0842(紫外線カーボンアーク灯に対する染色堅牢度試験方法(第3露光法 3級照射、4級照射))に準じて、親水性ポリウレタン樹脂に紫外線を照射して、親水性ポリウレタン樹脂の耐光堅牢度の等級を判定した。
7)燃焼性試験
JIS L1091 A−1(45℃ミクロバーナー法)により防炎性能を測定し、A−1法区分3に合格するか評価した。
【0031】
(親水性ポリウレタン樹脂溶液)
実施例中で用いた親水性ポリウレタン樹脂溶液には、硬化した際にエーテル系親水性ポリウレタン樹脂になる分子量約2000のポリエチレンエーテルグリコールとエチレングリコールとを固形分換算で30質量%含有させた。また、架橋剤として、水添加4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートを含有させた。これらの成分から得られるエーテル系親水性ポリウレタン樹脂中のオキシエチレン基含有量は53質量%であり、鎖伸長剤含有量は10質量%であった。また、硬化して得られたエーテル系親水性ポリウレタン樹脂の水膨潤度は85%であった。親水性ポリウレタン樹脂溶液の有機溶剤は、トルエン:メチルエチルケトン:第2ブチルアルコール:ジメチルホルムアミド=40:28:30:2の混合溶媒であった。
(バインダー樹脂溶液)
実施例中で用いたバインダー樹脂溶液は、オキシエチレン基を25質量%含有するポリエステルエーテル系2液型ウレタン樹脂(固形分50%)を含有するものであり、トルエン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドの混合溶媒中の溶液であった。
【0032】
(実施例1)
延伸PTFE膜(気孔率92%、厚み50μm)の片面に、グラビアコータを用いて、ポリエステルエーテル系2液型ウレタン樹脂(固形分50%)100部と、脂肪族系イソシアネート12部と、トルエン55部と、触媒0.5部と含むバインダー樹脂溶液を塗布した。引き続き、ポリエステル平織物(タテ糸、ヨコ糸とも83dtex、72フィラメント。タテ密度×ヨコ密度 111本×90本/2.54cm。目付75g/m2)を定法により精練、減量加工し、分散染料で赤色に染色し、アサヒガードAG710(フッ素系撥水剤、旭硝子(株)製)3質量%水溶液を用いて撥水処理を施した繊維布帛を、バインダー樹脂溶液上に重ね合わせて、延伸PTFE膜と貼り合せた。
次いで、この延伸PTFE膜のもう一方の片面上に、エーテル系ポリウレタン樹脂(固形分30%)100部と、脂肪族系イソシアネート1部とを含む親水性ポリウレタン樹脂溶液(5000cps)をパイプコータにより塗布した。次いで、130℃、40秒で乾燥した後、30℃で24時間エージングして無孔質層を22g/m2 で形成させた。このときの含浸層の厚みは10μmであった。
次いで、アサヒガードAG5690(フッ素系撥水剤、旭硝子(株)製)を用いて撥水処理を施し、140℃で30秒間仕上セットして透湿性防水シートを得た。得られた透湿性防水シートの評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(実施例2)
延伸PTFE膜(気孔率92%、厚み50μm)の片面に、グラビアコータを用いて実施例1と同じバインダー樹脂溶液を塗布した。引き続き、ポリエステル平織物(タテ糸、ヨコ糸とも83dtex、72フィラメント。タテ密度×ヨコ密度 111本×90本/2.54cm。目付75g/m2)を定法により精練、減量加工し、分散染料で赤色に染色し、アサヒガードAG710の3質量%水溶液を用いて撥水処理を施した繊維布帛を、バインダー樹脂溶液上に重ね合わせて、延伸PTFE膜と貼り合せた。
次いで、この延伸PTFE膜のもう一方の片面上に実施例1と同じ親水性ポリウレタン樹脂溶液(5000cps)を、パイプコータにより塗布した。次いで、130℃、40秒で乾燥した後、30℃で24時間エージングして無孔質層を22g/m2 で形成させた。このときの含浸層の厚みは10μmであった。
次いで、親水性ポリウレタン樹脂の表面に、グラビアコータにより実施例1と同じバインダー樹脂溶液を点状に塗布した。次いで、バインダー樹脂の上から、ポリエステルハーフトリコット(糸 22dtex、7フィラメント、目付3075g/m2)を120℃×150Pa(1.5kgf/cm2)で重ねて、貼り合せた。
次いで、アサヒガードAG5690を用いて撥水処理を施し、140℃で30秒間仕上セットして透湿性防水シートを得た。得られた透湿性防水シートの評価結果を表1に記した。
【0035】
(実施例3)
親水性ポリウレタン樹脂溶液の中にマット剤としてシリカを5質量部添加した以外は、実施例1と同様にして透湿性防水シートを得た。その透湿性防水シートの評価結果を表1に記した。
【0036】
(実施例4)
親水性ポリウレタン樹脂溶液をグラビアコータにて延伸PTFE膜に塗布した以外は実施例1と同様にして透湿性防水シートを得た。含浸層の厚みは、親水性ポリウレタン樹脂がほとんどない場所から5μm程度でばらついていた。得られた透湿性防水シートの評価結果を表1に記載した。
【0037】
(実施例5)
実施例1と同様にして、繊維布帛と延伸PTFE膜とを貼り合せた。
次いで、離型紙上に実施例1と同様の親水性ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、120℃にて乾燥して、親水性ポリウレタン樹脂膜(10g/m2、厚み10μm)を得た。次いで、実施例1で用いたバインダー樹脂溶液をグラビアコータにより親水性ポリウレタン樹脂の片面に塗布し、120℃で乾燥し、このバインダー樹脂の上に、先の繊維布帛と延伸PTFE膜を貼り合せたシートの延伸PTFE膜表面を重ね、熱プレスロールを用いて120℃、150kPa(1.5kgf/m2)で貼り合せた。
次いで、アサヒガードAG5690を用いて撥水処理を施し、140℃で30秒間仕上セットして透湿性防水シートを得た。得られた透湿性防水シートの評価結果を表1に記した。
【0038】
(実施例6)
延伸PTFE膜(気孔率92%、厚み50μm)にグラビアコータを用いて、エーテル系2液型ウレタン樹脂(固形分50%)100部と、脂肪族系イソシアネート1部と、トルエン55部と、触媒0.5部を含むバインダー樹脂溶液を付与した。引き続き、アラミド平織物(タテ糸、ヨコ糸とも40番/単糸。タテ密度×ヨコ密度 56本×54本/2.54cm)を定法により精練、減量加工し、分散染料で赤色に染色した繊維布帛を、バインダー樹脂溶液上に重ねて、延伸PTFE膜に貼り合せた。
次いで、この延伸PTFE膜の、繊維布帛が貼り合わされていない面に、エーテル系ポリウレタン樹脂(固形分30%)100部と、脂肪族系イソシアネート1部と、防炎剤(デカブロモジフェニルエーテル、三酸化アンチモン=8:2)8部とを含む親水性ポリウレタン樹脂溶液(5000cps)をパイプコータにより塗布した。次いで、130℃、40秒にて乾燥した後、30℃で24時間エージングして無孔質層を22g/m2で形成させた。このときの含浸層の厚みは10μmであった。
次いで、アサヒガードAG5690(フッ素系撥水剤、旭硝子(株)製)を用いて撥水処理を施し、140℃で30秒間仕上セットして透湿性防水シートを得た。得られた透湿性防水シートの評価結果を表1に記した。
【0039】
実施例1〜6の透湿性防水シートは、連続多孔質PTFE膜の中に、親水性ポリウレタン樹脂を含む無孔質層が形成されているから、透湿性および防水性がともに優れていた。また、親水性ポリウレタン樹脂が水添加4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートにより架橋されていたから、窒素酸化物、光に対する耐性に優れていた。さらに、実施例6では、燃焼性が小さかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明の透湿性防水シートでは、連続多孔質膜の上および/または中に無孔質層が形成されているので、防水性を向上させることができる。しかも、無孔質層は、分子間に水を通過させることができる親水性ポリウレタン樹脂を含んでいるので、透湿性の低下を防止できる。したがって、透湿性防水シートは、透湿性と防水性とが共に優れている。
また、連続多孔質膜の上および/または中に無孔質層が形成されており、連続多孔質膜が無孔質層によって強固に補強されるので、連続多孔質膜に外力がかかっても、孔がつぶれにくい上に、膜が裂けにくい。したがって、外力による透湿性の低下を防止できる。なお、この効果は、特に外力に弱いPTFE膜において顕著に発揮される。
また、連続多孔質膜中に無孔質層が形成されているので、少なくとも片方の面からの孔への異物や洗剤の侵入を防止できる。したがって、異物や洗剤による透湿性、防水性の低下を防止できる。
また、親水性ポリウレタン樹脂が特定の架橋剤により架橋しているため、親水性ポリウレタン樹脂の持つ欠点である分解による耐久性の低下、窒素酸化物や光による黄変を防ぐことができる。
【0041】
本発明の透湿性防水シートの製造方法では、親水性ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、乾燥して無孔質層を形成させるので、連続多孔質膜の上および/または中に、親水性ポリウレタン樹脂を含有する無孔質層を容易に形成させることができる。特に、孔の中に大きな圧力をかけなくても、親水性ポリウレタン樹脂を含浸させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の透湿性防水シートの一例を示す断面図である。
【図2】 本発明の透湿性防水シートの他の例を示す断面図である。
【図3】 本発明の透湿性防水シートの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
11 連続多孔質膜
12 無孔質層
13,14,15,16,21,22 透湿性防水シート
17 含浸層
Claims (11)
- 連続多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の少なくとも片面上および/または膜中に、親水性ポリウレタン樹脂を含む無孔質層が形成されており、
前記親水性ポリウレタン樹脂が、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1つによって架橋されており、
窒素酸化物に対する堅牢度が、3級以上であり、かつ、耐光堅牢度が、3級以上であることを特徴とする透湿性防水シート。 - 前記連続多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜は、気孔率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の透湿性防水シート。
- 前記親水性ポリウレタン樹脂は、水膨潤度が20%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の透湿性防水シート。
- 前記無孔質層は、1〜100g/m2 の範囲で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透湿性防水シート。
- 前記連続多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜中に無孔質層が形成されている場合、その厚みは5〜100μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透湿性防水シート。
- 繊維布帛を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透湿性防水シート。
- 酢酸カリウム法による透湿度が、10000g/(m2・24時間)以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透湿性防水シート。
- 耐水度が、10000mm以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透湿性防水シート。
- 洗濯100回後の耐水圧保持率が、70%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の透湿性防水シート
- 連続多孔質テトラフルオロエチレン膜の少なくとも片面に、粘度が1000〜10000cpsの親水性ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、乾燥して無孔質層を形成させる透湿性防水シートの製造方法であって、
前記親水性ポリウレタン樹脂溶液が、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1つを、親水性ポリウレタン樹脂を架橋している架橋剤として含有することを特徴とする透湿性防水シートの製造方法。 - 連続多孔質テトラフルオロエチレン膜の片面に繊維布帛を貼り合わせ、連続多孔質テトラフルオロエチレン膜のもう一方の片面に、粘度が1000〜10000cpsの親水性ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、乾燥して無孔質層を形成させる透湿性防水シートの製造方法であって、
前記親水性ポリウレタン樹脂溶液が、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1つを、親水性ポリウレタン樹脂を架橋している架橋剤として含有することを特徴とする透湿性防水シートの製造方法。
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