JP3908929B2 - 半導体ウエハ加工用粘着シート及びそれに用いる粘着剤組成物 - Google Patents

半導体ウエハ加工用粘着シート及びそれに用いる粘着剤組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体、回路、各種プリント基板、各種マスク、リードフレームなどの微細加工部品の製造の際に表面保護や破損防止のために使用される低汚染性の半導体ウエハ加工用粘着シートに関する。特に半導体ウエハの裏面研削時やダイシング時に使用される半導体ウエハ加工用粘着シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体、回路、各種プリント基板、各種マスク、リードフレームなどの微細加工部品の製造の際に、表面保護や破損防止のために再剥離用粘着シート類が使用されている。これに使用される再剥離用粘着シート類には、被着体が粘着剤組成物に起因する有機物やパーティクル等で汚染されない非汚染タイプであることが要求される。従来このような用途には、溶剤型のアクリル系粘着剤が用いられてきたが、これら溶剤型アクリル系粘着剤は有機溶媒中で合成されるため、塗工時の溶剤の揮発が環境的に問題があり、水分散型のアクリル系粘着剤への転換が図られている。しかしながら水分散型アクリル系粘着剤は、溶剤型のアクリル系粘着剤に比べ、乳化剤を使用するため低汚染性を達成することは困難であった。
【0003】
また特に半導体集積回路の加工用途において用いられる半導体ウエハ加工用粘着シートにおいては、この非汚染の特性は重要である。通常、半導体集積回路は、高純度シリコン単結晶などをスライスしてウエハとしたのち、ウエハ表面にICなどの所定の回路パターンをエッチング形成して集積回路を組み込み、ついでウエハ裏面を研削機により研削して、ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くし、最後にダイシングしてチップ化することにより製造されている。ここで、上記研削時には、ウエハ表面に粘着シートを貼り付けて、ウエハの破損を防止したり、研削加工を容易にしている。また、上記ダイシング時には、ウエハ裏面側に粘着シート類を貼り付けて、ウエハを接着固定した状態でダイシングし、形成されるチップをフィルム基材側よりニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。
【0004】
このような目的で用いられる半導体ウエハ加工用粘着シートは、研削加工やダイシング加工中に剥離しない程度の粘着力が必要である一方、研削加工後や、ダイシング後のピックアップ時には容易に剥離でき、また半導体ウエハを破損しない程度の低い粘着力であることが要求され、さらにウエハ表面やウエハ裏面に糊残りを生じず、これらの面を汚染しないものであることが必要である。特に近年、半導体集積回路の高密度化および高性能化等に伴い、半導体ウエハおよびそれから得られる半導体チップの回路面に対する汚染の管理が厳しくなってきている。そのため、ウエハ加工用粘着フィルムには従来に増してより低汚染性が求められるようになっている。
【0005】
さらにウエハ表面の汚染物は、ワイヤーボンディングのシェア強度へ影響を与えることが知られている。すなわち半導体チップを製造する際に行われるワイヤーボンディングにおいては、ボールとパッド間の接着強度が高いことが要求されるが、ウエハ上のアルミ表面に付着した有機物やパーティクルは、金ワイヤーのアルミ表面への接着を阻害する要因となり、アルミ表面に多量の汚染物質が付着すると、ワイヤーボンディングシェア強度が低下するという問題が発生する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題に鑑み、水系で塗工できる水分散型の粘着剤を実現し、特に半導体ウエハ加工用粘着シートとして好適に用いることのできる被着体表面への汚染が少ない半導体ウエハ加工用粘着シートを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、アクリルエマルション系重合体の重合条件およびその物性値を選ぶことで、粘着シートをアルミ蒸着ウエハに貼付し、40℃、24時間保存後に再剥離した場合に、アルミ蒸着ウエハ上の炭素原子の増加量が5atomic%以下であり、かつ当該粘着シートを4インチミラーウエハに貼付し、23℃、1時間保存後に再剥離した場合に、ミラーウエハ上の0.28μm以上のパーティクル数が25個/4インチウエハ以下であるという従来にない低汚染性の半導体ウエハ加工用粘着シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー混合物と、ラジカル重合性官能基を含みエチレンあるいはプロピレンオキサイド平均付加モル数が15以下のノニオンアニオン系反応性乳化剤と、レドックス系重合開始剤によるエマルション重合により得られるアクリルエマルション系重合体を主成分とするゲル分率が90%以上の粘着剤組成物を粘着剤層として支持体上に設けてなり、被着体に貼着後再剥離する半導体ウエハ加工用粘着シートであって、当該粘着シートをアルミ蒸着ウエハに貼付し、40℃、24時間保存後に再剥離した場合に、アルミ蒸着ウエハ上の炭素原子の増加量が5atomic%以下であり、かつ当該粘着シートを4インチミラーウエハに貼付し、23℃、1時間保存後に再剥離した場合に、ミラーウエハ上の0.28μm以上のパーティクル数が25個/4インチウエハ以下である(請求項1)ことを特徴とする半導体ウエハ加工用粘着シートに係るものである。
【0009】
また本発明は上記半導体ウエハ加工用粘着シートに用いる粘着剤組成物であって、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー混合物と、ラジカル重合性官能基を含みエチレンあるいはプロピレンオキサイド平均付加モル数が15以下のノニオンアニオン系反応性乳化剤と、レドックス系重合開始剤によるエマルション重合により得られるアクリルエマルション系重合体を主成分とし、ガラス転位温度が−50〜0℃であり、23℃における貯蔵弾性率が2.0×105〜3.0×106Paであり、ゲル分率が90%以上であることを特徴とする粘着剤組成物(請求項2)に係るものである。
【0010】
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー混合物と、ラジカル重合性官能基を含みエチレンあるいはプロピレンオキサイド平均付加モル数が15以下のノニオンアニオン系反応性乳化剤と、レドックス系重合開始剤によるエマルション重合により得られるアクリルエマルション系重合体を主成分とするゲル分率が90%以上の粘着剤組成物を粘着剤層として支持体上に設けてなり、被着体に貼着後再剥離する半導体ウエハ加工用粘着シートであって、当該粘着シートをアルミ蒸着ウエハに貼付し、40℃、24時間保存後に再剥離した場合に、アルミ蒸着ウエハ上の炭素原子の増加量が5atomic%以下であり、かつ当該粘着シートを4インチミラーウエハに貼付し、23℃、1時間保存後に再剥離した場合に、ミラーウエハ上の0.28μm以上のパーティクル数が25個/4インチウエハ以下である半導体ウエハ加工用粘着シートである。
【0012】
ここでアルミ蒸着ウエハへの炭素原子の増加量は、アルミ蒸着ウエハに評価用の粘着シートを貼り合わせた後、40℃で1日放置後、粘着シートを剥離したものを、アルバックファイ社製ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用い、アルミ蒸着ウエハに転写した有機物の炭素原子のatomic%を測定し、シートを貼り付けていないアルミ蒸着ウエハからの増加量を評価したものである。
【0013】
またパーティクル数の測定は、クリーンルーム内でミラーウエハに評価用の粘着シートを貼り合わせた後、23℃、60%RHで1時間放置後、粘着シートを剥離したものを、ミラーウエハ面の0.28μm以上のパーティクル数をレーザー表面検査装置にて評価したものである。
【0014】
本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートは上記条件により測定されたアルミ蒸着ウエハ上の炭素原子の増加量が5atomic%以下であることを特徴とするが、特に本粘着シートを半導体ウエハ加工用粘着シートのような極端に被着体汚染を嫌うような用途に用いる場合は、アルミ蒸着ウエハ上の炭素原子の増加量が4atomic%以下、更には3atomic%以下であることが好ましい。これにより例えば半導体チップの製造時に行われるワイヤーボンディングにおいてワイヤーボンディングシェア強度が低下するというような不具合を防ぐことができる。
【0015】
さらにミラーウエハ上に残存した0.28μm以上のパーティクル数が25個/4インチウエハ以下とすることを特徴とし、好ましくは20個/4インチウエハ以下、更にこのましくは18個/4インチウエハ以下であることが望ましい。通常、ウエハ上の炭素原子の増加量とパーティクル数は同様の増加傾向を示すが、汚染物の種類によっては異なる傾向を示す場合もあって、両方の特性に優れることが望ましい。
【0016】
本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー混合物と、ラジカル重合性官能基を含みエチレンあるいはプロピレンオキサイド平均付加モル数が15以下のノニオンアニオン系反応性乳化剤と、レドックス系重合開始剤によるエマルション重合により得られるアクリルエマルション系重合体を主成分とする、ガラス転位温度が−50〜0℃であり、23℃における貯蔵弾性率が2.0×105〜3.0×106Paであり、ゲル分率が90%以上である粘着剤組成物を粘着剤層として支持体上に設けることにより製造することができる。
【0017】
本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートにおいて用いられる粘着剤組成物は、アクリルエマルション系重合体を主成分とするものであって、主モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルと必要に応じてこれら主モノマーと共重合可能な他のモノマーをエマルション重合して得られる重合体を用いることができる。
【0018】
本発明において主モノマーとして用いられる(メタ)アクリル酸のアルキルエステル系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシルなどがあげられる。
【0019】
本発明においては上記主モノマーの他に、必要に応じてエマルション粒子の安定化、粘着剤層の基材への密着性の向上、また被着体への初期接着性の向上などを目的として、共重合性モノマーを併用してもよい。この共重合性モノマーは、全モノマー混合物中60重量%以下、好ましくは25重量%以下の範囲で、各モノマーの種類に応じて適宜その使用量を選択できる。
【0020】
本発明において用いられる共重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどがあげられる。
【0021】
また本発明においては、後述する粘着剤組成物のゲル分率を調整するために、アクリルエマルション系重合体を重合する際に多官能モノマー成分を共重合することができる。多官能モノマーとしてはジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジビニルベンゼンなどがあげられる。
【0022】
本発明においては、上記モノマー混合物に重合開始剤および乳化剤などを加え、通常のエマルション重合方法を用いてアクリルエマルション系重合体を合成する。エマルション重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合など任意の方法を用いることができ、その方法は特に限定されるものではない。またその時の重合温度は、5〜100℃程度の範囲内で用いる開始剤に応じた任意の温度で行なうことができる。
【0023】
本発明において用いることのできる乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などを併用することができるが、特に一分子中にプロペニル基、アリルエーテール基などのラジカル重合性官能基を導入した反応性乳化剤を用いることが、ウエハへの有機物汚染量が減少しより望ましい。これらの乳化剤の中から、1種または2種以上が用いられる。
【0024】
さらに上記反応性乳化剤においても、エチレンあるいはプロピレンオキサイド平均付加モル数が15以下、好ましくは13以下のノニオンアニオン系反応性乳化剤であることが望ましい。エチレンあるいはプロピレンオキサイド平均付加モル数が15を超えると、ウエハへの有機物汚染量が増加する場合がある。このような反応性乳化剤としては、旭電化工業(株)製『アデカソープSE−10N』(エチレンオキサイド平均付加モル数10)、第一工業製薬(株)製「アクアロンHS−10」(エチレンオキサイド平均付加モル数10)、「アクアロンHS−05」(エチレンオキサイド平均付加モル数5)などが賞用される。
【0025】
特に本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートは、粘着剤組成物中の不純物イオンが問題となる場合があるため、不純物イオンを取り除きSO4 2-イオン濃度が100μg/g以下の乳化剤を用いることが望ましい。また、アニオン系の場合、アンモニウム塩乳化剤を用いることが望ましい。不純物イオンを取り除く方法としては、イオン交換樹脂法、膜分離法、アルコールを用いた不純物の沈殿ろ過法など適宜な方法を用いることができる。
【0026】
本発明において、乳化剤の配合量は全モノマー混合物100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部程度である。乳化剤の配合量が5重量部を超えると粘着剤の凝集力が低下して被着体への汚染量が増加し、また乳化剤自身による汚染も起こる場合がある。また乳化剤の配合量が0.1重量部未満では安定した乳化が維持できない場合があり、いずれも好ましくない。
【0027】
重合開始剤としては、たとえば、2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2´‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´‐アゾビス(N,N´‐ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t‐ブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物系や、過酸化水素水とアスコルビン酸、過酸化水素水と塩化第一鉄、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドックス系重合開始剤などが挙げられる。
【0028】
本発明において重合開始剤は、ウエハへの有機物汚染量の減少に特に効果があることからレドックス系重合開始剤を用いる方が望ましい。この理由については明確ではないが、レドックス系重合開始剤を用いることで高分子量体が得られやすく低分子量成分が少ないことに起因していると推定される。また粘着シートにて不純物イオンが問題となる場合には、イオン成分を含まない開始剤を用いることが要求され、例えば過酸化水素水とアスコルビン酸などの組合せなどが好適に使用される。また、レドックス系重合開始剤を用いる場合は、重合温度は50℃以下、好ましくは30℃以下とすることが望ましい。
【0029】
これらの重合開始剤は、その種類やアクリルモノマーの種類に応じて、その使用量が決定されるが、通常は、全モノマー混合物100重量部あたり、0.02〜0.5重量部の範囲で使用するのが望ましい。
【0030】
本発明においては、アクリルポリマーの分子量を調整するために連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、たとえばラウリルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが挙げられ、その目的、用途に応じて1種または2種以上が用いられる。
【0031】
さらに本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートに用いられる粘着剤組成物は、ガラス転位温度が−50〜0℃であり、23℃における貯蔵弾性率が2.0×105〜3.0×106Paであり、ゲル分率を90%以上とすることが望ましい。これら物性値は用いるモノマー混合物の種類とその組合せにより調整されるものであり、従って得られる粘着剤組成物の各物性値が上記特定範囲内となるよう上記主モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルと主モノマーと共重合可能な他のモノマーの組合せを選択することができる。また本発明においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物のガラス転位温度は、好ましくは−30〜−2℃、更に好ましくは−20〜−5℃であり、かつ23℃における貯蔵弾性率は、好ましくは2.5×105〜1.0×106Pa、更に好ましくは3.0×105〜8.0×105Paとすることが望ましい。ガラス転移温度が0℃を超える場合および貯蔵弾性率が3.0×106Paを超える場合は、被着体への接着性が低下する場合があり、一方ガラス転移温度が−50℃未満および貯蔵弾性率が2.0×105Pa未満では被着体への汚染物の転写が増加する場合があって、いずれも好ましくない。さらに貯蔵弾性率が3.0×106Paを超えると、エマルション粒子間の融着が不十分となる場合があり、被着体へ転写するパーティクル数が増加する傾向にある。
【0032】
また本発明においては、粘着剤組成物のゲル分率は90%以上、好ましくは95%以上(通常99%以下)に調整されることが望ましい。ゲル分率が90%未満では、被着体への汚染物の転写が増加する場合がある。
【0033】
なお本発明において、粘着剤のゲル分率は、試料約0.1gをサンプリングして精秤し、これを約50mlの酢酸エチル中に室温で1週間浸漬したのち、溶剤不溶分を取り出し、130℃で約1時間乾燥して、秤量することより、上記ゲル分率(重量%)=[(浸漬・乾燥後の重量)/試料の重量]×100として算出されるものである。
【0034】
また本発明においては粘着剤組成物のゲル分率を調整するため、前述したアクリルエマルション系重合体を重合する際に多官能モノマー成分を共重合する方法以外に、架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、多官能のエポキシ系架橋剤やイソシアネ―ト系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤などが挙げられる。ここでいう多官能性とは2官能性以上のことである。これらの架橋剤は、アクリル系共重合体の組成や分子量などに応じて、粘着剤のゲル分率が前記範囲となる使用割合で、その1種または2種以上が用いられる。
【0035】
さらに本発明においては、粘着剤組成物のゲル分率を調整するため、支持体上に粘着剤層を設けた後、これに放射線を照射して硬化処理して、粘着剤のゲル分率を増大させることもできる。放射線には、活性エネルギー線として、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが用いられる。放射線の照射線量は、ゲル分率が後述する所定の範囲内になるよう調整すればよいが、電離性放射線は通常20Mrad以下、好ましくは10Mrad以下、紫外線は通常3000mJ/cm2以下とするのがよい。照射線量が多すぎると、基材の劣化が懸念される。
【0036】
なお、紫外線を照射する場合、使用する紫外線は180〜460nmの波長範囲のものが好ましく、その発生源には、水銀ランプ、メタハライドランプを使用するのが好ましい。また、紫外線を照射して硬化処理する際には、あらかじめ粘着剤組成物中に光反応開始剤(光増感剤)を含ませておくのがよい。光反応開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ジベンジル、ベンジルジメチルケタールなどを挙げることができる。
【0037】
本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートは、このような水分散型アクリル系粘着剤組成物を支持体上に設けてシート状やテープ状などの形態としたもので、粘着剤の保護のためにその上に剥離フィルムを積層しておくのが望ましい。粘着剤層の厚さは、5〜100μm、好ましくは10〜40μm程度である。
【0038】
支持体としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂などのプラスチックフィルムや、金属箔などが用いられる。これらの支持体は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよく、また片面または両面に粘着剤層の密着力の向上等を目的にコロナ処理やプラズマ処理等の物理的処理、下塗り剤等の化学的処理などを適宜な表面処理を施したものであってもよい。この支持体の厚さとしては、50〜300μm、好ましくは70〜200μm程度であるのがよい。
【0039】
また、本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートは巻回体とすることができ、剥離フィルムで粘着剤を保護した状態でロール状に巻き取ることができる。また剥離フィルムを用いない場合、粘着シートの背面にはシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル系剥離剤などの剥離処理剤により背面処理を施してもかまわない。
【0040】
特に本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートは、支持体としてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系フィルム、2軸延伸ポリプロピレン、低密度ポリエチレンなどのポリオレフィン系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、およびこれらのフィルムを含む多層フィルムなどを用いることが好ましい。
【0041】
このようにして得られる半導体ウエハ加工用粘着シートは、これまでにない低汚染性の再剥離型粘着シートであって半導体ウエハ加工用粘着シートとして好適に用いることができる。
【0042】
評価試験
実施例、比較例で得た粘着シートについて、以下の試験を行った。
【0043】
ガラス転位温度
レオメトリック社製動的粘弾性測定装置『ARES』を用いて、サンプル厚さ約1.5mmで、φ7.9mmパラレルプレ−トの治具を用い、周波数1Hz、昇温速度5℃/分にて測定し、得られた損失弾性率のピーク点の温度をガラス転位温度とした。
【0044】
貯蔵弾性率
レオメトリック社製動的粘弾性測定装置『ARES』を用いて、サンプル厚さ約1.5mmで、φ7.9mmパラレルプレ−トの治具を用い、周波数1Hz、昇温速度5℃/分にて測定した。
【0045】
対ウエハ有機物汚染
シート片をアルミ蒸着ウエハ(12〜13atomic%)に日東精機(株)社製テープ貼り合せ機『DR8500』にて貼付け(貼り付け圧力:2MPa、貼り付け速度12m/分)、40℃中に1日放置後、テープ片を日東精機(株)社製テープ剥離機『HR8500』にて剥離し(剥離速度12m/分、剥離角度180度)、ウエハ上に転写した有機物をアルバックファイ社製ESCA『model5400』を用いて測定した。全くシートを貼り付けていないウエハも同様に分析し、検出された炭素原子のatomic%の増加量により有機物の転写量を評価した。
【0046】
パーティクル数
クリーンルーム内でセパレーターを剥離してその粘着剤層を介してシート片を4インチミラーウエハーに接着して23℃で1時間放置した後、シート片を剥離速度12m/分、剥離角度180度で剥離し、ミラーウエハ面における0.28μm以上のパーティクル数を日立電子エンジニアリング(株)社製レーザー表面検査装置『LS−5000』にて評価した。
【0047】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、水180部、アクリル酸エチル98部、アクリル酸2部およびエーテルサルフェート型の反応性ノニオンアニオン系界面活性剤である旭電化工業(株)製『アデカソープSE−10N』(エチレンオキサイド平均付加モル数10)をアルコール沈殿ろ過により精製し不純物SO4 2-イオン濃度を560μg/gから70μg/g以下とした乳化剤2部を乳化機で乳化し得られたエマルジョン溶液を仕込み、撹拌下1時間窒素置換した。ここに、過酸化水素水(30重量%含有)0.1部を加えた後、アスコルビン酸0.5部および水20部からなるアスコルビン酸水溶液を20℃で2時間かけて滴下し、20℃で2時間熟成を行なった。その後、10%のアンモニア水で中和してアクリル重合体Aを作製した。
【0048】
アクリル重合体A100部にエポキシ系架橋剤2部を添加してなるアクリル粘着剤をポリオレフィンフィルム(厚さ60μm)の片面に塗工乾燥させ、厚さ15μmの粘着剤層を形成し、粘着剤層面にコロナ放電式で表面酸化処理をしたエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(厚さ135μm)を貼り合せ、粘着剤層を転写し粘着シートを得た。
粘着剤層の、ガラス転位温度は−12℃、23℃における貯蔵弾性率は3.7×105Pa、ゲル分率は99%であった。
【0049】
実施例2
モノマーをアクリル酸n−ブチル40部、メタクリル酸n−ブチル58部、アクリル酸2部とした以外は、実施例1と同様の処方にてアクリル重合体Bを作製した。続いて、実施例1と同様の処方にて粘着テープを作製した。
粘着剤層のガラス転位温度は−19℃、23℃における貯蔵弾性率は3.4×105Pa、ゲル分率は98%であった。
【0050】
実施例3
乳化剤を反応性ノニオンアニオン系界面活性剤である第一工業製薬(株)製『アクアロンHS−10』(エチレンオキサイド平均付加モル数10)をアルコール沈殿ろ過により精製し不純物SO4 2-イオン濃度を850μg/gから70μg/g以下とした乳化剤2部とした以外は、実施例1と同様の処方にてアクリル重合体Cを作製した。続いて、実施例1と同様の処方にて粘着テープを作製した。
粘着剤層のガラス転位温度は−12℃、23℃における貯蔵弾性率は3.7×105Pa、ゲル分率は98%であった。
【0051】
実施例4
乳化剤を反応性ノニオンアニオン系界面活性剤である第一工業製薬(株)製『アクアロンHS−05』(エチレンオキサイド平均付加モル数5)をアルコール沈殿ろ過により精製し不純物SO4 2-イオン濃度を900μg/gから70μg/g以下とした乳化剤2部とした以外は、実施例1と同様の処方にてアクリル重合体Dを作製した。続いて、実施例1と同様の処方にて粘着テープを作製した。
粘着剤層のガラス転位温度は−12℃、23℃における貯蔵弾性率は3.7×105Pa、ゲル分率は98%であった。
【0052】
比較例1
モノマーをアクリル酸2−エチルヘキシル98部、アクリル酸2部とした以外は、実施例1と同様の処方にてアクリル重合体Cを作製した。続いて、実施例1と同様の処方にて粘着テープを作製した。
粘着剤層のガラス転位温度は−67℃、23℃における貯蔵弾性率は1.0×105Pa、ゲル分率は98%であった。
【0053】
比較例2
モノマーをメタアクリル酸2−エチルヘキシル98部、アクリル酸2部とした以外は、実施例1と同様の処方にてアクリル重合体Dを作製した。続いて、実施例1と同様の処方にて粘着テープを作製した。
粘着剤層のガラス転位温度は4℃、23℃における貯蔵弾性率は1.1×107Pa、ゲル分率は98%であった。
【0054】
比較例3
エポキシ系架橋剤を0.1部添加した以外は実施例1と同様の処方にて粘着テープを作製した。
粘着剤層のガラス転位温度は−12℃、23℃における貯蔵弾性率は3.7×105Pa、ゲル分率は85%であった。
【0055】
比較例4
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、水180部、アクリル酸エチル98部、アクリル酸2部およびエーテルサルフェート型の反応性ノニオンアニオン系界面活性剤である旭電化工業(株)製『アデカソープSE−10N』をアルコール沈殿ろ過により精製し不純物SO4 2-イオン濃度を560μg/gから70μg/g以下とした乳化剤2部を乳化機で乳化し得られたエマルジョン溶液を仕込み、撹拌下1時間窒素置換した。ここに、2,2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン](和光純薬(株)製『VF−057』)0.03部および水3部からなる水溶液を添加し、58℃で5時間重合を行なった。その後、10%のアンモニア水で中和してアクリル重合体Eを作製した。続いて、実施例1と同様の処方にて粘着テープを作製した。
粘着剤層のガラス転位温度は−12℃、23℃における貯蔵弾性率は3.7×105Pa、ゲル分率は98%であった。
【0056】
比較例5
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、水180部、アクリル酸エチル98部、アクリル酸2部およびエーテルサルフェート型の反応性ノニオンアニオン系界面活性剤である旭電化工業(株)製『アデカソープSE−10N』をアルコール沈殿ろ過により精製し不純物SO4 2-イオン濃度を560μg/gから70μg/g以下とした乳化剤2部を乳化機で乳化し得られたエマルジョン溶液を仕込み、撹拌下1時間窒素置換した。ここに、過硫酸アンモニウム0.03部および水3部からなる水溶液を添加し、72℃で5時間重合を行なった。その後、10%のアンモニア水で中和してアクリル重合体Fを作製した。続いて、実施例1と同様の処方にて粘着テープを作製した。
粘着剤層のガラス転位温度は−12℃、23℃における貯蔵弾性率は3.7×105Pa、ゲル分率は98%であった。
【0057】
比較例6
乳化剤を反応性ノニオンアニオン系界面活性剤である第一工業製薬(株)製「アクアロンHS−20」(エチレンオキサイド平均付加モル数20)アルコール沈殿ろ過により精製し不純物SO4 2-イオン濃度を900μg/gから70μg/g以下とした乳化剤2部とした以外は、実施例1と同様の処方にてアクリル重合体Dを作製した。続いて、実施例1と同様の処方にて粘着テープを作製した。粘着剤層のガラス転位温度は−12℃、23℃における貯蔵弾性率は3.7×105Pa、ゲル分率は98%であった。
【0058】
【表1】
Figure 0003908929
【0059】
表1の結果から明らかなように、実施例の粘着シートは対ウエハ有機物汚染増加量が5atomic%以下であって、パーティクル数も25個/4インチウエハ以下であり、被着体表面への汚染が少ない半導体ウエハ加工用粘着シートであることが分かる。これに対し、粘着剤組成物の貯蔵弾性率およびガラス転移温度が低い比較例1では有機物汚染が多く、また粘着剤組成物の貯蔵弾性率およびガラス転移温度が高い比較例2ではパーティクル数が多く、また粘着剤組成物のゲル分率が低い比較例3でも被着体への汚染物が多くなっている。また重合開始剤にアゾ系を用いた比較例4や過硫酸塩を用いた比較例5では、被着体汚染が多くなっている。またエチレンオキサイド付加平均モル数が20の乳化剤を使用した比較例6では、被着体汚染が多くなっている。
【0060】
【発明の効果】
本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートは、水系で塗工できる水系塗工型の粘着剤を実現し、被着体表面への汚染が少ない特性を発揮するものである。このように構成される本発明の低汚染性の半導体ウエハ加工用粘着シートは、特に半導体ウエハの裏面研削時やダイシング時に使用される半導体ウエハ加工用粘着シートとして好適に用いることができ、半導体チップの製造時に行われるワイヤーボンディングにおいてアルミ表面と金ワイヤー間で界面破壊するとがなく、高いシェア強度を維持させることができる。

Claims (2)

  1. (メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー混合物と、ラジカル重合性官能基を含みエチレンあるいはプロピレンオキサイド平均付加モル数が15以下のノニオンアニオン系反応性乳化剤と、レドックス系重合開始剤によるエマルション重合により得られるアクリルエマルション系重合体を主成分とするゲル分率が90%以上の粘着剤組成物を粘着剤層として支持体上に設けてなり、被着体に貼着後再剥離する半導体ウエハ加工用粘着シートであって、当該粘着シートをアルミ蒸着ウエハに貼付し、40℃、24時間保存後に再剥離した場合に、アルミ蒸着ウエハ上の炭素原子の増加量が5atomic%以下であり、かつ当該粘着シートを4インチミラーウエハに貼付し、23℃、1時間保存後に再剥離した場合に、ミラーウエハ上の0.28μm以上のパーティクル数が25個/4インチウエハ以下である半導体ウエハ加工用粘着シート。
  2. 請求項1に記載の半導体ウエハ加工用粘着シートに用いる粘着剤組成物であって、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー混合物と、ラジカル重合性官能基を含みエチレンあるいはプロピレンオキサイド平均付加モル数が15以下のノニオンアニオン系反応性乳化剤と、レドックス系重合開始剤によるエマルション重合により得られるアクリルエマルション系重合体を主成分とし、ガラス転位温度が−50〜0℃であり、23℃における貯蔵弾性率が2.0×105〜3.0×106Paであり、ゲル分率が90%以上であることを特徴とする粘着剤組成物。
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