JP2008056744A - 再剥離用水分散型アクリル系粘着シート - Google Patents

再剥離用水分散型アクリル系粘着シート Download PDF

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Abstract

【課題】 ウエハ破損を防止でき、また、低汚染性と耐水侵入性とを両立でき、さらに、ウエハの撓みや反りを小さくする再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを提供する。
【解決手段】 本発明は、支持体がウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分として含む複合フィルム、及びその他のフィルムから構成される多層シートであり、粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とし、他のモノマー成分としてカルボニル基含有モノマーを全モノマー成分100重量部に対して0.5〜10重量部有するモノマー混合物をエマルション重合することにより得られ、ガラス転移温度が−80〜−20℃であるアクリルエマルション系重合体を主成分として含み、且つヒドラジン架橋剤を含む水分散型アクリル系粘着剤組成物であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、使用時又は使用終了時に粘着シートの剥離を伴うような各種用途、例えば、各種工業部材、特に半導体、回路、各種プリント基板、各種マスク、リードフレームなどの微細加工部品の製造の際に表面保護や破損防止のために用いられる再剥離用水分散型アクリル系粘着シートに関する。
光学産業や半導体産業においては、レンズ等の光学部品や半導体ウエハ等の半導体製品を精密加工する際に再剥離用粘着シートが使用されている。例えば半導体チップの製造工程では、IC回路等の所定の回路パターンを形成した半導体ウエハの裏面を研磨して所定の厚さにした後、個々のチップに切断するダイシング工程へ搬送されるが、半導体ウエハ自体が肉薄で脆く、また回路パターンには凹凸があるので、研磨工程やダイシング工程への搬送時に外力が加わると破損しやすい。また、研磨加工工程において、生じた研磨屑を除去したり、研磨時に発生した熱を除去するために精製水によりウエハ裏面を洗浄しながら研磨処理を行っており、この研削水等によって回路パターン面等が汚染されることを防ぐ必要がある。このため、回路パターン面等を保護し、半導体ウエハの破損を防止するために、回路パターン面に再剥離用粘着シートを貼着して作業することが行われている。このような再剥離用粘着シートとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の基材シートに粘着剤層を有する再剥離用粘着シートが知られている。
しかし、近年、回路パターン面の凹凸の高低差が大きくなっており、またチップの小型化に伴い、半導体ウエハには厚みが100μm以下の薄型化が要求されるようになっている。
このような半導体ウエハに対して、回路パターン面等を保護し、破損を防止するための再剥離用粘着シートとして、例えば、PETのように剛性のある基材を用いた再剥離用粘着シートを使用した場合、薄膜研削した後のウエハの反りに関しては抑制されるが、ウエハ表面の回路パターン面の凹凸に追従できず、粘着剤層とパターン面との間の接着が不十分となり、ウエハ加工時にシートの剥離が生じたり、パターン面へ研削水や異物が入り込んだりする問題があった。また、EVAのような軟質基材を用いた再剥離用粘着シートを用いた場合、パターン面への追従性は問題なかったが、基材の剛性が不足しているので、ウエハ研削後に反りが発生したり、ウエハの自重による撓みが生じたりする問題があった。
そこで、このような問題の解決を図るため、基材として、剛性のあるPET基材と軟質なEVA基材とを貼り合わせた基材を用いることが想定されるが、接着剤を介して機械的に貼着した場合には、張り合わせの際に与えられる応力がフィルム内に残留し、貼り合わせた基材がカールしてしまうという問題があった。また、Tダイ法やカレンダー法等により形成される積層体を基材として用いる場合、厚手の基材(基材フィルム)を得ることが困難であり、製膜する際の熱収縮によって基材(基材フィルム)内に残留応力が発生してしまうという問題があった。このように、残留応力が発生した基材が用いられている再剥離用粘着シートを使用した場合、ウエハ研削時にウエハが破損したり、研削後にウエハに反りが生じたりするという問題があった。また、溶剤塗布法により形成した積層体を基材として用いる場合には、溶剤の使用が環境問題を発生することもあり、さらにまた、厚手のフィルムを得るためには重ね塗りが必要であった。
また、これら分野で使用される再剥離用粘着シート類は、被着体が粘着剤組成物に起因する有機物やパーティクル等で汚染されない非汚染タイプであることが要求される。従来このような用途には、溶剤型のアクリル系粘着剤が用いられてきたが、これら溶剤型アクリル系粘着剤は有機溶媒中で合成されるため、塗工時の溶剤の揮発が環境的に問題があり、水分散型への転換が図られている。しかしながら、水分散型アクリル系粘着剤は溶剤型のアクリル系粘着剤に比べ、乳化剤を使用するため低汚染性を達成することは困難であった。また特に、半導体集積回路の加工用途で用いられる半導体ウエハ加工用粘着シートにおいては、この非汚染の特性は重要である。
また、半導体ウエハのダイシング時には、ウエハ裏面側に粘着シート類を貼り付けて、ウエハを接着固定した状態でダイシングし、形成されるチップをフィルム基材側よりニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。
このような目的で用いられる半導体ウエハ加工用粘着シートは、研削加工やダイシング加工中に剥離しない程度の粘着力が必要である一方、研削加工後や、ダイシング後のピックアップ時には容易に剥離でき、また半導体ウエハを破損しない程度の低い粘着力であることが要求され、さらにウエハ表面やウエハ裏面に糊残りを生じず、これらの面を汚染しないものであることが必要である。特に近年、半導体集積回路の高密度化および高性能化等に伴い、半導体ウエハおよびそれから得られる半導体チップの回路面に対する汚染の管理が厳しくなってきている。そのため、ウエハ加工用粘着フィルムには従来に増してより低汚染性が求められるようになっている。
さらにウエハ表面の汚染物は、ワイヤーボンディングのシェア強度へ影響を与えることが知られている。すなわち半導体チップを製造する際に行われるワイヤーボンディングにおいては、ボールとパッド間の接着強度が高いことが要求されるが、ウエハ上のアルミ表面に付着した有機物やパーティクルは、金ワイヤーのアルミ表面への接着を阻害する要因となり、アルミ表面に多量の汚染物質が付着すると、ワイヤーボンディングシェア強度が低下するという問題が発生する。
一方、研削するウエハにはパターンやダイシングラインなどの凹凸が存在している。粘着シートはその凹凸のあるウエハパターン表面に貼り付けられる。粘着シートがウエハ表面の凹凸を埋めず空へきが存在していたりウエハ表面への接着性が低い場合において、研削時に水が浸入し、ウエハパターン表面を汚染してしまう問題が発生する。
水系で塗工できる水分散型の粘着剤で形成された粘着剤層を有し、特に半導体ウエハ加工用粘着シートとして用いることができる被着体表面への汚染が少ない再剥離用水分散型アクリル系粘着シートがすでに提案されている(特許文献1参照)。しかし、再剥離後の被着体への低汚染性と、ウエハ研削時の高い耐水侵入性を両立し、上記諸問題を解決することは困難であった。
特開2003−82307号公報
従って、本発明の目的は、研磨後の半導体ウエハが薄肉であっても、研削工程中のウエハ破損を防止でき、また、被着体表面への低汚染性とウエハ研削時の高い耐水侵入性とを両立でき、さらに、ウエハ研削後のウエハの撓みを小さくすることができ、さらにまた、粘着シートの残留応力による反りを小さくすることができる再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを用いた半導体ウエハ加工用粘着シートを提供することにある。
本発明者らは上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、支持体上に粘着剤層を有している粘着シートにおいて、支持体として特定の多層シートを用い、且つ粘着剤層を形成する粘着剤組成物として、特定のアクリルエマルション系重合体を主成分とし、ヒドラジン架橋剤を含む水分散型アクリル系粘着剤組成物を用いると、研磨後の半導体ウエハが薄肉であっても、研削工程中のウエハ破損を防止でき、また、被着体表面への低汚染性とウエハ研削時の高い耐水侵入性とを両立でき、さらに、ウエハ研削後のウエハの撓みを小さくすることができ、さらにまた、粘着シートの残留応力による反りを小さくすることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、支持体上に粘着剤層を有している粘着シートであって、支持体がウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分として含有する複合フィルム、及び複合フィルムとは異なる素材から形成されるその他のフィルムから構成される多層シートであり、粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とし、他のモノマー成分としてカルボニル基含有モノマーを全モノマー成分100重量部に対して0.5〜10重量部有するモノマー混合物をエマルション重合することにより得られ、ガラス転移温度が−80〜−20℃であるアクリルエマルション系重合体を主成分として含み、且つヒドラジン架橋剤を含む水分散型アクリル系粘着剤組成物であることを特徴とする再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを提供する。
前記多層シートは、複合フィルムの一方の面に、その他のフィルムを有していることが好ましい。また、前記多層シートにおける粘着剤層と接する面は、複合フィルムにより提供される面であることが好ましい。
さらに、前記多層シートは、複合フィルムの一方の面にその他のフィルムとしての第一フィルムを有し、他方の面にその他のフィルムとしての第二フィルムを有していてもよい。
前記モノマー混合物は、さらに他のモノマー成分として、水酸基含有モノマーを全モノマー成分100重量部に対して1〜15重量部有することが好ましい。
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、0.20〜1.5MPaの引張試験による初期弾性率、1.0〜8.0MPaの最大強度、180〜900%の破断伸び、90%以上のゲル分率を有することが好ましい。
前記アクリルエマルション系重合体は、レドックス系重合開始剤によるエマルション重合により得られるアクリルエマルション系重合体であることが好ましい。
半導体ウエハに貼付・剥離した後に半導体ウエハに転写する有機汚染量は、表面元素比率の炭素換算で8%以下であることが好ましい。
前記再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、半導体ウエハ加工用として用いられることが好ましい。
本発明では、「フィルム」という場合には「シート」を含み、「シート」という場合に「フィルム」を含む概念とする。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートによれば、前記構成を有しているので、研削工程中のウエハ破損を防止でき、また、被着体表面への低汚染性とウエハ研削時の高い耐水侵入性とを両立でき、さらに、ウエハ研削後のウエハの撓みを小さくすることができ、さらにまた、粘着シートの残留応力による反りを小さくすることができる。
[再剥離用水分散型アクリル系粘着シート]
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、支持体の少なくとも一方の面に粘着剤層を有している粘着シートであって、支持体として、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分として含有する複合フィルム、及び複合フィルムとは異なる素材(材料)から形成されるその他のフィルムから構成される多層シート(積層体;積層シート)を使用し、また、粘着剤層を形成する粘着剤組成物として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とし、他のモノマー成分としてカルボニル基含有モノマーを全モノマー成分100重量部に対して0.5〜10重量部有するモノマー混合物をエマルション重合することにより得られ、且つガラス転移温度が−80〜−20℃であるアクリルエマルション系重合体を粘着剤組成物の主成分とし、粘着剤組成物の他の成分としてヒドラジン架橋剤を含む水分散型アクリル系粘着剤組成物が用いられている粘着シートである。なお、支持体としての多層シートにおいて、粘着剤層と接する面は特に制限されず、複合フィルム面であってもよく、その他のフィルム面であってもよい。
また、本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、粘着剤層の粘着面を保護する目的で、粘着剤層上に剥離フィルム(セパレータ)を有していることが好ましい。さらに、支持体と粘着剤層との間に、研削時のウエハ破損防止などのために応力を緩和するような適宜な中間層を有していてもよい。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、シート状、テープ状などの形態を有することができる。なお、ロール状に巻回された状態又は形態の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートとしては、粘着面を剥離フィルム(セパレータ)により保護した状態でロール状に巻回された状態又は形態を有していてもよく、粘着面を支持体の他方の面に形成された剥離処理層(背面処理層)により保護した状態でロール状に巻回された状態又は形態を有していてもよい。なお、支持体の面に剥離処理層(背面処理層)を形成させる際に用いられる剥離処理剤(剥離剤)としては、例えば、シリコーン系剥離剤や長鎖アルキル系剥離剤などが挙げられる。
このような再剥離用水分散型アクリル系粘着シートとしては、例えば、図1や図2で示されているような支持体としての多層シートの一方の面に、粘着剤層を有している再剥離用水分散型アクリル系粘着シート;支持体としての多層シートの両方の面に、粘着剤層を有している再剥離用水分散型アクリル系粘着シートなどが挙げられる。
図1及び図2は、それぞれ、本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートの一例を示す概略断面図であり、図1及び図2において、11は支持体の複合フィルム側に粘着剤層を有しているタイプの再剥離用水分散型アクリル系粘着シート、12は支持体の第一フィルム側に粘着剤層を有しているタイプの再剥離用水分散型アクリル系粘着シート、1は第一フィルム、2は複合フィルム、4は2層タイプの支持体(2層タイプの多層シート)、6は粘着剤層である。図1で示される再剥離用水分散型アクリル系粘着シート11は、複合フィルム2及び第一フィルム1から構成される多層シートを支持体4とし、支持体4の複合フィルム2側の面に、粘着剤層6を有している。また、図2で示される再剥離用水分散型アクリル系粘着シート12は、複合フィルム2及び第一フィルム1から構成される多層シートを支持体4とし、支持体4の第一フィルム1側の面に、粘着剤層6を有している。
(支持体)
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートでは、支持体として、多層シート(積層体;積層シート)が用いられている。支持体として多層シートを用いることで、本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを用いて半導体ウエハ等の被着体を加工する場合、例えば、研磨後の半導体ウエハ薄肉であっても、研削工程中のウエハ破損を防止することができ、また半導体ウエハの撓みを小さくすることができ、さらに粘着シートの残留応力によるウエハの反りを小さくすることができる。
このような多層シートは、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分として含有する複合フィルム、及び複合フィルムとは異なる素材(材料)から形成されるその他のフィルム(例えば、第一フィルムや第二フィルムなど)から構成される多層シートである。なお、支持体としての多層シートにおける層の総数は、特に制限されず、少なくとも2以上であればよい。従って、このような支持体は、2層構造や3層構造、及びそれ以上の多層構造を有する多層シートであってもよい。
このような支持体としての多層シートとしては、例えば複合フィルムの一方の面に、その他のフィルムを有している多層シート(2層タイプ)、複合フィルムの両方の面にその他のフィルムを有している多層シート(3層タイプ)などが挙げられる。
また、支持体としての多層シートにおいて、粘着剤層と接する面は、特に制限されず、複合フィルムにより提供される面であってもよく、その他のフィルムにより提供される面であってもよい。もっとも、本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートにおいては、支持体としての多層シートの最外層の少なくとも1層が複合フィルムによる層である場合、水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、複合フィルムにより提供される面上に設けられることが好ましい。例えば、本発明の水分散型アクリル系粘着シートにおいて、支持体として上記2層タイプの多層シートを有し、且つ水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層を1層有する場合、水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、複合フィルムにより提供される面上に設けられていることが好ましい。
具体的な支持体としての多層シートとしては、例えば、図3で示される2層タイプの支持体4、図4で示される3層タイプの支持体5などが挙げられる。支持体4は、複合フィルム2の一方の面に第一フィルム1を有している多層シートである。また、支持体5は、複合フィルム2の一方の面に第一フィルム1を有し、他方の面に第二フィルム3を有している多層シートである。
このような支持体としての多層シートで用いられるその他のフィルムは、多層シートにおいて、少なくとも1層以上を構成するフィルムであり、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分として含有する複合フィルムとは異なる素材(材料)で形成されている限り、特に制限されない。
その他のフィルム(例えば、第一フィルムや第二フィルムなど)としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらの素材は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、支持体としての多層シートにおいて、その他のフィルムから構成される層(「その他のフィルム層」と称する場合がある)を2層以上有する場合、その他のフィルム層は、ともに同一素材のフィルムで構成されていてもよいし、異なる素材のフィルムで構成されていてもよい。さらに、その他のフィルム層を3層以上有する場合、全て、あるいはその一部が同一素材のフィルムで構成されていてもよいし、全て異なる素材のフィルムで構成されていてもよい。例えば、支持体5のような複合フィルムの一方の面に第一フィルムを有し、他方の面に第二フィルムを有している多層シートにおいて、第一フィルムと第二フィルムとは、同一素材のフィルムであってもよいし、異なる素材のフィルムであってもよい。
中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されるフィルムは、精密部品の加工に使用する場合に要求される適度な固さを有しており、さらにまた、品種の豊富さやコスト面からも有利であるので、好ましく使用される。
その他のフィルムには、必要に応じて、通常使用される添加剤等を本発明の効果を阻害しない範囲内で使用することができる。このような添加剤としては、例えば老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
その他のフィルムの厚さとしては、目的等に応じて適宜選択することができるが、例えば、再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを精密部品加工用に用いる場合、10〜300μm(好ましくは、30〜200μm)程度である。なお、その他のフィルムの厚さは、支持体としての多層シートにおいてその他のフィルム層を2層以上有する場合、ともに同一の厚さであってもよいし、異なる厚さであってもよい。さらに、その他のフィルム層を3層以上有する場合、全てあるいはその一部が同一の厚さであってもよいし、全て異なる厚さであってもよい。例えば、支持体5のような複合フィルムの一方の面に第一フィルムを有し、他方の面に第二フィルムを有している多層シートにおいて、第一フィルムと第二フィルムとは、厚さが同一であってもよく、異なっていてもよい。
その他のフィルムは、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。なお、光透過性を有するものが好ましい。
複合フィルムは、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分として含有するフィルムであり、支持体としての多層シートの一層あるいは一部の層を構成するフィルムである。なお、支持体しての多層シートにおいて、複合フィルムから構成される層(「複合フィルム層」と称する場合がある)を二層以上有する場合、その組成(構成成分)や厚さ等は、全て層のあるいは一部の層が同一であってもよく、さらに全ての層が異なっていてもよい。
このような複合フィルムは、例えば、ウレタン−ビニル組成物(ウレタン−ビニル複合材料)を適当な基材等(例えば、第一フィルムや第二フィルム等の前記その他のフィルムなど)の上に塗布し、ウレタン−ビニル組成物層を形成させ、必要に応じて、乾燥や光照射(例えば、活性エネルギー線や可視光線の照射)による硬化を行うことにより作製される。
ウレタン−ビニル組成物としては、特に制限されないが、例えばウレタンポリマーの存在下でビニル系モノマーを溶液重合や乳化重合等することにより得られる、ウレタンポリマー−ビニルポリマー混合物やウレタン−ビニル共重合体を主成分として有している組成物、ビニル系モノマーを希釈剤として、該モノマー中でウレタンポリマーを形成させて、ビニル系モノマーとウレタンポリマーとを主成分として含む混合物(「ウレタンポリマー−ビニル系モノマー混合物」と称する場合がある)などが挙げられる。
なお、複合フィルムを作製の際に、ウレタンポリマーの組成、ビニル系ポリマーの種類や組成、ウレタン系ポリマーと複合フィルムの配合比等を適宜選択することにより、さらに、架橋剤等の添加剤を適宜添加することにより、様々な特性を有する複合フィルムを得ることができる。
ウレタンポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。
イソシアネートとポリオールの水酸基との反応には、触媒が用いられていてもよい。例えば、ジブチルスズジラウレート、オクトエ酸スズ、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等の、ウレタン反応において一般的に使用される触媒を用いることができる。
ポリオールとしては、1分子中に2個またはそれ以上の水酸基を有するものが望ましい。低分子量のポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価のアルコール、またはペンタエリスリトール等の4価のアルコールなどが挙げられる。また、高分子量のポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール;アルコール(例えば、上述の2価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど)と、2価の塩基酸(例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸など)との重縮合物からなるポリエステルポリオール;アクリルポリオール(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーの共重合体、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体など);カーボネートポリオール;エポキシポリオール(例えば、アミン変性エポキシ樹脂など);カプロラクトンポリオールなどが挙げられる。なお、これらのポリオール類は、単独であるいは併用して使用することができる。
このようなポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールは、一般的に、安価で耐水性が良好であり、また、ポリエステルポリオールは、強度が高いためである。
ウレタンポリマーにおいて、強度を必要とする場合には、トリオールによる架橋構造を導入したり、低分子量ジオールによるウレタンハードセグメント量を増加させると効果的である。また、伸びを重視する場合には、分子量の大きなジオールを単独で使用することが好ましい。本発明においては、用途や目的に応じて、ポリオールの種類や量を自由に選択することができ、また、塗布するフィルムの特性、イソシアネートとの反応性、アクリルとの相溶性などの観点からもポリオールの種類、分子量や使用量を適宜選択することができる。
ポリイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体等が挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンポリイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。これらのポリイソシアネート類は単独であるいは併用して使用することができる。
このようなポリイソシアネートとしては、特に、キシリレンジイソシアネートなどが好ましい。
本発明においては、用途や目的に応じて、ウレタン反応性、アクリルモノマーとの相溶性などの観点から、ポリイソシアネートの種類、組合せなどを適宜選択することができる。
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのポリオール成分とポリイソシアネート成分の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオール成分の使用量は、ポリイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が0.8以上、3.0以下であることが好ましい。NCO/OH(当量比)が0.8未満である場合、ウレタンポリマーの分子鎖長を充分に延ばすことができず、フィルム強度や、伸びが低下しやすいためであり、また、NCO/OH(当量比)が3.0以下であれば、柔軟性を十分に確保することが容易であるためである。
ビニル系モノマーは、複合フィルムが有効成分として含有するビニル系ポリマーを構成するモノマー成分であり、不飽和二重結合を有し、ラジカル重合が可能なモノマー(ラジカル重合性モノマー)であれば特に制限されないが、反応性の点からアクリル系モノマーが好ましい。従って、複合フィルムが有効成分として含有するビニル系ポリマーは、アクリル系ポリマーであることが好ましい。
アクリル系ポリマーを複合フィルムに含有される有効成分として用いる場合、複合フィルムは、ウレタン−アクリル組成物(ウレタン−アクリル複合材料)を用いて作製されるウレタン−アクリル複合フィルムであってもよい。このようなウレタン−アクリル組成物としては、特に制限されないが、例えばウレタンポリマー−アクリルポリマー混合物、ウレタン−アクリル共重合体を主成分として有している組成物、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとを主成分として含む混合物(「ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物」と称する場合がある)などが挙げられる。
アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどを挙げられる。これらのアクリル系モノマーは単独であるいは併用して使用することができる。
また、これらのエステルと共に、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマーや、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するモノマーを用いてもよい。
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレート、メトキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。
ラジカル重合性モノマーとしてのビニル系モノマー(特に、アクリル系モノマー)は、ウレタンとの相溶性、活性エネルギー線(例えば、紫外線など)や可視光線による光硬化時の重合性、得られる高分子量体(ポリマー)の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
ウレタン−ビニル組成物(特にウレタン−アクリル組成物)において、ウレタンポリマーを形成するモノマー成分と、ビニル系ポリマー(特にアクリル系ポリマー)を形成するビニル系モノマー(特にアクリル系モノマー)との割合は、複合フィルムに付与する特性に応じて適宜選択することができるが、例えば、ウレタンポリマーを形成するモノマー成分は、ビニル系モノマー(特にアクリル系モノマー)100重量部に対して、30〜200重量部(好ましくは、60〜150重量)の範囲内で適宜選択することができる。ウレタンポリマーを形成するモノマー成分が、ビニル系モノマー(特にアクリル系モノマー)100重量部に対して、30重量部未満であったり、あるいは200重量部を超えると、ウエハ研削後のウエハの撓みや反りを小さくすることが困難となる場合があるためである。
ウレタン−ビニル組成物(特に、ウレタン−アクリル組成物)には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で、通常使用される添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、耐電防止剤などが挙げられる。なお、これらの添加剤を添加するタイミングは、特に制限されないが、例えばウレタン−アクリル組成物としてウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を用いて、下記方法によりウレタン−アクリル複合フィルムを作製する場合、ポリイソシアネートとポリオールとの重合反応前であってもよいし、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとを反応させる前であってもよい。
また、ウレタン−ビニル組成物(特に、ウレタン−アクリル組成物)には、適当な基材等に塗工する際の粘度調整を目的に、少量の溶剤を加えてもよい。このような溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
さらに、ウレタン−ビニル組成物(特に、ウレタン−アクリル組成物)には、光重合開始剤が含まれていてもよい。このような光重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
中でも、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル、アニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の置換アセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等の置換α−ケトール、2−ナフタレンスルフォニルクロライド等の芳香族スルホニルクロリド、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等の光活性オキシムが好ましく用いられる。
特に、本発明においては、分子内に水酸基を有する光重合開始剤(例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンなど)を用いることがさらに好ましい。ポリオールとポリイソシアネートを反応させてウレタンポリマーを形成する際に、分子内に水酸基を有する光重合開始剤を共存させることで、ウレタンポリマー中に光重合開始剤を取り込むことができるためである。なお、ウレタンポリマー中に光重合開始剤を取り込ませれば、光を照射して硬化させるときにウレタン−アクリルのブロックポリマーを生成することができ、複合フィルムの伸び及び強度を向上させることができるものと推定される。
複合フィルムを作製する際の光重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えばウレタン−ビニル組成物(特に、ウレタン−アクリル組成物)の全モノマー成分100重量部に対して0.01〜3重量部(好ましくは0.02〜2重量部)の範囲から選択することができる。また、光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
複合フィルム作製の際の光照射で用いられる光としては、ウレタン−ビニル組成物(特に、ウレタン−アクリル組成物)を光硬化して複合フィルムを形成することができる限り制限されず、光重合開始剤の種類等に応じて適宜選択されるが、例えば、α線、β線、γ線、中性子線等の電離性放射線や紫外線などの活性エネルギー線、可視光線などが挙げられる。中でも、紫外線が好適に用いられる。
光照射で用いられる光の光源としては、光の種類等により適宜選択されるが、例えば、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。
光の照度としては、要求される複合フィルムの特性に応じて任意に設定することができるが、例えば、光照射で用いられる光として紫外線を用いた場合、3〜10mW/cm2、好ましくは4〜9mW/cm2である。
光の照射量としては、要求される複合フィルムの特性に応じて任意に設定することができるが、例えば、光照射で用いられる光として紫外線を用いた場合、100〜5000mJ/cm2、好ましくは1000〜4000mJ/cm2、さらに好ましくは2000〜3000mJ/cm2である。紫外線の照射量が100mJ/cm2より少ないと、十分な重合率が得られない場合があり、一方、5000mJ/cm2より多いと、劣化の原因となる場合があるためである。
光を照射する際、酸素による重合阻害を避けるために、ウレタン−ビニル組成物層(特に、ウレタン−アクリル組成物層)上に、剥離処理された面が層に接する形態で、剥離処理が施されたシートを設けて酸素を遮断することができる。例えば、適当な基材等に塗布し形成させたウレタン−ビニル組成物層としてのウレタンポリマー−ビニル系モノマー混合物層上に、剥離処理が施されたシートを設けて酸素を遮断することができる。また、不活性ガス(例えば、二酸化炭素や窒素など)を充填した容器内に入れて、酸素濃度を低下させた環境下で、光を照射してもよい。
また、光を照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすい。例えば、照射する光として紫外線を用いる場合の温度は、通常70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。
複合フィルムの厚さとしては、目的等に応じて適宜選択することができるが、例えば、再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを精密部品加工用に用いる場合、10〜300μm、好ましくは50〜250μm程度である。また、複合フィルムは、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。さらに、光透過性を有するものが好ましい。
ウレタン−アクリル複合フィルムは、より具体的には、例えば、以下の方法により作製される。
(a)ポリオールとジイソシアネートとを反応させ、この反応生成物をアクリル系モノマーに溶解させて粘度調整を行い、これを適当な基材等に塗工し、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、適当な基材等の上に、ウレタン−アクリル複合フィルムを得ることができる。この方法は、ポリオールとジイソシアネートとの反応により生成するポリウレタンの分子量が高くなると、アクリル系モノマーに溶解させることが困難となるため、ポリウレタンの分子量が必然的に限定されてしまうという欠点がある。
(b)ポリオールをアクリル系モノマーに溶解させた後、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて粘度調整を行い、これを適当な基材等に塗工し、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、適当な基材等の上に、ウレタン−アクリル複合フィルムを得ることができる。この方法では、アクリル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。なお、この方法では、ジイソシアネートをアクリル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネートとポリオールとを反応させて粘度調整を行ってもよい。この方法は、(a)の方法のようにポリウレタンの分子量が限定されることはなく、高分子量のポリウレタンも生成することができるため、最終的に得られるポリウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができるという利点がある。
(c)予め別途調製したウレタンポリマーをアクリル系モノマー中に溶解し、これを適当な基材等に塗工し、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、適当な基材等の上に、ウレタン−アクリル複合フィルムを得ることができる。
支持体としての多層シートは、その他のフィルム上に、前記複合フィルムの作製方法を用いて、複合フィルムを形成させることにより、作製することができる。
例えば、支持体としての2層タイプの多層シートを作製する場合、その他のフィルムとしての第一フィルムの一方の面に、ウレタン−ビニル組成物(特に、ウレタン−アクリル組成物)を塗布し、ウレタン−ビニル組成物層(特に、ウレタン−アクリル組成物層)を設けた後、光を照射し硬化させて、複合フィルムを形成させることにより、作製することができる。
また、支持体としての3層タイプの多層シートを作製する場合、その他のフィルムとしての第一フィルムの一方の面に、ウレタン−ビニル組成物(特に、ウレタン−アクリル組成物)を塗布し、ウレタン−ビニル組成物層(特に、ウレタン−アクリル組成物層)を設けた後、該層上に、その他のフィルムとしての第二フィルムを重ねて、光を照射し硬化させて、複合フィルムを形成させることにより、作製することができる。なお、第二フィルムを重ねることにより、酸素を遮断し、酸素による重合阻害を避けることができる。
さらに、支持体としての多層シートを作製する際、光の照射方向は、層を光硬化させることができる限り特に制限されず、例えば、上記2層タイプの多層シートの場合、複合フィルム面側から照射してもよいし、第一フィルム面側から照射してもよい。また、上記3層タイプの多層シートの場合、第一フィルム面側から照射してもよいし、第二フィルム面側から照射してもよい。
(粘着剤層)
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートが有する粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とし、他のモノマー成分としてカルボニル基含有モノマーを全モノマー成分100重量部に対して0.5〜10重量部有するモノマー混合物をエマルション重合することにより得られ、且つガラス転移温度が−80〜−20℃であるアクリルエマルション系重合体を主成分として、ヒドラジン架橋剤を他の成分として有する水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される。
このような水分散型アクリル系粘着剤組成物は、水系で塗工できる水系塗工型の粘着剤を実現し、本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートの粘着面を提供する粘着剤層において、粘着面を被着体へ貼付する際に生じる被着体表面への汚染を低下させることができ、且つ被着体の凹凸によく追従し耐水侵入性の向上を発揮することができる。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートで用いられる水分散型アクリル系粘着組剤成物の主成分であるアクリルエマルション系重合体は、モノマー主成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、他のモノマー成分としてのカルボニル基含有モノマーとを、少なくとも有するモノマー混合物(「アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物」と称する場合がある)をエマルション重合することにより得られる。なお、アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物は、モノマー主成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマーを、他のモノマー成分として有していてもよい。
アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物において、主成分として用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシルなどが挙げられる。なお、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物のモノマー成分全量に対して、40重量%以上(好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上)であることが重要である。アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物において、モノマー主成分として用いられているためである。
アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物において、他のモノマー成分として用いられるカルボニル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと重合可能であり、ケト基及び/又はアルデヒド基を含むものであれば特に制限されないが、例えば、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセトアセテート、ブタンジオールアクリレートアセトアセテート等が挙げられる。これらの中で、特にダイアセトンアクリルアミドを好適に使用することができる。なお、これらのカルボニル基含有モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物におけるカルボニル基含有モノマーの含有量としては、適宜選択することができるが、例えば、アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物のモノマー成分100重量部に対して、0.5〜10重量部、好ましくは0.6〜7重量部、さらに好ましくは0.7〜4重量であることが好ましい。カルボニル基含有モノマーが0.5重量部より少ないと、後述するヒドラジン架橋剤との反応点が少なくなり、本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを被着体から剥離した後の被着体への汚染物が多くなり、一方、10重量部より多いと、アクリルエマルション系重合体の溶液粘度が高くなり、基材や剥離ライナーへ粘着剤を塗布する時に、塗工すじなどの問題が発生する場合があるためである。
また、アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物は、モノマー主成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、他のモノマー成分としてのカルボニル基含有モノマー以外に、エマルション粒子の安定化、粘着剤層における基材への密着性の向上、被着体への初期接着性の向上などを目的として、必要に応じて、他のモノマー成分としての共重合性モノマーが含まれていてもよい。
このような共重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。このような共重合性モノマーの含有量としては、アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物のモノマー成分全量に対して、60重量%以下(例えば、0.5〜60重量%)、好ましくは25重量%以下(例えば、0.7〜25重量%)であることが好ましい。なお、共重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
特に、アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物には、水酸基を含有するモノマー(水酸基含有モノマー)を他のモノマー成分として含んでいることが好ましい。アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物に水酸基を含有するモノマーが含まれていると、本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートにおいて、被着体としてシリコンウエハを用いる場合、シリコンウエハとの相互作用が増すことにより、ウエハ研削時に、研削水がウエハと粘着シートとの界面に侵入するという不具合の発生を抑制することができるためである。
このような水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロパン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルなどが挙げられる。水酸基含有モノマーの含有量は、アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物のモノマー成分100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましい。水酸基含有モノマーが1重量部より少ないと、ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入量が少なくなり、粘着力の制御が困難となる場合があり、一方、10重量部より多いと、アクリルエマルション系重合体の溶液粘度が高くなり、基材や剥離ライナーへ粘着剤を塗布する時に、塗工すじなどの問題が発生する場合があるためである。なお、水酸基含有モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また本発明においては、後述する粘着剤組成物のゲル分率を調整するために、アクリルエマルション系重合体を重合する際に多官能モノマー成分を共重合することができる。多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類、ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル化合物などが挙げられる。
アクリルエマルション系重合体は、上記アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物に重合開始剤及び乳化剤などを加え、通常のエマルション重合方法を用いることにより、合成(形成)される。エマルション重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合など任意の方法を用いることができ、その方法は特に限定されるものではない。また、重合温度は、用いる開始剤の種類等に応じて、例えば5〜100℃程度の範囲内から選択することができる。
本発明においては、アクリルエマルション系重合体は、ウエハ等の被着体への有機物汚染量の減少に特に効果があることから、一括重合でかつ低温(例えば50℃以下、好ましくは30℃以下)で重合することが望ましい。このような条件で重合を行うと、高分子量体が得られやすく、低分子量体が少なくなるため、ウエハへの有機物汚染が減少するものと推定される。
アクリルエマルション系重合体の合成のために使用する乳化剤は、公知の乳化剤から適宜選択して使用することができ特に制限されないが、例えばビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)などのラジカル重合性官能基を有する反応性乳化剤を使用するとウエハへの汚染を大きく低減することができる。
このような反応性乳化剤の市販の例として、商品名「アデカリアソープSE−10N」(旭電化工業株式会社製)、商品名「アクアロンHS−20」「アクアロンHS−10」「アクアロンHS−05」(第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。
乳化剤としては、水分散型アクリル系粘着剤組成物の諸特性向上のために、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤等、一般的な乳化剤を上記反応性乳化剤と併用してもよい。なお、乳化剤は1種又は2種以上を選択して使用することができる。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートにおいて、半導体ウエハ加工の用途に用いる際、特に不純物イオンが問題となる場合があるため、不純物イオンを取り除き、SO4 2-イオン濃度が100μg/g以下である乳化剤を使用することが望ましい。不純物イオンを取り除く方法としては、イオン交換樹脂法、膜分離法、アルコールを用いた不純物の沈殿ろ過法など適宜な方法を用いることができる。なお、乳化剤としてアニオン系乳化剤を使用する場合であれば、アンモニウム塩乳化剤を用いることが望ましい。
乳化剤の使用量は、アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物の全モノマー成分100重量部に対して、例えば0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部程度の範囲から選択することができる。乳化剤の配合量が5重量部を超えると粘着剤の凝集力が低下して被着体への汚染量が増加し、また乳化剤自身による汚染も起こる場合がある。乳化剤の配合量が0.1重量部未満では安定した乳化が維持できない場合があり何れも好ましくない。
重合開始剤としては、たとえば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物系や、過酸化水素水とアスコルビン酸、過酸化水素水と鉄(II)塩、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドックス系重合開始剤などがあげられる。これらの中で、ウエハ等被着体への有機物汚染量の減少に特に効果があることから、レドックス系重合開始剤を用いることが望ましい。
この理由については明確でないが、レドックス系重合開始剤を用いることで高分子量体が得られやすく低分子量成分が少ないことに起因しているものと推定される。また粘着シートにて不純物イオンが問題となる場合には、イオン成分を含まない開始剤を用いることが要求され、たとえば過酸化水素水とアスコルビン酸などの組み合わせが好適に使用される。また、レドックス系重合開始剤を用いる場合は、重合温度は50℃以下、好ましくは30℃以下にすることが望ましい。
これらの重合開始剤は、その種類やアクリルモノマーの種類に応じて、その使用量が決定されるが、通常は、アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物の全モノマー成分100重量部あたり、0.001〜0.1重量部の範囲で使用するのが望ましい。
本発明においては、アクリルエマルション系重合体の重合に際して、分子量を調整するために連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、たとえばラウリルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが挙げられ、その目的、用途に応じて1種または2種以上が用いられる。
このように、水分散型アクリル系粘着剤組成物の主成分であるアクリルエマルション系重合体は、前記アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物をエマルション重合することにより得られる重合体であるが、さらに、−80〜−20℃、好ましくは−75〜−22℃、さらに好ましくは−70〜−30℃のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度が−20℃より高くなると、例えば、パターンウエハ表面への追従性が悪くなりウエハ研削時に研削水がウエハと粘着シート界面に侵入する不具合が発生する場合がある。
ガラス転移温度は、前記アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物に用いられるモノマーの種類やその組み合わせにより調整される。つまり、前記アクリルエマルション系重合体用モノマー混合物において、主モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、主モノマーと共重合可能な他のモノマーの種類やその組み合わせを適宜選択することにより、アクリルエマルション系重合体のガラス転移温度を調整することができる。
なお、ガラス転移温度とは、分子全体の運動が分子構造の部分部分間の相互作用よりも強くなり、物性の大きな変化が起きる温度のことをいう。本願では、レオメトリック社製動的粘弾性装置「ARES」をもちいて、サンプル厚さ:約1.5mmで、φ7.9mmパラレルプレート治具を用い、周波数:1Hz、昇温温度:5℃/分にて測定し、得られた損失弾性率のピーク点の温度をガラス転移温度とする。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートにおいて、粘着剤層の形成に用いられる水分散型アクリル系粘着剤組成物は、前記アクリルエマルション系重合体を主成分として有し、さらに、他の成分として、少なくともヒドラジン架橋剤を有する。水分散型アクリル系粘着剤組成物にヒドラジン架橋剤を有していると、被着体表面への汚染が少なく、且つ高い耐水侵入性を有する再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを得ることができる。詳細は不明であるが、ヒドラジン架橋剤は被着体汚染に影響を及ぼす成分や不純物が少なく、さらにポリマー中のカルボニル基との反応に基づく架橋の効率がよいため、再剥離用水分散型アクリル系粘着シートにおいて、汚染性及び耐水侵入性の両特性の両立を可能にしていると推定される。
ヒドラジン架橋剤としては、ヒドラジド基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、商品名「アミキュアVDH」「アミキュアUDH」(味の素ファインテクノ株式会社製)などが挙げられる。
ヒドラジン架橋剤の使用量は、主成分であるアクリルエマルション系重合体100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部である。なお、ヒドラジン架橋剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、水分散型アクリル系粘着剤組成物には、ヒドラジン架橋剤とともに、カルボキシル基と反応し得る官能基を含む架橋剤が含まれていてもよい。このような架橋剤としては、例えば多官能性のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤などが挙げられる。なお、多官能性とは2官能性以上のことを意味する。これらの架橋剤は、アクリルエマルション系重合体の組成や分子量などに応じて、水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層のゲル分率が好ましくは後述の範囲となる使用割合で、その1種又は2種以上が用いられる。
このような架橋剤の具体的な例としては、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤;商品名「エポクロスWS−500」(株式会社日本触媒製)などのオキサゾリン系架橋剤;商品名「ケミタイトPZ−33」(株式会社日本触媒製)などのアジリジン系架橋剤;トリレンジイソシアネート(ブロック)などのブロックイソシアネート系架橋剤;商品名「エラストロンBN−69」(第一工業製薬株式会社製)などの水分散イソシアネート系架橋剤;ポリカルボジイミド樹脂である商品名「カルボジライトV−02」「カルボジライトV−02−L2」「カルボジライトV−04」「カルボジライトE−01」「カルボジライトE−02」(日清紡績株式会社製)などの親水化処理カルボジイミド系架橋剤などが挙げられる。
さらに、水分散型アクリル系粘着剤組成物のゲル分率を調整するために、前述したアクリルエマルション系重合体を重合する際に多官能モノマー成分を共重合させることやカルボキシル基と反応し得る官能基を含む架橋剤を添加すること以外に、過酸化水素系架橋剤などの他の架橋剤を添加することもできる。
なお、水分散型アクリル系粘着剤組成物において、架橋剤は、アクリルエマルション系重合体を合成した後、これに添加してもよいが、アクリルエマルション系重合体を重合する際に、その一部又は全部を、アクリルエマルション系重合体用のモノマー混合物に配合して重合を行ってもよい。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、水分散型アクリル系粘着剤組成物を適宜な方法により前記支持体としての多層シート上に塗布し、乾燥させることにより粘着剤層を形成させることにより得られるが、粘着剤層の水分散型アクリル系粘着剤組成物のゲル分率を調整するため、支持体としての多層シート上に粘着剤層を設けた後、これに活性エネルギー線を照射して硬化処理し、粘着剤層のゲル分率を増大させることもできる。活性エネルギー線としては、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが用いられる。活性エネルギー線の照射線量は、ゲル分率が90%以上となるように調整すればよいが、電離性放射線は通常20Mrad以下、好ましくは10Mrad以下、紫外線は通常3000mJ/cm2以下とするのがよい。照射線量が多すぎると、基材の劣化が懸念される。
なお、紫外線を照射する場合、使用する紫外線は180nm〜460nmの波長範囲のものが好ましく、その発生源には、水銀ランプ、メタハライドランプを使用することが好ましい。また、紫外線を照射する際には、あらかじめ水分散型アクリル系粘着剤組成物に光反応開始剤(光増感剤)を含ませておくのがよい。光反応開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ジベンジル、ベンジルジメチルケタールなどを挙げることができる。
水分散型アクリル系粘着剤組成物に架橋剤を配合し、架橋後の水分散型アクリル系粘着剤組成物のゲル分率は、90%以上、好ましくは95%以上(通常99%以下)に調整されることが望ましい。ゲル分率が90%未満では、被着体への汚染物の転写が増加する場合がある。ゲル分率は、粘着剤の架橋度合いを表しており、90%未満であると架橋度が小さいため、低分子量成分などが被着体表面に転写するなどの不具合を生じる。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートの粘着剤層や水分散型アクリル系粘着剤組成物のゲル分率は、試料約0.1gをサンプリングして精秤し、これを約50mlの酢酸エチル中に室温で1週間浸漬したのち、溶剤不溶分を取り出し、130℃で1時間乾燥して、秤量することにより、上記ゲル分率(重量%)=[(浸漬・乾燥後の重量)/試料の重量]×100として算出されるものである。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートにおいて、水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、初期弾性率が0.20〜1.5MPa(好ましくは0.30〜1.0MPa)、最大強度が1.0〜8.0MPa(好ましくは2.5〜5.0)、破断伸びが180〜900%(好ましくは250〜800%)に調整されることが望ましい。初期弾性率が、0.20MPa未満であると、再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを被着体に貼付後再剥離した際に粘着剤層の粘着剤が被着体表面に残存する場合があり(例えば、研削後にパターンウエハからテープ剥離した際の粘着剤のウエハ表面への残存)、1.5MPaより大きいと、例えば本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを半導体ウエハ加工用粘着シートとして用いる際、パターンウエハ表面の段差への粘着剤の追従性が悪くなり、ウエハ研削時に研削水がウエハと粘着シート界面に侵入する不具合を発生する場合がある。また、最大強度が、1.0MPa未満であると、再剥離用水分散型アクリル系粘着シートをウエハ等の被着体から剥離した後、粘着剤がウエハ等の被着体表面に残ってしまう場合があり(例えば、研削後にパターンウエハからテープ剥離した際の粘着剤のウエハ表面への残存)、一方、8.0MPaより大きいと、パターンウエハ表面の段差への粘着剤の追従性が悪くなり、ウエハ研削時に研削水がウエハと粘着シート界面に侵入する不具合を発生する場合がある。さらに、破断伸びが、180%未満であると、粘着剤が硬いためパターンウエハ表面の段差への追従性が悪くなり、ウエハ研削時に研削水が侵入する不具合を発生する場合がある。一方、900%を超える、再剥離用水分散型アクリル系粘着シートをウエハ等の被着体から剥離した後、粘着剤がウエハ等の被着体表面に残ってしまう場合がある。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートにおいて、水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層の初期弾性率・最大強度・破断伸びは、水分散型アクリル系粘着剤組成物の主成分であるアクリルエマルション系重合体の物性値や、用いる架橋剤の種類及び量、並びに活性エネルギー線照射処理の有無やその照射条件などにより調整できる。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートにおいて、粘着剤層の初期弾性率・最大強度・破断伸びは、水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層の引張試験における初期弾性率・最大強度・破断伸びである。
ここで、引張試験は、粘着剤層を、断面積0.75mm2、長さ30mmの円柱状に形成し、この形成体に対して、23℃×50%RHの雰囲気下、引張試験機により、チャック間距離10mm、引張速度50mm/minにて行う。初期弾性率は、伸び−応力曲線の初期接線を引き、その接線と試験片が100%すなわち20mmまで伸びた所の交点(伸び=20mmの直線との交点)の応力を求め、単位初期断面積当たりのその応力値を表す。最大強度は、単位初期断面積当りの伸び−応力曲線で最大応力値を表される。破断伸びは、引張試験で、試験片が破断した時の伸びを表し、(「破断時の試験片長さ」−「初期長さ(10mm)」)÷「初期長さ(10mm)」×100%で計算される。
粘着剤層の厚さは、特に制限されないが、5〜100μmであり、好ましくは10〜40μm程度である。また、粘着剤層は、単層の形態を有していてもよいし、積層の形態を有していてもよい。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、半導体ウエハ等の製品を加工する際には適度な粘着力を有して確実に保持することができ、加工後には製品等に付加をかけずに容易に剥離することができるような粘着力を有していることが求められる。従って、本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートにおいて、水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、加工後に剥離するときの180°ピール粘着力で、0.01N/20mm〜1.5N/20mmの範囲の粘着力を発揮することが好ましい。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、適宜な方法で作製される。例えば、支持体としての多層シート上に、水分散型アクリル系粘着剤組成物を塗布し、水分散型アクリル系粘着剤組成物層を形成した後、必要に応じて、乾燥や光照射などを行い粘着剤層を形成させることにより作製する方法や、支持体としての多層シートに、剥離フィルム上に形成させた粘着剤層を転写する方法などが挙げられる。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、用途に応じてどのような形状にも加工することができる。例えば、半導体ウエハ等の被着体と同形状に切断加工して用いることもできる。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを半導体ウエハ等の被着体に貼付後、剥離した場合に、半導体ウエハ等の被着体に転写する有機物汚染増加量(転写汚染量)は、表面元素比率の炭素換算で8atomic%以下であることが好ましく、より好ましくは5atomic%以下であることが好ましい。なお、有機物汚染増加量は、粘着シートの貼付・剥離後の有機汚染量から粘着シートの貼付前の有機汚染量を差し引いた値である。有機物汚染増加量が8atomic%を超える場合、例えば、本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートを用いた工程の後の半導体製造工程において、ワイヤボンディング不良やパッケージクラックなどの工程トラブルが発生して、生産性が低下することがある。
このように構成される本発明の低汚染性の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートは、これまでにない低汚染性の再剥離型粘着シートであって、特に半導体ウエハの裏面研削時やダイシング時に使用される半導体ウエハ加工用粘着シートとして好適に用いることができ、半導体チップの製造時に行われるワイヤーボンディングにおいてアルミ表面と金ワイヤー間で界面破壊するとがなく、高いシェア強度を維持させることができる。さらにまた、その用途はなんら限定されるものではなく、低汚染性であるという特徴を生かし、使用時または使用終了時に粘着シートの剥離を伴うような各種用途、たとえば、各種工業部材、特に半導体、回路、各種プリント基板、各種マスク、リードフレームなどの微細加工部品の製造の際の表面保護や破損防止、あるいは異物等の除去、マスキング等に、幅広く利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、水:180重量部、アクリル酸n−ブチル:94重量部、アクリル酸:2重量部、ダイアセトンアクリルアミド:1重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:3重量部、及びエーテルサルフェート型の反応性ノニオンアニオン系界面活性剤(旭電化工業株式会社製:商品名「アデカリアソープSE−10N」)をアルコール沈殿ろ過により精製し、不純物であるSO4 2-のイオン濃度を560μg/gから70μg/g以下とした乳化剤:2.5重量部を乳化機で乳化して得られるエマルション溶液を仕込み、撹拌下1時間窒素置換した。以降、重合中の内浴温度は25℃に制御した。ここに、過酸化水素水(30重量%含有):0.1重量部を加えた後、アスコルビン酸:0.05重量部及び水:10重量部からなるアスコルビン酸水溶液を1ml添加し重合を開始させた。重合開始から、5時間後から残りのアスコルビン酸水溶液を2時間かけて滴下し、更に2時間反応を熟成し完了した。その後、10%のアンモニア水で中和してアクリルエマルション系重合体(「アクリルエマルション系重合体(A)」と称する場合がある)を作製した。
アクリルエマルション系重合体(A):100重量部に、ヒドラジン架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジド:0.5重量部(対粘着剤固形分100重量部)を添加して、アクリル系粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物(A)と称する場合がある)を作製した。
また、冷却管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとしてアクリル酸t−ブチル:40重量部、アクリル酸:35重量部、アクリル酸ブチル:25重量部、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.1重量部、ポリオールとしてポリオキシテトラメチレングリコール(分子量650;三菱化学株式会社製):75重量部、ウレタン反応触媒としてジブチルスズジラウレート:0.05重量部とを投入し、攪拌しながら、キシリレンジイソシアネート:25重量部を滴下し、65℃で2時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、硬化後のウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物の厚みが100μmになるように塗布し、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物層を形成させ、該層を、剥離処理したポリエステルフィルム(38μm厚)を用いて、剥離処理した面と該層が接する形態で、気泡の入らないようにラミネートした。その後、低圧水銀ランプを用いて紫外線を照射(照度:6.4mW/cm2、光量:2290mJ/cm2)し、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物層を硬化させ、ウレタン−アクリル複合フィルムを形成させることにより、支持体としての多層シートを得た。
また、ポリオレフィンフィルム(厚さ60μm)の片面に、アクリル系粘着剤組成物(A)を、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗工し、温度:100℃、3分間の条件で乾燥させることにより、ポリオレフィンフィルムの片面上に粘着剤層を形成させた。
多層シートの剥離処理したポリエステルフィルムを剥がし、ウレタン−アクリル複合フィルムを露出させ、ウレタン−アクリル複合フィルムにより提供される面上に、上記ポリオレフィンフィルム上の粘着剤層を転写することにより、粘着シートを作製した。
(実施例2)
モノマーを、アクリル酸n−ブチル:90重量部、メタクリル酸メチル:7重量部、アクリル酸:2重量部、ダイアセトンアクリルアミド:1重量部とした以外は、実施例1と同様にして、アクリルエマルション系重合体「アクリルエマルション系重合体(B)」と称する場合がある)を作製した。
続いて、アクリルエマルション系重合体(A)の代わりに、アクリルエマルション系重合体(B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
(実施例3)
モノマーを、アクリル酸n−ブチル:50重量部、アクリル酸エチル:46重量部、アクリル酸:2重量部、ダイアセトンアクリルアミド:1重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:1重量部とした以外は、実施例1と同様にして、アクリルエマルション系重合体「アクリルエマルション系重合体(C)」と称する場合がある)を作製した。
続いて、アクリルエマルション系重合体(A)の代わりに、アクリルエマルション系重合体(C)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
(比較例1)
アクリルエマルション系重合体(A)を作製後、ヒドラジン架橋剤としてのアジピン酸ジヒドラジドを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
(比較例2)
アクリルエマルション系重合体(A)を作製後、ヒドラジン架橋剤としてのアジピン酸ジヒドラジド:0.5重量部(対粘着剤固形分100重量部)の代わりに、エポキシ系架橋剤としての1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名「テトラッドC」:三菱ガス化学株式会社製):2重量部(対粘着剤固形分100重量部)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
(比較例3)
モノマーを、アクリル酸n−ブチル:40重量部、メタクリル酸n−ブチル:57重量部、アクリル酸:2重量部、ダイアセトンアクリルアミド:1重量部とした以外は、実施例1と同様にして、アクリルエマルション系重合体「アクリルエマルション系重合体(D)」と称する場合がある)を作製した。
続いて、アクリルエマルション系重合体(A)の代わりに、アクリルエマルション系重合体(D)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
(比較例4)
支持体としての上記多層シートの代わりに、コロナ放電式で表面酸化処理をしたエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(厚さ:135μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
(比較例5)
アクリルエマルション系重合体(A)の代わりに、アクリルエマルション系重合体(B)を用い、また、支持体としての上記多層シートの代わりに、コロナ放電式で表面酸化処理をしたエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(厚さ:135μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
(評価試験)
実施例1〜3、及び比較例1〜5で得られた粘着テープについて、下記の測定方法又は評価方法により、粘着剤層のガラス転移温度・初期弾性率・最大点強度・破断伸び・ゲル分率、対ウエハ有機物汚染、対水侵入性、反り量を、測定又は評価した。それぞれの測定結果又は評価結果を表4に示した。
(ガラス転移温度)
動的粘弾性測定装置(商品名「ARES」:レオメトリック社製)を用いて、サンプル厚さ約1.5mmで、φ7.9mmのパラレルプレート治具を用い、周波数:1Hz、昇温速度:5℃/分にて測定し、得られた損失弾性率のピーク点の温度をガラス転移温度とした。
(初期弾性率・最大点強度・破断伸び)
断面積:0.75mm2、長さ:30mmの円柱状の粘着剤を作製し、23℃×50%RH雰囲気下、引張試験機により、チャック間距離:10mm、引張速度:50mm/minにて引張試験を行う。初期弾性率は、伸び-応力曲線の初期接線を引き、その接線と破断点が100%すなわち20mmまで伸びた所の交点(伸び=20mmの直線との交点)の応力を求め、単位初期断面積当たりのその応力値として表される。最大強度は、単位初期断面積当たりの伸び−応力曲線における最大応力値を表す。破断伸びは、引張試験で、試験片が破断したときの伸びを表し、「破断伸び」%=(「破断時の試験片の長さ」−「初期長さ(10mm)」)÷「初期長さ(10mm)」×100で計算される。
(ゲル分率)
粘着剤のゲル分率は、試料約0.1gをサンプリングして精秤し、これを約50mlの酢酸エチル中に室温で1週間浸漬したのち、溶剤不溶分を取り出し、130℃で約1時間乾燥して、秤量することより、上記ゲル分率(重量%)=[(浸漬・乾燥後の重量)÷試料の重量]×100として算出される。
(対ウエハ有機物汚染増加量)
粘着シート片を、アルミ蒸着ウエハ(12〜13atomic%)に、テープ貼り合せ機(商品名「DR8500−II」:日東精機株式会社製)にて貼付け(貼り付け圧力:0.25MPa、貼り付け速度2.4m/分)、40℃中に1日放置後、粘着シート片をテープ剥離機(商品名「HR8500−II」:日東精機株式会社製)にて剥離し(剥離速度8m/分、剥離角度180度)、ウエハ上に転写した有機物をESCA(商品名「model5400」:アルバックファイ社製)を用いて測定した。全くシートを貼り付けていないウエハも同様に分析し、検出された炭素原子のatomic%の増加量により有機物の転写量を評価した。
なお、対ウエハ有機物汚染増加量が8atomic%以下のものは「良好」と評価できた。
(対水侵入性)
高さ7μm、エッジリンス幅3.5mmにポリイミドでコーティングされた8インチウエハを、幅90μm高さ7μmのストリートを10mm間隔でXY方向に作製し、碁盤目状にストリートラインがあるサンプルウエハを作製した。
プラズマ発生用高周波電源(商品名「JEH−01TS」:日本電子株式会社製)を用いて、下記表1記載の条件下、酸素プラズマ処理を行い、サンプルウエハのエッジリンス上のPI残渣を除去した。
Figure 2008056744
除去後、サンプルウエハに、テープ貼り合せ機(商品名「DR8500−II」:日東精機株式会社製)にて粘着シートを貼り付け(貼り付け圧力:0.25MPa、貼り付け速度2.4m/min)、23℃にて1時間放置後、サンプルウエハ裏面を、ウエハ裏面研削機(商品名「8560」:DISCO社製)にて、下記表2記載の条件下、厚み730μmから250μmまで研削した。
Figure 2008056744
研削後、粘着シートを、サンプルウエハからテープ剥離機(商品名「HR8500−II」:日東精機株式会社製)にて剥離した(剥離速度:8m/分、剥離角度:180度)。 粘着シートを剥離後、ウエハストリート及び周辺に水侵入した跡を光学顕微鏡で観察し、水侵入した面積を求めた。そして、水侵入がみられたものを「×」、みられなかったものを「○」とし評価を行った。
(反り量)
8インチのシリコンウエハ(厚さ:730μm)を20枚用意し、それぞれのシリコンウエハに、テープ貼り合せ機(商品名「DR8500−II」:日東精機株式会社製)にて粘着シートを貼り付けた(貼り付け圧力:0.25MPa、貼り付け速度2.4m/min)。
粘着シートを貼り付けた後、すぐに、それぞれのシリコンウエハ裏面を、ウエハ裏面研削機(商品名「8560」:DISCO社製)にて、下記表3記載の条件下、厚み730μmから250μmまで研削した。
Figure 2008056744
研削後、シリコンウエハに粘着シートを貼着したままの状態で、粘着シート面が上になるように、平板上に静置し、平板から最も浮いているシリコンウエハ部分(通常は、ウエハ端部の場合が多い。)の平板の平面からの距離を測定し、反り量とした。そして、それぞれのシリコンウエハの反り量の値を平均することにより、反り量の平均値を求めた。
なお、反り量の平均値が5mm以下のものは「より良好」と評価でき、8mmを超えるものは「不良」と評価できた。
Figure 2008056744
実施例の粘着シートは、対ウエハ有機物汚染増加量が5atomic%以下であったことから被着体表面への転写汚染量が少ないことが確認でき、さらに、対水侵入性が良好であることや、ウエハ研削後のウエハ反り量が小さいことが確認できた。
比較例1の粘着シートは、粘着剤組成物にヒドラジン架橋剤を添加しなかったため、実施例の粘着シート比較して、ゲル分率が低く、さらに、被着体表面への転写汚染量が多いことが確認できた。
比較例2の粘着シートは、粘着剤組成物に、ヒドラジン架橋剤の代わりにエポキシ系架橋剤を添加したため、実施例の粘着シート比較して、耐水侵入性が低いことが確認できた。
比較例3の粘着シートは、アクリルエマルション系重合体のガラス転移温度が高かったため、実施例の粘着シート比較して、粘着剤層の初期弾性率の値が高く、さらに、耐水侵入性が低いことが確認できた。
比較例4及び比較例5の粘着シートは、支持体として、多層シートの代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムを用いたため、実施例の粘着シート比較して、ウエハ研削後のウエハ反り量が大きいことが確認できた。
本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートの一例を示す概略断面図である。 本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートの他の例を示す概略断面図である。 本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートで用いられている支持体の一例を示す概略断面図である。 本発明の再剥離用水分散型アクリル系粘着シートで用いられている支持体の他の例を示す概略断面図である。
符号の説明
11 支持体の複合フィルム側に粘着剤層が設けられているタイプの再剥離用水分散型アクリル系粘着シート
12 支持体の第一フィルム側に粘着剤層が設けられているタイプの再剥離用水分散型アクリル系粘着シート
1 第一フィルム
2 複合フィルム
3 第二フィルム
4 2層タイプの支持体(2層タイプの多層シート)
5 3層タイプの支持体(3層タイプの多層シート)
6 粘着剤層

Claims (9)

  1. 支持体上に粘着剤層を有している粘着シートであって、支持体がウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分として含有する複合フィルム、及び複合フィルムとは異なる素材から形成されるその他のフィルムから構成される多層シートであり、粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分とし、他のモノマー成分としてカルボニル基含有モノマーを全モノマー成分100重量部に対して0.5〜10重量部有するモノマー混合物をエマルション重合することにより得られ、ガラス転移温度が−80〜−20℃であるアクリルエマルション系重合体を主成分として含み、且つヒドラジン架橋剤を含む水分散型アクリル系粘着剤組成物であることを特徴とする再剥離用水分散型アクリル系粘着シート。
  2. 多層シートが、複合フィルムの一方の面にその他のフィルムを有している請求項1記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着シート。
  3. 多層シートにおける粘着剤層と接する面が、複合フィルムにより提供される面である請求項1又は2記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着シート。
  4. 多層シートが、複合フィルムの一方の面にその他のフィルムとしての第一フィルムを有し、他方の面にその他のフィルムとしての第二フィルムを有している請求項1記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着シート。
  5. モノマー混合物が、さらに他のモノマー成分として、水酸基含有モノマーを全モノマー成分100重量部に対して1〜15重量部有する請求項1〜4の何れかの項に記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着シート。
  6. 水分散型アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層が、0.20〜1.5MPaの引張試験による初期弾性率、1.0〜8.0MPaの最大強度、180〜900%の破断伸び、90%以上のゲル分率を有する請求項1〜5の何れかの項に記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着シート。
  7. アクリルエマルション系重合体が、レドックス系重合開始剤によるエマルション重合により得られるアクリルエマルション系重合体である請求項1〜6の何れかの項に記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着シート。
  8. 半導体ウエハに貼付・剥離した後に半導体ウエハに転写する有機汚染量が、表面元素比率の炭素換算で8%以下である請求項1〜7の何れかの項に記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着シート。
  9. 半導体ウエハ加工用として用いられる請求項1〜8の何れかの項に記載の再剥離用水分散型アクリル系粘着シート。
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