JP3908563B2 - 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録装置に用いられる磁気ディスクなどの磁気記録媒体の磁化パターン形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び先行技術】
磁気ディスク装置(ハードディスクドライブ)に代表される磁気記録装置はコンピュータなどの情報処理装置の外部記憶装置として広く用いられ、近年は動画像の録画装置やセットトップボックスのための記録装置としても使用されつつある。
【0003】
磁気ディスク装置は、通常、磁気ディスクを1枚或いは複数枚を串刺し状に固定するシャフトと、該シャフトにベアリングを介して接合された磁気ディスクを回転させるモータと、記録及び/又は再生に用いる磁気ヘッドと、該ヘッドが取り付けられたアームと、ヘッドアームを介してヘッドを磁気記録媒体上の任意の位置に移動させることのできるアクチュエータとからなる。
【0004】
記録再生用の磁気ヘッドは通常浮上型ヘッドで、磁気ディスク上を一定の浮上量で移動している。また、浮上型ヘッドの他に磁気ディスクとの距離をより縮めるために、コンタクトヘッド(接触型ヘッド)の使用も提案されている。
【0005】
磁気ディスク装置に搭載される磁気記録媒体(磁気ディスク)は、一般にアルミニウム合金などからなる基板の表面にNiP層を形成し、所要の平滑化処理、テキスチャリング処理などを施した後、その上に、金属下地層、磁性層(情報記録層)、保護層、潤滑層などを順次形成して作製されている。あるいは、ガラスなどからなる基板の表面に金属下地層、磁性層(情報記録層)、保護層、潤滑層などを順次形成して作製されている。
【0006】
磁気記録媒体には面内磁気記録媒体と垂直磁気記録媒体とがあり、面内磁気記録媒体は、通常、長手記録が行われる。
【0007】
磁気記録媒体の記録密度を増大させる技術には様々なものがある。例えば、磁気ヘッドの浮上量をより小さくしたり磁気ヘッドとしてGMRヘッドを採用したり、また、磁気ディスクの記録層に用いる磁性材料を保磁力の高いものにするなどの改良や、磁気ディスクの情報記録トラックの間隔を狭くすることなどが試みられている。例えば、100Gbit/inch2を実現するには、トラック密度は100ktpi以上が必要とされる。
【0008】
磁気記録媒体のトラックには、磁気ヘッドを制御するための制御用磁化パターン、例えば磁気ヘッドの位置制御に用いる信号や同期制御に用いる信号が形成されている。磁気記録媒体の高密度化のために、情報記録トラックの間隔を狭めてトラック数を増加させると、データ記録/再生用ヘッドの位置制御に用いる信号(以下、「サーボ信号」と言うことがある。)もそれに合わせてディスクの半径方向に対して密に、すなわちより多く設けて精密な制御を行えるようにしなければならない。
【0009】
一方で、データ記録以外に用いる領域、即ちサーボ信号に用いる領域や該サーボ領域とデータ記録領域の間のギャップ部を小さくしてデータ記録領域を広くし、データ記録容量を上げることも高密度化のために必要となる。このためにはサーボ信号の出力を上げたり同期信号の精度を上げる必要がある。
【0010】
従来、磁気記録媒体の製造に広く用いられている方法は、ドライブ(磁気記録装置)のヘッドアクチュエータ近傍に穴を開け、その部分にエンコーダ付きのピンを挿入し、該ピンでアクチュエータを係合し、ヘッドを正確な位置に駆動してサーボ信号を記録するものである。しかし、この方法では、位置決め機構とアクチュエータの重心が異なる位置にあるため、高精度のトラック位置制御ができず、サーボ信号を正確に記録するのが困難であった。
【0011】
一方、レーザビームを磁気ディスクに照射してディスク表面を局所的に変形させ物理的な凹凸を形成することで、凹凸サーボ信号を形成する技術も提案されている。しかし、この方法では、ディスク表面の凹凸により浮上ヘッドが不安定となり、記録再生に悪影響を及ぼす;凹凸を形成するために大きなパワーを持つレーザビームを用いる必要がありコストがかかる;凹凸を1つずつ形成するために時間がかかる;といった問題があった。
【0012】
このため、最近では新しいサーボ信号の形成法が提案されている。
【0013】
一例は、高保磁力の磁性層を持つマスターディスクに、サーボパターンを形成し、マスターディスクを磁気記録媒体に密着させるとともに、外部から補助磁界をかけて磁化パターンを転写する方法である(USP5,991,104号)。
【0014】
他の例は、媒体を予め一方向に磁化しておき、マスターディスクに高透磁率で低保磁力の軟磁性層をパターニングし、マスターディスクを媒体に密着させるとともに外部磁界をかける方法である。この方法では、軟磁性層がシールドとして働き、シールドされていない領域に磁化パターンが転写される(特開昭50−60212号公報(USP3、869、711号)、特開平10−40544号公報(EP915456号)、Digest of InterMag 2000, GP-06、参照)。この技術では、マスターディスクを用い、強力な磁界によって磁化パターンを媒体に形成している。
【0015】
一般に、磁界の強度は距離に依存するので、磁界によって磁化パターンを記録する際には、漏れ磁界によってパターン境界が不明瞭になりやすい。そこで、漏れ磁界を最小にするためにマスターディスクと磁気記録媒体を密着させることが不可欠である。そしてパターンが微細になるほど、隙間なく完全に密着させる必要があり、通常、両者は真空吸着などにより圧着される。また、媒体の保磁力が高くなるほど、転写に用いる磁界も大きくなり、漏れ磁界も大きくなるため、更に完全に密着させる必要がある。
【0016】
従って、上記技術は、保磁力の低い磁気ディスクや圧着しやすい可撓性のフロッピーディスクには適用しやすいが、硬質基板を用いた、高密度記録用の保磁力が3000Oe以上もあるような磁気ディスクへの適用が非常に難しい。即ち、硬質基板の磁気ディスクは、マスターディスクとの密着の際に微小なゴミ等を挟み込み媒体に欠陥が生じたり、或いは高価なマスターディスクを痛めてしまう恐れがあった。特に、ガラス基板を用いた場合、ゴミの挟み込みで密着が不十分になり磁気転写できなかったり、磁気記録媒体にクラックが発生したりするという問題があった。
【0017】
また、特開昭50−60212号公報に記載されたような技術では、ディスクのトラック方向に対して斜めの角度を有したパターンは、記録は可能であるが信号強度の弱いパターンしか作れないという問題があった。即ち、保磁力が2000〜2500Oe以上の高保磁力の磁気記録媒体に対しては、転写の磁界強度を確保するために、マスターディスクのパターン用強磁性体(シールド材)は、パーマロイあるいはセンダスト等の飽和磁束密度の大きい軟磁性体を使わざるを得ない。しかし、斜めのパターンでは、磁化反転の磁界はマスターディスクの強磁性層が作るギャップに垂直方向となってしまい、所望の方向に磁化を傾けることができない。その結果、磁界の一部が強磁性層に逃げてしまい磁気転写の際に所望の部位に十分な磁界がかかりにくく、十分な磁化反転パターンを形成できず、高い信号強度が得にくくなってしまう。こうした斜めの磁化パターンは、再生出力が、トラックに垂直のパターンに対してアジマスロス以上に大きく減ってしまう。
【0018】
これに対して、特開2001−338419及び特開2001−331902には、局所加熱と外部磁界印加を組み合わせて磁気記録媒体に磁化パターンを形成する技術が記載されている。例えば、媒体を予め一方向に磁化しておき、パターニングされたフォトマスクを介してエネルギー線等を照射し局所的に加熱し、該加熱領域の保磁力を下げつつ外部磁界を印加し、加熱領域に外部磁界による記録を行い、磁化パターンを形成する。
【0019】
本技術によれば、加熱により保磁力を下げて外部磁界を印加するので、外部磁界が媒体の保磁力より高い必要はなく、弱い磁界で記録できる。そして、記録される領域が加熱領域に限定され、加熱領域以外には磁界が印加されても記録されないので、媒体にマスク等を密着させなくても明瞭な磁化パターンが記録できる。このため圧着によって媒体やマスクを傷つけることなく、媒体の欠陥を増加させることもない。
【0020】
また、本技術では従来のようにマスターディスクの軟磁性体によって外部磁界をシールドする必要がないため、斜めの磁化パターンも良好に形成できる。
【0021】
この磁化パターン形成方法に用いられるフォトマスクは、所望の磁化パターンに相当する透過部と非透過部を備えているマスクであればよく、例えば、石英ガラス、ソーダライムガラス等の透明原盤上にCr等の金属をスパッタリング形成し、その上にフォトレジストを塗布し、エッチング等によって、所望の透過部と非透過部を作成することができる。この場合は原盤上のCr層を有する部分がエネルギー線非透過部、原盤のみの部分が透過部となる。
【0022】
このような磁化パターン形成方法においては、磁気記録媒体とマスクとの間隙を正確に制御することは、磁化パターンを精度良く形成するためには非常に重要である。例えば、両者の間に所定高さのスペーサを挟んでも、ゴミなどを挟んだり、何度も繰り返し使用中にズレが発生したりして、必ずしもその通りの高さになっているとは限らない。
【0023】
そこで、磁気記録媒体とマスクとの間隙を高精度に検出して磁化パターン形成工程の工程管理を行うことが必要となる。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
微小間隙の測定方法としての光干渉縞法は広く知られているところである。従来、干渉縞による微小間隙の間隙測定用の光源としてはHe−Neレーザ(波長630nm)などのレーザが用いられている。しかしながら、通常のレーザは波長分布幅が非常に狭く可干渉距離が非常に長いため、本来の間隙測定に用いられる以外の干渉縞まで生じてしまい、誤測定が生じる。
【0025】
例えば、磁気記録媒体とマスクとの干渉縞を検出して間隙を測定しようとしたときに、マスクの石英基板(厚さ2〜3mm)の表(オモテ)面と裏面との干渉縞も生じてしまう;対物レンズ上に載ったゴミの影響が大きく出てしまう;などの現象が可干渉距離が非常に長いことに起因して生じる。
【0026】
本発明は、微小間隙の間隙を誤測定なく高精度に測定することが可能な方法を利用した磁気記録媒体の磁化パターン形成方法を提供する。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気記録媒体の磁化パターン形成方法は、基板上に磁性層を有してなる磁気記録媒体に対し、エネルギー線の透過部と非透過部からなる磁化パターン形成領域を有し、前記磁化パターン形成領域外の磁気記録媒体側の表面の内周部及び外周部に突起を有してなり、かつ、内周部の突起より外周部の突起が高いフォトマスクを介してエネルギー線を照射して前記磁性層の被照射部を局所的に加熱する工程と、
前記磁性層に外部磁界を印加する工程とを含む磁気記録媒体の磁化パターン形成方法であって、
前記磁気記録媒体上に前記突起で接触して前記フォトマスクを配置し、
前記フォトマスクを通して前記磁気記録媒体に、所定の中心波長をもち、かつ波長分布の半値幅が0.1nm以上100nm以下の単色光を入射させることにより干渉縞を発生させ、
前記磁気記録媒体の予め設定した領域における干渉縞の本数、位置、形状のいずれか1又は2以上の因子を測定し、
前記測定した因子が所定の規格内であれば、前記加熱する工程と前記外部磁界を印加する工程に移行する、
ことを特徴とする磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。
【0028】
本発明の微小間隙の測定方法は、透光性の板体と物体との間隔を測定する方法であって、該板体を通して光を該物体に入射させ、該入射光とその該物体による反射光との干渉により生じる干渉縞に基づいて前記間隙を測定する方法において、該入射光が波長分布の幅Δλが0.1nm以上の単色光であることを特徴とするものである。
【0029】
なお、この「微小間隙」とは、好ましくは1mm以下、特に0.1μm〜100μm程度である。また、波長分布の幅Δλは半値幅(FWHM)を指す。
【0030】
かかる本発明にあっては、微小間隙例えばフォトマスクと磁気記録媒体との間隙を光干渉縞法によって測定するに際し、測定光の光源として波長分布の幅Δλが0.1nm以上という干渉性の低い(即ち、可干渉距離が小さい)光を発するものを用いる。このように可干渉距離の小さい光を用いることにより、基板の表(オモテ)面と裏面との間の干渉縞が生じることが解消され、これに起因した誤測定が防止される。
【0031】
また、この測定方法によりフォトマスクと磁気記録媒体との間の微小間隙を高精度に測定して工程管理を行うことにより、所定の磁化パターンを有した磁気記録媒体を高歩留りにて生産することが可能となる。
【0032】
なお、この波長分布の幅Δλは特に1nm以上とりわけ5nm以上であることが好ましく、また100nm以下であることが好ましい。
【0033】
光源としては単色光源が好ましく、特にLED(発光ダイオード)が好適である。入射光は垂直に入射されることが好ましい。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0035】
まず、図1,2を参照して本発明のフォトマスクを用いる磁化パターン形成方法について説明する。図1(a)は、本発明のフォトマスクを用いた磁化パターン形成方法の実施の形態を示す模式的な断面図であって、図1(b)は磁気ディスクの磁化方向を示す模式的な斜視図である。図2はフォトマスクの一例を示す断面図である。
【0036】
まず、磁気記録媒体(磁気ディスク)101を外部磁界により予め周方向の一方向に一様に磁化する(図1(b))。その後、磁気記録媒体101をスピンドル120に取り付ける(図1(a))。即ち、ターンテーブル121上に配し、スペーサ122を介してフォトマスク102を取付け、更に押さえ板123を載せ、図示しない留めネジにより固定する。磁気記録媒体101とフォトマスク102との間にはスペーサ122によるスペースSが形成される。この状態でパルス状レーザビーム103を照射すると同時に外部磁界104を印加する。この外部磁界は、先に磁気記録媒体101に一様に磁化した際の外部磁界とは逆方向である。
【0037】
このようにフォトマスクを用いて図1に示す方法で磁化パターンを形成する際、フォトマスク102は、磁気記録媒体101との間の距離(図1(a)のスペースS)が1mm以下の間隙を保って配置されるのが好ましい。この間隙がこれより大きいとエネルギー線の回折が大きく、磁化パターンがぼやけてしまいやすい。
【0038】
ただし、フォトマスク102と磁気記録媒体101との間の間隙は0.1μm以上あることが好ましく、これにより、ゴミ等の挟み込みによる磁気記録媒体101やマスク102の傷つき、欠陥発生を抑えることができる。即ち、フォトマスク102と磁気記録媒体101との間の間隙を0.1μm未満とすると、磁気記録媒体101の表面のうねりによって、磁化パターン形成部分がフォトマスク102と予期せぬ接触を起こしてしまうことがあり、フォトマスク102又は磁気記録媒体101を損傷してしまう恐れがある。また、接触部分で媒体の熱伝導度が変わるため、そこだけ磁化されやすさが特異的に変化し、所望のパターン通りに描けないおそれがある。また、磁化パターン形成前に磁気記録媒体101に潤滑層が設けられている場合は、特に、フォトマスク102にこの潤滑剤が付着するのを防止するため、フォトマスク102と磁気記録媒体101との間に0.1μm以上の間隙を設けるのが好ましい。この間隙はより好ましくは0.2μm以上とする。
【0039】
磁気記録媒体101の磁化パターン形成領域とフォトマスク102との間隙を保つ方法としては、両者を一定距離に保てる方法であればよく、図1(a)に示す如く、両者の間の、磁化パターン形成領域以外の場所にスペーサ122を挿入してもよいが、その他、例えばフォトマスクと磁気記録媒体とを特定の装置により支持して一定距離を保っても良い。また、フォトマスク自体に、スペーサを一体的に形成しても良い。特に、フォトマスクと磁気記録媒体との間に、媒体の磁化パターン形成領域の外周部又は/及び内周部にスペーサを設けると、磁気記録媒体の表面のうねりを矯正する効果が生まれるので磁化パターン形成の精度を上がることができ、好ましい。
【0040】
スペーサ122の材質は硬質のものが良く、また、パターン形成に外部磁界を用いるので磁化されないものが良い。好ましくは、ステンレス、銅などの金属や、ポリイミドなどの樹脂である。このスペーサ122の高さは、フォトマスク102と磁気記録媒体101との間に所定の間隙Sを形成できればよく、任意に設定されるが、通常、数μm〜数百μmである。
【0041】
フォトマスク102と磁気記録媒体101との間隙は、干渉縞を用いて測定してこれを管理する。具体的には、フォトマスク102を介して、波長分布の幅Δλが0.1nm以上の単色光からの光を照射し、媒体面に形成される干渉縞の本数、間隔、位置などからマスク102と媒体101との間隙が全面で均一に保たれているかどうかを検出する。そして、この結果を元にスペーサの高さや位置を変えて、マスク102と媒体101との間隙をより均一にする。また、間隔が規格値外となる磁気記録媒体については、製造工程ラインから排出する。
【0042】
前記の通り、本発明では、このフォトマスク102と磁気記録媒体101との間の間隙を光干渉法により測定するための光源として、干渉性の低い、波長分布の幅Δλが0.1nm以上の単色光を用いる。この波長分布の幅Δλが0.1nmよりも小さいと、可干渉距離が大きくなり、誤測定を生じさせることがある。この波長分布の幅Δλは1nm以上とりわけ5nm以上であることが好ましい。波長分布の幅Δλは100nm以下程度であることが好ましい。
【0043】
この光源としては単色光を用いる。波長分布が広すぎる水銀ランプなどの白色光源であると、干渉が生じなくなる。なお、光学フィルタを用いることにより、白色光源からの光の波長幅を狭めることはできるが、それだけ光学系が複雑になり自由度が小さくなるので、フィルターを使用せず、光源そのものを単色光源とする。
【0044】
具体的な光源としては、LEDが好適であるが、縦モードマルチレーザであってもよい。LEDは、可干渉距離が短く適度な干渉性を持ち、また、レーザより安価で耐久性も良く、しかも安全でもあり好ましい。LEDとしては青色、緑色、赤色のいずれのLEDであってもよい。
【0045】
この単色光からの光は、フォトマスクに対し垂直に入射されることが好ましい。斜め入射でも微小間隙の測定は可能であるが、垂直入射のほうがアライメントが簡単で好ましい。
【0046】
なお、従来、波長分布の幅の短いレーザにより微小間隙を測定するときは、意図しない干渉を少なくするために敢えて垂直入射でなく斜め入射を使うことが多い。これは、レーザを斜め入射させると、距離の長いところでは干渉が起きにくくなるので意図しない干渉を減少させることができるからであるが、波長分布の幅Δλ0.1nm以上の単色光を用いる本発明方法であれば、光を垂直入射させることができ、測定機構を簡易化することができる。
【0047】
干渉縞による間隙測定あるいは磁化パターン形成工程管理を行うには、予め干渉縞を観測すべき領域を設定しておき、当該領域における干渉縞の本数や位置、形状を測定することが好ましい。この干渉縞の測定結果から、フォトマスクと磁気記録媒体との間隙とその均一性が推定可能である。この測定は、目視でも可能であるが、自動測定とすることが好ましい。例えば、磁気記録媒体1枚毎に干渉縞の本数や位置、形状を測定し、これらのいずれか1又は2以上の因子(例えば本数)が他の場合と著しく異なるときには磁気記録媒体を規格外品としてラインから排出する。
【0048】
例えば、自動測定装置によってフォトマスクと磁気記録媒体との間の干渉縞を測定する場合、磁気記録媒体を扇形に8分割した中心角45°の扇形領域を設定し、各扇形領域における半径方向について干渉縞の本数を数える。そして、▲1▼干渉縞の本数そのものが他の媒体と比べて多い場合;あるいは、▲2▼8方向のうち特定方向の干渉縞の本数が他と大きく異なる場合;などには、磁気記録媒体は規格外品であると判定する。なお、上記▲2▼の不具合は、フォトマスクと磁気記録媒体との間にゴミ等の異物が介在した場合に発生し易い。
【0049】
磁化パターンの形成に際しては、形成すべき磁化パターンに応じて複数の透過部(透明基材102A)と非透過部102Bを形成したフォトマスク102を用意し、これを通して磁気記録媒体101の磁性層上にレーザビーム103を照射する。この照射に当たり、ビーム径を大径又は横に細長い楕円形等として、複数トラック分又は複数セクター分の磁化パターンを一括して照射すれば、記録効率が一段と上がり、今後の容量の伸びに伴いサーボ記録時間が増大するといった問題も改善され非常に好ましい。
【0050】
フォトマスク102の透明基材102Aとしては、エネルギー線を十分透過するものであれば良いが、石英を主とする材料で構成されているのが好ましい。石英ガラスは比較的高価ではあるが、紫外域のエネルギー線に対して透過性が高いため、特に微細加工がしやすい300nm以下の短波長のエネルギー線を使用することができるという利点がある。これより長い波長のエネルギー線を使用する場合は、コストの点から光学ガラスを使うのがよい。透明基材102Aの厚さはいくつでもよいが基材のたわみが生じず、安定的に平坦度をだすためには、通常1〜10mm程度が好ましい。
【0051】
また、フォトマスクの非透過層は、クロム層と酸化クロム層との積層膜であることが好ましく、図2(a)に示す如く、石英ガラス基材11上に、クロム層12と酸化クロム層13を形成して非透過層を形成したフォトマスク10Aとするのが好ましい。即ち、透過部の石英ガラスは反射率は概ね5%程度であり、一方でクロムは非常に反射率が高いので、その表面を反射率の低い他の層で覆うのが好ましい。例えば、非透過部表面を反射率約16%の酸化クロムで覆う。媒体面で反射したエネルギー線が再度マスク面で反射して媒体に戻ることを防止することができ好ましい。酸化クロム層は反射率が低い上にクロムを酸化させるのみで形成することができ、また、クロム層への密着性にも優れる点においても好ましい。
【0052】
このようなフォトマスク10の製造法の一例としては、石英などのマスク基材10の上に、まずクロムを成膜し、その上に酸化クロムを成膜する。クロムの成膜方法としては、スパッター、蒸着、塗布などの方法がある。ただし、緻密な膜を形成するという観点からは、スパッター法が好ましい。また、酸化クロムの成膜方法も同様の手法が用いられるが、クロムを酸化させるために酸素と反応させながら成膜する方法も好ましく採用することができる。
【0053】
次いで、クロム、酸化クロムの積層膜上に、フォトレジストをスピンコート等により塗布し、所望のパターンに露光する。露光後、そのパターンに従い、クロム、酸化クロムをエッチングして除去することにより、非透過層を形成してフォトマスクを得ることができる。
【0054】
なお、クロムと酸化クロムとの積層膜で形成される非透過層の各膜の膜厚は、十分な非透過性(エネルギー線の遮光性)と所望の反射率が得られる程度であれば良く、膜の緻密性、即ち成膜方法によっても異なるが、一般的には、クロム膜の膜厚が20〜200nm、酸化クロム膜の膜厚が20〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0055】
このようにして非透過層を形成したフォトマスクは、この非透過層による凸部が形成されたものとなる。図1(a)に示す如く、このフォトマスク102は非透過層102Bの形成面が磁気ディスク101に対面するように配置する。なお、非透過層102B間の凹部に、エネルギー線を透過する材料を埋め込み、フォトマスク102の非透過層102Bの形成面を平坦にして使用しても良い。
【0056】
このようなフォトマスクは、特にその最外層を誘電体層で覆うことが望ましい。例えば、図2(b)に示す如く、クロム層12及び酸化クロム層13が積層形成された、磁気記録媒体に対する面を誘電体層14で覆ったフォトマスク10Bとすることができる。
【0057】
このように、非透過部の磁気記録媒体に対する面の最外層を誘電体層とすると、反射をより防ぐことができ、好ましい。また、透過部の磁気記録媒体に対する面の最外層を誘電体層とすると、基材のガラス面での反射が防止でき、好ましい。また、図2(c)に示す如く、磁気記録媒体に対して反対側の面の最外層をも誘電体層14としたフォトマスク10Cであれば、さらに反射が低減でき、より好ましい。
【0058】
この場合、誘電体層14は、その目的波長によって種類、厚み、積層方法等が異なるが、一般的には、使用するエネルギー線の波長に対する透明性が高いこと、適切な屈折率、エネルギー線の照射に耐えうる高融点であることが求められ、金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物やCa、Mg、Al、Li等のフッ化物が用いられる。これらの酸化物、硫化物、窒化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。
【0059】
例えば、MgF2、ThOF2、SiO2、SiO、TiO2、Ta2O5、ZrO2、CeO2、MoO2、Al2O3、La2O3、Cu2O、WO3、Si3N4、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、InSなどの1層又は2層以上を成膜すれば良い。特にはMgF2、ThOF2、SiO2、TiO2、CeO2、Al2O3、ZnSが用いられる。この誘電体層はこれらの2種以上を含む複合誘電体であってもよく、その純度も任意であって、目的に応じて選べばよい。
【0060】
例えば、エネルギー線の波長が248nmであり、MgF2を誘電体材料として選択した場合は、MgF2の屈折率が1.4程度であるから、MgF2を45nm程度の厚さに形成することで、反射率1.6%程度の膜を得ることができる。
【0061】
更に反射率を落としたい場合は、複数層の誘電体層を積層形成する必要がある。例えば、SiO2とTiO2で誘電体層を形成する場合、TiO2の屈折率が約2.4、SiO2の屈折率が1.5程度であることから、波長248nmのエネルギー線でTiO2を厚さ6.6nmに形成し、その上にSiO2を厚さ56.9nmに形成すると、理論的には、ほぼ反射率0%の膜が形成できる。
【0062】
このような誘電体層はスパッターまたは蒸着により形成できるが、凹凸を有する面に形成する場合はスパッタリング法を採用することが好ましく、また、エネルギー線に対する耐久性の面からもスパッタリング法が好適である。なお、誘電体層は各層内において屈折率n、消衰係数kがそれぞれ均一であることが望ましい。
【0063】
誘電体層を複層構造とする場合には、エネルギー線に対する耐久性を上げるために薄膜内の応力を低くする必要があり、そのためには圧縮応力の膜と引張応力の膜を積層するのが好ましい。例えば、上述の場合、SiO2が圧縮応力特性を示し、TiO2が引張応力特性を示す。更に耐久性を上げるためには、膜内の不純物を極力無くすことが重要である。また、無反射帯域を広くするには、膜厚方向の膜の均一性を一定にすることが重要である。
【0064】
反射防止用の誘電体層の中でも、1波長のみをターゲットとして、該波長のみの反射を極端に低減したコーティングを、特にVコートと称する。エネルギー線がレーザのような場合には、その単一波長性からVコートが好ましい。
【0065】
石英ガラス基材に対して紫外域(波長200〜300nm)のエネルギー線を使用した場合には、反射率は入射光の5%程度であるが、この反射率を、誘電体層を形成することによって、1%以下、特に0.5%以下とすることが好ましい。これによりモジュレーションを大幅に改善することができるようになる。
【0066】
また、基材の上にまず誘電体層14を形成したのち、クロム層12、酸化クロム層13を順次積層し、フォトレジストをスピンコート等により塗布し、所望のパターンに露光後、そのパターンに従い、誘電体層を残し、クロム層12及び酸化クロム層13をエッチングして、図2(d)に示すようなフォトマスク10Dを得る方法もある。ただし、好ましくは、図2(c)に示す如く、フォトマスク10Cの両面すべてを誘電体層14で覆い、全面において反射率を低減するのが望ましい。
【0067】
なお、クロム層上に誘電体層を施す場合には、必ずしもクロム層を酸化クロム層などの他の層で覆わなくてもよく、図2(e)に示す如く、クロム層12を形成した石英ガラス基材11の全面を誘電体層14で覆ったフォトマスク10Eであっても良い。このフォトマスク10Eでも誘電体層14が全面を覆っているために反射が押さえられ、十分な効果が得られる。
【0068】
なお、フォトマスクには、以上の層構成において、必要に応じて層間に他の層を形成しても良い。
【0069】
本発明において、フォトマスク102は、少なくともパターン領域において平坦度が3μm以下であることが好ましい。上述のように、マスク102と媒体101との間隙はスペーサ122により保たれる。しかしスペーサ122の高さが一定であっても媒体101やマスク102に大きなうねり等がある場合にはこの間隙が均一でなくなったり両者が接触してしまう虞がある。このためフォトマスク102の基材は、少なくともパターン領域において平坦度が3μm以下であることが好ましい。フォトマスク102の基材の平坦度は小さい程良く、下限はないが、0.01μm程度が限界と考えられる。
【0070】
一方、磁気記録媒体101も平坦度が小さいことが好ましいが、通常、マスク102のほうが媒体101に比べて厚く剛性が高いので、媒体101が多少うねっていてもスペーサ122を介してフォトマスク102を磁気記録媒体101に引きつけることで平坦度をマスク102と同程度に小さくすることができる。このような媒体101の平坦度の矯正の面からは、フォトマスク102の基材の剛性がある程度高いことが重要である。
【0071】
本発明において、上述のようなフォトマスクを用いて磁性層を局所的に加熱する工程と、磁性層に外部磁界を印加する工程の組み合わせとしては、様々な組み合せを採用することができ、例えば以下の態様を取ることができる。
【0072】
態様1:加熱前に強い外部磁場で磁性層を所望の方向に均一に磁化し、その後所望部位を磁性層の保磁力が低下する温度以上に加熱し消磁することで磁化パターンを形成する方法。これによれば最も簡便に磁化パターンを形成することができる。また、磁性層が均一に磁化されているため、本方法により磁化パターンを形成した後に通常の磁気記録を行うことができる。
【0073】
態様2:加熱前に強い外部磁場で磁性層を所望の方向に均一に磁化し、その後所望部位を磁性層の保磁力が低下する温度以上に加熱すると同時に弱い磁場を印加して消磁することで磁化パターンを形成する方法。これによれば、消磁が完全に行えるので、信号強度の大きな磁化パターンが得られる。
【0074】
態様3:磁性層の保磁力が低下する温度以上に加熱すると同時に弱い外部磁場を印加することで、加熱部のみ外部磁場の方向に磁化して、磁化パターンを形成する方法。これによれば最も簡便に磁化パターンを形成することができ、かつ外部磁場も弱いものでよい。
【0075】
態様4:加熱前に強い外部磁場で磁性層を所望の方向に均一に磁化し、その後所望部位を磁性層の保磁力が低下する温度以上に加熱すると同時に弱い磁場を加熱前とは逆方向に印加磁化することで磁化パターンを形成する方法。これによれば、信号強度が最も強く、C/N及びS/Nが良好な磁化パターンが得られるので最も好ましい。
【0076】
以下、各態様について説明する。
【0077】
態様1の外部磁場の方向は、磁気記録媒体の磁性層の種類によって異なる。磁化容易軸が面内方向にある媒体の場合には、磁性層が、データの書込み/再生ヘッドの走行方向(媒体とヘッドの相対移動方向)と同一又は逆方向に磁化されるように印加する。さらに、磁気記録媒体が円板状である場合には、その半径方向に磁化するように印加することも可能である。磁化容易軸が面内方向に垂直にある場合には、磁性層が、該垂直方向のいずれかに磁化されるように印加する。
【0078】
磁場の強さは磁気記録媒体の磁性層の特性によって異なり、磁性層の室温での保磁力の2倍以上の磁界によって磁化することが好ましい。これより弱いと磁化が不十分となる可能性がある。ただし、磁場印加に用いる着磁装置の能力上、磁性層の室温での保磁力の5倍以下とするのが好ましい。
【0079】
態様2において、加熱前の外部磁場の方向及び強さは態様1と全く同様である。
【0080】
加熱と同時に印加する磁界の方向は、磁化容易軸が面内方向にある媒体の場合には、面内と垂直である方向に、磁化容易軸が面内方向に垂直にある場合には、媒体の面内方向である。このように磁界を印加して磁化を消去する。
【0081】
また、磁界の強さは、磁気記録媒体の磁性層の特性によって異なるが、磁性層の室温での保磁力より小さい磁界とする。
【0083】
加熱は、磁性層の保磁力の低下が見られる温度まで加熱できればよいが、好ましくは100℃以上に加熱する。加熱温度が100℃未満で外部磁場により影響を受けるような磁性層は、室温での磁区の安定性が低い傾向がある。ただし、加熱温度は所望の保磁力の低下が得られる範囲で低いことが望ましい。加熱温度が高すぎると加熱したい領域以外への熱拡散が起こりやすく、パターンがぼやけてしまう虞がある。また、磁性層が変形してしまう可能性がある。このため加熱温度は磁性層のキュリー温度以下とするのが好ましい。更に400℃以下とするのが好ましく、特には300℃以下が好ましい。
【0084】
態様3の加熱と同時の外部磁場の方向は、磁気記録媒体の磁性層の種類によって異なる。磁化容易軸が面内方向にある媒体の場合には、磁性層が、データの書込み/再生ヘッドの走行方向(媒体とヘッドの相対移動方向)と同一又は逆方向に磁化されるように印加する。さらに、磁気記録媒体が円板状である場合には、その半径方向に磁化するように印加することも可能である。磁化容易軸が面内方向に垂直にある場合には、磁性層が、該垂直方向のいずれかに磁化されるように印加する。
【0085】
磁界の強さは、態様2の加熱と同時の外部磁場の強さと同様である。また、加熱温度についても態様2と同様である。
【0086】
態様4において、加熱前の外部磁場の方向及び強さは態様1と全く同様である。
【0087】
加熱と同時に印加する磁界の強さは態様2と同様であるが、その方向は、加熱前磁界の方向とは逆方向を、局所的に逆向きに磁化されるようにする。加熱温度に関しては態様2と同様である。
【0088】
次に、本発明におけるエネルギー線について説明する。
【0089】
エネルギー線は連続照射よりもパルス状にして加熱部位の制御や加熱温度の制御を行うのが好ましい。特に、パルスレーザ光源の使用が好適である。パルスレーザ光源はレーザをパルス状に断続的に発振するものであり、連続レーザを音響光学素子(AO)や電気光学素子(EO)などの光学部品で断続させパルス化したものに比べて、パワー尖頭値の高いレーザをごく短時間に照射することができ、熱の蓄積が起こりにくく非常に好ましい。
【0090】
連続レーザを光学部品によりパルス化した場合、パルス内ではそのパルス幅に亘ってほぼ同じパワーを持つ。一方、パルスレーザ光源は、例えば光源内で共振によりエネルギーをためて、パルスとしてレーザを一度に放出するため、パルス内では尖頭のパワーが非常に大きく、その後小さくなっていく。本発明では、コントラストが高く精度の高い磁化パターンを形成するために、ごく短時間に急激に加熱しその後急冷させるのが好ましいため、パルスレーザ光源の使用が適している。
【0091】
磁化パターンが形成される磁気記録媒体の表面は、パルス状エネルギー線の照射時と非照射時で温度差が大きい方が、パターンのコントラストを上げ、或いは記録密度を上げるために好ましい。従って、パルス状エネルギー線の非照射時には室温以下程度になっているのが好ましい。なお、室温とは25℃程度である。
【0092】
照射するエネルギー線の波長は、1100nm以下であることが好ましい。エネルギー線が1100nm以下の短波長であると、回折作用が小さく分解能が上がるため、微細な磁化パターンを形成しやすい。エネルギー線の波長は更に好ましくは、600nm以下である。このような短波長であれば、高分解能であるだけでなく、回折が小さいため間隙によるマスクと磁気ディスクとのスペーシングも広くとれ、ハンドリングがしやすく、磁化パターン形成装置が構成しやすくなるという利点が生まれる。また、エネルギー線の波長は150nm以上であることが好ましい。この波長が150nm未満では、フォトマスクの透明基材に用いる合成石英の吸収が大きくなり、加熱が不十分となりやすい。特に、エネルギー線の波長を350nm以上とすれば、光学ガラスをフォトマスクの透明基材として使用することもできる。
【0093】
エネルギー線としては、具体的には、エキシマレーザ(248nm)、YAGのQスイッチレーザ(1064nm)の2倍波(532nm)、3倍波(355nm)、或いは4倍波(266nm)、Arレーザ(488nm、514nm)、ルビーレーザ(694nm)などが挙げられる。
【0094】
パルス状エネルギー線の1パルス当たりのパワーは1000mJ/cm2以下とすることが好ましい。これより大きなパワーをかけると、パルス状エネルギー線によって磁気記録媒体表面が損傷を受け、変形を起こす可能性がある。この磁気記録媒体の変形により磁気記録媒体の表面粗度Raが3nm以上となったり、うねりWaが5nm以上に大きくなると、浮上型/接触型ヘッドの走行に支障を来すおそれがある。
【0095】
パルス状エネルギー線の1パルス当たりのパワーは、より好ましくは500mJ/cm2以下であり、更に好ましくは200mJ/cm2以下である。この領域であると、磁気記録媒体の非磁性基板として比較的熱拡散の大きな基板を用いた場合でも、分解能の高い磁化パターンを形成しやすい。また、このパワーは10mJ/cm2以上とするのが好ましい。これより小さいと、磁性層の温度が上がりにくく磁気転写が起こりにくい。なお、エネルギー線のディフラクションの影響がパターン幅により変わるので、パターン幅に応じて最適なパワーも変化する。また、エネルギー線の波長が短いほど、印加可能なパワーの上限値は低下する傾向にある。
【0096】
また、エネルギー線により、磁気記録媒体の磁性層、保護層、潤滑層の損傷が懸念される場合は、パルス状エネルギー線のパワーを小さくして、該パルス状エネルギー線と同時に印加される磁界強度を上げるといった手段を取ることもできる。例えば、面内記録媒体の場合は、常温での保磁力の25〜75%、垂直記録の場合には1〜50%のできるだけ大きな力をかけ、照射エネルギーを下げるようにする。
【0097】
なお、保護層と潤滑層を介してパルス状エネルギー線を照射するにあたり、潤滑剤の受けるダメージ(分解、重合)等も考慮し、照射後にこれを再塗布するなどの必要がある場合がある。
【0098】
パルス状エネルギー線のパルス幅は、1μsec以下であることが望ましい。これよりパルス幅が広いと磁気ディスクにパルス状エネルギー線にて与えたエネルギーによる発熱が分散して、分解能が低下しやすい。1パルス当たりのパワーが同じである場合、パルス幅を短くし一度に強いエネルギーを照射した方が、熱拡散が小さく磁化パターンの分解能が高くなる傾向にある。パルス状エネルギー線のパルス幅はより好ましくは100nsec以下である。この領域であると、磁気記録媒体の非磁性基板としてAlなどの金属よりなる比較的熱拡散の大きな基板を用いた場合でも分解能の高い磁化パターンが形成しやすい。特に、最小幅2μm以下の磁化パターンを形成する際には、パルス状エネルギー線のパルス幅は、25nsec以下とするのが好ましい。即ち、分解能を重視すれば、パルス幅は短いほど良い。また、パルス幅は1nsec以上であるのが好ましい。これは、磁気記録媒体の磁性層の磁化反転が完了するまでの時間、加熱を保持しておくのが好ましいからである。
【0099】
なお、パルス状エネルギー線の一種として、モードロックレーザのようにピコ秒、フェムト秒レベルの超短パルスを高周波で発生できるレーザがある。超短パルスを高周波で照射している期間においては、各々の超短パルス間のごく短い時間はレーザが照射されないが、非常に短い時間であるため加熱部はほとんど冷却されない。すなわち、一旦所定温度以上に昇温された領域はその温度以上に保たれる。従って、このような場合、連続照射期間(超短パルス間のレーザが照射されない時間も含めた連続照射期間)を1パルスとする。また連続照射期間の照射エネルギー量の積分値を1パルス当たりのパワー(mJ/cm2)とする。
【0100】
また、本発明においては、好ましくは、エネルギー照射領域におけるエネルギー線の強度分布を15%以内とする。このように強度分布を押えることにより、エネルギー線を照射した領域の加熱状態の分布を小さく抑えることができ、磁化パターンの磁気的強さの分布を小さく抑えることができる。従って、磁気ヘッドを使用して信号強度を読み取る際に、信号強度の均一性の高い磁化パターンを形成することができる。
【0101】
レーザなどのエネルギー線は、一般にビームスポット内で強度分布(エネルギー密度分布)を有しており、エネルギー線を照射して局部加熱した場合もエネルギー密度による温度上昇の違いが生じる。このため加熱ムラにより局部的に転写の強度の違いが起こる。通常、エキシマレーザやYAG−Qスイッチレーザなどのパルスレーザを用いると、ビームスポット(媒体面に一度に照射される領域)内の強度分布は非常に大きい。
【0102】
そこで、本発明においては、例えば、強度分布の小さいエネルギー線源を使用するか、エネルギー線の強度分布の均一化処理を施して、エネルギー線のビームスポット内での強度分布を15%以内に抑えるようにするのが好ましい。
【0103】
エネルギー線の強度分布の均一化処理としては、例えばホモジナイザを用いて均一化したり、遮光板やスリットなどでエネルギー線の強度分布の小さい部分だけを透過し必要に応じて拡大するなどの方法が挙げられる。好ましくは、エネルギー線を、一旦光学分割した後重ね合わせることによって均一化処理すると、エネルギー線を無駄なく使用でき効率が良い。本発明においては、磁性層の加熱には、高強度のエネルギー線を短時間に照射するのがよく、このためにはエネルギー線を無駄なく効率的に使用するのが好ましい。
【0104】
なお、磁気記録媒体には、基板の主両面に磁性層が形成されているものがあるが、その場合、本発明の磁化パターン形成は片面づつ、逐次に行ってもよいし、マスク、エネルギー照射系及び外部磁界を印加する手段を磁気記録媒体の両面に設置して、両面同時に磁化パターン形成を行うこともできる。
【0105】
一面に二層以上の磁性層が形成されており、それぞれに異なるパターンを形成したい場合は、照射するエネルギー線の焦点を各層に合わせることにより、各層を個別に加熱し、個別のパターンを形成できる。
【0106】
磁化パターンを形成する際には、エネルギー線の光源とフォトマスクとの間、又はフォトマスクと磁気記録媒体との間の、照射をしたくない領域に、エネルギー線を部分的に遮光可能な遮光板を設けて、エネルギー線の再照射を防ぐ構造とするのが好ましい。
【0107】
遮光板としては、使用するエネルギー線の波長を透過しないものであればよく、エネルギー線を反射又は吸収すればよい。ただし、エネルギー線を吸収すると加熱して磁化パターンに影響を与えやすいため、熱伝導率がよく反射率の高いものが好ましい。このような遮光板としては、例えば、Cr、Al、Feなどの金属板が用いられる。
【0108】
次に、外部磁界について説明する。
【0109】
磁気記録媒体が円板形状の磁気ディスクである場合、外部磁界の印加方向は、周方向、半径方向、板面に垂直方向のいずれかをとるのが好ましい。
【0110】
加熱と同時に外部磁界を印加する場合は、外部磁界も該加熱された広い領域に亘って印加することで、複数の磁化パターンを一度に形成することができる。
【0111】
なお、パルス状エネルギー線を使用する際に、外部磁界は連続的に印加してもパルス状に印加しても良い。
【0112】
磁気記録媒体の磁性層に外部磁界を印加する手段は、磁気ヘッドを用いてもよいし、電磁石又は、永久磁石を所望の磁化方向に磁界が生じるよう複数個配置して用いてもよい。更にそれらの異なる手段を組み合わせて使用してもよい。高密度記録に適した高保磁力媒体を効率よく磁化するためには、フェライト磁石、ネオジム系希土類磁石、サマリウムコバルト系希土類磁石などの永久磁石が好適である。
【0113】
上記のようにフォトマスクと磁気記録媒体との間隙を高精度にて検出してこれを管理しながら磁化パターンが形成された磁気記録媒体は、干渉縞の影響が抑えられ、再生信号のモジュレーションの小さい微細な磁化パターンが精度良く形成される。そして、磁化遷移幅が小さく磁区の境界での磁化遷移が非常に急峻で出力信号の品質が高いパターンが形成される。また、非常に短時間で簡便に磁化パターンを形成することができ、しかも形成工程において、従来のようにマスターディスクと密着させることがないため、磁気ディスクの傷や欠陥が少ない。
【0114】
特に、高密度記録になるにつれて、サーボ信号が書きにくいだけでなくサーボ記録がコストアップの主原因となるため高密度記録用の媒体に本発明を適用すると効果が大きい。垂直磁気記録媒体であれば磁界の印加が容易であることからより本発明を適用しやすい。
【0115】
従って、本技術を磁気記録媒体の製造ラインに組み入れれば、ヘッド制御用の高精度の磁化パターンが形成された媒体を短時間かつ安価に製造できる。
【0116】
次に、本発明の磁気記録媒体の構成について説明する。
【0117】
本発明の磁気記録媒体における非磁性基板としては、高速記録再生時に高速回転させても振動しない必要があり、通常、硬質基板が用いられる。振動しない十分な剛性を得るため、基板厚みは一般に0.3mm以上が好ましい。但し、基板の厚みが厚過ぎると、磁気記録装置の薄型化に不利なため、3mm以下が好ましい。基板の材質としては、例えば、Alを主成分とした合金、具体的にはAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mgを主成分とした合金、具体的にはMg−Zn合金等のMg合金基板、その他、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、非結晶ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂のいずれかからなる基板やそれらを組み合わせた基板などを用いることができる。中でもAl合金基板や、強度の点では結晶化ガラス等のガラス製基板、コストの点では樹脂製基板を用いることが好ましい。
【0118】
前述の如く、本発明は硬質基板を有する磁気記録媒体に特に有効である。即ち、従来の磁気転写法では硬質基板を有する媒体はマスターディスクとの密着が不十分になり傷や欠陥が発生したり、転写された磁区の境界が不明確で半値幅が広がりやすい傾向があったが、本発明ではフォトマスクと磁気記録媒体とを圧着しないため、このような問題が解消される。特に、本発明はガラス製基板のようにクラックの入りやすい基板を有する媒体には効果的である。
【0119】
磁気記録媒体の製造工程においては、まず基板の洗浄、乾燥が行われるのが通常であり、本発明においても各層の密着性を確保するために、その形成前に基板の洗浄、乾燥を行うことが望ましい。
【0120】
また、本発明の磁気記録媒体の製造に際しては、基板表面にNiP等の金属被膜層を形成しても良い。このような金属被膜層を形成する場合、その手法としては、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法などの薄膜形成に用いられる方法を利用することができる。導電性の材料からなる基板の場合であれば電解めっき法を採用することが可能である。金属被膜層の膜厚は50nm以上あれば良いが、磁気記録媒体の生産性などを考慮すると50〜500nm、特に50〜300nmであることが好ましい。
【0121】
このような金属被膜層を成膜する領域は基板表面全域が望ましいが、一部だけ、例えば後述のテキスチャリングを施す領域のみでも実施可能である。
【0122】
また、基板表面、又は金属被膜層が形成された基板表面に同心状テキスチャリングを施しても良い。なお、本発明においてこの同心状テキスチャリングとは、例えば遊離砥粒とテキスチャーテープを使用した機械式テキスチャリングやレーザ光線などを利用したテキスチャリング加工、又はこれらを併用することによって、円周方向に研磨することによって基板円周方向に微小溝を多数形成した状態を指称する。
【0123】
ここで、機械的テキスチャリングを施すための遊離砥粒の種類としてはダイアモンド砥粒、中でも表面がグラファイト化処理されているものが最も好ましい。機械的テキスチャリングに用いられる砥粒としては他にアルミナ砥粒が広く用いられているが、特にテキスチャリング溝に沿って磁化容易軸を配向させるという面内配向媒体の観点から考えるとダイアモンド砥粒が極めて良い性能を発揮する。
【0124】
基板の表面は、表面粗さ(Ra)がどのような値をとっても本発明の効果には基本的には影響ないが、ヘッド浮上量ができるだけ小さいことが高密度磁気記録の実現には有効であることから、基板表面のRaは2nm以下、特に1nm以下であることが好ましく、中でも0.5nm以下であることが好ましい。なお、基板表面粗度Raは、触針式表面粗さ計を用いて測定長400μmで測定後、JIS B0601に則って算出した値である。このとき測定用の針の先端は半径0.2μm程度の大きさのものが使用される。
【0125】
上述の如く、洗浄、乾燥、必要に応じて金属被膜層の形成及び同心状テキスチャリングを施した基板上には、磁性層(磁気記録層)を形成するが、この磁性層の形成に先立ち、下地層を設けても良い。下地層は、結晶の微細化とその結晶面の配向を制御することを目的として形成され、その構成材料としてはCrを主成分とするものが好適である。
【0126】
Crを主成分とする下地層の材料としては、純Crのほか、磁性層との結晶マッチングなどの目的で、CrにV、Ti、Mo、Zr、Hf、Ta、W、Ge、Nb、Si、Cu、Bから選ばれる1又は2以上の元素を添加した合金や酸化Crなどが挙げられる。
【0127】
中でも純Cr、又はCrにTi、Mo、W、V、Ta、Si、Nb、Zr及びHfから選ばれる1又は2以上の元素を添加した合金が好ましい。これら第二、第三元素の含有量はそれぞれの元素によって最適な量が異なるが、一般には1〜50原子%が好ましく、より好ましくは5〜30原子%、さらに好ましくは5〜20原子%の範囲である。
【0128】
下地層を形成する場合、その膜厚はこの異方性を発現させ得るに十分なものであれば良く、通常の場合0.1〜50nm、好ましくは0.3〜30nm、さらに好ましくは0.5〜10nmである。Crを主成分とする下地層の成膜時は基板加熱を行っても行わなくても良い。
【0129】
下地層の上には、磁性層との間に、場合により軟磁性層を設けても良い。特に、磁化遷移ノイズの少ないキーパー媒体、或いは磁区が媒体の面内に対して垂直方向にある垂直記録媒体には、このような軟磁性層は効果が大きく、好適に用いられる。
【0130】
軟磁性層の構成材料は透磁率が比較的高く損失の少ないものであればよいが、NiFeや、それに第3元素としてMo等を添加した合金が好適に用いられる。最適な透磁率は、データの記録に利用されるヘッドや磁性層の特性によっても大きく変わるが、概して、最大透磁率が10〜1000000(H/m)程度であることが好ましい。
【0131】
或いはまた、Cr下地層上にCoCr系中間層を設けてもよい。
【0132】
次に磁性層を形成するが、磁性層と軟磁性層との間には下地層と同一材料の層又は他の非磁性材料が挿入されていてもよい。磁性層の成膜時は、基板加熱を行っても行わなくてもよい。
【0133】
磁性層としては、Co合金磁性層、TbFeCoを代表とする希土類系磁性層、CoとPdの積層膜を代表とする遷移金属と貴金属系の積層膜等が好ましく用いられる。
【0134】
Co合金磁性層としては、通常、純CoやCoNi、CoSm、CoCrTa、CoNiCr、CoCrPtなどの磁性材料として一般に用いられるCo合金磁性材料が用いられる。これらのCo合金に更にNi、Cr、Pt、Ta、W、Bなどの元素やSiO2等の化合物を加えたものでも良い。例えばCoCrPtTa、CoCrPtB、CoNiPt、CoNiCrPtB等が挙げられる。Co合金磁性層の膜厚は任意であるが、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。また、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下である。また、この磁性層は、適当な非磁性の中間層を介して、或いは直接に2層以上積層して形成してもよい。この際、積層される磁性材料の組成は、同じであっても異なっていてもよい。
【0135】
希土類系磁性層としては、磁性材料として一般的なものを用いることができる。例えばTbFeCo、GdFeCo、DyFeCo、TbFeなどが挙げられる。これらの希土類合金にTb、Dy、Hoなどを添加してもよい。酸化劣化防止の目的からTi、Al、Ptが添加されていてもよい。希土類系磁性層の膜厚は、任意であるが、通常5〜100nm程度である。また、この磁性層は、適当な非磁性の中間層を介して、或いは直接に2層以上積層して形成してもよい。その際、積層される磁性材料の組成は、同じであっても異なっていてもよい。特に、希土類系磁性層は、アモルファス構造膜であり、かつメディア面内に対して垂直方向に磁化を持つため高記録密度記録に適し、高密度かつ高精度に磁化パターンを形成できる本発明の方法がより効果的に適用できる。
【0136】
同様に垂直磁気記録が行える、遷移金属と貴金属系の積層膜としては、磁性材料として一般的なものを用いうるが、例えばCo/Pd、Co/Pt、Fe/Pt、Fe/Au、Fe/Agなどが挙げられる。これらの積層膜材料の遷移金属、貴金属は、特に純粋なものでなくてもよく、それらを主とする合金であってもよい。積層膜の膜厚は、任意であるが、通常5〜1000nm程度である。また、必要に応じて3種以上の材料の積層であってもよい。
【0137】
本発明において、磁気記録層としての磁性層は、室温において磁化を保持し、加熱時に消磁されるか、或いは加熱と同時に外部磁界を印加されることで磁化される。
【0138】
この磁性層の室温での保磁力は、室温において磁化を保持し、かつ適当な外部磁界により均一に磁化されるものである必要がある。磁性層の室温での保磁力を2000Oe以上とすることで、小さな磁区が保持でき高密度記録に適した媒体が得られる。磁性層の室温での保磁力はより好ましくは3000Oe以上である。
【0139】
従来の磁気転写法では、前述の如く、過度に保磁力が高い磁気記録媒体には転写が困難であったが、本発明においては磁性層を加熱し、保磁力を十分に下げて磁化パターンを形成するため、保磁力の大きい磁気記録媒体への適用も有効である。
【0140】
ただし、磁性層の室温での保磁力は好ましくは20kOe以下とする。この保磁力が20kOeを超えると、一括磁化のために大きな外部磁界が必要となり、また通常の磁気記録が困難となる可能性がある。より好ましくは10kOe以下とする。
【0141】
磁性層は、室温において磁化を保持しつつ、適当な加熱温度では弱い外部磁界で磁化されるものである必要がある。また室温と磁化消失温度との差が大きい方が磁化パターンの磁区が明瞭に形成しやすい。このため磁化消失温度は高いほうが好ましく、100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上である。磁化消失温度は、例えば、キュリー温度近傍(キュリー温度のやや下)や補償温度近傍に存在する。
【0142】
キュリー温度は、好ましくは100℃以上である。100℃未満では、室温での磁区の安定性が低い傾向がある。より好ましくは150℃以上であり更に好ましくは200℃以上である。ただしキュリー温度は好ましくは700℃以下である。キュリー温度があまり高いと、磁化パターンを形成するために加熱温度を高くする必要があり、磁性層を過度に高温に加熱しすぎて変形してしまう可能性があることによる。また加熱温度が高すぎると加熱したい領域以外への熱拡散が起こりやすく、パターンがぼやけてしまう虞がある。
【0143】
磁気記録媒体が面内磁気記録媒体である場合、高密度用の高い保磁力を持った磁気記録媒体に対しては従来の磁気転写法では飽和記録が難しく、磁界強度の高い磁化パターン生成が困難となり、半値幅も広がってしまう。このような高記録密度に適した面内記録媒体でも、本方法によれば良好な磁化パターン形成が可能となる。特に、該磁性層の飽和磁化が50emu/cc以上、とりわけ100emu/cc以上である場合は、反磁界の影響が大きいので本発明を適用する効果が大きい。ただし、飽和磁化は過度に大きいと磁化パターンの形成がしにくいため、500emu/cc以下が好ましい。
【0144】
磁気記録媒体が垂直磁気記録媒体であり、磁化パターンが比較的大きく1磁区の単位体積が大きい場合は、飽和磁化が大きくなり、磁気的な減磁作用で磁化反転が起こりやすいため、それがノイズとなり半値幅を悪化させる。この問題は、軟磁性材料を使用した下地層の併用で解決することができ、これらの媒体にも良好な記録が可能となる。
【0145】
磁性層は、記録容量増大などのために、二層以上設けてもよい。この際、層間には他の層を介在させるのが好ましい。
【0146】
磁気記録媒体の磁性層上には通常保護層を形成することにより、磁気記録媒体の最表面を硬質の保護層で覆う。保護層はヘッドや衝突や塵埃・ゴミ等のマスクとの挟み込みによる磁性層の損傷を防ぐ働きをする。また、本発明のようにフォトマスクを用いた磁化パターン形成法を適用する際には、フォトマスクとの接触から磁気記録媒体を保護する作用も奏される。
【0147】
また、本発明において保護層は、加熱された磁性層の酸化を防止する点においても必須である。即ち、磁性層は一般に酸化されやすく、加熱されると更に酸化されやすい。このため、本発明では磁性層をエネルギー線などで局所的に加熱することから、酸化を防ぐための保護層を磁性層上に予め形成しておく必要がある。
【0148】
磁性層が複数層ある場合には、最表面に近い磁性層の上に保護層を設ければよい。保護層は磁性層上に直接設けても良いし、必要に応じて間に他の働きをする層を介在させて形成しても良い。
【0149】
本発明において、磁化パターンの形成工程で照射したエネルギー線の一部は保護層でも吸収され、熱伝導によって磁性層を局所的に加熱する働きをする。このため保護層が厚すぎると横方向への熱伝導により磁化パターンがぼやけてしまう可能性があるので、保護層の膜厚は薄い方が好ましい。また記録再生時の磁性層とヘッドとの距離を小さくするためにも保護層は薄い方が好ましい。従って、保護層の膜厚は50nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。ただし、充分な耐久性を得るためには保護層の膜厚は0.1nm以上が好ましく、より好ましくは1nm以上である。
【0150】
保護層の形成には、一般にカーボン、水素化カーボン、窒素化カーボン、アモルファスカーボン、SiC等の炭素質層やSiO2、Zr2O3、SiN、TiNなどの硬質材料が用いられる。
【0151】
磁気記録媒体においては、ヘッドと磁性層の距離を極限まで近づけるため、非常に硬質の保護層を薄く設けることが好ましい。耐衝撃性及び潤滑性の点、エネルギー線による磁性層の損傷防止の役割を果たすだけでなく、ヘッドによる磁性層の損傷にも極めて強くなるという効果の点からは、炭素質保護層が好ましく、特にダイヤモンドライクカーボンが好ましい。炭素質保護層のような不透明な保護層に対しても本発明の磁化パターン形成方法は有効に適用可能である。
【0152】
このような保護層は、2層以上の層から構成されていてもよい。
【0153】
磁性層の直上の保護層として特にCrを主成分とする層を設けると、磁性層への酸素透過を防ぐ効果が高く好ましい。
【0154】
保護層上には更に潤滑層が形成され、これにより磁気記録媒体のフォトマスク及び磁気ヘッドによる損傷を防ぐ効果が得られる。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられ、ディップ法、スピンコート法などの常法で塗布することができる。磁化パターン形成の妨げとならないために潤滑層は薄い方が好ましく、10nm以下、特に4nm以下であることが好ましいが、十分な潤滑性能を得るためには0.5nm以上、特に1nm以上であることが好ましい。
【0155】
潤滑層上からエネルギー線を照射する場合には、前述の如く、潤滑剤のダメージ(分解、重合)等を考慮し、磁化パターンの形成後、再塗布などを行ってもよい。
【0156】
浮上型/接触型ヘッドの走行安定性を損なわないよう、磁化パターン形成後の磁気記録媒体の表面粗度Raは3nm以下に保つのが好ましい。なお、媒体表面粗度Raとは潤滑層を含まない媒体表面の粗度であって、触針式表面粗さ計を用いて測定長400μmで測定後、JIS B0601に則って算出した値である。この媒体表面粗度Raはより好ましくは1.5nm以下とする。
【0157】
また、磁化パターン形成後の磁気記録媒体の表面うねりWaは5nm以下に保つのが好ましい。媒体うねりWaは潤滑層を含まない媒体表面のうねりであって、触針式表面粗さ計を用いて測定長2mmで測定後、Ra算出に準じて算出した値である。この媒体うねりWaは、より好ましくは3nm以下とする。
【0158】
本発明の磁気記録媒体の各層を形成する成膜方法としては任意であるが、例えば直流(マグネトロン)スパッタリング法、高周波(マグネトロン)スパッタリング法、ECRスパッタリング法、真空蒸着法などの物理的蒸着法が挙げられる。
【0159】
また、成膜時の条件としても特に制限はなく、到達真空度、基板加熱の方式と基板温度、スパッタリングガス圧、バイアス電圧等は、成膜装置や所望とする磁気記録媒体の特性に応じて適宜決定すれば良い。例えば、スパッタリング成膜では、通常の場合、到達真空度は6.7×10-4Pa以下、基板温度は室温〜400℃、スパッタリングガス圧は1.3×10-1〜26.6×10-1Pa、バイアス電圧は一般的には0〜−500Vである。
【0160】
成膜に当たって基板を加熱する場合、加熱は、下地層形成前に行っても良いし、熱吸収率が低い透明な基板を使用する場合には、熱吸収率を高くするため、Crを主成分とする下地層又はB2結晶構造を有する下地層を形成してから基板を加熱し、しかる後に磁性層等を形成しても良い。
【0161】
磁性層が、希土類系の磁性膜の場合には、腐食、酸化防止の見地から、ディスクの最内周部及び最外周部を予めマスクして、磁性層まで積層成膜し、続く保護層の成膜の際にマスクを外し、磁性層を保護層で完全に覆う方法や、保護層が2層の場合には、磁性層と第1の保護層までをマスクしたまま成膜して、第2の保護層を成膜する際にマスクを外し、やはり磁性層を第2の保護層で完全に覆うようにすると希土類系磁性層の腐食、酸化が防げて好適である。
【0162】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨の範囲を超えない限り以下の実施例に限定されるものでは無い。
【0163】
実施例1[干渉縞による微小間隔の測定]
3.5インチ径のNiPメッキ付きアルミニウム合金基板(厚さ50mil)を洗浄、乾燥し、その上に到達真空度:1×10-7Torr、基板温度:350℃、バイアス電圧:−200V、スパッタリングガス:Ar、ガス圧:3×10-3Torrの条件下で、Cr90Mo10を10nm、記録層としてCo64Cr24Pt8B4を10nm、保護層としてカーボン(ダイヤモンドライクカーボン)を5nm成膜した。
【0164】
その上には潤滑層としてフッ素系潤滑剤を0.5nmの厚さに塗布し、100℃で40分焼成し、室温での静的保磁力3750Oe、飽和磁化350emu/ccの面内記録用磁気ディスクを得た。記録層のキュリー温度は300℃であった。
【0165】
このディスクの上に、大きさ71mm×21mm、厚さ1mmのガラス板をディスクの内周から外周を覆うように置き、外周部でディスクとガラス板が密着するように荷重をかけ、内周にかけて微小間隙が内周に向かって広がるような状態で配置した。
【0166】
ここに、赤色LED発光ダイオード(中心波長が約610nm、波長幅Δλが15nm)を光源とし、ハーフミラーで反射させた後、焦点距離f=300mmの凸レンズで平行光にしてから、ディスク上のガラス板に垂直に照射した。
【0167】
照射した光は反射され、その反射光は凸レンズを通り、ハーフミラーを透過してからf=40mmの対物レンズに入射した後、CCDカメラに入射し画像に変換された。図3に、CCDで検出され画像に変換した反射像を示す。
【0168】
にせ縞は全く観察されず、きれいな干渉縞が観察された。干渉縞の本数と位置を観察することにより、ディスクとガラス板とは、外周から内周に向かって少しずつ微小間隔が広がるように配されていることが分かる。
【0169】
比較例1
光源としてHeNeレーザ(中心波長632.8nm、波長幅Δλ<0.1nm)を使用した以外は実施例1と同様にして、観察を行った。
【0170】
図4に、CCDで検出され画像に変換した反射像を示す。
【0171】
干渉縞の他に、ガラス板によると思われるにせ縞が濃く観察された。また、レンズ上の異物によると思われるリング状の干渉縞も観察された。干渉縞による微小間隔の測定は困難であった。
【0172】
実施例2
光源として青色LED発光ダイオード(中心波長470nm、波長幅Δλ25nm)を使用した以外は実施例1と同様にして、観察を行った。にせ縞は全く観察されず、きれいな干渉縞が観察された。
【0173】
実施例3[磁化パターン形成法における干渉縞による微小間隔の測定結果と、形成された磁化パターンの電気特性との関係]
フォトマスクは127mm×127mmの正方形、2.3mm厚の石英ガラスを基材とし、ディスクに対する面側に、クロムを75nm、酸化クロムを25nmの膜厚で順次に成膜し、エッチング領域(パターン領域)をパターン最小幅0.8μm(ライン、スペースとも0.8μm)にエッチングし、非透過部を形成した。なお、エッチング領域(パターン領域)以外の領域は全てクロム層と酸化クロム層が形成された非透過部である。得られたフォトマスクの、波長248nmのエキシマパルスレーザに対する反射率は非透過部で16%、透過部で5%であった。
【0174】
次に、フォトマスク上の内周及び外周にスペーサとなる突起を作製した。
【0175】
まず、ポジ型フォトレジストをフォトマスク上に3.5μmの厚さで均一に塗布し、形成すべき突起に応じたパターンを有する突起形成用マスクを通して密着露光し、現像しフォトレジストに凹凸を形成した。
【0176】
現像後、クロムを、まず内周突起高さ分の厚み(0.5μm)にスパッタリング成膜した。次いで、内周突起部にこれ以上クロム層が形成されないよう遮蔽してから、外周突起が所定の高さ(2μm)になるよう、クロムを再度スパッタリング成膜した。スパッタ終了後、マスクをアセトンおよびリンス液で洗浄しフォトレジスト及び不要なクロム膜をリムーブし、純水およびイソプロピルアルコールを用いて洗浄した。
【0177】
なお、スペーサ形成用マスクは、直径約3.5インチのディスク状で、外周部に当たる半径47.05〜48mmおよび内周部に当たる半径13〜15.5mmの領域に、直径100μmの円形透過部が200μm間隔に並んでいる。
【0178】
以上により、パターン領域が半径20〜46mmに形成され、パターン領域の周縁部、つまりパターン領域以外の外周である半径約47〜48mmの範囲に、高さ2μm、および、同じくパターン領域外の内周部に当たる半径13〜15.5mmに、高さ0.5μm、直径100μmの略円形の突起(スペーサ)が200μm間隔で形成されたフォトマスクを得た。
【0179】
実施例1と同様の方法で作成したディスクに、電磁石の磁界方向がディスクの回転方向と同じとなるように構成して、約10kOe(約10kガウス)の強度で印加して、ディスク面を一様に(均一に)磁化した。
【0180】
この磁気ディスクとフォトマスクを一体として、3.2秒間で1回転の速度で回転させた。ここに波長248nmのエキシマパルスレーザをパルス幅:20nsec、パワー(エネルギー密度):83mJ/cm2、ビーム形状:6mm×32mm(ピークエネルギーの1/e2となる径)に制御しレーザ照射口にビーム形状を角度12°の扇形に整形する遮光板を設置して、繰り返し周波数20Hzで64パルス照射し、同時に図5に示す磁界印加手段を用いて磁界を印加し、磁化パターンの転写を試みた。
【0181】
図5(a)はこの磁化パターン形成方法を示す平面図、図5(b)は図5(a)のB−B断面図である。
【0182】
面内磁気記録媒体1上にスペーサ7を介してフォトマスク4が載置され、その上方に遮光板3が配され、開口部3aを通してエネルギー線5が照射されるようになっている。フォトマスク4には、形成すべき磁化パターンに応じて透過部、非透過部が形成されている。
【0183】
遮光板3には開口部3aの両側に永久磁石2a(N極),2b(S極)が取り付けられるとともに、コイルがループ状に数十回巻かれた空芯コイル(電磁石)8a,8bが該永久磁石2a,2bに沿って配されている。また、磁気記録媒体1の逆の面にも永久磁石2c(N極),2d(S極)が取り付けられるとともに、コイルがループ状に数十回巻かれた空芯コイル(電磁石)8a,8bが該永久磁石2c,2dに沿って配されている。
【0184】
空芯コイル8a,8bは互いに導線でつながれるとともに、両端が図示するように直流電源31、コンデンサ32、サイリスタ33に接続されている。また、磁気記録媒体1の装脱着がしやすいように、空芯コイル8a,8bはそれぞれくの字型に曲成されている。
【0185】
磁気記録媒体1は、例えば室温での静的保磁力が3000Oe、動的保磁力が8000Oeであって、予め10kOe程度の電磁石により所定方向に均一磁化されている。ここに永久磁石2a〜2dによって、均一磁化とは逆方向に1500〜2000Oe程度の磁界が常に印加されている。
【0186】
パルス状外部磁界を印加するには、まず直流電源31によってコンデンサ32に、例えば数百ボルト程度の電位差を持たせる。次に、外部磁界を印加したいタイミングに応じてトリガー装置34からトリガー信号を発生し、サイリスタ33のゲート端子に入力させると、コンデンサ32に蓄積されていた電位差によって空芯コイル8a,8bに電流が一気に流れる。このパルス状電流によりコイルの周囲に、例えばパルス幅200μsec、最大強度1000Oe程度のパルス状磁界が発生する。
【0187】
図5(b)に示すように、空芯コイル8a,8bによる磁界は永久磁石2a〜2dによる磁界を補助するように働くので、合計で最大強度3000Oe程度のパルス状磁界が印加される。
【0188】
一方、トリガー装置34からのトリガー信号は遅延装置(ディレイ)35を経てエキシマレーザ(波長248nm)などのエネルギー線源36に入力され、これによりパルス状エネルギー線が発生する。エネルギー線は、図示しないプログラマブルシャッター、ビームエキスパンダ、プリズムアレイなどを経た後、例えばパルス幅数十nsec、エネルギー密度100〜200mJ/cm2のパルス状エネルギー線5として照射される。
【0189】
通常、電磁石の特性上磁界の立上がり、立下がりには時間を要するので、磁界強度が最大になるときにちょうどエネルギー線5が照射されるように、遅延装置(ディレイ)35によってエネルギー線の出射時間を調節する。
【0190】
これによりエネルギー線5の照射と同時に、合計3000Oe程度のパルス状磁界が印加される。磁気記録媒体1の加熱領域の動的保磁力は3000Oe以下にまで低下しているので、加熱領域のみがパルス状磁界によって反転磁化され、磁化パターンが形成される。
【0191】
シュミレーションにより加熱温度を求めたところ、約170℃〜200℃であった。即ち、永久磁石2a〜2dによって、磁気ディスクの円周方向で均一磁化とは逆方向に、ディスク内周域(半径21mmの位置)で約1.7kガウス、ディスク外周域(半径46.5mmの位置)で約1.9kガウス程度の磁界が常に印加された。
【0192】
同時に、空芯コイル8a、8bに850Vのパルス状電流を流してコイルの周囲に、パルス幅350μsecであって、ディスク内周域(半径21mmの位置)で約1.9kガウス、ディスク外周域(半径46.5mmの位置)で約2.1kガウス程度のパルス状磁界が発生した。図3(b)に示すように、空芯コイル8a、8bによる磁界は永久磁石2a〜2dによる磁界を補助するように働くので、合計で、ディスク内周域(半径21mmの位置)で約3.6kガウス、ディスク外周域(半径46.5mmの位置)で約4.0kガウス程度の最大磁界が印加された。
【0193】
磁界強度がほぼ最大となるときにちょうどパルスレーザが照射されるようにタイミングを合わせた。
【0194】
なお、ここで用いた、レーザ照射のための光学系の構成は以下のとおりである。エキシマパルスレーザ光源から発振したパルスレーザはプログラマブルシャッターを通過する。プログラマブルシャッターは光源から所望のパルスのみ取り出す役目をする。
【0195】
プログラマブルシャッターで選択されたレーザは、所望のパワーに出力調整され次いで、レーザは短軸方向を3分割するためのプリズムアレイと、長軸方向を7分割するためのプリズムアレイを通過し、投影レンズに至る。プリズムアレイは、レーザを分割し重ね合わせ、エネルギー強度分布を均一にする機能を有する。これらをホモジナイザと称することもある。さらに、レーザは必要に応じて遮光板を通して所望のビーム形状とし、フォトマスクにより強度分布を磁化パターンに応じて変化させたのち、ディスクに投影される。
【0196】
磁化パターン形成時に、実施例1と同じ赤色LED発光ダイオード(中心波長が約610nm、波長幅Δλが15nm)を光源として、実施例1と同様の光学系で干渉縞の観察を行った。
【0197】
ディスクの回転角45度おきに(計8点)、干渉じまの数を記録したところ、観察された8点の干渉じまの平均本数は5.13本、標準偏差は0.64であった。
【0198】
干渉縞は、ディスクとマスクの間隔が光源波長610nmの約半分、すなわち約0.3μm異なるごとに1本観察されると考えられる。ディスクとマスクの間隔は内外周でほぼ1.5μm異なるため、干渉縞は理論的には5本程度観察されると考えられる。実施例3の結果は理論値にほぼ一致した。
【0199】
このようにして磁化パターンが形成された磁気ディスクについて、再生素子幅0.4μmのハードディスク用MRヘッドで磁化パターンを再生し、再生信号のモジュレーションを測定した。内周域、中周域および外周域でのモジュレーションの平均値は35.4%であった。
【0200】
比較例2
実施例3と同一条件で磁化パターン形成を行った。
【0201】
磁化パターン形成時に、実施例3と同様に干渉縞の観察を行ったところ、観察された8点の干渉じまの平均本数は6.25本、標準偏差は2.71であった。このとき、ディスクとマスクの間には微小なゴミをかんでおり、一部の干渉じまが乱れていた。
このようにして磁化パターンが形成された磁気ディスクについて、実施例3と同様にモジュレーションを測定した。内周域、中周域および外周域でのモジュレーションの平均値は42.7%と、実施例3に比べて劣っていた。
【0202】
なお、実施例3及び比較例2の測定結果を表1にまとめて示す。
【0203】
【表1】
【0204】
【発明の効果】
以上の通り、本発明方法によると、この方法を利用して磁気記録媒体の製造工程を管理することにより、その製造歩留りを高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明のフォトマスクを用いた磁化パターン形成方法の実施の形態を示す模式的な断面図であって、図1(b)は磁気ディスクの磁化方向を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明のフォトマスクの実施の形態を示す断面図である。
【図3】実施例1の干渉縞を示す図である。
【図4】比較例1における干渉縞を示す図である。
【図5】実施例における磁化パターンの形成装置の説明図である。
【符号の説明】
1 石英ガラス基板
2 エッチング領域
10A,10B,10C,10D,10E フォトマスク
11 石英ガラス基材
12 クロム層
13 酸化クロム層
14 誘電体層
101 磁気記録媒体(磁気ディスク)
102 フォトマスク
103 レーザビーム
104 外部磁界
120 スピンドル
121 ターンテーブル
122 スペーサ
123 押え板
Claims (7)
- 基板上に磁性層を有してなる磁気記録媒体に対し、エネルギー線の透過部と非透過部からなる磁化パターン形成領域を有し、前記磁化パターン形成領域外の磁気記録媒体側の表面の内周部及び外周部に突起を有してなり、かつ、内周部の突起より外周部の突起が高いフォトマスクを介してエネルギー線を照射して前記磁性層の被照射部を局所的に加熱する工程と、
前記磁性層に外部磁界を印加する工程とを含む磁気記録媒体の磁化パターン形成方法であって、
前記磁気記録媒体上に前記突起で接触して前記フォトマスクを配置し、
前記フォトマスクを通して前記磁気記録媒体に、所定の中心波長をもち、かつ波長分布の半値幅が0.1nm以上100nm以下の単色光を入射させることにより干渉縞を発生させ、
前記磁気記録媒体の予め設定した領域における干渉縞の本数、位置、形状のいずれか1又は2以上の因子を測定し、
前記測定した因子が所定の規格内であれば、前記加熱する工程と前記外部磁界を印加する工程に移行する、
ことを特徴とする磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。 - 前記単色光の光源がLEDである請求項1に記載の磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。
- 前記干渉縞の本数の測定値は、複数の領域における干渉縞の本数の平均値、及び標準偏差である請求項1に記載の磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。
- 前記単色光を、前記フォトマスクに対し垂直方向に、入射する請求項1に記載の磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。
- 前記所定の中心波長が、610nmである請求項1に記載の磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。
- 前記磁気記録媒体の予め設定した領域が扇形である請求項1に記載の磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。
- 前記扇形の領域が、磁気記録媒体を扇形に8分割した中心角45°の扇形領域である請求項6に記載の磁気記録媒体の磁化パターン形成方法。
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