JP2003272136A - 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク - Google Patents

磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク

Info

Publication number
JP2003272136A
JP2003272136A JP2002068694A JP2002068694A JP2003272136A JP 2003272136 A JP2003272136 A JP 2003272136A JP 2002068694 A JP2002068694 A JP 2002068694A JP 2002068694 A JP2002068694 A JP 2002068694A JP 2003272136 A JP2003272136 A JP 2003272136A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetic
layer
mask
pattern
magnetic field
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2002068694A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshiyuki Ikeda
祥行 池田
Yuzo Seo
雄三 瀬尾
Yoshinori Seki
義則 関
Yoji Arita
陽二 有田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2002068694A priority Critical patent/JP2003272136A/ja
Publication of JP2003272136A publication Critical patent/JP2003272136A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Recording Or Reproducing By Magnetic Means (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 局所加熱と外部磁界印加を組み合わせて磁気
記録媒体に磁化パターンを形成する技術において、エネ
ルギー線耐久性の高いマスクを提供し、これにより微細
な磁化パターンを、低コストで効率よく形成できる磁化
パターン形成方法を提供する。 【解決手段】 基板上に磁性層を有してなる磁気記録媒
体に対し、マスクを介してエネルギー線を照射し、該磁
性層の被照射部を加熱する工程と、磁性層に外部磁界を
印加する工程とを含む磁化パターン形成方法であって、
該マスクが、該エネルギー線に対して透過性の基体と非
透過性の非透過層とを有してなり、該基体には形成すべ
き磁化パターンに応じた凹部が設けられ、少なくとも該
凹部上に非透過層が形成されてなる磁化パターン形成方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録装置に用
いられる磁気ディスクなどの磁気記録媒体の磁化パター
ン形成方法と、これにより作成した磁気記録媒体と磁気
記録装置に関する。また、所定のパターンを形成するに
用いるマスクに関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置(ハードディスクドラ
イブ)に代表される磁気記録装置はコンピュータなどの
情報処理装置の外部記憶装置として広く用いられ、近年
は動画像の録画装置やセットトップボックスのための記
録装置としても使用されつつある。
【0003】磁気ディスク装置は、通常、磁気ディスク
を1枚或いは複数枚を串刺し状に固定するシャフトと、
該シャフトにベアリングを介して接合された磁気ディス
クを回転させるモータと、記録及び/又は再生に用いる
磁気ヘッドと、該ヘッドが取り付けられたアームと、ヘ
ッドアームを介してヘッドを磁気記録媒体上の任意の位
置に移動させることのできるアクチュエータとからな
る。記録再生用ヘッドは通常浮上型ヘッドで、磁気記録
媒体上を一定の浮上量で移動している。また、浮上型ヘ
ッドの他に媒体との距離をより縮めるために、コンタク
トヘッド(接触型ヘッド)の使用も提案されている。
【0004】磁気ディスク装置に搭載される磁気記録媒
体は、一般にアルミニウム合金などからなる基板の表面
にNiP層を形成し、所要の平滑化処理、テキスチャリ
ング処理などを施した後、その上に、金属下地層、磁性
層(情報記録層)、保護層、潤滑層などを順次形成して
作製されている。あるいは、ガラスなどからなる基板の
表面に金属下地層、磁性層(情報記録層)、保護層、潤
滑層などを順次形成して作製されている。磁気記録媒体
には面内磁気記録媒体と垂直磁気記録媒体とがある。面
内磁気記録媒体は、通常、長手記録が行われる。
【0005】磁気記録媒体の高密度化は年々その速度を
増しており、これを実現する技術には様々なものがあ
る。例えば磁気ヘッドの浮上量をより小さくしたり磁気
ヘッドとしてGMRヘッドを採用したり、また磁気ディ
スクの記録層に用いる磁性材料を保磁力の高いものにす
るなどの改良や、磁気ディスクの情報記録トラックの間
隔を狭くするなどが試みられている。例えば100Gb
it/inch2を実現するには、トラック密度は10
0ktpi以上が必要とされる。
【0006】各トラックには、磁気ヘッドを制御するた
めの制御用磁化パターンが形成されている。例えば磁気
ヘッドの位置制御に用いる信号や同期制御に用いる信号
である。情報記録トラックの間隔を狭めてトラック数を
増加させると、データ記録/再生用ヘッドの位置制御に
用いる信号(以下、「サーボ信号」と言うことがあ
る。)もそれに合わせてディスクの半径方向に対して密
に、すなわちより多く設けて精密な制御を行えるように
しなければならない。
【0007】また、データ記録に用いる以外の領域、即
ちサーボ信号に用いる領域や該サーボ領域とデータ記録
領域の間のギャップ部を小さくしてデータ記録領域を広
くし、データ記録容量を上げたいとの要請も大きい。こ
のためにはサーボ信号の出力を上げたり同期信号の精度
を上げる必要がある。従来広く製造に用いられている方
法は、ドライブ(磁気記録装置)のヘッドアクチュエー
タ近傍に穴を開け、その部分にエンコーダ付きのピンを
挿入し、該ピンでアクチュエータを係合し、ヘッドを正
確な位置に駆動してサーボ信号を記録するものである。
しかしながら、位置決め機構とアクチュエータの重心が
異なる位置にあるため、高精度のトラック位置制御がで
きず、サーボ信号を正確に記録するのが困難であった。
【0008】一方、レーザビームを磁気ディスクに照射
してディスク表面を局所的に変形させ物理的な凹凸を形
成することで、凹凸サーボ信号を形成する技術も提案さ
れている。しかし、凹凸により浮上ヘッドが不安定とな
り記録再生に悪影響を及ぼす、凹凸を形成するために大
きなパワーをもつレーザビームを用いる必要がありコス
トがかかる、凹凸を1ずつ形成するために時間がかか
る、といった問題があった。
【0009】このため新しいサーボ信号形成法が提案さ
れている。一例は、高保磁力の磁性層を持つマスターデ
ィスクにサーボパターンを形成し、マスターディスクを
磁気記録媒体に密着させるとともに、外部から補助磁界
をかけて磁化パターンを転写する方法である(USP
5,991,104号)。他の例は、媒体を予め一方向
に磁化しておき、マスターディスクに高透磁率で低保磁
力の軟磁性層などをパターニングし、マスターディスク
を媒体に密着させるとともに外部磁界をかける方法であ
る。軟磁性層がシールドとして働き、シールドされてい
ない領域に磁化パターンが転写される(特開昭50−6
0212号公報(USP3、869、711号)、特開
平10−40544号公報(EP915456号)、"R
eadback Properties of Novel Magnetic Contact Dupli
cation Signals with High Recording Density FD"(Sug
ita,R et.al, Digest of InterMag 2000, GP-06, IEEE
発行)参照)。
【0010】本技術はマスターディスクを用い、強力な
磁界によって磁化パターンを媒体に形成している。一般
に磁界の強度は距離に依存するので、磁界によって磁化
パターンを記録する際には、漏れ磁界によってパターン
境界が不明瞭になりやすい。そこで、漏れ磁界を最小に
するためにマスターディスクと媒体を密着させることが
不可欠である。そしてパターンが微細になるほど、隙間
なく完全に密着させる必要があり、通常、両者は真空吸
着などにより圧着される。
【0011】また、媒体の保磁力が高くなるほど転写に
用いる磁界も大きくなり、漏れ磁界も大きくなるため、
更に完全に密着させる必要がある。従って上記技術は、
保磁力の低い磁気ディスクや圧着しやすい可撓性のフレ
キシブルディスクには適用しやすいが、硬質基板を用い
た、高密度記録用の保磁力が3000Oe以上もあるよ
うな磁気ディスクへの適用が非常に難しい。
【0012】即ち、硬質基板の磁気ディスクは、密着の
際に微小なゴミ等を挟み込み媒体に欠陥が生じたり、或
いは高価なマスターディスクを痛めてしまう恐れがあっ
た。特にガラス基板の場合、ゴミの挟み込みで密着が不
十分になり磁気転写できなかったり、磁気記録媒体にク
ラックが発生したりするという問題があった。また、特
開昭50−60212号(USP3、869、711
号)に記載されたような技術では、ディスクのトラック
方向に対して斜めの角度を有したパターンは、記録は可
能であるが信号強度の弱いパターンしか作れないという
問題があった。保磁力が2000〜2500Oe以上の
高保磁力の磁気記録媒体に対しては、転写の磁界強度を
確保するために、マスターディスクのパターン用強磁性
体(シールド材)は、パーマロイあるいはセンダスト等
の飽和磁束密度の大きい軟磁性体を使わざるを得ない。
【0013】しかし、斜めのパターンでは、磁化反転の
磁界はマスターディスクの強磁性層が作るギャップに垂
直方向となってしまい所望の方向に磁化を傾けることが
できない。その結果、磁界の一部が強磁性層に逃げてし
まい磁気転写の際に所望の部位に十分な磁界がかかりに
くく、十分な磁化反転パターンを形成できず高い信号強
度が得にくくなってしまう。こうした斜めの磁化パター
ンは、再生出力が、トラックに垂直のパターンに対して
アジマスロス以上に大きく減ってしまう。
【0014】これに対して、特願2000−13460
8号及び特願2000−134611号の明細書に記載
された技術は、局所加熱と外部磁界印加を組み合わせて
磁気記録媒体に磁化パターンを形成する。例えば、媒体
を予め一方向に磁化しておき、パターニングされたマス
クを介してエネルギー線等を照射し局所的に加熱し、該
加熱領域の保磁力を下げつつ外部磁界を印加し、加熱領
域に外部磁界による記録を行い、磁化パターンを形成す
る。
【0015】本技術によれば、加熱により保磁力を下げ
て外部磁界を印加するので、外部磁界が媒体の保磁力よ
り高い必要はなく、弱い磁界で記録できる。そして、記
録される領域が加熱領域に限定され、加熱領域以外には
磁界が印加されても記録されないので、媒体にマスク等
を密着させなくても明瞭な磁化パターンが記録できる。
このため圧着によって媒体やマスクを傷つけることな
く、媒体の欠陥を増加させることもない。
【0016】また、本技術では斜めの磁化パターンも良
好に形成できる。従来のようにマスターディスクの軟磁
性体によって外部磁界をシールドする必要がないためで
ある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】このように、上述の磁
化パターン形成技術は、各種の微細な磁化パターンを効
率よく精度よく形成でき、しかも、媒体やマスクを傷つ
けることなく媒体の欠陥を増加させることもない優れた
技術である。この方法によれば、同一のマスクを繰返し
使用することにより、複数の媒体に同一の磁化パターン
を形成することができるため、容易かつ低コストで磁化
パターンの形成を行うことが出来る。
【0018】この磁化パターン形成方法に使用するマス
クは、通常、エネルギー線の透過部と非透過部を有して
おり、一般には、石英ガラス、ソーダライムガラス等の
透明基体上にクロム等の金属をスパッタリング形成し、
その上にフォトレジストを塗布し、エッチング等によっ
て、所望の透過部と非透過部を作成する。この場合は原
盤上にクロム層(非透過層)を有する部分がエネルギー
線非透過部となり、基体のみの部分が透過部となる。
【0019】このように形成したマスクは、通常、基体
の片面上に非透過層からなる凸部を有してなり、凸部の
ある面を媒体に近接させ、或いは略接触させて、磁化パ
ターン形成工程を行う。しかしながらこの技術において
も、同一のマスクを多数回、例えば1万回以上繰返し使
用すると、非透過部であるクロム層がエネルギー線を吸
収し発生する熱により膨張するなどして剥がれてしま
い、マスクが継続使用できなくなるという問題があっ
た。
【0020】マスクが継続使用できなくなり交換頻度が
増すと、煩雑であるばかりでなく生産コストが上昇して
しまう。また、マスクを交換する度に生産ラインを止め
なくてはならず、生産効率も悪化させてしまう。特に近
年、媒体の高保磁力化が進んでいるため、加熱温度をよ
り高くする必要が生じ、照射されるエネルギー線のパワ
ーはより高まる傾向にあり、エネルギー線耐久性の高い
マスクへの要請が高まっていた。
【0021】上記課題に鑑み、本発明は、局所加熱と外
部磁界印加を組み合わせて磁気記録媒体に磁化パターン
を形成する技術において、エネルギー線耐久性の高いマ
スクを提供し、これにより微細な磁化パターンを、低コ
ストで効率よく形成できる磁化パターン形成方法を提供
することを目的とする。ひいてはより高密度記録が可能
な磁気記録媒体及び磁気記録装置を短時間かつ安価に提
供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、基板上
に磁性層を有してなる磁気記録媒体に対し、マスクを介
してエネルギー線を照射し、該磁性層の被照射部を加熱
する工程と、磁性層に外部磁界を印加する工程とを含む
磁化パターン形成方法であって、該マスクが、該エネル
ギー線に対して透過性の基体と非透過性の非透過層とを
有してなり、該基体には形成すべき磁化パターンに応じ
た凹部が設けられ、少なくとも該凹部上に非透過層が形
成されてなることを特徴とする磁化パターン形成方法に
存する。
【0023】本発明の別の要旨は、上記磁化パターン形
成方法により磁化パターンが形成されてなることを特徴
とする磁気記録媒体に存する。本発明の更に別の要旨
は、上記磁化パターン形成方法により磁化パターンが形
成されてなる磁気記録媒体と、磁気記録媒体を記録方向
に駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッ
ドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対移動させ
る手段と、磁気ヘッドへの記録信号入力と磁気ヘッドか
らの再生信号出力を行うための記録再生信号処理手段を
有することを特徴とする磁気記録装置に存する。
【0024】本発明の更に別の要旨は、対象物に対し、
マスクを介してエネルギー線を照射することにより該対
象物に所定のパターンを形成するために用いるマスクで
あって、該マスクが、該エネルギー線に対して透過性の
基体と非透過性の非透過層とを有してなり、該基体は形
成すべきパターンに応じた凹部が設けられ、少なくとも
該凹部上に非透過層が形成されてなることを特徴とする
マスクに存する。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明は、磁気記録媒体にマスクを介してエネル
ギー線を照射する局所加熱工程と磁界印加工程により磁
化パターンを形成する方法において、マスクとして、基
体に凹部を形成し、その凹部に非透過層を形成したマス
クを用いることを特徴とする。
【0026】本発明は、以上の構成により非透過層が基
体から剥離しにくくなる。従来のマスクは、平板状の基
体上に非透過層が形成されていたが、本発明によれば、
基体が凹部を有し、その凹部に非透過層が形成されるの
で、アンカー効果が働き、非透過層と基体との密着性が
高まり非透過層が剥離しにくくなるものと考えられる。
【0027】従って高パワーのエネルギー線が照射され
ても非透過層が基体から剥離するのを防ぐことができ、
エネルギー線耐久性が高まるといった利点がある。そし
て、本発明に係るマスクは多数回継続使用が可能であ
り、交換頻度を減らすことができ、交換作業を減らすこ
とができるだけでなく磁気記録媒体の生産コストを低減
し、かつ生産効率を高めることができる。
【0028】更に、高保磁力媒体(例えば保磁力300
0Oe以上の媒体)に対しては、前述のように照射され
るエネルギー線のパワーをより高める必要があり、本発
明に係るマスクを適用する効果が大きい。本発明に係る
磁化パターン形成方法及びマスクについて、図を用いて
説明する。図1は、本発明に係る磁化パターン形成方法
の一例を説明するための図である。面内磁気ディスク1
は外部磁界により、予め周方向の一方向に一様に磁化さ
れている。その後、磁気ディスク1上にマスク2を載
せ、図示しない留めネジにより固定する。マスク2は石
英からなる透明基体6と非透過層7からなる。基体6の
表面には形成すべき磁化パターンに応じて凹部が形成さ
れ、凹部内にはクロムなどの金属からなる非透過層7が
形成されてなる。さらにマスク2の磁気ディスク1に対
する面には、例えばTiO2とSiO2が積層された誘電
体層(無反射コーティング)8が設けられてなる。
【0029】ここにレーザビーム4が照射され、同時に
外部磁界3を印加する。照射されたエネルギー線は非透
過層6で遮断され、磁気ディスク上にエネルギー線の濃
淡を生ぜしめる。エネルギー線の濃淡はそのまま磁気デ
ィスクの温度差となり、この温度差を利用して磁化パタ
ーンの形成を行う。なお、この外部磁界は先に一様に磁
化した際の外部磁界とは逆方向である。このようにし
て、微細な磁化パターンを効率よく、精度良く形成する
ことができる。この際にマスクと磁気ディスクの距離
は、全面において一定である必要はなく、スペーサーな
どによって距離を適宜調整しても良い。これにより、パ
ターンの線幅によってエネルギー線のパワーやマスクの
パターン線幅の微調整を行うことなく、容易にエネルギ
ー線の濃淡を調整でき、所望の磁化パターンを得ること
ができる。
【0030】基体6に形成する凹部は、非透過層7が剥
離しにくくなる効果を有していればその形状は特に問わ
ず、断面形状は矩形、台形、円形などいずれでもよい。
凹部の深さが深いほど剥離防止効果は高いと考えられ、
10nm以上とするのが好ましい。ただし好ましくは1
0μm以下とする。あまり深いと形成に時間がかかり、
しかも剥離防止効果は大きく向上しないからである。凹
部の幅は、通常、形成すべきパターンに応じて決まる。
【0031】非透過層7の表面は必ずしも、基体6の表
面と同じ高さとする必要はない。つまり、基体上の凹部
全てを埋めていなくてもよいし、逆に凹部の上に盛り上
がって形成されても良い。但し、凹部の深さに比べて凹
部の上に形成される部分が大きくなりすぎると非透過層
7の剥離を防止する効果が小さくなってしまうので、非
透過層の表面の高さは、基体6の表面高さと同じか低く
するのが好ましい。
【0032】磁気記録媒体上にはフッ素系の潤滑剤が塗
布されている場合が多く、高パワーのエネルギー線の照
射によってこの潤滑剤が蒸発し、中に含まれるフッ素系
化合物により、金属からなる非透過層が腐食される虞が
ある。このような腐食を防ぐためにも、非透過層の表面
の高さは低めが良く、基体6の表面高さと同じか低くす
るのが好ましい。
【0033】マスクの材質としては、エネルギー線の使
用波長に対して十分な透明性を得られるものであれば特
に限定されず、ガラス、樹脂などを用いうるが、好まし
くは透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上の
非磁性材質である。このように透過率の高い材料を用い
ることにより、エネルギー線を効率的に利用することが
できる。ただし、透過性が高い材質であってもエネルギ
ー線の吸収が多少あることから、エネルギー線や熱に対
して、ある程度の耐性を有する必要がある。
【0034】また、磁化パターン形成に用いるマスクの
場合には、マスクを非磁性材料で構成することが好まし
い。どのようなパターン形状でも均一な明瞭さで磁化パ
ターンが形成でき、均一で強い再生信号が得られる。強
磁性体を含むマスクの場合は、磁化で磁界分布が乱され
る虞がある。強磁性の性質上、磁気ディスクの半径方向
或いは、半径方向に延びた円弧状のパターンから斜傾し
たパターン形状の場合は、磁化遷移部分で磁区が互いに
十分対抗しないので良質の信号が得にくい。
【0035】以上のような理由から、本発明に係るマス
クにおいてはガラス系の材料が好ましく、更に本発明で
は、微細なパターンを形成する必要性があるため、短波
長のエネルギー線を効率よく扱える石英ガラスを用いる
のがよい。石英ガラスは比較的高価ではあるが、紫外域
のエネルギー線に対して透過性が高いため、特に微細加
工がしやすい300nm以下の短波長のエネルギー線を
使用することができるという利点がある。これより長い
波長のエネルギー線を使用する場合は、コストの面から
光学ガラスを使うのがよい。基体の厚さは制限されない
が、基体のたわみが生じず、安定的に平坦度を出すため
に、は、通常1〜10mm程度が好ましい。
【0036】また、平面性に関しては、装着時にディス
クの歪みを矯正するという観点から、うねりが小さいほ
ど好ましく、サブミクロン以下のパターンを得る為に
は、うねりが2μm以下とするのが好ましい。非透過層
の材質は、使用するエネルギー線を実質的に透過しない
材質及び膜厚であればよく、金属や半金属、誘電体、有
機物等が用いうるが、エネルギー線に対する耐久性が高
くガラス系材料との密着性が良い点で金属または半金属
とするのが好ましい。ここで、金属又は半金属には合金
も含まれる。一般に金属はスパッタリング法などにより
成膜した場合に誘電体等に比べて一般に成膜速度が速
く、マスク作製時間を短縮できる点でも好ましい。
【0037】金属または半金属としては例えば、Cr、
Al、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Ti、Ni、T
a、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、R
e、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、I
n、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi及びこ
れらを主成分とする合金などが挙げられる。主成分と
は、合金においてそれら元素が50原子%以上を占める
場合を言う。
【0038】非透過層として好ましくは反射率が高い材
料を用いる。例えばCr、Al、Pt、Au、Ag、C
u、Pd、Ti、Si、Ni、Ta及びこれらを主成分
とする合金などである。特にはSi、Al、Pt、A
u、Ag、Cu、Cr及びこれらを主成分とする合金が
好ましい。Pt及びPt合金は耐腐食性が高く、潤滑剤
が分解して発生するフッ素化合物により腐食されにくい
点でも好ましい。また、Cr及びCr合金はガラスとの
密着性が特に高く、遮光性も高いので好ましい。
【0039】中でも、Si及びMoSiNなどのSi系
化合物は、反射率が高く、ガラスとの密着性も高いほ
か、化学的に安定であるため特に好ましい。なお、必要
に応じて非透過層は2層以上の複数層としてもよい。或
いは、非透過層の上に他の層を設けても良い。例えば、
非透過層表面の反射率を下げるために酸化クロムなどの
層を設けることがありうる。
【0040】非透過層の膜厚は、十分な非透過性(エネ
ルギー線の遮光性)と所望の反射率、エネルギー線耐久
性が得られる程度であれば良く、膜の緻密性、即ち成膜
方法によっても異なるが、概ね40nm以上が好まし
い。エネルギー線耐久性を重視すれば厚いほど好まし
く、例えば160nm以上が好ましく、より好ましくは
200nm以上である。但しあまり厚いと成膜時間が長
くなりすぎるため、500nm以下が好ましい。
【0041】なお、非透過層の表面が基体表面よりも高
い場合に、複数の非透過層の間に、エネルギー線を透過
する材料を埋め込んでマスク表面をより平坦にしてもよ
い。本発明のマスクにおいて好ましくは、エネルギー線
の透過部と非透過部からなるパターン領域における、エ
ネルギー線透過部の面積が50%を超えるものとする。
すなわち、透過部の面積を従来より大きくする。
【0042】このようなマスクを用いることによって、
磁気記録媒体に第1外部磁界により初期磁化領域を形成
した後、エネルギー線により局所加熱し第2外部磁界に
より一部を磁化反転させて磁化パターンを形成するにあ
たり、初期磁化領域のうち50%より大きな面積を局所
加熱して磁化反転させる。本発明者らの検討によればエ
ネルギー線が照射される面積が小さいほど、磁気記録媒
体の損傷が起こりやすいことが分かっている。推定され
る理由としては、エネルギー線照射面積が小さいと、照
射されたエネルギーによって媒体に発生する熱応力が大
きくなるのではないかと考えられる。
【0043】これに対してマスクを上記構成とし、エネ
ルギー線により局所加熱する面積を大きくすることによ
り、照射されたエネルギーによって媒体に発生する熱応
力を小さく抑えることができ、媒体に損傷を起こりにく
くすることができる。従来通常用いられていたマスク
は、パターン領域のほとんどがクロム層で覆われた非透
過部で、透過部はごく一部であった。一般的なマスク製
造法によれば、透過部を大面積とするためには、大面積
に亘ってクロム層を均一にエッチング除去する必要があ
り、コストも時間も多く要してしまう。
【0044】しかし本発明に係るマスクはガラスのエッ
チング部分が非透過部となるため、透過部の面積を大き
くし非透過部の面積を小さくするのに適しており、パタ
ーン領域におけるエネルギー線透過部の面積が50%を
超えるようなマスクを容易に製造できる。本発明におい
ては、マスクの磁気記録媒体に対する面の最外層に誘電
体層を形成するのが好ましい。これは一般に無反射コー
ティングとも呼ばれる。このような処置を施すことによ
り、マスクの反射率を低下させ、干渉縞の形成を弱める
ことができ、さらにエネルギー線の有効利用を図ること
ができる。
【0045】但し、マスクの磁気記録媒体に対する面で
あっても、磁化パターン形成領域に対応する領域以外
は、必ずしも最外層に誘電体層を形成しなくてもよい。
従来、マスクの磁気記録媒体に対する面は、通常、光透
過性基体上に非透過層が形成された凹凸構造を有してい
たが、このような凹凸を有する面は角部に応力が集中し
やすく、平坦面に比べて誘電体層が剥離しやすいという
問題があった。しかし、本発明によればマスク表面を平
坦面とすることができるのでそのような問題が無く、誘
電体層が剥離しにくいといった利点がある。
【0046】また、磁気記録媒体に対して反対側の面の
最外層をも誘電体層としたマスク10Cは、さらに反射
が低減でき、より好ましい。この場合、誘電体層は、そ
の目的波長によって種類、厚み、積層方法等が異なる
が、一般的には、使用するエネルギー線の波長に対する
透明性が高いこと、適切な屈折率、エネルギー線の照射
に耐えうる高融点であることが求められ、金属や半導体
の酸化物、硫化物、窒化物やCa、Mg、Al、Li等
のフッ化物が用いられる。これらの酸化物、硫化物、窒
化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要は
なく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合
して用いることも有効である。
【0047】例えば、MgF2、ThOF2、SiO2
SiO、TiO2、Ta25、ZrO 2、CeO2、Mo
2、Al23、La23、Cu2O、WO3、Si
34、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、InSな
どの1層又は2層以上を成膜すれば良い。特にはMgF
2、ThOF2、SiO2、TiO2、CeO2、Al
23、ZnSが用いられる。この誘電体層はこれらの2
種以上を含む複合誘電体であってもよく、その純度も任
意であって、目的に応じて選べばよい。
【0048】以上説明したマスクは、その発明の趣旨か
ら、磁化パターン形成法に限られず、広くレーザー加工
一般用のマスクとしても好適に用いることができる。ま
た、本発明に係るマスクは、一般に連続エネルギー線に
比べてパワー尖頭値が高くマスクの損傷が起きやすい、
パルス状エネルギー線をマスクに照射するような方法に
適用すると効果が高い。特には、パルス状エネルギー線
の1パルス当たりのパワーが10mJ/cm2以上、1
000mJ/cm2以下であるような場合である。
【0049】次に、本発明に係るマスクの製造方法につ
いて説明する。マスク基体上の、パターンに応じた凹部
は、マスク基体に化学的エッチングや物理的エッチング
を施すことで製造することができる。化学的エッチング
は化学反応を起こすことにより、マスク基体を腐食等さ
せてエッチングを行う方法であり、物理的エッチングは
機械などを用い、物理的にマスクの表面を削り取りエッ
チングを行う方法である。
【0050】本発明においては、微細なパターンが作成
可能であり、簡便かつ安価に本発明に係るマスクを作成
することができる点で、化学的エッチングによる方法が
好ましい。このようにしてエッチングを行った部分が凹
部となる。化学的エッチングの手順としては、エッチン
グ処理に先立って、まず、マスク基体上にフォトレジス
ト層を形成したのち、通常、露光及び現像処理(フォト
リソグラフィー)によりフォトレジスト層に磁化パター
ンに応じた凹凸を形成する。その後にエッチング処理を
行うが、エッチング処理には大別して2種類の方法があ
り、一つはウエットエッチングであり、もう一つはドラ
イエッチングである。
【0051】ウエットエッチングは、上述の磁化パター
ンに応じたフォトレジスト層を有するマスク基体を、酸
性フッ化アンモニウムなどの酸性のフッ素イオン含有水
溶液中に浸漬し、マスク基体の露出部分を腐食溶解する
方法である。この方法によれば、腐食は等方的に進み、
通常、凹部の断面は半円形状に形成される。ドライエッ
チングは、上述の磁化パターンに応じたフォトレジスト
層を有するマスク基体を、プラズマ化したフッ化物含有
ガスをマスク基体の露出部に作用させ、基板をガス化さ
せて除去する方法である。この方法によればエッチング
速度はガス粒子の飛来方向に応じて異なり、通常、深さ
方向に特異的にエッチングが進む。従って、通常、凹部
の断面は矩形に近い形状に形成される。
【0052】本発明に係るマスクの製造においては、よ
り安定して微細なパターンのマスクを形成することが可
能であり、溝底部の粗さを適切に制御することが可能で
ある点からドライエッチングによる作成するのが好まし
い。また、本発明においてフッ化物を含有するガスを用
いてドライエッチングをする際には、フォトレジストに
代えてクロム層を遮蔽材として用いることで、安定に深
い溝のエッチングが可能である。ドライエッチングでは
酸化物を選択的にエッチングし、金属に対するエッチン
グ速度はきわめて遅いためである。
【0053】この方法は、まず、石英ガラスに金属クロ
ム層を成膜したのち、フォトレジストを塗布し、電子ビ
ーム描画装置、もしくはレーザ描画装置を用いて所望の
パターンを形成する。次にフォトレジストを現像して描
画部分のフォトレジストを除去し、更に、硝酸セリウム
などを含有するクロム用エッチング液により描画部分の
クロムを除去する。エッチング工程は、反応性イオンエ
ッチング(RIE)を用いたドライエッチング法によっ
ても可能である。次いでアセトンなどの有機溶媒により
フォトレジスト層を除去する。ここまでの工程は、従来
の製造工程と同様である。次に、こうして形成されたク
ロムパターンを遮蔽材として、更に反応性イオンエッチ
ング(RIE)を行うことで、マスク基体をエッチング
し、凹部を形成する。
【0054】この方法によれば、矩形、V字型や台形型
の溝を作ることが可能である。以上述べたとおり、本発
明のマスクによれば、高パワーのエネルギー線が照射さ
れても非透過層が基体から剥離するのを防ぐことがで
き、エネルギー線耐久性が高まるといった利点がある。
次に、本発明に係るマスクを用いた磁化パターン形成方
法について説明する。
【0055】まず、本発明の、局所加熱と外部磁界印加
を組み合わせて磁気記録媒体に磁化パターンを形成する
技術について説明する。本発明の磁化パターン形成方法
において好ましくは、第1の外部磁界を印加し磁性層を
予め所望の方向に均一に磁化したのち、磁性層を局所的
に加熱すると同時に第2の外部磁界を印加し加熱部を該
所望の方向とは逆方向に磁化して磁化パターンを形成す
る。これにより、互いに逆向きの磁区が明りょうに形成
されるので、信号強度が強くC/N及びS/Nが良好な
磁化パターンが得られる。
【0056】まず、磁気記録媒体に強い第1外部磁界を
印加して、磁性層全体を所望の磁化方向に均一に磁化す
る。第1外部磁界を印加する手段は、磁気ヘッドを用い
てもよいし、電磁石または永久磁石を、所望の磁化方向
に磁界が生じるよう配置して用いてもよい。更にそれら
手段を組み合わせて使用してもよい。なお、所望の磁化
方向とは、磁化容易軸が面内方向にある媒体の場合に
は、データの記録/再生ヘッドの走行方向(媒体とヘッ
ドの相対移動方向)と同一又は逆方向であり、磁化容易
軸が面内方向に垂直にある場合には、垂直方向のいずれ
か(上向き、下向き)である。従ってそのように磁化さ
れるように、第1外部磁界を印加する。媒体が円板形状
である場合、第1外部磁界の印加方向は、周方向、半径
方向、板面に垂直方向のいずれかをとるのが好ましい。
【0057】また、磁性層全体を所望の方向に均一に磁
化するとは、磁性層の全部をほぼ同一方向に磁化するこ
とを言うが、厳密に全部ではなく、少なくとも磁化パタ
ーンを形成すべき領域が同一方向に磁化されていればよ
い。第1外部磁界の強さは磁性層の保磁力に合わせて設
定すればよいが、磁性層の室温での保磁力(静的保磁
力)の2倍以上の磁界によって磁化することが好まし
い。これより弱いと磁化が不十分となる可能性がある。
ただし、通常、磁界印加に用いる着磁装置の能力上、磁
性層の室温での保磁力の5倍以下程度である。室温とは
例えば25℃である。また磁気記録媒体の保磁力は、磁
性層(記録層)の保磁力とほぼ同じである。
【0058】磁性層は一般に静的保磁力(単に保磁力と
称することもある。)と動的保磁力を有するが、局所加
熱については、少なくとも磁性層の動的保磁力がある程
度低下する温度まで加熱できればよい。勿論、静的保磁
力が低下する温度まで加熱してもよい。好ましくは10
0℃以上に加熱する。加熱温度が100℃未満で外部磁
界の影響を受ける磁性層は、室温での磁区の安定性が低
い傾向がある。
【0059】ただし、加熱温度は所望の保磁力の低下が
得られる範囲で低いことが望ましい。例えば磁性層の磁
化消失温度やキュリー温度の近傍までである。加熱温度
が高すぎると加熱したい領域以外への熱拡散が起こりや
すく、パターンがぼやけてしまう虞がある。また、磁性
層が変形してしまう可能性がある。更に、通常、磁気記
録媒体の表面には潤滑剤からなる潤滑層が形成されてお
り、加熱による潤滑剤の劣化等の悪影響を防止するため
にも、加熱温度は低いほど好ましい。加熱により潤滑剤
が分解などの劣化を起こしたり気化して減少したりする
虞があるほか、特に近接露光の場合には気化した潤滑剤
がマスク等に付着する虞もある。従って本発明の磁化パ
ターン形成法を、潤滑層を備えた磁気記録媒体に工業的
に適用可能にするためにも、加熱温度はできるだけ低い
ことが望ましい。
【0060】このため加熱温度は磁性層のキュリー温度
以下とするのが好ましい。例えば300℃以下とするの
が好ましく、より好ましくは250℃以下であり、更に
好ましくは200℃以下である。次に、加熱と同時に印
加する第2の外部磁界の方向は、一般に、第1外部磁界
と逆方向である。媒体が円板形状である場合、第2の外
部磁界の印加方向は、周方向、半径方向、板面に垂直方
向のいずれかをとるのが好ましい。
【0061】なお、加熱のためにパルス状エネルギー線
を使用する際には、第2外部磁界は連続的に印加しても
パルス状に印加しても良い。また第2外部磁界がパルス
状磁界である場合は、パルス状磁界成分のみであっても
よいし、パルス状磁界成分と静磁界成分の組合せであっ
てもよい。このとき、パルス状磁界成分と静磁界成分の
合計を第2外部磁界の強度とする。
【0062】第2外部磁界の最大強度は、強いほど磁化
パターンが形成しやすい。磁気記録媒体の磁性層の特性
によって最適強度は異なるが、第2外部磁界が静磁界の
場合は、室温の保磁力(静的保磁力)の1/8以上であ
ることが好ましい。これより弱いと、加熱部が、冷却時
に周囲の磁区からの磁界の影響をうけて再び周囲と同じ
方向に磁化されてしまう可能性がある。ただし、磁性層
の室温での保磁力の2/3以下とするのが好ましく、1
/2倍以下とするのがより好ましい。これより大きい
と、加熱部の周囲の磁区も影響を受けてしまう可能性が
ある。
【0063】第2外部磁界がパルス状磁界の場合は、室
温の保磁力(静的保磁力)の2/3以上であることが好
ましい。あまり弱いと加熱領域が良好に磁化されない虞
がある。さらに好ましくは室温の静的保磁力の3/4以
上である。室温での静的保磁力より強い磁界をかけても
よい。ただし、磁性層の室温での動的保磁力より小さい
磁界とする。第2外部磁界がこれより大きいと、非加熱
領域の磁化に影響を与えてしまうからである。
【0064】なお本発明において、磁界強度の値H(O
e)は磁束密度の値B(Gauss)でそのまま代用で
きる。一般にB=μH(ただし、μは透磁率を表す)の
関係があるが、通常磁化パターンの形成は空気中で行わ
れるため、透磁率は1であって、B=Hの関係が成り立
つからである。第2外部磁界を印加する手段は、磁気ヘ
ッドを用いてもよいし、電磁石または、永久磁石を所望
の磁化方向に磁界が生じるよう複数個配置して用いても
よい、更にそれらの異なる手段を組み合わせて使用して
もよい。高密度記録に適した高保磁力媒体を効率よく磁
化するためには、フェライト磁石、ネオジム系希土類磁
石、サマリウムコバルト系希土類磁石などの永久磁石が
好適である。
【0065】第2外部磁界がパルス状磁界である場合
は、パルス状磁界印加手段のみであってもよいし、パル
ス状磁界印加手段と静磁界印加手段の組合せであっても
よい。例えば前者では、電磁石などでパルス状磁界のみ
を発生する。例えば後者では、永久磁石または電磁石に
よってある程度の大きさの静磁界を与えておき、それ以
上の磁界を電磁石でパルス状に印加する。インダクタン
スの小さな空芯コイルを用いると、パルス幅を狭くでき
磁界印加時間を短くできるため好ましい。また、永久磁
石のかわりに他のヨーク型などの電磁石を用いてもよ
い。
【0066】静磁界とパルス状磁界を組み合わせると、
パルス状に印加する磁界を小さくすることができる。一
般に電磁石は磁界が大きくなるほどパルス幅を短くする
ことが困難になるので、それだけパルス幅を短くしやす
い。或いはパルス状磁界は、常時磁界を発生する磁石を
短時間のみ磁気記録媒体に接近させる方式によって印加
することもできる。例えば、磁気記録媒体の一部に永久
磁石によって磁界を印加しつつ、媒体を所定以上の速度
で回転させればよい。
【0067】また、第2外部磁界が静磁界とパルス状磁
界の組み合わせの場合は、静磁界の磁界強度を磁性層の
室温での静的保磁力より小さくする。好ましくは静的保
磁力の2/3以下とし、より好ましくは1/2倍以下と
する。あまり大きいと、形成した磁化パターンに影響を
与えてしまい出力が落ちるだけでなく、モジュレーショ
ンが悪化する。下限は特にないが、あまり弱いと静磁界
を用いる意味が小さくなるので、例えば磁性層の室温で
の静的保磁力の1/8以上とする。
【0068】次に、第2外部磁界がパルス状磁界である
場合のパルス幅について説明する。本発明では第2外部
磁界のパルス状磁界成分のパルス幅を、単に第2外部磁
界のパルス幅と称する。ここで、磁界のパルス幅とは半
値幅を指す。第2外部磁界のパルス幅は通常100ms
ec以下とする。好ましくは10msec以下とする。
第2外部磁界のパルス幅を短くするほど印加できる磁界
の上限値が大きくなる。動的保磁力の値は磁界の印加時
間によって変化し、第2外部磁界のパルス幅を短くする
ほど磁性層の室温での動的保磁力が大きくなるからであ
る。より好ましくは1msec以下とする。
【0069】ただし好ましくは10nsec以上とす
る。あまり短いとそれだけ動的保磁力が大きくなるた
め、加熱領域を磁化するために必要な第2外部磁界が大
きくなってしまう。また、磁界の大きさにもよるが、電
磁石の特性上磁界の立上がり、立下がりには時間を要す
るので、パルス幅を短くするのには限界がある。より好
ましくは100nsec以上とする。ここで、磁界のパ
ルス幅は半値幅を指す。
【0070】局所加熱にパルス状エネルギー線を使用す
る場合は、第2外部磁界のパルス幅はパルス状エネルギ
ー線のパルス幅以上とする。これ以下であると、局所加
熱中に磁界が変化してしまうので磁化パターンが良好に
形成されないためである。またパルス状エネルギー線と
パルス状の第2外部磁界を同期させ、同時に印加するの
が好ましい。通常、エネルギー線のパルス幅より磁界の
パルス幅のほうが長いと考えられるが、このときは第2
外部磁界のパルスを印加し、磁界が最大になるところで
エネルギー線のパルスが印加されるよう制御するのが好
ましい。
【0071】動的保磁力を高めた磁気記録媒体やAFC
媒体には、第2外部磁界としてパルス状磁界を適用する
と特に効果が高い。例えば、記録用の磁性層とともに熱
的に安定性を保つための安定化磁性層を有する、2層の
磁性層を備えた磁気記録媒体が挙げられる。安定化磁性
層が記録用磁性層の瞬時の磁化反転を抑えるように働く
ため、動的保磁力が高く、従来法では磁化パターンが形
成しにくい。このような媒体に静的保磁力近傍或いはそ
れ以上の外部磁界を、パルス状に与えると良好な磁化パ
ターンが形成できる。
【0072】第2の外部磁界は、外部磁界も該加熱され
た広い領域に亘って印加することで、複数の磁化パター
ンを一度に形成することができる。局所加熱が磁気記録
媒体全面に一度に行える場合は、加熱と同時に第2の外
部磁界も媒体全面に印加し磁化パターンを形成すること
が望ましい。これにより、より短時間での磁化パターン
形成が可能となり大きくコストを削減できる。また、磁
界を媒体の一部分にのみ印加するには、それ以外の領域
への磁界が及ばないよう磁石配置を工夫したり特定の手
段を講じることが多いが、全面に印加する場合はその必
要がない。なおかつ、回転機構或いは移動機構が不要と
なるので、装置構成も簡単になり磁気記録媒体が安価に
得られる。
【0073】例えば、媒体が直径が2.5インチ以下の
小径のディスク状磁気記録媒体であると、簡単な配置や
手段によってディスク全面へのエネルギー線照射、磁界
印加が行え好ましい。より好ましくは直径1インチ以下
である。また、ディスク状磁気記録媒体に対し、円周方
向に磁界を印加したい場合は、媒体の中心に垂直方向の
大きなパルス電流を流すことによって、簡便に円周方向
の磁界を発生させることができる。これは特に、直径1
インチ以下の小径のディスク状磁気記録媒体に適用する
と好ましい。
【0074】本発明は、記録再生用磁気ヘッドを制御す
るための制御用情報を持つ磁化パターンの形成に好適で
ある。例えばヘッドの位置に対応した信号を発生するパ
ターンである。制御用情報は、その情報を用いて磁気ヘ
ッドなどの記録再生手段を制御するものであるが、例え
ば、磁気ヘッドをデータトラックに位置決めするための
サーボ情報や、媒体上での磁気ヘッドの位置を示すアド
レス情報、磁気ヘッドによる記録再生速度を制御するた
めの同期情報などが含まれる。或いは、サーボ情報を後
で書込むための、基準情報も含まれる。
【0075】これら制御用磁化パターンは高精度で形成
される必要があり、特にサーボパターンは、データトラ
ックの位置制御用パターンであるため、サーボパターン
の精度が悪いとヘッドの位置制御も粗くなるため、サー
ボパターン以上に高い位置精度をもったデータパターン
は理論的に記録できず、従って媒体の記録密度が高くな
るほどサーボパターンは高精度に形成される必要があ
る。
【0076】本発明では精度の高いサーボパターン又は
基準パターンが得られるため、特にトラック密度が40
kTPI以上であるような高密度記録用の磁気記録媒体
に適用すると効果が高い。次に、本発明における磁性層
の局所的な加熱の方法について説明する。加熱手段は、
磁性層表面を部分的に加熱できる機能を備えていればよ
いが、不要な部分への熱拡散防止やコントロール性を考
えると、パワーコントロール、加熱する部位の大きさが
制御しやすいレーザ等のエネルギー線を利用する。
【0077】ここで、マスクを併用することで、エネル
ギー線をマスクを介して照射し複数の磁化パターンを一
度に形成することができるため、磁化パターン形成工程
が短時間となりかつ簡便である。エネルギー線は連続照
射よりもパルス状にして加熱部位の制御や加熱温度の制
御を行うのが好ましい。特にパルスレーザ光源の使用が
好適である。パルスレーザ光源はレーザをパルス状に断
続的に発振するものであり、連続レーザを音響光学素子
(AO)や電気光学素子(EO)などの光学部品で断続
させパルス化するのに比して、パワー尖頭値の高いレー
ザをごく短時間に照射することができ熱の蓄積が起こり
にくく非常に好ましい。
【0078】連続レーザを光学部品によりパルス化した
場合、パルス内ではそのパルス幅に亘ってほぼ同じパワ
ーを持つ。一方パルスレーザ光源は、例えば光源内で共
振によりエネルギーをためて、パルスとしてレーザを一
度に放出するため、パルス内では尖頭のパワーが非常に
大きく、その後小さくなっていく。本発明では、コント
ラストが高く精度の高い磁化パターンを形成するため
に、ごく短時間に急激に加熱しその後急冷させるのが好
ましいため、パルスレーザ光源の使用が適している。
【0079】磁化パターンが形成される媒体面は、パル
ス状エネルギー線の照射時と非照射時で温度差が大きい
方が、パターンのコントラストを上げ、或いは記録密度
を上げるために好ましい。従ってパルス状エネルギー線
の非照射時には室温以下程度になっているのが好まし
い。室温とは25℃程度である。なお、パルス状エネル
ギー線を使用する際に、外部磁界は連続的に印加しても
パルス状に印加しても良い。
【0080】エネルギー線の波長は、1100nm以下
であることが好ましい。これより波長が短いと回折作用
が小さく分解能が上がるため、微細な磁化パターンを形
成しやすい。更に好ましくは、600nm以下の波長で
ある。高分解能であるだけでなく、回折が小さいため間
隙によるマスクと磁気記録媒体のスペーシングも広くと
れハンドリングがしやすく、磁化パターン形成装置が構
成しやすくなるという利点が生まれる。また、波長は1
50nm以上であるのが好ましい。150nm未満で
は、マスクに用いる合成石英の吸収が大きくなり、加熱
が不十分となりやすい。波長を350nm以上とすれ
ば、光学ガラスをマスクとして使用することもできる。
【0081】具体的には、エキシマレーザ(157,1
93,248,308,351nm)、YAGのQスイ
ッチレーザ(1064nm)の2倍波(532nm)、
3倍波(355nm)、或いは4倍波(266nm)、
Arレーザ(488nm、514nm)、ルビーレーザ
(694nm)などである。エネルギー線のパワーは、
外部磁界の大きさによって最適な値を選べばよいが、パ
ルス状エネルギー線の1パルス当たりのパワーは100
0mJ/cm2以下とすることが好ましい。これより大
きなパワーをかけると、パルス状エネルギー線によって
該磁気記録媒体表面が損傷を受け変形を起こす可能性が
ある。変形により媒体の粗度Raが3nm以上やうねり
Waが5nm以上に大きくなると、浮上型/接触型ヘッ
ドの走行に支障を来すおそれがある。
【0082】より好ましくは500mJ/cm2以下で
あり、更に好ましくは200mJ/cm2以下である。
この領域であると比較的熱拡散の大きな基板を用いた場
合でも分解能の高い磁化パターンが形成しやすい。ま
た、パワーは10mJ/cm2以上とするのが好まし
い。これより小さいと、磁性層の温度が上がりにくく磁
気転写が起こりにくい。なお、エネルギー線のディフラ
クションの影響がパターン幅により変わるので、パター
ン幅に応じて最適なパワーも変化する。また、エネルギ
ー線の波長が短いほど、印加可能なパワーの上限値は低
下する傾向にある。
【0083】また、エネルギー線による磁性層、保護
層、潤滑層の損傷が心配される場合は、パルス状エネル
ギー線のパワーを小さくして、該パルス状エネルギー線
と同時に印加される磁界強度を上げるといった手段を取
ることもできる。なお、保護層と潤滑層を介してパルス
状エネルギー線を照射するにあたり、潤滑剤の受けるダ
メージ(分解、重合)等も考慮し、照射後に再塗布する
などの必要がある場合がある。
【0084】パルス状エネルギー線のパルス幅は、1μ
sec以下であることが望ましい。これよりパルス幅が
広いと磁気記録媒体に与えたエネルギーによる発熱が分
散して、分解能が低下しやすい。1パルス当たりのパワ
ーが同じ場合、パルス幅を短くし一度に強いエネルギー
を照射した方が、熱拡散が小さく磁化パターンの分解能
が高くなる傾向にある。より好ましくは100nsec
以下である。この領域であるとAlなど金属の比較的熱
拡散の大きな基板を用いた場合でも分解能の高い磁化パ
ターンが形成しやすい。最小幅が2μm以下のパターン
を形成する際には、パルス幅を25nsec以下とする
のがよい。即ち、分解能を重視すれば、パルス幅は短い
ほど良い。また、パルス幅は1nsec以上であるのが
好ましい。磁性層の磁化反転が完了するまでの時間、加
熱を保持しておくのが好ましいからである。
【0085】なお、本発明においてパターンの最小幅と
は、パターン中の最も狭い長さを言う。四角形のパター
ンであれば短辺、円形ならば直径、楕円形ならば短径で
ある。なお、パルス状レーザの一種として、モードロッ
クレーザのようにピコ秒、フェムト秒レベルの超短パル
スを高周波で発生できるレーザがある。超短パルスを高
周波で照射している期間においては、各々の超短パルス
間のごく短い時間はレーザが照射されないが非常に短い
時間であるため加熱部はほとんど冷却されない。例え
ば、一旦200℃に昇温された領域はほぼ200℃に保
たれる。
【0086】従ってこのような場合、連続照射期間(超
短パルス間のレーザが照射されない時間も含めた連続照
射期間)を1パルスとする。また連続照射期間の照射エ
ネルギー量の積分値を1パルス当たりのパワー(mJ/
cm2)とする。また、レーザなどのエネルギー線は、
一般にビームスポット内で強度分布(エネルギー密度分
布)を有しており、エネルギー線を照射して局部加熱し
た場合もエネルギー密度による温度上昇の違いが生じ
る。このため加熱ムラにより局部的に転写の強度の違い
が起こる。そこで好ましくは、エネルギー線に予め強度
分布の均一化処理をなす。照射した領域の加熱状態の分
布を小さく抑えられ、磁化パターンの磁気的強さの分布
を小さく抑えることができる。従って磁気ヘッドを使用
して信号強度を読み取る際に、信号強度の均一性の高い
磁化パターンを形成することができる。
【0087】強度分布の均一化処理としては、例えば以
下のような処理が挙げられる。ホモジナイザやコンデン
サレンズを用いて均一化したり、遮光板やスリットなど
でエネルギー線の強度分布の小さい部分だけを透過し必
要に応じて拡大する、などである。本発明のマスクは、
エネルギー線の透過部と非透過部を有するいわゆるフォ
トマスクであり、エネルギー線の強度分布を形成すべき
磁化パターンに対応して変化させ、磁気ディスク面上に
エネルギー線の濃淡(強度分布)を形成する。これによ
り、複数又は広い面積の磁化パターンを一度に形成する
ことができるため、磁化パターン形成工程が短時間かつ
簡便なものとなる。
【0088】マスクは磁気ディスク全面を覆うものでな
くてもよい。磁化パターンの繰り返し単位を含む大きさ
があれば、それを移動させて使用することができる。ま
た、マスクの材質は限定されないが、本発明においてマ
スクを非磁性材料で構成すると、どのようなパターン形
状でも均一な明瞭さで磁化パターンが形成でき、均一で
強い再生信号が得られるので好ましい。
【0089】強磁性体を含むマスクを使用した場合は、
磁化で磁界分布が乱される虞がある。強磁性の性質上、
磁気ディスクの半径方向或いは、半径方向に延びた円弧
状のパターンから斜傾したパターン形状の場合は、磁化
遷移部分で磁区が互いに十分対抗しないので良質の信号
が得にくい。マスクはエネルギー線の光源と磁気記録媒
体の間に配置する。磁化パターンの精度を重視するなら
ば、マスクの全部又は一部を媒体に接触させるのが好ま
しい。レーザ光の回折の影響を極力少なくでき、高い分
解能を持った磁化パターンを形成できる。例えばマスク
を媒体上に静置した場合は、媒体表面の数μm程度のう
ねりにより、媒体と接触する部分としない部分ができ
る。ただし、媒体に圧痕を形成したり損傷することのな
いよう、マスクと媒体に対する加圧は100g/cm2
以下とする。
【0090】ただし、欠陥や傷を少なくするためには、
少なくとも媒体の磁化パターンを形成する領域では、マ
スクと媒体とのあいだに間隙を設けるのが好ましい。ゴ
ミ等の挟み込みによる媒体やマスクの傷つき、欠陥発生
を抑えることができる。また、磁化パターン形成前に潤
滑層が設けられている場合は、特に、マスクと媒体との
あいだに間隙を設けるのが好ましい。マスクに潤滑剤が
付着するのを最小限にするためである。また、潤滑層が
設けられたディスクとマスクを接触させた状態で大パワ
ーのエネルギー線を照射すると潤滑剤の急激な気化によ
り爆発状態となり、潤滑剤が飛散したり、更にはマスク
が破損したりする虞があるためである。
【0091】磁気記録媒体の磁化パターン形成領域とマ
スクの間隙を保つ方法としては、両者を一定距離に保て
る方法であればよい。例えばマスクと媒体とを特定の装
置により保持して一定距離を保っても良い。また、両者
のあいだの、磁化パターン形成領域以外の場所にスペー
サを挿入してもよい。マスク自体に、スペーサを一体形
成しても良い。
【0092】マスクと磁気記録媒体とのあいだに、媒体
の磁化パターン形成領域の外周部又は/及び内周部にス
ペーサを設けると磁気記録媒体表面のうねりを矯正する
効果が生まれるので磁化パターン形成の精度が上がるの
でよい。スペーサの材質は硬質のものが良い。また、パ
ターン形成に外部磁界を用いるので磁化されないものが
良い。好ましくは、ステンレス、銅などの金属や、ポリ
イミドなどの樹脂である。高さは任意だが、通常、数μ
m〜数百μmである。
【0093】マスクと磁気記録媒体の最小間隙は0.1
μm以上あることが好ましく、これにより、ゴミ等の挟
み込みによる磁気記録媒体やマスクの損傷、欠陥発生を
抑えることができる。即ち、間隔を0.1μm以上とす
ることで媒体表面のうねりにより磁化パターン形成部分
がマスクと予期せぬ接触を起こすのを防ぐ。従って、接
触部分で媒体の熱伝導度が変わるため、そこだけ磁化さ
れやすさが特異的に変化し、所望のパターン通りに磁化
パターンが形成されないといった問題がない。より好ま
しくは0.2μm以上とする。ただし、間隔は1mm以
下とするのが好ましい。これにより、エネルギー線の回
折を小さく、磁化パターンがぼやけるといった問題がな
い。
【0094】例えば、エキシマレーザ(248nm)を
用い、マスクに形成された2×2μmのパターン(2μ
mの透過部と2μmの非透過部を交互に持つパターン)
を媒体に転写する場合、マスクと媒体のあいだの距離は
25〜45μm程度以下に保つ必要がある。これ以上距
離が大きいと、回折現象によってレーザ光の明暗のパタ
ーンが鮮明でなくなる。1×1μmのパターン(1μm
の透過部と1μmの非透過部を交互に持つパターン)の
場合、距離は10〜15μm程度以下とする。
【0095】マスクを用いる場合は、上記条件の範囲内
で、媒体との距離をできるだけ短くするのが好ましい。
距離が長いほど照射するエネルギー線の回り込みにより
磁化パターンがぼやけやすくなるためである。これを改
善し、より明瞭なパターンを得るために、マスクの透過
部の外側に、回折格子の働きをする細い透過部を形成し
たり、半波長板の働きをする手段を設けたりすることで
回り込み光を干渉により打ち消すこともできる。
【0096】磁気ディスクはディスクの主両面に磁性層
が形成されている場合があるが、その場合、本発明の磁
化パターン形成は片面づつ、逐次に行ってもよいし、マ
スク、エネルギー照射系および外部磁界を印加する手段
を磁気ディスクの両面に設置して、両面同時に磁化パタ
ーン形成を行うこともできる。一面に二層以上の磁性層
が形成されており、それぞれに異なるパターンを形成し
たい場合は、照射するエネルギー線の焦点を各層に合わ
せることにより、各層を個別に加熱し、個別のパターン
を形成できる。
【0097】磁化パターンを形成する際には、エネルギ
ー線の光源とマスクとの間、又はマスクと該媒体との間
の照射をしたくない領域に、エネルギー線を部分的に遮
光可能な遮光板を設けて、エネルギー線の再照射を防ぐ
構造とするのが好ましい。遮光板としては、使用するエ
ネルギー線の波長を透過しないものであればよく、エネ
ルギー線を反射又は吸収すればよい。ただし、エネルギ
ー線を吸収すると加熱し磁化パターンに影響を与えやす
いため、熱伝導率がよく反射率の高いものが好ましい。
例えば、Cr、Al、Feなどの金属板である。
【0098】また好ましくは光学系に縮小結像技術(結
像光学系)を用いる。形成すべき磁化パターンに応じた
強度分布を有するパターン化エネルギー線を縮小して媒
体表面に結像させる。これによれば、エネルギー線を対
物レンズで絞った後マスクを介する場合、すなわち近接
露光の場合に比較して、マスクのパターニング精度やア
ライメント精度により磁化パターンの精度が制限される
ことがなく、より微細な磁化パターンを精度良く形成す
ることができる。また、マスクと媒体が離間しているた
め、媒体上のゴミの影響も受けにくい。
【0099】本技術によれば、光源から出射したエネル
ギー線を、マスクを介して強度分布を変化させ、結像レ
ンズなどの結像手段を通して媒体表面に縮小結像させ
る。なお、結像レンズは投影レンズと称することもあ
り、縮小結像を縮小投影と称することもある。次に、本
発明の磁気記録媒体の構成について説明する。
【0100】本発明に係る磁気記録媒体における基板と
しては、高速記録再生時に高速回転させても振動しない
必要があり、通常、硬質基板が用いられる。振動しない
十分な剛性を得るため、基板厚みは一般に0.3mm以
上が好ましい。但し厚いと磁気記録装置の薄型化に不利
なため、3mm以下が好ましい。例えば、Alを主成分
とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mg
を主成分とした例えばMg−Zn合金等のMg合金基
板、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラ
ス、非結晶ガラス類、シリコン、チタン、セラミック
ス、各種樹脂のいずれかからなる基板やそれらを組み合
わせた基板などを用いることができる。中でもAl合金
基板や強度の点では結晶化ガラス等のガラス製基板、コ
ストの点では樹脂製基板を用いることが好ましい。
【0101】本発明は硬質基板を有する媒体に適用する
と効果が高い。従来の磁気転写法では硬質基板を有する
媒体はマスター(マスターディスク)との密着が不十分
になり傷や欠陥が発生したり転写された磁区の境界が不
明確でPW50が広がりやすい傾向があったが本発明で
はマスクと媒体とを圧着しないのでそのような問題がな
い。特に、ガラス製基板のようにクラックの入りやすい
基板を有する媒体には効果的である。
【0102】磁気記録媒体の製造工程においては、まず
基板の洗浄・乾燥が行われるのが通常であり、本発明に
おいても各層の密着性を確保する見地からもその形成前
に洗浄、乾燥を行うことが望ましい。本発明の磁気記録
媒体の製造に際しては、基板表面にNiP、NiAl等
の金属層を形成してもよい。
【0103】金属層を形成する場合に、その手法として
は、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、
CVD法など薄膜形成に用いられる方法を利用すること
ができる。導電性の材料からなる基板の場合であれば電
解めっきを使用することが可能である。金属層の膜厚は
50nm以上が好ましい。ただし、磁気記録媒体の生産
性などを考慮すると20μm以下であることが好まし
い。さらに好ましくは10μm以下である。
【0104】また、金属層を成膜する領域は基板表面全
域が望ましいが、一部だけ、例えばテキスチャリングを
施す領域のみでも実施可能である。また、基板表面、又
は基板に金属層が形成された表面に同心状テキスチャリ
ングを施してもよい。本発明において同心状テキスチャ
リングとは、例えば遊離砥粒とテキスチャーテープを使
用した機械式テキスチャリングやレーザ光線などを利用
したテキスチャリング、又はこれらを併用することによ
って、円周方向に研磨することによって基板円周方向に
微小溝を多数形成した状態を指称する。
【0105】一般に、機械式テキスチャリングは磁性層
の面内異方性を出すために行われる。面内等方性の磁性
層としたい場合は施す必要はない。また一般に、レーザ
光線などを利用したテキスチャリングは、CSS(コン
タクト・スタート・アンド・ストップ)特性を良好にす
るために行われる。磁気記録装置が、非駆動時にヘッド
を磁気記録媒体の外に待避させる方式(ロード・アンロ
ード方式)などの場合は施す必要はない。
【0106】機械的テキスチャリングに用いられる砥粒
としてはアルミナ砥粒が広く用いられているが、特にテ
キスチャリング溝に沿って磁化容易軸を配向させるとい
う面内配向媒体の観点から考えるとダイアモンド砥粒が
極めて良い性能を発揮する。中でも表面がグラファイト
化処理されているものが最も好ましい。ヘッド浮上量が
できるだけ小さいことが高密度磁気記録の実現には有効
であり、またこれら基板の特長のひとつが優れた表面平
滑性にあることから、基板表面の粗度Raは2nm以下
が好ましく、より好ましくは1nm以下である。特に
0.5nm以下が好ましい。なお、基板表面粗度Ra
は、触針式表面粗さ計を用いて測定長400μmで測定
後、JIS B0601に則って算出した値である。こ
のとき測定用の針の先端は半径0.2μm程度の大きさ
のものが使用される。
【0107】次に基板上には、磁性層との間に下地層等
を形成してもよい。下地層は、結晶を微細化し、かつそ
の結晶面の配向を制御することを目的とし、Crを主成
分とするものが好ましく用いられる。Crを主成分とす
る下地層の材料としては、純Crのほか、記録層との結
晶マッチングなどの目的で、CrにV、Ti、Mo、Z
r、Hf、Ta、W、Ge、Nb、Si、Cu、Bから
選ばれる1又は2以上の元素を添加した合金や酸化Cr
なども含む。
【0108】中でも純Cr、又はCrにTi、Mo、
W、V、Ta、Si、Nb、Zr及びHfから選ばれる
1又は2以上の元素を添加した合金が好ましい。これら
第二、第三元素の含有量はそれぞれの元素によって最適
な量が異なるが、一般には1原子%〜50原子%が好ま
しく、より好ましくは5原子%〜30原子%、さらに好
ましくは5原子%〜20原子%の範囲である。
【0109】下地層の膜厚はこの異方性を発現させ得る
に十分なものであればよいが、好ましくは0.1〜50
nmであり、より好ましくは0.3〜30nm、さらに
好ましくは0.5〜10nmである。Crを主成分とす
る下地層の成膜時は基板加熱を行っても行わなくてもよ
い。下地層の上には、記録層との間に、場合により軟磁
性層を設けても良い。特に磁化遷移ノイズの少ないキー
パー媒体、或いは磁区が媒体の面内に対して垂直方向に
ある垂直記録媒体には、効果が大きく、好適に用いられ
る。
【0110】軟磁性層は透磁率が比較的高く損失の少な
いものであればよいが、NiFeや、それに第3元素と
してMo等を添加した合金が好適に用いられる。最適な
透磁率は、データの記録に利用されるヘッドや記録層の
特性によっても大きく変わるが、概して、最大透磁率が
10〜1000000(H/m)程度であることが好ま
しい。
【0111】或いはまた、Crを主成分とする下地層上
に必要に応じ中間層を設けてもよい。例えばCoCr系
中間層を設けると、磁性層の結晶配向が制御しやすく好
ましい。次に記録層(磁性層)を形成する。記録層と軟
磁性層の間には下地層と同一材料の層又は他の非磁性材
料が挿入されていてもよい。記録層の成膜時は、基板加
熱を行っても行わなくてもよい。
【0112】記録層としては、Co合金磁性層、TbF
eCoを代表とする希土類系磁性層、CoとPdの積層
膜を代表とする遷移金属と貴金属系の積層膜等が好まし
く用いられる。Co合金磁性層としては、通常、純Co
やCoNi、CoSm、CoCrTa、CoNiCr、
CoCrPtなどの磁性材料として一般に用いられるC
o合金磁性材料を用いうる。これらのCo合金に更にN
i、Cr、Pt、Ta、W、Bなどの元素やSiO2
の化合物を加えたものでも良い。例えばCoCrPtT
a、CoCrPtB、CoNiPt、CoNiCrPt
B等が挙げられる。Co合金磁性層の膜厚は任意である
が、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以
上である。また、好ましくは50nm以下、より好まし
くは30nm以下である。また、本記録層は、適当な非
磁性の中間層を介して、或いは直接2層以上積層しても
よい。その時、積層される磁性材料の組成は、同じであ
っても異なっていてもよい。
【0113】希土類系磁性層としては、磁性材料として
一般的なものを用いうるが、例えばTbFeCo、Gd
FeCo、DyFeCo、TbFeなどが挙げられる。
これらの希土類合金にTb、Dy、Hoなどを添加して
もよい。酸化劣化防止の目的からTi、Al、Ptが添
加されていてもよい。希土類系磁性層の膜厚は、任意で
あるが、通常5〜100nm程度である。また、本記録
層は、適当な非磁性の中間層を介して、或いは直接2層
以上積層してもよい。その時、積層される磁性材料の組
成は、同じであっても異なっていてもよい。特に希土類
系磁性層は、アモルファス構造膜であり、かつメディア
面内に対して垂直方向に磁化を持つため高記録密度記録
に適し、高密度かつ高精度に磁化パターンを形成できる
本発明の方法がより効果的に適用できる。
【0114】同様に垂直磁気記録が行える、遷移金属と
貴金属系の積層膜としては、磁性材料として一般的なも
のを用いうるが、例えばCo/Pd、Co/Pt、Fe
/Pt、Fe/Au、Fe/Agなどが挙げられる。こ
れらの積層膜材料の遷移金属、貴金属は、特に純粋なも
のでなくてもよく、それらを主とする合金であってもよ
い。積層膜の膜厚は、任意であるが、通常5〜1000
nm程度である。また、必要に応じて3種以上の材料の
積層であってもよい。
【0115】また最近、磁区の熱安定性を高めるために
AFC(Anti-Ferromagnetic coupled)媒体が提案されて
いる。数オングストロームのRu層等を介して2層以上
の磁性層(主磁性層と下引き磁性層)を積層し、Ru層
の上下で磁気的にカップリングさせて主磁性層の熱的安
定性を高めた媒体である。この媒体は見かけ上の保磁力
が大きくなり、磁化の反転には大きな磁界が必要とな
る。
【0116】本発明においては、記録層は薄い方が好ま
しい。記録層が厚いと、記録層を加熱したときの膜厚方
向の熱の伝わりが悪く、良好に磁化されないおそれがあ
るためである。このため記録層膜厚は200nm以下が
好ましい。ただし、磁化を保持するために、記録層膜厚
は5nm以上が好ましい。本発明において、記録層とし
ての磁性層は、室温において磁化を保持し、加熱と同時
に外部磁界を印加されて消磁されるか逆方向に磁化され
る。
【0117】磁性層の室温での保磁力(静的保磁力)
は、室温において磁化を保持し、かつ適当な外部磁界に
より均一に磁化されるものである必要がある。磁性層の
室温での保磁力を2000Oe以上とすることで、小さ
な磁区が保持でき高密度記録に適した媒体が得られる。
より好ましくは3000Oe以上である。従来の磁気転
写法では、あまり保磁力が高い媒体には転写が困難であ
ったが、本発明においては磁性層を加熱し保磁力を十分
に下げて磁化パターンを形成するため、保磁力の大きい
媒体への適用が好ましい。
【0118】ただし、好ましくは20kOe以下とす
る。20kOeを超えると、一括磁化のために大きな外
部磁界が必要となり、また通常の磁気記録が困難となる
可能性がある。より好ましくは15kOe以下とし、更
に好ましくは10kOe以下とする。磁性層の保磁力と
局所加熱温度、第2外部磁界強度について説明すると、
例えば室温において保磁力が3500〜4000Oeの
媒体は、通常、温度上昇に伴い、10〜15Oe/℃の
割合で保磁力が線形に減少し、例えば150℃で200
0Oe程度になる。3000Oe程度であれば外部磁界
印加手段で容易に発生させることができるので、150
℃程度の加熱でも十分に磁化パターンが形成できる。
【0119】さて、磁性層の動的な保磁力は、高密度に
記録した情報を安定に保持するためには大きいものとな
る。動的保磁力は通常、磁界強度を1sec以下の短時
間で変化させたときに測定される保磁力、つまりパルス
幅が1sec以下の磁界に対する保磁力である。但しそ
の値は磁界や熱の印加時間によって変わる。好ましく
は、1secでの動的保磁力が静的保磁力の2倍以上で
ある。但し、あまり大きいと第2外部磁界による磁化の
ために大きな磁界強度が必要になるので20kOe以下
が好ましい。
【0120】以下に、磁気記録媒体の動的保磁力(記録
層としての磁性層の保磁力)の測定手順の一例を示す。 1.印加時間t=10secにおける媒体の保磁力を求
める。 1.1 最大磁界強度(20kOe)まで磁界を印加
し,媒体を飽和させる。
【0121】1.2 負の方向(飽和方向と反対向き)
に所定強度の磁界H1を印加する。 1.3 その磁界下で10sec保持する。 1.4 磁界をゼロに戻す。 1.5 1.4の時の磁化値を読みとると、残留磁化値
M1が得られる。
【0122】1.6 1.2とは少し印加磁界強度を変
えて同じ測定(1.1〜1.5)を繰り返す。合計4点
の磁界強度H1,H2,H3,H4での残留磁化値M
1、M2、M3,M4が得られる。 1.7 この4点から残留磁化Mが0となる印加磁界強
度Hを求める。これが印加時間t=10secにおける
媒体の保磁力となる。
【0123】2.印加時間tを60sec、100se
c、600secについて同じ測定を行い、それぞれの
印加時間での保磁力を求める。 3.以上で得られた10sec、60sec、100s
ec、600secでの保磁力の値から外挿して、より
短い印加時間での保磁力を求めることができる。
【0124】例えば印加時間1nsecでの動的保磁力
も求められる。磁性層は、室温において磁化を保持しつ
つ、適当な加熱温度では弱い外部磁界で磁化されるもの
である必要がある。また室温と磁化消失温度との差が大
きい方が磁化パターンの磁区が明瞭に形成しやすい。こ
のため磁化消失温度は高いほうが好ましく、100℃以
上が好ましくより好ましくは150℃以上である。例え
ば、キュリー温度近傍(キュリー温度のやや下)や補償
温度近傍に磁化消失温度がある。
【0125】キュリー温度は、好ましくは100℃以上
である。100℃未満では、室温での磁区の安定性が低
い傾向がある。より好ましくは150℃以上である。ま
た好ましくは700℃以下である。磁性層をあまり高温
に加熱すると、変形してしまう可能性があるためであ
る。なお、本発明においては、AFC(Anti-Ferromagne
tic coupled)媒体のキュリー温度とは、主磁性層のキュ
リー温度ではなく媒体全体の見かけ上のキュリー温度を
言う。
【0126】磁気記録媒体が面内磁気記録媒体である場
合、高密度用の高い保磁力を持った磁気記録媒体に対し
ては従来の磁気転写法では飽和記録が難しく、磁界強度
の高い磁化パターン生成が困難となり、半値幅も広がっ
てしまう。このような高記録密度に適した面内記録媒体
でも、本方法によれば良好な磁化パターン形成が可能と
なる。特に、該磁性層の飽和磁化が50emu/cc以
上である場合は、反磁界の影響が大きいので本発明を適
用する効果が大きい。
【0127】100emu/cc以上だとより効果が高
い。ただしあまり大きいと磁化パターンの形成がしにく
いため、500emu/cc以下が好ましい。磁気記録
媒体が垂直磁気記録媒体であり、磁化パターンが比較的
大きく1磁区の単位体積が大きい場合は、飽和磁化が大
きくなり、磁気的な減磁作用で磁化反転が起こりやすい
ためそれがノイズとなり半値幅を悪化させる。しかし、
本発明では、軟磁性を使用した下地層の併用で、これら
の媒体にも良好な記録が可能となる。
【0128】これら記録層は、記録容量増大などのため
に、二層以上設けてもよい。このとき、間には他の層を
介するのが好ましい。本発明においては、磁性層上に保
護層を形成するのが好ましい。すなわち、媒体の最表面
を硬質の保護層により覆う。保護層はヘッドや衝突や塵
埃・ゴミ等のマスクとの挟み込みによる磁性層の損傷を
防ぐ働きをする。本発明のようにマスクを用いた磁化パ
ターン形成法を適用する際には、マスクとの接触から媒
体を保護する働きもある。
【0129】また、本発明において保護層は、加熱され
た磁性層の酸化を防止する効果もある。磁性層は一般に
酸化されやすく、加熱されると更に酸化されやすい。本
発明では磁性層をエネルギー線などで局所的に加熱する
ため、酸化を防ぐための保護層を磁性層上に予め形成し
ておくのが望ましい。磁性層が複数層ある場合には、最
表面に近い磁性層の上に保護層を設ければよい。保護層
は磁性層上に直接設けても良いし、必要に応じて間に他
の働きをする層をはさんでも良い。
【0130】エネルギー線の一部は保護層でも吸収さ
れ、熱伝導によって磁性層を局所的に加熱する働きをす
る。このため保護層が厚すぎると横方向への熱伝導によ
り磁化パターンがぼやけてしまう可能性があるので、膜
厚は薄い方が好ましい。また記録再生時の磁性層とヘッ
ドとの距離を小さくするためにも薄い方が好ましい。従
って50nm以下が好ましく、より好ましくは30nm
以下、さらに好ましくは20nm以下である。ただし、
充分な耐久性を得るためには0.1nm以上が好まし
く、より好ましくは1nm以上である。
【0131】保護層としては、硬質で酸化に強い性質を
有していればよい。一般にカーボン、水素化カーボン、
窒素化カーボン、アモルファスカーボン、SiC等の炭
素質層やSiO2、Zr23、SiN、TiNなどが用
いられる。保護層が磁性を有する材料であっても良い。
特にヘッドと磁性層の距離を極限まで近づけるために
は、非常に硬質の保護層を薄く設けることが好ましい。
従って耐衝撃性及び潤滑性の点で炭素質保護膜が好まし
く、特にダイヤモンドライクカーボンが好ましい。エネ
ルギー線による磁性層の損傷防止の役割を果たすだけで
なく、ヘッドによる磁性層の損傷にも極めて強くなる。
本発明の磁化パターン形成法は、炭素質保護層のような
不透明な保護層に対しても適用できる。
【0132】また、保護層が2層以上の層から構成され
ていてもよい。磁性層の直上の保護層としてCrを主成
分とする層を設けると、磁性層への酸素透過を防ぐ効果
が高く好ましい。更に保護層上には潤滑層を形成するの
が好ましい。媒体のマスク及び磁気ヘッドによる損傷を
防ぐ機能を持つ。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ
素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が
挙げられ、ディップ法、スピンコート法などの常法で塗
布することができる。蒸着法で成膜してもよい。磁化パ
ターン形成の妨げとならないために潤滑層は薄い方が好
ましく、10nm以下が好ましい。より好ましくは4n
m以下である。十分な潤滑性能を得るためには0.5n
m以上が好ましい。より好ましくは1nm以上である。
【0133】潤滑層上からエネルギー線を照射する場合
には、潤滑剤のダメージ(分解、重合)等を考慮し、再
塗布などを行ってもよい。また、以上の層構成には他の
層を必要に応じて加えても良い。浮上型/接触型ヘッド
の走行安定性を損なわないよう、磁化パターン形成後の
該媒体の表面粗度Raは3nm以下に保つのが好まし
い。なお、媒体表面粗度Raとは潤滑層を含まない媒体
表面の粗度であって、触針式表面粗さ計(機種名:Tenc
or P-12 disk profiler(KLA Tencor社製))を用いて
測定長400μmで測定後、JIS B0601に則っ
て算出した値である。より好ましくは1.5nm以下と
する。
【0134】望ましくは磁化パターン形成後の該媒体の
表面うねりWaを5nm以下に保つ。Waは潤滑層を含
まない媒体表面のうねりであって、触針式表面粗さ計
(機種名:Tencor P-12 disk profiler(KLA Tencor社
製))を用いて測定長2mmで測定後、Ra算出に準じ
て算出した値である。より好ましくは3nm以下とす
る。
【0135】ところで、このように構成される磁気記録
媒体への磁化パターンの形成は、記録層(磁性層)に対
して行う。記録層上に保護層や潤滑層などを形成した後
に記述のいずれかの方法で行うのが好ましいが、記録層
の酸化のおそれが無い場合は記録層の成膜直後に行って
も良い。磁気記録媒体の各層を形成する成膜方法として
は各種の方法が採りうるが、例えば直流(マグネトロ
ン)スパッタリング法、高周波(マグネトロン)スパッ
タリング法、ECRスパッタリング法、真空蒸着法など
の物理的蒸着法が挙げられる。
【0136】また、成膜時の条件としては、得るべき媒
体の特性に応じて、到達真空度、基板加熱の方式と基板
温度、スパッタリングガス圧、バイアス電圧等を適宜決
定する。例えば、スパッタリング成膜では、通常の場
合、到達真空度は5×10-6Torr以下、基板温度は
室温〜400℃、スパッタリングガス圧は1×10-3
20×10-3Torr、バイアス電圧は0〜−500V
が好ましい。
【0137】基板を加熱する場合は下地層形成前から加
熱しても良い。或いは、熱吸収率が低い透明な基板を使
用する場合には、熱吸収率を高くするため、Crを主成
分とする種子層又はB2結晶構造を有する下地層を形成
してから基板を加熱し、しかる後に記録層等を形成して
も良い。記録層が、希土類系の磁性層の場合には、腐食
・酸化防止の見地から、ディスク状磁気記録媒体の最内
周部及び最外周部を最初マスクして、記録層まで成膜、
続く保護層の成膜の際にマスクを外し、記録層を保護層
で完全に覆う方法や、保護層が2層の場合には、記録層
と第1の保護層までをマスクしたまま成膜し、第2の保
護層を成膜する際にマスクを外し、やはり記録層を第2
の保護層で完全に覆うようにすると希土類系磁性層の腐
食、酸化が防げて好適である。
【0138】次に、本発明の磁気記録装置について説明
する。本発明に係る磁気記録装置は、上述の方法で磁化
パターンを形成した磁気記録媒体と、磁気記録媒体を記
録方向に駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁
気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対移
動させる手段と、磁気ヘッドへの記録信号入力と磁気ヘ
ッドからの再生信号出力を行うための記録再生信号処理
手段を有する。磁気ヘッドとしては、高密度記録を行う
ため、通常は浮上型/接触型磁気ヘッドを用いる。
【0139】本発明の方法により微細かつ高精度なサー
ボパターン等の磁化パターンが形成された磁気記録媒体
を用いることで、上記磁気記録装置は高密度記録が可能
となる。また、媒体に傷がなく欠陥も少ないため、エラ
ーの少ない記録を行うことができる。また、磁気記録媒
体を装置に組みこんだ後、上記磁化パターンを磁気ヘッ
ドにより再生し信号を得、該信号を基準としてサーボバ
ースト信号を該磁気ヘッドにより記録してなる磁気記録
装置に用いることで、簡易に精密なサーボ信号を得るこ
とができる。
【0140】また、磁気ヘッドでのサーボバースト信号
記録後にも、ユーザデータ領域として用いられない領域
には本発明により磁化パターンとして記録した信号が残
っていると何らかの外乱により磁気ヘッドの位置ずれが
起きたときにも所望の位置に復帰させやすいので、両者
の書き込み方法による信号が存在する磁気記録装置は、
信頼性が高い。
【0141】磁気記録装置として代表的な、磁気ディス
ク装置を例に説明する。磁気ディスク装置は、通常、磁
気ディスクを1枚或いは複数枚を串刺し状に固定するシ
ャフトと、該シャフトにベアリングを介して接合された
磁気ディスクを回転させるモータと、記録及び/又は再
生に用いる磁気ヘッドと、該ヘッドが取り付けられたア
ームと、ヘッドアームを介してヘッドを磁気記録媒体上
の任意の位置に移動させることのできるアクチュエータ
とからなり、記録再生用ヘッドが磁気記録媒体上を一定
の浮上量で移動している。記録情報は、信号処理手段を
経て記録信号に変換されて磁気ヘッドにより記録され
る。また、磁気ヘッドにより読み取られた再生信号は同
信号処理手段を経て逆変換され、再生情報が得られる。
【0142】ディスク上には、情報信号が同心円状のト
ラックに沿って、セクター単位で記録される。サーボパ
ターンは通常、セクター間に記録される。磁気ヘッドは
該パターンからサーボ信号を読み取り、これによりトラ
ックの中心に正確にトラッキングを行い、そのセクター
の情報信号を読み取る。記録時も同様にトラッキングを
行う。
【0143】前述の通り、サーボ信号を発生するサーボ
パターンは、情報を記録する際のトラッキングに使用す
るという性質上、特に高精度が要求される。また現在多
く使用されているサーボパターンは、1トラックあた
り、互いに1/2ピッチずれた2組のパターンからなる
ため、情報信号の1/2のピッチ毎に形成する必要があ
り、2倍の精度が要求される。
【0144】しかしながら、従来のサーボパターン形成
方法では、外部ピンとアクチュエータの重心が異なるこ
とから生じる振動の影響でライトトラック幅で0.2〜
0.3μm程度が限界であり、トラック密度の増加にサ
ーボパターンの精度が追いつかず、磁気記録装置の記録
密度向上及びコストダウンの妨げとなりつつある。本発
明によれば、効率よく精度の高い磁化パターンを形成す
ることができるので、従来のサーボパターン形成方法に
比べて格段に低コスト、短時間で精度良くサーボパター
ンを形成でき、例えば40kTPI以上に媒体のトラッ
ク密度を高めることができる。従って本媒体を用いた磁
気記録装置は高密度での記録が可能となる。
【0145】また、位相サーボ方式を用いると連続的に
変化するサーボ信号が得られるのでよりトラック密度を
上げることができ、0.1μm幅以下でのトラッキング
も可能となり、より高密度記録が可能である。前述のよ
うに、位相サーボ方式には、例えば、内周から外周に、
半径に対して斜めに直線的に延びる磁化パターンが用い
られる。このような、半径方向に連続したパターンや斜
めのパターンは、ディスクを回転させながら1トラック
ずつサーボ信号を記録する従来のサーボパターン形成方
法では作りにくく、複雑な計算や構成が必要であった。
【0146】しかし本発明によれば、該形状に応じたマ
スクを一旦作成すれば、マスクを介してエネルギー線を
照射するだけで当該パターンを容易に形成できるため、
位相サーボ方式に用いる媒体を簡単かつ短時間、安価に
作成することができる。ひいては、高密度記録が可能
な、位相サーボ方式の磁気記録装置を提供できる。さ
て、従来主流のサーボパターン形成方法は、媒体を磁気
記録装置(ドライブ)に組み込んだのちに、クリーンル
ーム内で専用のサーボライターを用いて行う。
【0147】各ドライブをサーボライターに装着し、ド
ライブ表面あるいは裏面のいずれかにある孔よりサーボ
ライターのピンを差し入れ磁気ヘッドを機械的に動かし
ながら、トラックに沿って1パターンずつ記録を行う。
このためドライブ一台あたり15〜20分程度と非常に
時間がかかる。専用のサーボライターを用い、またドラ
イブに孔を開けるためこれら作業はクリーンルーム内で
行う必要があり、工程上も煩雑でコストアップの要因で
あった。
【0148】本発明では、予めパターンを記録したマス
クを介してエネルギー線を照射することで、サーボパタ
ーン或いはサーボパターン記録用基準パターンを一括し
て記録でき、非常に簡便かつ短時間で媒体にサーボパタ
ーンを形成できる。このようにしてサーボパターンを形
成した媒体を組み込んだ磁気記録装置は、上記サーボパ
ターン書込み工程は不要となる。
【0149】或いはサーボパターン記録用基準パターン
を形成した媒体を組み込んだ磁気記録装置は、該基準パ
ターンをもとにして装置内で所望のサーボパターンを書
込むことができ、上記のサーボライターは不要であり、
クリーンルーム内での作業も必要ない。また、磁気記録
装置の裏側に孔を開ける必要がなく耐久性や安全性の上
でも好ましい。
【0150】さらに、本発明においてはマスクと媒体と
の間を密着させなくてよいので、磁気記録媒体と他の構
成部材との接触による損傷や、微小な塵埃やゴミの挟み
込みによる媒体の損傷を防ぎ、欠陥の発生を防ぐことが
できる。以上のように、本発明によれば高密度記録が可
能な磁気記録装置を、簡便な工程で安価に得ることがで
きる。
【0151】磁気ヘッドとしては、薄膜ヘッド、MRヘ
ッド、GMRヘッド、TMRヘッドなど各種のものを用
いることができる。磁気ヘッドの再生部をMRヘッドで
構成することにより、高記録密度においても十分な信号
強度を得ることができ、より高記録密度の磁気記録装置
を実現することができる。また磁気ヘッドを、浮上量が
0.001μm以上、0.05μm未満と、低い高さで
浮上させると、出力が向上して高い装置S/Nが得ら
れ、大容量で高信頼性の磁気記録装置を提供することが
できる。
【0152】また、最尤復号法による信号処理回路を組
み合わせるとさらに記録密度を向上でき、例えば、トラ
ック密度13kTPI以上、線記録密度250kFCI
以上、1平方インチ当たり3Gビット以上の記録密度で
記録・再生する場合にも十分なS/Nが得られる。さら
に磁気ヘッドの再生部を、互いの磁化方向が外部磁界に
よって相対的に変化することによって大きな抵抗変化を
生じる複数の導電性磁性層と、その導電性磁性層の間に
配置された導電性非磁性層からなるGMRヘッド、ある
いはスピン・バルブ効果を利用したGMRヘッドとする
ことにより、信号強度をさらに高めることができ、1平
方インチ当たり10Gビット以上、350kFCI以上
の線記録密度を持った信頼性の高い磁気記録装置の実現
が可能となる。
【0153】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。但
し、その要旨の範囲を越えない限り、本発明はこれらの
実施例に限定されるものではない。 (実施例)まず、127mm×127mmの正方形、
2.3mm厚の石英ガラスを基体とし、その磁気ディス
クに対するべき面の上にスパッタリングにより膜厚10
nmのクロム層、スピンコートにより膜厚20nmのフ
ォトレジスト層を順次形成した。そののち露光、現像し
てフォトレジスト層に凹凸パターンを形成した。次い
で、硝酸セリウムを含有するクロム用エッチング液によ
りフォトレジスト層が除去された部分のクロム層をエッ
チングし除去した。さらに、アセトンを用いてフォトレ
ジスト層を除去した。
【0154】次いで、オックスフォードインスツルメン
ツ社製のPlasmalab 80Plusを用いて、
次の手順で反応性イオンエッチング(RIE)を行っ
た。まず最初に、残留フォトレジストなどの有機付着物
を除去するため、N2Oによるエッチングを2分間行っ
た。その操作条件は、N2O流量100sccm(25
℃、1気圧換算での流量100cc/分)、圧力12.
5mTorr、RF出力100W、RF周波数13.5
6MHzである。次いで、SF6ガスを用いて石英ガラ
スのエッチングを12分間行った。エッチング条件は、
SF6流量100sccm、圧力30mTorr、RF
出力100Wである。RIE終了後、クロム用エッチン
グ液を用いてクロム層を除去し、磁気ディスクに対する
べき面側のパターン領域に深さ200nmの溝(凹部)
が形成された石英ガラス基体を得た。
【0155】溝(凹部)の深さの測定は、AFM(原子
間力顕微鏡)により行った。より詳しくはデジタルイン
スツルメンツ社製 ナノスコープ3a D3100型
(Digital Instruments NanoScope IIIa D3100)に
て、観察モード:タッピングAFM、スキャンサイズ:
10μm、スキャン速度:0.5Hzの条件の下に測定
を行った。針は装置に標準のものを用いた。
【0156】次いで、溝内にリフトオフ法により、Al
層を150nmの厚さに形成し、Al層が埋め込まれた
溝部を非透過部とし、他を透過部としたマスクを得た。
半径20〜46mmにパターン領域を有し、パターン最
小線幅0.7μm(最小幅0.7μm;ライン、スペー
スとも0.7μm)のパターンを設けた。最内周でのパ
ターン最小線幅は0.7μm、最外周でのパターン最小
線幅は約1.2μmである。
【0157】リフトオフ法は以下の手順で行った。あら
かじめパターンを形成したマスクにフォトレジストを塗
布し、この上に別途用意した所定パターンを持つ遮光部
材を密着させる。そして、この遮光部材を介して紫外線
を照射することにより、前記フォトレジストをパターン
形状に応じて感光させる。その後、現像を行うことで、
パターン形成部分に凹部が形成されたフォトレジスト層
がマスク上に形成される。これにスパッタ法または真空
蒸着法により、Alを150nmの厚さに成膜する。A
l層は石英基体の凹部及びフォトレジスト層上に付着す
るが、アセトンなどによりフォトレジスト層を除去する
ことにより、フォトレジスト上のAl層も除去され、凹
部にのみAl層が残る。
【0158】この後、パターン領域の周縁部に、再びリ
フトオフ法によりCr層からなるスペーサを設けた。即
ち、パターン領域外の外周部である半径約47〜48m
mの範囲には、高さ2.5μm、直径50μmの略円形
の突起(スペーサ)が100μm間隔で、また、半径1
5〜16mmの範囲に、高さ0.5μmである以外は外周
部のスペーサと同じであるスペーサが形成されたマスク
を得た。リフトオフ法は、前述のAl層形成とほぼ同様
に行った。
【0159】本マスクのパターン領域における、エネル
ギー線透過部の面積は、少なくとも56%以上であっ
た。次いで、3.5インチ径のNiPメッキ付きアルミ
ニウム合金基板を洗浄、乾燥し、その上に到達真空度:
1×10-7Torr、基板温度:350℃、バイアス電
圧:−200V、スパッタリングガス:Ar、ガス圧:
3×10-3Torrの条件下で、NiAlを60nm、
Cr90Mo10を10nm、記録層としてCo 64Cr16
128を12nm、保護層としてカーボン(ダイヤモ
ンドライクカーボン)を5nm成膜した。
【0160】その上には潤滑層としてフッ素系潤滑剤を
0.5nmの厚さに塗布し、100℃で40分焼成し、
室温での静的保磁力3600Oe、動的保磁力8000
Oe程度、飽和磁化310emu/ccの面内記録用磁
気ディスクを得た。記録層のキュリー温度は250℃で
あった。このディスクに、電磁石の磁界方向がディスク
の回転方向と同じとなるように構成して、約10kOe
(約10kガウス)の強度で印加して、ディスク面を一
様に(均一に)磁化した。
【0161】上記マスクと磁気ディスクを一体として、
3.2秒間で1回転の速度で回転させた。ここに波長2
48nmのエキシマパルスレーザをパルス幅:25ns
ec、パワー(エネルギー密度):160mJ/c
2、ビーム形状:10mm×30mm(ピークエネル
ギーの1/e2となる径)に制御しレーザ照射口にビー
ム形状を角度12°の扇形に整形する遮光板を設置し
て、繰り返し周波数10Hzで32パルス照射した。シ
ミュレーションにより加熱温度を求めたところ、約17
0℃〜200℃であった。
【0162】同時に磁界印加手段により磁界を印加し、
磁化パターンの転写を試みた。図2は本実施例に係る磁
化印加手段を示す(a)平面図と(b)B−B断面図で
ある。磁気ディスク11上にスペーサ17を介してマス
ク14が載置され、その上方に遮光板13が配され、開
口部13aを通してエネルギー線15が照射されるよう
になっている。マスク14には、上述のとおり形成すべ
き磁化パターンに応じて透過部、非透過部が形成されて
いる。
【0163】遮光板13には開口部13aの両側に永久
磁石12a(N極)、12b(S極)が取り付けられる
とともに、コイルがループ状に数十回巻かれた空芯コイ
ル(電磁石)18a、18bが該永久磁石12a、12
bに沿って配されている。また磁気ディスク11の逆の
面にも永久磁石12c(N極)、12d(S極)が取り
付けられるとともに、コイルがループ状に数十回巻かれ
た空芯コイル(電磁石)18a、18bが該永久磁石1
2c、12dに沿って配されている。
【0164】空芯コイル18a、18bは互いに導線で
つながれるとともに、両端が図示するように直流電源2
1,コンデンサ22,サイリスタ23につながれてい
る。また、磁気ディスク11の装脱着がしやすいよう
に、空芯コイル18a、18bはそれぞれくの字型に曲
げられている。ここに、永久磁石12a〜12dによっ
て、磁気ディスクの円周方向で均一磁化とは逆方向に、
ディスク内周域(半径21mmの位置)で約1.7kガ
ウス、ディスク外周域(半径46.5mmの位置)で約
1.9kガウス程度の磁界が常に印加される。
【0165】パルス状外部磁界を印加するために、まず
直流電源21によってコンデンサ22に、750Vの電
位差を持たせる。次に、外部磁界を印加したいタイミン
グに応じてトリガー装置24からトリガー信号を発生
し、サイリスタ23のゲート端子に入力させると、コン
デンサ22に蓄積されていた電位差によって空芯コイル
18a、18bに電流が一気に流れる。このパルス状電
流によりコイルの周囲に、パルス幅200μsecであ
って、ディスク内周域(半径21mmの位置)で約1.
8kガウス、ディスク外周域(半径46.5mmの位
置)で最大強度約2.0kガウス程度のパルス状磁界が
発生する。
【0166】図2(b)に示すように、空芯コイル18
a、18bによる磁界は永久磁石12a〜12dによる
磁界を補助するように働くので、合計で、ディスク内周
域(半径21mmの位置)で約3.5kガウス、ディス
ク外周域(半径46.5mmの位置)で最大強度約3.
9kガウス程度のパルス状磁界が印加される。一方、ト
リガー装置24からのトリガー信号は遅延装置(ディレ
イ)25を経てエキシマレーザ(波長248nm)など
のエネルギー線源26に入力され、これによりパルス状
エネルギー線が発生する。エネルギー線は、図示しない
プログラマブルシャッター、ビームエキスパンダ、プリ
ズムアレイなどを経た後、例えばパルス幅数十nse
c、エネルギー密度100〜200mJ/cm2のパル
ス状エネルギー線5として照射される。
【0167】通常、電磁石の特性上磁界の立上がり、立
下がりには時間を要するので、磁界強度が最大になると
きにちょうどエネルギー線15が照射されるように、遅
延装置(ディレイ)25によってエネルギー線の出射時
間を調節する。これによりエネルギー線15の照射と同
時に、合計3000Oe程度のパルス状磁界が印加され
る。磁気ディスク11の加熱領域の動的保磁力は300
0Oe以下にまで低下しているので、加熱領域のみがパ
ルス状磁界によって反転磁化され、磁化パターンが形成
される。なお、コンデンサ等を使用せず、直流電源から
直接パルス状電流を流してもよい。
【0168】図3に、実施例1における、磁界パルスと
レーザ光用トリガーパルスの時間的関係を示す。なお、
レーザ光用トリガーパルスが出された約4μsec後に
エキシマパルスレーザが照射された。図3から分かるよ
うに、磁界強度がほぼ最大となるときにちょうどパルス
レーザが照射されるようにタイミングを合わせた。な
お、ここで用いた、レーザ照射のための光学系の構成は
以下のとおりである。エキシマパルスレーザ光源から発
振したパルスレーザはプログラマブルシャッターを通過
する。プログラマブルシャッターは光源から所望のパル
スのみ取り出す役目をする。
【0169】プログラマブルシャッターで選択されたレ
ーザは、所望のパワーに出力調整され次いで、レーザは
短軸方向を3分割するためのプリズムアレイと、長軸方
向を7分割するためのプリズムアレイを通過し、投影レ
ンズに至る。プリズムアレイは、レーザを分割し重ね合
わせ、エネルギー強度分布を均一にする機能を有する。
これらをホモジナイザと称することもある。さらに、レ
ーザは必要に応じて遮光板を通して所望のビーム形状と
し、マスクにより強度分布を磁化パターンに応じて変化
させたのち、ディスクに投影される。
【0170】以上のようにして磁化パターンを形成した
が、初期磁化領域における第2磁化領域の面積は、少な
くとも56%以上であった。実施例1で得られた磁気デ
ィスクについて、再生素子幅0.4μmのハードディス
ク用GMRヘッドで磁化パターンを再生したときの再生
信号波形(微分信号波形)を図4に示す。横軸目盛は
0.2μs/Div、縦軸目盛は52mV/Divであ
る。図から分かるようにノイズの少ない良好な信号が得
られた。
【0171】本実施例の方法を磁気ディスクのサーボパ
ターン形成に適用すれば、簡便かつ短時間に、高精度の
サーボパータンを有する磁気ディスクが得られる。さら
にこの磁気ディスクを用いた磁気ディスク装置は、サー
ボパターンを新たに書き込む必要がなく、高精度でのト
ラッキングが可能であり、高密度に記録を行うことがで
きる。
【0172】
【発明の効果】本発明によれば、エネルギー線耐久性の
高い、レーザー加工用のマスクが得られるので、同一の
マスクを交換することなく、多数回繰り返し使用するこ
とができ、かつパターンを精度よく且つ簡便に形成する
ことができる。従って、生産コストを抑え、生産効率を
上げることができる。また、マスクの透過率が高いため
にエネルギー線の使用効率が高く、従来よりも低いパワ
ーで加工が可能となる。
【0173】そしてこのマスクを、局所加熱と外部磁界
印加を組み合わせて磁気記録媒体に磁化パターンを形成
する技術に適用することにより、微細なパターンを低コ
ストで効率よく形成できる。また、生産コストを抑え、
生産効率を上げることができる。かつ、マスクの透過率
が高いためにエネルギー線の使用効率が高く、従来より
も低いパワーで磁性層の加熱ができ、更にマスクの繰返
し使用回数を上げることができるとともに、高パワーエ
ネルギー線による媒体の損傷をも防ぐことができる。ひ
いてはより高密度記録が可能な磁気記録媒体及び磁気記
録装置を短時間かつ安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のマスクを用いた磁化パターン形成方
法の実施の形態を示す模式的な断面図である。
【図2】 本発明の実施例に係る磁化パターン形成方法
を示す平面図と断面図である。
【図3】 本発明の実施例における、磁界パルスとレー
ザー光用トリガーパルスの時間的関係を示す図である。
【図4】 本発明の実施例における、磁化パターンを再
生したときの再生信号波形(微分信号波形)である。
【符号の説明】
1 磁気記録媒体(磁気ディスク) 2 マスク 3 外部磁界 4 入射光(レーザビーム) 5 スペーサ 6 透明基体(石英) 7 非透過層(クロム) 8 誘電体層 11 磁気ディスク 12a、12b、12c、12d 永久磁石 13 遮光板 13a 開口部 14 マスク 15 エネルギー線 17 スペーサ 18a、18b、19a、19b、19c、19d
空芯コイル(電磁石) 21 直流電源 22 コンデンサ 23 サイリスタ 24 トリガー発生装置 25 遅延装置(ディレイ) 26 エネルギー線源
フロントページの続き (72)発明者 関 義則 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社内 (72)発明者 有田 陽二 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社内 Fターム(参考) 5D091 AA10 BB08 CC17 CC26 GG33 HH20 JJ25

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に磁性層を有してなる磁気記録媒
    体に対し、マスクを介してエネルギー線を照射し、該磁
    性層の被照射部を加熱する工程と、磁性層に外部磁界を
    印加する工程とを含む磁化パターン形成方法であって、 該マスクが、該エネルギー線に対して透過性の基体と非
    透過性の非透過層とを有してなり、該基体には形成すべ
    き磁化パターンに応じた凹部が設けられ、少なくとも該
    凹部上に非透過層が形成されてなることを特徴とする磁
    化パターン形成方法。
  2. 【請求項2】 前記非透過層が金属または半金属からな
    る、請求項1に記載の磁化パターン形成方法。
  3. 【請求項3】 前記基体が石英を主とする材料で構成さ
    れてなる、請求項1又は2に記載の磁化パターン形成方
    法。
  4. 【請求項4】 前記凹部の深さが10nm以上、10μ
    m以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載の磁化
    パターン形成方法。
  5. 【請求項5】 前記エネルギー線がパルス状エネルギー
    線である、請求項1乃至4のいずれかに記載の磁化パタ
    ーン形成方法。
  6. 【請求項6】 前記パルス状エネルギー線の1パルス当
    たりのパワーが10mJ/cm2以上1000mJ/c
    2以下である、請求項5に記載の磁化パターン形成方
    法。
  7. 【請求項7】 前記マスクは、前記磁気記録媒体に対す
    る面の最外層が誘電体層からなる、請求項1乃至6のい
    ずれかに記載の磁化パターン形成方法。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の
    磁化パターン形成方法により磁化パターンが形成されて
    なることを特徴とする磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8のいずれかに記載の磁化
    パターン形成方法により磁化パターンが形成されてなる
    磁気記録媒体と、磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆
    動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッドと、磁気ヘ
    ッドを磁気記録媒体に対して相対移動させる手段と、磁
    気ヘッドへの記録信号入力と磁気ヘッドからの再生信号
    出力を行うための記録再生信号処理手段を有することを
    特徴とする磁気記録装置。
  10. 【請求項10】 磁気記録媒体を装置に組みこんだ後、
    前記磁化パターンを磁気ヘッドにより再生して信号を
    得、該信号を基準としてサーボバースト信号を該磁気ヘ
    ッドにより記録してなる、請求項9に記載の磁気記録装
    置。
  11. 【請求項11】 対象物に対し、マスクを介してエネル
    ギー線を照射することにより該対象物に所定のパターン
    を形成するために用いるマスクであって、 該マスクが、該エネルギー線に対して透過性の基体と非
    透過性の非透過層とを有してなり、該基体は形成すべき
    パターンに応じた凹部が設けられ、少なくとも該凹部上
    に非透過層が形成されてなることを特徴とするマスク。
  12. 【請求項12】 基板上に磁性層を有してなる磁気記録
    媒体に対し、マスクを介してエネルギー線を照射して該
    磁性層の被照射部を加熱する工程と該磁性層に外部磁界
    を印加する工程とを含む磁化パターン形成方法に用いる
    マスクであって、 該マスクが、該エネルギー線に対して透過性の基体と非
    透過性の非透過層とを有してなり、該基体は形成すべき
    磁化パターンに応じた凹部が設けられ、少なくとも該凹
    部上に非透過層が形成されてなる、請求項11に記載の
    マスク。
  13. 【請求項13】 前記非透過層が金属または半金属から
    なる、請求項11又は12に記載のマスク。
  14. 【請求項14】 前記基体が石英を主とする材料で構成
    されてなる、請求項11乃至13のいずれかに記載のマ
    スク。
  15. 【請求項15】 前記凹部の深さが10nm以上、10
    μm以下である、請求項11乃至14のいずれかに記載
    のマスク。
  16. 【請求項16】 前記エネルギー線がパルス状エネルギ
    ー線である、請求項11乃至15のいずれかに記載のマ
    スク。
  17. 【請求項17】 前記パルス状エネルギー線の1パルス
    当たりのパワーが10mJ/cm2以上1000mJ/
    cm2以下である、請求項16に記載のマスク。
  18. 【請求項18】 前記マスクは、前記磁気記録媒体に対
    する面の最外層が誘電体層からなる、請求項11乃至1
    7のいずれかに記載のマスク。
JP2002068694A 2002-03-13 2002-03-13 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク Withdrawn JP2003272136A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002068694A JP2003272136A (ja) 2002-03-13 2002-03-13 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002068694A JP2003272136A (ja) 2002-03-13 2002-03-13 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003272136A true JP2003272136A (ja) 2003-09-26

Family

ID=29199729

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002068694A Withdrawn JP2003272136A (ja) 2002-03-13 2002-03-13 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003272136A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100624462B1 (ko) 2005-03-04 2006-09-19 삼성전자주식회사 패턴화된 기록매체의 제조 방법

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100624462B1 (ko) 2005-03-04 2006-09-19 삼성전자주식회사 패턴화된 기록매체의 제조 방법

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100809760B1 (ko) 자기기록매체의 자화패턴 형성방법과 그 형성장치,자기기록매체와 그 제조방법, 및 자기기록장치
KR100846003B1 (ko) 자기 기록 매체의 자화 패턴 형성 방법, 자기 기록 매체및 자기 기록 장치, 및 포토마스크
JP2002222520A (ja) 磁化パターン形成方法及び磁化パターン形成装置並びに磁気ディスク及び磁気記録装置
JP2004053955A (ja) 磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法及び磁化パターン形状規定用マスク、並びに磁化パターン形状規定用マスクの余剰薄膜除去方法
JP2003272137A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク
JP2003272136A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにマスク
JP3908778B2 (ja) マスク
JP3886388B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、及び磁化パターン形成に使用するマスク
JP3859198B2 (ja) 磁気記録媒体の製造方法
JP3712998B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、並びにマスク
JP3712987B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、並びにマスク
JP3886377B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法
JP2002358634A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成装置及び形成方法
JP3908563B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法
JP4004883B2 (ja) 磁化パターン形成方法
JP2004021160A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成用マスク、磁化パターン形成方法、及び磁気記録媒体、並びに磁気記録装置
JP4098019B2 (ja) 磁化パターン形成方法及び装置
JP4219529B2 (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法及び磁化パターン形成装置
JP2002050036A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びに磁化パターン形成装置
JP2002251719A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにフォトマスク
JP2002197647A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体及び磁気記録装置、並びにフォトマスク
JP2001312808A (ja) 磁気ディスク及びその磁化パターン形成方法並びに磁気ディスク装置
JP2003045023A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法、磁気記録媒体、及び磁気記録装置
JP2004063022A (ja) 磁気記録媒体における磁化パターン形成方法及び磁気記録媒体
JP2001338419A (ja) 磁気記録媒体の磁化パターン形成方法及び製造方法、磁気記録媒体、並びに磁気記録装置

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20040210

A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20050607