JP2004053955A - 磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法及び磁化パターン形状規定用マスク、並びに磁化パターン形状規定用マスクの余剰薄膜除去方法 - Google Patents
磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法及び磁化パターン形状規定用マスク、並びに磁化パターン形状規定用マスクの余剰薄膜除去方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】磁化パターン形状規定用マスク表面の特定領域に薄膜を形成する方法であって、マスク表面の一部に補助薄膜10を形成する工程と、特定領域に存在する補助薄膜10を除去する工程と、特定領域に目的薄膜16を形成する工程と、補助薄膜10を除去する工程と、マスク表面の特定領域を含む領域に目的薄膜16に重ねて再度補助薄膜10を形成する工程と、マスク表面の特定領域以外の領域に存在する補助薄膜10を除去する工程と、マスク表面の特定領域以外の領域に存在する目的薄膜9を除去する工程と、補助薄膜10を除去する工程とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録装置に用いられる磁気ディスクなどの磁気記録媒体の磁化パターン形成に使用する磁化パターン形状規定用マスクの表面に薄膜を形成する方法、及び磁化パターン形状規定用マスクの余剰薄膜を除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク装置(ハードディスクドライブ)に代表される磁気記録装置はコンピュータなどの情報処理装置の外部記憶装置として広く用いられ、近年は動画像の録画装置やセットトップボックスのための記録装置としても使用されつつある。
【0003】
磁気ディスク装置は、通常、磁気ディスクを1枚或いは複数枚を串刺し状に固定するシャフトと、該シャフトにベアリングを介して接合された磁気ディスクを回転させるモータと、記録及び/又は再生に用いる磁気ヘッドと、該ヘッドが取り付けられたアームと、ヘッドアームを介してヘッドを磁気記録媒体上の任意の位置に移動させることのできるアクチュエータとからなる。
【0004】
記録再生用ヘッドは、通常は浮上型ヘッドで、磁気記録媒体上を一定の浮上量で移動している。また、浮上型ヘッドの他にも、媒体との距離をより縮めるために、コンタクトヘッド(接触型ヘッド)の使用も提案されている。
【0005】
磁気ディスク装置に搭載される磁気記録媒体は、一般にアルミニウム合金などからなる基板の表面にNiP層を形成し、所要の平滑化処理、テキスチャリング処理などを施した後、その上に、金属下地層、磁性層(情報記録層)、保護層、潤滑層などを順次形成して作製されている。あるいは、ガラスなどからなる基板の表面に金属下地層、磁性層(情報記録層)、保護層、潤滑層などを順次形成して作製されている。磁気記録媒体には面内磁気記録媒体と垂直磁気記録媒体とがある。面内磁気記録媒体は、通常、長手記録が行われる。
【0006】
磁気記録媒体の高密度化は年々その速度を増しており、これを実現する技術には様々なものがある。例えば磁気ヘッドの浮上量をより小さくしたり磁気ヘッドとしてGMRヘッドを採用したり、また磁気ディスクの記録層に用いる磁性材料を保磁力の高いものにするなどの改良や、磁気ディスクの情報記録トラックの間隔を狭くするなどが試みられている。例えば100Gbit/inch2を実現するには、トラック密度は100ktpi以上が必要とされる。
【0007】
各トラックには、磁気ヘッドを制御するための制御用磁化パターンが形成されている。例えば磁気ヘッドの位置制御に用いる信号や同期制御に用いる信号である。情報記録トラックの間隔を狭めてトラック数を増加させると、データ記録/再生用ヘッドの位置制御に用いる信号(以下、「サーボ信号」と言うことがある。)もそれに合わせてディスクの半径方向に対して密に、すなわちより多く設けて精密な制御を行なえるようにしなければならない。
【0008】
また、データ記録に用いる以外の領域、即ちサーボ信号に用いる領域(サーボ領域)や該サーボ領域とデータ記録領域の間のギャップ部を小さくしてデータ記録領域を広くし、データ記録容量を上げたいとの要請も大きい。このためにはサーボ信号の出力を上げたり同期信号の精度を上げたりする必要がある。
【0009】
サーボ信号の形成に従来広く用いられている方法は、ドライブ(磁気記録装置)のヘッドアクチュエータ近傍に穴を開け、その部分にエンコーダ付きのピンを挿入し、該ピンでアクチュエータを係合し、ヘッドを正確な位置に駆動してサーボ信号を記録するものである。しかしながら、位置決め機構とアクチュエータの重心が異なる位置にあるため、高精度のトラック位置制御ができず、サーボ信号を正確に記録するのが困難であった。
【0010】
一方、レーザビームを磁気ディスクに照射してディスク表面を局所的に変形させ物理的な凹凸を形成することで、凹凸サーボ信号を形成する技術も提案されている。しかし、凹凸により浮上ヘッドが不安定となり記録再生に悪影響を及ぼす、凹凸を形成するために大きなパワーをもつレーザビームを用いる必要がありコストがかかる、凹凸を1ずつ形成するために時間がかかる、といった問題があった。
【0011】
このため、新しいサーボ信号形成法が提案されている。
その一例は、高保磁力の磁性層を持つマスターディスクにサーボパターンを形成し、マスターディスクを磁気記録媒体に密着させるとともに、外部から補助磁界をかけて磁化パターンを転写する方法である(USP5,991,104号公報)。
【0012】
また、他の例は、媒体を予め一方向に磁化しておき、マスターディスクに高透磁率で低保磁力の軟磁性層などをパターニングし、マスターディスクを媒体に密着させるとともに外部磁界をかける方法である。軟磁性層がシールドとして働き、シールドされていない領域に磁化パターンが転写される(特開昭50−60212号公報(USP3、869、711号公報)、特開平10−40544号公報(EP915456号公報)、Digest of InterMag 2000、GP−06、参照)。
【0013】
これらの技術はマスターディスクを用い、強力な磁界によって磁化パターンを媒体に形成している。
一般に磁界の強度は距離に依存するので、磁界によって磁化パターンを記録する際には、漏れ磁界によって磁化パターンの境界が不明瞭になりやすい。そこで、漏れ磁界を最小にするためにマスターディスクと媒体を密着させることが不可欠である。そしてパターンが微細になるほど、隙間なく完全に密着させる必要があり、通常、両者は真空吸着などにより圧着される。
【0014】
また、媒体の保磁力が高くなるほど転写に用いる磁界も大きくなり、漏れ磁界も大きくなるため、更に完全に密着させる必要がある。
従って、上記の各技術は、保磁力の低い磁気ディスクや圧着しやすい可撓性のフロッピー(登録商標)ディスクには適用しやすいが、硬質基板を用いた、高密度記録用の保磁力が3000Oe以上もあるような磁気ディスクへの適用が非常に難しい。
【0015】
即ち、硬質基板の磁気ディスクは、密着の際に微小なゴミ等を挟み込み媒体に欠陥が生じたり、或いは高価なマスターディスクを痛めてたりしてしまう恐れがあった。特にガラス基板の場合、ゴミの挟み込みで密着が不十分になり磁気転写できなかったり、磁気記録媒体にクラックが発生したりするという問題があった。
【0016】
また、上述の特開昭50−60212号公報(USP3、869、711号公報)に記載されたような技術では、ディスクのトラック方向に対して斜めの角度を有したパターンを形成する場合、記録は可能であるが信号強度の弱いパターンしか作れないという問題があった。保磁力が2000〜2500Oe以上の高保磁力の磁気記録媒体に対しては、転写の磁界強度を確保するために、マスターディスクのパターン用強磁性体(シールド材)は、パーマロイあるいはセンダスト等の飽和磁束密度の大きい軟磁性体を使わざるを得ない。
【0017】
しかし、斜めのパターンでは、磁化反転の磁界はマスターディスクの強磁性層が作るギャップに垂直方向となってしまい所望の方向に磁化を傾けることができない。その結果、磁界の一部が強磁性層に逃げてしまい磁気転写の際に所望の部位に十分な磁界がかかりにくく、十分な磁化反転パターンを形成できず高い信号強度が得にくくなってしまう。こうした斜めの磁化パターンは、再生出力が、トラックに垂直のパターンに対してアジマスロス以上に大きく減ってしまう。
【0018】
これに対して、特願2000−134608号及び特願2000−134611号の各明細書に記載された技術は、局所加熱と外部磁界印加を組み合わせて磁気記録媒体に磁化パターンを形成する。例えば、媒体を予め一方向に磁化しておき、パターニングされたマスクを介してエネルギー線等を照射し局所的に加熱し、該加熱領域の保磁力を下げつつ外部磁界を印加し、加熱領域に外部磁界による記録を行ない、磁化パターンを形成する。
【0019】
本技術によれば、加熱により保磁力を下げて外部磁界を印加するので、外部磁界が媒体の保磁力より高い必要はなく、弱い磁界で記録できる。そして、記録される領域が加熱領域に限定され、加熱領域以外には磁界が印加されても記録されないので、媒体にマスク等を密着させなくても明瞭な磁化パターンが記録できる。このため圧着によって媒体やマスクを傷つけることなく、媒体の欠陥を増加させることもない。
【0020】
また、本技術によれば、斜めの磁化パターンも良好に形成できる。従来のようにマスターディスクの軟磁性体によって外部磁界をシールドする必要がないためである。
【0021】
このように、特願2000−134611号の明細書に記載された磁化パターン形成技術は、各種の微細な磁化パターンを効率よく精度よく形成でき、しかも媒体やマスクを傷つけることなく媒体の欠陥を増加させることもない優れた技術である。
【0022】
しかしながら本技術においても、マスクを用いて線幅1μm程度以下の微細なパターンを形成する際に、非同心円状の歪んだ干渉縞が現れ、モジュレーションが悪化してしまう場合があった。
【0023】
図4を用いて説明する。図4においてマスク2は、石英からなる透明基材3上に、クロム層4と酸化クロム層5からなる非透過部が形成されており、マスク2を通過したエネルギー線(入射光11)は磁気記録媒体(磁気ディスク)1に照射される。
【0024】
図5(a)の通り、マスク2の透過部を一度透過した入射光11はほとんどが直進するが、非透過部との境界に近い一部の光は回折により非透過部へ回り込んでしまう。回り込んだ光は、磁気記録媒体1に当たってほとんどが磁気記録媒体面に吸収されてしまうが、一部は反射される。反射光12は再びマスク面非透過部に当たり、その一部が再反射され、その結果、再反射光13は入射光11と干渉を起こし、光を強めたり弱めたりしてしまう。非透過部がクロムなど反射率の高い金属によって構成されると、非透過部へ回り込んだ光は非透過部で反射されて、多くが再反射光となるため、入射光との干渉が大きくなりやすい。
【0025】
この様な場合において、磁気記録媒体1とマスク2の距離が全面において均一に保たれていたならば、干渉縞はできないので光の強さ(濃淡)は全面において均一になる。また、全面において均一でなくても、磁気記録媒体1の中心部を中心とする複数の同心円を想定したときに、少なくとも個々の同心円上において磁気記録媒体とマスクの距離が均一に保たれていたならば、干渉縞は同心円状に形成されることとなる。
【0026】
しかし、磁気記録媒体1とマスク2の距離が個々の同心円上において不均一になると、非同心円状の歪んだ干渉縞が観察される。
【0027】
ところで、磁気ディスク(ディスク状の磁気記録媒体)には通常、同心円状に記録トラックが形成されてなり、各トラックに磁化パターンが記録される。ここで、磁気ディスクは角速度一定で記録再生されることが多い。このような場合、外周に行くほど線速度が高くなり、内周と外周に同じ信号を記録するためには、外周ほどその信号の物理的長さが長くなる。つまり、記録すべき磁化パターンの周方向の幅であるパターン線幅は、個々のトラック上では通常等しいが、内周から外周に行くほど増大していく傾向にある。
【0028】
例えば、直径3.5インチのハードディスクでは、内周(半径20mm)で1μmのパターン線幅が、外周(半径45mm)では2〜3μm程となり、ディスクの半径方向の位置によってパターン線幅は大きく相違する。
【0029】
本発明者らの検討によれば、磁化パターンはそのパターン線幅の大きさによって形成の最適条件が異なる。その原因の一つとして、エネルギー線の回折による影響がある。一般的に、エネルギー線はスリット状の隙間を通過する際に回折を起こすが、隙間が狭いほど回折角が大きくなる傾向がある。
【0030】
このため、パターン線幅が狭くなると、マスクの透過部を通過したエネルギー線は大きく回折され、照射範囲が広がってしまう。従って単位面積あたりのエネルギー線の照射量は小さくなってしまい、加熱部が十分に加熱されず、保磁力の低下が不十分で、磁化が十分におこなわれにくくなってしまい、形成された磁化パターンの出力信号のモジュレーションが悪化する虞がある。つまり、パターン線幅に応じてマスクと媒体の最適な距離が異なるのである。
【0031】
したがって、内外周で線幅の異なるパターンを形成する場合には、マスクと磁気ディスクとの距離を、個々の同心円上においては均一に、かつ磁気ディスクの内周より外周で大きくするとの技術が提案されている。このような場合、干渉縞は同心円状に形成されることとなる。
【0032】
すなわち、本磁化パターン形成技術においては、干渉縞が観察されないか、干渉縞が同心円状に観察されることが好ましい。
【0033】
しかしながら、非同心円状の歪んだ干渉縞が観察されることは、磁気記録媒体とマスクの距離が同心円上で不均一であることを示し、好ましくない。磁気記録媒体とマスクの距離が同心円上で不均一であると、同一トラック上で、パターンが良好に形成される箇所とそうでない箇所ができてしまい、形成された磁化パターンの出力信号のモジュレーションが悪化してしまうという問題があった。
【0034】
本発明者らの検討の結果、この磁気記録媒体とマスクの距離が不均一になる原因が、スペーサの厚みのムラにあることが分かった。スペーサの厚みにムラがあるため、磁気記録媒体とマスクの距離が同心円上において変動してしまう。同心円上において距離が変わると、入射光の光路長が変わるため、それに応じて非同心円状の歪んだ干渉縞が形成されやすくなる。
【0035】
また、モジュレーションの悪化は、磁気記録媒体とマスクの距離、つまり間隔が狭いほど起こりにくいことが分かった。図5(b)の通り、間隔が狭いほど入射光11が非透過部へ回り込む割合が小さくなるため、間隔が狭いほど照射面積に差が生じないからと推測することができる。
【0036】
すなわち、非同心円状の歪んだ干渉縞を発生させることの無いよう、磁気記録媒体とマスクの間隔を狭くかつ少なくとも同心円上において均一に保ち、同心円上における回折の影響を等しくすることが重要であり、そのためには厚さが均一でムラを無くし、かつ薄いスペーサを用いて両者の間隔を保つことが好ましいことが分かった。しかし一般に、スペーサは10μm程度以下の厚みになると、薄すぎて剛性が無いため扱いが難しく、折れ曲がったりシワになったりして厚さが不均一となり、ムラができる虞があった。
【0037】
そこで、本発明者らは、特願2002−069432号の明細書において、マスク表面に例えば0.3μm以上10μm以下の厚みの突起を形成し、この突起を磁気記録媒体に接触させた状態でエネルギー線を照射するという技術を提案した。この技術によれば、磁気記録媒体とマスクとの間隔を狭く、且つ少なくとも同心円上において均一に保つことができ、したがって、磁化パターンの出力信号のモジュレーションが小さい良好な磁気記録媒体が得られる。
【0038】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本技術において、特に突起の形成をいわゆるリフトオフ法で行ない、無機物からなる突起を形成する場合には、突起の形成時に、マスク表面の意図しない位置に突起を形成する物質の欠片(以下、付着物という)が付着してしまうという課題があった。
【0039】
付着物が付着する仕組みを説明する。リフトオフ法においては、マスク表面にフォトレジストの薄膜(以下、フォトレジスト薄膜という)を形成し、次いで突起を形成しようとする領域(以下、特定領域という)のフォトレジスト薄膜をフォトリソグラフィーにより除去する。続いて、特定領域を含む領域に無機物を成膜したのち、フォトレジスト薄膜を除去すると、フォトレジスト薄膜の無かった領域、即ち特定領域のみに無機物の突起が残る。
【0040】
より詳しく説明すると、リフトオフ法では、まずマスク上の特定領域を含む領域に、フォトレジストを所定の厚さに塗布する。次に、突起を形成したい特定領域の位置と形状とに応じてレーザ光を照射し現像を行ない、特定領域のフォトレジスト薄膜を除去する。続いて、このマスクの表面に、形成したい突起の高さに応じて突起を形成する物質である金属の薄膜を成膜した後、マスクをフォトレジスト除去液に浸漬する。すると、フォトレジスト薄膜が除去されるとともに、特定領域以外のフォトレジスト薄膜が形成されていた領域では、フォトレジスト薄膜上に成膜された金属の薄膜も一緒に除去される。したがって、特定領域に成膜された金属の薄膜のみが突起として残るのである。
【0041】
ところが、フォトレジスト除去液中にはフォトレジスト薄膜上に成膜されていた金属の薄膜が砕けて微細な欠片となって漂っており、この欠片が、マスクをフォトレジスト除去液から引き上げる際に、マスク表面の意図しない位置に付着して、付着物となってしまうのである。
【0042】
この様な付着物の存在は、磁気記録媒体とマスクとの間隔を均一に保つ際の障害となる。また、付着物が特にマスクパターン領域に存在する場合、付着部分はエネルギー線を遮断する非透過部となってしまうため、転写するパターンに悪影響を及ぼすことになる。よって、この付着物を除去する必要があるが、付着物は非常に小さく且つ薄いため(径は数μm〜100μm,厚さは0.1μm〜3μm程度)、マスク表面に一度付着すると、スクラブ洗浄等の手段を用いても、除去することが困難である。
【0043】
勿論、リフトオフ法に伴う金属薄膜欠片の付着以外にも、マスク表面の特定領域に形成した薄膜の断片が何らかの原因によってその他の領域に異物として付着してしまうこともあり得る。したがって、マスク表面の特定領域に形成したスペーサ用突起などの薄膜を損なうことなく、その他の領域に存在する余剰な薄膜を効率的に取り除き、表面の清浄なマスクを作成するための方法が求められていた。
【0044】
本発明は、上記課題に鑑み創案されたもので、磁気記録媒体へ磁化パターンを形成する際に使用する磁化パターン形状規定用マスクに対して、その表面の特定領域に形成されたスペーサ用突起などの薄膜を損なうことなく、マスク表面のその他の領域に存在する付着物を効率的に取り除き、表面の清浄なマスクを作成することが可能な、磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法を提供することを目的とする。
【0045】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定領域に形成された目的薄膜を他の薄膜で保護した上で、余剰の目的薄膜を除去することにより、その他の領域に存在する余剰の目的薄膜のみを選択的に除去し、表面の清浄なマスクを効率的に作成することが可能となり、前記目的が効果的に達成されることを見出して、本発明に至った。
【0046】
本発明の要旨は、磁気記録媒体の磁性層に磁化パターンを形成する際に、前記磁化パターンの形状を規定するために使用されるマスクに対して、その表面の特定領域に薄膜を形成する方法であって、前記マスクの表面の少なくとも一部に補助薄膜を形成する工程と、前記特定領域に存在する上記補助薄膜を除去する工程と、前記特定領域を含む領域に目的薄膜を形成する工程と、特定領域以外に存在する上記補助薄膜及び余剰の上記目的薄膜を除去する工程と、前記マスク表面の少なくとも前記特定領域を含む領域に、上記膜的薄膜に重ねて再度上記補助薄膜を形成する工程と、前記マスク表面の前記特定領域以外の領域に存在する上記補助薄膜を除去する工程と、前記マスク表面の前記特定領域以外の領域に付着した余剰の上記目的薄膜を除去する工程と、上記補助薄膜を除去する工程とを備えることを特徴とする、磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法に存する(請求項1)。
【0047】
また、本発明の別の要旨は、上述の方法により表面に薄膜を形成してなることを特徴とする、磁化パターン形状規定用マスクに存する(請求項5)。
【0048】
更に、本発明の別の要旨は、磁気記録媒体の磁性層に磁化パターンを形成する際に、前記磁化パターンの形状を規定するために使用されるマスクにおいて、その表面の少なくとも特定領域に薄膜が形成されている場合に、前記特定領域以外の領域に存在する余剰の上記薄膜を選択的に除去する方法であって、前記マスクの表面の少なくとも特定領域を含む領域に、上記薄膜に重ねて補助薄膜を形成する工程と、前記マスク表面の前記特定領域以外の領域に存在する上記補助薄膜を除去する工程と、前記マスク表面の前記特定領域以外の領域に存在する余剰の上記目的薄膜を除去する工程と、上記補助薄膜を除去する工程とを備えることを特徴とする磁化パターン形状規定用マスクの余剰薄膜除去方法に存する(請求項6)。
【0049】
【発明の実施の形態】
本発明は、例えば磁気記録媒体の磁性層にエネルギー線を照射して加熱する工程(加熱工程)と、磁性層に外部磁界を印加する工程(磁界印加工程)とを実施することにより、磁性層に磁化パターンを形成する方法において、エネルギー線の照射経路に介在させることにより、磁化パターンの形状を規定するためのマスクであって、形成する磁化パターンの形状に応じて、磁性層に対するエネルギー線の照射強度に局所的な濃淡を生じさせるマスクパターン領域を有するマスクに好ましく適用される。
【0050】
そして、本発明は、この磁化パターン形状規定用マスクに対して、その表面の特定領域に薄膜を形成する方法に関するものであって、その他の領域に存在する余剰の目的薄膜のみを選択的に除去し、表面の清浄なマスクを効率的に作成できるようにすることを特徴とする。
【0051】
本発明において、マスク表面の特定領域に形成する薄膜としては、先に挙げた本発明者らによる特願2002−069432号の明細書に記載された方法におけるエネルギー線の照射時に磁気記録媒体とマスクとの間隔を狭く且つ均一に保つための突起が挙げられる。従って、以下の記載では、本発明の薄膜形成方法を用いてこの突起を形成する場合を例として説明するが、本発明により形成される薄膜はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、様々な素材及び目的の薄膜を対象とすることが可能である。
【0052】
なお、本発明は、形成すべき磁化パターンに応じたエネルギー線の濃淡を生じさせるマスクパターン領域を有するマスクであれば、エネルギー線の透過部と非透過部からなるマスクパターン領域を有するマスク、エネルギー線を拡散させるマスクパターン領域を有するマスク、ホログラムマスクなど何れの方式のマスクに対しても適用可能である。以下では、エネルギー線の透過部と非透過部からなるマスクパターン領域を有するマスクを代表例として説明を行なう。また、本発明に用いるマスクは、上述の磁化パターン形成方法に用いるのが好適であるが、それ以外の様々な分野、特に高いパワーを必要とし、微細なパターンを要求されるレーザ加工の分野においても利用することが可能である。
【0053】
図を用いて詳しく説明する。図1は、本発明により上述の突起を形成したマスクを用いた磁化パターン形成方法の一例の説明図である。磁気ディスク1は外部磁界により予め周方向の一方向に一様に磁化されている。そののち磁気ディスク1上にマスク3を載せ、図示しない留めネジにより固定する。マスク2は石英からなる透明基材3上に、クロム層4と酸化クロム層5からなる非透過部が形成されており、さらにパターン領域の周縁部にスペーサとしての突起21が複数設けられている。そして突起21は磁気ディスク1と接触し、これによりマスク2との距離が均一に保たれる。ここにレーザビーム11が照射される。同時に外部磁界6を印加する。この外部磁界は、先に一様に磁化した際の外部磁界とは逆方向である。
【0054】
以上の方法によれば、磁化パターンを形成するにあたり局所加熱と外部磁界印加を組み合わせるので、従来のように強い外部磁界を用いる必要がない。そして加熱領域以外に磁界が印加されても磁化されないので、磁区形成を加熱領域に限定できる。このため磁区境界が明瞭となり、磁化遷移幅が小さく磁区の境界での磁化遷移が非常に急峻で出力信号の品質が高いパターンが形成できる。条件を選べば磁化遷移幅を1μm以下にすることも可能である。
【0055】
そして、エネルギー線の透過部と非透過部からなるパターン領域を有するマスクを介してエネルギー線を照射し、局所加熱する。局所加熱にエネルギー線を用いるので、加熱する部位の大きさやパワーの制御が容易であり、磁化パターンを精度よく形成できる。また、一旦マスクを作成すればどのような形状のパターンも媒体上に形成できるため、複雑なパターンや従来法では作りにくかった特殊なパターンも容易に形成できる。トラックに対して斜めの磁化パターンも良好に形成できる。
【0056】
例えば、磁気ディスクの位相サーボ方式には、内周から外周に、半径及びトラックに対して斜めに直線的に延びる磁化パターンが用いられる。このような、半径方向に連続したパターンや半径に斜めのパターンは、ディスクを回転させながら1トラックずつサーボ信号を記録する従来のサーボパターン形成方法では作りにくかった。しかし、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成方法によれば、複雑な計算や複雑な装置構成を必要とせず、このような磁化パターンを一度の照射で簡便かつ短時間に形成できる。
【0057】
マスクは少なくとも、磁化パターンの繰り返し単位を含む大きさであればよく、それを移動させて使用することができるため、マスクも簡便かつ安価に作成できる。パターンの精度を高めるため、好ましくは一枚で磁気ディスク全面を覆うマスクとする。
【0058】
また、エネルギー線のビーム径を大径又は横に細長い楕円形等として、複数トラック分又は複数セクター分の磁化パターンを一括して照射すれば、書き込み効率が一段と上がり、今後の容量の伸びに伴いサーボ書き込み時間が増大するといった問題も改善され非常に好ましい。そして、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成方法では、形成すべき磁化パターンに応じたエネルギー線の濃淡を生じさせるマスクパターン領域を有するマスクの少なくとも一部に突起が設けられ、該突起が該磁気記録媒体に接触した状態でエネルギー線を照射する。このようにマスク自体にスペーサの役目を果たす突起を一体に設けることにより、従来のようにスペーサを用いた場合に薄すぎて剛性が無いため扱いが難しく、折れ曲がったりシワになったりして厚さが不均一となりやすいという課題を解決し、マスクと媒体の間隔を少なくとも同心円上において狭く、かつ均一に保つことができる。
【0059】
ひいては、回折による影響を抑え、マスクパターンどおりの磁化パターンが形成されるので、磁化パターンの精度が高く、磁化パターンの出力信号のモジュレーションが小さい良好な磁気記録媒体が得られる。特にサーボパターンは位置決め精度にモジュレーションの大きさが大きく影響するので、サーボパターンを形成するには効果が大きい。
【0060】
この時のモジュレーション(Mod)とは、同一パターン領域の平均出力をTAA(トータルアベレージアンプリチュード)、その領域内の最大値と最小値をそれぞれ、AMPmax、AMPminとしたとき、Mod=(AMPmax−AMPmin)/TAA×100で表される。ただし、TAA、AMPmax、AMPmin共にピークトゥピーク(peak−to−peak)の値である。モジュレーションの値は小さいほどよいが、サーボトラッキング精度を考え、好ましくは、20%以下、更に好ましくは10%以下である。
【0061】
また、マスクと磁気ディスクの間隔は、パターン線幅が同じである同心円上で均一で有ればよく、全面において均一である必要はないので、内周と外周に設ける突起高さを変えるなどして、マスクと磁気ディスクの半径方向における間隔を適宜調整しても良い。これにより、内外周で線幅の異なるパターンを容易に形成できる。つまり、パターンの線幅によってエネルギー線のパワーやマスクのパターン線幅の微調整を行なうことなく、容易にエネルギー線の濃淡を調整でき、所望の磁化パターンを得ることができる。
【0062】
次に、本発明に係るマスクについて詳細に説明する。
突起の高さは、マスクと磁気記録媒体のパターン形成領域での間隔を狭くし回折による入射エネルギーの拡散を防ぐためには、低いほどよく、高さが10μm以下であるのが好ましい。より好ましくは7μm以下であり、更に好ましくは5μm以下である。
【0063】
形成するパターンの線幅(パターンの最小幅)が1μmを切って狭くなると、特に光の回折の影響を多く受けるようになるため、線幅が狭いほど突起の高さをより低くするのが望ましい。
【0064】
ただし、あまり低いと磁気記録媒体のうねりと接触するおそれがあるため、高さは0.01μm以上であるのが好ましい。より好ましくは0.1μm以上である。
【0065】
なお、本願においてパターンの最小幅とは、パターン中の最も狭い長さを言う。四角形のパターンであれば短辺、円形ならば直径、楕円形ならば短径である。マスクと磁気記録媒体のパターン形成領域での間隔を少なくとも同心円上において均一に保つためには、突起の高さも同心円上において均一なほど好ましい。従って、突起の高さの同心円上のばらつきは平均高さの±20%以内が好ましい。下限は特に無いが、事実上、平均高さの±3%以上のばらつきはある。間隔の均一性の評価は、干渉縞の本数や位置、形状を観察することで容易に行なえる。
【0066】
上記突起は不連続に設けられてなるのが好ましい。通常、マスクも磁気記録媒体もそれぞれ多少のうねりを有しているので、マスクと磁気記録媒体を接触させる場合には、一旦接触したのちに両者が最も安定的に接触するよう、即ち両者の少なくとも同心円上における間隔がなるべく一定になるよう、互いに移動できることが好ましい。
【0067】
マスク上の連続した突起によってマスクと磁気記録媒体を接触させた場合、接触面積が大きいため摩擦抵抗が高く、両者の相対位置が動きづらくなり、マスクと磁気記録媒体の平面性を保とうとする動きを阻害する場合がある。従って、突起は不連続に設けられてなるのが好ましい。つまり、複数の突起を離散的に設ける。不連続に形成された突起によってマスクと磁気記録媒体が接触すると、両者の摩擦抵抗が低くなり面方向への動きを阻害することなく、媒体とマスクの間隔をより均一に保ちやすい。
【0068】
また、突起が不連続であることにより空気の通り道があるので、マスクと磁気記録媒体が吸着してしまうことがない。従って、両者がうねりに応じて面方向に移動しても摩擦によるキズつきが起こりにくいという利点もある。また、突起が連続的に設けられていると応力によって一部が剥がれやすくなる虞があるので、この点でも不連続が好ましい。
【0069】
次に、複数の突起を離散的に設ける場合の突起形状について説明する。
突起形状は基板面に対して垂直方向から見たとき、つまりマスクを真上から見たときに略円形であるのが好ましい。この様な形状であれば突起高さが均一になりやすいためである。突起形成時に加熱を伴う場合、熱収縮に伴う形状の変化(いわゆるヒケ)が突起の高さのばらつきを増大させる可能性があるが、略円形の突起においてはヒケも周囲から均一に起こるため、突起高さが均一になりやすい。
【0070】
突起形状は、真ん中がへこんで周縁部が盛り上がっているなどしてもよい(いわゆるクレータ状)が、真ん中が頂点で山なりの形状が好ましい。上記ヒケなどによる高さ変動が一様で、高さの調整がしやすいためである。
【0071】
また、突起形状としては、マスク面に対して垂直方向の断面が略矩形状であるような形状であることも好ましい。つまり、突起の側面がほぼ垂直に切り立っており、突起の頂部と底部の形状がほぼ等しい形状である。この様な形状であれば、突起の底面積に対して、実際に磁気記録媒体と接触する頂部の面積を大きくすることができ、マスクと磁気記録媒体とのアライメントのずれに対し、支持位置の余裕を設けることができるからである。
【0072】
突起の面方向の大きさは、マスクと磁気記録媒体に加わる荷重に耐えるためにある程度以上大きいことが好ましい。突起形状が略円形の場合は直径0.5μm以上あることが好ましい。より好ましくは1μm以上である。また、弾性変形による間隔の変化を極力小さくするためには直径5μm以上であることがより好ましい。最大径に関しては特に上限はないが、マスクと磁気記録媒体の接触抵抗を小さくするためには、直径1mm以下が好ましい。突起形状が略円形でない場合は、長辺の長さが上記数値の範囲にあることが好ましい。
【0073】
複数の突起を離散的に設ける場合には、突起と突起の間隔は、突起の大きさにも応じて適宜設計されるが、マスクと媒体との間隔を少なくとも同心円上においてほぼ均一に保てればよい。ただし、少なくとも面内に3個以上設ける必要がある。個々の突起が相当大きい場合には面内に3個程度でよいが、通常はより多く設けた方が好ましい。突起の大きさが小さい場合、例えば直径が1μm程度の小さいものであれば、荷重による変形を防ぐために、隣接する突起の底部同士が接触していてもよい。
【0074】
本発明において突起は、上述した様に、マスク表面の少なくとも一部であって、マスクを磁気記録媒体と接触させた場合に、磁気記録媒体の面取り部と接触しない様な位置に設けられる。具体的には、マスクパターン領域の周縁領域(マスクパターン領域の最外周近傍領域と最内周近傍領域)、及び/又は、マスクパターン領域の内部に設けられる。
【0075】
ここで、突起は磁気記録媒体の磁気記録領域内に接する位置にあっても良く、磁気記録領域の外に接する位置にあっても良く、又はその両方に存在していても良い。特に、磁気記録領域内に接する位置に突起を設ける場合には、後述する素材の選択等によって突起の硬さを制御する(ある程度柔らかくする)ことにより、吸着の際に磁気記録媒体にキズを付けないようにすることが可能となる。これにより、マスクパターン領域が磁気記録媒体の端部付近まで存在し、マスクパターン領域の周縁部に突起を設けるのが寸法的に厳しい様な場合であっても、突起を設けることが可能となる。従って、磁気記録媒体のパターン領域を広げることができ、より大容量の磁気記録媒体を得ることが可能となる。
【0076】
特に、本発明では、マスクの径方向において、少なくともマスクパターン領域の最外周近傍領域及び最内周近傍領域の二つに突起を設けることが好ましく、これら二つの領域の中間付近の領域にも更に突起を設けることがより好ましい。なぜなら、マスクと磁気記録媒体の間隔を例えば3μm以下程度に狭くしていくと、パターン領域でマスクと磁気記録媒体が意図せず接触し、摩擦等により傷つき欠陥となってしまう虞があるためである。特に磁気記録媒体とマスクの間を減圧し吸着固定する場合は、磁気記録媒体がたわむのでより接触しやすい。そこで、マスクのパターン領域内に低めのなだらかな突起を設けておくと、磁気記録媒体がマスク面と直接接触せずなだらかな突起と接触するので欠陥になりにくいと考えられる。
【0077】
更に、パターン領域の周縁部に突起を設けるに際し、その突起の一部がパターン領域内の非透過部にかかるように設けても良い。この様に突起を設けることにより、パターン領域が磁気記録媒体の端部付近まであり、パターン領域の周縁部に突起を設けるのが寸法的に厳しいような場合であっても突起を設けることができる。従って、磁気記録媒体のパターン領域を広げることができ、より大容量の磁気記録媒体を得ることができる。
【0078】
次に、突起に要求される特性について説明する。突起にはある程度の滑性、硬度、耐熱性、耐溶剤性などの特性が要求される。上述のようにマスクと磁気記録媒体との摩擦があまり大きすぎず、相対的に移動可能であることが望ましいから、突起はある程度滑性が高いほうが好ましい。
【0079】
また、マスクと磁気記録媒体とが吸着せず、マスクが容易に取り外せるためにも、滑性が高いほうが好ましい。工業化段階においては、磁気記録媒体へのマスクの設置はロボット等の自動機で行なわれるため、面と垂直な方向へマスクと磁気記録媒体を離そうとした場合にマスクが容易に取り外せるのが好ましい。
【0080】
また、マスクは多数の磁気記録媒体への磁化パターンの転写に使用されるため、塑性変形しやすい材料により突起を構成すると、一部の突起で徐々に変形が起こり、特定の位置でマスクと磁気記録媒体間の間隔が狭くなり、非同心円状の歪んだ干渉縞の発生を誘発してしまう虞がある。従って硬度の高い材料により突起を構成するのが好ましい。
【0081】
例えば、磁気記録媒体にマスクを10回程度繰り返し装脱着したのちのマスクの突起高さの塑性変形量が元の高さの50%以下であることが好ましい。より好ましくは10%以下である。工業的に使用するには、10%以下であることが好ましい。
【0082】
更に、突起に直接はエネルギー線が照射されないが、マスクの非透過部の裏面に設置される場合があるため、エネルギー線で加熱されたマスクの非透過部での熱が突起に間接的に伝わることがある。そのため、突起は熱により変形や分解しにくいものが望ましく、好ましくは分解温度が100℃以上の材料を使用する。また、エネルギー線のパワーがより高いほど突起の耐熱性も高いことが望ましく、例えば100mJ/cm2以上のパワーを印加する場合には分解温度が200℃以上のものが好ましい。
【0083】
突起形成時においては、特にフォトリソグラフィー等の手法で作成する場合は、突起は所定の溶剤に対して可溶な材料からなるのが好ましい。しかし、突起形成後はマスクに付着したゴミ、粒子などの除去を目的とした有機溶剤洗浄を受ける場合があるため、溶剤可溶性は持たないほうが好ましい。例えば、突起に作成後に熱処理等により耐溶剤性を付与してもよい。
【0084】
次に、本発明に係るマスクの構成について説明する。
本発明に用いるマスクは、前述したように、形成すべき磁化パターンに応じたエネルギー線の濃淡を生じさせるマスクパターンを有するマスクであれば、エネルギー線の透過部と非透過部からなるマスクパターンを有するマスク、エネルギー線を拡散させるマスクパターンを有するマスク、ホログラムマスクなど何れの方式のマスクも使用可能である。
【0085】
エネルギー線の透過部と非透過部からなるマスクパターンは、例えば、石英ガラス、光学ガラス、ソーダライムガラス等のエネルギー線に対して透過性のある透明基材上に、クロム等の金属をスパッタリング形成し、その上にスピンコート等によりフォトレジストを塗布し、エッチング等によって、所望の透過部と非透過部を作成することができる。この場合は透明基材上にクロム層を有する部分がエネルギー線非透過部、原盤のみの部分が透過部となる。好ましくは、クロム層上に酸化クロム層を形成する。酸化クロム層はクロムを酸化させるだけで形成でき、光学的反射率が低いため、多重反射等の影響を低減できる効果を持つ。またクロム層との密着性も優れているので好ましい。また、マスクに誘電体層からなる無反射コーティングを施すことも好ましい。これによりエネルギー線をより有効に利用することができるからである。
【0086】
以上のようにして、マスクにマスクパターン領域を形成し、この後、マスクの磁気記録媒体に対向すべき面の少なくとも一部に、本発明の薄膜形成方法を用いて突起を形成する。
【0087】
ここで、マスクパターン上に突起を形成する方法としては、主に以下の方式が挙げられる。
【0088】
[方式1]
マスクにポリイミドなどの放射線硬化性又は熱硬化性の樹脂層を形成し、この樹脂層にフォトリソグラフィーにより突起を形成する方式。
【0089】
[方式2]
無機物によって突起を形成する方式。無機物とは例えば金属(合金を含む)、酸化物や窒化物などの誘電体、カーボンなどである。形成方法としては以下のようにいくつかがある。
(方式2−1)
マスクに無機物層を形成し、この無機物層にフォトリソグラフィーにより突起を形成する方式。
(方式2−2)
マスクの突起を形成したい場所に無機物層を成膜して突起を形成する方式。
(方式2−3)
マスクに、いわゆるリフトオフ法により無機物からなる突起を形成する方式。
【0090】
[方式3]
マスク表面の突起を形成したい場所に液状樹脂を滴下して突起を形成する方式。
【0091】
[方式4]
マスクに、無機/有機の微粒子を分散した放射線硬化性又は熱硬化性の樹脂層を形成することにより突起を形成する方式。
【0092】
[方式5]
マスクを構成する基材に、エネルギー密度の高いエネルギー線を照射し、基材を変形させて突起を形成する方式。或いは、基材上に加工層を成膜したのちエネルギー密度の高いエネルギー線を照射し、加工層を変形させて突起を形成する方式。
【0093】
以上、方式1〜方式5の中でも、方式2−3、即ち、リフトオフ法によって突起を形成する場合には、上述した様に、突起の形成時にマスク表面の意図しない位置に突起を形成する物質の欠片(以下、付着物という)が付着してしまうという課題があるため、本発明の薄膜形成方法を適用することによる効果も大きい。従って、以下の記載では、方式2−3、即ちリフトオフ法による突起の形成に本発明を適用する場合を例として、マスクを軸方向に切った断面図である図2を参照しながら、本発明の薄膜形成方法を用いた突起の形成方法について詳しく説明する。図2においては本発明の特徴を説明するために、薄膜を実際の大きさよりも大きく表わしている。
【0094】
(方式2−3)
マスクに、いわゆるリフトオフ法により無機物からなる突起を形成する。すなわちマスク上のフォトレジスト層をフォトリソグラフィーにより凹凸を形成し、この上に無機物層を成膜したのちフォトレジスト層を除去すると、フォトレジストの無かった部分のみ無機物層が突起として残るのである。
【0095】
詳しく説明する。マスクにフォトレジストを所定の厚さに塗布し、形成したい突起の位置と形状に応じてレーザ光を照射し現像し、一部のフォトレジストを除去し凹凸を形成する。この上に形成したい突起の高さに応じて金属層を成膜したのち、例えばフォトレジスト除去液に浸漬する。するとフォトレジスト層が除去されるとともにその上に成膜された金属層が除去されるので、フォトレジストの無い場所に成膜された金属層のみが突起として残る。
【0096】
さらに詳しく説明する。例えば図2(a)のような、透明基材3の一側面に、形成しようとする磁化パターン形状に応じてエネルギー線を遮蔽する、シリコンからなる遮蔽薄膜7を形成してなるマスク8の遮蔽薄膜7上に、クロムの薄膜(以下、クロム薄膜という)でスペーサ用の突起21を形成する工程をそれぞれ説明する。
【0097】
まず第1の工程として、図2(b)に示すように、マスク8の遮蔽薄膜7を形成した側の面全体にポジ型のフォトレジストで補助薄膜としてのフォトレジスト薄膜10を形成する。このポジ型のフォトレジストは、現像すると感光部分が溶けて無くなり、感光していない部分のみが残る性質を持っている。なお、いまマスク8の遮蔽薄膜7を形成した面全体にフォトレジスト薄膜10を形成したが、少なくとも突起21を形成しようとする領域の周辺、つまり、特定領域の周辺部分に形成すればよい。ただし、後に説明する第3の工程において、突起21を形成する際に、クロムがマスクパターンやその他使用に悪影響を及ぼしかねない部位に付着することを防止するために、突起21を成膜する際の、成膜の位置決め精度に応じて、成膜される周辺領域をフォトレジストで覆うことが望ましい。そのため、マスク8の遮蔽薄膜7を形成した面全体にフォトレジスト薄膜10を形成すれば、上記のように特定領域以外の領域にクロムが付着する虞を少なくでき、好ましい。
【0098】
次に第2の工程として、図2(c)に示すように、特定領域のフォトレジスト薄膜10に光源14からレーザ光を照射し、特定領域のフォトレジスト薄膜10を感光させ、その後マスク8を現像液に浸漬してフォトレジスト薄膜を現像する。現像により、感光部分のフォトレジスト薄膜10は現像液に溶解するが、感光しなかった部分のフォトレジスト薄膜10はそのままマスク表面に残る。
【0099】
ところで、本実施形態においては、第1の工程においてポジ型のフォトレジストを用いてフォトレジスト薄膜10を形成したが、ポジ型に代えてネガ型のフォトレジストを用いてフォトレジスト薄膜10を形成しても良い。このネガ型のフォトレジストは、現像すると感光していない部分が溶けて無くなり、感光部分のみが残る性質を持っている。したがって、ネガ型のフォトレジストを用いた場合には、第2の工程において特定領域以外の領域のフォトレジスト薄膜10に光を照射し、特定領域のフォトレジスト薄膜10は感光しないようにし、現像を行なう。これにより、図2(c)に示すように感光しなかった部分のフォトレジスト薄膜10は現像液に溶解し、感光部分のフォトレジスト薄膜10はそのままマスク8表面に残る。
【0100】
続いて、第3の工程では、図2(d)に示すように、特定領域周辺に目的薄膜としてのクロム薄膜16を形成する。クロム薄膜16を形成するためにはスパッタリングで薄膜形成を行なうことが適しているが、スパッタリング以外の方法で薄膜形成を行なってもよい。例えば、突起がクロムである場合には蒸着やメッキで薄膜形成を行ってもよい。ただし前述したように、透明基材3とクロムとの密着性及び成膜制御の容易さを考慮すると、スパッタリングが好ましい。その他、突起21を樹脂等で形成する際には、ディップ法やスピンコート法で薄膜形成を行なうこともできる。なお、この薄膜形成時においては、クロム薄膜16はフォトレジスト薄膜10よりも薄く生成しなくてはならない。
【0101】
第4の工程では、マスク8をフォトレジスト除去液に浸漬し、図2(e)に示すように、フォトレジスト薄膜10を除去する。フォトレジスト薄膜10は全てフォトレジスト除去液に溶解し、同時にフォトレジスト薄膜10の表面に形成されていたクロム薄膜16もマスク8から剥離し、小さい欠片となってフォトレジスト除去液中に分散する。これにより、マスク8表面の特定位置にクロムからなるスペーサ用の突起21としての薄膜が形成される。なお、フォトレジスト除去液としては強アルカリ溶液やアセトンなどが使用される。
【0102】
ところが、このフォトレジスト除去液からマスク8を取り出す際、マスク8から剥離したクロムの欠片の一部はマスク8表面に付着し、付着物9となる。この際、付着物9がマスクパターンに付着すると、マスク8を用いて磁気記録媒体に磁化パターン形成をするときに正確な磁化パターン形状を規定することができなくなる。なぜなら、マスクパターンを透過するエネルギー線をマスクパターンに付着した付着物9が遮ってしまうからである。したがって、以下説明する工程で付着物9を除去する必要がある。
【0103】
第5の工程では、図2(f)に示すように、マスク8の遮蔽薄膜7を形成した側の面全体に、ポジ型のフォトレジストで補助薄膜としてのフォトレジスト薄膜10を形成する。なお、今回はマスク8の面全体にフォトレジスト薄膜10を形成したが、マスク8の面全体にフォトレジスト薄膜10を形成しなくてもよく、少なくとも特定領域の周囲にフォトレジスト薄膜10が形成できればよい。
【0104】
第6の工程では、図2(g)に示すように、特定領域に形成された目的薄膜を囲む領域以外のフォトレジスト薄膜10が感光するようにマスク8に光源14からレーザ光を照射し、フォトレジスト薄膜10を感光させ、その後マスク8を現像液に浸漬してフォトレジスト薄膜10を現像する。現像により、感光しなかった部分のフォトレジスト薄膜10は除去されるが、感光部分のフォトレジスト薄膜10はそのままマスク8表面に残る。したがって図2(h)に示すように、特定領域のみがフォトレジスト薄膜10によって保護され、特定領域以外の領域では付着物9が剥き出しになる。ところで、この工程でフォトレジスト薄膜10を残す領域は、特定領域を覆う領域に限定する必要は無く、例えば各特定領域を連結するように帯状にフォトレジスト薄膜10を残すようにすれば、フォトレジスト薄膜の露光,現像を容易に行なえるようになる。
【0105】
第7の工程では、マスク8をクロムが可溶なエッチング液に浸漬する。これにより、図2(i)に示すように、マスク8表面から付着物9が除去されることとなる。
【0106】
最後に第8の工程で、マスク8をフォトレジスト除去液に浸漬し、目的薄膜である突起21を保護しているフォトレジスト薄膜10を除去し、図2(j)に示すように特定領域にのみ突起21を形成することができ、付着物9の無いきれいなマスク8を製造することができる。
【0107】
このとき、非透過部はシリコン以外の物質で形成しても良く、また、突起21をクロム以外の物質で構成しても良い。
【0108】
また、本実施形態においては第5の工程においてポジ型のフォトレジストを用いてフォトレジスト薄膜10を形成したが、ポジ型のフォトレジストの代わりにネガ型のフォトレジストでフォトレジスト薄膜10を形成しても良い。その場合には、第6の工程において、特定領域に形成された目的薄膜を囲むフォトレジスト薄膜10が感光しないように、且つ、少なくとも付着物9を除去しようとするマスクパターンを含む領域が感光するようにフォトレジスト薄膜10に光を照射する代わりに、特定領域に形成された目的薄膜を囲むフォトレジスト薄膜10が感光するように、フォトレジスト薄膜10に光を照射することとなる。
【0109】
さらに、第6の工程において特定領域に形成された目的薄膜を囲むフォトレジスト以外のフォトレジストをすべて現像によって取り除くようにする必要はない。第7の工程でマスクパターンに付着した付着物9を除去するために第6の工程でマスクパターンに形成されたフォトレジスト薄膜10を取り除く必要はあるが、例えばマスク8の外縁部付近に付着物9が残っていても磁化パターン形成に影響を与え難い。したがって、マスクの外縁部付近のフォトレジスト薄膜10を第6の工程で取り除くことは必ずしも必要ではない。ただし、第6の工程において特定領域に形成された目的薄膜を囲むフォトレジスト薄膜10以外のフォトレジスト薄膜10をすべて現像によって取り除くようにすることは、マスク8をより精密なものにすることができるため、好ましい。
【0110】
また、遮蔽薄膜7と突起21とを同じ物質で形成しても良い。ただし、その際にはマスク8に遮蔽薄膜7を形成した後、第1の工程の入る前に、マスク8の遮蔽薄膜7を形成した側の面をコーティングし保護するなど、第7の工程で付着物9を除去する際に、付着物9とともに遮蔽薄膜7が除去されてしまわないようにする処置を施す必要がある。なお、場合によってはクロム薄膜16は遮蔽薄膜7上に直接設けてもよい。
【0111】
この方法では、金属層の厚さが突起高さにほぼ等しくなるので、金属層の厚さを制御することで突起高さを精度良く均一に、かつ容易に制御できるという利点がある。
【0112】
無機物層の材質、成膜方法などは後述する方式2−1と同じである。フォトレジスト除去液としては例えば強アルカリ液などが用いられる。
本手法では突起形状はフォトレジスト層に形成する凹凸の形状によってコントロールでき、帯状であってもよいし不連続であってもよい。フォトリソグラフィーを行なうので後述する方式2−2に比べて底面積の小さい突起の形成に適している。底面積の小さい突起とは例えば円形なら直径0.2mm未満、四角形なら一辺が0.2mm未満である。
【0113】
小さい突起は形成できる場所の自由度が高く、狭い領域にも形成できる点が好ましい。パターン領域とディスク外周端との距離が例えば0.3mm以下と非常に狭いハードディスクの周縁部にも設けることができる。
【0114】
またフォトリソグラフィーで突起を形成するため、後述する方式2−2に比べてパターンとのアライメントが正確に取りやすい。場合によってはパターンと突起を同時に形成することもでき、工程を大幅に短くできる。更に、リフトオフ法によれば、マスク面に垂直方向の断面形状が略矩形状である突起、即ち側面が切り立った形状の突起が形成しやすい。従って同じ底面積でも頂部の面積がより大きな突起が形成しやすく、ディスクとマスクのアライメントが多少ずれてもディスクを支えられるため好ましい。更に、突起はディスク半径方向の長さが大きいほうが好ましい。これによりマスクとディスクとのアライメントずれに対しより余裕を持たせることができる。
【0115】
本方式によれば、無機物層の厚さをコントロールすることで形成する突起の高さを任意に変えられるので、様々な突起高さに適用できる。例えば0.001μm以上10μm以下である。また、無機物層は樹脂に比べて薄く形成することが容易なので、樹脂を使う方式では形成しにくい0.001μm以上3μm以下の低い突起も作りやすい。
【0116】
リフトオフ法を何度か繰り返すことによって、場所により突起の高さを変えることもできる。また無機物層のエッチング工程が不要で厚く成膜するだけで高い突起が容易に形成できる点が好ましい。
【0117】
なお、以上説明した本発明の薄膜形成方法のうち、その一部、即ち、特定領域に形成された目的薄膜を他の薄膜で保護した上で、余剰の目的薄膜を除去するという工程(以下、本発明の余剰薄膜除去方法と呼ぶ。)については、方式2−3のリフトオフ法を用いて薄膜を形成する場合のみならず、その他の方式1〜方式5の突起形成方法を用いて突起を形成した場合に対しても適用可能である。従って、以下の記載では、方式2−3以外の方式1〜方式5の突起形成方法について簡単に説明した上で、これらの突起形成方法に対する本発明の余剰薄膜除去方法の適用について併せて説明する。
【0118】
[方式1]
マスクにポリイミドなどの放射線硬化性又は熱硬化性の樹脂層を形成し、この樹脂層にフォトリソグラフィーにより突起を形成する。この方法では樹脂層の厚さが突起高さにほぼ等しくなるので、樹脂層の厚さを制御することで突起高さを精度良く均一に、かつ容易に制御できるという利点がある。また、樹脂層の塗布形成やエッチング液による除去は短時間で行なえるという利点もある。
【0119】
ポリイミド樹脂が感光性ポリイミド樹脂である場合は、樹脂層形成後にそのままフォトリソグラフィー、エッチングを行なえばよいが、非感光性ポリイミド樹脂である場合は、樹脂層上にフォトレジスト層を形成した後、フォトリソグラフィー、現像、エッチングなどを行なう。
【0120】
樹脂層の形成法としては塗布によるのが一般的であり、ディップ法、スピンコート法などがある。続いて、形成すべき突起に応じたパターンを有する突起形成用マスクを介して、樹脂層付きマスクにレーザ光などを照射し、潜像を形成する。次いで有機溶剤などにより不要部分をエッチング除去し、突起を形成する。
【0121】
このとき、図2(e)のように、透明基材3の表面にエネルギー線を遮蔽する遮蔽薄膜7が形成されてなるマスク8の表面に、突起21を形成した場合には、突起21を形成する物質がマスク8面上に付着し、磁気記録媒体に磁化パターン形成を行なう際に悪影響を与える付着物9となる場合がある。この付着物9を除去するための方法を、以下に説明する。
【0122】
まず、図2(f)のように、突起8が形成されている面にポジ型のフォトレジストの薄膜(以下、フォトレジスト薄膜という)10を成膜する。この際、少なくとも突起21が形成されている領域にフォトレジスト薄膜10を形成すればよいが、成膜する領域を突起21が形成されている領域に限定するよう調整する手間を省くために、マスク8の面全体にフォトレジスト薄膜10を形成することが好ましい。次いで、図2(g)のように、付着物除去用マスクを介して光源14からレーザ光を照射するなどして突起21を覆うフォトレジスト薄膜10以外のフォトレジスト薄膜10を感光させ、マスク8を現像液に浸漬し、突起21を覆うフォトレジスト薄膜10以外のフォトレジスト薄膜10を除去する。なお、使用するフォトレジストがネガ型ならば、突起21を覆う領域のフォトレジスト薄膜10が感光するように光を照射し、現像を行なえばよい。これにより、図2(h)のように突起21はフォトレジスト薄膜10により保護されるが、付着物9は周囲のフォトレジスト薄膜10を除去されたために剥き出しの状態となる。続いて突起21を形成する物質が可溶なエッチング液にマスク8を浸漬する。すると、図2(i)に示すように、剥き出しとなっている付着物9はエッチング液により除去されるが、突起21はフォトレジスト薄膜10に保護されているためマスク8表面に残る。最後に突起21を覆っているフォトレジスト薄膜10をフォトレジスト除去液によって除去する。こうしてマスク8表面上から付着物9が取り除かれ、図2(j)に示すような清浄な状態のマスクが得られるのである。
【0123】
この後に、突起の硬度を上げ、かつ突起の耐溶剤性を向上させるために、加熱処理または紫外線照射処理などを行ない架橋を促進させるのが好ましい。加熱処理としては、オーブンを使用したり、赤外線ランプを使用するなどの方法がある。この際、樹脂の材質によっては硬化時のヒケが大きく、突起の中央部が選択的に縮小しクレータ状になる場合がある。このような硬化時のヒケの大きい樹脂を使用する場合は、突起高さを均一にするために突起の形状は略円形であることが好ましい。
【0124】
本方法は、高い突起を形成するには樹脂層を厚く塗布すればよい反面、非常に薄い樹脂層は通常形成しにくいので、例えば突起高さが0.3μm以上10μm以下の比較的高い突起の形成に適する。
【0125】
[方式2]
無機物によって突起を形成する方法である。無機物によって突起を形成することは、硬度の高い突起を形成しやすい点で好ましい。
【0126】
(方式2−1)
マスクに無機物層を形成し、この無機物層にフォトリソグラフィーにより突起を形成する。この方法では無機物層の厚さが突起高さにほぼ等しくなるので、無機物層の厚さを制御することで突起高さを精度良く均一に、かつ容易に制御できるという利点がある。
【0127】
無機物層は十分な硬度と耐候性があれば特に材質は限定されないが、磁化されない材質であると、印加される外部磁界による影響が少ないため好ましい。
クロムや酸化クロムを用いると、マスクの非透過部の形成と共通の工程で突起が形成でき好ましい。無機物層の成膜法としてはスパッタリング、蒸着、CVD、メッキなどが一般的である。続いて、無機物層上にフォトレジスト層を形成した後、フォトリソグラフィーを行なう。形成すべき突起に応じたパターンを有する突起形成用マスクを介して、該フォトレジスト層にレーザ光を照射し、潜像を形成する。次いで現像し、さらにエッチング液などにより無機物層の不要部分をエッチング除去し、突起を形成する。
【0128】
このとき、方式1と同様に、図2(e)のように、透明基材3の表面にエネルギー線を遮蔽する遮蔽薄膜7が形成されてなるマスク8の表面に、突起21を形成した場合には、突起21を形成する物質がマスク8面上に付着し、磁気記録媒体に磁化パターン形成を行なう際に悪影響を与える付着物9となる場合がある。この付着物9は、方式1と同様の方法で除去することができ、それにより清浄な状態のマスクが得られる。
【0129】
本方式によれば、無機物層の厚さとエッチング量をコントロールすることで形成する突起の高さを任意に変えられるので、様々な突起高さに適用できる。例えば0.001μm以上10μm以下である。厚く成膜すれば高い突起も形成できるが、無機物層は樹脂に比べて薄く形成することが容易なので、樹脂を使う方式では形成しにくい0.001μm以上3μm以下の低い突起も作りやすい。
【0130】
(方式2−2)
マスクの突起を形成したい場所に無機物層を成膜して突起を形成する。すなわち、形成したい突起形状に応じた孔部を有する遮蔽板をマスク上に配置し、スパッタリング、蒸着等により無機物層を成膜する。この方法は方式2−1と同様の利点を備えるほか更に、非常に簡便に突起が形成でき、しかもウエットな工程を全く経ることがないため、マスク上に異物が残留する可能性が極めて低く、磁化パターン転写時に磁気記録媒体を汚染する虞が低く好ましい。すなわち無機物層のフォトリソグラフィーが不要でその後の樹脂の除去、洗浄工程も不要であるし、樹脂の塗布も不要で、無機物層を成膜するだけでよい。
【0131】
また、この方法では無機物層の厚さが突起高さにほぼ等しくなるので、無機物層の厚さを制御することで突起高さを精度良く均一に、かつ容易に制御できるという利点がある。
【0132】
無機物層の材質、成膜方法などは方式2−1と同じである。ただし本方式においては無機物層の成膜時に、遮蔽板を、スパッタリングターゲット或いは蒸着源とマスクとの間に配する。突起形状は遮蔽板の孔部の形状によってコントロールでき、帯状であってもよいし不連続であってもよい。
【0133】
遮蔽板には、作製したい突起形状に応じて例えば打ち抜きなど機械的加工が施される。遮蔽板の材質は加工がしやすく一定の耐久性があれば特に限定されないが、例えばステンレス鋼(SUS)、真鍮、銅などの金属箔、ポリイミドなどの樹脂フィルム等が用いられる。厚みも特に限定されないが加工性と耐久性の点で10μm以上が好ましい。一方、あまり厚いと孔部を通して無機物膜が成膜されにくくなり、また加工もしにくいので1mm以下が好ましい。
【0134】
本手法は、突起形状に応じて遮蔽板を機械的に加工するので、比較的底面積の大きい突起の形成に適している。底面積の大きい突起とは例えば円形なら直径0.2mm以上、四角形なら一辺が0.2mm以上である。大きい突起のほうが物理的に強いので、多数の小さい突起で媒体を支えるよりも少数の大きい突起で支えるほうが強度の点で好ましい。
【0135】
また、本手法では遮蔽板の孔部において、遮蔽板の厚みの陰になる部分は成膜されにくいので側面の傾斜したなだらかな突起ができやすい。但し遮蔽板の孔の形状を厚み方向で変化させ上側ほど広くするなどすれば、マスク面に垂直方向の断面形状が略矩形である側面が比較的切り立った形状の突起も形成できると考えられる。
【0136】
すなわち、本手法では底面積の広いなだらかな突起が形成されやすい。ところでハードディスクの場合、パターン領域とディスク外周端との距離は例えば0.3mm以下と非常に狭いため、パターン領域の周縁部に頂上を持つなだらかな突起を形成する際には突起のすそ野がパターン領域にまで広がることが多い。この様な場合には、パターン領域内の非透過部にすそ野が広がるように突起を形成することが好ましい。
【0137】
また、ディスクとマスクのアライメントが多少ずれてもディスクを支えられるように、突起は少なくともディスク半径方向の長さが大きいほうが好ましい。パターン領域のパターンの形状によっては突起のディスク周方向の長さが大きくできない場合があるが、そのときは長円形や楕円形にすればよい。
【0138】
また、方式1及び方式2−1と同様に、図2(e)のように、透明基材3の表面にエネルギー線を遮蔽する遮蔽薄膜7が形成されてなるマスク8の表面に、突起21を形成した場合には、突起21を形成する物質がマスク8面上に付着し、磁気記録媒体に磁化パターン形成を行なう際に悪影響を与える付着物9となる場合がある。この付着物9は方式1及び方式2−1と同様の方法で取り除くことができ、それにより清浄な状態のマスクが得られる。
【0139】
本方式によれば、無機物層の厚さをコントロールすることで形成する突起の高さを任意に変えられるので、様々な突起高さに適用できる。例えば0.001μm以上10μm以下である。また、無機物層は樹脂に比べて薄く形成することが容易なので、樹脂を使う方式では形成しにくい0.001μm以上3μm以下の低い突起も作りやすい。
【0140】
スパッタリングの途中で遮蔽板の孔部の形状や位置を変えるなどによって場所により突起の高さを変えることも容易である。またエッチング工程が不要で厚く成膜するだけで高い突起が容易に形成できる点が好ましい。
【0141】
[方式3]
マスクの、突起を形成したい場所に液状樹脂を滴下して突起を形成する。この方法では樹脂の全面塗布を行なわなくて良く、またフォトリソグラフィーが不要でその後の樹脂の除去、洗浄工程も不要であるため、非常に簡便に突起を形成できるという利点がある。
【0142】
放射線硬化性または熱硬化性樹脂を滴下後、オーブンや赤外線ランプによる加熱又はレーザ光照射などで樹脂を硬化させることが、突起の硬度を上げ、かつ突起の耐溶剤性を向上させるために好ましい。
【0143】
この際、樹脂の材質によっては硬化時のヒケが大きく、突起の中央部が選択的に縮小しクレータ状になる場合がある。このような硬化時のヒケの大きい樹脂を使用する場合は、突起高さを均一にするために突起の形状は略円形であることが好ましい。
【0144】
また、方式1及び方式2−1,2−2と同様に、図2(e)のように、透明基材3の表面にエネルギー線を遮蔽する遮蔽薄膜7が形成されてなるマスク8の表面に、突起21を形成した場合には、突起21を形成する物質がマスク8面上に付着し、磁気記録媒体に磁化パターン形成を行なう際に悪影響を与える付着物9となる場合がある。この付着物9は方式1及び方式2−1,2−2と同様の方法で取り除くことができ、それにより清浄な状態のマスクが得られる。
【0145】
本方法においては、突起の高さや大きさは樹脂の量及び粘度などを調節することで制御できる。高い突起を形成するには樹脂量を多く粘度を高くして滴下すればよい。例えば突起高さが0.3μm以上10μm以下の比較的高い突起の形成に適する。
【0146】
[方式4]
マスクに、無機/有機の微粒子を分散した放射線硬化性又は熱硬化性の樹脂層を形成することにより突起を形成する。この方法ではフォトリソグラフィーが不要でその後の樹脂の除去、洗浄工程も不要であるため、非常に簡便に突起を形成できるという利点がある。
【0147】
樹脂層の形成法としては塗布によるのが一般的であり、ディップ法、スピンコート法などがある。塗布後、オーブンや赤外線ランプによる加熱又はレーザ光照射などで樹脂を硬化させることが、突起の硬度を上げ、かつ突起の耐溶剤性を向上させるために好ましい。
【0148】
粒子としては十分な硬度を有すれば種類は限定されないが、例えばガラス、シリコン、樹脂系等の微粒子が印加される外部磁界への影響が少ないため好ましい。粒子の大きさは形成したい突起の大きさに合わせて選定すればよいが、通常、0.3μm以上10μm以下程度である。突起高さを均一にするため、添加する粒子は球形であるのが好ましい。
【0149】
また、方式1及び方式2−1,2−2及び方式3と同様に、図2(e)のように、透明基材3の表面にエネルギー線を遮蔽する遮蔽薄膜7が形成されてなるマスク8の表面に、突起21を形成した場合には、突起21を形成する物質がマスク8面上に付着し、磁気記録媒体に磁化パターン形成を行なう際に悪影響を与える付着物9となる場合がある。この付着物9は方式1及び方式2−1,2−2及び方式3と同様にして除去することができ、それにより清浄な状態のマスクが得られる。
【0150】
本方法においては、突起の高さや大きさは粒子の大きさ、形状及び添加量、樹脂の量及び粘度などを調節することで制御できる。本法は例えば突起高さが0.3μm以上10μm以下の比較的高い突起の形成に適する。
【0151】
[方式5]
マスクを構成する基材に、エネルギー密度の高いエネルギー線を照射し、基材を変形させて突起を形成する。或いは、基材上に加工層を成膜したのちエネルギー密度の高いエネルギー線を照射し、加工層を変形させて突起を形成する。基材としては通常、石英ガラス、ソーダライムガラスなどが用いられる。加工層材料としてエネルギー線照射による変形が可能で、かつ十分な硬度を有する材料であればよいが、例えば非透過部の形成材料であるクロムや酸化クロムなどを用いると、非透過部の形成と同じ工程で突起を形成でき、好ましい。この場合、パターン領域の周縁領域にもクロムや酸化クロムなどを成膜すればよい。
【0152】
この方法では、樹脂の塗布やフォトリソグラフィーが不要でその後の樹脂の除去、洗浄工程も不要であるため、非常に簡便に突起を形成できるという利点がある。また、突起の材質が、例えばマスクの基材の石英ガラスなどであるので硬度の高い突起を形成しやすいという利点もある。更に、レーザの照射条件を選ぶことで高さ1μm以下の低い突起が容易に形成できる。高さ数〜数十nmも可能である。従って例えば突起高さが0.001μm以上3μm以下の比較的低い突起の形成に適する。
【0153】
本方法においては、マスクの基材または加工層にレーザ光を照射する。使用に適したレーザとしては、炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)、エキシマレーザ(157,193,248,308,351nm)、YAGのQスイッチレーザの基本波(1064nm)、2倍波(532nm)、3倍波(355nm)、或いは4倍波(266nm)、Arレーザ(488nm、514nm)、レーザダイオード(780,980,820nm)などが挙げられる。
マスクの基材であるガラス、石英等に直接突起を形成する場合、波長の長い例えば炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)のような光源を用いることが好ましい。
【0154】
マスクのパターン領域非透過部やパターン領域周縁領域にレーザを照射して加工層を加熱することにより変形させて突起を形成する場合、用いるエネルギー線は加工層に対して吸収のある波長のレーザ光であればよいが、例えばYAGレーザの基本波(1064nm)、倍波(532nm)、三倍波(366nm)、四倍波(266nm)、Arガスレーザ(514,488nm)、エキシマレーザ(157,193,248,308,351nm)、レーザダイオード(780,980,820nm)などが挙げられる。
照射されるレーザはパルス状であるが、元々パルス発振のレーザを使用する場合でも、連続発振のレーザを音響光学素子(AO),電気工学素子(EO)、機械的なシャッター等でパルス化してもかまわない。パルス状のレーザを照射することで略円形の突起が形成しやすい。
【0155】
照射するレーザのパルス幅は、光源の発生するエネルギー密度が高い場合、短くてもかまわないが、加工層で十分発熱を起こすためにはパルス幅1nsec以上が好ましい。また、エネルギー密度の低い光源でもパルス幅を十分大きくすることで突起の作成は可能であるが、加工時間をいたずらに伸ばさないために、パルス幅1秒以下程度が好ましく、100msec以下がより好ましい。
突起の形成方法としてはマスクをスピンドル等の回転体に乗せて回転させながらレーザビームを所定の場所に照射する場合と、マスクをXYステージ等に乗せて移動させながらレーザビームを所定の場所に照射する場合がある。
【0156】
以上のように形成した突起を他の層で覆ってもよい。例えば水素化カーボンやアモルファスカーボンなどの炭素質層や、テフロン(登録商標)などのフッ素系樹脂層などである。カーボン層はスパッタリングやCVDなどで形成可能であり、硬度が高いので突起の削れが防止でき、また潤滑性も付与できる。フッ素系樹脂も潤滑性が付与できる。
突起がクロムなどの金属からなる場合、コロージョンによる媒体の汚染を防止するためにも、他の層で覆うのが好ましい。
【0157】
次に、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた、磁化パターン形成方法について説明する。
局所加熱と外部磁界印加の組み合わせは様々考えられるが、好ましくは、第1の外部磁界を印加し磁性薄膜を予め所望の方向に均一に磁化したのち、磁性薄膜を局所的に加熱すると同時に第2の外部磁界を印加し加熱部を該所望の方向とは逆方向に磁化して磁化パターンを形成する。これにより、互いに逆向きの磁区が明りょうに形成されるので、信号強度が強くC/N及びS/Nが良好な磁化パターンが得られる。
【0158】
まず、磁気記録媒体に強い第1外部磁界を印加して、磁性層全体を所望の磁化方向に均一に磁化する。第1外部磁界を印加する手段は、磁気ヘッドを用いてもよいし、電磁石または、永久磁石を所望の磁化方向に磁界が生じるよう複数個配置して用いてもよい。更にそれらの異なる手段を組み合わせて使用してもよい。
【0159】
なお、所望の磁化方向とは、磁化容易軸が面内方向にある媒体の場合には、データの書き込み/再生ヘッドの走行方向(媒体とヘッドの相対移動方向)と同一又は逆方向であり、磁化容易軸が面内方向に垂直にある場合には、垂直方向のいずれか(上向き、下向き)である。従ってそのように磁化されるように、第1外部磁界を印加する。第1外部磁界の印加方向は、周方向、半径方向、板面に垂直方向のいずれかをとるのが好ましい。
【0160】
また、磁性層全体を所望の方向に均一に磁化するとは、磁性層の全部をほぼ同一方向に磁化することを言うが、厳密に全部ではなく、少なくとも磁化パターンを形成すべき領域が同一方向に磁化されていればよい。
【0161】
第1外部磁界の強さは磁気記録媒体の磁性層の特性によって異なり、磁性層の室温での保磁力の2倍以上の磁界によって磁化することが好ましい。これより弱いと磁化が不十分となる可能性がある。ただし、通常、磁界印加に用いる着磁装置の能力上、磁性層の室温での保磁力の5倍以下程度である。ここで、室温とは例えば25℃である。また、磁気記録媒体の保磁力は、磁性層(記録層)の保磁力とほぼ同じである。
【0162】
磁性層は一般に静的保磁力(単に保磁力と称することもある。)と動的保磁力を有するが、局所加熱については、少なくとも磁性層の動的保磁力がある程度低下する温度まで加熱できればよい。勿論、静的保磁力が低下する温度まで加熱してもよい。好ましくは100℃以上に加熱する。加熱温度が100℃未満で外部磁界の影響を受ける磁性層は、室温での磁区の安定性が低い傾向がある。ただし、加熱温度は所望の保磁力の低下が得られる範囲で低いことが望ましい。例えば磁性層の磁化消失温度やキュリー温度の近傍までである。加熱温度が高すぎると加熱したい領域以外への熱拡散が起こりやすく、パターンがぼやけてしまう虞がある。また、磁性層が変形してしまう可能性がある。更に、通常、磁気記録媒体の表面には潤滑剤からなる潤滑層が形成されており、加熱による潤滑剤の劣化等の悪影響を防止するためにも、加熱温度は低いほど好ましい。加熱により潤滑剤が分解などの劣化を起こしたり気化して減少したりする虞があるほか、特に近接露光の場合には気化した潤滑剤がマスク等に付着する虞もある。従って本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成法を、潤滑層を備えた磁気記録媒体に工業的に適用可能にするためにも、加熱温度はできるだけ低いことが望ましい。
【0163】
このため、加熱温度は磁性層のキュリー温度以下とするのが好ましい。例えば300℃以下とするのが好ましく、より好ましくは250℃以下であり、更に好ましくは200℃以下である。
【0164】
次に、加熱と同時に印加する第2の外部磁界の方向は、一般に、第1外部磁界と逆方向である。媒体が円板形状である場合、第2の外部磁界の印加方向は、周方向、半径方向、板面に垂直方向のいずれかをとるのが好ましい。
【0165】
なお、加熱のためにパルス状エネルギー線を使用する際には、第2外部磁界は連続的に印加してもパルス状に印加しても良い。また第2外部磁界がパルス状磁界である場合は、パルス状磁界成分のみであってもよいし、パルス状磁界成分と静磁界成分の組み合わせであってもよい。このとき、パルス状磁界成分と静磁界成分の合計を第2外部磁界の強度とする。
【0166】
第2外部磁界の最大強度は、強いほど磁化パターンが形成しやすい。磁気記録媒体の磁性層の特性によって最適強度は異なるが、第2外部磁界が静磁界の場合は、室温の保磁力(静的保磁力)の1/8以上であることが好ましい。これより弱いと、加熱部が、冷却時に周囲の磁区からの磁界の影響をうけて再び周囲と同じ方向に磁化されてしまう可能性がある。ただし、磁性層の室温での保磁力の2/3以下とするのが好ましく、1/2倍以下とするのがより好ましい。これより大きいと、加熱部の周囲の磁区も影響を受けてしまう可能性がある。
【0167】
第2外部磁界がパルス状磁界の場合は、室温の保磁力(静的保磁力)の2/3以上であることが好ましい。あまり弱いと加熱領域が良好に磁化されない虞がある。さらに好ましくは室温の静的保磁力の3/4以上である。室温での静的保磁力より強い磁界をかけてもよい。ただし、磁性層の室温での動的保磁力より小さい磁界とする。第2外部磁界がこれより大きいと、非加熱領域の磁化に影響を与えてしまうからである。
【0168】
なお、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成において、磁界強度の値H(Oe)は磁束密度の値B(Gauss)でそのまま代用できる。一般にB=μH(ただし、μは透磁率を表す)の関係があるが、通常磁化パターンの形成は空気中で行なわれるため、透磁率は1であって、B=Hの関係が成り立つからである。
【0169】
磁性層に第2外部磁界を印加する手段は、磁気ヘッドを用いてもよいし、電磁石または、永久磁石を所望の磁化方向に磁界が生じるよう複数個配置して用いてもよい、更にそれらの異なる手段を組み合わせて使用してもよい。高密度記録に適した高保磁力媒体を効率よく磁化するためには、フェライト磁石、ネオジム系希土類磁石、サマリウムコバルト系希土類磁石などの永久磁石が好適である。
【0170】
第2外部磁界がパルス状磁界である場合は、パルス状磁界印加手段のみであってもよいし、パルス状磁界印加手段と静磁界印加手段の組み合わせであってもよい。例えば前者では、電磁石などでパルス状磁界のみを発生する。例えば後者では、永久磁石または電磁石によってある程度の大きさの静磁界を与えておき、それ以上の磁界を電磁石でパルス状に印加する。インダクタンスの小さな空芯コイルを用いると、パルス幅を狭くでき磁界印加時間を短くできるため好ましい。また、永久磁石のかわりに他のヨーク型などの電磁石を用いてもよい。
【0171】
静磁界とパルス状磁界を組み合わせると、パルス状に印加する磁界を小さくすることができる。一般に電磁石は磁界が大きくなるほどパルス幅を短くすることが困難になるので、それだけパルス幅を短くしやすい。
【0172】
或いはパルス状磁界は、常時磁界を発生する磁石を短時間のみ磁気記録媒体に接近させる方式によって印加することもできる。例えば、磁気記録媒体の一部に永久磁石によって磁界を印加しつつ、媒体を所定以上の速度で回転させればよい。
【0173】
また、第2外部磁界が静磁界とパルス状磁界の組み合わせの場合は、静磁界の磁界強度を磁性層の室温での静的保磁力より小さくする。好ましくは静的保磁力の2/3以下とし、より好ましくは1/2倍以下とする。あまり大きいと、形成した磁化パターンに影響を与えてしまい出力が落ちるだけでなく、モジュレーションが悪化する。下限は特にないが、あまり弱いと静磁界を用いる意味が小さくなるので、例えば磁性層の室温での静的保磁力の1/8以上とする。
【0174】
次に、第2外部磁界がパルス状磁界である場合のパルス幅について説明する。本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成では第2外部磁界のパルス状磁界成分のパルス幅を、単に第2外部磁界のパルス幅と称する。ここで、磁界のパルス幅とは半値幅を指す。
【0175】
第2外部磁界のパルス幅は通常100msec以下とする。好ましくは10msec以下とする。第2外部磁界のパルス幅を短くするほど印加できる磁界の上限値が大きくなる。動的保磁力の値は磁界の印加時間によって変化し、第2外部磁界のパルス幅を短くするほど磁性層の室温での動的保磁力が大きくなるからである。より好ましくは1msec以下とする。
【0176】
ただし、好ましくは10nsec以上とする。あまり短いとそれだけ動的保磁力が大きくなるため、加熱領域を磁化するために必要な第2外部磁界が大きくなってしまう。また、磁界の大きさにもよるが、電磁石の特性上磁界の立上がり、立下がりには時間を要するので、パルス幅を短くするのには限界がある。より好ましくは100nsec以上とする。ここで、磁界のパルス幅は半値幅を指す。
【0177】
局所加熱にパルス状エネルギー線を使用する場合は、第2外部磁界のパルス幅はパルス状エネルギー線のパルス幅以上とする。これ以下であると、局所加熱中に磁界が変化してしまうので磁化パターンが良好に形成されないためである。
【0178】
また、パルス状エネルギー線とパルス状の第2外部磁界を同期させ、同時に印加するのが好ましい。通常、エネルギー線のパルス幅より磁界のパルス幅のほうが長いと考えられるが、このときは第2外部磁界のパルスを印加し、磁界が最大になるところでエネルギー線のパルスが印加されるよう制御するのが好ましい。
【0179】
動的保磁力を高めた磁気記録媒体やAFC媒体には、第2外部磁界としてパルス状磁界を適用すると特に効果が高い。例えば、記録用の磁性層とともに熱的に安定性を保つための安定化磁性層を有する、2層の磁性層を備えた磁気記録媒体が挙げられる。安定化磁性層が記録用磁性層の瞬時の磁化反転を抑えるように働くため、動的保磁力が高く、従来法では磁化パターンが形成しにくい。このような媒体に静的保磁力近傍或いはそれ以上の外部磁界を、パルス状に与えると良好な磁化パターンが形成できる。
【0180】
第2の外部磁界は、外部磁界も該加熱された広い領域に亘って印加することで、複数の磁化パターンを一度に形成することができる。
局所加熱が磁気記録媒体全面に一度に行なえる場合は、加熱と同時に第2の外部磁界も媒体全面に印加し磁化パターンを形成することが望ましい。これにより、より短時間での磁化パターン形成が可能となり大きくコストを削減できる。また、磁界を媒体の一部分にのみ印加するには、それ以外の領域への磁界が及ばないよう磁石配置を工夫したり特定の手段を講じることが多いが、全面に印加する場合はその必要がない。なおかつ、回転機構或いは移動機構が不要となるので、装置構成も簡単になり磁気記録媒体が安価に得られる。
【0181】
例えば、媒体が直径が2.5インチ以下の小径のディスク状磁気記録媒体であると、簡単な配置や手段によってディスク全面へのエネルギー線照射、磁界印加が行なえ好ましい。より好ましくは直径1インチ以下である。
【0182】
また、ディスク状磁気記録媒体に対し、円周方向に磁界を印加したい場合は、媒体の中心に垂直方向の大きなパルス電流を流すことによって、簡便に円周方向の磁界を発生させることができる。これは特に、直径1インチ以下の小径のディスク状磁気記録媒体に適用すると好ましい。
【0183】
次に、磁性層の局所的な加熱の方法について説明する。
加熱手段は、磁性層表面を部分的に加熱できる機能を備えていればよいが、不要な部分への熱拡散防止やコントロール性を考えると、パワーコントロール、加熱する部位の大きさが制御しやすいレーザ等のエネルギー線を利用する。
【0184】
マスクを併用することで、エネルギー線をマスクを介して照射し複数の磁化パターンを一度に形成することができるため、磁化パターン形成工程が短時間となりかつ簡便である。
【0185】
エネルギー線は連続照射よりもパルス状にして加熱部位の制御や加熱温度の制御を行なうのが好ましい。特にパルスレーザ光源の使用が好適である。パルスレーザ光源はレーザをパルス状に断続的に発振するものであり、連続レーザを音響光学素子(AO)や電気光学素子(EO)などの光学部品で断続させパルス化するのに比して、パワー尖頭値の高いレーザをごく短時間に照射することができ熱の蓄積が起こりにくく非常に好ましい。
【0186】
連続レーザを光学部品によりパルス化した場合、パルス内ではそのパルス幅に亘ってほぼ同じパワーを持つ。一方パルスレーザ光源は、例えば光源内で共振によりエネルギーをためて、パルスとしてレーザを一度に放出するため、パルス内では尖頭のパワーが非常に大きく、その後小さくなっていく。本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成では、コントラストが高く精度の高い磁化パターンを形成するために、ごく短時間に急激に加熱しその後急冷させるのが好ましいため、パルスレーザ光源の使用が適している。
【0187】
磁化パターンが形成される媒体面は、パルス状エネルギー線の照射時と非照射時で温度差が大きい方が、パターンのコントラストを上げ、或いは記録密度を上げるために好ましい。従ってパルス状エネルギー線の非照射時には室温以下程度になっているのが好ましい。室温とは25℃程度である。
なお、パルス状エネルギー線を使用する際に、外部磁界は連続的に印加してもパルス状に印加しても良い。
【0188】
エネルギー線の波長は、1100nm以下であることが好ましい。これより波長が短いと回折作用が小さく分解能が上がるため、微細な磁化パターンを形成しやすい。更に好ましくは、600nm以下の波長である。高分解能であるだけでなく、回折が小さいため間隙によるマスクと磁気記録媒体のスペーシングも広くとれハンドリングがしやすく、磁化パターン形成装置が構成しやすくなるという利点が生まれる。また、波長は150nm以上であるのが好ましい。150nm未満では、マスクに用いる合成石英の吸収が大きくなり、加熱が不十分となりやすい。波長を350nm以上とすれば、光学ガラスをマスクとして使用することもできる。
【0189】
具体的には、エキシマレーザ(157,193,248,308,351nm)、YAGのQスイッチレーザ(1064nm)の2倍波(532nm)、3倍波(355nm)、或いは4倍波(266nm)、Arレーザ(488nm、514nm)、ルビーレーザ(694nm)などである。
【0190】
エネルギー線のパワーは、外部磁界の大きさによって最適な値を選べばよいが、パルス状エネルギー線の1パルス当たりのパワーは1000mJ/cm2以下とすることが好ましい。これより大きなパワーをかけると、パルス状エネルギー線によって該磁気記録媒体表面が損傷を受け変形を起こす可能性がある。変形により媒体の粗度Raが3nm以上やうねりWaが5nm以上に大きくなると、浮上型/接触型ヘッドの走行に支障を来すおそれがある。
【0191】
より好ましくは500mJ/cm2以下であり、更に好ましくは200mJ/cm2以下である。この領域であると比較的熱拡散の大きな基板を用いた場合でも分解能の高い磁化パターンが形成しやすい。また、パワーは10mJ/cm2以上とするのが好ましい。これより小さいと、磁性層の温度が上がりにくく磁気転写が起こりにくい。なお、パターン幅が狭いほど必要なパワーは増加する傾向にある。また、エネルギー線の波長が短いほど、印加可能なパワーの上限値は低下する傾向にある。
【0192】
また、エネルギー線による磁性層、保護層、潤滑層の損傷が心配される場合は、パルス状エネルギー線のパワーを小さくして、該パルス状エネルギー線と同時に印加される磁界強度を上げるといった手段を取ることもできる。例えば、磁気記録媒体の常温での保磁力の25〜75%のできるだけ大きな磁界をかけ、照射エネルギーを下げる。
【0193】
なお、保護層と潤滑層を介してパルス状エネルギー線を照射するにあたり、潤滑剤の受けるダメージ(分解、重合)等も考慮し、照射後に再塗布するなどの必要がある場合がある。
【0194】
パルス状エネルギー線のパルス幅は、1μsec以下であることが望ましい。これよりパルス幅が広いと磁気記録媒体に与えたエネルギーによる発熱が分散して、分解能が低下しやすい。1パルス当たりのパワーが同じ場合、パルス幅を短くし一度に強いエネルギーを照射した方が、熱拡散が小さく磁化パターンの分解能が高くなる傾向にある。より好ましくは100nsec以下である。この領域であるとAlなど金属の比較的熱拡散の大きな基板を用いた場合でも分解能の高い磁化パターンが形成しやすい。
【0195】
最小幅が2μm以下のパターンを形成する際には、パルス幅を25nsec以下とするのがよい。即ち、分解能を重視すれば、パルス幅は短いほど良い。また、パルス幅は1nsec以上であるのが好ましい。磁性層の磁化反転が完了するまでの時間、加熱を保持しておくのが好ましいからである。
【0196】
なお、パルス状レーザの一種として、モードロックレーザのようにピコ秒、フェムト秒レベルの超短パルスを高周波で発生できるレーザがある。超短パルスを高周波で照射している期間においては、各々の超短パルス間のごく短い時間はレーザが照射されないが非常に短い時間であるため加熱部はほとんど冷却されない。すなわち、一旦キュリー温度以上に昇温された領域はキュリー温度以上に保たれる。
【0197】
従ってこのような場合、連続照射期間(超短パルス間のレーザが照射されない時間も含めた連続照射期間)を1パルスとする。また連続照射期間の照射エネルギー量の積分値を1パルス当たりのパワー(mJ/cm2)とする。
【0198】
また、レーザなどのエネルギー線は、一般にビームスポット内で強度分布(エネルギー密度分布)を有しており、エネルギー線を照射して局部加熱した場合もエネルギー密度による温度上昇の違いが生じる。このため加熱ムラにより局部的に転写の強度の違いが起こる。そこで好ましくは、エネルギー線に予め強度分布の均一化処理をなす。照射した領域の加熱状態の分布を小さく抑えられ、磁化パターンの磁気的強さの分布を小さく抑えることができる。従って磁気ヘッドを使用して信号強度を読み取る際に、信号強度の均一性の高い磁化パターンを形成することができる。
【0199】
強度分布の均一化処理としては、例えば以下のような処理が挙げられる。ホモジナイザやコンデンサレンズを用いて均一化したり、遮光板やスリットなどでエネルギー線の強度分布の小さい部分だけを透過し必要に応じて拡大する、などである。
好ましくは、エネルギー線を、一旦光学分割したのち重ね合わせることによって均一化処理すると、エネルギー線を無駄なく使用でき使用効率が良い。本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成においては、磁性層の加熱には、高強度のエネルギー線を短時間に照射するのがよく、このためにはエネルギーを無駄なく使用するのが好ましい。
【0200】
エネルギー線の強度分布の均一化処理の一例を説明する。例えば、ビーム形状が楕円形のエネルギー線が、短軸方向分布及び長軸方向分布を持つ。このとき、プリズムアレイ(多シリンドリカルレンズ)等でビームの短軸方向の長さを例えば3分割したのち重ね合わせることで、強度の違いを分散でき、短軸方向の強度分布をある程度均一化できる。
【0201】
また、同じくプリズムアレイ(多シリンドリカルレンズ)等でビームの長軸方向の長さを例えば7分割したのち重ね合わせることで、長軸方向の強度分布をある程度均一化できる。両方を併せて行なえば、全体として均一性の増した、強度分布の小さいビームが得られる。ただし必要に応じて1軸方向だけ行なっても良い。強度分布が大きいときは、分割数が多くすることにより均一性を増すことができる。これらをホモジナイザと称することもある。
【0202】
同じ軸方向のプリズムアレイを2枚以上通すと、分割数を増したのと同じ効果を得ることができる。あるいは、2軸方向にレンズが多数形成されたフライアイレンズなどを用いて2軸方向を一度に分割しても良い。
【0203】
或いはまた、エネルギー線をシリンドリカルレンズなどの非球面レンズを通すことでも、簡易に強度分布が均一化できる。特に、エネルギー線が小径のビームの場合には、本手法でも十分に均一化できることが多く、光学系を簡素化でき好ましい。尚、小径とは直径0.05〜1mm程度を言う。
【0204】
上記処理だけでは均一化が不十分な場合には、遮光板を併用することにより、ビームの周辺部分をカットしたり絞り込むことによって更なる均一化を図っても良い。
【0205】
本発明のマスクは、エネルギー線の強度分布を形成すべき磁化パターンに対応して変化させ、磁気ディスク面上にエネルギー線の濃淡(強度分布)を形成する。これにより、複数又は広い面積の磁化パターンを一度に形成することができるため、磁化パターン形成工程が短時間かつ簡便なものとなる。マスクは簡単かつ安価に作成できる点で好ましい。
【0206】
マスクは磁気ディスク全面を覆うものでなくてもよい。磁化パターンの繰り返し単位を含む大きさがあれば、それを移動させて使用することができる。
また、マスクの材質は限定されないが、本発明においてマスクを非磁性材料で構成すると、どのようなパターン形状でも均一な明瞭さで磁化パターンが形成でき、均一で強い再生信号が得られる。
【0207】
強磁性体を含むマスクを使用した場合は、磁化で磁界分布が乱される虞がある。強磁性の性質上、磁気ディスクの半径方向或いは、半径方向に延びた円弧状のパターンから斜傾したパターン形状の場合は、磁化遷移部分で磁区が互いに十分対抗しないので良質の信号が得にくい。
【0208】
マスクはエネルギー線の光源と磁性層(磁気記録媒体)の間に配置する。磁化パターンの精度を重視するならば、マスクと媒体の距離を近づけるほど好ましい。距離が長いほど照射するエネルギー線の回り込みにより磁化パターンがぼやけやすくなるためである。これを改善し、より明瞭なパターンを得るために、マスクの透過部の外側に、回折格子の働きをする細い透過部を形成したり、半波長板の働きをする手段を設けたりすることで回り込み光を干渉により打ち消すこともできる。
【0209】
加熱と同時に外部磁化の印加が伴う時は、外部磁界もマスクの複数の透過部に同時に印加できるようにするとよい。
磁気ディスクはディスクの主両面に磁性層が形成されている場合があるが、その場合、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成は片面づつ、逐次に行なってもよいし、マスク、エネルギー照射系および外部磁界を印加する手段を磁気ディスクの両面に設置して、両面同時に磁化パターン形成を行なうこともできる。
【0210】
一面に二層以上の磁性層が形成されており、それぞれに異なるパターンを形成したい場合は、照射するエネルギー線の焦点を各層に合わせることにより、各層を個別に加熱し、個別のパターンを形成できる。
磁化パターンを形成する際には、エネルギー線の光源とマスクとの間、又はマスクと該媒体との間の照射をしたくない領域に、エネルギー線を部分的に遮光可能な遮光板を設けて、エネルギー線の再照射を防ぐ構造とするのが好ましい。
【0211】
遮光板としては、使用するエネルギー線の波長を透過しないものであればよく、エネルギー線を反射又は吸収すればよい。ただし、エネルギー線を吸収すると加熱し磁化パターンに影響を与えやすいため、熱伝導率がよく反射率の高いものが好ましい。例えば、Cr、Al、Feなどの金属板である。
【0212】
本発明の磁化パターン形状規定用マスクによれば、位置精度が良く、しかもモジュレーションなどの信号特性の優れた磁化パターンを形成できるので、記録再生用磁気ヘッドの位置制御を行なうためのサーボパターン又はサーボパターン記録用の基準パターンの形成に用いることが好ましい。
【0213】
サーボパターン(又はそれの記録に用いる基準パターン)は、記録再生用磁気ヘッドをデータトラックに位置制御するに用いるパターンであるため、サーボパターンの精度が悪いとヘッドの位置制御も粗くなる。このため、サーボパターン以上に高い位置精度を持ったデータパターンは理論的に記録できず、従って媒体の記録密度が高くなるほどサーボパターンは高精度に形成される必要がある。
【0214】
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成では位置精度の高いサーボパターン又は基準パターンが得られるため、特にトラック密度が40kTPI以上であるような高密度記録用の磁気記録媒体に適用すると効果が高い。
また、トラックに対して斜めの磁化パターンも良好に形成できるので、特に位相サーボ信号等の傾斜パターンに適する。
【0215】
さらに、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成では磁気ヘッドを用いないのでヘッドの移動可能範囲を超えてサーボパターンを記録でき、ヘッドがデータ記録領域を外れた場合にもサーボパターンが検出できる範囲が広がり、ヘッドの復帰が行ないやすいという利点もある。
【0216】
以上の磁化パターン形成方法を用いることにより、精密な磁化パターンが形成され、しかも欠陥が少ない磁気記録媒体を短時間で簡便に得ることができる。ひいては、高密度記録が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0217】
次に、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する対象となる、磁気記録媒体の構成について説明する。
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体における基板としては、高速記録再生時に高速回転させても振動しない必要があり、通常、硬質基板が用いられる。振動しない十分な剛性を得るため、基板厚みは一般に0.3mm以上が好ましい。但し厚いと磁気記録装置の薄型化に不利なため、3mm以下が好ましい。例えば、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mgを主成分とした例えばMg−Zn合金等のMg合金基板、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、非結晶ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂のいずれかからなる基板やそれらを組み合わせた基板などを用いることができる。中でもAl合金基板や強度の点では結晶化ガラス等のガラス製基板、コストの点では樹脂製基板を用いることが好ましい。
【0218】
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成は硬質基板を有する媒体に適用すると効果が高い。従来の磁気転写法では硬質基板を有する媒体はマスターディスクとの密着が不十分になり傷や欠陥が発生したり転写された磁区の境界が不明確でPW50が広がりやすい傾向があったが本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成ではマスクと媒体とを圧着しないのでそのような問題がない。特に、ガラス製基板のようにクラックの入りやすい基板を有する媒体には効果的である。
【0219】
磁気記録媒体の製造工程においては、まず基板の洗浄・乾燥が行なわれるのが通常であり、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体においても各層の密着性を確保する見地からもその形成前に洗浄、乾燥を行なうことが望ましい。
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体の製造に際しては、基板表面にNiP、NiAl等の金属層を形成してもよい。
【0220】
金属層を形成する場合に、その手法としては、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法など薄膜形成に用いられる方法を利用することができる。導電性の材料からなる基板の場合であれば電解めっきを使用することが可能である。金属層の膜厚は50nm以上が好ましい。ただし、磁気記録媒体の生産性などを考慮すると20μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは10μm以下である。
【0221】
また、金属層を成膜する領域は基板表面全域が望ましいが、一部だけ、例えばテキスチャリングを施す領域のみでも実施可能である。
また、基板表面、又は基板に金属層が形成された表面に同心状テキスチャリングを施してもよい。本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体の製造において同心状テキスチャリングとは、例えば遊離砥粒とテキスチャーテープを使用した機械式テキスチャリングやレーザ光線などを利用したテキスチャリング、又はこれらを併用することによって、円周方向に研磨することによって基板円周方向に微小溝を多数形成した状態を指称する。
【0222】
一般に、機械式テキスチャリングは磁性層の面内異方性を出すために行なわれる。面内等方性の磁性層としたい場合は施す必要はない。
また一般に、レーザ光線などを利用したテキスチャリングは、CSS(コンタクト・スタート・アンド・ストップ)特性を良好にするために行なわれる。磁気ディスク装置が、非駆動時にヘッドをディスクの外に待避させる方式(ロード・アンロード方式)などの場合は施す必要はない。
【0223】
機械的テキスチャリングに用いられる砥粒としてはアルミナ砥粒が広く用いられているが、特にテキスチャリング溝に沿って磁化容易軸を配向させるという面内配向媒体の観点から考えるとダイアモンド砥粒が極めて良い性能を発揮する。中でも表面がグラファイト化処理されているものが最も好ましい。
【0224】
ヘッド浮上量ができるだけ小さいことが高密度磁気記録の実現には有効であり、またこれら基板の特長のひとつが優れた表面平滑性にあることから、基板表面の粗度Raは2nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以下である。特に0.5nm以下が好ましい。なお、基板表面粗度Raは、触針式表面粗さ計を用いて測定長400μmで測定後、JIS B0601に則って算出した値である。このとき測定用の針の先端は半径0.2μm程度の大きさのものが使用される。
【0225】
次に基板上には、磁性層との間に下地層等を形成してもよい。下地層は、結晶を微細化し、かつその結晶面の配向を制御することを目的とし、Crを主成分とするものが好ましく用いられる。
Crを主成分とする下地層の材料としては、純Crのほか、記録層との結晶マッチングなどの目的で、CrにV、Ti、Mo、Zr、Hf、Ta、W、Ge、Nb、Si、Cu、Bから選ばれる1又は2以上の元素を添加した合金や酸化Crなども含む。
【0226】
中でも純Cr、又はCrにTi、Mo、W、V、Ta、Si、Nb、Zr及びHfから選ばれる1又は2以上の元素を添加した合金が好ましい。これら第二、第三元素の含有量はそれぞれの元素によって最適な量が異なるが、一般には1原子%〜50原子%が好ましく、より好ましくは5原子%〜30原子%、さらに好ましくは5原子%〜20原子%の範囲である。
【0227】
下地層の膜厚はこの異方性を発現させ得るに十分なものであればよいが、好ましくは0.1〜50nmであり、より好ましくは0.3〜30nm、さらに好ましくは0.5〜10nmである。Crを主成分とする下地層の成膜時は基板加熱を行なっても行なわなくてもよい。
下地層の上には、記録層との間に、場合により軟磁性層を設けても良い。特に磁化遷移ノイズの少ないキーパー媒体、或いは磁区が媒体の面内に対して垂直方向にある垂直記録媒体には、効果が大きく、好適に用いられる。
【0228】
軟磁性層は透磁率が比較的高く損失の少ないものであればよいが、NiFeや、それに第3元素としてMo等を添加した合金が好適に用いられる。最適な透磁率は、データの記録に利用されるヘッドや記録層の特性によっても大きく変わるが、概して、最大透磁率が10〜1000000(H/m)程度であることが好ましい。
【0229】
或いはまた、Crを主成分とする下地層上に必要に応じ中間層を設けてもよい。例えばCoCr系中間層を設けると、磁性層の結晶配向が制御しやすく好ましい。
次に記録層(磁性層)を形成するが、記録層と軟磁性層の間には下地層と同一材料の層又は他の非磁性材料が挿入されていてもよい。記録層の成膜時は、基板加熱を行なっても行なわなくてもよい。記録層としては、Co合金磁性層、TbFeCoを代表とする希土類系磁性層、CoとPdの積層膜を代表とする遷移金属と貴金属系の積層膜等が好ましく用いられる。
【0230】
Co合金磁性層としては、通常、純CoやCoNi、CoSm、CoCrTa、CoNiCr、CoCrPtなどの磁性材料として一般に用いられるCo合金磁性材料を用いうる。これらのCo合金に更にNi、Cr、Pt、Ta、W、Bなどの元素やSiO2等の化合物を加えたものでも良い。例えばCoCrPtTa、CoCrPtB、CoNiPt、CoNiCrPtB等が挙げられる。Co合金磁性層の膜厚は任意であるが、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。また、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下である。また、本記録層は、適当な非磁性の中間層を介して、或いは直接2層以上積層してもよい。その時、積層される磁性材料の組成は、同じであっても異なっていてもよい。
【0231】
希土類系磁性層としては、磁性材料として一般的なものを用いうるが、例えばTbFeCo、GdFeCo、DyFeCo、TbFeなどが挙げられる。これらの希土類合金にTb、Dy、Hoなどを添加してもよい。酸化劣化防止の目的からTi、Al、Ptが添加されていてもよい。希土類系磁性層の膜厚は、任意であるが、通常5〜100nm程度である。また、本記録層は、適当な非磁性の中間層を介して、或いは直接2層以上積層してもよい。その時、積層される磁性材料の組成は、同じであっても異なっていてもよい。特に希土類系磁性層は、アモルファス構造膜であり、かつメディア面内に対して垂直方向に磁化を持つため高記録密度記録に適し、高密度かつ高精度に磁化パターンを形成できる本発明の方法がより効果的に適用できる。
【0232】
同様に垂直磁気記録が行なえる、遷移金属と貴金属系の積層膜としては、磁性材料として一般的なものを用いうるが、例えばCo/Pd、Co/Pt、Fe/Pt、Fe/Au、Fe/Agなどが挙げられる。これらの積層膜材料の遷移金属、貴金属は、特に純粋なものでなくてもよく、それらを主とする合金であってもよい。積層膜の膜厚は、任意であるが、通常5〜1000nm程度である。また、必要に応じて3種以上の材料の積層であってもよい。
【0233】
また最近、磁区の熱安定性を高めるためにAFC(Anti−Ferromagnetic coupled)媒体が提案されている。数オングストロームのRu層等を介して2層以上の磁性層(主磁性層と下引き磁性層)を積層し、Ru層の上下で磁気的にカップリングさせて主磁性層の熱的安定性を高めた媒体である。この媒体は見かけ上の保磁力が大きくなり、磁化の反転には大きな磁界が必要となる。
【0234】
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体においては、記録層は薄い方が好ましい。記録層が厚いと、記録層を加熱したときの膜厚方向の熱の伝わりが悪く、良好に磁化されないおそれがあるためである。このため記録層膜厚は200nm以下が好ましい。ただし、磁化を保持するために、記録層膜厚は5nm以上が好ましい。
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体において、記録層としての磁性層は、室温において磁化を保持し、加熱時に消磁されるか、或いは加熱と同時に外部磁界を印加されることで磁化される。
【0235】
磁性層の室温での保磁力は、室温において磁化を保持し、かつ適当な外部磁界により均一に磁化されるものである必要がある。磁性層の室温での保磁力を2000Oe以上とすることで、小さな磁区が保持でき高密度記録に適した媒体が得られる。より好ましくは3000Oe以上である。
【0236】
従来の磁気転写法では、あまり保磁力が高い媒体には転写が困難であったが、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体においては磁性層を加熱し保磁力を十分に下げて磁化パターンを形成するため、保磁力の大きい媒体への適用が好ましい。
【0237】
ただし、好ましくは20kOe以下とする。20kOeを超えると、一括磁化のために大きな外部磁界が必要となり、また通常の磁気記録が困難となる可能性がある。より好ましくは15kOe以下とし、更に好ましくは10kOe以下とする。
【0238】
磁性層の保磁力と局所加熱温度、第2外部磁界強度について説明すると、例えば室温において保磁力が3500〜4000Oeの媒体は、通常、温度上昇に伴い、10〜15Oe/℃の割合で保磁力が線形に減少し、例えば150℃で2000Oe程度になる。3000Oe程度であれば外部磁界印加手段で容易に発生させることができるので、150℃程度の加熱でも十分に磁化パターンが形成できる。
【0239】
さて、磁性層の動的な保磁力は、高密度に記録した情報を安定に保持するためには大きいものとなる。動的保磁力は通常、磁界強度を1sec以下の短時間で変化させたときに測定される保磁力、つまりパルス幅が1sec以下の磁界に対する保磁力である。但しその値は磁界や熱の印加時間によって変わる。
【0240】
好ましくは、1secでの動的保磁力が静的保磁力の2倍以上である。但し、あまり大きいと第2外部磁界による磁化のために大きな磁界強度が必要になるので20kOe以下が好ましい。
【0241】
以下に、磁気記録媒体の動的保磁力(記録層としての磁性層の保磁力)の測定手順の一例を示す。
1.印加時間t=10secにおける媒体の保磁力を求める。
1.1 最大磁界強度(20kOe)まで磁界を印加し,媒体を飽和させる。
1.2 負の方向(飽和方向と反対向き)に所定強度の磁界H1を印加する。
1.3 その磁界下で10sec保持する。
1.4 磁界をゼロに戻す。
1.5 1.4の時の磁化値を読みとると、残留磁化値M1が得られる。
1.6 1.2とは少し印加磁界強度を変えて同じ測定(1.1〜1.5)を繰り返す。合計4点の磁界強度H1,H2,H3,H4での残留磁化値M1、M2、M3,M4が得られる。
1.7 この4点から残留磁化Mが0となる印加磁界強度Hを求める。これが印加時間t=10secにおける媒体の保磁力となる。
【0242】
2.印加時間tを60sec、100sec、600secについて同じ測定を行ない、それぞれの印加時間での保磁力を求める。
【0243】
3.以上で得られた10sec、60sec、100sec、600secでの保磁力の値から外挿して、より短い印加時間での保磁力を求めることができる。
例えば印加時間1nsecでの動的保磁力も求められる。
【0244】
磁性層は、室温において磁化を保持しつつ、適当な加熱温度では弱い外部磁界で磁化されるものである必要がある。また室温と磁化消失温度との差が大きい方が磁化パターンの磁区が明瞭に形成しやすい。このため磁化消失温度は高いほうが好ましく、100℃以上が好ましくより好ましくは150℃以上である。例えば、キュリー温度近傍(キュリー温度のやや下)や補償温度近傍に磁化消失温度がある。
【0245】
キュリー温度は、好ましくは100℃以上である。100℃未満では、室温での磁区の安定性が低い傾向がある。より好ましくは150℃以上である。また好ましくは700℃以下である。磁性層をあまり高温に加熱すると、変形してしまう可能性があるためである。なお、本明細書においては、AFC(Anti−Ferromagnetic coupled)媒体のキュリー温度とは、主磁性層のキュリー温度ではなく媒体全体の見かけ上のキュリー温度を言う。
【0246】
磁気記録媒体が面内磁気記録媒体である場合、高密度用の高い保磁力を持った磁気記録媒体に対しては従来の磁気転写法では飽和記録が難しく、磁界強度の高い磁化パターン生成が困難となり、半値幅も広がってしまう。このような高記録密度に適した面内記録媒体でも、本方法によれば良好な磁化パターン形成が可能となる。特に、該磁性層の飽和磁化が50emu/cc以上である場合は、反磁界の影響が大きいので本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体を適用する効果が大きい。
【0247】
100emu/cc以上だとより効果が高い。ただしあまり大きいと磁化パターンの形成がしにくいため、500emu/cc以下が好ましい。
磁気記録媒体が垂直磁気記録媒体であり、磁化パターンが比較的大きく1磁区の単位体積が大きい場合は、飽和磁化が大きくなり、磁気的な減磁作用で磁化反転が起こりやすいためそれがノイズとなり半値幅を悪化させる。しかし、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体では、軟磁性を使用した下地層の併用で、これらの媒体にも良好な記録が可能となる。
【0248】
これら記録層は、記録容量増大などのために、二層以上設けてもよい。このとき、間には他の層を介するのが好ましい。
【0249】
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体においては、磁性層上に保護層を形成するのが好ましい。すなわち、媒体の最表面を硬質の保護層により覆う。保護層はヘッドや衝突や塵埃・ゴミ等のマスクとの挟み込みによる磁性層の損傷を防ぐ働きをする。本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成のようにマスクを用いた磁化パターン形成法を適用する際には、マスクとの接触から媒体を保護する働きもある。
【0250】
また、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成する磁気記録媒体において保護層は、加熱された磁性層の酸化を防止する効果もある。磁性層は一般に酸化されやすく、加熱されると更に酸化されやすい。本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成では磁性層をエネルギー線などで局所的に加熱するため、酸化を防ぐための保護層を磁性層上に予め形成しておくのが望ましい。
磁性層が複数層ある場合には、最表面に近い磁性層の上に保護層を設ければよい。保護層は磁性層上に直接設けても良いし、必要に応じて間に他の働きをする層をはさんでも良い。
【0251】
エネルギー線の一部は保護層でも吸収され、熱伝導によって磁性層を局所的に加熱する働きをする。このため保護層が厚すぎると横方向への熱伝導により磁化パターンがぼやけてしまう可能性があるので、膜厚は薄い方が好ましい。また記録再生時の磁性層とヘッドとの距離を小さくするためにも薄い方が好ましい。従って50nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。ただし、充分な耐久性を得るためには0.1nm以上が好ましく、より好ましくは1nm以上である。
【0252】
保護層としては、硬質で酸化に強い性質を有していればよい。一般にカーボン、水素化カーボン、窒素化カーボン、アモルファスカーボン、SiC等の炭素質層やSiO2、Zr2O3、SiN、TiNなどが用いられる。保護層が磁性を有する材料であっても良い。
特にヘッドと磁性層の距離を極限まで近づけるためには、非常に硬質の保護層を薄く設けることが好ましい。従って耐衝撃性及び潤滑性の点で炭素質保護膜が好ましく、特にダイヤモンドライクカーボンが好ましい。エネルギー線による磁性層の損傷防止の役割を果たすだけでなく、ヘッドによる磁性層の損傷にも極めて強くなる。本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成法は、炭素質保護層のような不透明な保護層に対しても適用できる。
【0253】
また、保護層が2層以上の層から構成されていてもよい。磁性層の直上の保護層としてCrを主成分とする層を設けると、磁性層への酸素透過を防ぐ効果が高く好ましい。
更に、保護層上には潤滑層を形成するのが好ましい。媒体のマスク及び磁気ヘッドによる損傷を防ぐ機能を持つ。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられ、ディップ法、スピンコート法などの常法で塗布することができる。蒸着法で成膜してもよい。磁化パターン形成の妨げとならないために潤滑層は薄い方が好ましく、10nm以下が好ましい。より好ましくは4nm以下である。十分な潤滑性能を得るためには0.5nm以上が好ましい。より好ましくは1nm以上である。
【0254】
潤滑層上からエネルギー線を照射する場合には、潤滑剤のダメージ(分解、重合)等を考慮し、再塗布などを行なってもよい。
また、以上の層構成には他の層を必要に応じて加えても良い。
浮上型/接触型ヘッドの走行安定性を損なわないよう、磁化パターン形成後の該媒体の表面粗度Raは3nm以下に保つのが好ましい。なお、媒体表面粗度Raとは潤滑層を含まない媒体表面の粗度であって、触針式表面粗さ計(機種名:Tencor P−12 disk profiler(KLA Tencor社製))を用いて測定長400μmで測定後、JIS B0601に則って算出した値である。より好ましくは1.5nm以下とする。
【0255】
望ましくは磁化パターン形成後の該媒体の表面うねりWaを5nm以下に保つ。Waは潤滑層を含まない媒体表面のうねりであって、触針式表面粗さ計(機種名:Tencor P−12 disk profiler(KLA Tencor社製))を用いて測定長2mmで測定後、Ra算出に準じて算出した値である。より好ましくは3nm以下とする。
【0256】
ところで、このように構成される磁気記録媒体への磁化パターンの形成は、記録層(磁性層)に対して行なう。記録層上に保護層や潤滑層などを形成した後に記述のいずれかの方法で行なうのが好ましいが、記録層の酸化のおそれが無い場合は記録層の成膜直後に行なっても良い。
【0257】
磁気記録媒体の各層を形成する成膜方法としては各種の方法が採りうるが、例えば直流(マグネトロン)スパッタリング法、高周波(マグネトロン)スパッタリング法、ECRスパッタリング法、真空蒸着法などの物理的蒸着法が挙げられる。
【0258】
また、成膜時の条件としては、得るべき媒体の特性に応じて、到達真空度、基板加熱の方式と基板温度、スパッタリングガス圧、バイアス電圧等を適宜決定する。例えば、スパッタリング成膜では、通常の場合、到達真空度は5×10−6Torr以下、基板温度は室温〜400℃、スパッタリングガス圧は1×10−3〜20×10−3Torr、バイアス電圧は0〜−500Vが好ましい。
【0259】
基板を加熱する場合は下地層形成前から加熱しても良い。或いは、熱吸収率が低い透明な基板を使用する場合には、熱吸収率を高くするため、Crを主成分とする種子層又はB2結晶構造を有する下地層を形成してから基板を加熱し、しかる後に記録層等を形成しても良い。
【0260】
記録層が、希土類系の磁性層の場合には、腐食・酸化防止の見地から、ディスクの最内周部及び最外周部を最初マスクして、記録層まで成膜、続く保護層の成膜の際にマスクを外し、記録層を保護層で完全に覆う方法や、保護層が2層の場合には、記録層と第一の保護層までをマスクしたまま成膜、第2の保護層を成膜する際にマスクを外し、やはり記録層を第二の保護層で完全に覆うようにすると希土類系磁性層の腐食、酸化が防げて好適である。
【0261】
次に、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成した磁気記録媒体を使用した、磁気記録装置について説明する。
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁化パターンを形成した磁気記録媒体を使用した、磁気記録装置は、上述の方法で磁化パターンを形成した磁気記録媒体と、磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対移動させる手段と、磁気ヘッドへの記録信号入力と磁気ヘッドからの再生信号出力を行なうための記録再生信号処理手段を有する。磁気ヘッドとしては、高密度記録を行なうため、通常は浮上型/接触型磁気ヘッドを用いる。
【0262】
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成方法により信号特性に優れた微細かつ高精度なサーボパターン等の磁化パターンが形成された磁気記録媒体を用いることで、上記磁気記録装置は高密度記録が可能となる。また、媒体に傷がなく欠陥も少ないため、エラーの少ない記録を行なうことができる。
また、磁気記録媒体を装置に組みこんだ後、上記磁化パターンを磁気ヘッドにより再生し信号を得、該信号を基準としてサーボバースト信号を該磁気ヘッドにより記録してなる磁気記録装置に用いることで、簡易に精密なサーボ信号を得ることができる。
【0263】
また、磁気ヘッドでのサーボバースト信号記録後にも、ユーザデータ領域として用いられない領域には本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成により磁化パターンとして記録した信号が残っていると何らかの外乱により磁気ヘッドの位置ずれが起きたときにも所望の位置に復帰させやすいので、両者の書き込み方法による信号が存在する磁気記録装置は、信頼性が高い。
【0264】
磁気記録装置として代表的な、磁気ディスク装置を例に説明する。
磁気ディスク装置は通常、磁気ディスクを1枚或いは複数枚を串刺し状に固定するシャフトと、該シャフトにベアリングを介して接合された磁気ディスクを回転させるモータと、記録及び/又は再生に用いる磁気ヘッドと、該ヘッドが取り付けられたアームと、ヘッドアームを介してヘッドを磁気記録媒体上の任意の位置に移動させることのできるアクチュエータとからなり、記録再生用ヘッドが磁気記録媒体上を一定の浮上量で移動している。記録情報は、信号処理手段を経て記録信号に変換されて磁気ヘッドにより記録される。また、磁気ヘッドにより読み取られた再生信号は同信号処理手段を経て逆変換され、再生情報が得られる。
【0265】
ディスク上には、情報信号が同心円状のトラックに沿って、セクター単位で記録される。サーボパターンは通常、セクター間に記録される。磁気ヘッドは該パターンからサーボ信号を読み取り、これによりトラックの中心に正確にトラッキングを行ない、そのセクターの情報信号を読み取る。記録時も同様にトラッキングを行なう。
【0266】
前述の通り、サーボ信号を発生するサーボパターンは、情報を記録する際のトラッキングに使用するという性質上、特に高精度が要求される。また現在多く使用されているサーボパターンは、1トラックあたり、互いに1/2ピッチずれた2組のパターンからなるため、情報信号の1/2のピッチ毎に形成する必要があり、2倍の精度が要求される。
【0267】
しかしながら、従来のサーボパターン形成方法では、外部ピンとアクチュエータの重心が異なることから生じる振動の影響でライトトラック幅で0.2〜0.3μm程度が限界であり、トラック密度の増加にサーボパターンの精度が追いつかず、磁気記録装置の記録密度向上及びコストダウンの妨げとなりつつある。
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成によれば、縮小結像技術を用いることで効率よく精度の高い磁化パターンを形成することができるので、従来のサーボパターン形成方法に比べて格段に低コスト、短時間で精度良くサーボパターンを形成でき、例えば40kTPI以上に媒体のトラック密度を高めることができる。従って本媒体を用いた磁気記録装置は高密度での記録が可能となる。
【0268】
また、位相サーボ方式を用いると連続的に変化するサーボ信号が得られるのでよりトラック密度を上げることができ、0.1μm幅以下でのトラッキングも可能となり、より高密度記録が可能である。
前述のように、位相サーボ方式には、例えば、内周から外周に、半径に対して斜めに直線的に延びる磁化パターンが用いられる。このような、半径方向に連続したパターンや斜めのパターンは、ディスクを回転させながら1トラックずつサーボ信号を記録する従来のサーボパターン形成方法では作りにくく、複雑な計算や構成が必要であった。
【0269】
しかし本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成方法によれば、該形状に応じたマスクを一旦作成すれば、マスクを介してエネルギー線を照射するだけで当該パターンを容易に形成できるため、位相サーボ方式に用いる媒体を簡単かつ短時間、安価に作成することができる。ひいては、高密度記録が可能な、位相サーボ方式の磁気記録装置を提供できる。
さて、従来主流のサーボパターン形成方法は、媒体を磁気記録装置(ドライブ)に組み込んだのちに、クリーンルーム内で専用のサーボライターを用いて行なう。
【0270】
各ドライブをサーボライターに装着し、ドライブ表面あるいは裏面のいずれかにある孔よりサーボライターのピンを差し入れ磁気ヘッドを機械的に動かしながら、トラックに沿って1パターンずつ記録を行なう。このためドライブ一台あたり15〜20分程度と非常に時間がかかる。専用のサーボライターを用い、またドライブに孔を開けるためこれら作業はクリーンルーム内で行なう必要があり、工程上も煩雑でコストアップの要因であった。
【0271】
本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成方法では、予めパターンを記録したマスクを介してエネルギー線を照射することで、サーボパターン或いはサーボパターン記録用基準パターンを一括して記録でき、非常に簡便かつ短時間で媒体にサーボパターンを形成できる。このようにしてサーボパターンを形成した媒体を組み込んだ磁気記録装置は、上記サーボパターン書込み工程は不要となる。
【0272】
或いはサーボパターン記録用基準パターンを形成した媒体を組み込んだ磁気記録装置は、該基準パターンをもとにして装置内で所望のサーボパターンを書込むことができ、上記のサーボライターは不要であり、クリーンルーム内での作業も必要ない。
また、磁気記録装置の裏側に孔を開ける必要がなく耐久性や安全性の上でも好ましい。
【0273】
さらに、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成方法においてはマスクと媒体との間を密着させなくてよいので、磁気記録媒体と他の構成部材との接触による損傷や、微小な塵埃やゴミの挟み込みによる媒体の損傷を防ぎ、欠陥の発生を防ぐことができる。
以上のように、本発明の磁化パターン形状規定用マスクを用いた磁化パターン形成方法によれば高密度記録が可能な磁気記録装置を、簡便な工程で安価に得ることができる。
【0274】
磁気ヘッドとしては、薄膜ヘッド、MRヘッド、GMRヘッド、TMRヘッドなど各種のものを用いることができる。磁気ヘッドの再生部をMRヘッドで構成することにより、高記録密度においても十分な信号強度を得ることができ、より高記録密度の磁気記録装置を実現することができる。
また磁気ヘッドを、浮上量が0.001μm以上、0.05μm未満と、低い高さで浮上させると、出力が向上して高い装置S/Nが得られ、大容量で高信頼性の磁気記録装置を提供することができる。
【0275】
また、最尤復号法による信号処理回路を組み合わせるとさらに記録密度を向上でき、例えば、トラック密度13kTPI以上、線記録密度250kFCI以上、1平方インチ当たり3Gビット以上の記録密度で記録・再生する場合にも十分なS/Nが得られる。
【0276】
さらに磁気ヘッドの再生部を、互いの磁化方向が外部磁界によって相対的に変化することによって大きな抵抗変化を生じる複数の導電性磁性層と、その導電性磁性層の間に配置された導電性非磁性層からなるGMRヘッド、あるいはスピン・バルブ効果を利用したGMRヘッドとすることにより、信号強度をさらに高めることができ、1平方インチ当たり10Gビット以上、350kFCI以上の線記録密度を持った信頼性の高い磁気記録装置の実現が可能となる。
【0277】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、その要旨の範囲を超えない限り本発明は実施例に限定されるものではない。
【0278】
(実施例)
磁化パターン形状規定用マスク表面の、マスクパターンが形成されている領域よりも外周側及び内周側に、それぞれ複数個の突起を形成した。以下、その際の手順について説明する。
【0279】
まず、直径120mm,厚さ2.3mmの円板状に石英ガラスを形成してなる基板に、スパッタリング法でSiを厚さ100nmに成膜し、非透過部となるSi薄膜を形成した。成膜時の条件は、スパッタリングガスとしてArを使用し、スパッタリングガス圧0.6Pa,電力500Wで53秒間スパッタリングを行なった。
【0280】
次に、形成したSi薄膜表面に、フォトレジスト(MCPR−2200X)をスピンコート法で厚さ200nmに塗布し、フォトレジスト薄膜を形成した。
【0281】
このフォトレジスト薄膜の、マスクパターンを形成しようとする領域にKrレーザ(波長413nm)を照射して露光を行なった後、現像を行ない、フォトレジスト薄膜の特定領域のフォトレジストを除去した。
【0282】
次いで、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:以下、RIEという。)によって、フォトレジスト薄膜が形成されていない特定領域のSi薄膜を除去した。RIE時の条件は、使用ガスSF6,流量30秒,電力50Wで62秒間RIEを行なった。このとき、フォトレジスト薄膜が形成されている領域では、Si薄膜はフォトレジストによって保護されているため、RIEによってSiが除去されることはない。
【0283】
マスクをフォトレジスト除去液(ナガセレジストストリップ液N303C)に浸漬し、マスク表面のフォトレジスト薄膜を除去し、乾燥した。
【0284】
マスクの、Si薄膜を形成した面に、スパッタリング法でSiO2を厚さ30nmで成膜した。この成膜時の条件は、スパッタリングガスとしてAr/O2=7/3を用い、スパッタリングガス圧0.6Pa,電力500Wで73秒間スパッタリングを行なった。
【0285】
以上の工程により、マスクパターンが形成された、磁化パターン形状規定用マスクを得た。
【0286】
この磁化パターン形状規定用マスクの、Si薄膜が形成された側の面に、フォトレジスト(MCPR−2200X)をスピンコート法で厚さ3μmに塗布し、フォトレジスト薄膜を形成した。
【0287】
フォトレジスト薄膜に、突起形成用マスクを介して水銀キセノンランプ光をブロードバンド露光した。突起形成用マスクは、一辺127mmの正方形、厚さ2.3mmの石英ガラスに、厚さ110nmのクロム/酸化クロム積層膜を形成し、突起を形成しようとする領域、即ち特定領域に対応した領域(以下、突起形成パターンという)のクロム/酸化クロム積層膜をエッチングにより除去したものを使用した。この突起形成パターンを水銀キセノンランプ光が透過し、フォトレジスト薄膜に露光を行なった。突起形成パターン1箇所は、直径100μmの円形に形成した。また、磁化パターン形状規定用マスクの外周側の突起形成パターンは、この突起形成用マスクの正方形の中心から半径47.0mm〜47.1mmの領域に、円周方向に100μm間隔で、径方向1列に形成した。一方、磁化パターン形状規定用マスクの内周側の突起形成パターンは、この突起形成用マスクの正方形の中心から半径13.0mm〜15.3mmの領域に、円周方向に100μm間隔で、径方向12列に形成した。
【0288】
こうして露光されたフォトレジスト薄膜を現像し、特定領域のフォトレジストを除去した。
【0289】
特定領域を主体に、スパッタリング法でクロム薄膜を形成した。スパッタリング時の条件は、スパッタリングガスとしてAr=50ccm/O2=0.3ccmを用い、電力400W,クロムに対する酸素の原子比0.33,ヌープ硬度321kg/mm2,内周側の特定領域の膜厚0.60μm/外周側の特定領域の膜厚2.20μmで行なった。
【0290】
磁化パターン形状規定用マスクをアセトンに浸漬し、磁化パターン形状規定用マスクの表面に形成されているフォトレジスト薄膜を溶解・除去した。このとき同時に、フォトレジスト薄膜上に形成されていたクロム薄膜は磁化パターン形状規定用マスクから離脱し、特定領域に形成されていたクロム薄膜のみが磁化パターン形状規定用マスクに残った。その後、磁化パターン形状規定用マスクをアセトンから取り出し、乾燥させた。
【0291】
これにより、Si薄膜を形成された面の中心から、径方向13.0mm〜15.3mmの範囲に円周方向に略100μm間隔で高さ0.6μmの突起が径方向に12列形成され、且つ、径方向47.0mm〜47.1mmの範囲に円周方向に略100μm間隔で高さ2.20μmの突起が径方向に12列突起が形成された磁化パターン形状規定用マスクが得られた。しかし、この状態では磁化パターン形状規定用マスクのマスクパターンにクロムの欠片が付着物となって付着しているため、以下に説明する方法で付着物を除去した。
【0292】
磁化パターン形状規定用マスクのSi薄膜が形成されている面に、フォトレジスト(MCPR−2200X)をスピンコート法で厚さ3μmに塗布し、フォトレジスト薄膜を形成した。
【0293】
形成したフォトレジスト薄膜に、突起保護用マスクを介して水銀キセノンランプ光をブロードバンド露光した。突起保護用マスクは、一辺127mmの正方形、厚さ2.3mmの石英ガラスに、厚さ110nmのクロム/酸化クロム積層膜を形成し、付着物を除去しようとする領域に対応した領域(以下、付着物除去パターンという)のクロム/酸化クロム積層膜をエッチングにより除去したものを使用した。この付着物除去パターンを水銀キセノンランプ光が透過し、フォトレジスト薄膜に露光が行なわれた。付着物除去パターンは、突起保護マスクの中心から径方向19.0mm〜46.7mmの領域にドーナツ状に形成した。
【0294】
フォトレジスト薄膜を現像し、露光した領域のフォトレジストを除去した。これにより、露光しなかった領域では突起は保護されるが、露光した領域では付着物はフォトレジスト薄膜によって保護されず、剥き出しとなっていた。
【0295】
磁化パターン形状規定用マスクをCrエッチング液(MPM−E30)に浸透し、磁化パターン形状規定用マスクに付着した付着物を除去した。これにより、付着物を除去しようとする領域では付着物は取り除かれた。
【0296】
最後に、磁化パターン形状規定用マスクをアセトンに浸漬し、突起を保護していたフォトレジスト薄膜を除去し、磁化パターン形状規定用マスクを乾燥させた。
【0297】
こうして得られた磁化パターン形状規定用マスクを光学顕微鏡で観察した。マスクパターンの一部分を観察した結果、観られた像を図3(a)に示す。図3(a)のように、マスクパターンに付着した付着物はなかった。
【0298】
(比較例)
突起を形成した後、クロム欠片の付着物除去工程を行なわなかった以外は実施例と同様にして、磁化パターン形状規定用マスクを得た。
【0299】
磁化パターン形状規定用マスクのマスクパターンを光学顕微鏡で観察した。マスクパターンの一部分を観察した結果、観られた像を図3(b)に示す。図3(b)に示すように、磁化パターン形状規定用マスクの表面に付着した付着物が観察された。また、この付着物をSEM−EDX(エネルギー分散型X線分析装置付き走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope with Energy Dispersive Xray spectrometer)で分析した結果、その組成がクロムであることが確認された。
【0300】
こうして製造された磁化パターン形状規定用マスクを用いて磁気記録媒体の磁性層に磁化パターンを形成すると、様々な問題が生じた。例えば外周側の突起周辺に形成されていたクロム薄膜が剥がれて内周側突起部付近に付着すると、外周側の突起を形成するクロム薄膜は内周側の突起を形成するクロム薄膜よりも膜厚に形成されていたため、磁化パターン形状規定用マスクと磁気記録媒体との間の距離が内周側の突起付近で大きくなり、気密性が悪化した。また、この磁化パターン形状規定用マスクを用いてエネルギー線を磁気記録媒体に照射した場合、付着物による影が生じ、磁気記録媒体の磁性層で、加熱すべきであるにもかかわらず加熱できない領域ができた。
【0301】
【発明の効果】
本発明の磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法及び磁化パターン形状規定用マスクによれば、磁気記録媒体へ磁化パターンを形成する際に使用する磁化パターン形状規定用マスクの表面に、磁化パターン形成の障害となる付着物を少なくして薄膜を形成することができる(請求項1)。
【0302】
このとき、上記補助薄膜をフォトレジストで形成することで、前記特定領域の上記補助薄膜を除去する工程と、前記特定領域以外の領域の上記補助薄膜を除去する工程を、確実に行なうことができる(請求項2)。
【0303】
また、上記目的薄膜を、前記マスクのスペーサ用の突起として形成することで、磁気記録媒体の磁性層に磁化パターンを形成する際使用するスペーサを確実に形成することができる(請求項3)。
【0304】
また、上記目的薄膜をクロムで形成することで、前記突起を確実に形成することができることができる(請求項4)。
【0305】
また、上述の方法で表面に薄膜を形成した磁化パターン形状規定用マスクを用いることで、磁気記録媒体の磁性層に磁化パターンを形成する際、非同心円状の歪んだ干渉縞を発生させることの無いよう、磁気記録媒体とマスクの間隔を狭くかつ少なくとも同心円上において均一に保ち、同心円上における回折の影響を確実に等しくすることができる(請求項5)。
【0306】
さらに、本発明の磁化パターン形状規定用マスクの余剰薄膜除去方法によれば、磁気記録媒体へ磁化パターンを形成する際に使用する磁化パターン形状規定用マスクの表面の、磁化パターン形成の障害となる付着物を少なくすることができる(請求項6)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態としての磁化パターン形状規定用マスクの模式的な断面図である。
【図2】本発明の概要を説明するための、磁化パターン形状規定用マスクの模式的な断面図である。
【図3】本発明の実施例としての磁化パターン形状規定用マスクの表面の拡大図である。
【図4】従来例としての磁化パターン形状規定用マスクの模式的な断面図である。
【図5】従来例としての磁化パターン形状規定用マスクを説明するための、磁化パターン形状規定用マスクの要部拡大図である。
【符号の説明】
1 磁気記録媒体
2 マスク
3 透明基材
4 クロム層
5 酸化クロム層
6 外部磁界
7 遮蔽薄膜
8 マスク
9 付着物
10 フォトレジスト薄膜
11 入射光
12 反射光
13 再反射光
14 光源
16 クロム薄膜
21 突起
Claims (6)
- 磁気記録媒体の磁性層に磁化パターンを形成する際に、前記磁化パターンの形状を規定するために使用されるマスクに対して、その表面の特定領域に薄膜を形成する方法であって、
前記マスクの表面の少なくとも一部に補助薄膜を形成する工程と、
前記特定領域に存在する該補助薄膜を除去する工程と、
前記特定領域を含む領域に目的薄膜を形成する工程と、
特定領域以外に存在する該補助薄膜及び余剰の該目的薄膜を除去する工程と、
前記マスク表面の少なくとも前記特定領域を含む領域に、該目的薄膜に重ねて再度該補助薄膜を形成する工程と、
前記マスク表面の前記特定領域以外の領域に存在する該補助薄膜を除去する工程と、
前記マスク表面の前記特定領域以外の領域に付着した余剰の該目的薄膜を除去する工程と、
該補助薄膜を除去する工程とを備える
ことを特徴とする、磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法。 - 該補助薄膜をフォトレジストで形成する
ことを特徴とする、請求項1記載の磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法。 - 該目的薄膜が、前記マスクのスペーサ用の突起として形成される
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法。 - 該目的薄膜をクロムで形成する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の磁化パターン形状規定用マスクに対する薄膜形成方法。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載の方法により表面に薄膜を形成してなる
ことを特徴とする、磁化パターン形状規定用マスク。 - 磁気記録媒体の磁性層に磁化パターンを形成する際に、前記磁化パターンの形状を規定するために使用されるマスクにおいて、その表面の少なくとも特定領域に薄膜が形成されている場合に、前記特定領域以外の領域に存在する余剰の該薄膜を選択的に除去する方法であって、
前記マスクの表面の少なくとも特定領域を含む領域に、該薄膜に重ねて補助薄膜を形成する工程と、
前記マスク表面の前記特定領域以外の領域に存在する該補助薄膜を除去する工程と、
前記マスク表面の前記特定領域以外の領域に存在する余剰の該薄膜を除去する工程と、
該補助薄膜を除去する工程とを備える
ことを特徴とする、磁化パターン形状規定用マスクの余剰薄膜除去方法。
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