JP4098019B2 - 磁化パターン形成方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク等の磁気記録媒体に磁化パターンを形成するための方法及びそのための装置に関するものであり、特に、所定方向に一様に磁化された磁性層に対しエネルギー線を照射して該磁性層を局所的に加熱すると同時に該磁性層に外部磁界を印加し、加熱された部分を該所定方向とは逆向きに磁化して磁化パターンを形成する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク等の磁気記録媒体に磁化パターンを形成する方法及び装置として、本出願人により、局所加熱と外部磁界印加を組み合わせて磁気記録媒体に磁化パターンを形成する加熱磁気転写法が提案されている(特開2001−331902号、特開2001−338419号)。この方法では、磁気記録媒体を予め一方向に一様に磁化しておき、パターニングされたマスクを介してエネルギー線等を照射し局所的に加熱し、該加熱領域の保磁力を下げつつ外部磁界を印加し、加熱領域に外部磁界による記録を行い、磁化パターンを形成する。
【0003】
この磁化パターン形成方法及び装置の概略を第7図を参照して説明する。
【0004】
第7図の如く、予め周方向に一様に磁化された磁気記録媒体1をターンテーブル10上に載荷して固定した後、該磁気記録媒体にフォトマスク2を重ね合わせ、ハブ5によって固定する。ターンテーブル10に同軸に連なる回転軸を回転させることにより該ターンテーブル10を所定角度ずつ間欠的に回転させつつ、マグネット4によって上記一様方向とは逆方向の磁界を磁気記録媒体1に印加すると共にエネルギー線照射領域Eにエネルギー線を照射し、磁気記録媒体1に磁化パターンを形成する。この所定角度は、3゜〜45゜程度に設定される。例えば、該所定角度を15゜としたときには、15゜ずつターンテーブル10を回転させた後停止し、この15゜分の領域Eにエネルギー線を照射すると共に外部磁界を印加して磁化パターンを形成し、これを順次に繰り返すことにより、磁気記録媒体1の全体に磁化パターンを形成する。
【0005】
この外部磁界印加手段としては、永久磁石、電磁石又はこれらの組み合せが採用される。
【0006】
[先行技術]
本出願人は、この外部磁界印加手段として、永久磁石と電磁石とを組み合わせ、永久磁石により磁性層に静磁場を加え、電磁石により磁性層に動磁場を加えるよう構成した磁化パターン形成方法及び装置を特願2001−344618号にて提案している。
【0007】
第8図(a)は同号の磁化パターン形成方法及び装置を示す概略的な平面図、同(b)は同(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0008】
第8図において、ディスク状の磁気記録媒体1がターンテーブル(第8図では図示略)上に載置され、固体手段により固定されている。
【0009】
この磁気記録媒体1上にスペーサ7を介してフォトマスク2が載置され、その上方に遮光板9が配置され、その開口9aを通してエネルギー線が照射される。フォトマスク8には、形成すべき磁化パターンに応じて透過部、非透過部が形成されている。
【0010】
遮光板9の下側には、開口9aの両側に棒状の永久磁石11a(N極)、11b(S極)が取り付けられるとともに、コイルがループ状に数十回巻かれた空芯コイル(電磁石)12a、12bが該永久磁石11a、11bに沿って配されている。また磁気記録媒体1を載せたターンテーブルの下側にも永久磁石11c(N極)、11d(S極)が取り付けられるとともに、コイルがループ状に数十回巻かれた空芯コイル(電磁石)12c、12dが該永久磁石11c、11dに沿って配置されている。
【0011】
永久磁石11a〜11dは、ディスク状の磁気記録媒体1の半径方向の直線の両側に該直線と平行方向に延在している。永久磁石11a〜11dの先端は磁気記録媒体1の中心近くに位置し、後端は磁気記録媒体1の外周縁よりも外方まで延在している。
【0012】
磁気記録媒体1は、予め所定方向に均一磁化されている。この磁気記録媒体1に対し永久磁石11a〜11dによって、均一磁化とは逆方向に磁界(静磁界)が常に印加されている。
【0013】
空芯コイル28a、28bにパルス状の電流を通電することにより該コイルからパルス状に磁界(動磁界)が発生する。
【0014】
第8図(b)に矢印にて示すように、空芯コイル12a〜12dによる磁界は永久磁石11a〜11dによる磁界を補助するように働く。
【0015】
エネルギー線の照射と同時に、コイル12a〜12dに通電することにより、加熱された領域のみがパルス状磁界によって反転磁化され、磁化パターンが形成される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
第8図の如く棒状の永久磁石11a〜11dをエネルギー線の照射領域を挟んで両側に配置し、これらの永久磁石11a〜11dによって照射領域に静磁界を印加する場合、棒状の永久磁石11a〜11dの先端側は他の部分に比べて発生磁束密度が低い。このため、該照射領域のうち磁気記録媒体1の中心近くの領域で磁化反転用に加える磁界が弱くなり、磁化パターンを安定して書き込むことができないおそれがある。
【0017】
特に、磁気記録媒体が図示のようにディスク状である場合磁気記録媒体1を回転させるための回転軸3が磁気記録媒体1と同軸に延在しており、該回転軸3が邪魔になってターンテーブル10の下側に配置された永久磁石11c,11dを磁気記録媒体1の中心直近まで延在させることができない。そのため、上記の通り、磁気記録媒体1の中心近くには磁化パターンを安定して書き込みにくい。
【0018】
本発明は、磁気記録媒体の記録領域の全域にわたって安定した磁化パターンを書き込むことができる磁化パターン形成方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁化パターン形成方法は、基板上に磁性層を有し、中心に開口を有したディスク状の磁気記録媒体を、回転軸に同軸状に保持し、
前記磁気記録媒体の扇形状の一領域に磁化パターンを形成する工程と、
その後、前記回転軸を駆動して前記磁気記録媒体を所定角度回転させ、別の一領域に磁化パターンを形成する工程と、を有し、
所定方向に一様に磁化されてなる前記磁性層に対し、エネルギー線の濃淡を生じさせるマスクを介してエネルギー線を照射して前記磁性層を局所的に加熱すると同時に前記磁性層に外部磁界を印加し、この加熱された部分を前記所定方向とは逆向きに磁化することにより磁化パターンを形成する方法において、
前記外部磁界が静磁界と動磁界の組み合わせからなり、
前記静磁界は、前記加熱される部分を挟んで互いに反対側に配置されたN極及びS極を備えている棒状の永久磁石より形成され、
前記永久磁石のN極及びS極は互いに平行に且つ前記磁気記録媒体の径方向の直線と平行に配置されており、かつ、一対の互いに平行なN極およびS極は前記マスクの前記磁気記録媒体に対向しない側、及びもう一対の互いに平行なN極およびS極は前記磁気記録媒体の前記マスクに対向しない側に前記磁気記録媒体の磁性層を挟んで対称に配置されており、
さらに、前記永久磁石の先端は、その先端同士の間に前記回転軸の一部が入り込むように前記磁気記録媒体の中心直近まで延在しており、かつ、前記永久磁石の後端を前記磁気記録媒体の外周から長く延出させており、
前記N極及びS極の磁気記録媒体の中心側の先端部の前記磁気記録媒体に対向する側に、凸部又は強磁性体片が設けられており、
エネルギー線照射領域での静磁界の磁界強度分布率が10%以内であり、
前記動磁界は、前記永久磁石に沿って延在させたコイルから発生するパルス磁界よりなることを特徴とする。
なお、本発明における磁界強度分布率が10%以内とは磁界の最大値を100%としたときに、エネルギー照射領域中の磁界の最小値が最大値の90%以上であることをいう。
【0020】
かかる本発明の磁化パターン形成方法によると、静磁界の強度分布がエネルギー線の照射領域全体にわたってほぼ均等であり、該照射領域全域にわたって磁化パターンを安定して書き込むことができる。
【0021】
本発明では、静磁界は永久磁石により形成されることが好ましい。この永久磁石は、前記加熱される部分を挟んで互いに反対側に配置されたN極及びS極とを備えていることが好ましい。
【0022】
磁気記録媒体は、好ましくはディスク状である。
【0023】
このN極及びS極はいずれも棒状であり、これらのN極とS極は互いに平行に且つ該磁気記録媒体の径方向の直線と平行に配置され、該N極及びS極の延在方向の磁気記録媒体の中心側の先端部に、凸部又は強磁性体片が設けられている構成としてもよい。このように棒状のN極及びS極の先端部に凸部又は強磁性体片を設けることにより、該端部付近の磁界を強くしたり、該端部付近の磁束が磁気記録媒体側に集中するようになり、該端部付近からの磁束によってエネルギー線の照射領域に加えられる静磁界が強くなり、エネルギー線照射領域全域にわたって静磁界の強度分布ムラが小さくなる。
【0024】
本発明では、ディスク状の磁気記録媒体が同軸状の回転軸によって回転駆動されて磁化パターンを形成する場合、回転軸の直径をsとし、磁気記録媒体の中心開口の半径をr、外周の半径をrとし、該永久磁石のN極とS極の長さをdとし、N極とS極との間隔をwとしたときに、
1.5(r−r)<d
s<w
の関係を満たすことが好ましい。
【0025】
このようにすれば、永久磁石をその端部がディスク状磁気記録媒体の中心近くに位置するように配置でき、エネルギー線照射領域のうちディスク中心側の領域における静磁場の低下を抑制することができる。本発明ではエネルギー線の濃淡を生じさせるマスクを介してエネルギー線を磁性層に照射するのが好ましい。これにより、一度に広範囲にわたって磁化パターンを形成できるからである。
【0026】
本発明は、また、このような磁化パターン形成方法を行う装置として、中心に開口を有したディスク状の磁気記録媒体を前記中心回りに回転させる回転軸と、
前記磁気記録媒体にエネルギー線の濃淡を生じさせるマスクを介してエネルギー線を照射するエネルギー線照射装置と、
前記磁気記録媒体に磁化パターン形成用の静磁界と動磁界を印加するための磁界発生装置と、を有し、該静磁界が永久磁石に形成される磁化パターン形成装置において、
前記静磁界は、前記加熱される部分を挟んで互いに反対側に配置されたN極及びS極を備えている棒状の永久磁石より形成され、前記永久磁石のN極及びS極は互いに平行に且つ前記磁気記録媒体の径方向の直線と平行に配置されており、
さらに、前記永久磁石の先端は、その先端同士の間に前記回転軸の一部が入り込むように前記磁気記録媒体の中心直近まで延在しており、かつ、前記永久磁石の後端を前記磁気記録媒体の外周から長く延出させており、かつ、一対の互いに平行なN極およびS極は前記マスクの前記磁気記録媒体に対向しない側、及びもう一対の互いに平行なN極およびS極は前記磁気記録媒体の前記マスクに対向しない側に前記磁気記録媒体の磁性層を挟んで対称に配置されており、
前記N極及びS極の磁気記録媒体の中心側の先端部の前記磁気記録媒体に対向する側に、凸部又は強磁性体片が設けられており
前記動磁界は、前記永久磁石に沿って延在させたコイルから発生するパルス磁界よりなることを特徴とする磁化パターン形成装置を提供する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
第1図は本発明の実施の形態に係る磁化パターン形成方法及び装置を示すものであり、(a)図は磁気記録媒体及びマスクと磁石との位置関係を示す平面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。なお、(a)図は(b)図のA−A線矢視図である。第2図は磁気記録媒体及びマスクと磁石との位置関係を示す斜視図、第3図は永久磁石と回転軸との位置関係を示す斜視図である。
【0029】
この実施の形態においても、中心部に開口を有したディクス状の磁気記録媒体1がターンテーブル10上に載置され、その上にスペーサ7を介してフォトマスク2を重ね合わせる。
【0030】
磁気記録媒体1は予め一様に磁化されている。この磁気記録媒体1は例えば真空吸引等によりターンテーブル10に固定される。フォトマスク2はハブ5によりターンテーブル10に対し固定される。フォトマスク2は、磁気記録媒体1と同様に中心部に開口を有したディクス状であり、この開口の縁部がハブ5によってターンテーブル10に固定される。ハブ5はターンテーブル10に対し真空チャック機構(図示略)により固定される。ターンテーブル10の下側には回転軸3が連結されている。
【0031】
このフォトマスク2の上方に遮光板9が配置されている。この遮光板9には要の位置を磁気記録媒体1の中心に合致させた略扇形の開口9aが設けられ、この開口を通してエネルギー線が磁気記録媒体1に向けて照射される。このエネルギー線の照射領域は、該開口9aを投影した扇形状である。
【0032】
このフォトマスク2の上側とターンテーブル10の下側にそれぞれ静磁界印加手段としての永久磁石21a(N極)、21b(極)、21c(N極)、21d(S極)と、動磁界印加手段としての空芯コイル12a,12b,12c,12dが配置される。
【0033】
この永久磁石21a〜21dは、いずれも、棒状である。永久磁石21a,21bの後端同士及び永久磁石21c,21dの後端同士の間にヨーク22が架け渡され、コ字形平面視形状の馬蹄形磁石となっている。
【0034】
各永久磁石21a〜21dは、磁気記録媒体の半径方向線、即ち、中心からの放射方向線と平行方向に延在しており、ヨーク22は該放射方向線と直交方向に延在している。永久磁石21a,21b及び永久磁石21c,21dは、該半径方向線を挟んで両側に対称に配置されている。
【0035】
N極21a,21c及びS極21b,21dの間隔wは回転軸3の直径sよりも大きい。ターンテーブル10の下側の永久磁石21,21dは、それらの先端同士の間に回転軸3の一部が入り込むように磁気記録媒体1の中心直近まで延在している。
【0036】
下側の永久磁石21c,21dの先端部の上面と、上側の永久磁石21a,21bの先端部の下面とには、それぞれ強磁性体片23が取り付けられている。
【0037】
上側の永久磁石(N極)21aは下側の永久磁石(N極)21cの上方に配置され、上側の永久磁石(S極)21bは下側の永久磁石(S極)21dの上方に配置されている。永久磁石21a,21bと永久磁石21c,21dとは磁気記録媒体1の磁性層を挟んで上下対称に配置されており、該磁性層から上側永久磁石21a,21bまでの距離と磁性層から下側永久磁石21c,21dまでの距離とは等しい。
【0038】
空芯コイル12a〜12dは各永久磁石21a〜21dに沿って延在するように配置されている。この実施の形態では、N極21a,21cとS極22b,22dとが対面する面(内側面)に沿って各空芯コイル12a〜12dが配置されているが、それと反対側(外側面)に配置されてもよい。
【0039】
上記のように永久磁石21a〜21dの先端側を磁気記録媒体の中心直近まで深く入り込ませることにより、前記扇形のエネルギー線照射領域Eの磁気記録媒体内周側における磁界強度の低下を抑制することができる。
【0040】
また、下側永久磁石の先端部上面と上側永久磁石の先端部下面とにそれぞれ強磁性体片23を設けることにより、該永久磁石の先端部付近から発生する磁束を磁気記録媒体に近い方に集中させ、これによってエネルギー線照射領域Eの磁気記録媒体内周側における磁界強度の低下を抑制することができる。なお、強磁性体片23を設ける代りに、各永久磁石21a〜21dの先端に、凸部を設けてもよい。
【0041】
各永久磁石21a〜21dの長手方向の長さdは、磁気記録媒体1の内径(半径)rと外径(半径)rとの差(r−r)よりも大きく、好ましくはdは(r−r)の1.5倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上である。N極及びS極の長さdをこのように大きくすることにより、前記エネルギー線照射領域Eのうち磁気記録媒体内外周側における磁界強度低下を抑制することができる。また、あまり長くてもその効果に変わりはないため、好ましくはdは(r−r)の4.0倍以下さらに好ましくは3.0倍以下である。
【0042】
このように構成された磁化パターン形成装置によって磁化パターンを形成するには、前記第7,8図と同様に、エネルギー線照射手段によって遮光板開口9a及びフォトマスク2を通して磁気記録媒体1の磁性層にエネルギー線をマスクパターン通りに照射すると同時に、空芯コイル12a〜12dに通電して磁気記録媒体1に所定強さ以上の磁界を印加し、エネルギー線の照射によって昇温した部分のみ磁化反転させる。
【0043】
1つの扇形領域に磁化パターンを形成した後、回転軸を駆動して磁気記録媒体1を扇形の周方向角度分だけ回転させ、上記と同じ手順にて磁化パターンを形成する。この工程を繰り返すことにより、磁気記録媒体1の全体に磁化パターンを形成する。その後、磁気記録媒体1を取り外し、替りに次の未処理の磁気記録媒体1を同様にしてパターン形成処理する。
【0044】
この実施の形態では、上記のように永久磁石21a〜21dの先端を磁気記録媒体1の中心直近まで入り込ませると共に、永久磁石21a〜21dの先端部に強磁性体片23を取り付け、また永久磁石21a〜21dの後端を磁気記録媒体1の外周から長く延出させているので、エネルギー線照射領域での静磁界の強度分布がほぼ一様となり、磁化パターンを磁気記録媒体の書込領域の全体において均一に形成することができる。
【0045】
本発明では、エネルギー線照射領域におけるこの静磁界の強度分布率を、10%以内、より好ましくは5%以内とすることにより、磁化パターンを均一に形成することができる。
【0046】
以下、本発明方法及び装置のさらに好適な形態について説明する。
【0047】
磁気記録媒体を予め一様に磁化するには、磁気記録媒体に強い外部磁界を印加して、磁性層全体を所望の磁化方向に均一に磁化する。この外部磁界を印加するには、磁気ヘッドを用いてもよいし、電磁石または永久磁石を、所望の磁化方向に磁界が生じるよう配置して用いてもよい。更にそれら手段を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
なお、第1図〜第3図では、磁化容易軸が面内方向にあるので、この一様な磁化の方向は周方向であり、記録/再生ヘッドの走行方向と同一又は逆方向である。ただし、本発明は、磁化容易軸が面内方向に垂直にある場合にも適用でき、この場合には垂直方向に磁化されるように、外部磁界を印加する。
【0049】
磁性層全体を所望の方向に均一に磁化するとは、磁性層の全部をほぼ同一方向に磁化することを言うが、厳密に全部ではなく、少なくとも磁化パターンを形成すべき領域が同一方向に磁化されていればよい。
【0050】
一様な磁化のための外部磁界の強さは磁気記録媒体の保磁力に合わせて設定すればよいが、磁性層の室温での静的な保磁力の2倍以上の磁界によって磁化することが好ましい。これより弱いと磁化が不十分となる可能性がある。ただし、通常、磁界印加に用いる着磁装置の能力上、磁性層の室温での静的な保磁力の5倍以下程度である。室温とは例えば25℃である。また磁気記録媒体の保磁力は、磁性層(記録層)の保磁力とほぼ同じである。
【0051】
エネルギーの照射により、磁化反転させるべき箇所を、磁性層の動的な保磁力の低下が見られる温度まで加熱する。例えば磁性層の磁化消失温度、キュリー温度近傍、好ましくは100℃以上に加熱する。加熱温度が100℃未満で外部磁界の影響を受ける磁性層は、室温での磁区の安定性が低い傾向がある。
【0052】
ただし、加熱温度は所望の保磁力の低下が得られる範囲で低いことが望ましい。加熱温度が高すぎると加熱したい領域以外への熱拡散が起こりやすく、パターンがぼやけてしまう虞がある。また、磁性層が変形してしまう可能性がある。更に、通常、磁気記録媒体の表面には潤滑剤からなる潤滑層が形成されており、加熱による潤滑剤の劣化等の悪影響を防止するためにも、加熱温度は低いほど好ましい。加熱により潤滑剤が分解などの劣化を起こしたり気化して減少したりする虞があるほか、特に近接露光の場合には気化した潤滑剤がマスク等に付着する虞もある。従って加熱温度はできるだけ低いことが望ましく、またこうすることにより本発明の磁化パターン形成法を、潤滑層を備えた磁気記録媒体に工業的に適用することが可能となる。
【0053】
このため加熱温度は磁性層のキュリー温度以下とするのが好ましい。例えば300℃以下とするのが好ましく、より好ましくは250℃以下であり、更に好ましくは200℃以下である。
【0054】
磁化パターンを形成するときにコイルに通電する電流は、パルス状であることが好ましい。パルス状に電流を通電することにより、パルス状の動磁界が印加される。
【0055】
或いはパルス状磁界は、常時磁界を発生する磁石を短時間のみ磁気記録媒体に接近させる方式によって印加することもできる。例えば、磁気記録媒体の一部に永久磁石によって磁界を印加しつつ、媒体を所定以上の速度で回転させればよい。
【0056】
なお、以下ではコイルからのパルス状磁界成分(動磁界)のパルス幅を、単にパルス幅と称する。ここで、磁界のパルス幅とは半値幅を指す。
【0057】
コイル及び永久磁石により加えられる磁界の最大強度は、磁気記録媒体の磁性層の特性によって異なるが、室温の静的保磁力の2/3以上特に3/4以上であることが望ましい。あまり弱いと加熱領域が良好に磁化されない虞がある。
【0058】
この磁界強度は、磁気記録媒体の磁性層の室温での動的保磁力より小さい磁界とする。印加する磁界がこれより大きいと、非加熱領域の磁化に影響を与える。なお、動磁界のパルス幅を短くするほど、印加できる磁界の上限値が大きくなる。動的保磁力の値は磁界の印加時間によって変化し、外部磁界のパルス幅を短くするほど磁性層の室温での動的保磁力が大きくなるからである。
【0059】
なお本発明において、磁界強度の値H(Oe)は磁束密度の値B(Gauss)でそのまま代用できる。一般にB=μH(ただし、μは透磁率を表す)の関係があるが、通常磁化パターンの形成は空気中で行われるため、透磁率は1であって、B=Hの関係が成り立つからである。
【0060】
ここで局所加熱の温度と加熱時間、及び外部磁界の最大強度と印加時間との関係について図を用いて説明する。第4図の(a)図は、磁性層の室温における飽和磁化曲線、(b)図は同磁性層の加熱領域の温度における飽和磁化曲線の模式図であり、横軸は外部磁界強度H、縦軸はその時の磁性層の磁化Mである。
【0061】
外部磁界の最大強度の好ましい範囲を図に示す。(a)図の通り、外部磁界の最大強度は、室温にある磁性層が減磁(磁化が弱くなること)を起こしたり逆方向に磁化されない程度(室温にある磁性層の磁化がMh1以上を保つ程度)に弱くなければならない。ただし(b)図の通り、外部磁界は、加熱領域の温度にある磁性層が逆方向に磁化される程度(加熱領域の温度にある磁性層の磁化がMh2より負方向に大きくなる程度)に強くなければならない。
【0062】
飽和磁化をMsとすると、Mh1は0.70Ms以上であるのが好ましく、より好ましくは0.85Ms以上である。従って、外部磁界の上限はMsに制限される。一方Mh2は−0.70Ms以下であるのが好ましく、より好ましくは−0.85Ms以下である。従って、外部磁界の下限は−Msに制限される。
【0063】
第5図は減磁または逆方向磁化されるに必要な磁界強度の、処理時間との関係を表す片対数グラフである。上側の直線はいわゆる室温特性を示し、室温で磁性層が減磁を起こしてしまう磁界強度が磁界印加時間(処理時間)により変化することを模式的に示している。磁界印加時間が短いほど、磁性層が減磁を起こすに必要な磁界強度は大きくなる。
【0064】
下側の直線はいわゆる加熱温度特性を示し、加熱領域の温度における磁性層が逆方向に磁化されるために必要な磁界強度が、加熱時間(処理時間)により変化することを模式的に示している。つまり加熱時間(処理時間)が長くなるほど加熱領域の温度が高くなり、保磁力が低下するので、逆方向磁化に必要な磁界強度は小さくなる。
【0065】
この図から、加熱時間と外部磁界印加時間が決まれば、外部磁界の最大強度の好ましい範囲が決まる。この範囲は、第5図のminとmaxの間である。
【0066】
外部磁界のパルス幅は通常100msec以下、好ましくは10msec以下、より好ましくは1msec以下とする。外部磁界のパルス幅を短くするほど印加できる磁界の上限値が大きくなる。動的保磁力の値は磁界の印加時間によって変化し、外部磁界のパルス幅を短くするほど磁性層の室温での動的保磁力が大きくなる。
【0067】
外部磁界のパルス幅は、好ましくは10nsec以上、より好ましくは100nsec以上とする。あまり短いとそれだけ動的保磁力が大きくなるため、加熱領域を磁化するために必要な外部磁界が大きくなってしまう。また、磁界の大きさにもよるが、電磁石の特性上磁界の立上がり、立下がりには時間を要するので、パルス幅を短くするのには限界がある。
【0068】
局所加熱にパルス状エネルギー線を使用する場合は、外部磁界のパルス幅はパルス状エネルギー線のパルス幅以上とする。これ以下であると、局所加熱中に磁界が変化してしまうので磁化パターンが良好に形成されないおそれがある。
【0069】
また、パルス状エネルギー線とパルス状の外部磁界を同期させ、同時に印加するのが好ましい。この様に印加することにより、エネルギー線で加熱され、一旦保磁力の低下した領域が冷却され保磁力が回復する前に、効果的に逆方向磁化に必要な磁界を印加することができる。
【0070】
通常、エネルギー線のパルス幅より磁界のパルス幅のほうが長いので、磁界パルスを印加中にエネルギー線パルスを印加するのが好ましい。外部磁界のパルスを印加し、磁界が最大になる前、または最大になる時にエネルギー線パルスを印加するのがより好ましい。但し、エネルギー線パルス印加があまり早いと、磁界パルスが最大強度になる前に加熱領域の温度が下がり、保磁力が回復してしまう虞があるため、エネルギー線の照射時と磁界が最大になる時の時間差が30μsec以下であるのが好ましい。最も好ましくは、外部磁界のパルスを印加し、磁界が最大になるところでエネルギー線のパルスが印加されるよう制御する。
【0071】
磁気記録媒体の同一領域に対して、複数回にわたりエネルギー線パルスを照射して磁化パターン形成を行ってもよい。この場合には、エネルギー線パルスの照射周期に対して、外部磁界のパルス幅を好ましくは1/2倍以下、より好ましくは1/10倍以下、さらに好ましくは1/100倍以下とする。
【0072】
この様な関係を満たすことにより、印加できる外部磁界の強度に余裕を持たせることが出来、加熱領域以外の領域に影響を与えることなくより強い磁界が印加でき、良好に磁化パターンを形成することが出来る。この理由について第5図を用いて説明する。
【0073】
第5図は前述したように、減磁または逆方向磁化されるに必要な磁界強度の、処理時間との関係を表す片対数グラフである。例えばエネルギー線の照射周期を100msecとした時、印加する外部磁界のパルス幅を同じ100msecで印加した場合には、印加できる外部磁界の強さの範囲(マージン)は約1/3目盛分しかない。しかし、エネルギー照射周期の1/100倍のパルス幅である1msecの外部磁界を印加した場合には、印加できる外部磁界の強さの範囲(マージン)は約1目盛分に広がる。これにより、外部磁界の強さに多少の誤差が生じても、非加熱領域の磁化方向に影響を与える虞が少なく、安定して良好な磁化パターンの形成を行うことが出来る。
【0074】
本発明は、動的保磁力を高めた磁気記録媒体やAFC媒体に適用すると特に効果が高い。
【0075】
例えば、記録用の磁性層とともに熱的に安定性を保つための安定化磁性層を有する、2層の磁性層を備えた磁気記録媒体が挙げられる。安定化磁性層が記録用磁性層の瞬時の磁化反転を抑えるように働くため、動的保磁力が高く、従来法では磁化パターンが形成しにくい。このような媒体に静的保磁力近傍或いはそれ以上の外部磁界を、パルス状に与えると良好な磁化パターンが形成できる。
【0076】
本発明は、記録再生用磁気ヘッドを制御するための制御用情報を持つ磁化パターン、例えばヘッドの位置に対応した信号を発生するパターンの形成に好適である。
【0077】
制御用情報は、その情報を用いて磁気ヘッドなどの記録再生手段を制御するものであり、磁気ヘッドをデータトラックに位置決めするためのサーボ情報、媒体上での磁気ヘッドの位置を示すアドレス情報、磁気ヘッドによる記録再生速度を制御するための同期情報、サーボ情報を後で書込むための基準情報が例示される。
【0078】
これら制御用磁化パターンは高精度で形成される必要があり、特にサーボパターンは、データトラックの位置制御用パターンであるため、高精度に形成される必要がある。
【0079】
本発明では精度の高いサーボパターン又は基準パターンが得られるため、特にトラック密度が40kTPI以上であるような高密度記録用の磁気記録媒体に適用すると効果が高い。
【0080】
磁化パターン形成用の外部磁界についてより詳しく説明する。
【0081】
この外部磁界のうち動磁界を発生させるコイルとしてインダクタンスの小さな空芯コイルを用いると、パルス幅を狭くでき、磁界印加時間を短くできる。
【0082】
外部磁界のうち永久磁石により発生される静磁界の磁界強度は、磁性層の室温での静的保磁力より小さくする。好ましくは静的保磁力の2/3以下とし、より好ましくは1/2倍以下とする。あまり大きいと、形成した磁化パターンに影響を与えてしまい出力が落ちるだけでなく、モジュレーションが悪化する。静磁界は、磁性層の室温での静的保磁力の1/8以上とするのが好ましい。
【0083】
永久磁石としては、高密度記録に適した高保磁力媒体を効率よく磁化するためには、フェライト磁石、ネオジム系希土類磁石、サマリウムコバルト系希土類磁石などの永久磁石が好適である。
【0084】
永久磁石の先端部では磁界強度が弱くなってしまう為、上記実施の形態の通り、永久磁石の端部に鉄等の強磁性体片を取り付けるのが好ましい。強磁性体片を取り付ける代りに、永久磁石端部の形状を磁気記録媒体に向って突き出す形状とすることも好ましい。これにより、永久磁石端部付近の磁界強度を強めることができ、パターン形成領域全域にわたって、印加する磁界の強度を均一にすることができる。
【0085】
良好な磁化パターンを形成するためには、マスクと磁気記録媒体の間隔は磁気記録媒体の同一半径位上においては均一であるのが好ましい。このため、磁気記録媒体上に発生する干渉縞を観察するモニタリング装置を設けておくことも好ましい。マスクと磁気記録媒体の間隔が磁気記録媒体の同一半径位上において均一であった場合には、磁気記録媒体上に同心円状の干渉縞が発生する。しかし、マスクと磁気記録媒体の間隔が磁気記録媒体の同一半径位上において不均一であった場合には、磁気記録媒体上に非同心円状の干渉縞が発生する。従って、干渉縞を観察することにより、マスクと磁気記録媒体の間隔が磁気記録媒体の同一半径位上において均一となるように容易に調整することが好ましい。
【0086】
エネルギー線源としては、パルスレーザ光源が好適である。パルスレーザ光源はレーザをパルス状に断続的に発振するものであり、連続レーザを音響光学素子(AO)や電気光学素子(EO)などの光学部品で断続させパルス化するのに比して、パワー尖頭値の高いレーザをごく短時間に照射することができ熱の蓄積が起こりにくく非常に好ましい。
【0087】
連続レーザを光学部品によりパルス化した場合、パルス内ではそのパルス幅に亘ってほぼ同じパワーを持つ。一方パルスレーザ光源は、例えば光源内で共振によりエネルギーをためて、パルスとしてレーザを一度に放出するため、パルス内では尖頭のパワーが非常に大きく、その後小さくなっていく。本発明では、コントラストが高く精度の高い磁化パターンを形成するために、ごく短時間に急激に加熱しその後急冷させるのが好ましいため、パルスレーザ光源の使用が適している。
【0088】
磁化パターンが形成される媒体面は、パルス状エネルギー線の照射時と非照射時で温度差が大きい方が、パターンのコントラストを上げ、或いは記録密度を上げるために好ましい。従ってパルス状エネルギー線の非照射時には室温以下程度になっているのが好ましい。室温とは25℃程度である。
【0089】
パルス状エネルギー線のパルス幅は、1μsec以下であることが望ましい。これよりパルス幅が広いと該磁気記録媒体にパルス状エネルギー線にて与えたエネルギーによる発熱が分散して、分解能が低下しやすい。1パルス当たりのパワーが同じである場合、パルス幅を短くし一度に強いエネルギーを照射した方が、熱拡散が小さく磁化パターンの分解能が高くなる傾向にある。より好ましくは100nsec以下である。この領域であるとAlなど金属の比較的熱拡散の大きな基板を用いた場合でも分解能の高い磁化パターンが形成しやすい。最小幅が2μm以下のパターンを形成する際には、パルス幅を25nsec以下とするのがよい。即ち、分解能を重視すれば、パルス幅は短いほど良い。また、パルス幅は1nsec以上であるのが好ましい。磁性層の磁化反転が完了するまでの時間、加熱を保持しておくのが好ましいからである。
【0090】
なお、パルス状レーザの一種として、モードロックレーザのようにピコ秒、フェムト秒レベルの超短パルスを高周波で発生できるレーザがある。超短パルスを高周波で照射している期間においては、各々の超短パルス間のごく短い時間はレーザが照射されないが非常に短い時間であるため加熱部はほとんど冷却されない。すなわち、一旦キュリー温度以上に昇温された領域はキュリー温度以上に保たれる。
【0091】
従ってこのような場合、連続照射期間(超短パルス間のレーザが照射されない時間も含めた連続照射期間)を1パルスとする。また連続照射期間の照射エネルギー量の積分値を1パルス当たりのパワー(mJ/cm2)とする。
【0092】
エネルギー線のパワーは、外部磁界の大きさによって最適な値を選べばよいが、パルス状エネルギー線の1パルス当たりのパワーは1000mJ/cm2以下とすることが好ましい。これより大きなパワーをかけると、パルス状エネルギー線によって該磁気記録媒体表面が損傷を受け変形を起こす可能性がある。変形により粗度やうねりが大きくなると、浮上型/接触型ヘッドの走行に支障を来すおそれがある。
【0093】
より好ましくは500mJ/cm2以下であり、更に好ましくは200mJ/cm2以下である。この領域であると比較的熱拡散の大きな基板を用いた場合でも分解能の高い磁化パターンが形成しやすい。また、パワーは10mJ/cm2以上とするのが好ましい。これより小さいと、磁性層の温度が上がりにくく磁気転写が起こりにくい。なお、エネルギー線のディフラクションの影響がパターン幅により変わるので、パターン幅に応じて最適なパワーも変化する。また、エネルギー線の波長が短いほど、印加可能なパワーの上限値は低下する傾向にある。
【0094】
本発明に用いる基板がアルミニウム等の金属又は合金である場合は、熱伝導率が大きいことから、局所に与えた熱が所望の部位以外にも広がってしまい磁化パターンを歪ませることが無いよう、また、過剰なエネルギーによって基板に物理的な損傷が起きないよう、該パワーは30〜120mJ/cm2の範囲であることが好ましい。
【0095】
なお、実際にはエネルギー線の多くはマスクの非透過部で遮られ、透過部を通過したエネルギー線のみが媒体に照射されるので、そのパワーは小さくなる傾向がある。形成すべき磁化パターンの幅が狭くなりマスクの透過部が狭くなるにつれて、エネルギー線が透過部を通過しにくくなり、実際に照射されるパワーは更に小さくなる傾向がある。
【0096】
基板がガラス等のセラミックスである場合はアルミニウム等に比べて熱伝導が少なく、パルス状エネルギー線照射部位での熱の蓄積が多いことから、該パワーは10〜100mJ/cm2の範囲であることが好ましい。
【0097】
基板がポリカーボネイト等の樹脂である場合は、パルス状エネルギー線照射部位での熱の蓄積が多く、またガラス等に比べて融点が低いことから、該パワーは10〜80mJ/cm2の範囲であることが好ましい。
【0098】
好ましいパワーの範囲はエネルギー線のパルスが照射したいパワーに到達するまでの時間、つまりパルスの立ち上がり時間にも影響される。上記記載の好ましいパワーの範囲は立ち上がり時間が5nsecにおいての値である。
【0099】
エネルギー線による磁性層、保護層、潤滑層の損傷が心配される場合は、パルス状エネルギー線のパワーを小さくして、該パルス状エネルギー線と同時に印加される磁界強度を上げるといった手段を取ることもできる。例えば、許容される範囲でできるだけ大きな磁界をかけ、照射エネルギーを下げる。
【0100】
なお、エネルギー線の照射により、潤滑剤がダメージ(分解、重合)等を受ける場合には、照射後に再塗布してもよい。
【0101】
エネルギー線の波長は、1100nm以下、特に600nm以下であることが好ましい。これより波長が短いと回折作用が小さく分解能が上がるため、微細な磁化パターンを形成しやすい。600nm以下の波長は、高分解能であるだけでなく、回折が小さいため、間隙によるマスクと磁気記録媒体との間隔を広くすることが可能となる。エネルギー線の波長は150nm以上であるのが好ましい。150nm未満では、マスクに用いる合成石英の吸収が大きくなり、加熱が不十分となりやすい。波長を350nm以上とすれば、光学ガラスをマスクとして使用することもできる。
【0102】
具体的には、エキシマレーザ(157,193,248,308,351nm)、YAGのQスイッチレーザ(1064nm)の2倍波(532nm)、3倍波(355nm)、或いは4倍波(266nm)、Arレーザ(488nm、514nm)、ルビーレーザ(694nm)などである。
【0103】
好ましくは、エネルギー線に予め強度分布の均一化処理をなし、照射した領域の加熱状態の分布を小さくする。これにより、磁化パターンの磁気的強さの分布が小さくなり、信号強度の均一性の高い磁化パターンが形成される。
【0104】
強度分布を均一化処理するには、例えば、ホモジナイザやコンデンサレンズを用いて均一化したり、遮光板やスリットなどでエネルギー線の強度分布の小さい部分だけを透過し必要に応じて拡大する。
【0105】
マスクは、エネルギー線の強度分布を、形成すべき磁化パターンに対応して変化させ、磁気ディスク面上にエネルギー線の濃淡(強度分布)を形成するものである。マスクとしては、パターンに応じてエネルギー線を透過する透過部を有するフォトマスクや、特定のパターンを媒体上に結像するホログラムが記録されたホログラムマスクが好適である。ホログラムマスクによればマスクと媒体の距離を十分離してもシャープで明瞭なパターンを形成することができる。フォトマスクは簡単かつ安価に作成できる。
【0106】
マスクは非磁性材料で構成されることが好ましい。
【0107】
マスクはエネルギー線の光源と磁気記録媒体の間に配置する。マスクの全部又は一部を媒体に接触させ、レーザ光の回折を少なくすることにより、磁化パターンの精度を高くすることができる。
【0108】
磁気記録媒体に欠陥や傷を生じさせないようにするためには、少なくとも媒体の磁化パターンを形成する領域では、マスクと媒体とのあいだに間隙を設け、ゴミ等の挟み込みによる媒体やマスクの傷つき、欠陥発生を抑える。
【0109】
また、磁化パターン形成前に潤滑層が設けられている場合は、マスクと媒体とのあいだに数μm〜数百μm程度の間隙を設け、マスクに潤滑剤が付着しないようにするのが好ましい。また、この間隙を設けておくと、潤滑層が設けられたディスクとマスクを接触させた状態で大パワーのエネルギー線を照射しても、潤滑剤が急激に気化して爆発状態となることが防止される。
【0110】
磁気記録媒体の磁化パターン形成領域とマスクの間隙を保つには、例えばマスクと媒体とを特定の装置により保持して一定距離を保っても良い。また、両者のあいだの、磁化パターン形成領域以外の場所にスペーサを挿入してもよい。マスク自体に、スペーサを一体形成しても良い。スペーサは硬質であり、また、パターン形成に外部磁界を用いるので磁化されない材料、例えば、ステンレス、銅などの金属や、ポリイミドなどよりなることが好ましい。
【0111】
マスクと磁気記録媒体とのあいだに、媒体の磁化パターン形成領域の外周部又は/及び内周部にスペーサを設けると磁気記録媒体表面のうねりが矯正され、磁化パターン形成の精度が上がる。
【0112】
フォトマスクは、所望の磁化パターンに相当する透過部と非透過部を備えている。マスクは、例えば、石英ガラス、ソーダライムガラス等の透明基板上にCr等の金属をスパッタリング形成し、その上にフォトレジストを塗布し、エッチング等によって、所望の透過部と非透過部を作成することができる。基板上に残ったCr等の金属層がエネルギー線非透過部となる。
【0113】
なお、透明基板自体をエッチングした後に、そのエッチング部にCr等の金属を埋め込み、非透過部を形成しても良い。
【0114】
透明基板は、石英ガラス又は光学ガラスで構成されているのが好ましい。石英ガラスは、300nm以下の短波長の紫外域のエネルギー線に対して透過性が高い。これより長い波長のエネルギー線を使用する場合は、廉価な光学ガラスを使うのがよい。
【0115】
透明基材は、たわみが生じず、安定的に平坦度をだすためには、通常1〜10mm程度が好ましい。
【0116】
また、フォトマスクの非透過層は、クロム層と酸化クロム層との積層膜であることが好ましい。クロムは非常に反射率が高いので、その表面を反射率約16%の酸化クロムで覆う。これにより、媒体面で反射したエネルギー線が再度マスク面で反射して媒体に戻ることが防止される。酸化クロム層は反射率が低い上にクロムを酸化させるのみで形成することができ、また、クロム層への密着性にも優れる。
【0117】
このようなフォトマスクを製造するには、石英などのマスク基板の上に、まずクロムを成膜し、その上に酸化クロムを成膜する。クロムの成膜方法としては、スパッター、蒸着、塗布などの方法がある。ただし、緻密な膜を形成するという観点からは、スパッター法が好ましい。また、酸化クロムの成膜方法も同様の手法が用いられるが、クロムを酸化させるために酸素と反応させながら成膜するのが好ましい。
【0118】
次いで、クロム、酸化クロムの積層膜上に、フォトレジストをスピンコート等により塗布し、所望のパターンに露光する。露光後、そのパターンに従い、クロム、酸化クロムをエッチングして除去することにより、フォトマスクが得られる。
【0119】
非透過層の膜厚は、概ね40nm以上が好ましい。エネルギー線耐久性を高めるためには160nm以上が好ましく、より好ましくは200nm以上である。
【0120】
但しあまり厚いと成膜時間が長くなりすぎるため、500nm以下が好ましい。クロム膜と酸化クロム膜の積層膜の場合には、クロム膜の膜厚が20〜200nm、酸化クロム膜の膜厚が20〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0121】
このようにして非透過層を形成したフォトマスクは、この非透過層による凸部が形成されたものとなる。このフォトマスクは一般に非透過層の形成面が磁気ディスクに対面するように配置する。なお、非透過層間の凹部に、エネルギー線を透過する材料を埋め込み、フォトマスクの非透過層の形成面を平坦にして使用しても良い。
【0122】
磁気記録媒体の潤滑剤としてフッ素系潤滑剤を用いる場合には、非透過層の材質としてシリコン(金属珪素)又はそれを主成分合金を用いても好ましい。
【0123】
フッ素系潤滑剤を用いた場合、エネルギー線の照射によって潤滑剤が分解し、フッ酸が発生する事がある。フッ酸は腐食作用を持つため、フォトマスクの非透過層を腐食する恐れがある。しかし、シリコンは化学的に非常に安定であり、フッ酸に対する耐性が強いため、フッ酸による腐食を防止できる。さらに、シリコンはマスク基材であるガラス基板との密着性にも優れるため、剥離が起こりにくい。
【0124】
シリコン系非透過層は、シリコンを90原子%以上含むものが好ましい。シリコン以外の元素としては例えば、水素、酸素、窒素、Cr、Mo、Al、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Ti、Ni、Ta、Mg、Se、Hf、Zr、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Bなどから選ばれる1種以上が挙げられる。また、スパッタリング法等で作製する場合はアルゴン等のスパッタリングガスが膜中に混入することもある。
【0125】
フッ酸による腐食を防止するには、添加元素はPt、Au、Rh等の貴金属、あるいは酸素、水素、窒素が好ましい。これら他の元素は1種類でもよいが、2種類以上を用いても良い。含有量は通常、10原子%以下程度が好ましい。
【0126】
非透過層の作製法は特に限定されずスパッタリング、電子ビーム蒸着、熱蒸着、CVD等の成膜方法を取ることが可能であるが、膜が緻密であり熱衝撃等に対しても剥離しにくいことや成膜の高速性の点からスパッタリング法が好ましい。
【0127】
なお、必要に応じて非透過層は2層以上の複数層としてもよい。
【0128】
本発明においては、非透過部の最外層(媒体に対向する側)にエネルギー線に対して透明な誘電体層を形成するのが好ましい。この目的の一つは、遮光部の媒体側の反射率を低下させることである。この面の反射率が高いと媒体から反射された光が再度媒体に向かうために、本来記録を行わない媒体の遮光部直下の温度が上がり、転写信号が乱れてしまう。
【0129】
ここで用いられる誘電体層としては酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられるが、フッ酸への耐久性の観点、及びガラス基体との密着性の観点から酸化シリコンが好ましい。
【0130】
スパッタリングで作製した酸化シリコンは特に緻密であり、同じ酸化シリコンである基体の石英ガラスよりもフッ酸への耐久性に優れているため、透過部にも遮光部と同様にスパッタリングによる酸化シリコンが設けられていることが好ましい。これにより石英ガラスの耐腐食性をも向上できる。
【0131】
非透過部のみに誘電体層を設ける場合は、最初の基体への成膜段階で遮光用のシリコン含有層と誘電体層を連続して作製することができる。非透過部と透過部の両方に誘電体を設ける場合は透過部と非透過部のパターンを作製した後、全面に酸化シリコンのスパッタリングを行うという手法で作製できる。
【0132】
誘電体層の作製方法としては金属ターゲットを酸素、窒素などで反応性スパッタリングすると、反応性ガスの分圧や成膜パワーで膜質を制御可能である。従って十分透明な膜質を得る上で、また成膜速度の点からも反応性スパッタリングを用いることが好ましい。誘電体の厚みは20nm以上であることが好ましい。また厚すぎると成膜時間が長くなる上、光学的な影響も生じるので300nm以下であることが好ましい。
【0133】
但し、マスクの磁気記録媒体に対する面であっても、磁化パターン形成領域に対応する領域以外は、最外層に誘電体層を形成する必要はない。
【0134】
磁気記録媒体は媒体の主両面に磁性層が形成されている場合があるが、その場合、本発明の磁化パターン形成は片面ずつ、逐次に行ってもよいし、マスク、エネルギー照射系および外部磁界を印加する手段を媒体の両面に設置して、両面同時に磁化パターン形成を行うこともできる。
【0135】
一面に二層以上の記録用磁性層が形成されており、それぞれに異なるパターンを形成したい場合は、照射するエネルギー線の焦点を各層に合わせることにより、各層を個別に加熱し、個別のパターンを形成できる。
【0136】
磁化パターンを形成する際には、エネルギー線の光源とマスクとの間、又はマスクと該媒体との間の照射をしたくない領域に、エネルギー線を部分的に遮光可能な遮光板を設けて、エネルギー線の再照射を防ぐ構造とするのが好ましい。
【0137】
遮光板としては、使用するエネルギー線の波長を透過しないものであればよく、エネルギー線を反射又は吸収すればよい。ただし、エネルギー線を吸収すると加熱し磁化パターンに影響を与えやすいため、熱伝導率がよく反射率の高いものが好ましい。例えば、Cr、Al、Feなどの金属板である。
【0138】
また好ましくは光学系に縮小結像技術を用いる。形成すべき磁化パターンに応じた強度分布を有するパターン化エネルギー線を縮小して媒体表面に結像させる。これによれば、エネルギー線を対物レンズで絞った後マスクを介する場合、すなわち近接露光の場合に比較して、マスクのパターニング精度やアライメント精度により磁化パターンの精度が制限されることがなく、より微細な磁化パターンを精度良く形成することができる。また、マスクと媒体が離間しているため、媒体上のゴミの影響も受けにくい。以下、本技術を縮小結像技術(結像光学系)と称することがある。
【0139】
光源から出射したエネルギー線は、マスクを介して強度分布を変化させ、結像レンズなどの結像手段を通して媒体表面に縮小結像させる。なお、結像レンズは投影レンズと、縮小結像を縮小投影と称することもある。
【0140】
次に、本発明に適した磁気記録媒体の構成について説明する。
【0141】
磁気記録媒体の基板としては、高速記録再生時に高速回転させても振動しない必要があり、通常、硬質基板が用いられる。振動しない十分な剛性を得るため、基板厚みは一般に0.3mm以上が好ましい。但し厚いと磁気記録装置の薄型化に不利なため、3mm以下が好ましい。例えば、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mgを主成分とした例えばMg−Zn合金等のMg合金基板、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、非結晶ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂のいずれかからなる基板やそれらを組み合わせた基板などを用いることができる。中でもAl合金基板や強度の点では結晶化ガラス等のガラス製基板、コストの点では樹脂製基板を用いることが好ましい。
【0142】
本発明は硬質基板を有する媒体に適用すると効果が高い。従来の磁気転写法では硬質基板を有する媒体はマスター(マスターディスク)との密着が不十分になり傷や欠陥が発生したり転写された磁区の境界が不明確でPW50が広がりやすい傾向があったが本発明ではマスクと媒体とを圧着しないのでそのような問題がない。特に、ガラス製基板のようにクラックの入りやすい基板を有する媒体には効果的である。
【0143】
磁気記録媒体の製造工程においては、各層の密着性を確保する見地から、通常、基板の洗浄・乾燥が行われる。
【0144】
磁気記録媒体の製造に際しては、基板表面にNiP、NiAl等の金属層を形成してもよい。
【0145】
金属層の形成法としては、無電解めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法など薄膜形成に用いられる方法を利用することができる。導電性の材料からなる基板の場合であれば電解めっきを使用することが可能である。金属層の膜厚は50nm以上が好ましい。ただし、磁気記録媒体の生産性などを考慮すると20μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは10μm以下である。
【0146】
金属層を成膜する領域は基板表面全域が望ましいが、一部だけ、例えばテキスチャリングを施す領域のみでも実施可能である。
【0147】
また、基板表面、又は基板に金属層が形成された表面に同心状テキスチャリングを施してもよい。本発明において同心状テキスチャリングとは、例えば遊離砥粒とテキスチャーテープを使用した機械式テキスチャリングやレーザ光線などを利用したテキスチャリング、又はこれらを併用することによって、円周方向に研磨することによって基板円周方向に微小溝を多数形成した状態を指称する。
【0148】
一般に、機械式テキスチャリングは磁性層の面内異方性を出すために行われる。面内等方性の磁性層としたい場合は施す必要はない。
【0149】
また一般に、レーザ光線などを利用したテキスチャリングは、CSS(コンタクト・スタート・アンド・ストップ)特性を良好にするために行われる。磁気記録装置が、非駆動時にヘッドを磁気記録媒体の外に待避させる方式(ロード・アンロード方式)などの場合は施す必要はない。
【0150】
機械的テキスチャリングに用いられる砥粒としてはアルミナ砥粒が広く用いられているが、特にテキスチャリング溝に沿って磁化容易軸を配向させるという面内配向媒体の観点から考えるとダイアモンド砥粒が極めて良い性能を発揮する。中でも表面がグラファイト化処理されているものが最も好ましい。
【0151】
ヘッド浮上量ができるだけ小さいことが高密度磁気記録の実現には有効であり、またこれら基板の特長のひとつが優れた表面平滑性にあることから、基板表面の粗度Raは2nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以下である。特に0.5nm以下が好ましい。なお、基板表面粗度Raは、触針式表面粗さ計を用いて測定長400μmで測定後、JIS B0601に則って算出した値である。このとき測定用の針の先端は半径0.2μm程度の大きさのものが使用される。
【0152】
磁気記録媒体の基板上には、磁性層との間に下地層等を形成してもよい。下地層は、結晶を微細化し、かつその結晶面の配向を制御することを目的とし、Crを主成分とするものが好ましく用いられる。
【0153】
Crを主成分とする下地層の材料としては、純Crのほか、記録層との結晶マッチングなどの目的で、CrにV、Ti、Mo、Zr、Hf、Ta、W、Ge、Nb、Si、Cu、Bから選ばれる1又は2以上の元素を添加した合金や酸化Crなども含む。
【0154】
中でも純Cr、又はCrにTi、Mo、W、V、Ta、Si、Nb、Zr及びHfから選ばれる1又は2以上の元素を添加した合金が好ましい。これら第二、第三元素の含有量はそれぞれの元素によって最適な量が異なるが、一般には1原子%〜50原子%が好ましく、より好ましくは5原子%〜30原子%、さらに好ましくは5原子%〜20原子%の範囲である。
【0155】
下地層の膜厚はこの異方性を発現させ得るに十分なものであればよいが、好ましくは0.1〜50nmであり、より好ましくは0.3〜30nm、さらに好ましくは0.5〜10nmである。Crを主成分とする下地層の成膜時は基板加熱を行っても行わなくてもよい。
【0156】
下地層の上には、記録層との間に、場合により軟磁性層を設けても良い。特に磁化遷移ノイズの少ないキーパー媒体、或いは磁区が媒体の面内に対して垂直方向にある垂直記録媒体には、効果が大きく、好適に用いられる。
【0157】
軟磁性層は透磁率が比較的高く損失の少ないものであればよいが、NiFeや、それに第3元素としてMo等を添加した合金が好適に用いられる。最適な透磁率は、データの記録に利用されるヘッドや記録層の特性によっても大きく変わるが、概して、最大透磁率が10〜1000000(H/m)程度であることが好ましい。
【0158】
Crを主成分とする下地層上に必要に応じ中間層を設けてもよい。例えばCoCr系中間層を設けると、磁性層の結晶配向が制御しやすく好ましい。
【0159】
次に記録層(磁性層)を形成するが、記録層と軟磁性層の間には下地層と同一材料の層又は他の非磁性材料が挿入されていてもよい。記録層の成膜時は、基板加熱を行っても行わなくてもよい。記録層としては、Co合金磁性層、TbFeCoを代表とする希土類系磁性層、CoとPdの積層膜を代表とする遷移金属と貴金属系の積層膜等が好ましく用いられる。
【0160】
Co合金磁性層としては、通常、純CoやCoNi、CoSm、CoCrTa、CoNiCr、CoCrPtなどの磁性材料として一般に用いられるCo合金磁性材料を用いうる。これらのCo合金に更にNi、Cr、Pt、Ta、W、Bなどの元素やSiO2等の化合物を加えたものでも良い。例えばCoCrPtTa、CoCrPtB、CoNiPt、CoNiCrPtB等が挙げられる。Co合金磁性層の膜厚は任意であるが、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。また、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下である。また、本記録層は、適当な非磁性の中間層を介して、或いは直接2層以上積層してもよい。その時、積層される磁性材料の組成は、同じであっても異なっていてもよい。
【0161】
希土類系磁性層としては、磁性材料として一般的なものを用いうるが、例えばTbFeCo、GdFeCo、DyFeCo、TbFeなどが挙げられる。これらの希土類合金にTb、Dy、Hoなどを添加してもよい。酸化劣化防止の目的からTi、Al、Ptが添加されていてもよい。希土類系磁性層の膜厚は、任意であるが、通常5〜100nm程度である。また、本記録層は、適当な非磁性の中間層を介して、或いは直接2層以上積層してもよい。その時、積層される磁性材料の組成は、同じであっても異なっていてもよい。特に希土類系磁性層は、アモルファス構造膜であり、かつメディア面内に対して垂直方向に磁化を持つため高記録密度記録に適し、高密度かつ高精度に磁化パターンを形成できる本発明の方法がより効果的に適用できる。
【0162】
同様に垂直磁気記録が行える、遷移金属と貴金属系の積層膜としては、磁性材料として一般的なものを用いうるが、例えばCo/Pd、Co/Pt、Fe/Pt、Fe/Au、Fe/Agなどが挙げられる。これらの積層膜材料の遷移金属、貴金属は、特に純粋なものでなくてもよく、それらを主とする合金であってもよい。積層膜の膜厚は、任意であるが、通常5〜1000nm程度である。また、必要に応じて3種以上の材料の積層であってもよい。
【0163】
本発明においては、記録層は薄い方が好ましい。記録層が厚いと、記録層を加熱したときの膜厚方向の熱の伝わりが悪く、良好に磁化されないおそれがあるためである。このため記録層膜厚は200nm以下が好ましい。ただし、磁化を保持するために、記録層膜厚は5nm以上が好ましい。
【0164】
本発明において、記録層としての磁性層は、室温において磁化を保持し、加熱と同時に外部磁界を印加されて消磁されるか逆方向に磁化される。
【0165】
磁性層は室温において磁化を保持する必要があり、磁性層の室温での静的保磁力を2000Oe以上とするのが好ましい。小さな磁区が保持でき高密度記録に適した媒体が得られる。より好ましくは3000Oe以上である。 ただし、好ましくは室温での静的保磁力を20kOe以下とする。20kOeを超えると、第1外部磁界による均一磁化のために大きな磁界強度が必要となり、また通常の磁気記録が困難となる可能性がある。より好ましくは15kOe以下とし、更に好ましくは15kOeとする。
【0166】
磁性層の静的保磁力と局所加熱温度、外部磁界強度について説明すると、例えば室温において静的保磁力が3500〜4000Oeの媒体は、通常、温度上昇に伴い、10〜15Oe/℃の割合で保磁力が線形に減少し、例えば150℃で2000Oe程度になる。3000Oe程度であれば外部磁界印加手段で容易に発生させることができるので、150℃程度の加熱でも十分に磁化パターンが形成できる。
【0167】
動的な保磁力は、高密度に記録した情報を安定に保持するためには大きいものとなる。動的保磁力は通常、磁界強度を1sec以下の短時間で変化させたときに測定される保磁力、つまりパルス幅が1sec以下の磁界に対する保磁力である。但しその値は磁界や熱の印加時間によって変わる。
【0168】
好ましくは、1secでの動的保磁力が静的保磁力の2倍以上である。但し、あまり大きいと外部磁界による磁化のために大きな磁界強度が必要になるので20kOe以下が好ましい。
【0169】
以下に、磁気記録媒体の動的保磁力(記録層としての磁性層の保磁力)の測定手順の一例を示す。
【0170】
1.印加時間t=10secにおける媒体の保磁力を求める。
1.1 最大磁界強度(20kOe)まで磁界を印加し,媒体を飽和させる。
1.2 負の方向(飽和方向と反対向き)に所定強度の磁界H1を印加する。
1.3 その磁界下で10sec保持する。
1.4 磁界をゼロに戻す。
1.5 1.4の時の磁化値を読みとると、残留磁化値M1が得られる。
1.6 1.2とは少し印加磁界強度を変えて同じ測定(1.1〜1.5)を繰り返す。合計4点の磁界強度H1,H2,H3,H4での残留磁化値M1、M2、M3、M4が得られる。
1.7 この4点から残留磁化Mが0となる印加磁界強度Hを求める。これが印加時間t=10secにおける媒体の保磁力となる。
2.印加時間tを60sec、100sec、600secについて同じ測定を行い、それぞれの印加時間での保磁力を求める。
3.以上で得られた10sec、60sec、100sec、600secでの保磁力の値から外挿して、より短い印加時間での保磁力を求めることができる。
例えば印加時間1nsecでの動的保磁力も求められる。
【0171】
磁性層は、室温において磁化を保持しつつ、適当な加熱温度では弱い外部磁界で磁化されるものである必要がある。また室温と磁化消失温度との差が大きい方が磁化パターンの磁区が明瞭に形成しやすい。このため磁化消失温度は高いほうが好ましく、100℃以上が好ましくより好ましくは150℃以上である。例えば、キュリー温度近傍(キュリー温度のやや下)や補償温度近傍に磁化消失温度がある。
【0172】
キュリー温度は、好ましくは100℃以上である。100℃未満では、室温での磁区の安定性が低い傾向がある。より好ましくは150℃以上である。また好ましくは700℃以下である。磁性層をあまり高温に加熱すると、変形してしまう可能性があるためである。
【0173】
なお、本発明においては、AFC(Anti-Ferromagnetic coupled)媒体のキュリー温度とは、主磁性層のキュリー温度ではなく媒体全体の見かけ上のキュリー温度を言う。
【0174】
磁気記録媒体が面内磁気記録媒体である場合、高密度用の高い保磁力を持った磁気記録媒体に対しては従来の磁気転写法では飽和記録が難しく、磁界強度の高い磁化パターン生成が困難となり、半値幅も広がってしまう。このような高記録密度に適した面内記録媒体でも、本方法によれば良好な磁化パターン形成が可能となる。特に、該磁性層の飽和磁化が50emu/cc以上である場合は、反磁界の影響が大きいので本発明を適用する効果が大きい。
【0175】
100emu/cc以上だとより効果が高い。ただしあまり大きいと磁化パターンの形成がしにくいため、500emu/cc以下が好ましい。
【0176】
磁気記録媒体が垂直磁気記録媒体であり、磁化パターンが比較的大きく1磁区の単位体積が大きい場合は、飽和磁化が大きくなり、磁気的な減磁作用で磁化反転が起こりやすいためそれがノイズとなり半値幅を悪化させる。しかし、本発明では、軟磁性を使用した下地層の併用で、これらの媒体にも良好な記録が可能となる。
【0177】
本発明においては、磁性層上に保護層を形成するのが好ましい。すなわち、媒体の最表面を硬質の保護層により覆う。保護層はヘッドや衝突や塵埃・ゴミ等のマスクとの挟み込みによる磁性層の損傷を防ぐ働きをする。本発明のようにマスクを用いた磁化パターン形成法を適用する際には、マスクとの接触から媒体を保護する働きもある。
【0178】
また、本発明において保護層は、加熱された磁性層の酸化を防止する効果もある。磁性層は一般に酸化されやすく、加熱されると更に酸化されやすい。本発明では磁性層をエネルギー線などで局所的に加熱するため、酸化を防ぐための保護層を磁性層上に予め形成しておくのが望ましい。
【0179】
磁性層が複数層ある場合には、最表面に近い磁性層の上に保護層を設ければよい。保護層は磁性層上に直接設けても良いし、必要に応じて間に他の働きをする層をはさんでも良い。
【0180】
エネルギー線の一部は保護層でも吸収され、熱伝導によって磁性層を局所的に加熱する働きをする。このため保護層が厚すぎると横方向への熱伝導により磁化パターンがぼやけてしまう可能性があるので、膜厚は薄い方が好ましい。また記録再生時の磁性層とヘッドとの距離を小さくするためにも薄い方が好ましい。従って50nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。ただし、充分な耐久性を得るためには0.1nm以上が好ましく、より好ましくは1nm以上である。
【0181】
保護層としては、硬質で酸化に強い性質を有していればよい。一般にカーボン、水素化カーボン、窒素化カーボン、アモルファスカーボン、SiC等の炭素質層やSiO2、Zr23、SiN、TiNなどが用いられる。保護層が磁性を有する材料であっても良い。
【0182】
特にヘッドと磁性層の距離を極限まで近づけるためには、非常に硬質の保護層を薄く設けることが好ましい。従って耐衝撃性及び潤滑性の点で炭素質保護膜が好ましく、特にダイヤモンドライクカーボンが好ましい。エネルギー線による磁性層の損傷防止の役割を果たすだけでなく、ヘッドによる磁性層の損傷にも極めて強くなる。本発明の磁化パターン形成法は、炭素質保護層のような不透明な保護層に対しても適用できる。
【0183】
また、保護層が2層以上の層から構成されていてもよい。磁性層の直上の保護層としてCrを主成分とする層を設けると、磁性層への酸素透過を防ぐ効果が高く好ましい。
【0184】
更に保護層上には潤滑層を形成するのが好ましい。媒体のマスク及び磁気ヘッドによる損傷を防ぐ機能を持つ。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられ、ディップ法、スピンコート法などの常法で塗布することができる。蒸着法で成膜してもよい。磁化パターン形成の妨げとならないために潤滑層は薄い方が好ましく、10nm以下が好ましい。より好ましくは4nm以下である。十分な潤滑性能を得るためには0.5nm以上が好ましい。より好ましくは1nm以上である。
【0185】
潤滑層上からエネルギー線を照射する場合には、潤滑剤のダメージ(分解、重合)等を考慮し、再塗布などを行ってもよい。
【0186】
また、以上の層構成には他の層を必要に応じて加えても良い。
【0187】
浮上型/接触型ヘッドの走行安定性を損なわないよう、磁化パターン形成後の該媒体の表面粗度Raは3nm以下に保つのが好ましい。なお、媒体表面粗度Raとは潤滑層を含まない媒体表面の粗度であって、触針式表面粗さ計(機種名:Tencor P−12 disk profiler(KLA Tencor社製))を用いて測定長400μmで測定後、JIS B0601に則って算出した値である。より好ましくは1.5nm以下とする。
【0188】
望ましくは磁化パターン形成後の該媒体の表面うねりWaを5nm以下に保つ。Waは潤滑層を含まない媒体表面のうねりであって、触針式表面粗さ計(機種名:Tencor P−12 disk profiler(KLA Tencor社製))を用いて測定長2mmで測定後、Ra算出に準じて算出した値である。より好ましくは3nm以下とする。
【0189】
ところで、このように構成される磁気記録媒体への磁化パターンの形成は、記録層(磁性層)に対して行う。記録層上に保護層や潤滑層などを形成した後に記述のいずれかの方法で行うのが好ましいが、記録層の酸化のおそれが無い場合は記録層の成膜直後に行っても良い。
【0190】
磁気記録媒体の各層を形成する成膜方法としては各種の方法が採りうるが、例えば直流(マグネトロン)スパッタリング法、高周波(マグネトロン)スパッタリング法、ECRスパッタリング法、真空蒸着法などの物理的蒸着法が挙げられる。
【0191】
また、成膜時の条件としては、得るべき媒体の特性に応じて、到達真空度、基板加熱の方式と基板温度、スパッタリングガス圧、バイアス電圧等を適宜決定する。例えば、スパッタリング成膜では、通常の場合、到達真空度は5×10-6Torr(1Torrは1.33×10Pa)以下、基板温度は室温〜400℃、スパッタリングガス圧は1×10-3〜20×10-3Torr、バイアス電圧は0〜−500Vが好ましい。
【0192】
基板を加熱する場合は下地層形成前から加熱しても良い。或いは、熱吸収率が低い透明な基板を使用する場合には、熱吸収率を高くするため、Crを主成分とする種子層又はB2結晶構造を有する下地層を形成してから基板を加熱し、しかる後に記録層等を形成しても良い。
【0193】
記録層が、希土類系の磁性層の場合には、腐食・酸化防止の見地から、ディスク状磁気記録媒体の最内周部及び最外周部を最初マスクして、記録層まで成膜、続く保護層の成膜の際にマスクを外し、記録層を保護層で完全に覆う方法や、保護層が2層の場合には、記録層と第1の保護層までをマスクしたまま成膜し、第2の保護層を成膜する際にマスクを外し、やはり記録層を第2の保護層で完全に覆うようにすると希土類系磁性層の腐食、酸化を防ぐことができ、好適である。
【0194】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、その要旨の範囲を越えない限り本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0195】
(実施例1)
外径(半径r)47.5mm、内径(半径r)12.5mmのNiPメッキ付きアルミニウム合金基板を洗浄、乾燥し、その上に到達真空度:1×10-7Torr、基板温度:350℃、バイアス電圧:−200V、スパッタリングガス:Ar、ガス圧:3×10-3Torrの条件下で、NiAlを60nm、Cr90Mo10を10nm、記録層としてCo64Cr16Pt128を12nm、保護層としてカーボン(ダイヤモンドライクカーボン)を5nm成膜した。
【0196】
その上には潤滑層としてフッ素系潤滑剤を0.5nmの厚さに塗布し、100℃で40分焼成し、室温での静的保磁力3600Oe、飽和磁化310emu/ccの面内記録用磁気ディスクを得た。記録層のキュリー温度は250℃であった。
【0197】
このディスクに、電磁石の磁界方向がディスクの回転方向と同じとなるように構成して、約10kOe(約10kガウス)の強度で印加して、ディスク面を一様に(均一に)磁化した。
【0198】
フォトマスクは127mm×127mmの正方形、2.3mm厚の石英ガラスを基材とし、ディスクに対する面側に、クロムを75nm、酸化クロムを25nmの膜厚で順次に成膜し、エッチング領域(パターン領域)をパターン最小幅0.8μm(ライン、スペースとも0.8μm)にエッチングし、非透過部を形成した。なお、エッチング領域(パターン領域)以外の領域は全てクロム層と酸化クロム層が形成された非透過部である。得られたフォトマスクの、波長248nmのエキシマパルスレーザに対する反射率は非透過部で16%、透過部で5%であった。
【0199】
この後、フォトマスクに非感光性ポリイミド樹脂を2.5μmの厚さで均一に塗布し、さらにフォトレジストを0.2μmの厚さに塗布した。ここに、突起形成用マスクを介して高圧水銀ランプの光を照射しブロードバンド露光を行い、アルカリ液により現像及びエッチングを行ったのち残ったフォトレジスト層を除去し、突起を形成した。続いて350℃で15分間ベーク(焼成)を行い、ポリイミド樹脂からなる突起を硬化させた。
【0200】
突起形成用マスクは、直径約3.5インチのディスク状で、半径47〜48mmの領域に、直径50μmの非円形透過部が100μm間隔に並んでいる。
【0201】
以上により、パターン領域が半径18〜45mmに形成され、パターン領域の周縁部、つまりパターン領域以外の外周である半径約47〜48mmの範囲に、高さ2.5μm、直径50μmの略円形の突起(スペーサ)が100μm間隔で形成されたフォトマスクを得た。
【0202】
第1図〜第3図に示す磁化パターン形成装置を用いて上記構成の磁気記録媒体に磁化パターンを形成した。
【0203】
磁界印加手段を構成する永久磁石の寸法、回転軸の直径s等は次の通りである。
長さd=84mm
間隔w=23mm
d/(r−r)=84/(47.5−12.5)=2.4
回転軸直径s=20mm
w/s=1.15
【0204】
なお、各永久磁石の断面は幅20mm×厚さ10mmである。永久磁石の先端の強磁性体片は、幅20mm、長さ14mm、厚さ6mmのNEOMAX−39SH(住友特殊金属製)鋼板である。
【0205】
永久磁石による半径方向の静磁界の強度分布を第6図に示す。この静磁界は、次の通り強度分布率6.8%である。
平均=2.15キロガウス
最大値=2.20キロガウス
最小値=2.05キロガウス
分布率=(最大値−最小値)/最大値=6.8%
【0206】
上記のフォトマスクと磁気ディスクを第1図〜第3図のようにターンテーブルに装着し、次いで永久磁石とコイルとからなる磁化装置を図示の通り配置した。そして、ターンテーブルを3.2秒間で1回転の速度で回転させた。ここに波長248nmのエキシマパルスレーザをパルス幅:25nsec、パワー(エネルギー密度):160mJ/cm2、ビーム形状:10mm×30mm(ピークエネルギーの1/e2となる径)に制御し、レーザ照射口にビーム形状を角度12°の扇形に整形する遮光板を設置して、繰り返し周波数10Hz(照射周期100msec)で32パルス照射し、同時に図3に示す磁界印加手段を用いて磁界を印加し、磁化パターンを形成した。シミュレーションにより加熱温度を求めたところ、約170℃〜200℃であった。
【0207】
空芯コイル12a12bに700Vのパルス状電流を流してコイルの周囲に、パルス幅350μsecであって、ディスク内周域(半径21mmの位置)で約1.7kガウス、ディスク外周域(半径46.5mmの位置)で約1.9kガウス程度のパルス状磁界が発生した
【0208】
このときのエネルギー線の照射周期に対する外部磁界のパルス幅の値は35/10000倍であった。
【0209】
第1図(b)に示すように、空芯コイル12a12bによる磁界は永久磁石22a〜22dによる磁界を補助するように働くので、合計で約3.8kガウス程度の最大磁界が印加された。
【0210】
なお、ここで用いた、レーザ照射のための光学系の構成は以下のとおりである。エキシマパルスレーザ光源から発振したパルスレーザはプログラマブルシャッターを通過する。プログラマブルシャッターは光源から所望のパルスのみ取り出す役目をする。
【0211】
プログラマブルシャッターで選択されたレーザは、所望のパワーに出力調整され次いで、レーザは短軸方向を3分割するためのプリズムアレイと、長軸方向を7分割するためのプリズムアレイを通過し、投影レンズに至る。プリズムアレイは、レーザを分割し重ね合わせ、エネルギー強度分布を均一にする機能を有する。これらをホモジナイザと称することもある。さらに、レーザは必要に応じて遮光板を通して所望のビーム形状とし、フォトマスクにより強度分布を磁化パターンに応じて変化させたのち、ディスクに投影される。
【0212】
(実施例2及び比較例1)
静磁界分布が第6図に示すものである永久磁石を用いたほかは実施例1と同様にして磁化パターンを形成した。なお、実施例2及び比較例1における磁界分布率は次の通りである。
【0213】
実施例2
平均値=2.25キロガウス
最大値=2.31キロガウス
最小値=2.13キロガウス
Figure 0004098019
【0214】
比較例1
平均値=2.10キロガウス
最大値=2.23キロガウス
最小値=1.94キロガウス
Figure 0004098019
【0215】
[評価]
実施例1,2及び比較例1で得られた磁気ディスクについて、再生素子幅0.4μmのハードディスク用MRヘッドで磁化パターンを再生し、半径20mmと45mm位置での再生信号のモジュレーションを測定した結果を表1に示す。
【0216】
【表1】
Figure 0004098019
【0217】
【発明の効果】
本発明によれば、磁化パターン形成時に動磁界と極めて一様な静磁界とを印加するので、高精度に磁化パターンを形成することができる。本発明によれば、高密度記録に用いられる動的保磁力の大きい媒体にも再生信号出力が高くS/N、C/Nが高く、モジュレーションの小さい微細な磁化パターンを効率よく形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁化パターン形成装置の実施の形態を示す概略的な構成図である。
【図2】本発明の磁化パターン形成装置の実施の形態を示す概略的な斜視図である。
【図3】本発明の磁化パターン形成装置の永久磁石と回転軸を示す斜視図である。
【図4】(a)図は、磁性層の室温における飽和磁化曲線、(b)図は同磁性層の加熱領域の温度における飽和磁化曲線の模式図である。
【図5】減磁または逆方向磁化されるに必要な磁界強度の処理時間との関係を表す片対数グラフである。
【図6】実施例及び比較例の静磁界分布図である。
【図7】先行技術を示す斜視図である。
【図8】先行技術を示す平面図と縦断面図である。
【符号の説明】
1 磁気記録媒体
2 フォトマスク
3 回転軸
9 遮光板
9a 開口
11a,11b,11c,11d,21a,21b,21c,21d 永久磁石
12a,12b,12c,12d 空芯コイル
22 ヨーク
23 強磁性体片

Claims (3)

  1. 基板上に磁性層を有し、中心に開口を有したディスク状の磁気記録媒体を、回転軸に同軸状に保持し、
    前記磁気記録媒体の扇形状の一領域に磁化パターンを形成する工程と、
    その後、前記回転軸を駆動して前記磁気記録媒体を所定角度回転させ、別の一領域に磁化パターンを形成する工程と、を有し、
    所定方向に一様に磁化されてなる前記磁性層に対し、エネルギー線の濃淡を生じさせるマスクを介してエネルギー線を照射して前記磁性層を局所的に加熱すると同時に前記磁性層に外部磁界を印加し、この加熱された部分を前記所定方向とは逆向きに磁化することにより磁化パターンを形成する方法において、
    前記外部磁界が静磁界と動磁界の組み合わせからなり、
    前記静磁界は、前記加熱される部分を挟んで互いに反対側に配置されたN極及びS極を備えている棒状の永久磁石より形成され、
    前記永久磁石のN極及びS極は互いに平行に且つ前記磁気記録媒体の径方向の直線と平行に配置されており、かつ、一対の互いに平行なN極およびS極は前記マスクの前記磁気記録媒体に対向しない側、及びもう一対の互いに平行なN極およびS極は前記磁気記録媒体の前記マスクに対向しない側に前記磁気記録媒体の磁性層を挟んで対称に配置されており、
    さらに、前記永久磁石の先端は、その先端同士の間に前記回転軸の一部が入り込むように前記磁気記録媒体の中心直近まで延在しており、かつ、前記永久磁石の後端を前記磁気記録媒体の外周から長く延出させており、
    前記N極及びS極の磁気記録媒体の中心側の先端部の前記磁気記録媒体に対向する側に、凸部又は強磁性体片が設けられており、
    エネルギー線照射領域での静磁界の磁界強度分布率が10%以内であり、
    前記動磁界は、前記永久磁石に沿って延在させたコイルから発生するパルス磁界よりなる
    ことを特徴とする磁化パターン形成方法。
  2. 請求項1において、
    前記回転軸の直径をsとし、磁気記録媒体の中心の前記開口の半径をri、外周の半径をr0とし、前記永久磁石のN極とS極の長さをdとし、N極とS極との間隔をwとしたときに、
    1.5(r0−ri)<d
    s<w
    の関係を満たすことを特徴とする磁化パターン形成方法。
  3. 中心に開口を有したディスク状の磁気記録媒体を前記中心回りに回転させる回転軸と、
    前記磁気記録媒体にエネルギー線の濃淡を生じさせるマスクを介してエネルギー線を照射するエネルギー線照射装置と、
    前記磁気記録媒体に磁化パターン形成用の静磁界と動磁界を印加するための磁界発生装置と、を有し、該静磁界が永久磁石に形成される磁化パターン形成装置において、
    前記静磁界は、前記加熱される部分を挟んで互いに反対側に配置されたN極及びS極を備えている棒状の永久磁石より形成され、前記永久磁石のN極及びS極は互いに平行に且つ前記磁気記録媒体の径方向の直線と平行に配置されており、
    さらに、前記永久磁石の先端は、その先端同士の間に前記回転軸の一部が入り込むように前記磁気記録媒体の中心直近まで延在しており、かつ、前記永久磁石の後端を前記磁気記録媒体の外周から長く延出させており、かつ、一対の互いに平行なN極およびS極は前記マスクの前記磁気記録媒体に対向しない側、及びもう一対の互いに平行なN極およびS極は前記磁気記録媒体の前記マスクに対向しない側に前記磁気記録媒体の磁性層を挟んで 対称に配置されており、
    前記N極及びS極の磁気記録媒体の中心側の先端部の前記磁気記録媒体に対向する側に、凸部又は強磁性体片が設けられており
    エネルギー線照射領域での静磁界の磁界強度分布率が10%以内であり、
    前記動磁界は、前記永久磁石に沿って延在させたコイルから発生するパルス磁界よりなる
    ことを特徴とする磁化パターン形成装置。
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