JP3906942B2 - ディーゼル内燃機関用の高圧燃料噴射管 - Google Patents

ディーゼル内燃機関用の高圧燃料噴射管 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジン内燃機関の燃料供給路に使用する燃料噴射管に係り、より詳しくは管径約6.0mmないし15.0mm、肉厚約2.2mmないし5.5mm程度の比較的細径厚肉の高圧燃料噴射管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にディーゼルエンジン用燃料噴射管には、引張強さ340N/mm級〜410N/mm級の鋼管が使用されてきたが、ディーゼルエンジンの排ガス規制による浄化技術の開発に伴い、燃料を高圧、微粒化噴射することによってエンジンシリンダー内の燃料をより完全燃焼に近づけ排ガスを清浄化する手法がとられるようになったことから、燃料噴射管には従来の最高1200barからそれ以上の高内圧が負荷されるようになり、高い内圧疲労強度が要求されるようになり、その対応策として、引張強さ490N/mm級〜800N/mm級の高張力鋼管が使用される傾向にある。このような高張力鋼管は、一般に引抜加工によって製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、引抜加工により製造される高張力鋼管は、インゴットから熱間で製管する際、およびその太径管から引抜加工(伸管)にて必要寸法に加工する際に、内面に深さ100μm程度の微細なしわ疵等が発生することがある。このしわ疵は、管加工時に管の外側よりダイスにより縮径し内側よりプラグにて圧延するときに発生する、外側と内側との材料の流れの差に起因することが知られている。すなわち、このような現象は、張力と伸び(延性、加工性)がほぼ逆比例することにより起こる伸びの不足によるものであり、厚肉管においては顕著に発生する。また、プラグにより圧延される内側の皺も延性が少ないためにしわ疵となって残る。特に、管内面に深さ100μm程度の微細なしわ疵が存在すると、管内に1200barを超える高内圧が繰返してかかったときに当該しわ疵部分に生じる応力集中により疲労破壊が起こり管破裂の危険性があった。
【0004】
また、高張力鋼管の引抜加工は、1回当りの引抜リダクションをあまりかけられないため、必要管寸法を得るためには多数回の引抜加工が必要となり、生産性が低い上、伸管機、スェージングマシン、矯正機等の増設による設備費の増大を余儀なくされ、燃料噴射管の製造コストが高くつくという問題があった。
【0005】
例えば、引張強さ800N/mm級の高張力鋼管の場合、現行の設備では1回の引抜加工にかけられる断面積リダクションは約30%程度が限界である。このため、一般的なシームレス管の母管サイズφ34mmの場合、従来の引張強さ340N/mm級〜410N/mm級では4回の引抜回数(伸管回数)で噴射管サイズに仕上げることができたのに対し、引張強さ800N/mm級の高張力鋼管の場合は8回の引抜回数を必要とする。
【0006】
また、引張強さ800N/mm級の高張力鋼管の場合は、工程増を余儀なくされるばかりでなく、ダイス等の工具の焼付き、スェージングマシンにかかる負担、伸管機の同時引抜本数の減少等、高強度材の引抜加工に関わる種々の制限を克服しなければならないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、従来の単層管の燃料噴射管に替え、内管と外管とからなる二重構造の合せ管を用いることにより、1200bar以上の高内圧に耐え得る高張力鋼製の燃料噴射管を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明に係るディーゼルエンジン内燃機関用燃料噴射管は、内管と外管とからなる厚肉で細径の二重管構造の高圧燃料噴射管において、
(1)前記内管をステンレス鋼又はMn鋼等の高張力鋼板を素材として製造した電縫鋼管であって、前記電縫鋼管の溶接部及び熱影響部の内面のしわ疵深さが最大で25μm以下の肉厚0.4〜1.5mmの電縫鋼管で構成し
(2)前記外管を、前記内管と同材質または炭素鋼を素材とした肉厚1.8〜4.0mmの厚肉の鋼管で構成したこと
を特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、燃料噴射管に二重管を用いたのは、比較的細径厚肉の高圧燃料噴射管を少ない引抜加工数で得ることができるようにすることと、厚肉管において内面に顕著に発生する微細なしわ疵を防止するためである。
【0010】
二重管の内管として、ステンレス鋼またはMn鋼等の高張力鋼板を素材とする肉厚0.4〜1.5mmの電縫鋼管を用いることとしたのは、以下に示す理由による。
すなわち、電縫鋼管の場合は、しわ疵のない表面性状が良好な冷延鋼板(高張力鋼)を素材とすることができるので、インゴットからシームレスパイプを製管するときのしわ疵発生要因(加工度が大きいこと)を避け、平滑な内面を有する管を製造することができること、また、この電縫鋼管の場合は、内管の肉厚を0.4〜1.5mmと薄くすることができるので、伸管加工において肉厚の内側と外側の加工度の差が小さく、これにより発生するしわ疵を深さ25μm以下に抑えることができる。外径φ6.4mm、内径φ1.8mmの電縫鋼管の内面しわ疵深さが25μm以下の場合は、管内に1700bar程度の高内圧が負荷されても高い内圧疲労強度を有することが本発明者らの研究により判明している。したがって、ステンレス鋼またはMn鋼等からなる引張強さ490N/mm級〜800N/mm級の高張力鋼を素材とする電縫鋼管を内管に用いた場合は、1800bar程度の大きな管内圧がかかっても管内表面の最大応力に耐えることができ、管破裂の危険性がほとんどなくなる。この場合に電縫鋼管で最もしわ疵の発生の恐れが多い溶接部および熱影響部のしわ疵の深さを25μm以下にすることは当然である。なお、内管の肉厚が0.4mm未満の場合は、管を真直にするための矯正の時、外管の影響が管内表面に伝わり、内表面に矯正マークが発生する。他方、1.5mmを超える肉厚では内管が芯金と同様の作用をして内管と外管の間に隙間を生じる。
【0011】
一方、外管は内管ほど大きな内圧疲労強度は要求されないため、軟鋼のシームレス管を使用することも可能であるが、使用するシームレス管としては要求される内圧疲労強度に応じてステンレス鋼やMn鋼等からなる490N/mm級〜800N/mm級の高張力鋼管を使用すると高寿命が得られる。
【0012】
次に本発明を添付図面について説明すると、図1は本発明に係る厚肉で細径の内径を有する二重金属管の一例を示す一部切欠拡大側面図、図2は図1のAーA線上の縦断正面図であり、1は外管、2は内管、3は流通路である。
【0013】
すなわち、本発明に係る二重金属管は、外径15mm程度以下の比較的厚肉で細径の内径を有する、例えば炭素鋼製、ステンレス鋼製の外管1と、外管1の内側に位置するよう圧嵌されて流通路3を形成する、例えばステンレス鋼製の電縫鋼管からなる0.4〜1.5mmの薄い肉厚の内管2とで構成される。
【0014】
電縫鋼管からなる内管2は、しわ疵のない表面性状が良好な冷延鋼板(高張力鋼)を材料として製管するので、インゴットからシームレスパイプを製管するときのしわ疵発生要因のない、平滑な内面を有する。この内管の肉厚は0.4〜1.5mmと薄いため、伸管加工によりしわ疵が発生することはほとんどない。
【0015】
【実施例】
実施例1
表1に示す成分(軟鋼)を有し、寸法が外径6.4mm、肉厚1.8mm、内径2.8mmの外管と、同じく表1に示す成分(高張力鋼)を有し、引張強さ800N/mm級、寸法が外径2.8mm、肉厚0.5mm、内径1.8mm、内面の疵深さ25μm以下の電縫鋼管製の内管とからなる燃料噴射管の耐久試験結果を図3に示す。この耐久試験結果は、実験用の燃料噴射ポンプに供試用の燃料噴射管を接続し、該噴射管の先端にノズルホルダを接続し、燃料に軽油を用いて各燃料噴射管に対し一千万回の噴射試験を行った結果である。
【0016】
【表1】
Figure 0003906942
(質量%)
【0017】
実施例2
実施例1と同様な材質からなり、外径6.4mm、肉厚1.9mm、内径2.6mmの外管と、寸法が外径2.6mm、肉厚0.4mm、内径1.8mmであり、内面の疵深さ25μm以下でSUS304の電縫鋼管製の内管とからなる燃料噴射管の耐久試験結果を図3に併せて示す。なお、試験方法は実施例1と同様である。
【0018】
また図3には、比較のため、STS35に相当する、実施例1と同じ外径と肉厚を有する外管と、外径、肉厚、内径が実施例1と同じ寸法で、内面疵深さが35μm以下のSUS304からなるシームレスパイプの内管(引張強さ800N/mm級)を用いた燃料噴射管と、上記と同じ外径と肉厚を有する高張力鋼製の一重管の燃料噴射管(引張強さ490N/mm級)について、同様の耐久試験を行った結果を併せて示す。
【0019】
図3に示す結果より、高張力鋼製の一重管の燃料噴射管の場合、内面しわ疵深さが25μm以下のものは、ノズル側ピーク圧力が1600〜1700barの範囲で破壊しなかったのに対し、内面しわ疵深さが40μmを越えるものが上記ノズル側ピーク圧力の付近でしわ疵部分に生じる応力集中により疲労破壊が起こり管破裂(バースト)が発生した。次に、二重管の噴射管の場合も、内面しわ疵深さが25μm以下では最大1800barの内圧に耐えられることから、上記一重管の燃料噴射管と同等または優れているが、内面しわ疵深さが30μm以上になると1700bar付近で疲労破壊が起こり管破裂が発生した。
【0020】
これに対し、内管に電縫鋼管を用いた本発明の実施例1おようび2に係る燃料噴射管の場合は、管内に1700bar程度の高内圧が一千万回繰返してかかっても疲労破壊は起こらず管破裂の危険性は皆無であった。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明に係るディーゼルエンジン用燃料噴射管は、引張強さ490N/mm級〜800N/mm級の高張力鋼板を用い内面しわ疵25μm以下で製造された内管を用いたことにより、内面しわ疵による応力集中が小さくなり通常設計される細径管において疲労破壊を生じることなく使用できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る厚肉で細径の内径を有する二重金属管の一例を示す一部切欠拡大側面図である。
【図2】図1のAーA線上の縦断正面図である。
【図3】燃料噴射管の耐久試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 外管
2 内管
3 流通路

Claims (1)

  1. 内管と外管とからなる厚肉で細径の二重管構造の高圧燃料噴射管において、
    (1).前記内管をステンレス鋼又はMn鋼等の高張力鋼板を素材として製造した電縫鋼管であって、前記電縫鋼管の溶接部及び熱影響部の内面のしわ疵深さが最大で25μm以下の肉厚0.4〜1.5mmの電縫鋼管で構成し
    (2)前記外管を、前記内管と同材質または炭素鋼を素材とした肉厚1.8〜4.0mmの厚肉の鋼管で構成したこと
    を特徴とするディーゼル内燃機関用の高圧燃料噴射管。
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