JP2004238673A - 疲労強度に優れた鋼管部材及びその加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】疲労強度に優れたブラケット機能を有する鋼管部材を提供することを目的とする。
【解決手段】側面に開口部およびピン孔を少なくとも一つ有し、開口部の一部または全部が鋼管の側壁面における膨出部に位置し、長手方向のr値の平均が1.5以上及び/又はn値の平均が0.15以上の鋼管から成り、前記鋼管が体積率で50%以上のフェライトを含み、平均結晶粒径が10μm以上であることを特徴とする疲労強度に優れた鋼管部材。
【選択図】 図1
【解決手段】側面に開口部およびピン孔を少なくとも一つ有し、開口部の一部または全部が鋼管の側壁面における膨出部に位置し、長手方向のr値の平均が1.5以上及び/又はn値の平均が0.15以上の鋼管から成り、前記鋼管が体積率で50%以上のフェライトを含み、平均結晶粒径が10μm以上であることを特徴とする疲労強度に優れた鋼管部材。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車、船舶、橋梁、建設機械、建築構造物、海洋構造物、貯槽、各種プラント、ペンストック等で用いられる構造部材でブラケットを有する鋼管部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車、建設機械、建築構造物等の鋼構造物では、図13に示すように構造部材10同士は連結部材5によりつながっていることが多く、構造部材10は構造部材10に取り付けられたブラケット11とピン6を介して連結部材5に連結され、ブラケット11はその構成要素であるフランジ12が溶接により構造部材10と接合される。したがって構造部材10に発生した荷重は、構造部材10から溶接部13、ブラケット11、ピン6、連結部材5の順に伝達されるが、このうちブラケット11と構造部材10の溶接部13、特に溶接止端は応力集中が大きく、疲労き裂14の発生起点となる。このため、構造部材10へのブラケット11の取り付け溶接部13についていくつかの技術が提案されている。
例えば、特許文献1では自動車の液圧緩衝器におけるブラケット取り付け部の溶接を、円筒状把持部上方のみを溶接して疲労強度を向上させた構造が開示されている。
また、特許文献2では同じく自動車のアクセルハウジングとフレームを連結するトルクロッドのブラケットを対象として、フランジの両端部を中間部より突出させて、突出した両端部に挟まれた部分を溶接することにより始終端の応力集中を低減する取り付け構造が開示されている。
またさらに特許文献3では、同じく自動車の緩衝器を二重管にした上で外側の管にブラケットを溶接する構造が、特許文献4ではストラット保持部とブラケットを1体化した構造がそれぞれ提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−190380号公報
【特許文献2】
実開平2−107503号公報
【特許文献3】
特開平03−292428号公報
【特許文献4】
特開平08−58330号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術のうち、まず特許文献1では、液圧緩衝器に取り付けるブラケット部材を、上方のみ溶接し、下方は溶接せずに圧入状態で外周面に巻きつけるように取り付けることにより、疲労破壊の防止を図った構造が開示されているが、構造部材へ開口部およびピン孔を加工した本発明の構造とは異なる構造である。
次に特許文献2では同じく自動車のアクセルハウジングとフレームを連結するトルクロッドのブラケットを対象として、ブラケット形状の改善および溶接位置の変更により溶接始終端の応力集中を低減する取り付け構造が開示されているが、溶接によりブラケットを取り付ける方法に変わりは無く、本発明のように開口部およびピン孔を施すことでブラケットの機能を持たせた鋼管とは異なる発明である。
図13に示したように構造部材10と連結部材5はブラケット11の構成要素であるフランジ12の端部により溶接されており、ブラケット11と連結部材5の結合はピン6による場合が多く、ブラケット11にはピンを通す孔3が設けられていることが多い。このピン6を介してブラケット11に荷重が伝わり、構造部材10とブラケット11の溶接部13を通じてさらに構造部材に荷重が伝わる。ブラケット11と構造部材10の溶接部13は通常始終端を含む溶接であることが多く、構造的に始終端に応力が集中するだけでなく、始終端の溶接止端形状に依存した応力集中が重畳して疲労き裂14が発生する。これら始終端の応力集中を低減するには、まず始終端局部の応力集中を低減させる方法として、特許文献2に記載しているような始終端の向きを変えるなどの構造が考えられるが、溶接ままでは始終端の止端形状は大きく変わらず、応力集中の低減はわずかである。
【0005】
また同じく自動車の緩衝器を対象に、特許文献3では二重管かつ外側の管にブラケットを溶接する構造が、特許文献4ではストラット保持部とブラケットを1体化した構造がそれぞれ提案されているが、いずれも部材である緩衝器とは別にブラケットが溶接された外管もしくはブラケット機能を有する保持部が存在し、開口部とピン孔のみにより部材にブラケット機能を持たせた本発明とは異なる発明である。
疲労強度に優れたブラケット機能を有する鋼管部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の要旨とするところは、
(1)側壁面に開口部および対向する1対以上のピン孔を少なくとも一組有することを特徴とする疲労強度に優れた鋼管部材、
(2)開口部の一部または全部が鋼管の側壁面における膨出部に位置することを特徴とする上記(1)記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(3)長手方向のr値の平均が1.5以上及び/又はn値の平均が0.15以上の鋼管から成ることを特徴とする上記(1)または(2)記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(4)体積率で50%以上のフェライトを含み、平均結晶粒径が10μm以上の鋼管から成ることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(5)質量%で、
C:0.0005〜0.5%、Si:0.001〜2.0%、Mn:0.01〜3.0%、P:0.2%以下、N:0.03%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼管を用いることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(6)質量%で、さらに、
Ti:0.001〜0.5%、B:0.0001〜0.01%、
Ni:0.001〜1.5%、Cu:0.001〜1.5%、
Cr:0.001〜1.5%、 Mo:0.001〜1.5%、
Nb:0.001〜0.5%、V:0.001〜0.5%、
Co:0.001〜1.5%、W:0.001〜1.5%、
Al:0.0001〜1.5%、
の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼管を用いることを特徴とする上記(5)記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(7)液体及び/又は気体を用いて、開口部の一部または全部が膨出部に位置するように加工し、同時またはその後に開口部およびピン孔を加工することを特徴とする(1)〜(6)の何れか1項に記載の鋼管部材の加工方法、
(8)開口部およびピン孔の加工前に鋼管に予加工を施すことを特徴とする(7)記載の鋼管部材の加工方法、
にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の鋼管部材が疲労特性に優れているのは以下の理由による。
本発明者らは、図13に示すようなブラケットと構造部材の接合部での応力集中を低減する構造を検討した結果、本発明では図1に示すように鋼管の側壁面に開口部2および対向する1対以上のピン孔3を少なくとも1組設けてブラケット機能を付与した鋼管1を構造部材に用いることにより、追加のブラケット部材が不要となるため、図2のようにピン6によって連結部材5を連結した場合、ピン孔3から構造部材1までの形状が滑らかになり、かつ溶接が無くなることにより、構造的および局部的応力集中が低減され、疲労強度に優れた構造となることを見出した。
また、図3〜図5に示すように開口部2を形成する鋼管1の側壁の一部または全部を鋼管の側壁面よりも外側に張り出させて、膨出部4を有する形状にし、この膨出部4の一部に対向する1対以上のピン孔3を形成して、ブラケットのフランジの機能を持たせることにより、さらに高い疲労強度を得ることが出来、部品省略・軽量化が図れることが判明した。
【0008】
次に、本発明の部材に用いる鋼管部材の特性について説明する。
まず、図3〜図5に示すように鋼管1の側壁の開口部2にブラケットの機能を持たせる場合、鋼管1の側壁の一部または全部を鋼管側面よりも外側に膨出させる必要があるが、そのような加工が施される鋼管の機械的特性については、長手方向のr値が影響を及ぼすことが、技術文献1に示されている。本発明者は、このr値ならびに他の特性値に注目して検討した結果、長手方向のr値は平均値で1.5以上、及び/又は加工硬化指数n値が平均で0.15以上の鋼管であれば、ブラケットのフランジとして使えるほど十分な張り出し変形がえられることが判明した。r値およびn値の上限は特に規定するものではないが、r値を大きくしようとすると、集合組織の発達が避けられず、諸特性の異方性が顕著になって実用に耐えられなくなることから、3.0を上限の目安とする。測定方法は、薄板金属材料のJISZ2254塑性ひずみ比試験方法による。またn値については、n値が大きすぎると降伏応力を下げなければならず、静的強度が不足することになるので上限の目安を0.3とする。
【0009】
このn値はJIS11号管状試験片またはJIS12号弧状試験片による引張試験によって測定されたデータをもとに、JISZ2253薄板金属材料の加工硬化指数試験法のうち、2点法によって評価する。2点のひずみは、5%および15%のひずみで評価するが、均一伸びが15%未満の場合には5%および10%のひずみで、また均一伸びが10%未満の場合には3%および5%のひずみで評価する。
【0010】
次に、組織に関する限定理由について述べる。本発明の鋼管部材を形成する鋼管の組織は、体積率で50%以上のフェライト相から成る。50%未満では開口部の一部もしくは全部を鋼管側面よりも外側に膨出させるほど大きく変形させることが困難であるためである。さらに75%以上が好ましい。フェライト相の体積率は100%でも本発明の鋼管部材を形成することができる。特に鋼管部材の強度を高める必要がある場合には、第二相を適度に分散させることが好ましい。
フェライト相以外の第二相は、パーライト、セメンタイト、オーステナイト、ベイナイト、マルテンサイト、アシキュラーフェライト、炭窒化物、金属間化合物のうち、1種または2種以上からなるものである。
なお、組織の体積率の測定方法は、第3版鉄鋼便覧、IV鉄鋼材料、試験分析(日本鉄鋼協会編)p.385〜386に記載の点分析もしくは線分析を用いる。またフェライトの平均粒径はJIS G0552鋼のフェライト結晶粒度試験方法の付属書2に記載の方法を用いる。
また鋼管部材を形成する鋼管のフェライトの平均結晶粒径は10μm以上とすることが好ましい。10μm未満では同じく、開口部の一部もしくは全部を鋼管側面よりも外側に膨出させるほど大きく変形させることが困難であるためである。さらに好ましくは30μm以上とする。フェライトの平均粒径の上限は特に定めないが、極端に大きすぎるとむしろ大変形に追従できるほどの延性を損なうため、200μm以下とすることが好ましい。
【0011】
次に鋼管部材を形成する鋼管の元素規定理由について述べる。
Cは高強度化に有効な元素であり、構造材料として必要な強度を得るためには0.0005%以上の添加が必要であるが、過度に添加すると変形能が劣化するため上限を0.5%とする。さらに0.001〜0.15%が好ましい。
Siは安価に機械的強度を高めるのに有効な元素であるが、過度の添加は変形能を劣化させるので2.0%を上限とする。また下限を0.001%としたのは製鋼技術上、これ未満とすることが困難なためである。0.3〜1.5%が好ましい。
Mnは高強度化に有効な元素であり、構造材料として必要な強度を得るためには0.01%以上の添加が必要であるが、過度に添加すると変形能が劣化するため上限を3.0%とする。0.05〜0.5%がより好ましい範囲である。またSに起因する熱間割れを防止する目的から、Mn/S≧15となるように添加することが好ましい。
【0012】
Pは0.2%を超えると熱間圧延時に欠陥が発生したり変形能が低下したりするので0.2%を上限とする。また下限は特に定めないが、0.005%未満にするには製鋼コストが高くなるので下限を0.005%とすることが好ましい。
Nは高強度化に有効な元素であるが、変形能の低下を防ぐには上限を0.03%とする。下限は特に定めないが強度確保の観点から0.0001%以上は添加することが好ましい。
【0013】
Ti、Nb,Vはそれぞれ0.001%の添加で炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成して高強度化に寄与するが、それぞれ0.5%を超えるとこれらの化合物が多量にフェライト粒内および粒界に析出して変形能を低下させるため、0.5%を上限とする。
Cr、Mo,W,Coは強化元素であり、必要に応じてそれぞれ0.001%以上添加する。しかし過剰の添加は変形能を低下させるので、それぞれの上限を1.5%とする。
【0014】
Bは粒界の強化に有効な元素であり、その効果を発揮するには0.0001%以上の添加が必要であるが、添加量が0.01%を超えるとその効果が飽和するばかりか変形能を低下させるので0.01%を上限とする。
【0015】
NiおよびCuは強化元素であり、必要に応じてそれぞれ0.001%以上添加する。しかし過剰の添加は変形能を低下させるので、それぞれの上限を1.5%とする。
【0016】
Alは変形能の向上に寄与する元素であり、その効果を発揮するには0.0001%以上の添加が必要であるが、過剰添加は多量の酸化物、硫化物、窒化物等を晶出、析出させて変形能を低下させるので1.5%を上限とする。
また、本発明の鋼管部材を構成する鋼管は、不可避的不純物元素として、O、Sn、S、Zn、Pbなどそれぞれ0.01%以下の範囲で含んでも本発明の効果を失するものではない。
【0017】
次に、本発明の鋼管部材の加工方法について述べる。
従来ではブラケットを構造部材に接合するためには通常、予めピン孔の開いたブラケットを溶接や機械接合により接合していたが、接合部は構造の急変部となるため、応力が集中し疲労破壊しやすくなる。
本発明ではまず図6に示すように鋼管の一部が外側に変形できるように加工した金型7の中に鋼管1を挿入し、次に図7に示すように液体及び/又は気体8を鋼管の内側に圧入して内圧を高め、塑性変形により鋼管の一部を外側に変形させる。次に図8に示すように外側に変形した部分の一部を切り取ることにより開口部2を作成し、また図9に示すように外側に変形した部分に1つ以上のピン孔3を加工することにより、リンク部材との接続が可能なブラケットとして機能することができる。
【0018】
本発明の加工方法のように液体及び/又は気体を用いると、ブラケット機能を有する膨出部4から鋼管1までの形状が滑らかで連続的であり、溶接や機械接合部などの不連続形状部が無いため、疲労強度に優れたブラケット付き鋼管を得ることが出来る。
また本発明の方法は内圧を作用させる方法を用いているため、図10に示すように同一鋼管に複数の膨出部を一度に加工することも可能であり、類似部品を同時に複数個製作することができる。
【0019】
またさらにピン孔3の加工は鋼管の塑性変形後にドリル加工などで加工するのみならず、図11に示すように塑性変形途中に内圧を利用して外側からポンチ9を押し出すことによりピン孔3を加工することもでき、さらに効率的に加工できる。
また、鋼管部材は直管のみならず、図12に示すように曲げ加工、内圧加工など事前に必要な加工をしたのち上述の加工方法を用いることにより、ブラケットの機能を有する最終形状の鋼管部材を効率的に加工することが可能となる。
加工に用いる液体及び/又は気体については特に限定するものではなく、水、油、水に油を混ぜたもの、空気などの1種以上の組合せ等で差し支え無い。
なお、鋼管素管の断面形状は特に限定するものではなく、円形だけでなく楕円形でも多角形でも差し支え無い。また造管用の鋼板についても特に限定するものではなく、熱延板、冷延板又は冷延焼鈍板を用いることができる。
またさらに造管の溶接方法についても特に限定するものではなく、電縫溶接、TIG,MIGなどのアーク溶接、レーザー溶接、シーム溶接、鍛接等の各種接合方法によって製造されたものでも、シームレス鋼管であっても差し支え無い。
【0020】
【技術文献1】
第50回塑性加工連合講演大会(1999、447ページ)
【0021】
【実施例】
実施例として、表1に示す成分の鋼板から通常の電縫管工程またはレーザー溶接工程を経て造管したのち、800〜1050℃に加熱して外径100mmに縮径加工を行い、鋼管を製造し、さらに内圧負荷により外径を変えずに角形の鋼管に加工した。この鋼管を構造部材として、開口部およびピン孔を加工した部材(図14)、水を用いて水圧により膨出部を加工してその部分に開口部およびピン孔を加工した部材(図15および16)を製作して、ピン孔からピンを介して取り付けた連結部材に引張荷重を載荷することにより疲労試験を行った。また比較例として、2.2mm厚の軟鋼板を折り曲げて製作したブラケットを2箇所の炭酸ガスアーク溶接により構造部材に取り付けた部材(図17)も製作して疲労試験を行った。
【0022】
疲労試験条件は応力比(=最小荷重/最大荷重)を−1とする荷重制御疲労試験であり、目視で1mm以上の長さの疲労き裂が確認できる寿命が200万回となる荷重で評価した。
また、膨出部を加工する図15および図16のタイプの部材に用いる鋼管については、種々の押し込み量および内圧にてバーストもしくは座屈するまで拡管加工を行い、最大拡管率を求めて成形性を評価した。
連結部材は、同じく内径20mmのピン孔を有する外径50mmの鋼製円筒部および円筒部にねじで接合された直径10mmのロッドからなり、円筒部のピン孔の位置とブラケットのピン孔の位置を合わせたのち直径19.5mmの鋼製ピンを差し込み連結部材とブラケットに取り付けた。
【0023】
疲労試験結果を同じく表1に示す。本発明の部材No.1〜19は比較例No.20〜22に比べて全て2倍以上の疲労荷重を示した。またn値が0.15未満かつr値が1.5未満となるNo.18、19はフェライト粒も小さく拡管率も小さい。ただし、本実施例では図16のタイプのブラケット形成に支障は無く、比較例よりも高い疲労荷重を示した。
【表1】
【表1(続き)】
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は鋼管に開口部およびピン孔を加工してブラケットの機能を付与して疲労強度を向上させているため、鋼構造物の種類によらずブラケットを含む構造部材と連結部材の結合部の疲労強度を安定して向上させることが可能であり、その工業的意味は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼管部材の一例を示す図である。
【図2】本発明の鋼管部材の一例と連結部材との結合状況を示す図である。
【図3】本発明の鋼管部材の別の例を示す図である。
【図4】本発明の鋼管部材の別の例を示す図である。
【図5】本発明の鋼管部材の別の例を示す図である。
【図6】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、鋼管を金型に入れた状況を示す図である。
【図7】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、鋼管に内圧を作用させて変形させている状況を示す図である。
【図8】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、鋼管に開口部を加工した状態を示す図である。
【図9】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、鋼管にピン孔を加工した状態を示す図である。
【図10】本発明の鋼管部材加工方法を適用して複数の膨出部を加工した鋼管の図である。
【図11】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、内圧を作用させた状態でのピン孔加工を示す図である。
【図12】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、予加工を施した鋼管に膨出部を設けて、開口部およびピン孔を加工する工程の図である。
【図13】従来の構造部材とブラケット、連結部材の関係を表す図である。
【図14】実施例における本発明の鋼管部材の疲労試験状況を示す図である。
【図15】別の実施例における本発明の鋼管部材の疲労試験状況を示す図である。
【図16】別の実施例における本発明の鋼管部材の疲労試験状況を示す図である。
【図17】比較例の疲労試験状況を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼管
2 開口部
3 ピン孔
4 膨出部
5 連結部材
6 ピン
7 金型
8 液体及び/又は気体
9 ポンチ
10 構造部材
11 ブラケット
12 フランジ
13 溶接部
14 疲労き裂
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車、船舶、橋梁、建設機械、建築構造物、海洋構造物、貯槽、各種プラント、ペンストック等で用いられる構造部材でブラケットを有する鋼管部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車、建設機械、建築構造物等の鋼構造物では、図13に示すように構造部材10同士は連結部材5によりつながっていることが多く、構造部材10は構造部材10に取り付けられたブラケット11とピン6を介して連結部材5に連結され、ブラケット11はその構成要素であるフランジ12が溶接により構造部材10と接合される。したがって構造部材10に発生した荷重は、構造部材10から溶接部13、ブラケット11、ピン6、連結部材5の順に伝達されるが、このうちブラケット11と構造部材10の溶接部13、特に溶接止端は応力集中が大きく、疲労き裂14の発生起点となる。このため、構造部材10へのブラケット11の取り付け溶接部13についていくつかの技術が提案されている。
例えば、特許文献1では自動車の液圧緩衝器におけるブラケット取り付け部の溶接を、円筒状把持部上方のみを溶接して疲労強度を向上させた構造が開示されている。
また、特許文献2では同じく自動車のアクセルハウジングとフレームを連結するトルクロッドのブラケットを対象として、フランジの両端部を中間部より突出させて、突出した両端部に挟まれた部分を溶接することにより始終端の応力集中を低減する取り付け構造が開示されている。
またさらに特許文献3では、同じく自動車の緩衝器を二重管にした上で外側の管にブラケットを溶接する構造が、特許文献4ではストラット保持部とブラケットを1体化した構造がそれぞれ提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−190380号公報
【特許文献2】
実開平2−107503号公報
【特許文献3】
特開平03−292428号公報
【特許文献4】
特開平08−58330号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術のうち、まず特許文献1では、液圧緩衝器に取り付けるブラケット部材を、上方のみ溶接し、下方は溶接せずに圧入状態で外周面に巻きつけるように取り付けることにより、疲労破壊の防止を図った構造が開示されているが、構造部材へ開口部およびピン孔を加工した本発明の構造とは異なる構造である。
次に特許文献2では同じく自動車のアクセルハウジングとフレームを連結するトルクロッドのブラケットを対象として、ブラケット形状の改善および溶接位置の変更により溶接始終端の応力集中を低減する取り付け構造が開示されているが、溶接によりブラケットを取り付ける方法に変わりは無く、本発明のように開口部およびピン孔を施すことでブラケットの機能を持たせた鋼管とは異なる発明である。
図13に示したように構造部材10と連結部材5はブラケット11の構成要素であるフランジ12の端部により溶接されており、ブラケット11と連結部材5の結合はピン6による場合が多く、ブラケット11にはピンを通す孔3が設けられていることが多い。このピン6を介してブラケット11に荷重が伝わり、構造部材10とブラケット11の溶接部13を通じてさらに構造部材に荷重が伝わる。ブラケット11と構造部材10の溶接部13は通常始終端を含む溶接であることが多く、構造的に始終端に応力が集中するだけでなく、始終端の溶接止端形状に依存した応力集中が重畳して疲労き裂14が発生する。これら始終端の応力集中を低減するには、まず始終端局部の応力集中を低減させる方法として、特許文献2に記載しているような始終端の向きを変えるなどの構造が考えられるが、溶接ままでは始終端の止端形状は大きく変わらず、応力集中の低減はわずかである。
【0005】
また同じく自動車の緩衝器を対象に、特許文献3では二重管かつ外側の管にブラケットを溶接する構造が、特許文献4ではストラット保持部とブラケットを1体化した構造がそれぞれ提案されているが、いずれも部材である緩衝器とは別にブラケットが溶接された外管もしくはブラケット機能を有する保持部が存在し、開口部とピン孔のみにより部材にブラケット機能を持たせた本発明とは異なる発明である。
疲労強度に優れたブラケット機能を有する鋼管部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の要旨とするところは、
(1)側壁面に開口部および対向する1対以上のピン孔を少なくとも一組有することを特徴とする疲労強度に優れた鋼管部材、
(2)開口部の一部または全部が鋼管の側壁面における膨出部に位置することを特徴とする上記(1)記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(3)長手方向のr値の平均が1.5以上及び/又はn値の平均が0.15以上の鋼管から成ることを特徴とする上記(1)または(2)記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(4)体積率で50%以上のフェライトを含み、平均結晶粒径が10μm以上の鋼管から成ることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(5)質量%で、
C:0.0005〜0.5%、Si:0.001〜2.0%、Mn:0.01〜3.0%、P:0.2%以下、N:0.03%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼管を用いることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(6)質量%で、さらに、
Ti:0.001〜0.5%、B:0.0001〜0.01%、
Ni:0.001〜1.5%、Cu:0.001〜1.5%、
Cr:0.001〜1.5%、 Mo:0.001〜1.5%、
Nb:0.001〜0.5%、V:0.001〜0.5%、
Co:0.001〜1.5%、W:0.001〜1.5%、
Al:0.0001〜1.5%、
の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼管を用いることを特徴とする上記(5)記載の疲労強度に優れた鋼管部材、
(7)液体及び/又は気体を用いて、開口部の一部または全部が膨出部に位置するように加工し、同時またはその後に開口部およびピン孔を加工することを特徴とする(1)〜(6)の何れか1項に記載の鋼管部材の加工方法、
(8)開口部およびピン孔の加工前に鋼管に予加工を施すことを特徴とする(7)記載の鋼管部材の加工方法、
にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の鋼管部材が疲労特性に優れているのは以下の理由による。
本発明者らは、図13に示すようなブラケットと構造部材の接合部での応力集中を低減する構造を検討した結果、本発明では図1に示すように鋼管の側壁面に開口部2および対向する1対以上のピン孔3を少なくとも1組設けてブラケット機能を付与した鋼管1を構造部材に用いることにより、追加のブラケット部材が不要となるため、図2のようにピン6によって連結部材5を連結した場合、ピン孔3から構造部材1までの形状が滑らかになり、かつ溶接が無くなることにより、構造的および局部的応力集中が低減され、疲労強度に優れた構造となることを見出した。
また、図3〜図5に示すように開口部2を形成する鋼管1の側壁の一部または全部を鋼管の側壁面よりも外側に張り出させて、膨出部4を有する形状にし、この膨出部4の一部に対向する1対以上のピン孔3を形成して、ブラケットのフランジの機能を持たせることにより、さらに高い疲労強度を得ることが出来、部品省略・軽量化が図れることが判明した。
【0008】
次に、本発明の部材に用いる鋼管部材の特性について説明する。
まず、図3〜図5に示すように鋼管1の側壁の開口部2にブラケットの機能を持たせる場合、鋼管1の側壁の一部または全部を鋼管側面よりも外側に膨出させる必要があるが、そのような加工が施される鋼管の機械的特性については、長手方向のr値が影響を及ぼすことが、技術文献1に示されている。本発明者は、このr値ならびに他の特性値に注目して検討した結果、長手方向のr値は平均値で1.5以上、及び/又は加工硬化指数n値が平均で0.15以上の鋼管であれば、ブラケットのフランジとして使えるほど十分な張り出し変形がえられることが判明した。r値およびn値の上限は特に規定するものではないが、r値を大きくしようとすると、集合組織の発達が避けられず、諸特性の異方性が顕著になって実用に耐えられなくなることから、3.0を上限の目安とする。測定方法は、薄板金属材料のJISZ2254塑性ひずみ比試験方法による。またn値については、n値が大きすぎると降伏応力を下げなければならず、静的強度が不足することになるので上限の目安を0.3とする。
【0009】
このn値はJIS11号管状試験片またはJIS12号弧状試験片による引張試験によって測定されたデータをもとに、JISZ2253薄板金属材料の加工硬化指数試験法のうち、2点法によって評価する。2点のひずみは、5%および15%のひずみで評価するが、均一伸びが15%未満の場合には5%および10%のひずみで、また均一伸びが10%未満の場合には3%および5%のひずみで評価する。
【0010】
次に、組織に関する限定理由について述べる。本発明の鋼管部材を形成する鋼管の組織は、体積率で50%以上のフェライト相から成る。50%未満では開口部の一部もしくは全部を鋼管側面よりも外側に膨出させるほど大きく変形させることが困難であるためである。さらに75%以上が好ましい。フェライト相の体積率は100%でも本発明の鋼管部材を形成することができる。特に鋼管部材の強度を高める必要がある場合には、第二相を適度に分散させることが好ましい。
フェライト相以外の第二相は、パーライト、セメンタイト、オーステナイト、ベイナイト、マルテンサイト、アシキュラーフェライト、炭窒化物、金属間化合物のうち、1種または2種以上からなるものである。
なお、組織の体積率の測定方法は、第3版鉄鋼便覧、IV鉄鋼材料、試験分析(日本鉄鋼協会編)p.385〜386に記載の点分析もしくは線分析を用いる。またフェライトの平均粒径はJIS G0552鋼のフェライト結晶粒度試験方法の付属書2に記載の方法を用いる。
また鋼管部材を形成する鋼管のフェライトの平均結晶粒径は10μm以上とすることが好ましい。10μm未満では同じく、開口部の一部もしくは全部を鋼管側面よりも外側に膨出させるほど大きく変形させることが困難であるためである。さらに好ましくは30μm以上とする。フェライトの平均粒径の上限は特に定めないが、極端に大きすぎるとむしろ大変形に追従できるほどの延性を損なうため、200μm以下とすることが好ましい。
【0011】
次に鋼管部材を形成する鋼管の元素規定理由について述べる。
Cは高強度化に有効な元素であり、構造材料として必要な強度を得るためには0.0005%以上の添加が必要であるが、過度に添加すると変形能が劣化するため上限を0.5%とする。さらに0.001〜0.15%が好ましい。
Siは安価に機械的強度を高めるのに有効な元素であるが、過度の添加は変形能を劣化させるので2.0%を上限とする。また下限を0.001%としたのは製鋼技術上、これ未満とすることが困難なためである。0.3〜1.5%が好ましい。
Mnは高強度化に有効な元素であり、構造材料として必要な強度を得るためには0.01%以上の添加が必要であるが、過度に添加すると変形能が劣化するため上限を3.0%とする。0.05〜0.5%がより好ましい範囲である。またSに起因する熱間割れを防止する目的から、Mn/S≧15となるように添加することが好ましい。
【0012】
Pは0.2%を超えると熱間圧延時に欠陥が発生したり変形能が低下したりするので0.2%を上限とする。また下限は特に定めないが、0.005%未満にするには製鋼コストが高くなるので下限を0.005%とすることが好ましい。
Nは高強度化に有効な元素であるが、変形能の低下を防ぐには上限を0.03%とする。下限は特に定めないが強度確保の観点から0.0001%以上は添加することが好ましい。
【0013】
Ti、Nb,Vはそれぞれ0.001%の添加で炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成して高強度化に寄与するが、それぞれ0.5%を超えるとこれらの化合物が多量にフェライト粒内および粒界に析出して変形能を低下させるため、0.5%を上限とする。
Cr、Mo,W,Coは強化元素であり、必要に応じてそれぞれ0.001%以上添加する。しかし過剰の添加は変形能を低下させるので、それぞれの上限を1.5%とする。
【0014】
Bは粒界の強化に有効な元素であり、その効果を発揮するには0.0001%以上の添加が必要であるが、添加量が0.01%を超えるとその効果が飽和するばかりか変形能を低下させるので0.01%を上限とする。
【0015】
NiおよびCuは強化元素であり、必要に応じてそれぞれ0.001%以上添加する。しかし過剰の添加は変形能を低下させるので、それぞれの上限を1.5%とする。
【0016】
Alは変形能の向上に寄与する元素であり、その効果を発揮するには0.0001%以上の添加が必要であるが、過剰添加は多量の酸化物、硫化物、窒化物等を晶出、析出させて変形能を低下させるので1.5%を上限とする。
また、本発明の鋼管部材を構成する鋼管は、不可避的不純物元素として、O、Sn、S、Zn、Pbなどそれぞれ0.01%以下の範囲で含んでも本発明の効果を失するものではない。
【0017】
次に、本発明の鋼管部材の加工方法について述べる。
従来ではブラケットを構造部材に接合するためには通常、予めピン孔の開いたブラケットを溶接や機械接合により接合していたが、接合部は構造の急変部となるため、応力が集中し疲労破壊しやすくなる。
本発明ではまず図6に示すように鋼管の一部が外側に変形できるように加工した金型7の中に鋼管1を挿入し、次に図7に示すように液体及び/又は気体8を鋼管の内側に圧入して内圧を高め、塑性変形により鋼管の一部を外側に変形させる。次に図8に示すように外側に変形した部分の一部を切り取ることにより開口部2を作成し、また図9に示すように外側に変形した部分に1つ以上のピン孔3を加工することにより、リンク部材との接続が可能なブラケットとして機能することができる。
【0018】
本発明の加工方法のように液体及び/又は気体を用いると、ブラケット機能を有する膨出部4から鋼管1までの形状が滑らかで連続的であり、溶接や機械接合部などの不連続形状部が無いため、疲労強度に優れたブラケット付き鋼管を得ることが出来る。
また本発明の方法は内圧を作用させる方法を用いているため、図10に示すように同一鋼管に複数の膨出部を一度に加工することも可能であり、類似部品を同時に複数個製作することができる。
【0019】
またさらにピン孔3の加工は鋼管の塑性変形後にドリル加工などで加工するのみならず、図11に示すように塑性変形途中に内圧を利用して外側からポンチ9を押し出すことによりピン孔3を加工することもでき、さらに効率的に加工できる。
また、鋼管部材は直管のみならず、図12に示すように曲げ加工、内圧加工など事前に必要な加工をしたのち上述の加工方法を用いることにより、ブラケットの機能を有する最終形状の鋼管部材を効率的に加工することが可能となる。
加工に用いる液体及び/又は気体については特に限定するものではなく、水、油、水に油を混ぜたもの、空気などの1種以上の組合せ等で差し支え無い。
なお、鋼管素管の断面形状は特に限定するものではなく、円形だけでなく楕円形でも多角形でも差し支え無い。また造管用の鋼板についても特に限定するものではなく、熱延板、冷延板又は冷延焼鈍板を用いることができる。
またさらに造管の溶接方法についても特に限定するものではなく、電縫溶接、TIG,MIGなどのアーク溶接、レーザー溶接、シーム溶接、鍛接等の各種接合方法によって製造されたものでも、シームレス鋼管であっても差し支え無い。
【0020】
【技術文献1】
第50回塑性加工連合講演大会(1999、447ページ)
【0021】
【実施例】
実施例として、表1に示す成分の鋼板から通常の電縫管工程またはレーザー溶接工程を経て造管したのち、800〜1050℃に加熱して外径100mmに縮径加工を行い、鋼管を製造し、さらに内圧負荷により外径を変えずに角形の鋼管に加工した。この鋼管を構造部材として、開口部およびピン孔を加工した部材(図14)、水を用いて水圧により膨出部を加工してその部分に開口部およびピン孔を加工した部材(図15および16)を製作して、ピン孔からピンを介して取り付けた連結部材に引張荷重を載荷することにより疲労試験を行った。また比較例として、2.2mm厚の軟鋼板を折り曲げて製作したブラケットを2箇所の炭酸ガスアーク溶接により構造部材に取り付けた部材(図17)も製作して疲労試験を行った。
【0022】
疲労試験条件は応力比(=最小荷重/最大荷重)を−1とする荷重制御疲労試験であり、目視で1mm以上の長さの疲労き裂が確認できる寿命が200万回となる荷重で評価した。
また、膨出部を加工する図15および図16のタイプの部材に用いる鋼管については、種々の押し込み量および内圧にてバーストもしくは座屈するまで拡管加工を行い、最大拡管率を求めて成形性を評価した。
連結部材は、同じく内径20mmのピン孔を有する外径50mmの鋼製円筒部および円筒部にねじで接合された直径10mmのロッドからなり、円筒部のピン孔の位置とブラケットのピン孔の位置を合わせたのち直径19.5mmの鋼製ピンを差し込み連結部材とブラケットに取り付けた。
【0023】
疲労試験結果を同じく表1に示す。本発明の部材No.1〜19は比較例No.20〜22に比べて全て2倍以上の疲労荷重を示した。またn値が0.15未満かつr値が1.5未満となるNo.18、19はフェライト粒も小さく拡管率も小さい。ただし、本実施例では図16のタイプのブラケット形成に支障は無く、比較例よりも高い疲労荷重を示した。
【表1】
【表1(続き)】
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は鋼管に開口部およびピン孔を加工してブラケットの機能を付与して疲労強度を向上させているため、鋼構造物の種類によらずブラケットを含む構造部材と連結部材の結合部の疲労強度を安定して向上させることが可能であり、その工業的意味は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼管部材の一例を示す図である。
【図2】本発明の鋼管部材の一例と連結部材との結合状況を示す図である。
【図3】本発明の鋼管部材の別の例を示す図である。
【図4】本発明の鋼管部材の別の例を示す図である。
【図5】本発明の鋼管部材の別の例を示す図である。
【図6】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、鋼管を金型に入れた状況を示す図である。
【図7】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、鋼管に内圧を作用させて変形させている状況を示す図である。
【図8】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、鋼管に開口部を加工した状態を示す図である。
【図9】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、鋼管にピン孔を加工した状態を示す図である。
【図10】本発明の鋼管部材加工方法を適用して複数の膨出部を加工した鋼管の図である。
【図11】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、内圧を作用させた状態でのピン孔加工を示す図である。
【図12】本発明の鋼管部材加工方法の一工程である、予加工を施した鋼管に膨出部を設けて、開口部およびピン孔を加工する工程の図である。
【図13】従来の構造部材とブラケット、連結部材の関係を表す図である。
【図14】実施例における本発明の鋼管部材の疲労試験状況を示す図である。
【図15】別の実施例における本発明の鋼管部材の疲労試験状況を示す図である。
【図16】別の実施例における本発明の鋼管部材の疲労試験状況を示す図である。
【図17】比較例の疲労試験状況を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼管
2 開口部
3 ピン孔
4 膨出部
5 連結部材
6 ピン
7 金型
8 液体及び/又は気体
9 ポンチ
10 構造部材
11 ブラケット
12 フランジ
13 溶接部
14 疲労き裂
Claims (8)
- 側壁面に開口部および対向する1対以上のピン孔を少なくとも一組有することを特徴とする疲労強度に優れた鋼管部材。
- 開口部の一部または全部が鋼管の側壁面における膨出部に位置することを特徴とする請求項1記載の疲労強度に優れた鋼管部材。
- 長手方向のr値の平均が1.5以上及び/又はn値の平均が0.15以上の鋼管から成ることを特徴とする請求項1または2記載の疲労強度に優れた鋼管部材。
- 体積率で50%以上のフェライトを含み、平均結晶粒径が10μm以上の鋼管から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の疲労強度に優れた鋼管部材。
- 質量%で、
C:0.0005〜0.5%、Si:0.001〜2.0%、Mn:0.01〜3.0%、P:0.2%以下、N:0.03%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼管を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の疲労強度に優れた鋼管部材。 - 質量%で、さらに、
Ti:0.001〜0.5%、B:0.0001〜0.01%、
Ni:0.001〜1.5%、Cu:0.001〜1.5%、
Cr:0.001〜1.5%、 Mo:0.001〜1.5%、
Nb:0.001〜0.5%、V:0.001〜0.5%、
Co:0.001〜1.5%、W:0.001〜1.5%、
Al:0.0001〜1.5%、
の1種または2種以上を含有する鋼管を用いることを特徴とする請求項5記載の疲労強度に優れた鋼管部材。 - 液体及び/又は気体を用いて、開口部の一部または全部が膨出部に位置するように鋼管を加工し、同時またはその後に開口部およびピン孔を加工することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼管部材の加工方法。
- 開口部およびピン孔の加工前に鋼管に予加工を施すことを特徴とする請求項7記載の鋼管部材の加工方法。
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