JP7380962B1 - 角形鋼管およびその製造方法並びに角形鋼管を用いた建築構造物 - Google Patents

角形鋼管およびその製造方法並びに角形鋼管を用いた建築構造物 Download PDF

Info

Publication number
JP7380962B1
JP7380962B1 JP2023551772A JP2023551772A JP7380962B1 JP 7380962 B1 JP7380962 B1 JP 7380962B1 JP 2023551772 A JP2023551772 A JP 2023551772A JP 2023551772 A JP2023551772 A JP 2023551772A JP 7380962 B1 JP7380962 B1 JP 7380962B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel pipe
flat plate
square steel
yield strength
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2023551772A
Other languages
English (en)
Inventor
晃英 松本
直道 岩田
昌士 松本
信介 井手
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority claimed from PCT/JP2023/019016 external-priority patent/WO2024053169A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7380962B1 publication Critical patent/JP7380962B1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

耐座屈性能に優れた角形鋼管を提供する。管周方向に複数の平板部および角部を交互に有する角形鋼管において、前記平板部の管周方向の降伏強度を、前記平板部の管軸方向の降伏強度の0.83倍以上1.20倍以下とし、前記角部の管周方向の降伏強度を、前記平板部の管軸方向の降伏強度の0.90倍以上1.30倍以下とする。

Description

本発明は、建築物の柱材として好適に用いられる、耐座屈性能に優れた角形鋼管およびその製造方法並びにかかる角形鋼管を用いた建築構造物に関する。
建築物の柱材として用いられる角形鋼管には、ロール成形角形鋼管が広く用いられている。
ロール成形角形鋼管は、鋼帯(以下、「鋼板」と表記する。)を冷間ロール成形により円筒状のオープン管形状とし、そのオープン管の突合せ部分を電縫溶接した後、上下左右に配置されたロールにより円筒状のまま管軸方向に絞りを加えて角形に成形することで製造される。前記した電縫溶接においては、突合せ部分が加熱されて溶融し、圧接されて凝固することで接合が完了する。
ロール成形した角形鋼管には、耐震性の観点から、曲げ変形時の高い耐座屈性能が要求される。しかし、ロール成形した角形鋼管は、製造時に平板部および角部が大きく加工硬化するため、角部の延性および/または靭性が低下してしまい、耐座屈性能が低下しやすかった。
この課題を解決するために、平板部および角部における特性を向上させた角形鋼管が種々提案されている。
例えば、特許文献1および2では、化学成分およびミクロ組織を適切に制御することにより、角部の延性および靭性を向上させた角形鋼管が提案されている。
また、特許文献3では、鋼板を折り曲げ加工したのち溶接して半成形角形鋼管とし、この半成形角形鋼管を加熱して熱間成形した後、冷却することにより、角部の延性および靭性を向上させた角形鋼管が提案されている。
特開2011-094214号公報 特開2018-053281号公報 特開2004-330222号公報
ここで、角形鋼管の曲げ変形時の耐座屈性能に関しては、平板部に垂直な方向から荷重を受ける場合(0度曲げ)、および角部頂点方向から荷重を受ける場合(45度曲げ)の両方に対し、性能を検討する必要がある。
なお、0度曲げの場合は、曲げ内側の平板部が管内面に向かって凹むことによって座屈が生じる。また、45度曲げの場合は、曲げ内側の角部の曲率半径が大きくなることによって座屈が生じる。
角形鋼管の耐座屈性能を向上させるためには、前記した座屈の前駆現象である平板部の変形および角部の変形を抑制することが有効であると考えられる。しかし、従来はこうした観点からの検討はなされていなかった。
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであって、耐座屈性能に優れた角形鋼管およびその製造方法、並びにかかる角形鋼管を用いることで優れた耐震性能を有する建築構造物を提供することを目的とする。
なお、本発明において、耐座屈性能に優れるとは、前記角形鋼管の0度曲げ試験および45度曲げ試験における累積塑性変形倍率がいずれも28以上であることを指す。
本発明者らが前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、前記角形鋼管の平板部および角部の管周方向の降伏強度を適切に制御することにより、前記した座屈の前駆現象となる平板部の変形および/または角部の変形を効果的に抑制し、耐座屈性能を向上させることができることを見出した。
また、前記平板部の管周方向の残留応力を適切に制御することにより、前記した座屈の前駆現象である平板部の変形を抑制し、0度方向の耐座屈性能をさらに向上させることができることを併せて見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
1.管周方向に複数の平板部および角部を交互に有し、かつ管軸方向に延びる溶接部を有する角形鋼管であって、
前記平板部の管周方向の降伏強度が、前記平板部の管軸方向の降伏強度の0.83倍以上1.20倍以下であり、
前記角部の管周方向の降伏強度が、前記平板部の管軸方向の降伏強度の0.90倍以上1.30倍以下である、角形鋼管。
2.前記平板部の外表面における管周方向の残留応力が、-200MPa以上150MPa以下である、前記1に記載の角形鋼管。
ただし、前記残留応力は、正の値の場合は引張、負の値の場合は圧縮の応力をそれぞれ表す。
3.質量%で、
C:0.020~0.350%、
Si:0.01~0.65%、
Mn:0.30~2.50%、
P:0.050%以下、
S:0.0500%以下、
Al:0.005~0.100%および
N:0.0100%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する、前記1または2に記載の角形鋼管。
4.前記成分組成が、さらに、質量%で、
Ti:0.100%以下、
Nb:0.100%以下、
V:0.100%以下、
Cr:1.00%以下、
Mo:1.00%以下、
Cu:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
Ca:0.0100%以下および
B:0.0100%以下から選んだ1種または2種以上を含む、前記3に記載の角形鋼管。
5.前記1~4のいずれか一つに記載の角形鋼管の製造方法であって、
鋼板を冷間ロール成形により円筒状に成形し、該円筒状の周方向端部を相互に突合せて電縫溶接する造管工程と、
該造管工程後に行われる、角成形スタンドによって平板部の平坦度が-10.0mm以上-4.0mm以下、さらに角部の曲率半径が平板部の肉厚の1.0倍以上2.5倍以下である角形鋼管素材にする角成形工程と、
引続き、前記角形鋼管素材の内面に対し以下の(1)式を満たす内圧p(MPa)を負荷して、かかる角形鋼管素材の平板部の平坦度を-3.0mm以上3.0mm以下としつつ、角部の曲率半径を平板部の肉厚の2.0倍以上4.0倍以下とする角形鋼管にする内圧負荷工程と、
を含む、角形鋼管の製造方法。
N(MPa)<p≦N×1.5(MPa) ・・・(1)
ただし、N=(角形鋼管素材の肉厚(mm)/角形鋼管素材の辺長(mm))×角形鋼管素材の平板部の管周方向の降伏強度(MPa)
6.前記1~4のいずれか一つに記載の角形鋼管を、柱材として備える建築構造物。
本発明によれば、耐座屈性能に優れた角形鋼管およびその製造方法を提供することが可能となる。
また、本発明の角形鋼管を柱材として使用した建築構造物は、従来の冷間成形角形鋼管を使用した建築構造物と比べて、より優れた耐震性能を得ることができる。
本発明の角形鋼管(または角形鋼管素材)の管軸方向に対して垂直な断面を示す概略図である。 平坦度の測定方法を説明するための模式図である。 角成形スタンドを示す概略図である。 本発明の建築構造物の一例を示す模式図である。 角形鋼管素材の平板部の管軸方向引張試験片の採取位置を示す概略図である。 角形鋼管の平板部および角部の管周方向引張試験片の採取位置をそれぞれ示す概略図である。 角形鋼管の角部の引張試験片の採取位置を示す概略図である。 角形鋼管の0度曲げ試験の概要図である。 角形鋼管の45度曲げ試験の概要図である。
本発明の角形鋼管は、管周方向に複数の平板部および角部を交互に有することで、鋼管の断面は、矩形(四角形)のほか、三角形および五角形以上の多角形のいずれかになっている。さらに、上記角形鋼管は、管軸方向に延びた溶接部が形成されていて、前記平板部の管周方向の降伏強度が、前記平板部の管軸方向の降伏強度の0.83倍以上1.20倍以下であり、前記角部の管周方向の降伏強度が、前記平板部の管軸方向の降伏強度の0.90倍以上1.30倍以下である。
平板部の管周方向の降伏強度:平板部の管軸方向の降伏強度の0.83倍以上1.20倍以下
平板部の管周方向の降伏強度が、平板部の管軸方向の降伏強度の0.83倍未満である場合、0度曲げにおいて曲げ内側の平板部が塑性変形しやすく、曲げ内側の平板部が管内面に向かって凹みやすいため、耐座屈性能が低下する。よって、平板部の管周方向の降伏強度は、平板部の管軸方向の降伏強度の0.83倍以上とする。なお、前記平板部の管周方向の降伏強度は、好ましくは平板部の管軸方向の降伏強度の0.85倍以上であり、より好ましくは0.87倍以上である。
一方、平板部の管周方向の降伏強度が、平板部の管軸方向の降伏強度の1.20倍超である場合、平板部の延性が低下し、0度曲げにおいて平板部の不均一変形が早期に発生するため、耐座屈性能が低下する。また、曲げ外側の破断が生じやすくなる。よって、平板部の管周方向の降伏強度は、平板部の管軸方向の降伏強度の1.20倍以下とする。なお、前記平板部の管周方向の降伏強度は、好ましくは平板部の管軸方向の降伏強度の1.15倍以下であり、より好ましくは1.10倍以下である。
なお、従来の製法では、平板部の管周方向の降伏強度は、平板部の管軸方向の降伏強度の0.80倍程度であった。
また、本発明において平板部とは、後述する角部を除く範囲であって、かかる平板部の両端のそれぞれ(接続点(図1に示す点A、A’等))は異なる角部と接続し、後述する平坦度を有する部位である。なお、図1は、本発明の角形鋼管の管軸方向に対して垂直な断面を示す概略図である。
角部の管周方向の降伏強度:平板部の管軸方向の降伏強度の0.90倍以上1.30倍以下
角部の管周方向の降伏強度が平板部の管軸方向の降伏強度の0.90倍未満である場合、45度曲げにおいて曲げ内側の角部が塑性変形しやすく、曲げ内側の角部の曲率半径が大きくなりやすいため、耐座屈性能が低下する。よって、角部の管周方向の降伏強度は、平板部の管軸方向の降伏強度の0.90倍以上とする。なお、前記角部の管周方向の降伏強度は、好ましくは、平板部の管軸方向の降伏強度の0.95倍以上であり、より好ましくは1.00倍以上である。
一方、角部の管周方向の降伏強度が平板部の管軸方向の降伏強度の1.30倍超である場合、平板部の延性が低下し、45度曲げにおいて角部の不均一変形が早期に発生するため、耐座屈性能が低下する。また、曲げ外側の破断が生じやすくなる。よって、角部の管周方向の降伏強度は、平板部の管軸方向の降伏強度の1.30倍以下とする。なお、前記角部の管周方向の降伏強度は、好ましくは平板部の管軸方向の降伏強度の1.25倍以下であり、より好ましくは1.20倍以下である。
なお、従来の製法では、角部の管周方向の降伏強度は、平板部の管軸方向の降伏強度の0.85倍程度であった。
また、本発明において角部とは、後述する所定の曲率半径を有する曲面の部位である。
本発明の角形鋼管は、建築構造物としての十分な強度および耐座屈性能を確保するために、前記平板部の管軸方向の降伏強度が295MPa以上であることが好ましい。
なお、上記の降伏強度は、JIS Z 2241 2011年の規定に準拠して引張試験を実施することで得られる。
本発明の角形鋼管は、0度方向の耐座屈性能を向上させるために、前記平板部の外表面における管周方向の残留応力が、-200MPa以上150MPa以下であることが好ましい。ただし、前記残留応力は、正の値の場合は引張、負の値の場合は圧縮の応力をそれぞれ表す。
平板部の外表面における管周方向の残留応力の値が-200MPa以上であれば、0度曲げにおいて平板部外面の圧縮変形が促進され、曲げ内側の平板部が管内面に向かって凹みやすくなるといった不具合を抑制し、耐座屈性能を良好に維持することができる。前記残留応力は、より好ましくは-190MPa以上であり、さらに好ましくは-180MPa以上である。
一方、平板部の外表面における管周方向の残留応力の値が150MPa以下であれば、0度曲げにおいて平板部外面の引張変形が促進され、曲げ内側の平板部の両隣の平板部が管外面に膨らみやすくなるといった不具合を抑制することができる。その結果、曲げ内側の平板部の管内面への凹みも抑制され、耐座屈性能を良好に維持することができる。前記残留応力は、より好ましくは140MPa以下であり、さらに好ましくは130MPa以下である。
なお、本発明における残留応力は、X線回折法により測定することができる。
本発明の角形鋼管は、建築構造物として十分な強度および溶接性を確保するために、質量%で、
C:0.020~0.350%、
Si:0.01~0.65%、
Mn:0.30~2.50%、
P:0.050%以下、
S:0.0500%以下、
Al:0.005~0.100%および
N:0.0100%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有することが好ましい。
以下、特に断りがない限り、鋼組成を示す「%」は「質量%」である。また、以下の成分組成は、角形鋼管の溶接部を除いた平板部および角部の成分組成ということもできる。
C:0.020%以上0.350%以下
Cは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。また、Cは、フェライト変態開始温度を低下させることで組織の微細化に寄与する元素である。これらの効果を得るためには、0.020%以上のCを含有することが好ましい。一方、Cは、パーライトの生成を促進し、焼入れ性を高めてマルテンサイトの生成に寄与し、オーステナイトの安定化に寄与することから、硬質相の形成にも寄与する元素である。ただし、C含有量が0.350%を超えると、硬質相の割合が高くなり延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。また溶接性も悪化するおそれがある。
以上より、C含有量は0.020%以上0.350%以下の範囲とすることが好ましい。C含有量は、より好ましくは0.030%以上であり、さらに好ましくは0.040%以上である。一方、C含有量は、より好ましくは0.330%以下であり、さらに好ましくは0.310%以下である。
Si:0.01%以上0.65%以下
Siは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上のSiを含有することが好ましい。一方、Si含有量が0.65%を超えると、電縫溶接部に酸化物が生成しやすくなり、溶接部特性が低下するおそれがある。また、電縫溶接部以外の母材部の延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。
以上より、Si含有量は0.01%以上0.65%以下の範囲とすることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは0.03%以上である。一方、Si含有量は、より好ましくは0.63%以下であり、さらに好ましくは0.61%以下である。
Mn:0.30%以上2.50%以下
Mnは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。また、Mnはフェライト変態開始温度を低下させることで組織の微細化に寄与する元素である。これらの効果を得るためには、0.30%以上のMnを含有することが好ましい。一方、Mn含有量が2.50%を超えると、電縫溶接部に酸化物が生成しやすくなり、溶接部特性が低下するおそれがある。また、固溶強化および組織の微細化のため、延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。
以上より、Mn含有量は0.30%以上2.50%以下の範囲とすることが好ましい。Mn含有量は、より好ましくは0.40%以上であり、さらに好ましくは0.50%以上である。一方、Mn含有量は、より好ましくは2.30%以下であり、さらに好ましくは2.10%以下である。
P:0.050%以下
Pは、粒界に偏析し材料の不均質を招くため、できるだけ低減することが好ましい。このため、P含有量は0.050%以下とすることが好ましい。P含有量は、より好ましくは0.040%以下であり、さらに好ましくは0.030%以下である。特にPの下限は規定しない(通常は0%超えである)が、過度の低減は製錬コストの高騰を招くため、P含有量は0.002%以上とすることが好ましい。
S:0.0500%以下
Sは、鋼中では通常、MnSとして存在するが、MnSは、熱間圧延工程で薄く延伸され、延性を低下させ、耐座屈性能を低下させる。このため、本発明ではSをできるだけ低減することが好ましい。よって、本発明でのS含有量は0.0500%以下とすることが好ましい。S含有量は、より好ましくは0.0300%以下であり、さらに好ましくは0.0100%以下である。特にSの下限は規定しない(通常は0%超えである)が、過度の低減は製錬コストの高騰を招くため、Sは0.0002%以上とすることが好ましい。
Al:0.005%以上0.100%以下
Alは、強力な脱酸剤として作用する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上のAlを含有することが好ましい。一方、Al含有量が0.100%を超えると溶接性が悪化するとともに、アルミナ系介在物が多くなって、表面性状が悪化するおそれがある。
従って、Al含有量は0.005%以上0.100%以下の範囲とすることが好ましい。Al含有量は、より好ましくは0.010%以上であり、さらに好ましくは0.015%以上である。一方、Al含有量は、より好ましくは0.080%以下であり、さらに好ましくは0.060%以下である。
N:0.0100%以下
Nは、転位の運動を強固に固着することで延性を低下させ、耐座屈性能を低下させる作用を有する元素である。本発明では、Nはできるだけ低減することが望ましい。このため、N含有量は0.0100%以下とすることが好ましい。N含有量は、より好ましくは0.0080%以下である。特にNの下限は規定しない(通常は0%超えである)が、過度の低減は製錬コストの高騰を招くため、Nは0.0010%以上とすることが好ましい。
また、本発明の角形鋼管の上記成分組成は、さらに、質量%で、
Ti:(0%超)0.100%以下、
Nb:(0%超)0.100%以下、
V:(0%超)0.100%以下、
Cr:(0%超)1.00%以下、
Mo:(0%超)1.00%以下、
Cu:(0%超)1.00%以下、
Ni:(0%超)1.00%以下、
Ca:(0%超)0.0100%以下および
B:(0%超)0.0100%以下
から選んだ1種または2種以上を含んでもよい。
Ti:0.100%以下
Ti含有量が0.100%を超えると延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。このため、Ti含有量は0.100%以下が好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.090%以下であり、さらに好ましくは0.080%以下である。一方、Tiは、鋼中で微細な炭化物、窒化物を形成することで鋼の強度向上に寄与する元素である。また、Nとの親和性が高いため鋼中のNを窒化物として無害化し、鋼の延性向上にも寄与する元素である。上記した効果を得るため、Tiの含有量は、0.001%以上にすることが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.002%以上であり、さらに好ましくは0.005%以上である。
Nb:0.100%以下
Nb含有量が0.100%を超えると延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。このため、Nb含有量は0.100%以下が好ましい。Nb含有量は、より好ましくは0.090%以下であり、さらに好ましくは0.080%以下である。一方、Nbは、鋼中で微細な炭化物、窒化物を形成することで鋼の強度向上に寄与し、また、熱間圧延中のオーステナイトの粗大化を抑制することで組織の微細化にも寄与する元素である。上記した効果を得るため、Nbの含有量は、0.001%以上にすることが好ましい。Nb含有量は、より好ましくは0.002%以上であり、さらに好ましくは0.005%以上である。
V:0.100%以下
V含有量が0.100%を超えると延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。このため、V含有量は0.100%以下とすることが好ましい。V含有量は、より好ましくは0.090%以下であり、さらに好ましくは0.080%以下である。一方、Vは、鋼中で微細な炭化物、窒化物を形成することで鋼の強度向上に寄与する元素である。上記した効果を得るため、0.001%以上のVを含有することが好ましい。V含有量は、より好ましくは0.002%以上であり、さらに好ましくは0.005%以上である。
Cr:1.00%以下
Cr含有量が1.00%を超えると延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。よって、Cr含有量は1.00%以下とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは0.80%以下であり、さらに好ましくは0.60%以下である。一方、Crは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を上昇させる元素である。上記した効果を得るため、Cr含有量は0.01%以上とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは、0.05%以上である。
Mo:1.00%以下
Mo含有量が1.00%を超えると延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。よって、Mo含有量は1.00%以下とすることが好ましい。Mo含有量は、より好ましくは0.80%以下であり、さらに好ましくは0.60%以下である。一方、Moは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を上昇させる元素である。上記した効果を得るため、Mo含有量は0.01%以上とすることが好ましい。Mo含有量は、より好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは0.05%以上である。
Cu:1.00%以下
Cu含有量が1.00%を超えると延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。よって、Cu含有量は1.00%以下とすることが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは0.80%以下であり、さらに好ましくは0.60%以下である。一方、Cuは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。上記した効果を得るため、Cu含有量は0.01%以上とすることが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは、0.02%以上であり、さらに好ましくは、0.05%以上である。
Ni:1.00%以下
Ni含有量が1.00%を超えると延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。よって、Ni含有量は1.00%以下とすることが好ましい。Ni含有量は、より好ましくは0.80%以下であり、さらに好ましくは、0.60%以下である。一方、Niは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。上記した効果を得るため、Ni含有量は0.01%以上とすることが好ましい。Ni含有量は、より好ましくは、0.02%以上であり、さらに好ましくは、0.05%以上である。
Ca:0.0100%以下
Ca含有量が0.0100%を超えると鋼中にCa酸化物クラスターが形成され、延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。このため、Ca含有量は0.0100%以下とすることが好ましい。Ca含有量は、より好ましくは0.0080%以下であり、さらに好ましくは0.0060%以下である。一方、Caは、熱間圧延工程で薄く延伸されるMnS等の硫化物を球状化することで鋼の延性向上に寄与する元素である。上記した効果を得るため、0.0002%以上のCaを含有することが好ましい。Ca含有量は、より好ましくは0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.0010%以上である。
B:0.0100%以下
B含有量が0.0100%を超えると延性が低下し、耐座屈性能が低下するおそれがある。このため、B含有量は0.0100%以下とすることが好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0080%以下であり、さらに好ましくは0.0060%以下であって、さらにより好ましくは0.0040%以下である。一方、Bは、フェライト変態開始温度を低下させることで組織の微細化に寄与する元素であり、必要に応じて含有することができる。上記した効果を得るため、0.0001%以上のBを含有することが好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.0008%以上である。
上記成分組成において、残部はFeおよび不可避的不純物である。残部における不可避的不純物としては、例えば、Sn、As、Sb、Bi、Co、Pb、ZnおよびOが挙げられる。ただし、本発明の効果を損なわない範囲においては、Snを0.10%以下、As、SbおよびCoをそれぞれ0.050%以下、Bi、Pb、ZnおよびOをそれぞれ0.0050%以下含有することを拒むものではない。
なお、上記Oは、酸化物としてのOを含むトータル酸素のことを指す。
次に、本発明の角形鋼管の製造方法について述べる。
本発明の角形鋼管の製造方法では、鋼板を冷間ロール成形により円筒状に成形し、該円筒状の周方向両端部を突合せて電縫溶接し(造管工程)、その後、角成形スタンドによって平板部の平坦度が-10.0mm以上-4.0mm以下であって、かつ角部の曲率半径が平板部の肉厚の1.0倍以上2.5倍以下である角形鋼管素材とし(角形成工程)、その後、前記角形鋼管素材の内面に対し以下の(1)式を満たす内圧p(MPa)を負荷して、かかる角形鋼管素材の平板部の平坦度を-3.0mm以上3.0mm以下としつつ、角部の曲率半径を平板部の肉厚の2.0倍以上4.0倍以下とする角形鋼管にする(内圧負荷工程)。
N(MPa)<p≦N×1.5(MPa) ・・・(1)
ただし、N=(角形鋼管素材の肉厚(mm)/角形鋼管素材の辺長(mm))×角形鋼管素材の平板部の管周方向の降伏強度(MPa)
なお、前記円筒状とは、管周断面が「C」形状であることを指す。
図1中、tおよびtは、溶接部(電縫溶接部)13を含む平板部11(図中、Iとする)に対して角部12を挟んで隣接する2つの平板部11(図中、IIとする)それぞれの管周方向中央(図中、IIIとする)における肉厚(mm)である。また、図1中、tは、溶接部(電縫溶接部)13を含む平板部11に対向する平板部11(図中、IVとする)の管周方向中央(図中、Vとする)における肉厚(mm)である。そして、角形鋼管素材の肉厚は、かかるt(mm)、t(mm)、およびt(mm)を加算平均して求められる。
角形鋼管素材の辺長は、溶接部(電縫溶接部)13を上にして置いたときに、図1に示したH:縦の辺長(mm)、およびH:横の辺長(mm)を加算平均して求められる。
本発明における平板部の平坦度は、図2に示すように、平板部外面の周方向両端の2点を通る直線に対する膨らみ量または凹み量とする。ただし、膨らみ量は正の値、凹み量は負の値とし、膨らみまたは凹みが存在しなかった場合は、値を0とする。また、前記周方向両端とは、角成形スタンドのロールとの接触部と非接触部の境界点であり、管外周面において曲率半径が変化する角状の点である。
本発明における角部の曲率半径は、図1に示すように、角部12(図1の例では右上側の角部)に隣接する両側の平板部11の外面から引き延ばした直線(延長線)L1およびL2の交点Pを通り、延長線L1またはL2と45°の角をなす直線Lと、角部12の外側の曲線との交点Bにおける曲率半径とする。
前記曲率半径の測定は、延長線L1、L2と平板部11、角部12との接続点(図1に示す点A、A’)および角部12の外面を円弧とし、中心が直線L上に存在する中心角90°の扇形において、直線Lと角部12の外面の交点Bを中心とした中心角65°の範囲で行う。曲率半径の測定方法は、例えば、前記した中心角65°の範囲において前記円弧とよく一致するラジアルゲージから曲率半径を計測する方法が挙げられる。
また、前記内圧の負荷は、例えば、ゴム素材のパッキンで管端を封じて管内部に水圧を負荷することにより実施できる。さらに、形状を安定化させるために、必要に応じて外枠として所定形状の金型を使用することもできる。
通常のロール成形角形鋼管は、角成形スタンドにより円筒形状から平板部が平坦な角形状に成形することによって製造される。
これに対して、本発明の角形鋼管は、角成形スタンドによって、一旦平板部が管内面側に凹むように成形する。具体的に、例えば図3に示すように、電縫溶接して得た電縫鋼管7を、サイジングロール8の後の角成形ロール群9によって、一旦平板部が管内面側に凹むように成形し、角形鋼管素材10’を得る。その上で、管内面に内圧を負荷することで平板部を管外面に膨らませて平板部を平坦にし、かつ角部の曲率半径を大きくすることによって、本発明の角形鋼管が得られる。
なお、角成形スタンドにおける最終スタンドのロールは4ロールとし、ロールと鋼管の接触部において平板部を成形し、非接触部において角部を成形することが好ましい。
角形鋼管素材の平板部が管内面側に凹むように成形するために、従来よりも孔形の曲率半径が小さいロールを用いつつ、ロールギャップを調整する必要がある。
よって、角成形スタンドにおける最終スタンドのロール孔形は、所望の角形鋼管素材の外周断面形状(例えば、略正方形形状)と同形状としつつ、必要に応じてロールギャップを調整する。ロール孔形の曲率半径(mm)は、角形鋼管素材の狙い辺長をH(mm)として、H/100以上H/30以下とすることが好ましい。
なお、前記所望の角形鋼管素材の外周断面形状とは、平板部の平坦度が-10.0mm以上-4.0mm以下、さらに角部の曲率半径が平板部の肉厚の1.0倍以上2.5倍以下が例示される。
前記角成形スタンドにおける最終スタンドのロールギャップを小さくすれば、角形鋼管素材の角部の曲率半径を小さくすることができ、また、平板部の平坦度を小さく(凹み量を大きく)することができる。一方、かかる角成形スタンドにおける最終スタンドのロールギャップを大きくすれば、角形鋼管素材の角部の曲率半径を大きくすることができ、また、平板部の平坦度を大きく(凹み量を小さく)することができる。
よって、角成形スタンドにおける最終スタンドのロールギャップを調整することにより、角形鋼管素材の角部の曲率半径を所望の値とすることができる。また、ロール孔形の曲率半径およびロールギャップを調整することにより、角形鋼管素材の平坦度を所望の値とすることができる。
本発明は、角形鋼管の平板部を周方向に繰り返し曲げ変形するため、通常の角形鋼管と比較して平板部の周方向の降伏強度を高くすることができる。
また、本発明は、角形鋼管の角部も同様に周方向に繰り返し曲げ変形するため、通常の角形鋼管と比較して角部の周方向の加工硬化を適度に大きくすることができる。すなわち、角部の周方向の降伏強度を高くすることができる。
角成形スタンドによる角形鋼管素材の平板部の平坦度:-10.0mm以上-4.0mm以下
角成形スタンドによる角形鋼管素材の平板部の平坦度が-10.0mmよりも小さい場合、内圧負荷時の平板部の変形量が大きくなって、平板部の加工硬化量が大きくなり、平板部の周方向の降伏強度が高くなり過ぎるので、0度曲げにおける耐座屈性能が低下する。前記平坦度は、好ましくは-9.5mm以上であり、より好ましくは-9.0mm以上である。
一方、角成形スタンドによる角形鋼管素材の平板部の平坦度が-4.0mmよりも大きい場合、内圧負荷時の平板部の変形量が小さくなって、平板部の加工硬化量が小さくなり、平板部の周方向の降伏強度が低くなり過ぎるので、0度曲げにおける耐座屈性能が低下する。また、平板部の外表面における管周方向の残留応力の絶対値が大きくなり過ぎるので、0度曲げにおける耐座屈性能が低下する。前記平坦度は、好ましくは-4.5mm以下であり、より好ましくは-5.0mm以下である。
角成形スタンドによる角形鋼管素材の角部の曲率半径:平板部の肉厚の1.0倍以上2.5倍以下
角成形スタンドによる角形鋼管素材の角部の曲率半径が平板部の肉厚の1.0倍未満である場合、内圧負荷時の角部の変形量が大きくなって、角部の加工硬化量が大きくなり、角部の周方向の降伏強度が高くなり過ぎるので、45度曲げにおける耐座屈性能が低下する。前記曲率半径は、好ましくは平板部の肉厚の1.1倍以上であり、より好ましくは平板部の肉厚の1.2倍以上である。
一方、角成形スタンドによる角形鋼管素材の角部の曲率半径が平板部の肉厚の2.5倍超である場合、内圧負荷時の角部の変形量が小さくなって、角部の加工硬化量が小さくなり、角部の周方向の降伏強度が低くなり過ぎるので、45度曲げにおける耐座屈性能が低下する。前記曲率半径は、好ましくは平板部の肉厚の2.4倍以下であり、より好ましくは平板部の肉厚の2.3倍以下である。
管内面に内圧を負荷した後の角形鋼管の平板部の平坦度:-3.0mm以上3.0mm以下
管内面に内圧を負荷した後の角形鋼管の平板部の平坦度がそれぞれ-3.0mmよりも小さい場合、内圧負荷時の平板部の変形量が小さくなって、平板部の加工硬化量が小さくなり、平板部の周方向の降伏強度が低くなり過ぎるので、0度曲げにおける耐座屈性能が低下する。また、平板部の外周断面の湾曲が大きいため、ダイアフラムまたは梁との溶接接合に困難が生じる。さらに、平板部の外表面における管周方向の残留応力の絶対値が大きくなり、0度曲げにおける耐座屈性能が低下する場合がある。前記平坦度は、好ましくは-2.9mm以上であり、より好ましくは-2.8mm以上である。
一方、管内面に内圧を負荷した後の角形鋼管の平板部の平坦度がそれぞれ3.0mmよりも大きい場合、内圧負荷時の平板部の変形量が大きくなって、平板部の加工硬化量が大きくなり、平板部の周方向の降伏強度が高くなり過ぎるので、0度曲げにおける耐座屈性能が低下する。また、平板部の外周断面の湾曲が大きいため、ダイアフラムまたは梁との溶接接合に困難が生じる。前記平坦度は、好ましくは2.7mm以下であり、より好ましくは2.5mm以下である。
管内面に内圧を負荷した後の角形鋼管の角部の曲率半径:平板部の肉厚の2.0倍以上4.0倍以下
管内面に内圧を負荷した後の角形鋼管の角部の曲率半径が平板部の肉厚の2.0倍未満である場合、内圧負荷時の角部の変形量が小さくなって、角部の加工硬化量が小さくなり、角部の周方向の降伏強度が低くなり過ぎるので、45度曲げにおける耐座屈性能が低下する。前記曲率半径は、好ましくは平板部の肉厚の2.1倍以上であり、より好ましくは平板部の肉厚の2.2倍以上である。
一方、管内面に内圧を負荷した後の角形鋼管の角部の曲率半径が平板部の肉厚の4.0倍超である場合、内圧負荷時の角部の変形量が大きくなって、角部の加工硬化量が大きくなり、角部の周方向の降伏強度が高くなり過ぎるので、45度曲げにおける耐座屈性能が低下する。前記曲率半径は、好ましくは平板部の肉厚の3.9倍以下であり、より好ましくは平板部の肉厚の3.8倍以下である。
なお、管内面に内圧を負荷した後の角形鋼管の平板部の肉厚は、管内面に内圧を負荷する前の角形鋼管素材の平板部の肉厚から、実質的に不変である。
内圧p(MPa)が前記(1)式のN以下である場合、管周方向に発生する引張応力が平板部の管周方向の降伏強度を下回ってしまい、平板部の変形量が小さくなる。その結果、平板部の加工硬化量が小さくなり、平板部の周方向の降伏強度が低くなり過ぎるので、0度曲げにおける耐座屈性能が低下する。また、平板部の外表面における管周方向の残留応力の絶対値が大きくなり、0度曲げにおける耐座屈性能が低下する場合がある。さらに、角部の変形量が小さくなって、角部の加工硬化量が小さくなると、角部の周方向の降伏強度が低くなり過ぎるので、45度曲げにおける耐座屈性能が低下する。
一方、内圧p(MPa)が前記(1)式のN×1.5超である場合、管周方向に発生する引張応力が高くなり過ぎてしまい、平板部の変形量が大きくなる。その結果、平板部の加工硬化量が大きくなり、平板部の周方向の降伏強度が高くなり過ぎるので、0度曲げにおける耐座屈性能が低下する。また、角部の変形量が大きくなって、角部の加工硬化量が大きくなり、角部の周方向の降伏強度が高くなり過ぎるので、45度曲げにおける耐座屈性能が低下する。
本発明の角形鋼管は、建築構造物としての十分な強度および耐座屈性能を確保するために、肉厚が6mm以上であることが好ましい。また、内圧負荷時の曲げ変形における管外表面の変形量が大きくなり過ぎるのを抑制する観点から、肉厚が40mm以下であることが好ましい。
本発明の建築構造物は、前述した本発明の角形鋼管10を、柱材として備える。
図4は、本発明の建築構造物100の一例を示す模式図である。
本発明の建築構造物100は、通しダイアフラム17と角形鋼管10とが溶接され、角形鋼管10は柱材として用いられる。その他、図4に示すように、建築構造物100は、大梁18、小梁19、間柱20により形成され、さらに公知の部材を用いて形成してもよい。
ここで、角形鋼管10は、前述したように、耐座屈性能に優れる。そのため、この角形鋼管10を柱材として使用した本発明の建築構造物100は、優れた耐震性能を発揮する。
前述されていない角形鋼管にかかる製造方法の各種条件に関しては、いずれも常法に依ることができる。また、前述されていない角形鋼管および建築構造物の構成等に関しては、いずれも公知の構成等を用いることができる。
以下、実施例に基づいてさらに本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
表1に示す成分組成を有する溶鋼を溶製し、スラブを得た。得られたスラブを熱間圧延し、鋼板を得た。
Figure 0007380962000001
かようにして得られた鋼板を、冷間ロール成形により円筒状に成形し、該円筒状の周方向両端部を突合せて電縫溶接した。その後、角成形スタンドによって4箇所の平板部と4箇所の角部を有する角形鋼管素材とした。その後、前記角形鋼管素材の両管端をゴム素材のパッキンで封じて、管内部を水で満たして内圧p(MPa)を負荷し、角形鋼管とした。
(平板部の平坦度の測定)
かくして得られた角形鋼管素材および角形鋼管の管軸方向の任意の位置5箇所において、それぞれ平板部のすべての箇所すなわち4箇所の平坦度をそれぞれ測定し、それら計20箇所の測定値の加算平均値を、角形鋼管素材および角形鋼管それぞれの平坦度とした。
平坦度の測定においては、まず、図2に示すように、各平板部外面の周方向両端の2点を通る直線に対する最大膨らみ量及び最大凹み量をそれぞれ測定し、各測定箇所における最大膨らみ量または最大凹み量の絶対値の最大値Fを求めた。そして、Fが膨らみ量の場合は平坦度の値をFとし、Fが凹み量の場合は平坦度の値を-Fとし、膨らみまたは凹みがいずれも存在しなかった場合は、平坦度の値を0とした。
(角部の曲率半径の測定)
前述した角形鋼管素材および角形鋼管の管軸方向の任意の位置5箇所において、角部すべての箇所すなわち4箇所の外面(角部外側)の曲率半径をそれぞれ測定し、それら計20箇所の測定値の加算平均値を、角形鋼管素材および角形鋼管それぞれの角部の曲率半径とした。
角部の曲率半径測定にはラジアルゲージを使用した。曲率半径の測定方法については、角部に隣接する両側の平板部外面をそれぞれ含む2本の直線L1およびL2の交点Pを通り、L1またはL2と45°をなす直線Lと角部外側の交点における曲率半径を角部外側の曲率半径として測定した(図1)。
具体的に、曲率半径の測定は、平板部と角部の接続点(A、A’)および角部外面からなり、中心が前記L上に存在する中心角90°の扇形において、前記Lと角部外面の交点を中心とした中心角65°の範囲で行い、前記中心角65°の範囲において角部外面と最も一致するラジアルゲージより曲率半径を計測した(図1)。
(降伏強度の測定)
また、角形鋼管素材および角形鋼管から引張試験片を採取し、降伏強度の測定を行った。引張試験片として、図5のWに示すとおり、引張方向が管軸方向と平行になるように、角形鋼管素材10’の平板部からJIS5号引張試験片を採取した。また、図6のXに示すとおり、引張方向が管周方向と平行になるように、角形鋼管10の平板部からJIS5号引張試験片を採取した。また、図6のYに示すとおり、角形鋼管10の角部からJIS5号引張試験片の1/5の寸法の引張試験片を採取した。なお、平板部から採取する試験片は全厚試験片とし、角部から採取する試験片は研削により肉厚の1/2の厚さとした。
角部の引張試験片は、より詳細には、図7のZに示すとおり、試験片の平行部長手中心が、該角部に隣接する両側の平板部外面をそれぞれ延長した交点を通りかつ前記平板部外面それぞれと45°をなす線上に位置するように採取した。なお、屈曲したつかみ部はプレス矯正により平坦にした。
これら試験片を用いてJIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、平板部の管軸方向の降伏強度LYS、平板部の管周方向の降伏強度CYS、角部の管周方向の降伏強度CYSをそれぞれ求めた。試験片本数は各2本とし、それらの平均値を算出して各測定値を算出した。
(累積塑性変形倍率の測定)
また、角形鋼管について、0度曲げ試験および45度曲げ試験を行った。具体的に、図8および図9に示すように、角形鋼管1の長手方向の中央位置に通しダイアフラム2を溶接して試験体とした。試験体の両端を支持材3でピン支持(回転支持)し、水平方向と垂直方向の移動が固定されるようにして、矢印の位置において0度方向(図8)または45度方向(図9)にそれぞれ載荷した繰り返し曲げ試験を行い、累積塑性変形倍率を求めた。
なお、累積塑性変形倍率とは、試験体が局部座屈または破断して急激に耐力が低下するまでの塑性回転角の総和を、全塑性モーメントに対応する基準回転角で除した値である。この値が大きいほど柱材(柱部材)として用いた場合の変形性能に優れており、地震時のエネルギー吸収能力が高いことを意味する。
(外表面における管周方向残留応力の測定)
また、外表面における管周方向残留応力を、X線回折法により測定した。
具体的には、下記の試験片における電解研磨した領域において、下記の測定機器・測定条件の下で、管周方向残留応力を測定した。なお、管周方向残留応力の測定は全ての平板部において実施し、各平板部において得られた管周方向残留応力の平均値を、角形鋼管の管周方向残留応力とした。
・測定機器:パルステック工業社製ポータブルX線残留応力測定装置(型式μ-X360n)
・測定条件:使用X線はCr-Kα線、管電圧は30kVとし、cosα法で測定した。測定格子面はbcc-Fe(211)、ポアソン比は0.280、弾性定数は224000MPaとした。
・試験片:管軸方向長さ:1000mmの角形鋼管を採取し、その長さ方向中央部における、平板部の管周方向中央において、管外表面を100μm電解研磨した。
各種条件および得られた結果を、表2および表3に示す。
Figure 0007380962000002
Figure 0007380962000003
表2および表3中、No.1~6は本発明例、No.7~14は比較例である。
本発明例の角形鋼管は、いずれも平板部の管周方向の降伏強度(CYS)が、平板部の管軸方向の降伏強度(LYS)の0.83倍以上1.20倍以下であり、角部の管周方向の降伏強度(CYS)が、平板部の管軸方向の降伏強度(LYS)の0.90倍以上1.30倍以下であった。
比較例のNo.7は、内圧負荷工程における内圧p(MPa)が式(1)の範囲を上回ったため、角形鋼管の平坦度が3.0mmよりも大きい値となり、かつ角部の曲率半径が平板部の肉厚の4.0倍超となった。そのため、平板部の管軸方向の降伏強度に対する、平板部の管周方向の降伏強度および角部の管周方向の降伏強度のいずれもが本発明の範囲を上回ってしまい、0度曲げにおける累積塑性変形倍率および45度曲げにおける累積塑性変形倍率がそれぞれ所望の値(0度曲げ、45度曲げ共に、累積塑性変形倍率:28以上)に達しなかった。
比較例のNo.8は、角形鋼管素材の曲率半径が平板部の肉厚の2.5倍超であった。そのため、平板部の管軸方向の降伏強度に対する角部の管周方向の降伏強度が本発明の範囲を下回ってしまい、45度曲げにおける累積塑性変形倍率が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.9は、内圧負荷工程における内圧p(MPa)が式(1)の範囲を下回った。そのため、角形鋼管の平板部の平坦度が-3.0mmよりも小さい値となり、平板部の管軸方向の降伏強度に対する平板部の管周方向の降伏強度が本発明の範囲を下回ってしまい、0度曲げにおける累積塑性変形倍率が所望の値に達しなかった。また、外表面における管周方向残留応力が-200MPaよりも小さい値となった。
比較例のNo.10は、内圧負荷工程における内圧p(MPa)が式(1)の範囲を上回ったため、角形鋼管の角部の曲率半径が平板部の肉厚の4.0倍超となった。そのため、平板部の管軸方向の降伏強度に対する角部の管周方向の降伏強度が本発明の範囲を上回ってしまい、45度曲げにおける累積塑性変形倍率が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.11は、内圧負荷工程における内圧p(MPa)が式(1)の範囲を下回った。そのため、平板部の管軸方向の降伏強度に対する、平板部の管周方向の降伏強度および角部の管周方向の降伏強度のいずれもが本発明の範囲を下回ってしまい、0度曲げにおける累積塑性変形倍率および45度曲げにおける累積塑性変形倍率がそれぞれ所望の値に達しなかった。また、外表面における管周方向残留応力が150MPaよりも大きい値となった。
比較例のNo.12は、角形鋼管素材の平板部の平坦度が-10.0mmよりも小さい値であったため、平板部の管軸方向の降伏強度に対する平板部の管周方向の降伏強度が本発明の範囲を上回ってしまい、0度曲げにおける累積塑性変形倍率が所望の値に達しなかった。
比較例のNo.13は、角形鋼管素材の平板部の平坦度が-4.0mmよりも大きな値であった。そのため、平板部の管軸方向の降伏強度に対する平板部の管周方向の降伏強度が本発明の範囲を下回ってしまい、0度曲げにおける累積塑性変形倍率が所望の値に達しなかった。また、外表面における管周方向残留応力が-200MPaよりも小さい値となった。
比較例のNo.14は、内圧負荷工程における内圧p(MPa)が式(1)の範囲を下回り、角形鋼管の角部の曲率半径が平板部の肉厚の2.0倍よりも小さい値であった。そのため、平板部の管軸方向の降伏強度に対する角部の管周方向の降伏強度が本発明の範囲を下回ってしまい、45度曲げにおける累積塑性変形倍率が所望の値に達しなかった。
1 角形鋼管
2 通しダイアフラム
3 支持材
7 電縫鋼管
8 サイジングロール
9 角成形ロール群
10 角形鋼管
10’角形鋼管素材
11 平板部
12 角部
13 溶接部(電縫溶接部)
17 通しダイアフラム
18 大梁
19 小梁
20 間柱
100 建築構造物

Claims (8)

  1. 管周方向に複数の平板部および角部を交互に有し、かつ管軸方向に延びる溶接部を有する角形鋼管であって、
    前記平板部の管周方向の降伏強度が、前記平板部の管軸方向の降伏強度の0.83倍以上1.20倍以下であり、
    前記角部の管周方向の降伏強度が、前記平板部の管軸方向の降伏強度の0.90倍以上1.30倍以下である、角形鋼管。
  2. 前記平板部の外表面における管周方向の残留応力が、-200MPa以上150MPa以下である、請求項1に記載の角形鋼管。
    ただし、前記残留応力は、正の値の場合は引張、負の値の場合は圧縮の応力をそれぞれ表す。
  3. 質量%で、
    C:0.020~0.350%、
    Si:0.01~0.65%、
    Mn:0.30~2.50%、
    P:0.050%以下、
    S:0.0500%以下、
    Al:0.005~0.100%および
    N:0.0100%以下
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する、請求項1に記載の角形鋼管。
  4. 質量%で、
    C:0.020~0.350%、
    Si:0.01~0.65%、
    Mn:0.30~2.50%、
    P:0.050%以下、
    S:0.0500%以下、
    Al:0.005~0.100%および
    N:0.0100%以下
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する、請求項2に記載の角形鋼管。
  5. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Ti:0.100%以下、
    Nb:0.100%以下、
    V:0.100%以下、
    Cr:1.00%以下、
    Mo:1.00%以下、
    Cu:1.00%以下、
    Ni:1.00%以下、
    Ca:0.0100%以下および
    B:0.0100%以下
    から選んだ1種または2種以上を含む、請求項3に記載の角形鋼管。
  6. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Ti:0.100%以下、
    Nb:0.100%以下、
    V:0.100%以下、
    Cr:1.00%以下、
    Mo:1.00%以下、
    Cu:1.00%以下、
    Ni:1.00%以下、
    Ca:0.0100%以下および
    B:0.0100%以下
    から選んだ1種または2種以上を含む、請求項4に記載の角形鋼管。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の角形鋼管の製造方法であって、
    鋼板を冷間ロール成形により円筒状に成形し、該円筒状の周方向端部を相互に突合せて電縫溶接する造管工程と、
    該造管工程後に行われる、角成形スタンドによって平板部の平坦度が-10.0mm以上-4.0mm以下、さらに角部の曲率半径が平板部の肉厚の1.0倍以上2.5倍以下である角形鋼管素材にする角成形工程と、
    引続き、前記角形鋼管素材の内面に対し以下の(1)式を満たす内圧p(MPa)を負荷して、かかる角形鋼管素材の平板部の平坦度を-3.0mm以上3.0mm以下としつつ、角部の曲率半径を平板部の肉厚の2.0倍以上4.0倍以下とする角形鋼管にする内圧負荷工程と、
    を含む、角形鋼管の製造方法。
    N(MPa)<p≦N×1.5(MPa) ・・・(1)
    ただし、N=(角形鋼管素材の肉厚(mm)/角形鋼管素材の辺長(mm))×角形鋼管素材の平板部の管周方向の降伏強度(MPa)
  8. 請求項1~6のいずれかに記載の角形鋼管を、柱材として備える建築構造物。

JP2023551772A 2022-09-09 2023-05-22 角形鋼管およびその製造方法並びに角形鋼管を用いた建築構造物 Active JP7380962B1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022144156 2022-09-09
JP2022144156 2022-09-09
PCT/JP2023/019016 WO2024053169A1 (ja) 2022-09-09 2023-05-22 角形鋼管およびその製造方法並びに角形鋼管を用いた建築構造物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP7380962B1 true JP7380962B1 (ja) 2023-11-15

Family

ID=88729142

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023551772A Active JP7380962B1 (ja) 2022-09-09 2023-05-22 角形鋼管およびその製造方法並びに角形鋼管を用いた建築構造物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7380962B1 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017213104A1 (ja) 2016-06-07 2017-12-14 新日鐵住金株式会社 金属管、及び金属管を用いた車両用構造部材

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017213104A1 (ja) 2016-06-07 2017-12-14 新日鐵住金株式会社 金属管、及び金属管を用いた車両用構造部材

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9862014B2 (en) Method for electric resistance welded steel tube
JP6631758B1 (ja) 中空スタビライザー製造用の電縫鋼管、中空スタビライザー、及びそれらの製造方法
TWI700136B (zh) 方鋼管的製造方法及方鋼管
JP6874913B2 (ja) 角形鋼管およびその製造方法ならびに建築構造物
JP2019116657A (ja) 疲労強度に優れた厚肉大径電縫鋼管およびその製造方法
TWI748684B (zh) 電焊鋼管及其製造方法、輸送管以及建築構造物
JP2019116658A (ja) 疲労強度に優れた電縫鋼管およびその製造方法
WO2020170774A1 (ja) 角形鋼管およびその製造方法、並びに建築構造物
JP7259917B2 (ja) 角形鋼管および建築構造物
JP2019116659A (ja) 疲労強度に優れた厚肉大径電縫鋼管およびその製造方法
JP5399681B2 (ja) 化成処理性に優れた高加工性高強度鋼管およびその製造方法
WO2020170775A1 (ja) 角形鋼管およびその製造方法並びに建築構造物
JP7380962B1 (ja) 角形鋼管およびその製造方法並びに角形鋼管を用いた建築構造物
JP6885472B2 (ja) 中空スタビライザー製造用の電縫鋼管、及びその製造方法
WO2024053169A1 (ja) 角形鋼管およびその製造方法並びに角形鋼管を用いた建築構造物
JP5640792B2 (ja) 圧潰強度に優れた高靱性uoe鋼管及びその製造方法
JP7306494B2 (ja) 角形鋼管およびその製造方法並びに建築構造物
JP2009228099A (ja) ラインパイプ用uoe鋼管及びその製造方法
TW202410985A (zh) 方形鋼管及其製造方法以及使用方形鋼管之建築結構物
JP5353760B2 (ja) 変形特性に優れる電縫鋼管およびその製造方法
JP7314863B2 (ja) 角形鋼管およびその製造方法、並びに建築構造物
JP7314862B2 (ja) 角形鋼管およびその製造方法、並びに建築構造物
JP7375946B2 (ja) 角形鋼管およびその製造方法ならびに建築構造物
JP6222126B2 (ja) 電縫鋼管およびその製造方法
JP7276641B1 (ja) 電縫鋼管およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230824

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20230824

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231003

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231016

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7380962

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150