JP7314863B2 - 角形鋼管およびその製造方法、並びに建築構造物 - Google Patents
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Description
(A)鋼管の平坦部における降伏強度:355MPa以上、引張強度:520MPa以上である、
(B)前記平坦部のミクロ組織において、ベイナイト組織の面積分率:40%以上である、
(C)鋼管の角部における表層部がビッカース硬さHv:350以下、引張試験での伸び:10%以上、0℃のシャルピー吸収エネルギーvE0:70J以上である。
[1] 平板部と角部を有する角形鋼管であって、
前記角形鋼管の管軸方向の降伏強度が295~445MPa、引張強度が400~520MPaであり、
前記平板部のX線半価幅に対する前記角部のX線半価幅の比XRが、(-1.92×t/H+1.10)以上(-1.92×t/H+1.20)以下(ここで、t(mm)は角形鋼管の肉厚、H(mm)は角形鋼管の辺長とする)である、角形鋼管。
[2] 成分組成は、質量%で、
C:0.07~0.20%、
Si:1.0%以下、
Mn:0.1~1.5%、
P:0.03%以下、
S:0.015%以下、
Al:0.01~0.06%、
N:0.006%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、[1]に記載の角形鋼管。
[3] 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
Nb:0.05%以下、
Ti:0.05%以下、
V:0.10%以下
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、[2]に記載の角形鋼管。
[4] 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
B:0.008%以下
を含有する、[2]または[3]に記載の角形鋼管。
[5] 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cu:0.50%以下、
Ni:0.30%以下、
Ca:0.010%以下
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、[2]~[4]のいずれか1つに記載の角形鋼管。
[6] [1]~[5]のいずれか1つに記載の角形鋼管の製造方法であって、
引張強度が390~510MPaである鋼板を、冷間でロール成形して円筒状にした端面を溶接し、
前記角形鋼管の肉厚をt(mm)、前記角形鋼管の辺長をH(mm)とするとき、外周が(4×H-3.0×t)以上(4×H-1.4×t)以下の円筒状に成形した後、外周が(4×H-5.2×t)以上(4×H-3.4×t)以下の角筒状に成形する造管工程を施す、角形鋼管の製造方法。
[7] [1]~[5]のいずれか1つに記載の角形鋼管が、柱材として使用される、建築構造物。
X線半価幅(以下、「半価幅」と記載する場合もある)は冷間加工によって導入された微視的なひずみに対応しており、塑性変形能を表すパラメータとして有効である。通常、角部は平板部よりも微視的なひずみが大きいために、半価幅が大きくなる。
上述のように、本発明の角形鋼管は建築構造物の部材に好ましく適用できることから、本発明の角形鋼管の成分組成は、例えば以下の範囲とすることが好ましい。その理由について説明する。以下、特に断らない限り、「質量%」は単に「%」と記載する。
Cは、固溶強化や硬質層の形成により角形鋼管の強度を増加させる元素である。所望の強度を得るためには、Cは0.07%以上含有することが好ましい。一方、0.20%を超えるCの含有は、角形鋼管の溶接時に熱影響によりマルテンサイト組織が生成し、溶接割れの原因となる懸念がある。このため、Cは0.07~0.20%であることが好ましい。Cは、より好ましくは0.09%以上である。また、Cは、より好ましくは0.18%以下である。
Siは、固溶強化で角形鋼管の強度増加に寄与する元素である。所望の角形鋼管の強度を確保するためには、Siは0.01%を超えて含有することが望ましい。しかし、1.0%を超えてSiを含有すると、靱性が低下する。このため、Siは1.0%以下であることが好ましい。なお、Siは、より好ましくは0.8%以下である。
Mnは、固溶強化や組織微細化により角形鋼管の強度を増加させる元素であり、所望の角形鋼管の強度を確保するために、0.1%以上含有することが好ましい。Mnが0.1%未満の含有では、フェライト変態開始温度の上昇を招き、組織が過度に粗大化し、強度や靱性が低下する。一方、1.5%を超えてMnを含有すると、中心偏析部の硬度が上昇し、角形鋼管の溶接時の割れの原因となる懸念がある。このため、Mnは0.1~1.5%とすることが好ましい。Mnは、より好ましくは1.3%以下である。Mnは、より好ましくは0.3%以上である。
Pは、フェライト粒界に偏析して、角形鋼管の靭性を低下させる作用を有する元素である。本発明では、不純物としてできるだけ低減することが望ましく、0.03%以下であることが好ましい。しかし、過度の低減は、精錬コストの高騰を招くため、Pは0.002%以上とすることが好ましい。Pの含有はより好ましくは0.025%以下である。
Sは、鋼中では硫化物として存在し、本発明の成分組成の範囲であれば、主としてMnSとして存在する。MnSは、熱間圧延工程で薄く延伸され、角形鋼管の延性および靭性に悪影響を及ぼす。このため、本発明ではできるだけMnSを低減することが望ましく、0.015%以下であることが好ましい。しかし、過度の低減は、精錬コストの高騰を招くため、Sは0.0002%以上とすることが好ましい。Sの含有はより好ましくは0.010%以下である。
Alは、脱酸剤として作用するとともに、AlNとしてNを固定する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、Alは0.01%以上の含有が好ましい。Alは0.01%未満では、酸化物系介在物が増加し、清浄度が低下する。一方、0.06%を超えるAlの含有は、固溶Al量が増加し、角形鋼管の長手溶接時(すなわち、角形鋼管の製造における鋼管長手方向の電縫溶接時)、特に大気中での溶接の場合に、溶接部に酸化物を形成させる危険性が高くなり、角形鋼管溶接部の靭性が低下する。このため、Alは0.01~0.06%であることが好ましい。Alは、より好ましくは0.02%以上である。また、Alは、より好ましくは0.05%以下である。
Nは、転位の運動を強固に固着することで角形鋼管の靭性を低下させる作用を有する元素である。本発明では、Nは不純物としてできるだけ低減することが望ましく、0.006%以下であることが好ましい。Nは、より好ましくは0.005%以下である。本発明では特に規定しないが、製造コストの観点より、Nは0.001%以上とすることが好ましい。
Nb、Ti、Vはいずれも、鋼中で微細な炭化物、窒化物を形成し、析出強化を通じて鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るために、Nb、Ti、Vを含有する場合は、それぞれ、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下、V:0.10%以下とすることが好ましく、Nb:0.04%以下、Ti:0.04%以下、V:0.08%以下とすることがより好ましい。Nb、Ti、Vを含有する場合は、それぞれ、Nb:0.001%以上、Ti:0.001%以上、V:0.001%以上とすることが好ましく、Nb:0.003%以上、Ti:0.003%以上、V:0.003%以上とすることがより好ましい。
Bは、冷却過程のフェライト変態を遅延させ、低温変態フェライトの形成を促進し、角形鋼管の強度を増加させる作用を有する元素である。Bを含有する場合は、0.008%以下とすることが好ましい。Bは、より好ましくは0.0015%以下であり、さらに好ましくは0.0008%以下である。Bは、好ましくは0.0001%以上であり、より好ましくは0.0003%以上である。
Cr:1.0%以下(0%を含む)
1.0%を超えてCrを含有すると靱性や溶接性を低下させるおそれがあるので、Crを含有する場合は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下である。Crは、焼入れ性を高めることで、角形鋼管の強度を上昇させる元素であり、必要に応じて含有することができる。そのような効果を得るためにCrを含有する場合は、0.01%以上のCrを含有することが好ましい。Crは、より好ましくは0.02%以上である。
1.0%を超えてMoを含有すると靱性を低下させるおそれがあるので、Moを含有する場合は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下である。Moは、焼入れ性を高めることで、角形鋼管の強度を上昇させる元素であり、必要に応じて含有することができる。そのような効果を得るためにMoを含有する場合は、0.01%以上のMoを含有することが好ましい。Moは、より好ましくは0.02%以上である。
0.50%を超えてCuを含有すると靱性を低下させるおそれがあるので、Cuを含有する場合は0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.4%以下である。Cuは、固溶強化により角形鋼管の強度を上昇させる元素であり、必要に応じて含有することができる。そのような効果を得るためにCuを含有する場合は、0.01%以上のCuを含有することが好ましい。Cuは、より好ましくは0.02%以上である。
0.30%を超えてNiを含有するとフェライトの面積率が低下しやすくなるおそれがあるので、Niを含有する場合は0.30%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.2%以下である。Niは、固溶強化により角形鋼管の強度を上昇させる元素であり、必要に応じて含有することができる。そのような効果を得るためにNiを含有する場合は、0.01%以上のNiを含有することが好ましい。Niは、より好ましくは0.02%以上である。
Ca含有量が0.010%を超えると、鋼中にCa酸化物クラスターが形成され、靱性が悪化するおそれがある。このため、Caを含有する場合は、Ca含有量は0.010%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.0050%以下である。Caは、熱間圧延工程で薄く延伸されるMnS等の硫化物を、球状化することで鋼の靱性向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有することができる。このような効果を得るためにCaを含有する場合は、0.001%以上のCaを含有することが好ましい。Caは、より好ましくは0.0015%以上である。
その後、得られた鋼板に上述した造管工程を施して角形鋼管を得る。
鋼板の引張試験は、引張方向が鋼板の圧延方向と平行になるように、JIS5号の引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して実施し、引張強度(TS)を測定した。
得られた角形鋼管を用いて、平板部および角部のX線半価幅をcosα法により測定した。測定方向は、角形鋼管の長手方向とした。平板部の測定位置は、溶接部を有する面の両側の面(すなわち、溶接部を12時方向としたときの3時および9時側の辺)とし、その平均値を採用した。また、角部の測定位置は、4つの角とし、その平均値を採用した。
得られた角形鋼管の長手方向の中央位置に通しダイアフラムを溶接し、試験体を作製した。試験体は、水平方向と垂直方向の移動が固定されるように、試験体の両端を支持材でピン支持(回転支持)し、その中央部を正負交番漸増振幅繰返し載荷する3点曲げ実験を実施した。全塑性モーメントMpに対応する弾性部材回転角θpを用い、2θp、4θp、6θp、・・・の漸増振幅で各変形量を2回ずつ与える。急激に耐力が低下した時点、もしくは最大耐力から耐力が10%低下した時点を終局とし、載荷を終了した。終局時点までの累積塑性変形倍率ηが等価幅厚比αに対して、(40/α+70)以上となる場合を、塑性変形能良好とした。
角形鋼管の引張試験は、引張方向が管軸方向と平行になるように、角形鋼管の平板部からJIS5号引張試験片およびJIS12B号引張試験片をそれぞれ採取した。これらを用いてJIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、降伏強度(YS)、引張強度(TS)を測定した。
2 レベラー
3 ケージロール群
4 フィンパスロール群
5 スクイズロール
6 溶接機
7 電縫鋼管
8 サイジングロール群
9 角成形ロール群
10 角形鋼管
11 角形鋼管
12 大梁
13 小梁
14 ダイアフラム
15 間柱
Claims (6)
- 平板部と角部を有する角形鋼管であって、
前記角形鋼管の管軸方向の降伏強度が295~445MPa、引張強度が400~520MPaであり、
前記平板部のX線半価幅に対する前記角部のX線半価幅の比XRが、(-1.92×t/H+1.10)以上(-1.92×t/H+1.20)以下(ここで、t(mm)は角形鋼管の肉厚、H(mm)は角形鋼管の辺長とする)であり、
成分組成は、質量%で、
C:0.07~0.20%、
Si:1.0%以下、
Mn:0.1~1.5%、
P:0.03%以下、
S:0.015%以下、
Al:0.01~0.06%、
N:0.006%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、角形鋼管。 - 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
Nb:0.05%以下、
Ti:0.05%以下、
V:0.10%以下
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の角形鋼管。 - 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
B:0.008%以下
を含有する、請求項1または2に記載の角形鋼管。 - 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cu:0.50%以下、
Ni:0.30%以下、
Ca:0.010%以下
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の角形鋼管。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載の角形鋼管の製造方法であって、
引張強度が390~510MPaである鋼板を、冷間でロール成形して円筒状にした端面を溶接し、
前記角形鋼管の肉厚をt(mm)、前記角形鋼管の辺長をH(mm)とするとき、外周が(4×H-3.0×t)以上(4×H-1.4×t)以下の円筒状に成形した後、外周が(4×H-5.2×t)以上(4×H-3.4×t)以下の角筒状に成形する造管工程を施す、角形鋼管の製造方法。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載の角形鋼管が、柱材として使用される、建築構造物。
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