JP2017179406A - 燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板および燃料ポンプ部材 - Google Patents

燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板および燃料ポンプ部材 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性と成形性に優れた燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板および燃料ポンプ部品を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.002%以上、0.02%以下、N:0.002%以上、0.025%以下、Si:0.02%以上、1.5%以下、Mn:0.02%以上、2%以下、Cr:10.5%以上、23%以下、TiおよびNbのいずれか一方または両方を、Ti:0.4%以下、Nb:0.6%以下の範囲で含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、式(1)で表されるランクフォード値の面内異方性Δrが0.6以下、式(2)で示される0.2%耐力の面内異方性ΔYSが25MPa以下であることを特徴とする燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。Δr=|(r0+r90)/2−r45|・・・式(1)ΔYS=|(YS0+YS90)/2−YS45|・・・式(2)【選択図】なし

Description

本発明は、燃料ポンプ部材の素材として使用されるフェライト系ステンレス鋼板およびこれを用いた燃料ポンプ部材に関する。特に、自動車直噴エンジンに搭載されることの多い高圧ポンプ部材、および、自動車燃料タンク内に使用される燃料ポンプ部材に関する。
年々厳しさを増す排ガス規制や燃費規制に対応すべく、自動車分野においても対応が進められており、その一つとしてエンジンの直噴化がある。エンジンを直噴化することにより、低燃費化と出力向上が同時に実現可能であるとともに、排ガスを低減できる。また、過給機との相性がよいので、ダウンサイジングしたエンジンと組み合わせても動力性能の維持が可能である。
直噴エンジンにおいては、燃料タンクにより排出された燃料はポンプにより加圧されデリバリパイプ等を通ってエンジンに供給される。この加圧された燃料を吐出させるポンプは高圧ポンプと呼ばれ、従来は主として鋳造品を切削加工して製造されてきた。これは高度な寸法精度が要求されるためであるが、切削加工に起因して材料の歩留まりが低いことに加え切削設備が高価であることから製造コストが高いという問題があった。また、肉厚が厚いため重量が嵩み、燃費向上に有用な軽量化が図りにくい欠点があった。そこで、コストダウンと軽量化を目的として、鋼板、鋼管および棒鋼等から製造するいわゆる板金化が検討されている。この場合もやはり高度な寸法精度が要求されるので鋼板には優れた成形性が必要である。また、寸法上の制約から接合にはレーザー溶接等が用いられるため、溶接性や溶接部の耐食性も必要である。
一方、地球環境問題の一端である炭酸ガス排出抑制の観点からバイオエタノールやバイオディーゼルといったバイオ燃料の使用が拡がっており、バイオ燃料に対して良好な耐食性が必要である。また、グローバル化に伴い世界各地には性状の異なる軽油やガソリンが存在する。内部流体として燃料を取り扱う燃料ポンプ部材には、これら多様な燃料に対して優れた耐食性が求められる。さらに、外面側では融雪塩や海塩粒子等塩化物に耐食性すなわち塩害耐食性も必要である。
他方、これまで、S含有量等不純物の少ないガソリンを使用している国内始め先進国の燃料タンクにおいて、タンク内で用いられるポンプ部材にはZnメッキ等の表面処理鋼板やアルミニウムが用いられてきたが、バイオ燃料やCl、S含有量等不純物の多いガソリンに対して耐食性に不足するという課題がある。
また、燃料ポンプは多数の部材で構成されるため、一つ一つの部材には高い寸法精度が要求される。一般にポンプのケースハウジングは円筒状をしており、多くの場合深絞りにより成形されるが、成形後の形状に高い寸法精度が必要となる。さらに、燃料タンク内で使用されるポンプの場合一定の燃料圧に晒される。加えてポンプの駆動により温度が変動してポンプ部材の熱膨張や収縮が起こる。そのためポンプ部材には負荷がかかることとなり、こうした応力に耐える疲労強度が必要となる。
特許文献1には、質量%で、C:0.010%以下、N:0.015%以下、Mn:0.50%以下、P:0.020%以下、S:0.030%以下、Cr:8〜25%、Mo:2.0%以下、Ti:0.005〜0.10%、B:0.0005〜0.010%、Cu+Ni:0.15%以下、O:0.005%以下であることを特徴とする電磁ステンレス鋼が開示されている。
特許文献2には、質量%で、C:0.60〜0.75%、Si:0.05〜0.30%、Mn:0.01〜0.30%、Cu:0.10〜2.00%、Cr:10.00〜12.00%であることを特徴とする有機酸に対する耐食性に優れた高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼が開示されており、高圧環境下等で用いられる自動車燃料噴射ポンプ用部品等の用途に適用可能であると記載されている。
特許文献3には、質量%で、C:0.015%以下、N:0.020%以下、Si:0.5%以下、Cr:11.0〜25.0%、Nb:0.10〜0.50%、Ti:0.05〜0.50%、B:0.0100%以下であることを特徴とする給油系部材用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献4には、質量%で、C:0.1%以下、N:0.04%以下、Si:1%以下、Mn:1.5%以下、P:0.06%以下、S:0.03%以下、Cu:2%以下、Ni:2%以下、Cr:11〜20%、Mo:3%以下、Nb:0.002〜0.8%、Ti:0.01〜1%、Al:1%以下からなるフェライト系ステンレス鋼にZn含有塗料を塗布したことを特徴とする自動車燃料タンクおよび燃料タンク周辺部材用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献5には、質量%で、C:0.015%以下、N:0.015%以下、Cr:10〜25%、Ti、Nbの1種または2種を(Ti+Nb)/(C+N)≧8の範囲で含有し、平均r値が1.9以上、Δrが1.0以下、全伸びが30%以上であることを特徴とするプレス成形性に優れた燃料タンク用フェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
特許文献6には、高圧燃料ポンプを含む高圧燃料供給装置が開示されており、溶接部を構成する片側の材料に、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304を使用することが示されている。特許文献7には、内燃機関の高圧燃料供給ポンプが開示されており、弁体およびボール部材がSUS440C,ロッド部材がSUS420J2を使用することが示されている。ここで、両鋼種はマルテンサイト系ステンレス鋼である。
特許文献8には、燃料供給装置が開示されており、鋼製ハウジングにNiメッキもしくは錫メッキを施すことによりアルコール含有ガソリンに対する腐食を抑制できることが記載されている。特許文献9および特許文献10にも燃料供給装置が開示されており、アルコール含有ガソリン中での腐食を抑制するための技術が記載されているが、ステンレス鋼に関する記述は認められない。
特開平6−49606号公報 特開2015−40307号公報 特開2009−215633号公報 特開2004−115911号公報 特許第3769479号公報 特許第3767268号公報 特許第4920060号公報 特開2009−264240号公報 特許第5189998号公報 特許第5402801号公報
自動車の燃料ポンプ、特に直噴エンジンの高圧ポンプに使用される材料には各種燃料に対する耐食性と塩害耐食性が必要とされる。また、鋼板や棒鋼等から製造する場合にはレーザー溶接性に加え、鋼板には優れた成形性が必要とされるが、これらすべてを満足するフェライト系ステンレス鋼は提案されていなかった。
他方、自動車の燃料ポンプのうち、特に燃料タンク内ポンプに使用される材料には各種燃料に対する耐食性が必要とされる。また、鋼板には優れた成形性と疲労強度が必要とされるが、これらすべてを満足するフェライト系ステンレス鋼は提案されていなかった。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、燃料ポンプ部材の素材、特に自動車用高圧ポンプ(課題1)および自動車用燃料タンク内ポンプ(課題2)として好適に用いることができるフェライト系ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
[1]質量%で、
C:0.002%以上、0.02%以下、
N:0.002%以上、0.025%以下、
Si:0.02%以上、1.5%以下、
Mn:0.02%以上、2%以下、
Cr:10.5%以上、23%以下、
TiおよびNbのいずれか一方または両方を、Ti:0.4%以下、Nb:0.6%以下の範囲で含有し、
残部がFe及び不可避不純物からなり、式(1)で表されるランクフォード値の面内異方性Δrが0.6以下、式(2)で示される0.2%耐力の面内異方性ΔYSが25MPa以下であることを特徴とする燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
Δr=|(r+r90)/2−r45|・・・式(1)
ΔYS=|(YS+YS90)/2−YS45|・・・式(2)
[2]更に、質量%で、
Ni:2%以下、
Cu:1.5%以下、
Mo:2.5%以下の1種または2種以上からなる第1群、
および、V:0.5%以下、W:1%以下、B:0.005%以下、Zr:0.5%以下、Sn:0.5%以下、Co:0.2%以下、Al:0.2%以下、Mg:0.002%以下、Ca:0.002%以下、REM:0.01%以下、Ta:0.01%以下、Ga:0.01%以下のうち何れか1種又は2種以上からなる第2群のうち、少なくともいずれかの群を含有することを特徴とする[1]に記載の燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
[3]算出平均粗さRaが0.03〜0.5μmであることを特徴とする[1]または[2]に記載の燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
[4]質量%で、Cr:15%以上、23%以下、および(Ti+Nb)≧8(C+N)
であることを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載の自動車に使用される高圧燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
[5]質量%で、Cr:10.5%以上、15%未満、であることを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載の自動車に使用される燃料タンク内の燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
[6]引張強度が400MPa以上であることを特徴とする[5]に記載の自動車に使用される燃料タンク内の燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
[7][1]〜[6]のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼板を素材として用いたことを特徴とする燃料ポンプ部材。
本明細書において、燃料ポンプ部材用の本願発明のうち、特に自動車用高圧ポンプ用途の課題1を解決した発明を第1の発明、自動車用燃料タンク内ポンプ用途の課題2を解決した発明を第2の発明と称することとする。
以上のように、本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、成形性に優れ、また燃料中耐食性および塩害耐食性にも優れ、さらには優れたレーザー溶接性を有することから、自動車燃料ポンプ部品のなかでも、特に直噴エンジンの高圧燃料ポンプ部品に好適であり、地域を問わず適用可能である。
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼板を、特に燃料タンク内のポンプ部品に適用した場合には、燃料中耐食性に優れ、良好な成形性と強度を有することから、好適である。
実施例の冷間圧延焼鈍板の曲げ試験において、試験片の曲げ部の距離Laと、試験片の曲げ角度90度の時の距離Lbとを説明する図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
鋳造品から製造された高圧ポンプを分析したところ、磁気特性や耐摩耗性が良好な10〜15Crのステンレス鋼が多数使用されていた。そこで、これら鋳造品を鋼板、鋼管および棒鋼などに置き換えるにあたり、本発明者らは耐食性、成形性および溶接性の観点から鋭意検討した。また、燃料タンク内ポンプにフェライト系ステンレス鋼板を適用するにあたり、耐食性、成形性および疲労強度の観点から鋭意検討した。
まず、燃料中耐食性について説明する。本発明者らは、バイオエタノール、バイオディーゼル燃料を入手し、酸化劣化挙動やステンレス鋼に対する腐食性などについて、通常のガソリンと比較しながら詳細に調査解析を行った。その結果、酸化劣化した燃料中の脂肪酸は、水相に分配されて腐食性が発現し、有機酸濃度でその腐食性を表すとガソリンの約100倍に相当することがわかった。エンジンへの燃料供給を担うポンプ部材の腐食は大きなトラブルにつながるので、こうした厳しい腐食環境でも優れた耐食性を有する必要がある。
また、高圧ポンプのようにエンジンに近い燃料供給系部品は90〜100℃程度まで温度が上昇し、温度そのものと共に脂肪酸が燃料中から水相に分配されやすくなって腐食環境が苛酷になる。これは、燃料タンク部材を対象とする酸化劣化ガソリンに対する腐食試験温度40〜50℃に比べて苛酷な条件である。さらに、燃料中のバイオエタノールは水相に移動して、水相部分を拡大させるとともに、特にステンレス鋼において不働態を維持するのを阻害する要因となる。このように、同じ燃料系部品であっても、通常のガソリンを使用した給油管や燃料タンクに比べ、バイオ燃料の使用まで考慮し、かつエンジンに近い燃料供給系部品は、さらに優れた耐食性が必要となる。
このように、同じ燃料系部品であっても、通常のガソリンを使用した給油管や燃料タンクに比べ、バイオ燃料の使用まで考慮しかつエンジンに近い燃料供給系部品は、さらに優れた耐食性が必要とされる。そこで、高温酸性脂肪酸環境中での耐食性について鋭意検討した結果、母材のCr量として15%以上必要なことがわかった。より安定した耐食性を得るには、母材のCr量として17%以上であることが望ましい。
なお、第2の発明においては、酸性脂肪酸環境中での耐食性が必要であり、高温環境でないことから鋭意検討した結果、母材のCr量として10.5%以上必要なことがわかった。より安定した耐食性を得るには、母材のCr量として11%以上であることが望ましい。
次に、塩害耐食性について述べる。第1の発明についての必要な特性である。融雪塩や海塩粒子等に含まれる塩化物イオンは乾燥、湿潤過程を経て濃縮して高濃度の塩化物イオン環境となるため、その耐食性について鋭意検討した結果、母材のCr量として14%以上必要なことがわかった。より安定した耐食性を得るには、母材のCr量として15%以上であることが望ましい。
次に、鋼板の成形性について述べる。鋼板からポンプ部材を成形するにあたり重要なのは、寸法精度と鋼板の歩留である。例えば高圧ポンプケースの製造において鋼板から円筒状に深絞り成形する場合を考えると、絞りぬく場合には絞り高さが円周方向に均一で耳の高さが小さく、フランジを残す場合には残したフランジ部の長さが円周方向で均一であることが、優れた寸法精度と高い歩留を得る上で重要である。絞りぬいた時の絞り高さが円周方向で均一であると、他の部品と溶接する時の溶接施工性が向上し溶接部材の寸法精度を確保しやすくなる。溶接部材の寸法精度は、精密で部品点数が多い高圧ポンプにとって非常に重要である。このためには素材となる鋼板のランクフォード値(以下、r値)の面内異方性(以下、Δr)が小さい方がよい。具体的には、Δrを0.6以下に限定する必要があることがわかった。望ましくは0.5以下、より望ましくは0.4以下である
なお、Δrは、公知の次式(1)で表わされる。
Δr=|(r+r90)/2−r45|・・・式(1)
ここで、rは圧延方向と平行方向のr値、r90は圧延方向と直角方向のr値、r45は圧延方向と45°方向のr値で、JIS Z2254で準拠される方法で測定される。
また、円周方向の均一性に加え寸法精度の観点から真円度も重要であり、素材となる鋼板には形状凍結性が求められる。高圧ポンプ部材の場合で説明すると以下のとおりである。燃料を搬送するパイプ等をケースに付ける必要があるため、ケースは最終的に六角形等の角型に成形する必要がある。この場合いったん円筒状に成形した後に角型に成形するのが一般的である。円筒状から角型に成形する時には形状凍結性が求められ、特に周方向に均一であることが求められる。特に優れた寸法精度が求められる高圧ポンプの場合には均一性が特に重要である。以上説明した点で、素材となる鋼板に対しては0.2%耐力の面内異方性(以下、ΔYS)が小さい方がよい。具体的には、ΔYSを25MPa以下に限定する必要があることがわかった。望ましくは20MPa以下、より望ましくは15MPa以下である。
なお、ΔYSは、次式(2)で表わされる。
ΔYS=|(YS+YS90)/2−YS45|・・・式(2)
ここで、YSは圧延方向と平行方向の0.2%耐力、YS90は圧延方向と直角方向の0.2%耐力、YS45は圧延方向と45°方向の0.2%耐力で、JIS Z2241で準拠される方法で測定される。ここで、式(1)と式(2)は共に、3つの方向のr値と0.2%耐力を用いて求めているが、成形時において特に周方向の均一性が重要であるためである。
前述のように高圧ポンプ部材のケースあるいは燃料タンク内ポンプのケースハウジングにおける成形においては、形状精度が重要であるが、ケース(ハウジング)に限らず他の部品においても型かじりを防止することも必要である。この点から通常潤滑剤が用いられるが、鋼板が平坦すぎると潤滑剤が板表面に留まりにくく型かじりの要因となるため、鋼板の算術平均粗さ(以下、Ra)は0.03μm以上とするのが好ましい。より好ましいRaは0.04μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上である。一方、燃料と接する燃料ポンプ部材には燃料の流動性を阻害しないことが求められる。その観点から鋼板表面は粗すぎない方がよく、Raとしては0.5μm以下とするのが好ましい。
溶接性について述べる。第1の発明についての必要な特性である。高圧タンクは、部品点数が多くかつ寸法上の制約からレーザー溶接が多く用いられる。前述のように耐食性の観点からはCrが重要であり、Cr欠乏層に起因する粒界腐食は、溶接部の耐食性で最も留意すべき点の一つである。そこで、Cr欠乏層形成の要因となるCr炭窒化物の形成を抑制する必要があるが、そのためにはCおよびNを固定するTiおよびNbの添加が有効である。粒界腐食を抑制するうえで望ましいTi量とNb量はC量とN量の合計に対する比で表わされ、(Ti+Nb)≧8(C+N)とする必要がある。望ましくは(Ti+Nb)≧10(C+N)、より望ましくは(Ti+Nb)≧12(C+N)である。
強度について述べる。第2の発明についての必要な特性である。燃料タンク内ポンプは一定の燃料内圧に晒され、加えてポンプの駆動により温度が変動してポンプ部材の熱膨張や収縮が起こる。そのためポンプ部材には負荷がかかることとなり、こうした応力に耐える疲労強度が必要となる。そのため使用される鋼板には一定以上の強度を有することが望まれ、その観点から鋼板の引張強度として400MPa以上あることが望ましい。より望ましくは425MPa以上である。
本発明は、上記知見に基づき得られた燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼を提供するものであり、その要旨とするところは、特許請求の範囲に記載した通りの内容である。
以下、燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼の各組成を限定した理由について説明する。なお、以下の説明では、特に断らない限り、各成分の%は、質量%を表すものとする。
(C:0.002%以上、0.02%以下)
Cは、耐粒界腐食性、成形性を低下させるため、その含有量を低く抑える必要がある。
このため、Cの含有量の上限を0.02%以下とした。しかしながら、過度に低めることは必要な強度が得られなくなるとともに精練コストを上昇させるため、下限を0.002%以上とした。好ましくは0.003〜0.015%である。より好ましくは0.003〜0.012%である。
(N:0.002%以上、0.025%以下)
Nは、耐孔食性に有用な元素であるが、耐粒界腐食性、成形性を低下させるため、その含有量を低く抑える必要がある。このため、Nの含有量の上限を0.025%以下とした。しかしながら、過度に低めることは必要な強度が得られなくなるとともに精練コストを上昇させるため、下限を0.002%以上とした。好ましくは0.003〜0.02%である。より好ましくは0.003〜0.018%である。また、耐粒界腐食性および加工性の観点から、CとNの合計含有量を0.035%以下((C+N)≦0.035%)とするのが好ましい。
(Si:0.002%以上、1.5%以下)
Siは、成形加工性を低下させるため、Siの含有量を1.5%以下とする。耐酸化性、脱酸元素として有用なため、下限を0.02%以上とした。好ましくは0.05〜0.6%、より好ましくは0.07〜0.35%である。
(Mn:0.02%以上、2%以下)
Mnは、耐食性を劣化させるので、Mnの含有量を2%以下とする。脱酸元素として有用な元素であり、下限を0.02%以上とした。好ましくは、0.05〜0.6%、より好ましくは0.1〜0.45%である。
(Cr:10.5%以上、23%以下)
Crは、燃料中での耐食性を確保する上で基本となる元素であり、耐酸化性も向上させることから少なくとも10.5%以上含有させることが必要である。Crの含有量を増加させるほど耐食性を向上させることができるが、過剰な添加は成形性、製造性を低下させるため、Crの含有量を23%以下とした。
(Cr:15%以上、23%以下):高圧ポンプ部材の用途
Crは、少なくとも15%以上含有させることが必要である。好ましくは16〜23%、より好ましくは17〜20.5%である。
(Cr:10.5%以上、15%未満):燃料タンク内部材の用途
Crの含有量を15%未満とした。好ましくは11〜14.5%、より好ましくは12.5〜14%である。
(Ti:0.4%以下)
Tiは、CおよびNを固定し溶接部の耐粒界腐食性を向上させる上で有用な元素であると共に成形性を向上させる。しかしながら、過剰の添加は製造性を低下させるため、Tiの含有量の上限を0.4%とした。好ましくは0.35%以下である。Nbを含有せずTiのみ含有する場合には、耐粒界腐食性の観点から8(C+N)以上とする必要があり、10(C+N)以上とすることが好ましい。成形性の観点からTi−4(C+N)≦0.2とするのが好ましい。
(Nb:0.6%以下)
Nbは、CおよびNを固定し溶接部の耐粒界腐食性を向上させる上で有用な元素であると共に高温強度を向上させる。しかしながら、過剰の添加は成形性を低下させるため、Nbの含有量の上限を0.6%とした。好ましくは0.55%以下、より好ましくは0.5%以下である。Tiを含有せずNbのみを含有させる場合には、耐粒界腐食性の観点から8(C+N)以上とする必要があり、10(C+N)以上とすることが好ましい。
さらに、NbとTiを複合で含有する場合には(Ti+Nb)/(C+N)≧8とするのが好ましく、(Ti+Nb)/(C+N)≧10とすることがより好ましい。
(Ni:2%以下)
Niは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて2%以下含有させることができる。特に、本発明で対象としている燃料ポンプ部品において要求される塩害耐食性を向上させる効果を有する。また、強度を向上させる効果も有するため0.1%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰の添加は加工性を低下させるとともに高価なためコストアップにもつながる。より好ましくは0.2〜1.5%である。さらに好ましくは0.3〜1.2%である。
(Cu:1.5%以下)
Cuは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて1.5%以下含有させることができる。Niと同様、特に、本発明で対象としている燃料ポンプ部品において要求される塩害耐食性を向上させる効果を有する。また、強度を向上させる効果も有するため0.1%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰の添加は加工性を低下させる。より好ましくは0.2〜1.3%である。さらに好ましくは0.3〜0.9%である。
(Mo:2.5%以下)
Moは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて2.5%以下含有させることができる。特に、本発明で対象としている燃料ポンプ部品において要求される燃料中での耐食性に加え塩害耐食性を向上させる効果を有する。また、強度を向上させる効果も有するので0.1%以上含有させることが好ましい。しかし、過剰の添加は加工性を低下させるとともに高価なためコストアップにもつながる。より好ましくは0.2〜1.8%である。さらに好ましくは0.3〜0.9%である。
(V:0.5%以下)
Vは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.5%以下含有させることができる。安定した効果を得るには0.05%以上含有させることが好ましい。過剰の添加は、加工性を劣化させると共に、高価であるためコストアップにつながる。
(W:1%以下)
Wは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて1%以下含有させることができる。特に、本発明で対象としている燃料ポンプ部品において要求される塩害耐食性を向上させる効果を有するため0.2%以上含有させることが好ましい。過剰の添加は、加工性を劣化させると共に、高価であるためコストアップにつながる。より好ましくは0.4〜0.9%である。
(B:0.005%以下)
Bは、加工性、特に二次加工性を向上させる上で、必要に応じて0.005%以下含有させることができる。安定した効果を得るには0.0002%以上含有させることが好ましい。過剰の添加は耐粒界腐食性を低下させる。より好ましくは0.0003〜0.0015%である。
(Zr:0.5%以下)
Zrは、耐食性、特に耐粒界腐食性を向上させる上で、必要に応じて0.5%以下含有させることができる。安定した効果を得るには0.05%以上含有させるのが好ましい。過剰の添加は、加工性を劣化させると共に、高価であるためコストアップにつながる。
(Sn:0.5%以下)
Snは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.5%以下含有させることができる。特に、本発明で対象としている燃料ポンプ部品において要求される塩害耐食性において、その耐孔あき性を向上させる効果を有するため0.02%以上含有させることが好ましい。過剰の添加は靭性を低下させる。より好ましくは0.03〜0.25%である。
(Co:0.2%以下)
Coは、二次加工性と靭性を向上させる上で、必要に応じて0.2%以下含有させることができる。安定した効果を得るには0.02%以上含有させることが好ましい。過剰の添加はコストアップにつながる。
(Al:0.2%以下)
Alは、靭性を劣化させるため、Alの含有量を0.2%以下とした。脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であり、成形性を向上させる効果もある。そのため、Alは0.002%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.002〜0.18%である。さらに好ましくは0.003〜0.13%である。
(Mg:0.002%以下)
Mgは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であり、組織を微細化し加工性や靭性の向上にも効果があることから、必要に応じて0.002%以下含有させることができる。安定した効果を得るには0.0002%以上含有させることが好ましい。
(Ca:0.002%以下)
Caは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であり、必要に応じて0.002%以下含有させることができる。安定した効果を得るには0.0002%以上含有させることが好ましい。
(REM:0.01%以下)
REMは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であり、必要に応じて0.01%以下含有させることができる。安定した効果を得るには0.0005%以上含有させることが好ましい。
(Ta:0.01%以下)
Taは、耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ta含有量が0.01%を超えるとコストが増加する。そのため、Ta含有量は0.01%以下とする。Ta含有量は0.005%以下であるのが好ましい。上記の効果を安定して得るためには、Ta含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。
(Ga:0.01%以下)
Gaは、耐食性および耐水素脆化性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ga含有量が0.01%を超えるとコストが増加する。そのため、Ga含有量は0.01%以下とする。Ga含有量は0.005%以下であるのが好ましい。上記の効果を安定して得るためには、Ga含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。
なお、不可避不純物のうち、Pについては、溶接性の観点から0.04%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.035%以下である。また、Sについては、耐食性の観点から0.02%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.002%以下である。
本発明のステンレス鋼板は、基本的にはフェライト系ステンレス鋼を製造する一般的な工程をとって製造される。例えば、転炉又は電気炉で上記の化学組成を有する溶鋼とし、AOD炉やVOD炉などで精練して、連続鋳造法又は造塊法で鋼片とした後、熱間圧延−熱延板の焼鈍−酸洗−冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗の工程を経て製造される。必要に応じて、熱延板の焼鈍を省略してもよいし、冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗を繰り返し行ってもよい。本発明で規定しているΔrおよびΔYSを満足させるには、ここで述べた工程のうち熱延板の焼鈍を省略するのが最も有効である。また、r値を向上させて成形性を向上させるには、冷間圧延工程においてロール径が400mm以上の圧延機で圧延されるのが望ましい。
最後に、本発明の燃料ポンプ部材について説明する。本発明の部材は、鋼板、鋼管、棒鋼などの形状をしたフェライト系ステンレス鋼そのもの、もしくはその加工品を組合せて作製される。これらは多くの場合レーザー溶接により接合される。第2の発明においては、本発明の部材は、ステンレス鋼板およびその加工品に樹脂等を組合せて作製される。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
[実施例1]
「第1の発明の実施例」
表1に示す化学組成を有する溶鋼を真空溶解炉にて溶製して150kg鋼塊を作製後、加熱温度1200℃にて厚さ5mmまで熱延した。アルミナショットによりスケールを除去して、熱延板焼鈍を行わずにロール径450mmの冷間圧延機で板厚1mmまで冷延した。その後仕上焼鈍を行い、常温引張試験、r値測定、曲げ試験および腐食試験を行った。また、比較のため鋼1と鋼2については熱延板焼鈍を行って、上記と同様の工程で1mmの冷延焼鈍板を作成した(比較例1および比較例2)。
[引張試験]
冷間圧延焼鈍板からJIS13号B引張試験片を採取して圧延方向、圧延方向と45°方向、圧延方向と90°方向に、JIS Z2241に準拠して引張試験を行い、0.2%耐力を測定した。得られた3方向の0.2%耐力から式(2)を用いてΔYSを求めた。
ΔYS=|(YS+YS90)/2−YS45|・・・式(2)
ここで、YSは圧延方向と平行方向の0.2%耐力、YS90は圧延方向と直角方向の0.2%耐力、YS45は圧延方向と45°方向の0.2%耐力である。
[r値測定]
r値は、冷間圧延焼鈍板からJIS13号B引張試験片を採取して圧延方向、圧延方向と45°方向、圧延方向と90°方向に15%歪みを付与した後に式(3)を用いて算出した。得られた3方向のr値から式(1)を用いてΔrを求めた。
r=ln(W/W)/ln(t/t)・・・式(3)
Δr=|(r+r90)/2−r45|・・・式(1)
ここで、Wは引張前の板幅、Wは引張後の板幅、tは引張前の板厚、tは引張後の板厚であり、rは圧延方向のr値、r45は圧延方向と45°方向のr値、r90は圧延方向と直角方向のr値であり、JIS Z2254で準拠される方法で測定される。
[曲げ試験]
冷間圧延焼鈍板から幅20mm、長さ100mmの試験片を圧延方向、圧延方向と45°方向、圧延方向と90°方向から採取して、常温にてVブロック法により度曲げ試験を行った、曲げ試験はJIS Z2248に準拠し、曲げ角度を90度、内側半径を2mmとした。試験終了後、曲げ部の距離Lを測定し、曲げ角度90度の時の距離Lとの差Lを求めた(図1参照)。得られた3方向のLから(4)式によってΔLを求めた。
ΔL=|(L+L90)/2−L45|・・・式(4)
ここで、Lは圧延方向のL、L45は圧延方向と45°方向のL、L90は圧延方向と直角方向のLである。
[腐食試験1]
冷延鋼板より、幅25mm、長さ100mmの試験片を2枚ずつ切り出し、エメリー紙にて#600まで湿式研磨後有機溶剤を用いて脱脂した。試験溶液には、ギ酸が0.1%、酢酸が1%で、Clイオン濃度が100ppmになるようにNaClを溶解させた水溶液を用いた。試験温度は95℃とし、試験時間は168hとした。これら以外の試験条件については、JASO−M611−92−Aに準じた。腐食試験後に腐食生成物を除去した後、腐食減量の測定と局部腐食の有無を観察した。腐食減量は、試験前後の試験片の質量変化から求めた。局部腐食の有無は、試験片全面を対象に光学顕微鏡を用いて判定した。試験片N数2のうち1つでも腐食減量が検出限界相当の0.5g・m−2以上、もしくは焦点深度法による腐食深さ測定値の検出限界10μm超える腐食痕が検出された場合を「局部腐食あり」と定義して不合格(×)とし、試験片N数2のうち2つとも腐食減量が0.5g・m−2未満で局部腐食が認められなかった場合を合格(○)とした。
[腐食試験2]
冷延鋼板より、幅70mm、長さ150mmの試験片を切り出し、エメリー紙にて#320まで湿式研磨後有機溶剤を用いて脱脂した。試験片の端面と裏面をシールテープにより被覆し、JASO M609−91に記載のサイクルに従って乾湿繰り返し試験を行った。180サイクル完了後、腐食生成物を除去して腐食深さを顕微鏡焦点深度法により測定した。試験片N数2のうち2つとも最大腐食深さが300μm未満であったものを合格(○)、最大腐食深さが300μm以上であったものを不合格(×)とした。
引張試験、r値測定、曲げ試験および腐食試験の結果を表2に示す。表2に示すように、ΔYSおよびΔrが本発明範囲にある発明例1〜12はΔLが1mm以下とスプリングバック量の方位依存性が小さく成形性が良好であると共に、劣化燃料を模擬した有機酸中での耐食性や塩害耐食性が良好である。一方、ΔYSもしくはΔrが本発明範囲外にある比較例1および比較例2はΔLが1mm以上とスプリングバック量の方位依存性が大きく成形性に劣る。また、Cr量が14%未満の比較例3は有機酸中での耐食性、塩害耐食性共に劣り、Cr量が15%未満の比較例4は有機酸中での耐食性に劣る。
Figure 2017179406
Figure 2017179406
[実施例2]
表3に示す化学組成を有する溶鋼を真空溶解炉にて溶製して150kg鋼塊を作製後、加熱温度1200℃にて厚さ5mmまで熱延した。アルミナショットによりスケールを除去して、熱延板焼鈍を行わずにロール径450mmの冷間圧延機で板厚1mmまで冷延した。その後仕上焼鈍を行い、常温引張試験、r値測定、曲げ試験および腐食試験を行った。また、比較のため鋼1と鋼2については熱延板焼鈍を行って、上記と同様の工程で1mmの冷延焼鈍板を作成した(比較例1および比較例2)。
[引張試験]
冷間圧延焼鈍板からJIS13号B引張試験片を採取して圧延方向、圧延方向と45°方向、圧延方向と90°方向に、JIS Z2241に準拠して引張試験を行い、0.2%耐力を測定した。得られた3方向の0.2%耐力から式(2)を用いてΔYSを求めた。
ΔYS=|(YS+YS90)/2−YS45|・・・式(2)
ここで、YSは圧延方向と平行方向の0.2%耐力、YS90は圧延方向と直角方向の0.2%耐力、YS45は圧延方向と45°方向の0.2%耐力である。
[r値測定]
r値は、冷間圧延焼鈍板からJIS13号B引張試験片を採取して圧延方向、圧延方向と45°方向、圧延方向と90°方向に15%歪みを付与した後に式(3)を用いて算出した。得られた3方向のr値から式(1)を用いてΔrを求めた。
r=ln(W/W)/ln(t/t)・・・式(3)
Δr=|(r+r90)/2−r45|・・・式(1)
ここで、Wは引張前の板幅、Wは引張後の板幅、tは引張前の板厚、tは引張後の板厚であり、rは圧延方向のr値、r45は圧延方向と45°方向のr値、r90は圧延方向と直角方向のr値であり、JIS Z2254で準拠される方法で測定される。
[曲げ試験]
冷間圧延焼鈍板から幅20mm、長さ100mmの試験片を圧延方向、圧延方向と45°方向、圧延方向と90°方向から採取して、常温にてVブロック法により曲げ試験を行った、曲げ試験はJIS Z2248に準拠し、曲げ角度を90度、内側半径を2mmとした。試験終了後、曲げ部の距離Lを測定し、曲げ角度90度の時の距離Lとの差Lを求めた(図1参照)。得られた3方向のLから(4)式によってΔLを求めた。
ΔL=|(L+L90)/2−L45|・・・式(4)
ここで、Lは圧延方向のL、L45は圧延方向と45°方向のL、L90は圧延方向と直角方向のLである。
[腐食試験]
冷延鋼板より、幅25mm、長さ100mmの試験片を2枚ずつ切り出し、エメリー紙にて#600まで湿式研磨後有機溶剤を用いて脱脂した。試験溶液には、ギ酸が0.01%、酢酸が0.01%で、Clイオン濃度が100ppmになるようにNaClを溶解させた水溶液を用いた。試験温度は45℃とし、試験時間は168hとした。これら以外の試験条件については、JASO−M611−92−Aに準じた。腐食試験後に腐食生成物を除去した後、腐食減量の測定と局部腐食の有無を観察した。腐食減量は、試験前後の試験片の質量変化から求めた。局部腐食の有無は、試験片全面を対象に光学顕微鏡を用いて判定した。試験片N数2のうち1つでも腐食減量が検出限界相当の0.5g・m−2以上、もしくは焦点深度法による腐食深さ測定値の検出限界10μm超える腐食痕が検出された場合を「局部腐食あり」と定義して不合格(×)とし、試験片N数2のうち2つとも腐食減量が0.5g・m−2未満で局部腐食が認められなかった場合を合格(○)とした。
引張試験、r値測定、曲げ試験および腐食試験の結果を表4に示す。表4に示すように、ΔYSおよびΔrが本発明範囲にある発明例1〜11はΔLが1mm以下とスプリングバック量の方位依存性が小さく成形性が良好であると共に、劣化燃料を模擬した有機酸中での耐食性が良好である。一方、ΔYSもしくはΔrが本発明範囲外にある比較例1および比較例2はΔLが1mm以上とスプリングバック量の方位依存性が大きく成形性に劣る。また、Cr量が10.5%未満の比較例3は有機酸中での耐食性に劣る。
Figure 2017179406
Figure 2017179406
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、自動車燃料ポンプ部品に好適である。第1の発明においては、特に直噴エンジンの高圧燃料ポンプ部品に好適である。燃料ポンプ部品のなかでも、特にケースやリング等に好適である。第2の発明においては、特に燃料タンク内ポンプ部品に好適である。燃料ポンプ部品のなかでも、特にケースハウジング、キャップ、プレートおよびグランド等に好適である。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.002%以上、0.02%以下、
    N:0.002%以上、0.025%以下、
    Si:0.02%以上、1.5%以下、
    Mn:0.02%以上、2%以下、
    Cr:10.5%以上、23%以下、
    TiおよびNbのいずれか一方または両方を、Ti:0.4%以下、Nb:0.6%以下の範囲で含有し、
    残部がFe及び不可避不純物からなり、式(1)で表されるランクフォード値の面内異方性Δrが0.6以下、式(2)で示される0.2%耐力の面内異方性ΔYSが25MPa以下であることを特徴とする燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
    Δr=|(r+r90)/2−r45|・・・式(1)
    ΔYS=|(YS+YS90)/2−YS45|・・・式(2)
  2. 更に、質量%で、
    Ni:2%以下、
    Cu:1.5%以下、
    Mo:2.5%以下の1種または2種以上からなる第1群、
    および、V:0.5%以下、W:1%以下、B:0.005%以下、Zr:0.5%以下、Sn:0.5%以下、Co:0.2%以下、Al:0.2%以下、Mg:0.002%以下、Ca:0.002%以下、REM:0.01%以下、Ta:0.01%以下、Ga:0.01%以下のうち何れか1種又は2種以上からなる第2群のうち、少なくともいずれかの群を含有することを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 算出平均粗さRaが0.03〜0.5μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
  4. 質量%で、Cr:15%以上、23%以下、および(Ti+Nb)≧8(C+N)
    であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の自動車に使用される高圧燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
  5. 質量%で、Cr:10.5%以上、15%未満、であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の自動車に使用される燃料タンク内の燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
  6. 引張強度が400MPa以上であることを特徴とする請求項5に記載の自動車に使用される燃料タンク内の燃料ポンプ部材用フェライト系ステンレス鋼板。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼板を素材として用いたことを特徴とする燃料ポンプ部材。
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