JP6086134B1 - 耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材 - Google Patents

耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材 Download PDF

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Abstract

【課題】耐エタノール孔食性に優れた耐食鋼材を提供すること。【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.3%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.001〜0.008%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、板厚方向において表面から1/4位置における組織は、面積率で、フェライト相が80%以下、且つベイナイト相が20%以上である耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。【選択図】なし

Description

本発明は、耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材に関するものである。特に本発明は、バイオエタノールを貯蔵するタンクやバイオエタノールの輸送を目的とした船舶内タンク、自動車用タンクに用いられる鋼材、あるいはパイプライン輸送に使用される鋼材等、バイオエタノールと直接接触する部位に適用して好適な耐エタノール孔食性に優れた構造用耐食鋼材に関するものである。
エタノールのうち、例えばバイオエタノールは、主にとうもろこしや小麦などの糖分を分解・精製して造られる。
近年では、石油(ガソリン)の代替燃料として、またガソリンと混合する燃料として、バイオエタノールは世界中で広く使用されており、その使用量は年々増加する傾向にある。そのため、バイオエタノールを貯蔵・運搬する工程あるいはガソリンと混合する工程等において、バイオエタノールの扱い量は増加しているにも関わらず、バイオエタノールの局部腐食性が高い点、すなわち孔食やSCC(応力腐食割れ)を発生させる点が、その取り扱いを困難にしている。
なお、バイオエタノールは、商業的には、蒸留により得られたままの水分を5vol%ほど含む含水バイオエタノールと、含水バイオエタノールから水分を除去した無水バイオエタノールとに区分される。
無水バイオエタノール環境では、主にSCCが問題視されている。しかし、孔食に関しても、孔食部が応力集中起点としてSCC発生を促すため問題視されている。
含水バイオエタノール環境では、SCCは問題となっていない。反面、腐食性が無水環境より強い特徴があり、孔食それ自体が大きく成長するため問題となっている。
以上のとおり、孔食が鋼材を大きく減肉させ、構造物へダメージをもたらす。また、孔食に伴って生じた腐食生成物の溶け込みによるエタノール品質の低下も併せて引き起こす。
そのため、耐エタノール孔食用の措置を施した設備、例えば耐エタノール腐食性に優れた有機被覆材や腐食インヒビター、ステンレス鋼、ステンレスクラッド鋼を適用した設備でしかバイオエタノールを安全安心に扱えないという欠点がある。このように、バイオエタノールを扱う設備は、腐食を抑制するために、多大な費用を必要とするところに問題を残している。
特許文献1には、バイオ燃料に対して、そのタンク用鋼材を製造するためNiを5〜25質量%含有する亜鉛−ニッケルめっきを施したり、このめっき上に6価クロムを含有しない化成処理を施す方法が提案されている。
特許文献2には、バイオエタノールなどの燃料蒸気に対して、鋼板表面に「めっき層中におけるZnに対するCoの組成割合が0.2〜4.0at%であるZn−Co−Moめっき」を施した耐食性に優れたパイプ用鋼板が提案されている。
特許文献3には、鋼中に0.03〜1.0mass%のWまたは/及びMoを加えた上で、Sn、Sb、Nbのうち2種類以上の元素を組み合わせることでバイオアルコール環境での耐孔食性と耐SCC性を向上させる技術が提案されている。
非特許文献1では、炭素鋼材表面のプラズマ窒化浸炭と後酸化による耐食性への影響を、バイオエタノール模擬液中での77日間の浸漬試験により調査しており、プラズマ窒化浸炭と480℃90分の後酸化を組み合わせることで、耐孔食性が大きく向上することが報告されている。
特開2011−26669号公報 特開2011−231358号公報 国際公開2014/087628号公報
R.Boniatti,et.al., The influence of surface microstructure and chemical composition on corrosion behaviour in fuel−grade bio−ethanol of low−alloy steel modified by plasma nitro−carburizing and post−oxidizing,Applied Surface Science 280(2013) 156−163
特許文献1に開示された亜鉛−ニッケルめっきは、耐食性の向上に有効であると考えられる。しかし、かかるZn−Niめっきは電気めっきによる処理が必要なため、小型の例えば自動車用燃料タンク等には問題ないとしても、大型構造物、例えば1000kL以上の貯蔵タンクやラインパイプなどの厚肉鋼材には、処理コストが膨大になるため、適用することができない。また、めっき不良等が生じた場合には、その部分でかえって腐食が選択的に生じてしまうため、耐孔食性は十分とは言えない。
特許文献2に開示されたZn−Co−Moめっきについても、電気めっきによる処理が必要なため、特許文献1と同様の理由により、大型構造物の厚肉鋼材に対しては適用することができない。また、特許文献1と同様の理由により、耐孔食性は十分とは言えない。
特許文献3に開示された鋼材については、確かにアルコール環境での孔食とSCCを抑制するものと考えられる。しかし、組織の影響が考慮されておらず、検討が不十分である。
非特許文献1に記載の技術では、プラズマ浸炭処理+後酸化処理は確かにバイオエタノール環境での腐食を緩和している。しかし、非特許文献1に開示の技術は、特許文献1、2同様に大型構造物に対しては適用することができず、加えて表面処理不良部が生じた場合には局部腐食促進のリスクがある。また、後酸化処理まで一連の操作完了に要する時間、工数負荷は多大であり、実用的とは言いがたい。
以上のように、めっき、表面品質改善による防食方法は、大型構造物に適さず、また耐孔食性ついてはその効果が十分ではない。従って、大型構造物への適用には、鋼材そのもののバイオエタノール中での耐孔食性の改善がコストの点からも有利である。しかしながら、従来の耐食鋼材に関する技術についても、種々の耐食性元素の複合添加が必須であり、コストの観点から実用性は不十分である。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、耐エタノール孔食性に優れた耐食鋼材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、バイオエタノール環境において、優れた耐孔食性を示す構造用鋼材の開発に向けて鋭意研究を重ねた。その結果、バイオエタノール環境での鋼材の孔食感受性は、鋼材組織が大きく影響しており、組織中のフェライト相面積率の低減と、ベイナイト相面積率の増加により耐孔食性が向上することがわかった。さらに、組成において、N、Sの含有量を低減することにより、鋼材の孔食感受性が著しく低下することを見出した。本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えた末に完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1]質量%で、C:0.03〜0.3%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.001〜0.008%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、板厚方向において表面から1/4位置における組織は、面積率で、フェライト相が80%以下、且つベイナイト相が20%以上である耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
[2]前記組成に加えて、さらに質量%で、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Sb:0.01〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%、W:0.01〜1.0%、およびMo:0.01〜1.0%のうちから選んだ1種または2種以上を含有する[1]に記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
[3]前記組成に加えて、さらに質量%で、Ti:0.005〜0.1%、Zr:0.005〜0.1%、Nb:0.005〜0.1%、およびV:0.005〜0.1%のうちから選んだ1種または2種以上を含有する[1]または[2]に記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
[4]前記組成に加えて、さらに質量%で、Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.02%、およびREM:0.001〜0.2%のうちから選んだ1種または2種以上を含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
[5]前記組成に加えて、さらに質量%で、B:0.0001〜0.03%を含有する[1]〜[4]のいずれかに記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
[6]前記組成に加えて、さらに質量%で、Cr:0.01〜0.5%を含有する[1]〜[5]のいずれかに記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
本発明において、含水エタノールとは水を2.0〜10.0vol%含むエタノールである。また、無水エタノールとは水の含有量が2.0vol%未満のエタノールである。本発明において、バイオエタノールとは、炭素数1〜5の酸を0.01〜40mmol/L含むエタノールである。
本発明において「耐エタノール孔食性に優れた」とは、後述の実施例に記載の試験において、総合的な耐孔食性評価が合計3点以上となることを意味する。
本発明によれば、バイオエタノールの貯蔵用タンクや輸送用タンクおよびパイプライン構造用鋼として使用した場合に、従来に比較してより長期間にわたる構造物の使用が可能になり、またバイオエタノール中への腐食生成物の溶け込みによるエタノール品質低下を大幅に軽減することができ、産業上極めて有用である。
以下に、本発明を具体的に説明する。
本発明において、鋼材の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、鋼材の成分組成における元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
C:0.03〜0.3%
Cは、鋼の強度確保に必要な元素であり、ベイナイト相の生成にも寄与する。本発明で目標とする強度(TS:400MPa以上)を確保する観点、及び目標とするベイナイト相面積率を確保する観点から、少なくともCを0.03%含有する。一方、C含有量が0.3%を超えると溶接性が低下し、溶接の際に制限が加わるため、0.3%を上限とした。好ましくはC含有量は0.03〜0.25%の範囲である。
Si:0.01〜1.0%
Siは、脱酸のため添加するが、含有量が0.01%未満では脱酸効果に乏しい。よって、Si含有量の下限は0.01%とし、好ましくは0.03%、より好ましくは0.05%である。一方、Si量が1.0%を超えると靭性や溶接性を劣化させる。よって、Si含有量の上限は1.0%とし、好ましくは0.8%、より好ましくは0.5%である。
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、強度、およびベイナイト相を確保するために含有するが、0.1%未満ではその効果が十分でない。一方、Mn含有量が2.0%を超えると溶接性が劣化する。このため、Mn含有量は0.1〜2.0%とする。なお、ベイナイト相を安定的に得る観点から、Mn含有量は好ましくは0.3%以上である。さらに溶接性も考慮した場合、Mn含有量は好ましくは0.3〜1.6%の範囲である。
P:0.03%以下
Pは、不可避的に含有され、靭性及び溶接性を劣化させるため、P含有量は0.03%以下に抑制するものとした。なお、好ましくはP含有量は0.025%以下である。
S:0.010%以下
Sは本発明の鋼材において耐孔食性に悪影響を及ぼす元素である。Sは、不可避的に含有され、含有量が多くなると靱性及び溶接性が低下するだけでなく、MnSなどの腐食起点となる介在物が増加して、孔食が促進される。そのためS含有量は極力低減することが望ましく、0.010%以下であれば許容できる。なお、好ましくはS含有量は0.005%以下である。
Al:0.005〜0.1%
Alは、脱酸剤として添加するが、0.005%未満の含有量では脱酸不足により、靱性が低下する。よって、Al含有量の下限は0.005%とし、好ましくは0.010%である。一方、Alの過剰添加は、溶接金属部の靭性を低下させる。そのためAl含有量は0.1%を上限とし、好ましい上限は0.070%である。
N:0.001〜0.008%
Nは本発明の鋼材において耐孔食性に悪影響を及ぼす元素であり、不可避的に含有される。0.008%を超えるN含有では、粗大なAlNの形成を促進することとなる。粗大AlNは腐食起点として作用するため、耐孔食性が劣化する。このため、Nは0.008%以下に限定した。なお、好ましくはN含有量は0.007%以下である。一方、Nの0.001%未満への低減は、脱ガスの能力上困難であるので、その含有量の下限を0.001%とする。
さらに、本発明の鋼材は必要に応じて以下の選択元素を含有しても良い。
Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Sb:0.01〜0.5%、Sn:0.01〜0.5%、W:0.01〜1.0%、およびMo:0.01〜1.0%のうちから選んだ1種または2種以上
Cu、Ni、Sb、Sn、W、Moは耐孔食性や強度を更に向上させる目的で、1種または2種以上を含有させることができる。この効果は各元素について0.01%以上の含有により発現する。しかしながら、いずれの元素も多く含有させた場合に、溶接性や靱性を劣化させ、コストの観点からも不利になる。このため、Cuを0.01〜1.0%、Niを0.01〜1.0%、Sbを0.01〜0.5%、Snを0.01〜0.5%、Wを0.01〜1.0%、Moを0.01〜1.0%の範囲とした。
Ti:0.005〜0.1%、Zr:0.005〜0.1%、Nb:0.005〜0.1%、およびV:0.005〜0.1%のうちから選んだ1種または2種以上
Ti、Zr、Nb、Vは目的とする強度を確保するために、1種または2種以上を含有させることができる。しかしながら、いずれの元素も多く含有させた場合に、靱性と溶接性を劣化させる。このことから、各元素について含有量を0.005〜0.1%の範囲とした。なお、各元素の含有量について、好ましくは0.005〜0.05%の範囲である。
Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.02%、およびREM:0.001〜0.2%のうちから選んだ1種または2種以上
Ca、Mg、REMは溶接部の靱性を確保する目的で、1種または2種以上を含有させることができる。また、前述のようにMnSは孔食の起点として有害であり、これを低減する観点、また、鋼中硫化物の形態・分散制御の観点からCa、Mg、REMは有効な元素である。しかしながら、含有量が多い場合には、逆に、溶接部靱性劣化や耐孔食性劣化、コスト増加を招く。このため、Ca含有量は0.0001〜0.01%、Mg含有量は0.0001〜0.02%、REM含有量は0.001%〜0.2%の範囲とする。
B:0.0001〜0.03%
Bは鋼材の焼入性を向上させる元素である。また、鋼材の強度を確保する目的でBを含有させることができる。しかしながら過剰に含有した場合、靱性の大幅な劣化を招く。強度向上効果は0.0001%未満では乏しく、靱性劣化効果は0.03%を超えた場合に顕著となるため、B含有量は0.0001〜0.03%の範囲とした。
Cr:0.01〜0.5%
Crは、バイオエタノール環境での鋼材の耐孔食性に影響を及ぼす元素である。Crは鋼材表面の酸化被膜を強化する働きがあり、耐孔食性を向上させる目的で含有させることができる。この効果は0.01%以上の含有により発現する。しかしながら、Crを多量含有した場合は、溶接部特性が大きく劣化してしまう。そのためCr含有量は0.01〜0.5%の範囲とした。
本発明の鋼材において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明は、成分組成だけでなく、鋼材の組織を適正に制御することによって、鋼材の耐孔食性をより一層向上させている。具体的には板厚方向において表面から1/4位置面において、面積率でフェライト相が80%以下、且つベイナイト相が20%以上である。
なお、本発明においては光学顕微鏡によって組織を観察した。試料は、鋼材から圧延方向と平行の面を研磨し、板厚方向において表面から1/4位置面をナイタールで腐食して調整、作製した。組織面積率は、500倍の倍率にて観察された任意の10視野で得られた面積率の平均値である。各々の視野での面積率は、画像解析により算出した。
本発明において、鋼材の組織を前記に限定した理由について説明する。
板厚方向において表面から1/4位置における組織は、面積率で、フェライト相が80%以下、且つベイナイト相が20%以上
本発明においては、鋼材の耐孔食性を改善するうえで、フェライト相の低減が必須となる。フェライト相は鋼材の靱性向上に有効に働く一方、フェライト粒界がバイオエタノール環境での腐食の起点として作用するため鋼材の耐孔食性を劣化させる。鋼材の靱性確保の観点を踏まえて、80%以下の面積率であれば許容できる。フェライト相の面積率は、好ましくは70%未満であり、より好ましくは50%未満である。なお、フェライト相の面積率は0%でもよい。
また、本発明においてベイナイト相は耐孔食性向上に必要な組織である。ベイナイト相は腐食感受性の高い粒界を持たず、加えてバイオエタノール環境において鋼材表面に安定で強固な酸化被膜を形成し、孔食を抑制する。ベイナイト相の面積率が20%未満の場合は、鋼材全体として耐孔食性向上効果は発現しない。そのため、ベイナイト相は20%以上とした。ベイナイト相の面積率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上である。
なお、上記フェライト相、ベイナイト相の他に、その他の相として、マルテンサイト相や、パーライト相が挙げられる。パーライト相やマルテンサイト相は靱性確保の観点から好適とは言いがたく、その他の相の面積率は少ないほうがよく、30%以下とすることが好ましい。
以上のように鋼材の組織は鋼の耐孔食性に大きく影響する。バイオエタノールに先ず接する鋼材表層側の組織が特に重要であり、孔食がある程度深さ方向に成長した場合を考慮しても板厚方向の厚み1/4t部(tは厚さを意味する)の組織が所望の組織であれば実用上効果が得られる。従って、本発明では板厚方向において表面から1/4位置の組織を規定した。
本発明の鋼材は、構造用に用いられるものである。例えば、貯蔵用タンク、輸送タンク、自動車用タンク、ラインパイプ、配管、ノズル、バルブ等に用いることができる。
次に、本発明鋼材の好適製造方法について説明する。
本発明においては、所望の組織(フェライト相:組織全体に対する面積率で80%以下、ベイナイト相:組織全体に対する面積率で20%以上)を有する鋼材が得られる限りその製造方法については特に限定されないが、その一例を以下に記す。
上記した成分組成になる溶鋼を、転炉や電気炉等の公知の炉で溶製し、連続鋳造法や造塊法等の公知の方法でスラブやビレット等の鋼素材とする。なお、溶製に際して、真空脱ガス精錬等を実施しても良い。溶鋼の成分調整方法は、公知の鋼製錬方法に従えばよい。
上記の如く得られた鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延を施す。本発明においては、粗圧延前に鋼素材を表面温度で1000℃以上1350℃以下に加熱することが好ましい。加熱温度が1000℃未満では変形抵抗が大きく、熱間圧延が難しくなる。一方、1350℃を超える加熱は、表面疵の発生原因となったり、スケールロスや燃料原単位が増加したりする。加熱温度は好ましくは1050〜1300℃の範囲である。なお、鋼素材の温度がもともと1000〜1350℃の範囲内の場合には、加熱することなく、または均熱する程度で、直ちに所望の寸法形状の鋼材に熱間圧延してもよい。
仕上げ圧延は、Ar変態温度〜950℃の温度域で累積圧下率:20%以上80%以下、仕上げ圧延終了温度をAr変態温度以上とすることが好ましい。仕上げ圧延後ただちに、もしくは若干の放置時間を挟んでから加速冷却を行っても良い。加速冷却は0.5℃/s以上100℃/s以下の冷却速度が好ましく、冷却停止温度は400〜700℃の範囲内とすることが好ましい。なお、冷却速度は6.0℃/s以上とすることがより好ましい。仕上げ圧延終了後の冷却途中に誘導加熱等を利用して所定の熱サイクルを施し、所望の組織(フェライト相:組織全体に対する面積率で80%以下、ベイナイト相:組織全体に対する面積率で20%以上)を得てもよい。なお、上記のように冷却条件を制御することなく、冷却後の鋼材に所望の熱処理を施すことにより、鋼材を所望の組織としてもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
表1に示す組成になる溶鋼を通常公知の手法により溶製、連続鋳造してスラブ(鋼素材)とした。ついで、スラブを1230℃に加熱後、粗圧延し、その後、Ar変態温度〜950℃の温度域で累積圧下率65%、仕上圧延終了温度をAr変態温度+10℃とし、厚さ15mmの板とした。仕上圧延後、ただちに表2に示す条件で冷却した。冷却停止温度以下はいずれも空冷とし、鋼板を得た。
なお、表1中のAr変態温度は次式(1)により求めた。式(1)中、各元素の値は質量%の値とし、含有しない元素については「0」とした。
Ar(℃)=910−273C%−74Mn%−56Ni%−16Cr%−9Mo%−5Cu%−1620Nb%・・・式(1)
−鋼板における面積率の測定−
上記により得られた鋼板から圧延方向に平行な、板厚の1/4の位置における鋼板面について、上述の方法により500倍の倍率で組織写真を10視野撮影し、各相の面積率を求め、その平均値を算出した。各相の面積率の求め方は次の通りである。
すなわち、まず組織写真の画像をプリントアウトして、透明フィルムを重ねた上からフェライト相を黒マジックで塗りつぶした後、透明フィルムをスキャナーでパソコンに取り込み、画像解析ソフトを用いて、上記塗りつぶした部分をフェライト面積率として求めた。同様の操作をベイナイト、マルテンサイト、パーライト相についても実施し、その面積率を求めた。
−腐食試験−
上記により得られた鋼板から試験材を採取し、腐食試験を行った。腐食試験方法を以下に示す。すなわち、鋼板から、10mm×25mm×3.5mmtに切り出し、両面を番手2000の研磨面で仕上げ、アセトン中で超音波脱脂を5分間行い、風乾して試験材とした。
腐食試験溶液には2種類のバイオエタノール模擬溶液を用いた。すなわち、
(1)含水バイオエタノール模擬液
エタノール:960mlに対して、水:40ml、酢酸:30mg、NaCl:1.32mgを添加した含水バイオエタノール模擬液と、
(2)無水バイオエタノール模擬液
エタノール:985mlに対して、水:10ml、メタノール:5ml、酢酸:56mg、NaCl:53mgを添加した無水バイオエタノール模擬液と、を使用した。
この2種類の溶液30mlをそれぞれ試験管に入れ、室温にて試験材をそれぞれ浸漬した。20日間浸漬を行った後に、試験材を取り出し、表面に付着したさびをスポンジ等で洗い流したのち、インヒビターを添加した酸中で腐食生成物を除去した。ついで、純水で洗浄したのち、エタノール中で洗浄し、風乾した。その後、試験材の表面の孔食深さを後述の条件により3次元レーザー顕微鏡により測定し、最大孔食深さを求めた。
最大孔食深さ測定条件:レーザー波長658nm、測定ピッチ0.5μm
測定した最大孔食深さを基に、以下の基準で耐孔食性を評価した。
−含水バイオエタノール模擬液環境−
○:70μm未満
△:70μm以上100μm未満
×:100μm以上
−無水バイオエタノール模擬液環境−
○:20μm未満
△:20μm以上30μm未満
×:30μm以上
そのうえで○を2点、△を1点、×を0点として、2種類の模擬液環境で得られた点数の合計点数から、総合的な耐孔食性評価を以下の基準で行った。得られた結果を表2に記載する。
◎:合計4点(より好ましい)
○:合計3点(合格)
△:合計2点
×:合計1点もしくは0点
Figure 0006086134
Figure 0006086134
表2に示したとおり、発明例No.10、11、14、17〜25、28〜33、35、36は全て、合計3点以上であり、優れた耐孔食性を有している。発明例は、無水環境、含水環境のいずれでも良好な耐孔食性を有しており、様々なエタノール環境に適用可能である。
一方、比較例No.1〜3は鋼中のS量が上限を超えているため、比較例No.4〜6は鋼中のN量が上限を超えているため、比較例No.7〜9は鋼中のS量及びN量が上限を超えているため、比較例No.12,13,15,16,26,27,34は組織の面積率が範囲外であるため、優れた耐孔食性を有しているとは言えない。

Claims (6)

  1. バイオエタノールと直接接触する部位に用いる構造用鋼材であって、
    質量%で、
    C:0.03〜0.3%、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.1〜2.0%、
    P:0.03%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:0.005〜0.1%および
    N:0.001〜0.008%
    を含有し、さらに、
    Sb:0.01〜0.5%および
    Sn:0.01〜0.5%のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、板厚方向において表面から1/4位置における組織は、面積率で、フェライト相が80%以下、且つベイナイト相が20%以上である耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
  2. 前記組成に加えて、さらに質量%で、
    Cu:0.01〜1.0%、
    Ni:0.01〜1.0%
    W:0.01〜1.0%、および
    Mo:0.01〜1.0%
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する請求項1に記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
  3. 前記組成に加えて、さらに質量%で、
    Ti:0.005〜0.1%、
    Zr:0.005〜0.1%、
    Nb:0.005〜0.1%、および
    V:0.005〜0.1%
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する請求項1または2に記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
  4. 前記組成に加えて、さらに質量%で、
    Ca:0.0001〜0.01%、
    Mg:0.0001〜0.02%、および
    REM:0.001〜0.2%
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
  5. 前記組成に加えて、さらに質量%で、
    B:0.0001〜0.03%
    を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
  6. 前記組成に加えて、さらに質量%で、
    Cr:0.01〜0.5%
    を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の耐エタノール孔食性に優れた構造用鋼材。
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